(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074636
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20240524BHJP
G02B 13/18 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
G02B25/00 A
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185927
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520487808
【氏名又は名称】シャープディスプレイテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 凌
(72)【発明者】
【氏名】臼倉 奈留
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087KA14
2H087LA12
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA13
2H087RA45
2H087TA01
2H087TA03
2H087TA04
(57)【要約】
【課題】小型化および光量効率の改善要求を満足しながらも、良好な光学特性を備える光学系を提供する。
【解決手段】光学系は、瞳面EP側から表示面IMG側に向かって順に、第1の反射偏光板11と、正の屈折力を有する第1レンズL1と、ハーフミラーHMと、正の屈折力を有する第2レンズL2と、第2の反射偏光板12とを有するとともに、瞳面EPとハーフミラーHMとの間に配置された第1の1/4波長板21と、ハーフミラーHMと表示面IMGとの間に配置された第2の1/4波長板22とを有する。第2レンズL2は、近軸において瞳面側が凸面である。また、当該光学系は、第1レンズL1の瞳面EP側の面の近軸曲率半径をr1、表示面IMG側の面の近軸曲率半径をr2としたとき、次の条件式を満足する。
(1)-3.2<r1/r2<-0.9。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
瞳面側から表示面側に向かって順に、
第1の反射偏光板と、
正の屈折力を有する第1レンズと、
ハーフミラーと、
正の屈折力を有する第2レンズと、
第2の反射偏光板とを有するとともに、
瞳面と前記ハーフミラーとの間に配置された第1の1/4波長板と、
前記ハーフミラーと表示面との間に配置された第2の1/4波長板とを有し、
前記第2レンズは、近軸において瞳面側が凸面であり、
以下の条件式(1)を満足することを特徴とする光学系。
(1)-3.2<r1/r2<-0.9
ただし、
r1:第1レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、
r2:第1レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、
とする。
【請求項2】
以下の条件式(2)を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
(2)1.5<(T1/f1)×100<7.0
ただし、
T1:第1レンズの表示面側の面から第2レンズの瞳面側の面までの光軸上の距離、
f1:第1レンズの焦点距離、
とする。
【請求項3】
以下の条件式(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
(3)2.0<f1/f<6.5
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離、
f:光学系全系の焦点距離、
とする。
【請求項4】
以下の条件式(4)を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
(4)0.5<f1/f2<1.5
ただし、
f1:第1レンズの焦点距離、
f2:第2レンズの焦点距離、
とする。
【請求項5】
以下の条件式(5)を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
(5)-1.5<r1/r4<-0.5
ただし、
r1:第1レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、
r4:第2レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、
とする。
【請求項6】
以下の条件式(6)を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
(6)-79<r2/hm1<-20
ただし、
r2:第1レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、
hm1:第1レンズの表示面側の面からハーフミラーの瞳面側の面までの光軸上の距離、
とする。
【請求項7】
以下の条件式(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の光学系。
(7)55<f2/hm2<285
ただし、
f2:第2レンズの焦点距離、
hm2:ハーフミラーの表示面側の面から第2レンズの瞳面側の面までの光軸上の距離、
とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像(例えば画像表示素子に表示された画像)を拡大する光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像表示素子を用いた表示装置として、電子ビューファインダ、電子双眼鏡およびヘッドマウントディスプレイなどが知られている。
【0003】
このような表示装置では、画像表示素子と眼との間の距離を可能な限り短くする必要がある。当該表示装置に搭載される光学系は、限られた空間内に収容されることから、諸収差の除去が困難であり、その補正の範囲も限られている。そのため、眼の生理光学的特性を生かして互いに補完することが当該光学系の設計において重要になる。
【0004】
視力は視細胞の錘体の密度に依存しており、眼は、黄斑部中心窩、すなわち瞳の中心付近で鮮明な像を結ぶという特性を有する。瞳を絞ることによって焦点深度が深くなり、球面収差やコマ収差の影響が軽減されるため、これら収差や屈折補正に過不足があってもボケに対する感度を軽減することができる。また、周辺から入射した光線の感度が瞳中心部を通った光線の感度よりも低くなるという現象、いわゆるStiles-Crawford効果を利用することにより、球面収差、コマ収差および色収差の影響を軽減できる。この状態を維持することによって次第に慣れも生じることから、歪曲収差などの影響も軽減することが可能になる。
【0005】
なお、このような表示装置に搭載される光学系には、小型化とともに高い光量効率が求められることが多い。ここで、光量効率とは、画像表示素子の表示面の光量を100%としたときの眼(瞳面)へ届く光量の割合を指すものとする。
【0006】
従来の光学系としては、例えば、以下の特許文献1に記載の光学系が知られている。特許文献1には、2つの半透過面を有する部分光学系と、パワーを有する屈折光学素子とを備える光学系が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に記載の光学系により小型化および光量効率の改善を図ろうとしても、2つの半透過面によって光量効率の改善が困難であり、良好な光学性能を得ることができない。
【0009】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、小型化および光量効率の改善要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された高い解像力を備える光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による光学系は、瞳面側から表示面側に向かって順に、第1の反射偏光板と、正の屈折力を有する第1レンズと、ハーフミラーと、正の屈折力を有する第2レンズと、第2の反射偏光板とを有するとともに、瞳面とハーフミラーとの間に配置された第1の1/4波長板と、ハーフミラーと表示面との間に配置された第2の1/4波長板とを有する。第2レンズは、近軸において瞳面側が凸面である。なお、本明細書においては、レンズの面の凸面、凹面、平面とは近軸における形状を指すものとし、屈折力は、特に言及しない限り近軸における屈折力を指すものとする。
【0011】
反射偏光板は、ある偏光方向を有する直線偏光を反射し、これに直交する偏光方向を有する直線偏光を透過する。
【0012】
1/4波長板は偏光の位相を1/4λ分遅らせることで、直線偏光を円偏光に、円偏光を直線偏光に変換する。
【0013】
第1レンズは、正の屈折力を有することで、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を抑制する。
【0014】
ハーフミラーは、50%の光線を透過し、残り50%の光線を反射する。
【0015】
第2レンズは、正の屈折力を有することで、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正する。
【0016】
本発明の光学系では、第1の反射偏光板と、正の屈折力を有する第1レンズと、第1の1/4波長板とが瞳側の素子群を構成し、第2の1/4波長板と、正の屈折力を有する第2レンズと、第2の反射偏光板とが表示面側の素子群を構成する。これら瞳側の素子群と表示面側の素子群とが、ハーフミラーの半透過面を中心として、略対称となるように配置されるため、ハーフミラーで反射する光と透過する光の二つの光を最終的に重ね合わせることにより、光学系の小型化を図りつつ光量効率の向上を実現することができる。
【0017】
上記構成の光学系においては、第1レンズは、近軸において瞳面側が凸面であることが望ましい。
【0018】
第1レンズの瞳面側の面を近軸において凸面とすることで、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0019】
また、上記構成の光学系においては、第1レンズは、近軸において表示面側が凸面であることが望ましい。
【0020】
第1レンズの表示面側の面を近軸において凸面とすることで、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0021】
上記構成の光学系においては、第2レンズは、近軸において表示面側が凸面であることが望ましい。
【0022】
第2レンズの表示面側の面を近軸において凸面とすることで、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0023】
