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特開2024-74661走行支援方法、プログラム、走行支援装置、及び自律移動体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074661
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】走行支援方法、プログラム、走行支援装置、及び自律移動体
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185966
(22)【出願日】2022-11-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期/自動運転(システムとサービスの拡張)/自動運転技術(レベル3、4)に必要な認識技術等に関する研究」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】菅沼 直樹
(72)【発明者】
【氏名】奥野 唯
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181EE12
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL04
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】車両の走行支援において、必要以上に衝突回避制御を行うことを抑制する。
【解決手段】走行支援方法は、自車両の走行を支援する方法であって、自車両(自律移動体V10)が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体V20が、自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定ステップS10と、移動体V20の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出ステップS20と、自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出ステップS30と、自車両軌道と、判定対象移動体の移動体軌道とに基づいて衝突判定を行う衝突判定ステップS40とを含み、移動体判定ステップS10において、自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある移動体V20のみを判定対象移動体と判定する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両の走行を支援する走行支援方法であって、
前記自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体が、前記自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定ステップと、
前記移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出ステップと、
前記自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出ステップと、
前記自車両軌道と、前記判定対象移動体の前記移動体軌道とに基づいて前記衝突判定を行う衝突判定ステップとを含み、
前記移動体判定ステップにおいて、前記自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある前記移動体のみを前記判定対象移動体と判定する
走行支援方法。
【請求項2】
前記衝突判定ステップでの判定結果に基づいて、前記自車両の走行制御を行う走行制御ステップをさらに含み、
前記衝突判定ステップにおいて、前記自車両と前記判定対象移動体とが衝突すると判定した場合に、前記走行制御ステップにおいて、衝突を回避するための前記自車両の走行制御を行い、前記衝突判定ステップにおいて、前記自車両と前記判定対象移動体とが衝突しないと判定した場合に、前記走行制御ステップにおいて、衝突を回避するための前記自車両の制御を行わない
請求項1に記載の走行支援方法。
【請求項3】
前記移動体軌道算出ステップにおいて、前記移動体のうち前記判定対象移動体のみの前記移動体軌道を算出する
請求項1又は2に記載の走行支援方法。
【請求項4】
前記移動体判定ステップにおいて、前記自車両を基準とした前記移動体の位置に対応する前記方位角を示す第一角度が所定の閾値角度未満である場合に、前記移動体が前記判定対象移動体であると判定し、前記第一角度が前記閾値角度以上である場合に、前記移動体が前記判定対象移動体ではないと判定し、
前記第一角度は、前記自車両と前記移動体との間の、前記自車両が走行する軌道に沿った方向における間隔の、前記自車両が走行する軌道に垂直な方向における間隔に対する比が正接となる角度である
請求項1又は2に記載の走行支援方法。
【請求項5】
前記衝突判定ステップにおいて、前記自車両軌道及び前記移動体軌道の各々の前記衝突判定の対象に設定される範囲を、前記第一角度に応じて変更する
請求項4に記載の走行支援方法。
【請求項6】
前記衝突判定ステップにおいて、前記第一角度が0度以下である場合、前記自車両軌道及び前記移動体軌道の全範囲が前記衝突判定の対象に設定される
請求項5に記載の走行支援方法。
【請求項7】
前記衝突判定ステップにおいて、前記第一角度が0度より大きく、前記閾値角度未満である場合、前記自車両軌道及び前記移動体軌道の一部の範囲のみが前記衝突判定の対象に設定される
請求項5に記載の走行支援方法。
【請求項8】
前記閾値角度は、変更可能である
請求項4に記載の走行支援方法。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の走行支援方法をコンピュータに実行させるための
