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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074646
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】インキつぼ
(51)【国際特許分類】
   B41F 31/02 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
B41F31/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185940
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】594041427
【氏名又は名称】寿原株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】津田 鎮説
【テーマコード(参考)】
2C250
【Fターム(参考)】
2C250DB03
(57)【要約】
【課題】インキ溜めに貯留するインキの色を変更する際の作業効率を向上できるインキつぼを提供する。
【解決手段】インキつぼ13は、つぼローラ14と、つぼローラ14の軸方向に離れて内面15a同士が対向する一対の側壁部15と、つぼローラ14に近い側である前端側の方がつぼローラ14から遠い側である後端側よりも鉛直下方となる前下がり勾配の姿勢で一対の側壁部15の間に位置する底壁部17と、を備え、つぼローラ14の外周面14aと側壁部15の各内面15aと底壁部17の上面17aとで、インキ38を貯留可能にしたインキ溜め39が囲んで形成される。インキつぼ13は、側壁部15が装着される装着部16をさらに備える。側壁部15は、合成樹脂によって構成され、且つ装着部16に対して着脱自在に装着されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
つぼローラと、前記つぼローラの軸方向に離れて内面同士が対向する一対の側壁部と、前記つぼローラに近い側である前端側の方が前記つぼローラから遠い側である後端側よりも鉛直下方となる前下がり勾配の姿勢で一対の前記側壁部の間に位置する底壁部と、を備え、前記つぼローラの外周面と前記側壁部の各内面と前記底壁部の上面とで、インキを貯留可能にしたインキ溜めが囲んで形成されるインキつぼであって、
前記側壁部が装着される装着部を備え、
前記側壁部は、合成樹脂によって構成され、且つ前記装着部に対して着脱自在に装着されていることを特徴とするインキつぼ。
【請求項2】
前記装着部は、前記側壁部を前記つぼローラの外周面に押し付ける付勢部を備えていることを特徴とする請求項1に記載のインキつぼ。
【請求項3】
前記装着部は、前記側壁部が装着された際に、前記側壁部を下側から支持する下側支持部と、前記側壁部を上側から支持する上側支持部とを備えていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインキつぼ。
【請求項4】
前記側壁部は、可撓性を有していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインキつぼ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット印刷機等の印刷機において印刷用のインキを供給するインキつぼに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のインキつぼとして、例えば特許文献1に示すものが知られている。こうしたインキつぼは、外周面が鋼鉄製のつぼローラと、つぼローラの軸方向で対向する一対の側壁部と、当該両側壁部間でつぼローラが位置する側に前下がり勾配をなす底壁部とを備えている。そして、つぼローラの外周面と一対の側壁部の各内側面と両側壁部間に位置する底壁部の上面とで印刷用のインキを貯留可能としたインキ溜めを囲んで形成している。
【0003】
