(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074650
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】リニアモータ、位置決め装置、処理装置、デバイス製造方法
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20240524BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
H02K41/03 A
H05K7/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185947
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【弁理士】
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 達矢
(72)【発明者】
【氏名】篠平 大輔
(72)【発明者】
【氏名】和田 康太郎
【テーマコード(参考)】
5E322
5H641
【Fターム(参考)】
5E322DA04
5E322FA01
5H641BB06
5H641BB16
5H641GG02
5H641GG04
5H641GG10
5H641HH03
5H641JA02
5H641JA09
5H641JB05
(57)【要約】
【課題】コアが設けられるコイル列を効果的に冷却できるリニアモータ等を提供する。
【解決手段】リニアモータは、移動方向に沿って配列される複数のコイル41を備え、流される電流に応じて動力を発生させるコイル列4と、複数のコイル41が巻かれる複数のコア部31と、コイル列4の少なくとも一方の端面側において複数のコア部31を連結するコア連結部32と、を備えるコア部材3と、コイル列4を冷却する冷媒を流す冷却部6と、を備える。冷却部6は、コイル列4の少なくとも一方の端面側において、移動方向に垂直な幅方向の両側に設けられる第1側方空間61および第2側方空間62と、コア連結部32に穿設されて第1側方空間61および第2側方空間62を連通する連通路63と、に冷媒を流す。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向に沿って配列される複数のコイルを備え、流される電流に応じて動力を発生させるコイル列と、
前記複数のコイルが巻かれる複数のコア部と、前記コイル列の少なくとも一方の端面側において前記複数のコア部を連結するコア連結部と、を備えるコア部材と、
前記コイル列を冷却する冷媒を流す冷却部と、
を備え、
前記冷却部は、前記コイル列の少なくとも一方の端面側において、前記移動方向に垂直な幅方向の両側に設けられる第1側方空間および第2側方空間と、前記コア連結部に穿設されて前記第1側方空間および前記第2側方空間を連通する連通路と、に前記冷媒を流す、
リニアモータ。
【請求項2】
前記コア連結部の幅は前記コイル列の幅より小さく、
前記第1側方空間および前記第2側方空間は、前記コイル列の少なくとも一方の端面側において、前記コア連結部が存在しない当該コイル列の前記幅方向の両側の空間である、
請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項3】
前記連通路は複数穿設される、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項4】
前記第1側方空間および前記第2側方空間の少なくともいずれかを前記移動方向に隔てる隔壁を備え、
前記隔壁の前記移動方向の両側に、それぞれ少なくとも一つの前記連通路が穿設される、
請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項5】
前記複数の連通路は、前記冷媒の上流側における第1径の第1連通路と、前記第1連通路より下流側における前記第1径より小さい第2径の第2連通路と、を備える、請求項3に記載のリニアモータ。
【請求項6】
前記連通路は前記幅方向に穿設される、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項7】
前記連通路は、前記移動方向において前記複数のコア部の間に穿設される、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項8】
前記冷媒は絶縁性を有する、請求項1に記載のリニアモータ。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかに記載のリニアモータを動力源とする位置決め装置。