プログラム。
【請求項10】
自車両の走行を支援する走行支援装置であって、
前記自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体が、前記自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定部と、
前記移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出部と、
前記自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出部と、
前記自車両軌道と、前記判定対象移動体の前記移動体軌道とに基づいて前記衝突判定を行う衝突判定部とを備え、
前記移動体判定部は、前記自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある前記移動体のみを前記判定対象移動体と判定する
走行支援装置。
【請求項11】
請求項10に記載の走行支援装置と、
前記移動体の位置情報を取得する取得部とを備える
自律移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行支援方法、プログラム、走行支援装置、及び自律移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、自動車等の移動体の走行支援に関する研究が活発に進められている(特許文献1等参照)。例えば、特許文献1には、自車両の後続車両の位置を検出し、当該位置に応じて、自車両の横方向位置を制御する発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-51760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自車両の周辺で走行している他車両の挙動に応じた自車両の制御として、他車両との衝突回避制御がある。衝突回避制御の一例として、他車両が自車両を追い越して、自車両の前方において、自車両が走行している車線に移動する状況での制御例について説明する。この状況では、自車両の予測軌道と、他車両の予測軌道とを算出し、自車両と他車両との衝突が予測される場合に、自車両において衝突回避制御を行う。衝突回避制御によって、例えば、自車両を減速させながら、横方向において他車両から離れる向きに移動させる。これにより、自車両と他車両との衝突可能性を低減できる。
【0005】
しかしながら、このような衝突回避制御においては、例えば、他車両の挙動が不安定である場合、自車両において、必要以上に衝突回避制御を行い得る。また、衝突回避制御を行うことで、自車両が自車線からはみ出すなどの危険な状況が発生し得る。
【0006】
そこで、本発明は、かかる問題に鑑みてなされたものであって、車両の走行支援において、必要以上に衝突回避制御を行うことを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る走行支援方法は、自車両の走行を支援する走行支援方法であって、前記自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体が、前記自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定ステップと、前記移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出ステップと、前記自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出ステップと、前記自車両軌道と、前記判定対象移動体の前記移動体軌道とに基づいて前記衝突判定を行う衝突判定ステップとを含み、前記移動体判定ステップにおいて、前記自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある前記移動体のみを前記判定対象移動体と判定する。
【0008】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るプログラムは、上記走行支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0009】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る走行支援装置は、自車両の走行を支援する走行支援装置であって、前記自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体が、前記自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定部と、前記移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出部と、前記自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出部と、前記自車両軌道と、前記判定対象移動体の前記移動体軌道とに基づいて前記衝突判定を行う衝突判定部とを備え、前記移動体判定部は、前記自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある前記移動体のみを前記判定対象移動体と判定する。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る自律移動体は、上記走行支援装置と、前記自車両とを備える。
【0011】
