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特開2024-74640半導体装置、電力変換装置および半導体装置の組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074640
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】半導体装置、電力変換装置および半導体装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20240524BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240524BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H02M7/48 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185931
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002365
【氏名又は名称】弁理士法人サンネクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 忠志
【テーマコード(参考)】
5H770
【Fターム(参考)】
5H770AA24
5H770PA14
5H770PA42
5H770QA06
5H770QA28
5H770QA33
(57)【要約】
【課題】組立治具から容易に取り外しすることができる半導体装置の提供。
【解決手段】半導体装置は、半導体モジュールと、半導体モジュールの一方の面に接して配置される下部冷却部材120と、半導体モジュールの他方の面に接して配置される上部冷却部材と、下部冷却部材120の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置されるベース部材110と、上部冷却部材の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置され、上部冷却部材を前記半導体モジュールに押圧する押圧部材と、を備え、ベース部材110には、位置決めピン300aが挿通可能な位置決め孔113aが形成され、下部冷却部材120には、位置決めピン300aが挿通可能な位置決め孔123aが、位置決め孔113aと対向する位置に形成され、位置決め孔113a,123aの各々は、一方の孔開口から他方の孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状である。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの半導体素子を含み、表裏面に冷却面を有する半導体モジュールと、
前記半導体モジュールの一方の面に接して配置される第1冷却部材と、
前記半導体モジュールの他方の面に接して配置される第2冷却部材と、
前記第1冷却部材の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置されるベース部材と、
前記第2冷却部材の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置され、前記第2冷却部材を前記半導体モジュールに押圧する押圧部材と、を備え、
前記ベース部材には、位置決めピンが挿通可能な第1の位置決め孔が形成され、
前記第1冷却部材には、前記位置決めピンが挿通可能な第2の位置決め孔が、前記第1の位置決め孔と対向する位置に形成され、
前記第1および第2の位置決め孔の各々は、一方の孔開口から他方の孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状である、
半導体装置。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記ベース部材に形成された前記第1の位置決め孔は、隣接する前記第1冷却部材の側に位置する孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状であり、
前記第1冷却部材に形成された前記第2の位置決め孔は、隣接する前記ベース部材の側に位置する孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状である、
半導体装置。
【請求項3】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記拡径形状の孔において、径の小さな孔開口から径の大きな孔開口へ向かう方向を拡径方向と定義したときに、
