(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074654
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】排ガス浄化装置、排ガス浄化方法、排ガス浄化プログラム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/22 20060101AFI20240524BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20240524BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20240524BHJP
F02D 41/04 20060101ALI20240524BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240524BHJP
B01D 53/96 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F01N3/22 321B
F01N3/22 321N
F01N3/08 A
F01N3/22 321S
F01N3/24 B
F01N3/08 B
F02D41/04
B01D53/94 228
B01D53/94 ZAB
B01D53/94 222
B01D53/96 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185957
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮川 浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴置 哲典
(72)【発明者】
【氏名】本間 隆行
(72)【発明者】
【氏名】中谷 規之介
【テーマコード(参考)】
3G091
3G301
4D148
【Fターム(参考)】
3G091AA16
3G091AA19
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(57)【要約】
【課題】アンモニアを窒素と水に分解して吸着触媒を再生処理させるために必要な、酸素及び窒素酸化物を各々適正量供給することで、アンモニアと窒素酸化物の放出を防止する。
【解決手段】SCR触媒18の再生処理後のNOx、N
2Oの排出量の抑制を優先するために、空気過剰率λを、1<λ≦1.1の範囲に設定し、不足分の空気量(酸素濃度)を、ブロワ30の駆動による外気導入で補うことで、適正な空気量及び適正なNOx量を、SCR触媒18へ供給するようにした。すなわち、SCR触媒18において、アンモニアと窒素酸化物を化学反応で、窒素と水に分解することで、アンモニアと窒素酸化物の放出を防止するための手段として、SCR触媒18に空気(酸素)を強制投入するという従来技術から容易に想到し得ない構成とすることで、吸着触媒の反応に必要な、酸素量と、窒素酸化物量とを別々に制御できる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させたときの排ガスを浄化するための排ガス浄化装置であって、
燃焼後の前記排ガスが流通する排ガス路に設けられ、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒で構成された触媒装置と、
前記吸着触媒へ酸素を含む気体を供給する気体供給部と、
前記吸着触媒が活性状態と判断された場合に、前記気体供給部を制御して、前記気体を前記吸着触媒へ供給して、当該吸着触媒の再生処理を実行する制御部と、
を有する排ガス浄化装置。
【請求項2】
前記排ガス路における排ガスが流れる方向に対して、前記触媒装置の上流側に設けられ、前記排ガス路内を流れる前記排ガスの空気過剰率を検出する空気過剰率センサをさらに有し、
前記制御部が、前記空気過剰率センサで検出した前記空気過剰率に基づいて、前記燃料空気比をフィードバック制御する、請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項3】
前記制御部が、測定又は推定した前記吸着触媒の温度に基づいて、前記活性状態を判断し、予め定めた温度になった時点を前記再生処理の開始時期とする、請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記気体供給部から前記気体を供給する開始時に同期させて、空気過剰率を前記所定の空気過剰率よりも希薄として、前記排ガスの窒素酸化物量を、前記気体に含まれる酸素量に応じた所定量に調整する、請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項5】
前記希薄としたときの空気過剰率λrが、1<λ≦1.1の範囲で設定される、請求項4記載の排ガス浄化装置。
【請求項6】
前記排ガス路における排ガスの流れ方向に対して、前記吸着触媒の下流側に設けられ、前記排ガス路を流れる排ガスのNOxを検出するNOx濃度センサを備え、