【請求項10】
請求項9に記載の位置決め装置によって被処理物を位置決めする処理装置。
【請求項11】
請求項10に記載の処理装置による前記被処理物の処理を通じてデバイスを製造するデバイス製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リニアモータ等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1および特許文献2には、流される電流に応じて動力を発生させるコイル列を備えるリニアモータが開示されている。これらの特許文献では、コイル列の全体が冷媒に浸漬することで冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-6050号公報
【特許文献2】特開2006-121813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および特許文献2に開示されているリニアモータは、コイル列を構成するコイルが巻かれるコア(磁性材料の芯)が設けられない、いわゆるコアレスリニアモータである。一方、コアが設けられるリニアモータでは、コイルの内側および少なくとも一方の端面にコアが存在するため、冷媒が行き渡らない。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、コアが設けられるコイル列を効果的に冷却できるリニアモータ等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のリニアモータは、移動方向に沿って配列される複数のコイルを備え、流される電流に応じて動力を発生させるコイル列と、複数のコイルが巻かれる複数のコア部と、コイル列の少なくとも一方の端面側において複数のコア部を連結するコア連結部と、を備えるコア部材と、コイル列を冷却する冷媒を流す冷却部と、を備える。冷却部は、コイル列の少なくとも一方の端面側において、移動方向に垂直な幅方向の両側に設けられる第1側方空間および第2側方空間と、コア連結部に穿設されて第1側方空間および第2側方空間を連通する連通路と、に冷媒を流す。
【0007】
この態様では、コイル列の幅方向の両側に設けられる第1側方空間および第2側方空間と、コア連結部に穿設されて当該第1側方空間および当該第2側方空間を連通する連通路を流れる冷媒によって、コイル列が効果的に冷却される。
【0008】
本発明の別の態様は、位置決め装置である。この装置は、上記のリニアモータを動力源とする。
【0009】
本発明の更に別の態様は、処理装置である。この装置は、上記の位置決め装置によって被処理物を位置決めする。
【0010】
本発明の更に別の態様は、デバイス製造方法である。この方法は、上記の処理装置による被処理物の処理を通じてデバイスを製造する。
【0011】
なお、以上の構成要素の任意の組合せや、これらの表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラム等に変換したものも、本発明に包含される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コアが設けられるコイル列を効果的に冷却できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態(以下では実施形態ともいう)について詳細に説明する。説明および/または図面においては、同一または同等の構成要素、部材、処理等に同一の符号を付して重複する説明を省略する。図示される各部の縮尺や形状は、説明の簡易化のために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。実施形態は例示であり、本発明の範囲を何ら限定するものではない。実施形態に記載される全ての特徴やそれらの組合せは、必ずしも本発明の本質的なものであるとは限らない。
【0015】
図1は、本発明に係るリニアモータを適用可能な位置決め装置または駆動装置としてのステージ装置100を模式的に示す平面図である。ステージ装置100は、半導体ウエハ等の被処理物を載置する被駆動体としてのテーブルをX軸方向(
図1における左右方向)およびY軸方向(
図1における上下方向)に位置決めするXYステージである。ステージ装置100は、Y軸方向に延びてテーブルをY軸方向に駆動する一対のYステージ120と、X軸方向に延びてテーブルをX軸方向に駆動する、当該テーブルと一体化されたXステージ130と、定盤140を備える。一対のYステージ120は、Xステージ130のX軸方向の両端に、スライダ124を介して連結されている。Yステージ120およびXステージ130は上面視でH型をなす。