インキ溜めにインキを貯留すると、当該インキが側壁部の各内面に付着する。しかし、底壁部の上面は、例えば樹脂フィルムで覆うことで、インキが直接付着しない。そして、インキ溜めに貯留するインキの色を変更する場合には、インキ溜めに貯留した変更前の古いインキを完全に除去する必要がある。この際、樹脂フィルムを新しいものに交換すれば、大半の古いインキは除去されるが、側壁部の各内面に付着した古いインキまでは除去されない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-37693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このため、側壁部の各内面に付着した古いインキは、洗浄剤などを用いて完全に除去する必要がある。しかし、側壁部は、通常、金属製であってボルトなどによって高い位置精度で固定されているため、容易に取り外すことができない。この結果、側壁部の各内面に付着した古いインキの除去作業に手間がかかり、ひいてはインキ溜めに貯留したインキの交換作業に手間がかかるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するためのインキつぼの各態様を記載する。
[態様1]つぼローラと、前記つぼローラの軸方向に離れて内面同士が対向する一対の側壁部と、前記つぼローラに近い側である前端側の方が前記つぼローラから遠い側である後端側よりも鉛直下方となる前下がり勾配の姿勢で一対の前記側壁部の間に位置する底壁部と、を備え、前記つぼローラの外周面と前記側壁部の各内面と前記底壁部の上面とで、前記インキを貯留可能にしたインキ溜めが囲んで形成されるインキつぼであって、前記側壁部が装着される装着部を備え、前記側壁部は、合成樹脂によって構成され、且つ前記装着部に対して着脱自在に装着されていることを特徴とするインキつぼ。
【0007】
通常、インキ溜めにインキを貯留すると、当該インキは側壁部の各内面に付着する。そして、インキ溜めに貯留するインキの色を変更する場合には、インキ溜めに貯留した変更前の古いインキを完全に除去する必要がある。この際、側壁部の各内面に付着した古いインキも洗浄剤などを用いて完全に除去する必要があるため、インキ溜めに貯留するインキの交換作業に手間がかかってしまう。
【0008】
この点、上記構成によれば、側壁部が金属に比べて軽い合成樹脂によって構成されている上に、側壁部が装着部に対して着脱自在に装着されている。このため、側壁部を容易に交換することができる。したがって、インキ溜めに貯留するインキの色を変更する場合には、側壁部を新しいものと丸ごと交換することで、側壁部の洗浄作業が不要となる。よって、インキ溜めに貯留するインキの色を変更する際の作業効率を向上できる。
【0009】
[態様2]前記装着部は、前記側壁部を前記つぼローラの外周面に押し付ける付勢部を備えていることを特徴とする[態様1]に記載のインキつぼ。
上記構成によれば、付勢部によって側壁部がつぼローラの外周面に押し付けられるので、側壁部とつぼローラの外周面との間に隙間ができることを抑制できる。したがって、インキ溜めに貯留したインキが側壁部とつぼローラの外周面との間から漏れ出すことを抑制できる。
【0010】
[態様3]前記装着部は、前記側壁部が装着された際に、前記側壁部を下側から支持する下側支持部と、前記側壁部を上側から支持する上側支持部とを備えていることを特徴とする[態様1]または[態様2]に記載のインキつぼ。
【0011】
上記構成によれば、装着部に装着された側壁部は、上側支持部及び下側支持部によって上下方向において挟んで支持される。このため、装着部に対する側壁部の装着状態を安定させることができる。
【0012】
[態様4]
前記側壁部は、可撓性を有していることを特徴とする[態様1]~[態様3]のうちいずれか一つに記載のインキつぼ。
【0013】
上記構成によれば、側壁部の弾性変形が可能となるので、側壁部の装着部に対する着脱作業を容易に行うことができる。すなわち、側壁部の交換作業を容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、インキ溜めに貯留するインキの色を変更する際の作業効率を向上できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態におけるインキつぼの斜視図である。
図2図1のインキつぼの一部を破断した断面図である。
図3図1のインキつぼにおける側壁部付近を拡大した斜視図である。
図4図3を反対側から見たときの状態を示す斜視図である。
図5図3において側壁部を省略したときの状態を示す斜視図である。
図6図1の要部を拡大した断面図である。
図7】下側支持部の分解斜視図である。
図8】押圧部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、インキつぼの一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、オフセット印刷機等の印刷機は、水平な方向に延びる支持軸11に基端部が回動自在に支持されたダイカスト製の基台12と、基台12の上面側に位置して印刷用の版(図示略)にインキ38を供給するインキつぼ13とを備えている。