前記ベース部材に形成された前記第1の位置決め孔の拡径方向と、前記第1冷却部材に形成された前記第2の位置決め孔の拡径方向とが同じ方向である、半導体装置。
【請求項4】
請求項1に記載の半導体装置において、
前記第1の位置決め孔は、前記ベース部材の長手方向両端に、または、長手方向の両端であって対角位置にそれぞれ配置されており、
前記第2の位置決め孔は、前記第1冷却部材の長手方向両端に、または、長手方向の両端であって対角位置にそれぞれ配置されている、半導体装置。
【請求項5】
請求項4に記載の半導体装置において、
前記第1の位置決め孔の一方は孔開口形状が円形であって、他方は孔開口形状が長円または楕円であり、
前記第2の位置決め孔の孔開口形状は、該第2の位置決め孔に対向する前記第1の位置決め孔の孔開口形状と同一形状である、
半導体装置。
【請求項6】
請求項5に記載の半導体装置において、
前記長円の長さ方向および前記楕円の長径の方向は、前記ベース部材および前記第1冷却部材の長手方向と同じ方向である、半導体装置。
【請求項7】
請求項1に記載の半導体装置を備え、
前記半導体装置により電力変換を行う電力変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の半導体装置の組立方法であって、
組立治具の載置面から突出する位置決めピンに前記第1の位置決め孔を挿通させるように、前記ベース部材を前記載置面に載置し、
前記位置決めピンに前記第2の位置決め孔を挿通させるように、前記第1冷却部材を前記ベース部材の上に載置し、
前記半導体モジュールを前記第1冷却部材の上に載置し、
前記第2冷却部材を前記半導体モジュールの上に載置し、
前記押圧部材を前記第2冷却部材の上に配置して前記第2冷却部材を前記半導体モジュールに押圧させ、
前記ベース部材および前記第1冷却部材を前記載置面に対して傾いた状態にして、前記ベース部材、前記第1冷却部材、前記半導体モジュール、前記第2冷却部材および前記押圧部材を備える半導体装置を、前記組立治具から取り外す、
半導体装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置、電力変換装置および半導体装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境への負荷低減のため、ハイブリッド自動車や電気自動車の普及が進められている。ハイブリッド自動車や電気自動車においては、バッテリーから走行用モータへ電力を供給するための電力変換装置が設けられている。電力変換装置に設けられたインバータ回路には、パワー半導体素子を備えるパワーモジュールと呼ばれる半導体装置が用いられている。このような半導体装置では、半導体素子を内蔵した半導体モジュールを一対の冷却管の間に複数個並列配置した半導体冷却構造を備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の半導体冷却構造では、半導体素子が収容されたパワーモジュールと、パワーモジュールの下面側に当接配置された下部冷却部と、パワーモジュールの上面に当接配置された上部冷却部と、上部冷却部の上部に当接配置された荷重受板と、荷重受板の上面側に設けられて荷重受板を介し上部冷却部をパワーモジュールの上面へ圧接可能な弾性部材とが設けられている。このような構成とすることで、パワーモジュールの下面側に当接配置された下部冷却部と、パワーモジュールの上面に当接配置された上部冷却部とによってパワーモジュールの両面を効率よく冷却することができる。
【0004】
このような半導体冷却構造を備える半導体装置を電力変換装置に組み込む場合には、半導体冷却構造を備える半導体装置を予めSub Assy部品として構成し、そのSub Assy部品を電力変換装置に組み込む構造とすることで、組立性の向上が図れる。上述した上部冷却部および下部冷却部はパワーモジュールに対する熱伝導性が要求され、一般的に熱伝導性に優れるアルミニウム材が用いられる。そのため、弾性部材の力による冷却部の変形や湾曲を抑制するための強度補助用の部材として、上述の荷重受板や、半導体冷却構造の底部に配置されるベース部材等を設ける場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-154752号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、半導体冷却構造の組付け時に、下部冷却部に対してベース部材が位置ずれすると、冷却部の変形に対する抑制効果が低下する。そのため、例えば、下部冷却部およびベース部材に位置合わせ用のピン孔を形成し、組立時に、位置決めピンを用いて強度補助部材と冷却部との位置合わせが行われる。
