IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金環境株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-止水構造、止水治具及び止水工法 図1
  • 特開-止水構造、止水治具及び止水工法 図2
  • 特開-止水構造、止水治具及び止水工法 図3
  • 特開-止水構造、止水治具及び止水工法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074659
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】止水構造、止水治具及び止水工法
(51)【国際特許分類】
   F16L 55/168 20060101AFI20240524BHJP
   F16L 55/18 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F16L55/168
F16L55/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185963
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100224926
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雄久
(72)【発明者】
【氏名】酒井 優也
(72)【発明者】
【氏名】大窪 彰彦
(72)【発明者】
【氏名】林 智裕
(72)【発明者】
【氏名】飯室 賢一朗
【テーマコード(参考)】
3H025
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB11
3H025EC05
3H025ED01
(57)【要約】
【課題】止水性を向上させることが可能となる止水構造、止水治具及び止水工法を提供する。
【解決手段】配管9に形成された開口欠損部92からの漏水を止水治具1を用いて止水する止水構造100であって、開口欠損部92に挿入される止水治具1と、配管9の開口欠損部92の外面側に配置される被覆材7と、を備える。止水治具1は、軸部2と、軸部2に設けられるとともに配管9の内面9a側に配置される第1ろくろ3と、軸部2の延伸方向に移動可能な第2ろくろ4と、一端部5aが第1ろくろ3に揺動可能に連結される複数の親骨5と、一端部6aが親骨5の中間部5cに揺動可能に連結されるとともに他端部6bが第2ろくろ4に揺動可能に連結される複数の受骨6と、第2ろくろ4の移動を制御するための制御部材8と、を有する。被覆材7は、第2ろくろ4が配置される貫通孔が形成される。親骨5の他端部5bは、配管9の内面9aに接触される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管又は水槽である対象構造物に形成された開口欠損部からの漏水を止水治具を用いて止水する止水構造であって、
前記開口欠損部に挿入される前記止水治具と、前記対象構造物の前記開口欠損部の外面側に配置される被覆材と、を備え、
前記止水治具は、
軸部と、
前記軸部に設けられるとともに前記対象構造物の内面側に配置される第1ろくろと、
前記軸部の延伸方向に移動可能な第2ろくろと、
一端部が前記第1ろくろに揺動可能に連結される複数の親骨と、
一端部が前記親骨の中間部に揺動可能に連結されるとともに他端部が前記第2ろくろに揺動可能に連結される複数の受骨と、
前記軸部に対する前記第2ろくろの移動を制御するための制御部材と、を有し、
前記被覆材は、前記第2ろくろが配置される貫通孔が形成され、
前記親骨の他端部は、前記対象構造物の内面に接触されること
を特徴とする止水構造。
【請求項2】
前記第2ろくろは、外周にネジ部が形成され、
前記止水治具は、前記第2ろくろの前記ネジ部に螺合されるナットを備え、
前記被覆材は、前記対象構造物の外面と前記ナットとに挟まれて固定されること
を特徴とする請求項1記載の止水構造。
【請求項3】
配管又は水槽である対象構造物に形成された開口欠損部に挿入して用いられる止水治具であって、