【0017】
<基台12>
基台12は、図2に示す稼働位置と図2において支持軸11を回動中心として先端側が反時計回り方向に例えば30°程度回動した退避位置との間で変位可能とされた略ブロック状の部材である。基台12は、稼働位置に位置したときに、その上面がインキつぼ13の一部を構成する。
【0018】
なお、以下において方向の説明をするときは、各図において矢印で示す方向を基準にして説明するものとする。
<インキつぼ13>
図1及び図2に示すように、インキつぼ13は、つぼローラ14と、一対の側壁部15と、一対の装着部16と、底壁部17と、を備えている。
【0019】
<つぼローラ14>
図1及び図2に示すように、つぼローラ14は、支持軸11と平行に左右方向に延びている。つぼローラ14は、その外周面14aが円筒面形状をなす回転体である。つぼローラ14は、印刷機における左右両フレーム(図示略)の間に回転自在な態様で架設されている。つぼローラ14は、例えば表面の摺動性が比較的高いローラによって構成することが好ましい。
【0020】
<側壁部15>
図1図3に示すように、左右一対の側壁部15は、つぼローラ14の軸方向に離れて配置されるとともに内面15a同士が対向している。一対の側壁部15は、つぼローラ14の外周面14aの一部をつぼローラ14の軸方向と直交する方向から嵌合可能とする断面視円弧状の摺動凹部15bが前側の外縁部分にそれぞれ形成された略三角板状をなす部材である。一対の側壁部15は、つぼローラ14の軸方向である左右方向において、つぼローラ14の長さよりも若干短い間隔だけ離れて内面15a同士が対向している。
【0021】
各側壁部15は、その下面15cが水平になる姿勢にしたときに、後方に向かうほど上下方向の幅が狭くなるように、上面15dが傾斜している。上面15dの後端部には、突部15eが設けられている。各側壁部15は、可撓性を有した合成樹脂によって構成されている。本例において、各側壁部15は、可撓性を有した発泡樹脂によって構成されている。
【0022】
<装着部16>
図1図2及び図6に示すように、左右一対の装着部16は、基台12上に取り付けられている。一対の装着部16には、一対の側壁部15がそれぞれ着脱自在に装着される。一対の装着部16は互いに左右対称の構造になっているため、ここでは左側の装着部16の構成についてのみ説明し、右側の装着部16の構成の説明は省略する。装着部16は、側壁部15が装着された際に、側壁部15を下側から支持する下側支持部18と、側壁部15を上側及び左側から支持する上側支持部19とを備えている。
【0023】
図5図7に示すように、下側支持部18は、前後方向に延びるとともに略四角柱状をなす本体部20と、付勢部21と、付勢部21を本体部20の前端部に回動可能に連結するピン22とを備えている。本体部20における前端部及び後端部には、それぞれ段付穴23が上下方向に貫通して形成されている。基台12における本体部20の各段付穴23と対応する位置には、第1ねじ孔24が形成されている。
【0024】
そして、各段付穴23にキャップボルト25を挿通した状態で第1ねじ孔24に螺入することにより、本体部20が基台12に固定される。この場合、キャップボルト25の上端は、本体部20の上面20aよりも若干低い位置にある。本体部20における2つの段付穴23の間の位置には、前後方向に間隔を置いて並ぶ一対の第2ねじ孔26が左右方向に貫通して形成されている。
【0025】
本体部20の前面における左右方向の中央部には、前方に向かって突出する矩形板状の突出部27が設けられている。突出部27は、厚さ方向が左右方向となるように配置されている。突出部27の中央部には、ピン22を嵌合可能とした嵌合孔27aが左右方向に貫通して形成されている。
【0026】
図7及び図8に示すように、付勢部21は、コイルばね28と、コイルばね28を収容する略直方体状の押圧部29とを備えている。押圧部29の後面における左右方向の中央部には、本体部20の突出部27が挿入される挿入溝30が上下方向に延びるように形成されている。押圧部29における挿入溝30の左右両側には、ピン22を挿通可能とした挿通孔31が対をなすように貫通して形成されている。一対の挿通孔31は、押圧部29における上下方向の中央部に位置している。
【0027】