なお、これらの包括的又は具体的な態様は、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム又は非一時的なコンピュータで読み取り可能なCD-ROM等の記録媒体で実現されてもよく、システム、方法、集積回路、コンピュータプログラム及び記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の走行支援方法等によれば、車両の走行支援において、必要以上に衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係る走行支援装置及び自律移動体の構成の一例を示すブロック図
図2】実施の形態に係る走行支援方法の流れを示すフローチャート
図3】実施の形態に係る第一角度の定義において用いられる間隔X及びYの説明図
図4】実施の形態に係る第一角度の説明図
図5】比較例の走行支援方法による自車両の走行制御の態様を示す模式図
図6】実施の形態に係る走行支援方法による自車両の走行制御の態様を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0015】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0016】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、同じ構成部材については同じ符号を付している。
【0017】
(実施の形態)
実施の形態に係る走行支援方法、走行支援装置、及び自律移動体について説明する。
【0018】
[1.走行支援装置及び自律移動体の構成]
本実施の形態に係る走行支援装置及び自律移動体の構成について図1を用いて説明する。
【0019】
図1は、本実施の形態に係る走行支援装置100及び自律移動体V10の構成の一例を示すブロック図である。
【0020】
自律移動体V10は、走行支援装置100と、取得部10とを備え、自動運転を行う移動体である。自律移動体V10は、走行支援装置100によって制御可能な移動体であれば、特に限定されない。本実施の形態では、自律移動体V10は、自動運転を行う車両である。
【0021】
取得部10は、自車両の周辺の物体の位置情報を取得する。ここで、自車両とは、走行支援装置100が支援する対象である車両である。本実施の形態では、自車両は、自律移動体V10である。以下では、自律移動体V10のことを自車両とも称する。取得部10が位置情報を取得する物体には、自車両の周辺の移動体、及び静止物体が含まれる。例えば、移動体には、車両、歩行者等が含まれ、静止物体には、停止車両、建造物、標識等が含まれる。本実施の形態では、取得部10は、取得部10の設置位置を基準として、周辺の物体が位置する方向、物体の表面まで距離、及び高さの3次元情報を取得する。取得部10として、例えば、LiDAR、ステレオカメラ等の3次元情報取得装置を用いることができる。また、取得部10として、単眼カメラとAIと組み合わせたシステムを用いることができる。このようなシステムでは、単眼カメラで撮影した画像からAIを用いて3次元情報を抽出することができる。本実施の形態では、取得部10は、LiDARを含む。
【0022】
LiDARは、対象物体に対してレーザ光を照射し、対象物体から反射したレーザ光を取得することで、対象物体とLiDARを搭載した観測体との距離を計測する。取得部10は、計測された距離、LiDARの位置、及びレーザ光の照射の向きから、道路の路面の水平方向位置と高さとの関係を示す高さ情報として、3次元点群データを取得する。
【0023】
LiDARは、例えば、128本のレーザ光を垂直方向(つまり、鉛直方向)に互いに異なる照射角度で照射する。LiDARの垂直方向視野角は、水平方向(つまり、鉛直方向に対して垂直な方向)を0degとして、例えば、-25deg以上、15deg以下である。LiDARは、これらのレーザ光の照射の向きを水平方向に360deg回転させることで全方位の3次元点群データを取得できる。レーザ光によるスキャンレートは、例えば、5Hz以上、20Hz以下である。本実施の形態では、スキャンレートは、10Hzに設定される。つまり、本実施の形態では、LiDARは、1秒間に10フレームの3次元点群データを取得する。
【0024】
本実施の形態では、取得部10は、自車両の周辺の画像をさらに取得する。取得部10は、自車両の周辺の画像を取得する撮像装置を有する。取得部10は、撮像装置によって取得された画像に基づいて、例えば、信号機の信号灯の状態に関する情報を取得する。
【0025】
走行支援装置100は、自車両の走行を支援する装置である。本実施の形態では、走行支援装置100は、自車両の走行を制御する自動運転装置である。走行支援装置100は、図1に示されるように、自車両軌道算出部30と、移動体軌道算出部40と、移動体判定部50と、衝突判定部60と、走行制御部70とを備える。本実施の形態では、走行支援装置100は、記憶部80をさらに備える。
【0026】
自車両軌道算出部30は、自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する処理部である。自車両軌道算出部30は、例えば、自車両の速度、操舵角などの情報に基づいて、自車両軌道を算出する。自車両軌道は、例えば、自車両の速度、操舵角が維持されると仮定した場合の、現時点(つまり、予測を行っている時点)から所定の時間後までの自車両の軌道として算出される。
【0027】
自車両軌道算出部30が算出する自車両軌道の範囲は特に限定されない。本実施の形態では、自車両軌道算出部30は、現時点から3秒後までの自車両軌道を算出する。自車両軌道算出部30は、例えば、取得部10が位置情報を取得するタイミングと同期して自車両軌道を算出してもよい。本実施の形態では、自車両軌道算出部30は、0.1秒毎に自車両軌道を算出する。
【0028】