軸部と、
前記軸部に設けられる第1ろくろと、
前記軸部の延伸方向に移動可能な第2ろくろと、
一端部が前記第1ろくろに揺動可能に連結される複数の親骨と、
一端部が前記親骨の中間部に揺動可能に連結されるとともに他端部が前記第2ろくろに揺動可能に連結される複数の受骨と、
前記軸部に対する前記第2ろくろの移動を制御するための制御部材と、を有すること
を特徴とする止水治具。
【請求項4】
配管又は水槽である対象構造物に形成された開口欠損部からの漏水を止水治具を用いて止水する止水工法であって、
前記止水治具は、
軸部と、
前記軸部に設けられる第1ろくろと、
前記軸部の延伸方向に移動可能な第2ろくろと、
一端部が前記第1ろくろに揺動可能に連結される複数の親骨と、
一端部が前記親骨の中間部に揺動可能に連結されるとともに他端部が前記第2ろくろに揺動可能に連結される複数の受骨と、
前記第2ろくろの移動を制御するための制御部材と、を有し、
前記止水治具を前記開口欠損部に挿入して前記第1ろくろを前記対象構造物の内面側に配置するとともに、前記第2ろくろが配置される貫通孔が形成された被覆材を前記対象構造物の前記開口欠損部の外面側に配置する挿入工程と、
前記第1ろくろと前記第2ろくろとを近づけて前記親骨の他端部が前記軸部から離間するように揺動させ、前記親骨の他端部を前記対象構造物の内面に接触させた後、前記制御部材により前記軸部に対する前記第2ろくろの移動を制御する接触工程と、を備えること
を特徴とする止水工法。
【請求項5】
前記第2ろくろは、外周にネジ部が形成され、
前記接触工程では、前記親骨の他端部を前記対象構造物の内面に接触させた後、前記第2ろくろの前記ネジ部にナットを螺合し、前記被覆材を前記対象構造物の外面と前記ナットとで挟んで固定すること
を特徴とする請求項4記載の止水工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管又は水槽の漏水を止水する止水構造、止水治具及び止水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼配管等の漏水を止水するには、漏水箇所に木栓を打ち込む手法が知られている。また、特許文献1には、水膨潤可塑材を漏水部当接主材として成る漏水補修シールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-88178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、内水圧がかかった配管から漏水が発生した場合、通常は送水停止後に補修を行うが、送水を完全に止められない場合がある。この場合、漏水している状態で止水処置を行ったうえで、補修作業を行う必要がある。しかしながら、従来の木栓を打ち込む手法では、配管の肉厚が十分厚く、打込み時の衝撃で変形しない程度の強度が必要である。したがって、腐食減肉が進んだ配管には適用が困難である。また、欠損による開口部が小さく、円形に近い形状でなければ止水を十分に行うことができないおそれがある。
【0005】
また、特許文献1の開示技術では、漏水している状態で補修作業を行ったとしても、配管に漏水補修シールの貼り付けができず、止水を十分に行うことができないおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、上述した事情に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、止水性を向上させることが可能となる止水構造、止水治具及び止水工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る止水構造は、配管又は水槽である対象構造物に形成された開口欠損部からの漏水を止水治具を用いて止水する止水構造であって、前記開口欠損部に挿入される前記止水治具と、前記対象構造物の前記開口欠損部の外面側に配置される被覆材と、を備え、前記止水治具は、軸部と、前記軸部に設けられるとともに前記対象構造物の内面側に配置される第1ろくろと、前記軸部の延伸方向に移動可能な第2ろくろと、一端部が前記第1ろくろに揺動可能に連結される複数の親骨と、一端部が前記親骨の中間部に揺動可能に連結されるとともに他端部が前記第2ろくろに揺動可能に連結される複数の受骨と、前記軸部に対する前記第2ろくろの移動を制御するための制御部材と、を有し、前記被覆材は、前記第2ろくろが配置される貫通孔が形成され、前記親骨の他端部は、前記対象構造物の内面に接触されることを特徴とする。