本体部20の突出部27を押圧部29の挿入溝30に挿入した状態では、嵌合孔27aと一対の挿通孔31とが左右方向において直線状に並ぶようになっている。押圧部29の後面の下端部における左右方向の中央部には、コイルばね28を収容可能とした前後方向に延びる円形の挿入凹部32が形成されている。挿入凹部32は、一対の挿通孔31よりも下側に位置している。挿入凹部32の底面32aは、挿入溝30の底面30aよりも前方に位置している。挿入凹部32の径は、挿入溝30の左右方向の幅よりも若干大きくなっている。
【0028】
そして、図5図7に示すように、挿入凹部32にコイルばね28を収容するとともに突出部27を挿入溝30に挿入した状態で、ピン22を嵌合孔27aに嵌合させるとともに一対の挿通孔31に挿通する。これにより、付勢部21が本体部20の前端部にピン22を介して回動可能に連結される。このとき、コイルばね28は、突出部27の前面27bと挿入凹部32の底面32aとで圧縮されて弾性変形する。
【0029】
図5図8に示すように、押圧部29の上面における前部には、矩形板状の隆起部33が設けられている。隆起部33は、押圧部29の上面において他の部位よりも厚さ分だけ高くなった部位である。隆起部33の上面は、後方に向かうほど高さが高くなるように傾斜している。押圧部29は、その上面において側壁部15の前端部を下側から支持する。
【0030】
そして、図6に示すように、基台12が稼働位置に位置したときには、付勢部21が、コイルばね28の付勢力(弾力)により、押圧部29の上面において側壁部15の下端部をつぼローラ14の外周面14aに押し付ける。このとき、側壁部15の下端と隆起部33の上端(後端)とが重なるので、隆起部33の上端が側壁部15の下端をつぼローラ14の外周面14aに対してより強く押し付ける。
【0031】
図4図6に示すように、上側支持部19は、板金部材によって構成されている。上側支持部19は、側壁部15をその内面15aとは反対側の面である外面15fを覆う外面カバー部34と、側壁部15の上部を覆う上部カバー部35とを備えている。外面カバー部34は、側壁部15を外面15f側から支持する。上部カバー部35は、側壁部15の上部を上側から支持する。
【0032】
外面カバー部34は、前後方向の長さが側壁部15の外面15fよりも若干短くなっている。外面カバー部34の前部には、側壁部15の摺動凹部15bに沿って延びる断面視円弧状の湾曲部34aが形成されている。湾曲部34aは、摺動凹部15bの径方向の外側に位置している。外面カバー部34の下端部における本体部20の一対の第2ねじ孔26と対応する位置には、一対の貫通孔(図示略)が形成されている。
【0033】
これら一対の貫通孔(図示略)に一対のボルト36を挿通した状態で一対の第2ねじ孔26にそれぞれ螺入することにより、下側支持部18の本体部20に上側支持部19の外面カバー部34が固定される。外面カバー部34における側壁部15側の面には、湾曲部34aに沿って延びる円弧板状の凸部37が形成されている。
【0034】
上部カバー部35は、外面カバー部34の上端部に一体形成されている。上部カバー部35は、断面視略U字状をなしている。上部カバー部35は、側壁部15の上面15dに沿って延びている。上部カバー部35は、側壁部15の上部における突部15eよりも摺動凹部15b側の部分の大半を覆っている。上部カバー部35は、側壁部15の上部を左右両側及び上側から覆うように、側壁部15の上部と嵌合する。
【0035】
上部カバー部35は、側壁部15の左右方向及び上方への移動を阻害する。この場合、凸部37によって側壁部15の一部が上部カバー部35の左右方向における内側の壁に押し付けられるため、側壁部15の左右方向のがたつきが抑制される。側壁部15の前方への移動は、上部カバー部35の後端と側壁部15の突部15eとの接触により制限される。
【0036】
<底壁部17>
図1及び図2に示すように、底壁部17は、つぼローラ14に近い側である前端側の方がつぼローラ14から遠い側である後端側よりも鉛直下方となる前下がり勾配の姿勢で一対の側壁部15の間に位置する。底壁部17は、基台12における平面状をなす矩形状の板金部材によって構成されている。
【0037】
そして、つぼローラ14の外周面14aと両側壁部15の各内面15aと底壁部17の上面17aとで、粘性を有する印刷用のインキ38を貯留可能にしたインキ溜め39が囲んで形成されている。インキ溜め39内の底部において、つぼローラ14の外周面14aと底壁部17の前端縁との間には、つぼローラ14の回転に伴い、上流側のインキ溜め39から印刷用の版が位置する下流側に向けてインキ38を供給するためのインキ供給口40が形成されている。