【0007】
しかしながら、半導体冷却構造を組付けた後に、Sub Assy化された半導体装置を位置決めピンから抜き取る際に、位置決めピンが冷却部のピン孔と強度補助部材のピン孔とに挟み込まれて、位置決めピンが設けられた治具から取り外し困難となるおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の態様による半導体装置は、少なくとも1つの半導体素子を含み、表裏面に冷却面を有する半導体モジュールと、前記半導体モジュールの一方の面に接して配置される第1冷却部材と、前記半導体モジュールの他方の面に接して配置される第2冷却部材と、前記第1冷却部材の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置されるベース部材と、前記第2冷却部材の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置され、前記第2冷却部材を前記半導体モジュールに押圧する押圧部材と、を備え、前記ベース部材には、位置決めピンが挿通可能な第1の位置決め孔が形成され、前記第1冷却部材には、前記位置決めピンが挿通可能な第2の位置決め孔が、前記第1の位置決め孔と対向する位置に形成され、前記第1および第2の位置決め孔の各々は、一方の孔開口から他方の孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状である。
本発明の態様による半導体装置の組立方法は、組立治具の載置面から突出する位置決めピンに前記第1の位置決め孔を挿通させるように、前記ベース部材を前記載置面に載置し、前記位置決めピンに前記第2の位置決め孔を挿通させるように、前記第1冷却部材を前記ベース部材の上に載置し、前記半導体モジュールを前記第1冷却部材の上に載置し、前記第2冷却部材を前記半導体モジュールの上に載置し、前記押圧部材を前記第2冷却部材の上に配置して前記第2冷却部材を前記半導体モジュールに押圧させ、前記ベース部材および前記第1冷却部材を前記載置面に対して傾いた状態にして、前記ベース部材、前記第1冷却部材、前記半導体モジュール、前記第2冷却部材および前記押圧部材を備える半導体装置を、前記組立治具から取り外す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、組立治具に設けられた位置決めピンで位置決めを行う構成の半導体装置において、半導体装置を組立治具から容易に取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、第1の実施形態の半導体装置の外観斜視図である。
図2図2は、半導体装置の平面図である。
図3図3は、半導体装置の分解斜視図である。
図4図4は、位置決め孔の配置の他の例を示す図である。
図5図5は、組立治具の平面図である。
図6図6は、半導体装置組立の第1の工程を示す図である。
図7図7は、半導体装置組立の第2の工程を示す図である。
図8図8は、半導体装置組立の第3の工程を示す図である。
図9図9は、図8の破線Bで囲まれた領域の拡大図である。
図10図10は、半導体装置の組立治具からの装着解除を説明する図である。
図11図11は、比較例を示す図である。
図12図12は、変形例1を説明する図である。
図13図13は、変形例1の他の構成を示す図である。
図14図14は、変形例2を説明する図である。
図15図15は、半導体装置を備える電力変換装置の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。以下の記載および図面は、本発明を説明するための例示であって、説明の明確化のため、適宜、省略および簡略化がなされている。また、以下の説明では、同一または類似の要素および処理には同一の符号を付し、重複説明を省略する場合がある。なお、以下に記載する内容はあくまでも本発明の実施の形態の一例を示すものであって、本発明は下記の実施の形態に限定されるものではなく、他の種々の形態でも実施する事が可能である。
【0012】
(第1の実施形態)
図1~3は、本実施の形態における半導体装置の一例を示す図である。図1は、半導体装置100の外観斜視図である。図2は、半導体装置100の平面図である。図3は、半導体装置100の分解斜視図である。なお、以下の説明では、図1に示すように、半導体装置100の長手方向をx軸の方向、短手方向をy軸の方向、部材積層方向をz軸の方向とする。半導体装置100は、一以上の半導体モジュール130と、半導体モジュール130を冷却するための冷却ユニットとを備えている。