【0008】
第2発明に係る止水構造は、第1発明において、前記第2ろくろは、外周にネジ部が形成され、前記止水治具は、前記第2ろくろの前記ネジ部に螺合されるナットを備え、前記被覆材は、前記対象構造物の外面と前記ナットとに挟まれて固定されることを特徴とする。
【0009】
第3発明に係る止水治具は、配管又は水槽である対象構造物に形成された開口欠損部に挿入して用いられる止水治具であって、軸部と、前記軸部に設けられる第1ろくろと、前記軸部の延伸方向に移動可能な第2ろくろと、一端部が前記第1ろくろに揺動可能に連結される複数の親骨と、一端部が前記親骨の中間部に揺動可能に連結されるとともに他端部が前記第2ろくろに揺動可能に連結される複数の受骨と、前記軸部に対する前記第2ろくろの移動を制御するための制御部材と、を有することを特徴とする。
【0010】
第4発明に係る止水工法は、配管又は水槽である対象構造物に形成された開口欠損部からの漏水を止水治具を用いて止水する止水工法であって、前記止水治具は、軸部と、前記軸部に設けられる第1ろくろと、前記軸部の延伸方向に移動可能な第2ろくろと、一端部が前記第1ろくろに揺動可能に連結される複数の親骨と、一端部が前記親骨の中間部に揺動可能に連結されるとともに他端部が前記第2ろくろに揺動可能に連結される複数の受骨と、前記第2ろくろの移動を制御するための制御部材と、を有し、前記止水治具を前記開口欠損部に挿入して前記第1ろくろを前記対象構造物の内面側に配置するとともに、前記第2ろくろが配置される貫通孔が形成された被覆材を前記対象構造物の前記開口欠損部の外面側に配置する挿入工程と、前記第1ろくろと前記第2ろくろとを近づけて前記親骨の他端部が前記軸部から離間するように揺動させ、前記親骨の他端部を前記対象構造物の内面に接触させた後、前記制御部材により前記軸部に対する前記第2ろくろの移動を制御する接触工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
第5発明に係る止水工法は、第4発明において、前記第2ろくろは、外周にネジ部が形成され、前記接触工程では、前記親骨の他端部を前記対象構造物の内面に接触させた後、前記第2ろくろの前記ネジ部にナットを螺合し、前記被覆材を前記対象構造物の外面と前記ナットとで挟んで固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、止水性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1(a)は、第1実施形態における止水構造の一例を示す断面図であり、図1(b)は、第1実施形態における止水構造の一例を配管の内面側から見た図である。
図2図2(a)は、第1実施形態における閉じた状態の止水治具の一例を示す図であり、図2(b)は、第1実施形態における開いた状態の止水治具の一例を示す図である。
図3図3(a)は、第1実施形態における止水工法の挿入工程を説明する図であり、図3(b)は、第1実施形態における止水工法の接触工程を説明する図である。
図4図4は、第1実施形態における止水工法の接触工程を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態としての止水構造、止水治具及び止水工法の一例について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
(第1実施形態:止水構造100)
図1(a)及び図1(b)に示すように、止水構造100は、止水治具1を用いて対象構造物に形成された開口欠損部92からの漏水を止水する。対象構造物は、例えば水道配管等の鋼製の配管9である。対象構造物は、貯水槽等の水槽であってもよい。対象構造物は、例えば鋼製であるが、鋳鉄製、樹脂製であってもよい。配管9には、腐食等により開口して欠損された開口欠損部92が形成される。配管9は、例えば断面円形状に形成される。止水構造100は、止水治具1と、被覆材7と、を備える。