前記制御部は、前記NOx濃度センサの出力値が予め定めた値を超えた場合に、前記吸着触媒の再生処理の終了時期と判断し、前記気体供給部による気体の供給を終了し、かつ、前記希薄とした空気過剰率を前記所定の空気過剰率に戻す、請求項4記載の排ガス浄化装置。
【請求項7】
前記吸着触媒が、選択還元能の強さに対して酸化能の強さが所定値を超える場合において、
前記制御部は、前記気体供給部から前記気体を供給し、前記空気過剰率は前記所定の空気過剰率を維持する、請求項1記載の排ガス浄化装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記再生処理の開始から所定時間が経過した時点、又は、前記排ガス路における排ガスの流れ方向に対して、前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxを検出するNOx濃度センサの出力値が予め定めた所定値以下となった場合に、前記吸着触媒の再生処理の終了時期と判断し、前記気体供給部による気体の供給を終了する、請求項7記載の排ガス浄化装置。
【請求項9】
アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させ、燃焼後の排ガスを排ガス路に案内して、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒を通過させることによって、排ガスを浄化するための排ガス浄化方法であって、
前記吸着触媒の活性状態と判断された場合に、当該吸着触媒に酸素を含む気体を供給すると共に、前記気体の供給開始時に同期させて、前記空気過剰率を希薄とする再生処理の実行を開始し、
前記排ガス路の前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxが所定値を超えた時点を前記再生処理の終了時期と判断し、前記空気過剰率を前記所定の空気過剰率に戻し、かつ、前記気体の供給を終了する、
排ガス浄化方法。
【請求項10】
アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させ、燃焼後の排ガスを排ガス路に案内して、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒を通過させることによって、排ガスを浄化するための排ガス浄化方法であって、
前記吸着触媒の活性状態と判断された場合に、当該吸着触媒に酸素を含む気体を供給する再生処理の実行を開始し、
当該再生処理の開始から所定時間が経過した場合、又は、前記排ガス路の前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxが所定値以下となった時点を前記再生処理の終了時期と判断し、前記気体の供給を終了する、
排ガス浄化方法。
【請求項11】
コンピュータを、
請求項1~請求項7の何れか1項記載の排ガス浄化装置の制御部として動作させる、排ガス浄化プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関において、触媒を利用した排ガス浄化装置、排ガス浄化方法、排ガス浄化プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒を利用して、エンジンなどの内燃機関の排ガスに含まれる一酸化窒素、二酸化窒素等の窒素酸化物(NOx)等の有害物質を浄化する技術が知られている。また、内燃機関として、アンモニアを燃料とするアンモニアエンジンが検討されている。アンモニアは炭素原子を含まないため、アンモニアエンジンでの燃焼により二酸化炭素が発生しないという利点がある。
【0003】
アンモニアが完全燃焼した場合、アンモニアは全て窒素と水に変換される。しかしながら、アンモニアエンジンにてアンモニアを実際に燃焼させた場合、不完全燃焼成分が存在し、例えば、未反応のアンモニア、窒素酸化物などを含む排ガスが排出される。そのため、触媒等を用いて排ガスに含まれる未反応のアンモニア、窒素酸化物などを浄化することが望まれる。
【0004】
特許文献1には、アンモニアの燃焼により駆動力を得る内燃機関の排ガス浄化装置として、内燃機関からの排ガスが流通する主流路に設けられた酸化作用及び還元作用を有する酸化還元触媒と、主流路に設けられた選択還元触媒と、選択還元触媒の温度を取得する温度取得部と、温度取得部により取得された選択還元触媒の温度が選択還元触媒の活性化温度を超えた場合に酸化還元触媒及び選択還元触媒の上流側における排ガスの混合比を量論から希薄へと変更させる制御部と、を備えることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、アンモニアの燃焼により駆動力を得る内燃機関の排ガス浄化装置として、内燃機関からの排ガスが流通する主流路に設けられた三元触媒機能及びアンモニア吸着機能を有する触媒と、触媒からのアンモニアの脱離と触媒の活性化温度との少なくとも一方に関連する情報に応じて触媒の上流側における排ガスの混合比を量論から希薄へと変更させる制御部と、を備えることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-167823号公報