上記構成の光学系は以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)-3.2<r1/r2<-0.9
ただし、r1は第1レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、r2は第1レンズの表示面側の面の近軸曲率半径である。
【0024】
条件式(1)の範囲を満足することにより、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0025】
上記構成の光学系は以下の条件式(2)を満足することが望ましい。
(2)1.5<(T1/f1)×100<7.0
ただし、T1は第1レンズの表示面側の面から第2レンズの瞳面側の面までの光軸上の距離、f1は第1レンズの焦点距離である。
【0026】
条件式(2)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0027】
上記構成の光学系は以下の条件式(3)を満足することが望ましい。
(3)2.0<f1/f<6.5
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、fは光学系全系の焦点距離である。
【0028】
条件式(3)の範囲を満足することにより、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0029】
上記構成の光学系は以下の条件式(4)を満足することが望ましい。
(4)0.5<f1/f2<1.5
ただし、f1は第1レンズの焦点距離、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0030】
条件式(4)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0031】
上記構成の光学系は以下の条件式(5)を満足することが望ましい。
(5)-1.5<r1/r4<-0.5
ただし、r1は第1レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、r4は第2レンズの表示面側の面の近軸曲率半径である。
【0032】
条件式(5)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0033】
上記構成の光学系は以下の条件式(6)を満足することが望ましい。
(6)-79<r2/hm1<-20
ただし、r2は第1レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、hm1は第1レンズの表示面側の面からハーフミラーの瞳面側の面までの光軸上の距離である。
【0034】
条件式(6)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0035】
上記構成の光学系は以下の条件式(7)を満足することが望ましい。
(7)55<f2/hm2<285
ただし、f2は第2レンズの焦点距離、hm2はハーフミラーの表示面側の面から第2レンズの瞳面側の面までの光軸上の距離である。
【0036】
条件式(7)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0037】
上記構成の光学系は以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)27<νd2<84
ただし、νd2は第2レンズのd線に対するアッべ数である。
【0038】
条件式(8)の範囲を満足することで、色収差の良好な補正が可能になる。
【0039】
上記構成の光学系は以下の条件式(9)を満足することが望ましい。
(9)4.25<(D1/f1)×100<16.50
ただし、D1は第1レンズの光軸上の厚み、f1は第1レンズの焦点距離である。
【0040】
条件式(9)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0041】
上記構成の光学系は以下の条件式(10)を満足することが望ましい。
(10)4.25<(D2/f2)×100<16.50
ただし、D2は第2レンズの光軸上の厚み、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0042】
条件式(10)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0043】
上記構成の光学系は以下の条件式(11)を満足することが望ましい。
(11)2.0<f2/f<6.5
ただし、f2は第2レンズの焦点距離、fは光学系全系の焦点距離である。
【0044】
条件式(11)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0045】
上記構成の光学系は以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)3<r1/f<10
ただし、r1は第1レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、fは光学系全系の焦点距離である。
【0046】
条件式(12)の範囲を満足することにより、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0047】
上記構成の光学系は以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)17.5<r1/T1<71.0