【0016】
ステージ装置100の構成のうち、少なくともテーブル、Yステージ120、Xステージ130は、内部が真空状態に保たれた真空チャンバに収容されてもよい。本明細書において「真空」とは、通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を表す。真空は圧力領域によって、低真空(100 kPa~100 Pa)、中真空(100 Pa~0.1 Pa)、高真空(0.1 Pa~10-5 Pa)、超高真空(10-5 Pa~10-8 Pa)、極高真空(10-8 Pa以下)等のように区分される。本実施形態のステージ装置100は、以上のいずれの区分の真空環境で使用してもよい。また、本実施形態のステージ装置100は、以上のいずれの区分にも該当しない非真空環境で使用してもよい。
【0017】
Xステージ130およびYステージ120には、後述するリニアモータ2Xおよび2Yがそれぞれ設けられる。各リニアモータ2X、2Yが発生させるX軸方向またはY軸方向の直線動力は、被駆動体としてのテーブルをX軸方向またはY軸方向に直線駆動する。X軸方向の直線駆動を担うリニアモータ2Xは、固定子およびX軸方向の軌道を構成する電機子2と、当該電機子2に沿ってX軸方向に移動可能な可動子20を備える。この可動子20には被駆動体としてのテーブルが固定されて、一体的に移動する。Y軸方向の直線駆動を担う一対のリニアモータ2Yは、固定子およびY軸方向の軌道を構成する電機子2と、当該電機子2に沿ってY軸方向に移動可能な可動子20を備える。この可動子20にはスライダ124が固定されて、一体的に移動する。ここで、一対のスライダ124がリニアモータ2Xの電機子2の両端に連結されているため、一対のリニアモータ2Yは、リニアモータ2Xの電機子2を一対のスライダ124ごとY軸方向に直線駆動する。そして、リニアモータ2Xの電機子2(軌道)上にはテーブルがあるため、一対のリニアモータ2Yは、テーブルをY軸方向に直線駆動することになる。
【0018】
以上のように真空環境下および非真空環境下を問わず高精度な位置決めまたは駆動を実現できる本実施形態のステージ装置100(リニアモータを動力源とする位置決め装置)は、例えば、露光装置、イオン注入装置、熱処理装置、アッシング装置、スパッタリング装置、ダイシング装置、検査装置、洗浄装置等の半導体製造装置やFPD(Flat Panel Display)製造装置等のデバイス製造装置において、非処理物としての半導体ウエハ等を載置するテーブルを被駆動体として位置決めまたは駆動する用途に好適である。なお、本実施形態のステージ装置100を適用可能な処理装置は、当該ステージ装置100または位置決め装置によって任意の被処理物を処理のために位置決めする任意の装置でよく、例えば、任意の製造装置、任意の加工装置(例えば、工作機械)、任意の検査装置でよい。
【0019】
図2は、Xステージ130およびYステージ120にそれぞれ設けられるリニアモータ2X、2Yの電機子を示す斜視図である。
図3は、
図2の電機子を示す平面図または上面図である。リニアモータは、永久磁石または電磁石によって構成される不図示の界磁と、複数のコイル41およびコア部材3によって構成される電機子2を備える。電機子2は長尺の略矩形板状であり、その長手方向(
図3における左右方向)に沿ってコイル列4が形成されている。コイル列4は、電機子2の長手方向に沿って略隙間なく略等間隔に配列された複数のコイル41を備える。
図2および
図3の例ではコイル列4が18個のコイル41を備えるため、当該コイル列4に三相交流が印加される場合は18個のコイル41が6組の三相コイルに区分される。
【0020】
コイル41の配列方向(電機子2の長手方向)の各端部には、電機子2の剛性を高めるためのブロック状のエンドリブ42、43が設けられる。電機子2の長手方向の一端部の第1エンドリブ42には、コイル列4を冷却する冷媒を供給する冷媒供給口421が設けられる。また、電機子2の長手方向の他端部の第2エンドリブ43には、コイル列4を冷却する冷媒を排出する冷媒排出口431が設けられる。後述するように、冷媒供給口421から供給された冷媒は、電機子2の長手方向の一端側(
図3における右側)から他端側(
図3における左側)に向かって流れながらコイル列4を冷却し、冷媒排出口431から排出される。このため、冷媒供給口421が設けられる電機子2の長手方向の一端側は(冷媒の)上流側とも表され、冷媒排出口431が設けられる電機子2の長手方向の他端側は(冷媒の)下流側とも表される。