【特許文献2】特開2019-167822号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2を含む従来技術では、吸着触媒の再生処理条件を満たすと判断された場合に、排ガスの混合比を量論(空気過剰率λ=1)から希薄(空気過剰率λ>1)に変更させることが示されているが、三元触媒機能を有する触媒に、アンモニアを含む排ガスを希薄状態で流通させると、窒素酸化物(NOx)や亜酸化窒素(N20)の生成が懸念される。
【0008】
また、例えば、特許文献1及び特許文献2において、希薄の程度については規定されていない。
【0009】
本発明は、アンモニアを窒素と水に分解して吸着触媒を再生処理させるために必要な、酸素及び窒素酸化物を各々適正量供給することができ、アンモニアと窒素酸化物の放出を防止することができる排ガス浄化装置、排ガス浄化方法、排ガス浄化プログラムを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る排ガス浄化装置は、アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させたときの排ガスを浄化するための排ガス浄化装置であって、燃焼後の前記排ガスが流通する排ガス路に設けられ、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒で構成された触媒装置と、前記吸着触媒へ酸素を含む気体を供給する気体供給部と、前記吸着触媒が活性状態と判断された場合に、前記気体供給部を制御して、前記気体を前記吸着触媒へ供給して、当該吸着触媒の再生処理を実行する制御部と、を有している。
【0011】
本発明によれば、アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させたときの排ガスを浄化するための触媒装置として、燃焼後の排ガスが流通する排ガス路に設けられ酸化還元機能を備えた酸化還元触媒と、アンモニア吸着機能を備えた吸着触媒とを備える。
【0012】
制御部では、吸着触媒が活性状態と判断された場合に、気体供給部を制御して、気体を吸着触媒へ供給して、当該吸着触媒の再生処理を実行する。
【0013】
これにより、アンモニアを窒素と水に分解して吸着触媒を再生処理させるために必要な、酸素及び窒素酸化物を各々適正量供給することができ、アンモニアと窒素酸化物の放出を防止することができる。
【0014】
本発明において、前記排ガス路における排ガスが流れる方向に対して、前記触媒装置の上流側に設けられ、前記排ガス路内を流れる前記排ガスの空気過剰率を検出する空気過剰率センサをさらに有し、前記制御部が、前記空気過剰率センサで検出した前記空気過剰率に基づいて、前記燃料空気比をフィードバック制御することを特徴としている。
【0015】
空気過剰率センサで検出した空気過剰率に基づいて、燃料空気比をフィードバック制御する。これにより、所望(例えば、量論、希薄等)の燃料空気比を維持することができる。
【0016】
本発明において、前記制御部が、測定又は推定した前記吸着触媒の温度に基づいて、前記活性状態を判断し、予め定めた温度になった時点を前記再生処理の開始時期とすることを特徴としている。
【0017】
吸着触媒の温度に基づいて、再生処理の開始時期とすることができる。
【0018】
本発明において、前記制御部は、前記気体供給部から前記気体を供給する開始時に同期させて、空気過剰率を前記所定の空気過剰率よりも希薄として、前記排ガスの窒素酸化物量を、前記気体に含まれる酸素量に応じた所定量に調整することを特徴としている。
【0019】
気体供給部から気体を供給して必要な酸素量を確保すると共に、空気過剰率を希薄として排ガスの窒素酸化物量を所定量に調整することで、吸着触媒の再生処理(吸着機能の復元)に必要な酸素量及び窒素酸化物量を確保することができる。
【0020】
本発明において、前記希薄としたときの空気過剰率λrが、1<λ≦1.1の範囲で設定されることを特徴としている。
【0021】
希薄としたときの空気過剰率λrを、1<λ≦1.1の範囲で設定することで、吸着触媒の再生処理に必要十分な窒素酸化物を得ることができる。
【0022】
本発明において、前記排ガス路における排ガスの流れ方向に対して、前記吸着触媒の下流側に設けられ、前記排ガス路を流れる排ガスのNOxを検出するNOx濃度センサを備え、前記制御部は、前記NOx濃度センサの出力値が予め定めた値を超えた場合に、前記吸着触媒の再生処理の終了時期と判断し、前記気体供給部による気体の供給を終了し、かつ、前記希薄とした空気過剰率を前記所定の空気過剰率に戻すことを特徴としている。
【0023】
NOxセンサにより、再生処理の終了時期を判断することができる。
【0024】
本発明において、前記吸着触媒が、選択還元能の強さに対して酸化能の強さが所定値を超える場合において、前記制御部は、前記気体供給部から前記気体を供給し、前記空気過剰率は所定の空気過剰率を維持することを特徴としている。
【0025】