【0016】
<止水治具1>
止水治具1は、開口欠損部92に挿入して用いられる。止水治具1は、開口欠損部92の外側に配置される被覆材7を保持するものである。止水治具1は、軸部2と、第1ろくろ3と、第2ろくろ4と、親骨5と、受骨6と、制御部材8と、固定部材75と、を備える。
【0017】
<軸部2>
軸部2は、延伸方向に延びる棒状の部材である。軸部2の径は、例えば12mm程度であるが、20mm程度、30mm程度、50mm程度であってもよい。軸部2は、ネジ状軸部22を有する。軸部2は、先端側が配管9の内面9a側に配置され、後端側が配管9の外面9b側に配置される。
【0018】
ネジ状軸部22は、軸部2に形成される。ネジ状軸部22は、断面円形状に形成され、外周面がネジ状に形成される。ネジ状軸部22は、被覆材7の貫通孔に配置される。
【0019】
<第1ろくろ3>
第1ろくろ3は、軸部2の先端側に設けられる。第1ろくろ3は、円筒状に形成される。第1ろくろ3は、配管9の内面9a側に配置される。
【0020】
<第2ろくろ4>
第2ろくろ4は、軸部2の先端から離間して設けられる。第2ろくろ4は、軸部2の延伸方向に移動可能である。第2ろくろ4は、円筒状に形成される。第2ろくろ4は、被覆材7の貫通孔に配置される。第2ろくろ4は、外周にネジ状に形成されるネジ部41を有する。
【0021】
<親骨5>
親骨5は、所定の剛性を有し、棒状に形成される。親骨5は、一端部5aが第1ろくろ3に揺動可能に連結される。複数の親骨5は、第1ろくろ3に放射状に配置される。親骨5は、第1ろくろ3に例えば4つ連結される。親骨5は、一端部5aにピン部材51が取り付けられ、ピン部材51を介して第1ろくろ3に揺動可能に連結される。親骨5は、一端部5aと他端部5bの間の中間部5cに受骨6と連結するための連結片52が設けられる。親骨5は、配管9の内面9a側に配置される。親骨5の他端部5bは、対象構造物である配管9の内面9aに接触される。
【0022】
<受骨6>
受骨6は、所定の剛性を有し、棒状に形成される。受骨6は、一端部6aが親骨5の中間部5cに揺動可能に連結される。受骨6は、他端部6bが第2ろくろ4に揺動可能に連結される。複数の受骨6は、第2ろくろ4に放射状に配置される。受骨6は、第2ろくろ4に例えば4つ連結される。受骨6は、一端部6aにピン部材61が取り付けられ、ピン部材61を介して親骨5の中間部5cに揺動可能に連結される。ピン部材61は、連結片52に連結される。受骨6は、他端部6bにピン部材62が取り付けられ、ピン部材62を介して第2ろくろ4に揺動可能に連結される。受骨6は、配管9の内面9a側に配置される。
【0023】
<制御部材8>
制御部材8は、軸部2の延伸方向に移動する第2ろくろ4の移動を制御する。制御部材8は、第2ろくろ4よりも軸部2の後端側に設けられる第1制御部と、第2ろくろ4よりも軸部2の先端側に設けられる第2制御部と、を有する。
【0024】
第1制御部は、例えばネジ状軸部22に螺合されるナット81と、ナット81と第2ろくろ4との間に配置される防水ワッシャ82と、を有する。ナット81をネジ状軸部22に螺合することにより、軸部2の後端側への第2ろくろ4の移動が制御され、固定することができる。第1制御部としては、軸部2の後端側への第2ろくろ4の移動が制御されるものであればよい。軸部2の後端側への第2ろくろ4の移動を制御する第1制御部を有することにより、親骨5が閉脚されるのを防止できる。
【0025】
第2制御部は、ネジ状軸部22から突出した突起部83を有する。突起部83は、例えばネジ状軸部22を点付け溶接することにより形成される。突起部83が第2ろくろ4に接触されることにより、軸部2の先端側への第2ろくろ4の移動が制御され、親骨5の揺動角度(開脚角度)の所定の角度以上となるのを防止できる。第2制御部としては、軸部2の先端側への第2ろくろ4の移動が制御されるものであればよく、例えばネジ状軸部22に螺合されるナット等であってもよい。