ただし、r1は第1レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、T1は第1レンズの表示面側の面から第2レンズの瞳面側の面までの光軸上の距離である。
【0048】
条件式(13)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0049】
上記構成の光学系は以下の条件式(14)を満足することが望ましい。
(14)5.0<r1/(D1+T1)<18.5
ただし、r1は第1レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、D1は第1レンズの光軸上の厚み、T1は第1レンズの表示面側の面から第2レンズの瞳面側の面までの光軸上の距離である。
【0050】
条件式(14)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0051】
上記構成の光学系は以下の条件式(15)を満足することが望ましい。
(15)-1.5<r2/r3<-0.5
ただし、r2は第1レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、r3は第2レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径である。
【0052】
条件式(15)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0053】
上記構成の光学系は以下の条件式(16)を満足することが望ましい。
(16)-5.5<r2/f<-1.5
ただし、r2は第1レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、fは光学系全系の焦点距離である。
【0054】
条件式(16)の範囲を満足することにより、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0055】
上記構成の光学系は以下の条件式(17)を満足することが望ましい。
(17)-40.0<r2/T1<-8.5
ただし、r2は第1レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、T1は第1レンズの表示面側の面から第2レンズの瞳面側の面までの光軸上の距離である。
【0056】
条件式(17)の範囲を満足することにより、低背化を図るとともに、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0057】
上記構成の光学系は以下の条件式(18)を満足することが望ましい。
(18)1.5<r3/f<5.5
ただし、r3は第2レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、fは光学系全系の焦点距離である。
【0058】
条件式(18)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0059】
上記構成の光学系は以下の条件式(19)を満足することが望ましい。
(19)0.35<r3/f2<1.25
ただし、r3は第2レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0060】
条件式(19)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0061】
上記構成の光学系は以下の条件式(20)を満足することが望ましい。
(20)-0.85<r3/r4<-0.20
ただし、r3は第2レンズの瞳面側の面の近軸曲率半径、r4は第2レンズの表示面側の面の近軸曲率半径である。
【0062】
条件式(20)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0063】
上記構成の光学系は以下の条件式(21)を満足することが望ましい。
(21)-10<r4/f<-3
ただし、r4は第2レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、fは光学系全系の焦点距離である。
【0064】
条件式(21)の範囲を満足することにより、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【0065】
上記構成の光学系は以下の条件式(22)を満足することが望ましい。
(22)-2.5<r4/f2<-0.7
ただし、r4は第2レンズの表示面側の面の近軸曲率半径、f2は第2レンズの焦点距離である。
【0066】
条件式(22)の範囲を満足することにより、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差の良好な補正が可能になる。
【発明の効果】
【0067】
本発明により、小型化および光量効率の改善要求をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された解像力の高い光学系を得ることができる。また、本発明に係る光学系によれば、光量効率が改善されることから、画像表示素子における消費電力の低減を通じて、環境に優しい光学系を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【