移動体軌道算出部40は、自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する処理部である。後続の移動体とは、自車両の後方において、自車両と同じ向きに移動する移動体である。以下では、後続の移動体のことを単に移動体とも称する。移動体軌道算出部40は、取得部10によって取得された移動体の位置情報などに基づいて移動体軌道を予測する。本実施の形態では、自車両を追い越す移動体、つまり、自車両より速度が大きい移動体の移動体軌道を算出する。
【0029】
移動体軌道算出部40が算出する移動体軌道の範囲は特に限定されない。本実施の形態では、移動体軌道算出部40は、現時点から3秒後までの移動体軌道を算出する。移動体軌道算出部40は、例えば、取得部10が位置情報を取得するタイミングと同期して移動体軌道を算出してもよい。本実施の形態では、移動体軌道算出部40は、0.1秒毎に移動体軌道を算出する。
【0030】
本実施の形態では、移動体軌道算出部40は、自車両の周辺に位置するすべての移動体の移動体軌道を算出するが、移動体軌道算出部40の構成は、これに限定されない。例えば、移動体軌道算出部40は、移動体のうち、後述する判定対象移動体についてのみの移動体軌道を算出してもよい。これにより、移動体軌道算出部40における演算量を削減できる。
【0031】
移動体判定部50は、後続の移動体が自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する処理部である。つまり、移動体判定部50は、後続の移動体のうち、衝突判定の対象となる判定対象移動体を選択する。移動体判定部50は、自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある移動体のみを判定対象移動体と判定する。移動体判定部50による判定方法の詳細については、後述する。
【0032】
衝突判定部60は、自車両軌道と、判定対象移動体の移動体軌道とに基づいて自車両と判定対象移動体との衝突判定を行う処理部である。衝突判定部60は、自車両軌道と、移動体軌道とから、自車両軌道に沿って走行する自車両が位置する領域の少なくとも一部と、移動体軌道に沿って走行する判定対象移動体が位置する領域とが重なるタイミングがある場合に、自車両と判定対象移動体とが衝突すると判定する。一方、自車両が位置する領域の少なくとも一部と、判定対象移動体が位置する領域とが重なるタイミングが無い場合に、自車両と判定対象移動体とは衝突しないと判定する。
【0033】
なお、衝突判定部60は、移動体軌道に沿って走行する判定対象移動体が位置する領域だけでなく、その領域の周囲の領域と、自車両が位置する領域の少なくとも一部とが重なるタイミングの有無に基づいて衝突判定を行ってもよい。例えば、衝突判定部60は、自車両軌道に沿って走行する自車両が位置する領域の少なくとも一部と、移動体軌道に沿って走行する判定対象移動体が位置する領域、及びその周囲を囲む所定の幅の領域とが重なるタイミングの有無に基づいて、衝突判定を行ってもよい。ここで、当該所定の幅は、特に限定されないが、例えば、10cm以上100cm以下に設定される。このような、衝突判定に基づいて走行制御を行うことで、自車両と移動体との間の距離を十分に確保することが可能となる。
【0034】
走行制御部70は、衝突判定部60による判定結果に基づいて、自車両の走行制御を行う制御部である。自車両と判定対象移動体とが衝突すると衝突判定部60が判定した場合に、走行制御部70は、衝突を回避するための自車両の走行制御を行う。自車両と判定対象移動体とが衝突しないと衝突判定部60が判定した場合に、走行制御部70は、衝突を回避するための自車両の制御を行わない。衝突を回避するための自車両の走行制御は、例えば、自車両を減速させる制御、自車両が走行している車線内の横方向位置が移動体から離れる向きに移動するように操舵する制御などである。
【0035】
記憶部80は、走行支援のための情報を記憶する。例えば、記憶部80は、自車両が運転する道路の情報を含むマップ情報等を記憶する。
【0036】
[2.走行支援方法]
本実施の形態に係る走行支援方法について図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態に係る走行支援方法の流れを示すフローチャートである。
【0037】
まず、図2に示されるように、移動体判定部50が、後続の移動体が自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する(移動体判定ステップS10)。移動体判定ステップS10において、移動体判定部50は、自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある移動体のみを判定対象移動体と判定する。本実施の形態では、移動体判定部50は、自車両を基準とした移動体の位置に対応する方位角を示す第一角度が所定の閾値角度未満である場合に、移動体を判定対象移動体と判定する。
【0038】
以下、移動体判定ステップS10において用いる第一角度について、図3及び図4を用いて説明する。図3は、本実施の形態に係る第一角度の定義において用いられる間隔X及びYの説明図である。図3には、自車両(自律移動体V10)が走行する軌道が一点鎖線で示されている。図4は、本実施の形態に係る第一角度θの説明図である。
【0039】
本実施の形態では、図3に示されるように、車線L1を走行する自車両(自律移動体V10)と、車線L1の隣の車線L2を走行する後続の移動体V20との間隔X及びYが定められる。
【0040】
図3に示される間隔Xは、自車両と移動体V20との間の、自車両が走行する軌道に垂直な方向における間隔である。ここで、自車両が走行する軌道とは、例えば、自車両の中心点の軌跡である。自車両が走行する軌道が直線状でない場合には、当該軌道に垂直な方向とは、当該軌道の接線に垂直な方向で定義される。間隔Xは、自車両の移動体V20に近い側(つまり、車線L2側)の側面と、移動体V20の自車両に近い側(つまり、車線L1側)の側面との間の、軌道に垂直な方向における距離と定義されてもよい。間隔Xは、例えば、自車両の中心から、移動体V20までの、当該軌道に垂直な方向における距離から、自車両の横幅の1/2を減算することで求められる。なお、自車両の中心から、移動体V20までの当該軌道に垂直な方向における距離は、例えば、取得部10によって求められる。自車両の幅は、例えば、記憶部80に記憶されていてもよい。