気体供給部から気体を供給して必要な酸素量を確保するのみで、吸着触媒の再生処理(吸着機能の復元)に必要な酸素量及び窒素酸化物量を確保することができる。
【0026】
本発明において、前記制御部は、
前記再生処理の開始から所定時間が経過した時点、又は、前記排ガス路における排ガスの流れ方向に対して、前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxを検出するNOx濃度センサの出力値が予め定めた所定値以下となった場合に、前記吸着触媒の再生処理の終了時期と判断し、前記気体供給部による気体の供給を終了することを特徴としている。
【0027】
適正な再生処理の終了時期を判断することができる。
【0028】
本発明に係る排ガス浄化方法は、アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させ、燃焼後の排ガスを排ガス路に案内して、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒を通過させることによって、排ガスを浄化するための排ガス浄化方法であって、前記吸着触媒の活性状態と判断された場合に、当該吸着触媒に酸素を含む気体を供給すると共に、前記気体の供給開始時に同期させて、前記空気過剰率を希薄とする再生処理の実行を開始し、前記排ガス路の前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxが所定値を超えた時点を前記再生処理の終了時期と判断し、前記空気過剰率を前記所定の空気過剰率に戻し、かつ、前記気体の供給を終了する、ことを特徴としている。
【0029】
この排ガス浄化方法によれば、再生処理に必要な酸素及び窒素化合物を各々適正量供給することができる。
【0030】
本発明に係る排ガス浄化方法は、アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させ、燃焼後の排ガスを排ガス路に案内して、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒を通過させることによって、排ガスを浄化するための排ガス浄化方法であって、前記吸着触媒の活性状態と判断された場合に、当該吸着触媒に酸素を含む気体を供給する再生処理の実行を開始し、当該再生処理の開始から所定時間が経過した場合、又は、前記排ガス路の前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxが所定値以下となった時点を前記再生処理の終了時期と判断し、前記気体の供給を終了する、ことを特徴としている。
【0031】
この排ガス浄化方法によれば、吸着触媒が、選択還元能の強さに対して酸化能の強さが所定値を超える場合において、有効である。
【0032】
本発明に係る排ガス浄化プログラムは、コンピュータを、上記の排ガス浄化装置の制御装置として動作させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0033】
以上説明した如く本発明では、アンモニアを窒素と水に分解して吸着触媒を再生処理させるために必要な、酸素及び窒素酸化物を各々適正量供給することができ、アンモニアと窒素酸化物の放出を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】本実施の形態に係るエンジンシステムの概略構成図である。
【
図2】本実施の形態に係る内燃機関(アンモニアエンジン)における、過剰空気率-各種成分濃度特性図である。
【
図3】本実施の形態において、λの上限を設定するための根拠となる、三元触媒下流のN
2O濃度、及びNOxに対するO
2濃度比特性図である。
【
図4】本実施の形態に係る制御部で実行される、SCR触媒の再生処理中の排ガス浄化処理の流れを示す制御フローチャートである。
【
図5】本実施の形態に係るSCR触媒の再生処理中の排ガス浄化処理でのNOx削減量を比較例と比較する特性図である。
【
図6】変形例に係り、酸化能が強い吸着触媒を用いた場合における、再生処理中の排ガス浄化処理の流れを示す制御フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、本発明の一実施形態としてのエンジンシステム10の概略図である。
【0036】
エンジンシステム10は、内燃機関12を備える。内燃機関12は、アンモニアガスを燃焼させて駆動力を得るアンモニアエンジンである。なお、以降では、アンモニアガスを単に「アンモニア」と呼ぶ。
【0037】
エンジンシステム10は、内燃機関12からの排ガス中における有害物質、例えば、アンモニア(NH3)、窒素酸化物(NOx)等を浄化する排ガス浄化装置14を備える。
【0038】
内燃機関12は、制御部20により、スロットルで調整された流量の空気が供給されると共に、燃料供給弁で調整された量の燃料が供給される。なお、制御部20は、例えば、車両の電子制御ユニット(ECU「Electronic Control Unit」図示省略)により実装される。
【0039】