図1】本発明の実施例1に係る光学系の概略構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の実施例1に係る光学系の球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る光学系の概略構成を示す断面図である。
【
図4】本発明の実施例2に係る光学系の球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図5】本発明の実施例3に係る光学系の概略構成を示す断面図である。
【
図6】本発明の実施例3に係る光学系の球面収差、非点収差、歪曲収差を示す収差図である。
【
図8】Fig.8Aは、
図5に示す光学系において経路1を示す断面図である。Fig.8Bは、
図5に示す光学系において経路2を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
以下、本発明を具体化した一実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0070】
図1、
図3および
図5はそれぞれ、本実施の形態に係る実施例1から3の光学系について概略構成を示す断面図である。
図7は実施例1の光学系の部分拡大図である。以下、実施例1の光学系を参照しながら本実施の形態に係る光学系について詳細を説明する。
【0071】
図1および
図7に示すように、本実施の形態に係る光学系は、瞳面EP側から画像表示素子の表示面IMG側に向かって順に、第1の反射偏光板11と、正の屈折力を有する第1レンズL1と、ハーフミラーHMと、正の屈折力を有する第2レンズL2と、第2の反射偏光板12とを有する。また、当該光学系は、瞳面EPとハーフミラーHMとの間に配置される第1の1/4波長板21と、ハーフミラーHMと表示面IMGとの間に配置される第2の1/4波長板22とを有する。光学系と表示面IMGとの間には、ガラスブロック等のフィルタIRを配置する。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。
【0072】
当該光学系では、第1の反射偏光板11と、第1レンズL1と、第1の1/4波長板21とが瞳側の素子群を構成し、第2の1/4波長板22と、第2レンズL2と、第2の反射偏光板12とが表示面側の素子群を構成する。これら瞳側の素子群と表示面側の素子群とは、ハーフミラーHMの半透過面を中心として、略対称配置となる。
【0073】
本実施の形態に係る光学系の搭載対象は限定されないが、例えばヘッドマウントディスプレイの光学系として搭載することができる。この場合、瞳面EPには観察者の瞳が位置することになる。なお、瞳面EPには、光量絞りを配置してもよい。
【0074】
第1の反射偏光板11の表示面IMG側の面と第1レンズL1の瞳面側の面とは同一形状であり、両者は接着剤等によって貼付されている。第1レンズL1は近軸において両凸形状である。これにより、球面収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を抑制できる。
【0075】
第1の1/4波長板21、ハーフミラーHMおよび第2の1/4波長板22はそれぞれ平板形状を有する。本実施の形態に係る光学系においては、第1の1/4波長板21を第1レンズL1とハーフミラーHMとの間、第2の1/4波長板22をハーフミラーHMと第2レンズL2との間にそれぞれ配置し、ハーフミラーHMを、第1の1/4波長板21と第2の1/4波長板22とで挟み込む態様で配置している。また、第1の1/4波長板21および第2の1/4波長板22をハーフミラーHMに貼付することにより、光学系の小型化を図りつつ、組立容易性の向上をも図っている。
【0076】
なお、第1の1/4波長板21を、第1の反射偏光板11と第1レンズL1との間に配置し、第2の1/4波長板22を、第2レンズL2と第2の反射偏光板12との間に配置するようにしてもよい。
【0077】
第2レンズL2は、近軸において瞳面側が凸面である。本実施の形態の第2レンズL2は、近軸において両凸形状を有する。第2レンズL2の当該形状によれば、球面収差、コマ収差、非点収差、像面湾曲、歪曲収差を良好に補正できる。
【0078】
第2レンズL2の表示面IMG側の面と第2の反射偏光板12の瞳面EP側の面とは同一形状であり、両者は接着剤等によって貼付されている。
【0079】
以上説明したように、本実施の形態に係る光学系では、両凸形状の2枚のレンズ、すなわち第1レンズL1および第2レンズL2が、ハーフミラーHMを両側から挟み込む態様で配置される。このような基本的な構成に加えて、第1の反射偏光板11、第1の1/4波長板21、第2の1/4波長板22および第2の反射偏光板12のそれぞれを適切な位置に配置することにより、当該光学系における光量効率の改善を図っている。この点について、以下詳細に説明する。
【0080】
表示面IMGを備えたデバイスとしては、例えばマイクロOLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイを採用することができる。マイクロOLEDディスプレイは、表示面IMGから円偏光を発光する。
【0081】