【0041】
図3に示される間隔Yは、自車両と移動体V20との間の、自車両が走行する軌道に沿った方向における間隔である。ここで、自車両が走行する軌道が直線状でない場合には、当該軌道に沿った方向における間隔とは、自車両の後端の当該軌道上の点から、移動体V20の前端から当該軌道へ下した垂線の足までの直線距離で定義される。ここで、移動体V20の前端から当該軌道へ下した垂線の足とは、移動体V20の前端から、当該軌道の接線へ下した垂線の足で定義される。なお、間隔Yは、自車両の後端の当該軌道上の点から、移動体V20の前端から当該軌道へ下した垂線の足までの軌道に沿った道のりの長さで定義されてもよい。
【0042】
以上のように定められた間隔X及びYを用いて、第一角度θは、図4に示されるように定められる。つまり、第一角度θは、間隔Yの間隔Xに対する比が正接となる角度である。つまり、第一角度θと、間隔X及びYについて以下の式(1)が成り立つ。
【0043】
tanθ=Y/X (1)
【0044】
本実施の形態では、移動体判定ステップS10において、移動体判定部50は、第一角度θが、所定の閾値角度θth未満である場合に、移動体V20が衝突判定の対象である判定対象移動体であると判定し、第一角度θが閾値角度θth以上である場合に、移動体V20が判定対象移動体ではないと判定する。このように、衝突判定の対象となる判定対象移動体を、比較的近い将来(例えば、数秒以内)に衝突する可能性がある移動体だけに限定することで、必要以上に衝突判定を行うこと、及び、当該衝突判定に基づいて衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【0045】
閾値角度θthは、0度より大きく、90度未満の値に設定される。例えば、間隔Xが1.5mであり、移動体V20が自車両より10km/h速く走行している状況に基づいて閾値角度θthを設定する方法の一例について説明する。この状況において、移動体V20が自車両に接近すると仮定し、移動体V20が自車両に接触するまでに2秒以上の時間があれば、比較的安全な車間距離であると想定できる。この状況において、移動体V20が自車両に接触するまでに最短で2秒要する場合の第一角度θは、74.3度と算出される。そこで、閾値角度θthを74.3度、又は74.3度以下の角度に設定してもよい。
【0046】
また、間隔Xが1.5mであり、移動体V20が自車両より5km/h速く走行している状況に基づいて閾値角度θthを設定する方法の一例について説明する。この状況においても、上述した状況と同様に、移動体V20が自車両に接近すると仮定し、移動体V20が自車両に接触するまでに2秒以上の時間があれば、比較的安全な車間距離であると想定できる。この状況において、移動体V20が自車両に接触するまでに最短で2秒要する場合の第一角度θは、57.3度と算出される。そこで、閾値角度θthを57.3度、又は57.3度以下の角度に設定してもよい。
【0047】
本実施の形態に係る走行支援方法において、不要な衝突回避制御をより一層抑制するためには、閾値角度θthを、57.3度以下の角度に設定してもよい。
【0048】
なお、閾値角度θthは、例えば、記憶部80に記憶された固定値であってもよいし、変更可能であってもよい。例えば、閾値角度θthは、記憶部80に記憶された複数の閾値候補角度から選択可能であってもよいし、走行支援装置100の外部から所望の角度を閾値角度θthとして入力可能であってもよい。
【0049】
続いて、移動体軌道算出部40が、自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する(移動体軌道算出ステップS20)。本実施の形態では、移動体軌道算出部40は、上述のとおり現時点から3秒後までの移動体軌道を算出する。
【0050】
続いて、自車両軌道算出部30が、自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する(自車両軌道算出ステップS30)。本実施の形態では、自車両軌道算出部30は、上述のとおり現時点から3秒後までの自車両軌道を算出する。
【0051】
続いて、衝突判定部60は、自車両軌道と、判定対象移動体の移動体軌道とに基づいて自車両と判定対象移動体との衝突判定を行う(衝突判定ステップS40)。つまり、移動体判定ステップS10において、自車両軌道と、判定対象移動体と判定された移動体V20の移動体軌道とに基づいて、自車両と判定対象移動体とが衝突するか否かを、衝突判定部60は判定する。具体的には、自車両軌道に沿って走行する自車両が位置する領域の少なくとも一部と、移動体軌道に沿って走行する判定対象移動体が位置する領域とが重なるタイミングがある場合に、自車両と判定対象移動体とが衝突すると、衝突判定部60は判定する。一方、自車両軌道に沿って走行する自車両が位置する領域の少なくとも一部と、移動体軌道に沿って走行する判定対象移動体が位置する領域とが重なるタイミングが無い場合に、自車両と判定対象移動体とは衝突しないと、衝突判定部60は判定する。
【0052】
なお、上述したように、衝突判定部60は、自車両軌道に沿って走行する自車両が位置する領域の少なくとも一部と、移動体軌道に沿って走行する判定対象移動体が位置する領域、及びその周囲を囲む所定の幅の領域とが重なるタイミングの有無に基づいて、衝突判定を行ってもよい。
【0053】
本実施の形態では、以下のように、衝突判定ステップS40において、衝突判定部60は、自車両軌道及び移動体軌道の各々の衝突判定の対象に設定される範囲を、第一角度θに応じて変更してもよい。