制御部20は、内燃機関12から排出される排ガス中の空気と燃料の質量比(混合比)を、過濃、量論、希薄の各状態へと制御する。混合比について、「Φ=理論空燃比/実際の混合気の空燃比」としたとき、過濃状態はΦ>1となる混合比を意味し、量論状態はΦ=1となる混合比を意味し、希薄状態はΦ<1となる混合比を意味する。
【0040】
ここで、Φは当量比であり、その逆数として、空気の過剰状態を表現する単位として空気過剰率λがある。例えば、空気過剰率λ>1は、希薄状態となる。
【0041】
なお、詳細は後述するが、本実施の形態では、内燃機関12で燃焼させる混合気の混合比よりも空気(酸素)を増量することを目的の1つとしているため、以下の説明において、空気過剰率λを用いて説明する。
【0042】
本実施の形態の排ガス浄化装置14は、酸化還元機能と、吸着機能とを利用して、排ガス中の有害物質を浄化する。以下の説明では、酸化還元機能を持つ触媒として、三元触媒16(Three-Way Catalyst)を例示し、吸着機能を持つ触媒としてSCR触媒18(Selective Catalytic Reduction catalyst)を例示する。
【0043】
なお、酸化還元機能を持つ触媒としては、酸化作用及び還元作用を有する触媒である限りにおいて、三元触媒16以外の触媒も利用できる。例えば、酸化還元触媒としては、セラミックスや酸化チタン等を担体として用い、白金、ロジウム、パラジウム等の貴金属を活性触媒成分として担持した触媒を利用できる。
【0044】
同様に、吸着機能を持つ触媒としては、アンモニアの吸着作用を有する触媒である限りにおいて、SCR触媒18以外の触媒も利用できる。例えば、吸着としては、セラミックスや酸化チタン等を担体として用い、ゼオライトを活性触媒成分として担持した触媒を利用できる。
【0045】
図1に示される如く、排ガス浄化装置14は、内燃機関12から延設される排ガス管22に、上流側から順に取り付けられた、三元触媒16及びSCR触媒18を主たる構成部としている。すなわち、内燃機関12からの排ガスは、排ガス管22内の流路を通って、三元触媒16と、SCR触媒18とを通過して外気に放出される。
【0046】
また、排ガス管22において、内燃機関12と三元触媒16との間には、排ガス管22の流路を流れる気体の空気過剰率λを検出する空気過剰率センサ24(以下、λセンサ24という)が設けられている。
【0047】
また、排ガス管22において、SCR触媒18の下流側には、排ガス管22の流路を流れる気体の温度を検出する温度検出部26及びNOx濃度を検出するNOx濃度センサ28を備える。
【0048】
λセンサ24、温度検出部26、NOx濃度センサ28で検出された各検出信号は、制御部20へ送出されるようになっている。
【0049】
なお、λセンサ24は、直接、空気過剰率λを検出するのではなく、制御部20による解析の結果として空気過剰率λを取得可能な情報を検出するセンサであってもよい。
【0050】
制御部20は、取得した各検出値を用いて、内燃機関12の混合比を切り替えることによって、三元触媒16及びSCR触媒18の上流側における排ガスの混合比を調整する。
【0051】
(排ガス浄化装置14の各部の詳細)
λセンサ24は、三元触媒16より上流側における、内燃機関12からの排出ガスの酸素(O2)濃度(すなわち混合比)を取得する。
【0052】
制御部20では、λセンサ24からの検出信号に基づいて、所定の空気過剰率としての目標のλ(例えば、λ=1)となるように燃料噴射量が制御されるようになっている。
【0053】
三元触媒16は、排ガス管22の流路において最上流側、換言すればSCR触媒18よりも上流側に配置されている。三元触媒16は、排ガス中のアンモニア、窒素酸化物(NOx)、水素(H2)を浄化することができるものの、混合比が量論近傍の所定範囲から外れた場合には、これらの浄化性能が低下するという特性を持つ。
【0054】
SCR触媒18は、主流路において最下流側、換言すれば三元触媒16よりも下流側に配置されている。SCR触媒18は、アンモニアを還元剤として、排ガス中の窒素酸化物(NOx)を浄化することができる。
【0055】
温度検出部26は、SCR触媒18の出口近傍における温度を測定するセンサである。制御部20は、温度検出部26の検出値からSCR触媒18の温度Tcを推定する。温度検出部26は、SCR触媒18の入口近傍における温度を測定するセンサであってもよく、この場合においても、制御部20は、温度検出部26の検出値からSCR触媒18の温度Tcを推定する。なお、温度検出部26によりSCR触媒18の触媒内の温度(所謂、床温)を直接測定し、測定値をSCR触媒18の温度Tcとしてもよい。
【0056】
NOx濃度センサ28は、SCR触媒18の出入口近傍における、排ガス管22の流路を流れる気体の中のNOx濃度を検出するセンサである。
【0057】
(SCR触媒18の再生処理)
ところで、本実施の形態の内燃機関12である、アンモニアエンジンの始動は予め決められたスロットル開度、燃料噴射期間で行われる。排ガス中には、水蒸気、窒素の他、未燃のアンモニア、水素、窒素酸化物など不完全燃焼分、有害排ガス成分が含まれるが、高温の燃焼ガスにより三元触媒16が加熱され活性温度を超えた後は、排ガスが所定の空気過剰率(たとえば、λ=1)になるように制御することで、アンモニアや窒素酸化物などの有害排ガス成分は完全に浄化される。