【0013】
図1に示す半導体装置100では、3つの半導体モジュール130がx方向に沿って配置されている。半導体モジュール130の内部にはパワー半導体素子が内包されている。半導体モジュール130の表裏両面には、パワー半導体素子で生じる熱を放熱するための放熱面が設けられている。図2に示すように、各半導体モジュール130からは、外部接続端子131,132,133および制御端子134,135がy方向に引き出されている。
【0014】
冷却ユニットは、ベース部材110、下部冷却部材120、上部冷却部材140および押圧部材150を備えている。下部冷却部材120および上部冷却部材140は半導体モジュール130を冷却するための部材であり、x方向に配列された3つの半導体モジュール130の表裏両面(z方向の両面)に接触するように配置されている。下部冷却部材120および上部冷却部材140はアルミ材等の伝熱性に優れた部材で構成され、内部を冷媒が流通する。下部冷却部材120の裏面(パワーモジュール対向面とは反対側の面)側には、下部冷却部材120を支持するベース部材110が接するように配置されている。ベース部材110の上面には、支柱111が複数設けられている。図1,2に示す例では、支柱111は、ベース部材110のx方向両側に4個ずつ、合計で8個設けられている。
【0015】
上部冷却部材140の上面(パワーモジュール対向面とは反対側の面)側には、上部冷却部材140を半導体モジュール130に押圧するための押圧部材150が設けられている。押圧部材150には、例えば、バネ板が用いられる。押圧部材150に設けられた複数の固定部151を各々ボルト152により支柱111に固定すると、押圧部材150が弾性変形する。弾性変形による押圧部材150の弾性力によって、上部冷却部材140が導体モジュール130に押圧される。その結果、積層された下部冷却部材120、複数の半導体モジュール130および上部冷却部材140が、ベース部材110と押圧部材150との間に挟持されるように保持される。下部冷却部材120を支持するベース部材110はSUS等の強度の高い部材で形成され、半導体装置100の全体の強度を補強する役割を担っている。
【0016】
図3に示すように、下部冷却部材120のx方向両端には、上部冷却部材140と接続するための接続部121,122が設けられている。接続部121を上部冷却部材140の上部冷却部材入口141に接続し、接続部122を上部冷却部材140の上部冷却部材出口142に接続することで、下部冷却部材120と上部冷却部材140とが接続される。なお、接続部121,122には水密のためのシール部材が設けられるが、図3では図示を省略した。下部冷却部材120の裏面側には、接続部121と対向する位置に冷媒入口が形成され、接続部122と対向する位置に冷媒出口が形成されている。図3の矢印R1のように冷媒入口から流入した冷媒は、矢印R2~R5で示すように下部冷却部材120および上部冷却部材140を流通し、下部冷却部材120の裏面側に設けられた冷媒出口から矢印R6のように流出する。
【0017】
図2,3に示すように、下部冷却部材120のx方向両端には、フランジ部125がそれぞれ設けられている。各フランジ部125のy方向両端には、固定用孔124がそれぞれ形成されている。また、各フランジ部125のy方向マイナス側の固定用孔124に隣接して、位置決め孔123a,123bが形成されている。また、ベース部材110には、フランジ部125の位置決め孔123a,123bと対向する位置に位置決め孔113a,113bが形成され、フランジ部125の固定用孔124と対向する位置に固定用孔114が形成されている。固定用孔114,124は半導体装置100を固定するための孔であって、例えば、半導体装置100を電力変換装置の筐体内に固定する際に利用される。
【0018】
位置決め孔113a,113bおよび位置決め孔123a,123bは、ベース部材110と下部冷却部材120との位置決めをするための位置決めピンが挿通される貫通孔である。半導体装置100の長手方向(x方向)に離間した2か所に設けることによって、ベース部材110と下部冷却部材120との並進位置ずれおよび回転位置ずれを防止している。位置ずれ防止には、位置決め孔113a,113bと位置決め孔123a,123bとの間隔は大きいほど良い。そのため、ベース部材110および下部冷却部材120の長手方向両端付近に設けるのが好ましく、さらには、図4に示すように対角線上に配置するのがより好ましい。なお、位置決め孔113a,113bおよび位置決め孔123a,123bの孔断面形状の詳細については、後述する。