【0054】
第一角度θが閾値角度θth以上である場合(つまり、第一角度θの閾値角度θthに対する割合Rについて、R=θ/θth≧1が成り立つ場合)、上述のとおり、移動体V20は、判定対象移動体ではないと判定されるため、衝突判定は行われない。
【0055】
第一角度θが0度以下である場合(つまり、割合R=θ/θth≦0である場合)、自車両軌道及び移動体軌道の全範囲が衝突判定の対象に設定される。θが0度以下である場合とは、間隔Yが0以下である場合に相当する。言い換えると、θが0度以下である場合とは、自車両が走行する軌道に沿った方向における移動体V20の前端の位置が、自車両の後端の位置と一致するか、又は、自車両の後端の位置より前方に位置する場合に相当する。
【0056】
第一角度θが0度より大きく、閾値角度θth未満である場合(つまり、0<R=θ/θth<1である場合)、衝突判定部60は、自車両軌道及び移動体軌道の一部の範囲のみが衝突判定の対象に設定される。本実施の形態では、第一角度θの閾値角度θthに対する割合Rに応じて、自車両軌道及び移動体軌道のうち衝突判定の対象に設定される範囲が変更される。具体的には、衝突判定の対象に設定される範囲は、自車両軌道及び移動体軌道の全体の(1-R)倍に相当する範囲である。例えば、本実施の形態では、自車両軌道算出部30は、現時点から3秒後までの自車両軌道を算出している。ここで、例えば、割合Rが、1/3である場合には、自車両軌道のうち衝突判定の対象に設定される範囲は、全体の(1-1/3)倍、つまり、2/3倍に相当する範囲である。この場合、現時点から2(=3×2/3)秒後までの自車両軌道だけが衝突判定の対象に設定される。移動体軌道についても、自車両軌道と同様に、現時点から2秒後までの移動体軌道だけが衝突判定の対象に設定される。
【0057】
以上のような衝突判定ステップS40により、必要以上に衝突判定を行うこと、及び、当該衝突判定に基づいて不要な衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【0058】
衝突判定ステップS40において、自車両と判定対象移動体(移動体V20)とが衝突すると衝突判定部60が判定した場合(衝突判定ステップS40でYes)、走行制御部70は、衝突を回避するための自車両の走行制御を行う(走行制御ステップS50)。走行制御部70は、衝突を回避するための自車両の走行制御として、例えば、自車両を減速させる制御、自車両が走行している車線内の横方向位置が移動体から離れる向きに移動するように操舵する制御などを行う。走行制御ステップS50が完了した後に、移動体判定ステップS10へ戻る。
【0059】
衝突判定ステップS40において、自車両と判定対象移動体(移動体V20)とが衝突しないと衝突判定部60が判定した場合(衝突判定ステップS40でNo)、移動体判定ステップS10へ戻る。
【0060】
以上のように、本実施の形態に係る走行支援方法では、衝突判定の対象となる判定対象移動体を、所定の方位角範囲にある移動体だけに限定することで、必要以上に衝突判定を行うことを抑制できる。これにより、走行支援方法における演算処理量を低減できる。また、衝突判定を行うことを抑制することで、当該衝突判定に基づいて走行制御部70が不要な衝突回避制御を行うことを抑制できる。また、自車両軌道及び移動体軌道のうち衝突判定の対象に設定される範囲を、第一角度θに応じて変更することで、衝突判定の対象に設定される自車両軌道及び移動体軌道の範囲を変化させる。これにより、走行支援方法における演算処理量を低減でき、かつ、不要な衝突判定に基づく不要な衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【0061】
[3.効果など]
以上のように、本実施の形態に係る走行支援方法は、自車両の走行を支援する方法であって、自車両が走行する車線L1の隣の車線L2を走行する後続の移動体V20が、自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定ステップS10と、移動体V20の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出ステップS20と、自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出ステップS30とを含む。本実施の形態に係る走行支援方法は、さらに、自車両軌道と、判定対象移動体の移動体軌道とに基づいて衝突判定を行う衝突判定ステップS40を含む。移動体判定ステップにおいて、自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある移動体のみを判定対象移動体と判定する。
【0062】
このように、衝突判定の対象となる判定対象移動体を、所定の方位角範囲にある移動体だけに限定することで、必要以上に衝突判定を行うことを抑制できる。これにより、走行支援方法における演算処理量を低減できる。また、衝突判定を行うことを抑制することで、当該衝突判定に基づいて走行制御部70が不要な衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【0063】
本実施の形態に係る走行支援方法は、衝突判定ステップS40での判定結果に基づいて、自車両の走行制御を行う走行制御ステップS50をさらに含んでもよい。衝突判定ステップS40において、自車両と判定対象移動体とが衝突すると判定した場合に、走行制御ステップS50において、衝突を回避するための自車両の走行制御を行い、衝突判定ステップS40において、自車両と判定対象移動体とが衝突しないと判定した場合に、走行制御ステップS50において、衝突を回避するための自車両の制御を行わなくてもよい。
【0064】