【0026】
<固定部材75>
固定部材75は、被覆材7を配管9の外面9bに固定する部材であって、ナット73と、防水ワッシャ74と、を有する。ナット73は、第2ろくろ4のネジ部41に螺合される。防水ワッシャ74は、ナット73と被覆材7との間に配置される。
【0027】
<被覆材7>
被覆材7は、開口欠損部92よりも径大に形成され、貫通孔が形成される。被覆材7は、開口欠損部92を覆うように配管9の開口欠損部92の外面9b側に配置される。被覆材7は、板状に形成され、配管9の外面9bとナット73とに挟まれて固定される。被覆材7は、ゴム板71と、鋼板72と、を有する。被覆材7が板材の場合、配管9の外面9bに配置すればよく、硬化のための待機時間が不要となり、被覆材7がシーリング材の場合よりも施工を簡単にできる。ゴム板71と鋼板72とには、それぞれ貫通孔が形成される。貫通孔には、軸部2と第2ろくろ4とが配置される。ゴム板71は、配管9の外面に接して設けられる。鋼板72は、ゴム板71を挟んで配管9の反対側に設けられる。ゴム板71が配管9の外面9bに接して設けられることにより、第2ろくろ4のネジ部41にナット73を螺合したとき、鋼板72がゴム板71を押圧してゴム板71を配管9の外面9bに密着できる。このため、止水性を更に向上させることができる。
【0028】
なお、図示は省略するが、被覆材7としては、開口欠損部92を覆うように配管9の開口欠損部92の外面9b側に配置されるものであればよく、例えば板材(ゴム板71と鋼板72)に代わり、シーリング材であってもよい。被覆材7がシーリング材の場合、シーリング材の変形追従性により、配管9の外面9bの形状に合わせてシーリング材を密着させることができ、止水性を更に向上させることができる。被覆材7としてのシーリング材は、配管9の開口欠損部92の外面9b側に配置される。シーリング材は、開口欠損部92からの漏水を抑制するための公知のシーリング材である。シーリング材は、例えば変形追従性を有してもよい。変形追従性を有するシーリング材として、例えばシリコン樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂材料、ゴム、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、エラストマー等が用いられる。シーリング材は、硬化前に充填可能であり、主剤と硬化剤との反応により硬化性を発揮するエポキシ樹脂等の樹脂材料でもよい。また、被覆材7は、板材とシーリング材とで構成されてもよい。
【0029】
次に、止水治具1の使用方法について説明する。図2(a)及び図2(b)に示すように、止水治具1は、第1ろくろ3と第2ろくろ4とを互いに近づけることで、親骨5を開くことができる。第1ろくろ3と第2ろくろ4とを互いに近づける場合には、例えば第1ろくろ3側に近づけるように第2ろくろ4を移動させてもよいし、例えば第2ろくろ4側に近づけるように軸部2を引っ張ることにより第1ろくろ3を移動させてもよい。
【0030】
図2(a)に示すように、閉じた状態の止水治具1は、親骨5の他端部5bが軸部2に近接して配置される。
【0031】
図2(b)に示すように、止水治具1を開くには、先ず、第1ろくろ3と第2ろくろ4とを互いに近づける。これにより、第2ろくろ4に連結された受骨6の他端部6bがピン部材62を介して揺動し、受骨6の一端部6aもピン部材61を介して揺動する。受骨6に連結された親骨5は、第1ろくろ3に連結されるピン部材51を介して、親骨5の他端部5bが軸部2から離間するように揺動する。このようにして、止水治具1を開くことができる。
【0032】
開いた止水治具1を閉じるには、第1ろくろ3と第2ろくろ4とを互いに離間させる。これにより、親骨5の他端部5bが軸部2に近接するように揺動して止水治具1を閉じることができる。
【0033】
(第1実施形態:止水工法の一例)
次に、第1実施形態における止水工法の一例について説明する。
【0034】
止水工法は、止水治具1を用いて対象構造物としての配管9に形成された開口欠損部92からの漏水を止水する。止水工法は、挿入工程と、接触工程と、を備える。