【0058】
言い換えれば、三元触媒が活性温度に達する前では、未浄化のアンモニアや窒素酸化物がSCR触媒18に流入することになる。
【0059】
このうち、アンモニアは、SCR触媒18に吸着されるため、環境に排出されることがない。
【0060】
ところが、SCR触媒18が脱離温度に達すると、冷間時(離脱温度以下のとき)に吸着されたアンモニアが放出される場合があるため、内燃機関12(アンモニアエンジン)の始動に続いて、SCR触媒18に吸着されたアンモニアを無害化する必要がある。
【0061】
SCR触媒18では、以下の(1)式~(3)式に示すCSR反応、及び、(4)式の酸化反応により、アンモニアは、窒素酸化物と酸素(空気)との化学反応で、窒素と水に変換され、アンモニアの無害化を図ることができる。なお、吸着したアンモニアが上記化学反応で消費されると、SCR触媒18は、吸着可能量が元に戻る(SCR触媒18の再生処理)。
【0062】
【0063】
ここで、比較例(例えば、特許文献1等)によれば、内燃機関(本実施の形態の内燃機関12と同等の構成)における空気過剰率λを量論(λ=1)から、希薄(λ>1)に調整することで、SCR触媒18に窒素酸化物と空気とを送り込んでいるが、それぞれが適量とはならない。例えば、適量の酸素量で調整すると窒素酸化物量が過剰となり、適量の窒素酸化物で調整すると酸素量が不足する。過剰なNOxは、SCR反応で消費しきれない。なお、N2Oは、SCR触媒18では、ほとんど反応しないためこれらは環境に排出されることになる。
【0064】
そこで、本実施の形態に係る排ガス浄化装置14は、ブロワ30を具備するようにした。ブロワ30は、空気導入管32の一端から空気を導入し、三元触媒16とSCR触媒18との間に送り込む役目を有している。
【0065】
すなわち、必要な空気量はブロワ30の駆動による空気導入で行うことで、排ガスでは、必要な窒素酸化物の量に相当する空気過剰率λに抑えることが可能となる。
【0066】
図2には、横軸を空気過剰率λとした場合の、三元触媒16の下流側の排ガスに含まれる成分ガス(NH3、O2、NOx、N
2O)の各濃度特性を示したものである。
【0067】
SCR触媒18において、上記(1)式~(4)式の反応に必要なNOx量は、λ=1.1以上となる混合比が好ましい反面、SCR触媒18の再生処理後にNOx、N2Oの排出を抑制するにはλを、早期に量論(λ=1)に近づけたい。
【0068】
再生処理後のNOx、N
2Oの排出量の抑制を優先するために、本実施の形態では、
図3に示す三元触媒下流のN
2O濃度、及びNOxに対するO
2濃度比特性図に基づき、空気過剰率λは、1<λ≦1.1の範囲に設定した。すなわち、
図3に示される如く、λが1.1以上になると、N
2O濃度の傾きが大きくなる方向に変化するため、λの上限を1.1以下とした。
【0069】
一方、このような空気過剰率λ(1<λ≦1.1)の設定では、空気量(酸素濃度)が少なく、再生処理反応が進まないことが理解できる。
【0070】
本実施の形態では、この不足分の空気量(酸素濃度)を、ブロワ30の駆動による外気導入で補うことで、適正な空気量及び適正なNOx量を、SCR触媒18へ供給することができる。
【0071】
なお、上記したλセンサ24、温度検出部26、及びNOx濃度センサ28における、SCR触媒18でのアンモニア分解処理((1)式~(4)式の化学変化)を行うことに特化した役目は以下の通りである。
【0072】
λセンサ24は、空気過剰率λの調整中の空気過剰率λを、予め定めた1<λ≦1.1の範囲の何れかに制御するために、内燃機関12から排出される排ガスの空気過剰率λを検出する役目を有する。
【0073】
温度検出部26は、排ガスの空気過剰率λの調整開始及びブロワ30の駆動開始のトリガとなる温度を検出する役目を有する。
【0074】
NOx濃度センサ28は、排ガスの空気過剰率λの調整終了及びブロワ30の駆動終了のトリガとなるNOx濃度を検出役目を有する。
【0075】
以下に、本実施の形態の作用を、
図4のフローチャートに従い説明する。
【0076】
ステップ100では、温度検出部26の検出値から推定されるか、又は温度検出部26により直接測定されたSCR触媒18の温度Tcと、SCR触媒18の活性温度Taとを比較し、Tc≧Taと判定(肯定判定)されると、ステップ102へ移行する。
【0077】
ステップ102では、ブロワ30の動作を開始し、次いでステップ104へ移行して、空気過剰率λを、予め定めた空気過剰率λa(1<λa≦1.1の範囲)とし、ステップ106へ移行する。
【0078】
ブロワ30が動作を開始すると、空気導入管32の一端から空気が、三元触媒16とSCR触媒18との間の排ガス管22へ導入される。
【0079】
このため、必要な空気量(酸素量)は確保されるため、排ガスでは、必要な窒素酸化物の量に相当する空気過剰率λ(1<λa≦1.1の範囲)に抑えることできる。
【0080】