【0019】
図5~8は、半導体装置100の組立手順を説明する図である。半導体装置100を組み立てる際には、ベース部材110と下部冷却部材120との位置決めするための組立治具を用いる。図5は組立治具の一例を示す図であり、組立治具30をz軸プラス側から見た平面図である。組立治具30の載置面301には、載置面301から上方(z軸プラス方向)に突出する一対の位置決めピン300a,300bが、x方向に沿って所定間隔で設けられている。一対の位置決めピン300a,300bのx方向の間隔は、位置決め孔123a,123bのx方向の間隔と同一に設定されている。
【0020】
図6は、半導体装置組立の第1の工程を示す図である。図6は、図5の位置決めピン300aを通ってx軸に垂直な断面であるA-A断面を示したものである。第1の工程では、ベース部材110を組立治具30の載置面301の上に載置する。その際、ベース部材110は、ベース部材110の位置決め孔113aに組立治具30の位置決めピン300aが挿通され、かつ、位置決め孔113bに位置決めピン300bが挿通されるように、載置面301の上に位置決めされる。なお、位置決め孔113bに関しては図示を省略した。
【0021】
次いで、図7に示すように、ベース部材110の上に下部冷却部材120を載置し、その下部冷却部材120の上に導体モジュール130を載置する。下部冷却部材120を載置する際にも、下部冷却部材120に形成された位置決め孔123aに組立治具30の位置決めピン300aが挿通され、位置決め孔123bに位置決めピン300bが挿通されるように載置する。これにより、一対の位置決めピン300a,300bによるベース部材110と下部冷却部材120との位置決めが行われる。
【0022】
その後、図8に示すように、導体モジュール130の上に上部冷却部材140を載置し、さらに、上部冷却部材140の上に押圧部材150を載置する。そして、ボルト152を用いて、押圧部材150の各固定部151をベース部材110に設けられた支柱111にそれぞれ固定する。押圧部材150を支柱111に固定すると押圧部材150が弾性変形し、その弾性力により上部冷却部材140が導体モジュール130に押圧される。このようにして、半導体装置100の組み立てが完了する。
【0023】
図9は、図8の破線Bで囲まれた領域の拡大図、すなわち、位置決めピン300aが挿通された位置決め孔113a,123aの部分の拡大図である。各位置決め孔113a,123aは、一方の孔開口から他方の孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状とされている。ベース部材110に形成された位置決め孔113aは、図示上側の開口径が図示下側の開口径よりも大きく設定されている。位置決め孔113aは、隣接する下部冷却部材120の側に位置する孔開口に近づくほど孔径が大きくなる拡径形状である。
【0024】
拡径形状の孔において、径の小さな孔開口から径の大きな孔開口へ向かう方向を拡径方向と定義すれば、位置決め孔113aの拡径方向は下部冷却部材120の方向を向いている。一方、下部冷却部材120のフランジ部125に形成された位置決め孔123aは、隣接するベース部材110の側に位置する孔開口に近づくほど孔径が大きくなる拡径形状であり、拡径方向がベース部材110の方向を向いている。図示は省略したが、位置決め孔113bの拡径方向は位置決め孔113aの拡径方向と同じであり、位置決め孔123bの拡径方向は位置決め孔123aの拡径方向と同じである。以下では、位置決め孔113a,123aを例に、その機能について説明する。
【0025】
位置決め孔113a,113b,123a,123bの開口径については、径が小さいほうの開口径が、位置決めピン300a,300bとの間に適切なクリアランスが形成されるように設定されている。例えば、位置決め孔113aの軸心と位置決め孔123aの軸心とが一致していれば、上下に重なった位置決め孔113a,123aと位置決めピン300aとの間には、適切なクリアランスが形成される。そのため、積層状態のベース部材110および下部冷却部材120を位置決めピン300aの延在方向(載置面301に対して垂直な方向)に引き抜くことで、半導体装置100を組立治具30から容易に取り外すことができる。
【0026】
一方、図9に示す例では、ベース部材110と下部冷却部材120とはy方向に位置ずれしており、位置決め孔113aおよび位置決め孔123aの軸心が一致していない。そして、位置決めピン300aは、位置決め孔113aの下側の左縁部と位置決め孔123aの上側の右縁部とに挟まれた状態になっている。なお、図示は省略するが、位置決め孔113b,123bと位置決めピン300bとの関係も同様になっている。