このような走行制御部70により、自車両と移動体V20との衝突を回避できる。また、衝突判定の対象となる判定対象移動体が、所定の方位角範囲にある移動体だけに限定されているため、走行制御部70が不要な衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【0065】
本実施の形態に係る走行支援方法は、移動体軌道算出ステップS20において、移動体V20のうち判定対象移動体のみの移動体軌道を算出してもよい。
【0066】
これにより、走行支援方法における演算処理量を低減できる。
【0067】
本実施の形態に係る走行支援方法の移動体判定ステップS10において、自車両を基準とした移動体V20の位置に対応する方位角を示す第一角度θが所定の閾値角度θth未満である場合に、移動体V20が判定対象移動体であると判定し、第一角度θが閾値角度θth以上である場合に、移動体V20が判定対象移動体ではないと判定してもよい。第一角度θは、自車両と移動体V20との間の、自車両が走行する軌道に沿った方向における間隔Yの、自車両が走行する軌道に垂直な方向における間隔Xに対する比が正接となる角度であってもよい。
【0068】
これにより、衝突判定の対象となる判定対象移動体を、第一角度θに基づいて適切に選別することが可能となる。したがって、移動体V20との衝突回避制御を可能にしつつ、不要な衝突回避制御を抑制することが可能となる。
【0069】
本実施の形態に係る走行支援方法の衝突判定ステップS40において、自車両軌道及び移動体軌道の各々の衝突判定の対象に設定される範囲を、第一角度θに応じて変更してもよい。
【0070】
これにより、移動体V20の自車両に対する相対位置に基づいて、自車両軌道及び移動体軌道の各々の衝突判定の対象に設定される範囲を変更できる。したがって、自車両と移動体V20との衝突の可能性に合わせて、自車両軌道及び移動体軌道の各々の衝突判定の対象に設定される範囲を必要十分な範囲に設定できる。このため、不要な衝突判定を低減でき、不要な衝突回避制御を抑制できる。
【0071】
本実施の形態に係る走行支援方法の衝突判定ステップS40において、第一角度θが0度以下である場合、自車両軌道及び移動体軌道の全範囲が衝突判定の対象に設定されてもよい。
【0072】
第一角度θが0度以下である場合は、移動体V20が自車両に接近しているため衝突の可能性が高い場合である。このような場合に、本実施の形態では、自車両軌道及び移動体軌道の全範囲において衝突判定を行うことができる。このため、自車両と移動体V20との衝突の可能性が高い場合に、最大限に衝突の可能性を予測できる。
【0073】
本実施の形態に係る走行支援方法の衝突判定ステップS40において、第一角度θが0度より大きく、閾値角度θth未満である場合、自車両軌道及び移動体軌道の一部の範囲のみが衝突判定の対象に設定されてもよい。
【0074】
このような衝突判定ステップS40による効果について、比較例と比較しながら図5及び図6を用いて説明する。図5は、比較例の走行支援方法による自車両の走行制御の態様を示す模式図である。図6は、本実施の形態に係る走行支援方法による自車両の走行制御の態様を示す模式図である。図5及び図6には、現時点より所定の時間t0だけ先の時点t1における、走行支援方法によって制御された自車両の位置Tr11、及び移動体V20の移動体軌道に対応する位置Tr21が示されている。また、図5及び図6には、時点t1より時間t0だけ先の時点t2における、走行支援方法によって制御された自車両の位置Tr12、及び移動体V20の移動体軌道に対応する位置Tr22が示されている。また、図5及び図6には、時点t2より時間t0だけ先の時点t3における、走行支援方法によって制御された自車両の位置Tr13、及び移動体V20の移動体軌道に対応する位置Tr23が示されている。また、図5及び図6には、時点t3より時間t0だけ先の時点t4における、走行支援方法によって制御された自車両の位置Tr14、及び移動体V20の移動体軌道に対応する位置Tr24が示されている。
【0075】
比較例の走行支援方法は、すべての移動体を判定対象移動体とし、自車両軌道及び移動体軌道の全範囲において衝突判定を行う点において、本実施の形態に係る走行支援方法と相違し、その他の点において一致する。
【0076】
ここで、自車両(図5及び図6に示される自律移動体V10)に対する移動体V20の位置に対応する第一角度θの閾値角度θthに対する割合Rが0.5であると仮定する。
【0077】
図5及び図6に示される例では、現時点から時点t4までの自車両軌道及び移動体軌道が算出されると仮定する。また、移動体V20の移動体軌道が図5及び図6に示される位置Tr21~Tr24のように、車線L2から自車両が走行する車線L1に進入する場合について説明する。
【0078】
比較例の走行支援方法では、第一角度θに依存せずに、移動体V20の移動体軌道の全範囲において、衝突判定を行う。ここで、図5に示されるように、移動体V20が位置Tr24にまで走行した場合に、自車両と移動体V20とが衝突すると判定される。そこで、比較例の走行支援方法では、自車両の衝突回避制御を行う。これにより、自車両は、図5の位置Tr11~Tr14で示されるように、減速され、車線L2から離れる向きに操舵される。これにより、自車両は移動体V20との衝突を回避できる。しかしながら、移動体V20が、必要のない操舵を頻繁に行うなどの不安定な走行を行っている場合には、移動体V20の走行に応じて、自車両が頻繁に衝突回避制御を行い得る。
【0079】
一方、本実施の形態に係る走行支援方法では、割合Rが0.5であることから、移動体軌道のうち、半分の範囲のみが衝突判定の対象に設定される。図6に示される例では、移動体軌道に対応する位置Tr21~Tr24のうち、位置Tr21及びTr22で示される範囲だけが、衝突判定の対象となり、位置Tr23及びTr24は、衝突判定の対象とならない。このため、図6に示されるように、時点t4における自車両軌道と移動体軌道とに基づいて衝突判定を行うと、自車両と移動体V20とが衝突すると判定される状況であるにも関わらず、本実施の形態では、自車両は、移動体V20と衝突すると判定されない。したがって、本実施の形態では、移動体V20が不安定な走行を行っている場合などに、不必要な衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【0080】