【0038】
基台12の上部における底壁部17の前側には、つぼローラ14の軸方向(左右方向)に沿って並ぶように複数のブレード41が配置されている。すなわち、複数のブレード41は、底壁部17の前端縁に沿って一定の間隔を置いて並んで配置されている。各ブレード41は、底壁部17の上面17aと直交し、且つ、つぼローラ14の外周面14aに対して近づく又は離れる方向において、位置が調整可能に構成されている。
【0039】
そして、常には、つぼローラ14の外周面14aと各ブレード41の上端部との間に微小な隙間42が形成されるように、各ブレード41の上下方向の位置が調整される。隙間42は、つぼローラ14の回転に伴い上流側のインキ溜め39内からインキ供給口40を介して下流側に供給されるインキ38の通過を許容する。
【0040】
隙間42の間隔は、ブレード41が、つぼローラ14の外周面14aに近づく又は離れる方向である上下方向において移動することにより調整される。こうしたブレード41の位置調整を通じて、つぼローラ14の回転時にインキ38が通過する微小な隙間42の間隔が調整される。これにより、つぼローラ14の回転に伴いインキ溜め39内から排出されてつぼローラ14の外周面14aに付着するインキ38の膜の厚さが微調整される。
【0041】
図1図2及び図5に示すように、底壁部17の上面17aは、樹脂フィルム等によって構成された矩形状のシート部材43によって覆われている。すなわち、シート部材43は、その前後方向で前端寄りとなる一部が、つぼローラ14の外周面14aと各ブレード41の上端部との間に挟持された状態で、インキ溜め39の底面となる底壁部17の上面17aを覆うように、着脱自在に配置されている。
【0042】
シート部材43の前端部は、各ブレード41よりも前方側に突出している。シート部材43の左右両端縁は、下側支持部18の左右方向の中心に位置するとともに当該中心に沿って前後方向に延びている。
【0043】
<インキつぼ13の作用>
図2及び図6に示すように、インキつぼ13によって下流側にインキ38を供給する場合には、まず、基台12を稼働位置に変位させる。これにより、一対の側壁部15の摺動凹部15bがつぼローラ14の外周面14aに対して摺動可能に嵌合する。このとき、つぼローラ14の外周面14aとの間に隙間が形成されやすい側壁部15の摺動凹部15bの下端部は、付勢部21の付勢力により、つぼローラ14の外周面14aに対して押し付けられる。これにより、側壁部15の摺動凹部15bの下端部がつぼローラ14の外周面14aに対して密着する。
【0044】
続いて、インキ溜め39内にインキ38を供給すると、インキ溜め39内にインキ38が貯留された状態になる。このとき、側壁部15の摺動凹部15bは、つぼローラ14の外周面14aに対して密着するが、特につぼローラ14の外周面14aとの間に隙間が形成されやすい下端部においても付勢部21の付勢力により密着する。このため、側壁部15の摺動凹部15bとつぼローラ14の外周面14aとの間からインキ溜め39内のインキ38が外部へ漏れ出すことが抑制される。
【0045】
続いて、つぼローラ14が回転されると、インキ溜め39内のインキ38がインキ供給口40及び隙間42を介して下流側に供給される。これにより、印刷機において印刷対象物の印刷が行われる。そして、例えばインキ溜め39内のインキ38を使い切った後、別の色のインキ38に変更する場合には、インキ溜め39内に残留する古いインキ38を完全に除去する必要がある。
【0046】
インキ溜め39内に残留する古いインキ38を除去する場合には、まず、つぼローラ14を停止するとともに、基台12を退避位置に変位させる。このとき、シート部材43の上面及び各側壁部15の内面15aには、古いインキ38が付着している。続いて、各側壁部15を弾性変形させながら装着部16から取り外した後、シート部材43を底壁部17の上面17aから取り外す。これにより、古いインキ38がシート部材43及び各側壁部15と一緒に完全に除去される。
【0047】
続いて、新しいシート部材43を底壁部17の上面17aを覆うように取り付けた後、各装着部16に新しい側壁部15を弾性変形させながら取り付ける。続いて、基台12を稼働位置に変位させた後、インキ溜め39内に新しい別の色のインキ38を供給する。
【0048】
このように、インキ溜め39内に貯留するインキ38の色を変更する場合には、古いインキ38が付着した側壁部15を新しいものと丸ごと交換することで、側壁部15から古いインキ38を除去するための洗浄作業が不要となる。よって、インキ溜め39に貯留するインキ38の色を変更する際の作業効率が向上する。