【0027】
しかしながら、本実施の形態では、図示下側の位置決め孔113aの拡径方向が上側を向いており、図示上側の位置決め孔123aの拡径方向が下側を向いている。そのため、図10に示すように、ベース部材110および下部冷却部材120を図示右回りに回転させるように傾けることで、位置決め孔113aの下側の左縁部と位置決めピン300aとの間(符号C1で示す部分)および位置決め孔123aの上側の右縁部と位置決めピン300aとの間(符号C2で示す部分)にクリアランスが生じる。なお、ベース部材110と下部冷却部材120との位置ずれ方向が図10の場合と逆方向であった場合には、傾ける方向も逆方向になる。そして、傾けた状態のままベース部材110および下部冷却部材120を位置決めピン300の延在方向(矢印直線の方向)に引き抜くことで、半導体装置100を組立治具30から容易に外すことが可能となる。
【0028】
図11は比較例を示す図である。図11では、ベース部材110および下部冷却部材120に形成された位置決め孔113,123は一般的な平行な孔形状をしており、一方の孔開口から他方の孔開口まで同一孔径になっている。このような位置決め孔113,123の場合、位置決めピン300aが位置決め孔113,123の側面で挟まれた状態となった場合、図10のようにベース部材110および下部冷却部材120を傾けて外すことができない。そのため、図11に示すような状態にならないように位置決め作業を行う必要があり、半導体装置100の組立作業の効率が低下するという問題があった。一方、本実施の形態では、図10のように傾けることで半導体装置100を組立治具30から容易に取り外すことができるので、位置決め作業の効率化を図ることができる。
【0029】
(変形例1)
図12,13は、上述した実施の形態の変形例1を示す図である。上述した図9に示す例では、ベース部材110の位置決め孔113aは拡径方向が図示上側で、下部冷却部材120の位置決め孔123aは拡径方向が図示下側になっている。すなわち、図9の構成では、ベース部材110および下部冷却部材120の径の小さな方の孔開口同士が遠ざかるように、拡径方向が互いに逆向きになっている。
【0030】
一方、変形例1では、ベース部材110の位置決め孔113aの拡径方向と下部冷却部材120の位置決め孔123aの拡径方向とが、同じ向きに設定されている。図12に示す例では、位置決め孔113a,123aの拡径方向は図示下側を向いており、図13に示す例では拡径方向は図示上側を向いている。このように拡径方向が同じ向きになっている場合でも、上述した図9の構成の場合と同様に、組立治具30の載置面301に対してベース部材110および下部冷却部材120を傾けることで、位置決め孔113a,123aと位置決めピン300aとの間にクリアランスが生じ、半導体装置100を治具から容易に取り外すことが可能となる。
【0031】
ここで、図9に示す場合の、縁部が位置決めピン300aと接している2つの孔開口(小径の方の孔開口)のz方向(位置決めピン300aの延在方向)の距離をL1とする。同様に、図12,13の場合の、縁部が位置決めピン300aと接している2つの孔開口のz方向の距離をそれぞれL2,L3とする。L1とL2,L3の大きさを比較すると、L1の方が大きい。そのため、位置決めピン300aに対して同程度のクリアランスを生じさせるためには、図12,13の構成の場合には図9の構成の場合よりもベース部材110および下部冷却部材120を大きく傾ける必要がある。
【0032】
(変形例2)
図14は、変形例2を説明する図である。図14は、ベース部材110に形成された位置決め孔113a,113bの孔開口の形状および寸法を示す図である。位置決め孔113a,113bはx方向に沿って配置されている。いずれの位置決め孔113a,113bも孔径が小さい方の孔開口を示している。
【0033】
位置決め孔113aについては一般的な位置決め孔と同様に円形とし、孔径をL4とする。他方の位置決め孔113bについては長円の孔とし、長円の孔の幅をL4、長さをL5とする。孔径が大きい方の孔開口に関しては、円形の場合は同一形状で直径がより大きく、孔軸線に沿った断面形状はテーパ形状になっている。長円の場合も孔周面はテーパ形状であって、孔径が大きい方の孔開口の長さおよび幅は、孔径が小さい方よりも大きくなっている。なお、下部冷却部材120に形成される位置決め孔123a,123bについても、対向する位置決め孔113a,113bの場合と同様に設定になっている。