【0035】
<挿入工程>
挿入工程では、予め第2ろくろ4を被覆材7の貫通孔に配置しておき、ネジ部41にナット73と防水ワッシャ74とを配置しておく。そして、図3(a)に示すように、挿入工程は、開口欠損部92に閉じた状態の止水治具1を挿入して、第1ろくろ3を配管9の内面9a側に配置する。このとき、親骨5と受骨6は、配管9の内面9a側に配置される。
【0036】
挿入工程では、開口欠損部92に止水治具1を挿入するとともに、貫通孔が形成された被覆材7(ゴム板71と鋼板72)を配管9の開口欠損部92の外面側に配置する。
【0037】
<接触工程>
次に、図3(b)に示すように、接触工程は、軸部2を配管9の外面9b側に引っ張ることにより、第1ろくろ3と第2ろくろ4とを近づけて親骨5の他端部5bが軸部2から離間するように揺動させ、親骨5の他端部5bを配管9の内面9aに接触させる。このようにして止水治具1を開く。接触工程は、軸部2を配管9の外面9b側に引っ張る際に、第2ろくろ4を突起部83に接触させる。これにより、軸部2の先端側への第2ろくろ4の移動が制御され、親骨5の揺動角度(開脚角度)が所定の角度以上になるのを防止できる。
【0038】
図4に示すように、接触工程では、親骨5の他端部5bを配管9の内面9aに接触させた後、制御部材8により第2ろくろ4の軸部2に対する移動を制御する。詳細には、ネジ状軸部22に配置されたナット81をネジ状軸部22に螺合する。親骨5の他端部5bを配管9の内面9aに接触させているため、ナット81をネジ状軸部22に螺合することにより、第2ろくろ4が固定される。第2ろくろ4が突起部83に接触した状態でナット81をネジ状軸部22に螺合することにより、親骨5の開脚角度を所定の角度に固定することができる。
【0039】
また、接触工程では、親骨5の他端部5bを配管9の内面9aに接触させた後、ネジ部41にナット73を螺合し、被覆材7を配管9の外面9bとナット73とで挟んで固定する。例えば接触工程では、制御部材8により第2ろくろ4の軸部2に対する移動を制御した後、ネジ部41にナット73を螺合し、被覆材7を配管9の外面9bとナット73とで挟んで固定する。
【0040】
以上により、第1実施形態における止水工法の一例が完了する。次に、第1実施形態における作用効果について説明する。
【0041】
本実施形態によれば、止水構造100は、開口欠損部92に挿入される止水治具1と、配管9の開口欠損部92の外面9b側に配置される被覆材7と、を備え、止水治具1は、軸部2の延伸方向に移動可能な第2ろくろ4と、一端部5aが第1ろくろ3に揺動可能に連結される複数の親骨5と、一端部6aが親骨5の中間部5cに揺動可能に連結されるとともに他端部6bが第2ろくろ4に揺動可能に連結される複数の受骨6と、軸部2に対する第2ろくろ4の移動を制御するための制御部材8と、を有する。これにより、第1ろくろ3と第2ろくろ4とを近づけて親骨5の他端部5bを配管9の内面9aに接触させたとき、配管9の開口欠損部92の外面9b側に、被覆材7を保持することができる。このため、開口欠損部92からの漏水を被覆材7により抑制でき、止水性を向上させることが可能となる。
【0042】
本実施形態によれば、止水治具1は、軸部2の延伸方向に移動可能な第2ろくろ4と、一端部5aが第1ろくろ3に揺動可能に連結される複数の親骨5と、一端部6aが親骨5の中間部5cに揺動可能に連結されるとともに他端部6bが第2ろくろ4に揺動可能に連結される複数の受骨6と、軸部2に対する第2ろくろ4の移動を制御するための制御部材8と、を有する。これにより、配管9の開口欠損部92の外面9b側に、被覆材7を保持することができる。このため、開口欠損部92からの漏水を被覆材7により抑制でき、止水性を向上させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態によれば、配管9の外面9b側から施工することができる。このため、施工性を向上させることが可能となる。
【0044】
また、本実施形態によれば、第2ろくろ4は、外周にネジ部41が形成され、止水治具1は、第2ろくろ4のネジ部41に螺合されるナット73を備え、被覆材7は、配管9の外面9bとナット73とに挟まれて固定される。これにより、被覆材7を配管9の外面9bに強固に取り付けることができる。