図8のFig.8Aに示すように、表示面IMGから出射された光は、第2の反射偏光板12で直線偏光に変換され、第2の1/4波長板22によって円偏光に変換されてハーフミラーHMに入射する。ハーフミラーHMに入射した光の一部は、これを透過して第1の1/4波長板21によって第2の反射偏光板12を通過したときと同じ偏光方向の直線偏光に変換されて第1の反射偏光板11に入射する。この直線偏光は、第1の反射偏光板11の偏光選択性により反射される。第1の反射偏光板11で反射された光は、第1の1/4波長板21によって円偏光に変換されてハーフミラーHMに入射し、ここで反射される。ハーフミラーHMで反射された光は、反射前の光と逆回りの円偏光となる。以下、この経路を進む光を便宜上、「経路1の光」という。
図1、
図3および
図5に示される本実施の形態に係る光学系の断面図では、当該光学系の概略構成を明瞭にするため、この経路1の光のみを図示している。
【0082】
一方、
図8のFig.8Bに示すように、第2の1/4波長板22によって円偏光に変換されてハーフミラーHMに入射した光の一部は反射されて逆回りの円偏光となり、第2の1/4波長板22に戻る。第2の1/4波長板22に戻った円偏光は、第2の1/4波長板22によって、最初に第2の反射偏光板12を通過したときの偏光方向に対して直交する偏光方向を有する直線偏光に変換されて第2の反射偏光板12に入射する。この直線偏光は、第2の反射偏光板12の偏光選択性により反射される。第2の反射偏光板12で反射された光は、第2の1/4波長板22によって円偏光に変換され、ハーフミラーHMに入射し透過される。以下、この経路を進む光を便宜上、「経路2の光」という。
【0083】
上記経路1の光および上記経路2の光はハーフミラーHM部で合流する。ハーフミラーHM部で合流した円偏光は、第1の1/4波長板21によって最初に第2の反射偏光板12を通過したときの偏光方向に対して直交する偏光方向を有する直線偏光に変換されて第1の反射偏光板11に入射する。この直線偏光は、第1の反射偏光板11をその偏光選択性により透過して瞳面EPに導かれる。このため、本実施の形態に係る光学系によれば、当該光学系の光量効率が改善され、光量効率を最大50%まで向上させることができる。併せて、画像表示素子における消費電力の低減を図ることができる。
【0084】
一方、この種の従来の一般的な光学系は光量効率が25%以下と低く、瞳面において明るい画像を得るためには、表示面の輝度を上げる必要があった。ここで、この従来の光学系について簡単に説明する。従来の光学系は一般的に、瞳面側から表示面側に向かって順に、反射偏光板と、第1の1/4波長板と、屈折力を有するレンズと、ハーフミラーと、第2の1/4波長板とを備えて構成される。当該光学系において表示面から出射した光は、第2の1/4波長板、ハーフミラー、レンズ、第1の1/4波長板を透過し、反射偏光板で反射された後、ハーフミラーに再び入射する。ハーフミラーに入射した光は、当該ハーフミラーにおいて反射された後、第1の1/4波長板および反射偏光板を透過して瞳面へと到達する。この光線経路では、光がハーフミラーに2回入射するため、表示面から瞳面へと届く光量は最終的に25%以下になる。このことは、従来の当該光学系では、瞳面において本実施の形態に係る光学系と同程度の明るさを得ようとすると、表示面の輝度を上げる必要があり、画像表示素子の消費電力が増大することを意味する。
【0085】
この点、本実施の形態に係る光学系では、表示面IMGから出射してハーフミラーHMにおいて反射された光を、上記経路2の光として積極的に利用することにより、従来にも増して高い光量効率を実現している。
【0086】
本実施の形態における光学系は、以下の条件式(1)から(22)を満足することにより、好ましい効果を奏する。
(1)-3.2<r1/r2<-0.9
(2)1.5<(T1/f1)×100<7.0
(3)2.0<f1/f<6.5
(4)0.5<f1/f2<1.5
(5)-1.5<r1/r4<-0.5
(6)-79<r2/hm1<-20
(7)55<f2/hm2<285
(8)27<νd2<84
(9)4.25<(D1/f1)×100<16.50
(10)4.25<(D2/f2)×100<16.50
(11)2.0<f2/f<6.5
(12)3<r1/f<10
(13)17.5<r1/T1<71.0
(14)5.0<r1/(D1+T1)<18.5
(15)-1.5<r2/r3<-0.5
(16)-5.5<r2/f<-1.5
(17)-40.0<r2/T1<-8.5
(18)1.5<r3/f<5.5
(19)0.35<r3/f2<1.25
(20)-0.85<r3/r4<-0.20
(21)-10<r4/f<-3
(22)-2.5<r4/f2<-0.7
ただし、
νd2:第2レンズL2のd線に対するアッべ数
D1:第1レンズL1の光軸X上の厚み
D2:第2レンズL2の光軸X上の厚み
T1:第1レンズL1の表示面側の面から第2レンズL2の瞳面側の面までの光軸X上の距離
hm1:第1レンズL1の表示面側の面からハーフミラーHMの瞳面側の面までの光軸X上の距離
hm2:ハーフミラーHMの表示面側の面から第2レンズL2の瞳面側の面までの光軸X上の距離
f:光学系全系の焦点距離
f1:第1レンズL1の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
r1:第1レンズL1の瞳面側の面の近軸曲率半径
r2:第1レンズL1の表示面側の面の近軸曲率半径
r3:第2レンズL2の瞳面側の面の近軸曲率半径
r4:第2レンズL2の表示面側の面の近軸曲率半径
【0087】
なお、上記の各条件式をすべて満足する必要はなく、それぞれの条件式を単独に満たすことで、各条件式に対応した作用効果を得ることができる。
【0088】
また、本実施の形態における光学系は、以下の条件式(1a)から(22a)を満足することにより、より好ましい効果を奏するものである。