ステップ106では、SCR触媒18の下流側で検出されたNOxの濃度(RNOx)と、予め定めたSCR触媒18の再生処理終了時のNOxの濃度(RNOx_end)とを比較する。
【0081】
このステップ106の比較の結果、RNOx≧RNOx_endと判定されると、SCR触媒18の再生処理が終了したと判断され、ステップ108へ移行して、空気過剰率λを1とし、次いで、ステップ110へ移行して、ブロワ30の動作を終了し、このルーチンは終了する。従って、SCR触媒18の温度Tcが活性温度Ta以上となってから、SCR触媒18の再生処理が終了するまで、ブロア30により空気がSCR触媒に供給される。
【0082】
図5は、本実施の形態のエンジンシステム10のようにブロワ30の駆動により強制的に外気を導入した場合と、強制的な外気導入のない構成(例えば、特許文献1)の場合とにおける、排ガス管22から排出される排ガス(SCR触媒18の下流側から排出される排ガス)のNOx及びN
2Oの排出量の比較を示した特性図である。
【0083】
この
図5からもわかるように、本実施の形態では、NOxの排出量を比較例におけるNOxの排出量に比べて1/10以上減少させることがわかる。
【0084】
図3に示される如く、空気過剰率λを大きくするとN2Oが増加する。これは、排ガス浄化装置14の前段の三元触媒16で生成された結果である。本発明により、空気過剰率λを1.1以下にすることで、N2Oの低減も達成できる。
【0085】
本実施の形態によれば、SCR触媒18において、NOxを浄化する化学反応に必要なNOx量は、λ=1.1以上となる混合比が好ましい反面、SCR触媒18の再生処理後のNOx、N2Oの排出量の抑制を優先するために、空気過剰率λを、1<λ≦1.1の範囲に設定し、不足分の空気量(酸素濃度)を、ブロワ30の駆動による外気導入で補うことで、適正な空気量及び適正なNOx量を、SCR触媒18へ供給するようにした。
【0086】
すなわち、SCR触媒18において、アンモニアと窒素酸化物を化学反応で、窒素と水に分解することで、アンモニアと窒素酸化物の放出を防止するための手段として、SCR触媒18に空気(酸素)を強制投入するという従来技術から容易に想到し得ない構成とすることで、吸着触媒の反応に必要な、酸素量と、窒素酸化物量とを別々に制御できる。
【0087】
[変形例]
本実施の形態では、吸着触媒として、SCR触媒18と比較して、より酸化能の強い触媒を適用した。この酸化能の強い触媒としては、アンモニアの吸着作用を有する触媒である限りにおいて、SCR触媒18以外の触媒も利用できる。
【0088】
例えば、吸着触媒としては、セラミックスや酸化チタン等を担体として用い、ゼオライトを活性触媒成分として担持した触媒を利用できる。
【0089】
吸着触媒の選択還元能に対し、酸化能が強い(例えば、ゼオライト上に銅と合わせて貴金属が担持されている)場合について示す。こうした吸着触媒の場合、吸着アンモニアの貴金属上での酸化に伴い一部のアンモニアがNOに変換される。
【0090】
このNOにより、選択還元触媒反応が生じるために、吸着触媒に窒素酸化物を供給する必要がない。
【0091】
このため、再生処理過程においては、ブロワ30による、空気の強制導入のみを開始し、排ガスの空気過剰率λは1のまま保持するように制御を続ける。
【0092】
また、触媒温度及び空気供給量から予め定めた再生処理時間に到達したことを認識し、空気供給を停止すればよい。
【0093】
図6は、変形例に係り、ゼオライト等の酸化能が強い吸着触媒を用いた場合における、再生処理中の排ガス浄化処理の流れを示す制御フローチャートである。
図4と同一処理のステップには、同一のステップ番号の末尾に符号「A」を付す。
【0094】
ステップ100Aでは、SCR触媒18に代わる酸化能の強い触媒の温度Tcと、当該触媒の活性温度Taとを比較し、Tc≧Taと判定(肯定判定)されると、ステップ102へ移行する。
【0095】
ステップ102Aでは、ブロワ30の動作を開始する。
【0096】
ブロワ30が動作を開始すると、空気導入管32の一端から空気が、三元触媒16とSCR触媒18との間の排ガス管22へ導入される。
【0097】
これにより、必要な空気量(酸素量)は確保される、かつ、変形例の吸着触媒の場合、吸着アンモニアの貴金属上での酸化に伴い一部のアンモニアがNOに変換され、アンモニアは、空気(酸素)とNOによる化学反応で、再生処理中のNOxの排ガスが抑制される。
【0098】
次のステップ105では、吸着触媒の温度又は空気供給量に基づいて再生処理時間に到達したか否かを判断する。
【0099】
このステップ105の比較の結果、肯定判定されると、SCR触媒18の再生処理が終了したと判断され、ステップ110Aへ移行して、ブロワ30の動作を終了し、このルーチンは終了する。従って、SCR触媒18の温度Tcが活性温度Ta以上となってから、SCR触媒18の再生処理に必要な時間が経過するまで、ブロア30により空気がSCR触媒に供給される。
【0100】
(実施態様)
本発明は、以下の付記に示す従属関係の実施態様を構成し得る。
【0101】
[付記1]
アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させたときの排ガスを浄化するための排ガス浄化装置であって、
燃焼後の前記排ガスが流通する排ガス路に設けられ、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒で構成された触媒装置と、
前記吸着触媒へ酸素を含む気体を供給する気体供給部と、
前記吸着触媒が活性状態と判断された場合に、前記気体供給部を制御して、前記気体を前記吸着触媒へ供給して、当該吸着触媒の再生処理を実行する制御部と、
を有する排ガス浄化装置。
【0102】
[付記2]
前記排ガス路における排ガスが流れる方向に対して、前記触媒装置の上流側に設けられ、前記排ガス路内を流れる前記排ガスの空気過剰率を検出する空気過剰率センサをさらに有し、
前記制御部が、前記空気過剰率センサで検出した前記空気過剰率に基づいて、前記燃料空気比をフィードバック制御する、付記1記載の排ガス浄化装置。
【0103】
[付記3]
前記制御部が、測定又は推定した前記吸着触媒の温度に基づいて、前記活性状態を判断し、予め定めた温度になった時点を前記再生処理の開始時期とする、付記1又は付記2記載の排ガス浄化装置。
【0104】
[付記4]
前記制御部は、前記気体供給部から前記気体を供給する開始時に同期させて、空気過剰率を前記所定の空気過剰率よりも希薄として、前記排ガスの窒素酸化物量を、前記気体に含まれる酸素量に応じた所定量に調整する、付記1~付記3の何れか1つの付記に記載の排ガス浄化装置。
【0105】
[付記5]
前記希薄としたときの空気過剰率λrが、1<λ≦1.1の範囲で設定される、付記4記載の排ガス浄化装置。
【0106】
[付記6]
前記排ガス路における排ガスの流れ方向に対して、前記吸着触媒の下流側に設けられ、前記排ガス路を流れる排ガスのNOxを検出するNOx濃度センサを備え、
前記制御部は、前記NOx濃度センサの出力値が予め定めた値を超えた場合に、前記吸着触媒の再生処理の終了時期と判断し、前記気体供給部による気体の供給を終了し、かつ、前記希薄とした空気過剰率を前記所定の空気過剰率に戻す、付記1~付記5の何れか1つの付記に記載の排ガス浄化装置。
【0107】
[付記7]
前記吸着触媒が、選択還元能の強さに対して酸化能の強さが所定値を超える場合において、
前記制御部は、前記気体供給部から前記気体を供給し、前記空気過剰率は前記所定の空気過剰率を維持する、付記1~付記3の何れか1つの付記に記載の排ガス浄化装置。
【0108】
「付記8」
前記制御部は、
前記再生処理の開始から所定時間が経過した時点、又は、前記排ガス路における排ガスの流れ方向に対して、前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxを検出するNOx濃度センサの出力値が予め定めた所定値以下となった場合に、前記吸着触媒の再生処理の終了時期と判断し、前記気体供給部による気体の供給を終了する、付記7記載の排ガス浄化装置。
【0109】
[付記9]
アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させ、燃焼後の排ガスを排ガス路に案内して、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒を通過させることによって、排ガスを浄化するための排ガス浄化方法であって、
前記吸着触媒の活性状態と判断された場合に、当該吸着触媒に酸素を含む気体を供給すると共に、前記気体の供給開始時に同期させて、前記空気過剰率を希薄とする再生処理の実行を開始し、
前記排ガス路の前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxが所定値を超えた時点を前記再生処理の終了時期と判断し、前記空気過剰率を前記所定の空気過剰率に戻し、かつ、前記気体の供給を終了する、
排ガス浄化方法。
【0110】
[付記10]
アンモニアを含む燃料を、所定の空気過剰率の燃料空気比となるように空気と混合して燃焼させ、燃焼後の排ガスを排ガス路に案内して、酸化還元機能を備えた酸化還元触媒、及びアンモニア吸着機能を備えた吸着触媒を通過させることによって、排ガスを浄化するための排ガス浄化方法であって、
前記吸着触媒の活性状態と判断された場合に、当該吸着触媒に酸素を含む気体を供給する再生処理の実行を開始し、
当該再生処理の開始から所定時間が経過した場合、又は、前記排ガス路の前記吸着触媒の下流側を流れる排ガスのNOxが所定値以下となった時点を前記再生処理の終了時期と判断し、前記気体の供給を終了する、
排ガス浄化方法。
【0111】
[付記11]
コンピュータを、
付記1~付記7の何れか1つの付記に記載の排ガス浄化装置の制御部として動作させる、排ガス浄化プログラム。
【符号の説明】
【0112】
10 エンジンシステム
12 内燃機関
14 排ガス浄化装置
16 三元触媒(酸化還元触媒)
18 SCR触媒(吸着触媒)
20 制御部
22 排ガス管
24 空気過剰率センサ(λセンサ)
26 温度検出部
28 NOx濃度センサ
30 ブロワ(気体供給部)
32 空気導入管