【0045】
また、本実施形態によれば、被覆材7は、配管9の外面9bに接して設けられるゴム板71とゴム板71を挟んで配管9の反対側に設けられる鋼板72と、を有する。これにより、第2ろくろ4のネジ部41にナット73を螺合したとき、鋼板72がゴム板71を押圧してゴム板71を配管9の外面9bに密着できる。このため、止水性を更に向上させることができる。
【0046】
本実施形態によれば、制御部材8は、軸部2の後端側への第2ろくろ4の移動を制御する第1制御部を有する。これにより、親骨5が閉脚されるのを防止でき、被覆材7を保持し易くなる。このため、開口欠損部92からの漏水を被覆材7により抑制でき、止水性を更に向上させることが可能となる。
【0047】
本実施形態によれば、制御部材8は、軸部2の先端側への第2ろくろ4の移動を制御する第2制御部を有する。これにより、親骨5が所定の角度以上に開脚されるのを防止でき、被覆材7を保持し易くなる。このため、開口欠損部92からの漏水を被覆材7により抑制でき、止水性を更に向上させることが可能となる。
【0048】
本実施形態によれば、制御部材8は、軸部2の後端側への第2ろくろ4の移動を制御する第1制御部と、軸部2の先端側への第2ろくろ4の移動を制御する第2制御部と、を有し、第1制御部は、ネジ状軸部22に螺合されるナット81を有する。これにより、第2ろくろ4が第2制御部に接触した状態でナット81をネジ状軸部22に螺合することにより、親骨5の開脚角度を所定の角度に固定することができる。このため、開口欠損部92からの漏水を被覆材7により抑制でき、止水性を一層向上させることが可能となる。
【0049】
本実施形態によれば、止水工法では、止水治具1を開口欠損部92に挿入して第1ろくろ3を配管9の内面9a側に配置するとともに、第2ろくろ4が配置される貫通孔が形成された被覆材7を配管9の開口欠損部92の外面9b側に配置する挿入工程と、第1ろくろ3と第2ろくろ4とを近づけて親骨5の他端部5bが軸部2から離間するように揺動させ、親骨5の他端部5bを配管9の内面9aに接触させた後、制御部材8により軸部2に対する第2ろくろ4の移動を制御する接触工程と、を備える。これにより、配管9の開口欠損部92の外面9b側に、被覆材7を保持することができる。このため、開口欠損部92からの漏水を被覆材7により抑制でき、止水性を向上させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態によれば、第2ろくろ4は、外周にネジ部41が形成され、接触工程では、親骨5の他端部5bを配管9の内面9aに接触させた後、第2ろくろ4のネジ部41にナット73を螺合し、被覆材7を配管9の外面9bとナット73とで挟んで固定する。これにより、被覆材7を配管9の外面9bに強固に取り付けることができる。
【0051】
また、本実施形態によれば、第1制御部は、ネジ状軸部22に螺合されるナット81を有する。これにより、例えば一度止水治具1を開脚した後であっても、ナット81を緩めて第1ろくろ3と第2ろくろ4とを互いに離間させることで、止水治具1を閉じて、開口欠損部92から取り外すことができる。このため、仮に施工に失敗した場合であっても、止水治具1の施工のやり直しを行うことができる。
【0052】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
100 :止水構造
1 :止水治具
2 :軸部
21 :回動軸部
22 :ネジ状軸部
23 :接続基部
3 :第1ろくろ
4 :第2ろくろ
5 :親骨
5a :一端部
5b :他端部
5c :中間部
51 :ピン部材
52 :連結片
6 :受骨
6a :一端部
6b :他端部
61 :ピン部材
62 :ピン部材
8 :制御部材
81 :ナット
82 :防水ワッシャ
75 :固定部材
73 :ナット
74 :防水ワッシャ
7 :被覆材
71 :ゴム板
72 :鋼板
9 :配管
9a :内面
9b :外面
92 :開口欠損部
99 :螺合装置
図1
図2
図3
図4