【0021】
コア部材3は、コイル列4を構成する複数(
図2の例では18個)のコイル41が巻かれる複数(
図2の例では18個)のコア部31と、コイル列4の少なくとも一方の端面側(
図2の例では上面側)において複数のコア部31を連結するコア連結部32を備える。コア連結部32は長尺の略矩形板状であり、その下面から複数の足状のコア部31が複数のコイル41の内側に延びて挿入される。コア部材3(特に、複数のコア部31)は、コイル列4と共に電機子2または電磁石を構成する磁性部材である。
【0022】
コア部材3は任意の磁性材料によって構成されうるが、例えば、
図2の例では積層された電磁鋼板によってコア部材3が構成される。
図2において模式的に示されるように、電磁鋼板は渦電流損を低減するためにコイル41の配列方向(電機子2の長手方向)に垂直な幅方向(
図3における上下方向)に積層される。なお、後述するように電磁鋼板としてのコア部材3(コア連結部32)には冷媒が流される。そこで、積層された電磁鋼板の間から冷媒が漏れることを防止するために、コア部材3の表面に接着材等によるコーティングや粉体塗装等を施してもよい。コア部材3およびコイル列4は、各コア部31が各コイル41の内側に挿入された状態で、エポキシ樹脂等の絶縁性を有する樹脂材料5によってモールドされる。
【0023】
コイル列4の他方の端面(
図2の例では下面)に対向する永久磁石または電磁石を備える不図示の界磁および/またはコイル列4自体には、三相交流等の駆動電流が流された当該コイル列4が発生させる磁界による直線動力が及ぼされる。この直線動力の方向(すなわち移動方向)はコイル列4の配列方向(すなわち電機子2の長手方向)と略同じであり、当該方向に界磁および電機子2が相対的に直線移動する。界磁および電機子2は、いずれを可動子または固定子としてもよい。すなわち、界磁を可動子として電機子2を固定子としてもよいし、界磁を固定子として電機子2を可動子としてもよいし、界磁および電機子2を共に可動子としてもよい。
【0024】
電機子2には、コイル列4を冷却する冷媒を流す冷却部6が設けられる。冷却部6は、コイル列4の少なくとも一方の端面側(
図2の例では上面側)において、移動方向(
図3における左右方向)に垂直な幅方向(
図3における上下方向)の両側に設けられる第1側方空間61および第2側方空間62と、コア連結部32に穿設されて第1側方空間61および第2側方空間62を連通する連通路63に冷媒を流す。
【0025】
第1側方空間61および第2側方空間62は、コイル列4の少なくとも一方の端面側(
図2の例では上面側)において、コア連結部32が存在しない当該コイル列4の幅方向の両側の空間である。
図3に示されるように、コア連結部32の幅がコイル列4の幅より小さいため、コア連結部32の幅方向の両側(
図3における上側および下側)において、コイル列4を構成する各コイル41の両端部(
図3における上端部および下端部)が突出している。このように各コイル41の両端部が略露出している第1側方空間61および第2側方空間62に冷媒を流すことで、当該各コイル41の両端部が効果的に冷却される。なお、前述のように、各コイル41は絶縁性を有する樹脂材料5によってモールドされているため、第1側方空間61および第2側方空間62内の冷媒と各コイル41の間の絶縁性を確保できる。このため冷媒は水等の導電性を有するものでもよいが、より絶縁性を高めるためには絶縁性を有する冷媒を利用するのが好ましい。更に、コイル列4およびコア部材3によって構成される電磁石の作用を妨げないように、磁性を有しない非磁性の冷媒が利用されるのが好ましい。
【0026】
第1側方空間61および第2側方空間62内の冷媒は、コア連結部32に穿設された孔状または溝状の複数の連通路63を介して相互に流通する。各連通路63を流れる冷媒が、各コイル41および各コア部31によって構成される電磁石の作用を妨げないように、各連通路63は上面視(
図3)において各コイル41の内側および/または各コア部31と重ならないように穿設されるのが好ましい。具体的には、上面視において各コイル41の導線が存在する各コア部31の間の移動方向領域に各連通路63が穿設されるのが好ましい。各連通路63の方向は、第1側方空間61および第2側方空間62を最短距離で結ぶという観点と、上面視において各コイル41の内側および/または各コア部31と重ならないようにするという観点から、幅方向(
図3における上下方向)とするのが好ましい。また、前述のように、コア部材3は積層された電磁鋼板等によって構成されるが、その積層方向である幅方向であれば容易に孔(連通路63)を穿設できる。
【0027】