(1a)-2.6<r1/r2<-1.0
(2a)2<(T1/f1)×100<6
(3a)2.5<f1/f<5.5
(4a)0.75<f1/f2<1.25
(5a)-1.25<r1/r4<-0.75
(6a)-66<r2/hm1<-30
(7a)85<f2/hm2<235
(8a)41<νd2<70
(9a)6.5<(D1/f1)×100<14.0
(10a)6.5<(D2/f2)×100<14.0
(11a)2.5<f2/f<5.5
(12a)4.5<r1/f<8.5
(13a)25<r1/T1<60
(14a)7.5<r1/(D1+T1)<15.5
(15a)-1.25<r2/r3<-0.75
(16a)-4.5<r2/f<-2.0
(17a)-33.0<r2/T1<-12.5
(18a)2.0<r3/f<4.5
(19a)0.55<r3/f2<1.05
(20a)-0.7<r3/r4<-0.3
(21a)-8.5<r4/f<-4.5
(22a)-2.1<r4/f2<-1.0
ただし、各条件式の符号は前の段落での説明と同様である。なお、条件式(1a)から(22a)については、その下限値または上限値として、それぞれ対応する条件式(1)から(22)の下限値や上限値を適用するようにしてもよい。
【0089】
本実施の形態において、レンズ面の非球面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、近軸曲率半径をR、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16、A18、A20としたとき数式1により表わされる。
【0090】
【0091】
次に、本実施の形態に係る光学系の実施例を示す。各実施例において、fは光学系全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高を、TTLは光学全長をそれぞれ示す。ここで光学全長は、瞳面から表示面までの光軸上の距離とする。なお、光学全長やバックフォーカスの値は、光学系と表示面IMGとの間に配置されるフィルタIRの厚みを空気換算して得られる距離とする。
【0092】
また、iは瞳面側から数えた面番号、rは近軸曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【0093】
各実施例の光学系において、光軸上におけるアイポイントとしての瞳面EPと最も瞳面側のレンズ面との間の間隔を瞳距離という。収差の評価において、表示面側に発光点を設けて瞳面EPに到達した光線の収差と、瞳面EP側に発光点を設けて表示面IMGに到達した光線の収差は一対一で対応する。このため各実施例では、表示面IMGに到達した光線の収差を評価することにする。
図2、
図4および
図6は、実施例1から3の光学系において観察者(人間)の瞳径をΦ8.0mmとし、瞳距離を12mmとした時の収差図を示している。
【0094】
(実施例1)
【0095】
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0096】
【0097】
実施例1の光学系は、表4に示すように条件式(1)から(22)を満たしている。
【0098】
図2は実施例1の光学系について、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図には、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示す。また、非点収差図にはサジタル像面Sにおけるd線の収差量(実線)、タンジェンシャル像面Tにおけるd線の収差量(破線)をそれぞれ示す(
図4および
図6においても同じ)。
図2に示すように、各収差は良好に補正される。
【0099】
(実施例2)
【0100】
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0101】
【0102】
実施例2の光学系は、表4に示すように条件式(1)から(22)を満たしている。
【0103】
図4は実施例2の光学系について、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図4に示すように、各収差は良好に補正される。
【0104】
(実施例3)
【0105】
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0106】
【0107】
実施例3の光学系は、表4に示すように条件式(1)から(22)を満たしている。
【0108】
図6は実施例3の光学系について、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。
図6に示すように、各収差は良好に補正される。
【0109】
表4には、実施例1から実施例3の光学系における条件式(1)から(22)の値を示す。
【0110】
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明に係る光学系を画像表示装置へ適用した場合、当該画像表示装置の小型化および光量効率の改善への寄与とともに、高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0112】
EP 瞳面
11 第1の反射偏光板
L1 第1レンズ
21 第1の1/4波長板
HM ハーフミラー
22 第2の1/4波長板
L2 第2レンズ
12 第2の反射偏光板
IR フィルタ
IMG 表示面