【0034】
このように、2カ所で位置決めをする場合、一方の位置決め孔113bを図14に示すような長円の孔とすることで、2本の位置決めピン300a,300bを同時に位置決め孔113a,123aおよび位置決め孔113b、123bに挿通させ易くなり、作業性の向上を図ることができる。なお、図14に示した例では、加工のし易さから位置決め孔113bの開口形状を長円としたが、x方向に沿った長径の長さをL5とし短径の長さをL4とする楕円であっても良い。
【0035】
さらに、長円の向きである長さ方向および楕円の長径の方向については、図14に示すようにベース部材110および下部冷却部材120の長手方向(x方向)と同一とするのが好ましい。このように、長円の長さ方向および楕円の長径の方向をベース部材110および下部冷却部材120の長手方向と一致させることで、一致させない場合に比べて、並進位置ずれおよび回転位置ずれの防止効果をより向上させることができる。
【0036】
図15は、半導体装置100を備える電力変換装置の概略構成を示す図である。図15は、電力変換装置200の筐体201の上蓋を外した状態を示す。電力変換装置200には、上述した半導体装置100の他に、電磁ノイズを低減するためのEMC(Electromagnetic Compatibility)モジュール202、平滑コンデンサ203および交流端子204や、半導体装置100を制御する制御回路等が実装された不図示の回路基板等を備えている。電力変換装置200に入力された直流電流は平滑コンデンサ203を介して半導体装置100に入力される。半導体装置100は、入力された直流電流を交流電流に変換する。半導体装置100により変換された交流電流は交流端子204から外部に出力される。
【0037】
以上説明した本発明の実施の形態および変形例によれば、以下の作用効果を奏する。
【0038】
(C1)図1~3,9等によれば、半導体装置100は、少なくとも1つの半導体素子を含み、表裏面に冷却面を有する半導体モジュール130と、半導体モジュール130の一方の面に接して配置される第1冷却部材である下部冷却部材120と、半導体モジュール130の他方の面に接して配置される第2冷却部材である上部冷却部材140と、下部冷却部材120の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置されるベース部材110と、上部冷却部材140の半導体モジュール対向面とは反対側の面に接して配置され、上部冷却部材140を前記半導体モジュール130に押圧する押圧部材150と、を備え、ベース部材110には、位置決めピン300a,300bが挿通可能な第1の位置決め孔113a,113bが形成され、下部冷却部材120には、位置決めピン300a,300bが挿通可能な第2の位置決め孔123a,123bが、位置決め孔113a,113bと対向する位置に形成され、位置決め孔113a,113bおよび位置決め孔123a,123bの各々は、一方の孔開口から他方の孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状である。
【0039】
そのため、図9に示すように、位置決めピン300aが、位置決め孔113aの下側の左縁部と、位置決め孔123aの上側の右縁部とに挟まれた状態になっている場合であっても、図10に示すように、ベース部材110および下部冷却部材120を載置面301に対して傾けることで、半導体装置100を組立治具30から容易に取り外すことが可能となる。半導体装置100の組立作業が効率的となり、半導体装置100のコスト低減につながる。
【0040】
(C2)上記(C1)において、図9等によれば、ベース部材110に形成された位置決め孔113a,113bは、隣接する下部冷却部材120の側に位置する孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状であり、下部冷却部材120に形成された位置決め孔123a,123bは、隣接するベース部材110の側に位置する孔開口に近づくほど孔径が大きい拡径形状である。そのため、上記(C1)の場合と同様に、ベース部材110および下部冷却部材120を載置面301に対して傾けることで、半導体装置100を組立治具30から容易に取り外すことが可能となる。
【0041】
(C3)上記(C1)において、図12,13等によれば、拡径形状の孔において、径の小さな孔開口から径の大きな孔開口へ向かう方向を拡径方向と定義したときに、ベース部材110に形成された位置決め孔113a,113bの拡径方向と、下部冷却部材120に形成された位置決め孔123a,123bの拡径方向とが同じ方向である。例えば、図12に示す例では、拡径方向がいずれも下側に向いている。そのため、ベース部材110および下部冷却部材120を載置面301に対して傾けることで、半導体装置100を組立治具30から容易に取り外すことが可能となる。