【0049】
<実施形態の効果>
以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
(1)インキつぼ13は、側壁部15が装着される装着部16を備えている。側壁部15は、合成樹脂によって構成され、且つ装着部16に対して着脱自在に装着されている。
【0050】
通常、インキ溜め39にインキ38を貯留すると、当該インキ38は側壁部15の各内面15aに付着する。そして、インキ溜め39に貯留するインキ38の色を変更する場合には、インキ溜め39に貯留した変更前の古いインキ38を完全に除去する必要がある。この際、側壁部15の各内面15aに付着した古いインキ38も洗浄剤などを用いて完全に除去する必要があるため、インキ溜め39に貯留するインキ38の交換作業に手間がかかってしまう。
【0051】
この点、上記構成によれば、側壁部15が金属に比べて軽い合成樹脂によって構成されている上に、側壁部15が装着部16に対して着脱自在に装着されている。このため、側壁部15を容易に交換することができる。したがって、インキ溜め39に貯留するインキ38の色を変更する場合には、側壁部15を新しいものと丸ごと交換することで、側壁部15の洗浄作業が不要となる。よって、インキ溜め39に貯留するインキ38の色を変更する際の作業効率を向上できる。
【0052】
(2)インキつぼ13において、装着部16は、側壁部15をつぼローラ14の外周面14aに押し付ける付勢部21を備えている。
上記構成によれば、付勢部21によって側壁部15の摺動凹部15bがつぼローラ14の外周面14aに押し付けられるので、側壁部15の摺動凹部15bとつぼローラ14の外周面14aとの間に隙間ができることを抑制できる。したがって、インキ溜め39に貯留したインキ38が側壁部15の摺動凹部15bとつぼローラ14の外周面14aとの間から漏れ出すことを抑制できる。
【0053】
(3)インキつぼ13において、装着部16は、側壁部15が装着された際に、側壁部15を下側から支持する下側支持部18と、側壁部15を上側から支持する上側支持部19とを備えている。
【0054】
上記構成によれば、装着部16に装着された側壁部15は、上側支持部19及び下側支持部18によって上下方向において挟んで支持される。このため、装着部16に対する側壁部15の装着状態を安定させることができる。
【0055】
(4)インキつぼ13において、側壁部15は、可撓性を有している。
上記構成によれば、側壁部15の弾性変形が可能となるので、側壁部15の装着部16に対する着脱作業を容易に行うことができる。すなわち、側壁部15の交換作業を容易に行うことができる。
【0056】
<変更例>
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0057】
・側壁部15は、必ずしも可撓性を有している必要はない。すなわち、側壁部15は、例えば硬質の合成樹脂によって構成してもよい。
・装着部16は、必ずしも下側支持部18及び上側支持部19を備える必要はない。すなわち、装着部16は、例えば側壁部15を突き刺すことを可能にした針によって構成してもよい。このようにすれば、針に側壁部15を突き刺したり針から側壁部15を引き抜いたりすることで、針(装着部16)に対して側壁部15を容易に着脱することができる。
【0058】
・付勢部21は、省略してもよい。
・付勢部21を構成するコイルばね28は、板ばねに変更してもよい。
【符号の説明】
【0059】
11…支持軸
12…基台
13…インキつぼ
14…つぼローラ
14a…外周面
15…側壁部
15a…内面
15b…摺動凹部
15c…下面
15d…上面
15e…突部
15f…外面
16…装着部
17…底壁部
17a…上面
18…下側支持部
19…上側支持部
20…本体部
20a…上面
21…付勢部
22…ピン
23…段付穴
24…第1ねじ孔
25…キャップボルト
26…第2ねじ孔
27…突出部
27a…嵌合孔
27b…前面
28…コイルばね
29…押圧部
30…挿入溝
30a…底面
31…挿通孔
32…挿入凹部
32a…底面
33…隆起部
34…外面カバー部
34a…湾曲部
35…上部カバー部
36…ボルト
37…凸部
38…インキ
39…インキ溜め
40…インキ供給口
41…ブレード
42…隙間
43…シート部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8