なお、上面視において各コイル41の内側および/または各コア部31と重ならない限り、各連通路63は
図3に示されるような直線状に限らず曲線状でもよい(例えば、各コア部31の間の領域を蛇行しながら第1側方空間61および第2側方空間62を連通する)。また、連通路63を流れる冷媒や、連通路63を穿設することに伴うコア部材3(コア連結部32)の欠損が、電磁石の作用に及ぼす影響を無視できる場合は、連通路63が各コイル41等の配置によらず任意の形状および/または方向でコア連結部32に穿設されてもよい。
【0028】
連通路63は、複数穿設されるのが好ましい。図示の例では、18個のコイル41および/またはコア部31に対して、9本の連通路63が移動方向(
図3における左右方向)に沿って等間隔に配置される。図示の例における各連通路63の移動方向の間隔は二つのコイル41の移動方向の長さに等しい(つまり、コイル「二つ置き」に連通路が配置される)。なお、各連通路63の移動方向の間隔は任意であり、例えば、一つのコイル41の移動方向の長さに等しくてもよい。この場合、連通路63は全てのコイル41の間に設けられる(コイル41が18個ある図示の例では、17本の連通路63が設けられる)。
【0029】
第1側方空間61は、一または複数の第1隔壁64Aによって移動方向に隔てられる(分断される)。図示の例では、第1側方空間61が、一つの第1隔壁64Aによって、上流側の第1上流側空間61Aと下流側の第1下流側空間61Bの二つのサブ空間に区分される。第1隔壁64Aの移動方向の両側の第1上流側空間61Aおよび第1下流側空間61Bには、それぞれ少なくとも一つの連通路63が穿設(開口)されている。同様に、第2側方空間62は、一または複数の第2隔壁65Aによって移動方向に隔てられる(分断される)。図示の例では、第2側方空間62が、一つの第2隔壁65Aによって、上流側の第2上流側空間62Aと下流側の第2下流側空間62Bの二つのサブ空間に区分される。第2隔壁65Aの移動方向の両側の第2上流側空間62Aおよび第2下流側空間62Bには、それぞれ少なくとも一つの連通路63が穿設(開口)されている。第1隔壁64Aおよび第2隔壁65Aは、移動方向(
図3における左右方向)の異なる位置において、それぞれ第1側方空間61および第2側方空間62を隔てる。
【0030】
以上の結果、上面視(
図3)において、上流側(右側)から下流側(左側)に向かって、第1側方空間61および第2側方空間62の間を蛇行(往復)する冷媒の流れを形成できる。具体的には、
図3において、右下の冷媒供給口421から第1上流側空間61A内に供給された冷媒は、当該第1上流側空間61A内に開口する一または複数の連通路63を下から上に向かって流れて第2上流側空間62A内の上流側(移動方向において第1隔壁64Aより右側)に入り、当該第2上流側空間62A内の下流側(移動方向において第1隔壁64Aより左側)に開口する一または複数の連通路63を上から下に向かって流れて第1下流側空間61B内の上流側(移動方向において第2隔壁65Aより右側)に入り、当該第1下流側空間61B内の下流側(移動方向において第2隔壁65Aより左側)に開口する一または複数の連通路63を下から上に向かって流れて第2下流側空間62B内に入り、左上の冷媒排出口431から排出される。
【0031】
以上のように冷媒が流れる過程で、第1側方空間61および第2側方空間62を移動方向(
図3における左右方向)に流れる冷媒によってコイル列4の幅方向(
図3における上下方向)の両端部が冷却され、複数の連通路63を幅方向に流れる冷媒によってコイル列4の本体部または中間部が冷却される。このように、本実施形態によれば、冷却対象のコイル列4の各部を効率的に巡回する冷媒の流れによって、当該コイル列4を効果的に冷却できる。
【0032】
また、冷媒の流通路としての連通路63を、コア部材3(コア連結部32)における孔または溝として簡易的に形成できるため、例えば、コア部材3に銅管等の追加的な配管を設ける場合に比べてコストを低減できる。また、追加的な配管を設ける場合には、配管自体の厚さの分だけ流通路の径が小さくなってしまうが、このような制約がない本実施形態では、連通路63の径を大きくでき、より多くの冷媒を流してコイル列4をより効果的に冷却できる。
【0033】
以上のような冷媒の流れを効率的に形成するために、第1隔壁64Aおよび第2隔壁65Aは曲面状に形成されるのが好ましい。具体的には、上面視(