【0042】
(C4)上記(C1)において、図2,4等によれば、位置決め孔113a,113bは、ベース部材110の長手方向両端に、または、長手方向の両端であって対角位置にそれぞれ配置されており、位置決め孔123a,123bは、下部冷却部材120の長手方向両端に、または、長手方向の両端であって対角位置にそれぞれ配置されている。このように、位置決め孔113a,123aをベース部材110および下部冷却部材120の長手方向の一端に配置し、位置決め孔113b,123bをベース部材110および下部冷却部材120の長手方向の他端に配置することで、ベース部材110と下部冷却部材120との並進位置ずれおよび回転位置ずれを防止することができる。
【0043】
(C5)上記(C4)において、図14等によれば、位置決め孔113a,113bの内、一方の位置決め孔113aは孔開口形状が円形であって、他方の位置決め孔113bの孔開口形状は長円であり、位置決め孔123a,123bの内、位置決め孔123aの孔開口形状は、それに対向する位置決め孔113aの孔開口形状と同一形状であり、位置決め孔123bの孔開口形状は、それに対向する位置決め孔113bの孔開口形状と同一形状である。なお、長円に代えて楕円としても良い。このように他方の位置決め孔113b,123bの孔開口形状を長円または楕円とすることで、2本の位置決めピン300a,300bを同時に位置決め孔113a,123aおよび位置決め孔113b、123bに挿通させ易くなり、作業性の向上を図ることができる。
【0044】
(C6)上記(C5)において、図14等によれば、長円の長さ方向および楕円の長径の方向は、ベース部材110および下部冷却部材120の長手方向と同じ方向である。このように、長円の長さ方向および楕円の長径の方向をベース部材110および下部冷却部材120の長手方向と同じ方向とすることで、同じ方向でない場合に比べて、並進位置ずれおよび回転位置ずれの防止効果をより向上させることができる。
【0045】
(C7)図15によれば、電力変換装置200は、上記(C1)の半導体装置100を備え、半導体装置100により電力変換を行う。上記(C1)に記載のように半導体装置100のコスト低減が可能なので、電力変換装置200のコスト低減に結び付く。
【0046】
(C8)図6~8,10等によれば、上記(C1)の半導体装置100の組立方法であって、組立治具30の載置面301から突出する位置決めピン300a,300bに位置決め孔113a,113bを挿通させるように、ベース部材110を載置面301に載置し、位置決めピン300a,300bに位置決め孔123a,123bを挿通させるように、下部冷却部材120をベース部材110の上に載置し、半導体モジュール130を下部冷却部材120の上に載置し、上部冷却部材140を半導体モジュール130の上に載置し、押圧部材150を上部冷却部材140の上に配置して上部冷却部材140を半導体モジュール130に押圧させ、ベース部材110および下部冷却部材120を載置面301に対して傾いた状態にして、ベース部材110、下部冷却部材120、半導体モジュール130、上部冷却部材140および押圧部材150を備える半導体装置100を、組立治具30から取り外す。このような組立方法により、半導体装置100の組み立てから組立治具からの取り外しまでを効率よく行うことができる。
【0047】
以上説明した各実施形態や各種変形例はあくまで一例であり、発明の特徴が損なわれない限り、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。また、上記では種々の実施形態や変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0048】
30…組立治具、100…半導体装置、110…ベース部材、113,113a,113b,123,123a,123b…位置決め孔、120…下部冷却部材、125…フランジ部、130…半導体モジュール、140…上部冷却部材、150…押圧部材、200…電力変換装置、300a,300b…位置決めピン、301…載置面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12
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図15