図3)において、第1隔壁64Aの上流側(右側)の曲面は、第1上流側空間61A内の冷媒を上方の連通路63および第2上流側空間62Aに向け、第1隔壁64Aの下流側(左側)の曲面は、上方の連通路63および第2上流側空間62Aからの冷媒の流れを下流側に向ける。同様に、第2隔壁65Aの上流側(右側)の曲面は、第2上流側空間62A内の冷媒を下方の連通路63および第1下流側空間61Bに向け、第2隔壁65Aの下流側(左側)の曲面は、下方の連通路63および第1下流側空間61Bからの冷媒の流れを下流側に向ける。
【0034】
図示の例では、これらの第1隔壁64Aおよび第2隔壁65Aに加えて、第1側方空間61(第1下流側空間61B)の下流端(左端)に設けられて、第1下流側空間61B内の冷媒を上方の連通路63および第2下流側空間62Bに向ける曲面を有する第1端部ブロック64Bと、第2側方空間62(第2上流側空間62A)の上流端(右端)に設けられて、下方の連通路63および第1上流側空間61Aからの冷媒の流れを下流側に向ける曲面を有する第2端部ブロック65Bが設けられる。
【0035】
以上の実施形態では、冷媒を連通路63に流す各サブ空間(具体的には、第1上流側空間61A、第2上流側空間62A、第1下流側空間61B)に、複数の連通路63が面している。このような場合、概ね上流側から下流側に向かって流れる冷媒は、各サブ空間に面する複数の連通路63のうち最も下流側(左側)にある連通路63に流入しやすい。このため、各サブ空間に面する複数の連通路63の間で冷媒の流通量や流通速度に差が生じうる。そこで、各サブ空間に面する複数の連通路63の径を、上流側ほど大きく(第1径)下流側ほど小さく(第2径)することで、連通路63間の冷媒の流通量や流通速度の差を低減してもよい。
【0036】
図4は、冷却部6の変形例を示す平面図または上面図である。この冷却部6は、
図2および
図3と同様に、第1側方空間61、第2側方空間62、複数の連通路63を備える。但し、
図2および
図3では複数の連通路63がコア連結部32の内部に幅方向に穿設された孔であったのに対し、
図4では複数の連通路63がコア連結部32の表面または上面に幅方向に穿設される溝である。このように、
図4におけるコア連結部32の表面側には、溝としての連通路63および後述する中央流通路66が形成されるが、コア連結部32の裏面側は略矩形板状に一体化されている。そして、
図2および
図3と同様に、略矩形板状のコア連結部32より裏面側には、複数のコイル41と、それらの内側に挿入される複数のコア部31(不図示)が設けられる。
【0037】
コア連結部32の表面における幅方向(
図4における上下方向)の中央には、上流側(
図4における右側)の冷媒供給口421から下流側(
図4における左側)に向かって移動方向(
図4における左右方向)の中央流通路66が直線状に穿設される。この中央流通路66は、幅方向に穿設される連通路63と直交する。冷媒供給口421から供給された冷媒の一部は、中央流通路66に沿って移動方向に流れ、その下流側の終端において幅方向の両側(
図4における上下側)に分かれる。また、冷媒供給口421から供給された冷媒の一部は、中央流通路66と交差する各連通路63を通じて幅方向の両側に分岐する。このように、幅方向の両側に分かれた冷媒は、それぞれ第1側方空間61および第2側方空間62に流入して下流側に向かって流れる。そして、第1側方空間61および第2側方空間62の各下流端に設けられる二つの冷媒排出口431から冷媒が排出される。
【0038】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。例示としての実施形態における各構成要素や各処理の組合せには様々な変形例が可能であり、そのような変形例が本発明の範囲に含まれることは当業者にとって自明である。
【0039】
なお、実施形態で説明した各装置や各方法の構成、作用、機能は、ハードウェア資源またはソフトウェア資源によって、あるいは、ハードウェア資源とソフトウェア資源の協働によって実現できる。ハードウェア資源としては、例えば、プロセッサ、ROM、RAM、各種の集積回路を利用できる。ソフトウェア資源としては、例えば、オペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【符号の説明】
【0040】
2 電機子、3 コア部材、4 コイル列、5 樹脂材料、6 冷却部、31 コア部、32 コア連結部、41 コイル、61 第1側方空間、61A 第1上流側空間、61B 第1下流側空間、62 第2側方空間、62A 第2上流側空間、62B 第2下流側空間、63 連通路、64A 第1隔壁、64B 第1端部ブロック、65A 第2隔壁、65B 第2端部ブロック、66 中央流通路、100 ステージ装置、120 Yステージ、130 Xステージ、421 冷媒供給口、431 冷媒排出口。