本実施の形態に係る走行支援方法において、閾値角度θthは、変更可能であってもよい。
【0081】
これにより、例えば、自車両の周辺の環境、天候などに応じて閾値角度θthを適切な値に設定できるため、より一層適切な衝突回避制御が可能となる。
【0082】
本実施の形態に係るプログラムは、本実施の形態に係る走行支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0083】
これにより、本実施の形態に係る走行支援方法と同様の効果が奏される。
【0084】
本実施の形態に係る走行支援装置100は、自車両の走行を支援する装置であって、自車両が走行する車線L1の隣の車線L2を走行する後続の移動体V20が、自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定部50と、移動体V20の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出部40と、自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出部30とを備える。走行支援装置100は、さらに、自車両軌道と、判定対象移動体の移動体軌道とに基づいて衝突判定を行う衝突判定部60を備える。移動体判定部50は、自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある移動体V20のみを判定対象移動体と判定する。
【0085】
このように、衝突判定の対象となる判定対象移動体を、所定の方位角範囲にある移動体だけに限定することで、必要以上に衝突判定を行うことを抑制できる。これにより、走行支援方法における演算処理量を低減できる。また、衝突判定を行うことを抑制することで、当該衝突判定に基づいて走行制御部70が不要な衝突回避制御を行うことを抑制できる。
【0086】
本実施の形態に係る自律移動体V10は、走行支援装置100と、移動体V20の位置情報を取得する取得部10とを備える。
【0087】
これにより、上記走行支援装置100と同様の効果が奏される。
【0088】
(変形例等)
以上、本発明の一態様に係る走行支援方法等について、実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、実施の形態に限定されるものではない。本発明の趣旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を実施の形態に施したものも、本発明の範囲内に含まれてもよい。
【0089】
例えば、上記実施の形態では、走行支援装置100は、取得部10を備えないが、走行支援装置100は、取得部10を備えてもよい。
【0090】
また、上記実施の形態に係る走行支援方法のステップの順序は、入れ替えてもよい。例えば、移動体判定ステップS10、移動体軌道算出ステップS20、及び自車両軌道算出ステップS30の順序は、上記実施の形態で示した順序に限定されず、任意に入れ替えてもよい。
【0091】
本発明の走行支援装置及び走行支援方法は、自動運転を行う自律移動体に適用されたが、自律移動体以外の移動体に適用されてもよい。本発明の走行支援装置及び走行支援方法は、例えば、ユーザが運転を行う車両などに適用されてもよい。
【0092】
また、以下に示す形態も、本開示の一つ又は複数の態様の範囲内に含まれてもよい。
【0093】
(1)上記の走行支援装置100に含まれる構成要素の一部は、マイクロプロセッサ、ROM、RAM、ハードディスクユニット、ディスプレイユニット、キーボード、マウス等から構成されるコンピュータシステムであってもよい。前記RAM又はハードディスクユニットには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、その機能を達成する。ここでコンピュータプログラムは、所定の機能を達成するために、コンピュータに対する指令を示す命令コードが複数個組み合わされて構成されたものである。
【0094】
(2)上記の走行支援装置100に含まれる構成要素の一部は、1個のシステムLSI(Large Scale Integration:大規模集積回路)から構成されているとしてもよい。システムLSIは、複数の構成部を1個のチップ上に集積して製造された超多機能LSIであり、具体的には、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等を含んで構成されるコンピュータシステムである。前記RAMには、コンピュータプログラムが記憶されている。前記マイクロプロセッサが、前記コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、システムLSIは、その機能を達成する。
【0095】
(3)上記の走行支援装置100に含まれる構成要素の一部は、各装置に脱着可能なICカード又は単体のモジュールから構成されているとしてもよい。前記ICカード又は前記モジュールは、マイクロプロセッサ、ROM、RAM等から構成されるコンピュータシステムである。前記ICカード又は前記モジュールは、上記の超多機能LSIを含むとしてもよい。マイクロプロセッサが、コンピュータプログラムにしたがって動作することにより、前記ICカード又は前記モジュールは、その機能を達成する。このICカード又はこのモジュールは、耐タンパ性を有するとしてもよい。
【0096】
(4)また、上記の走行支援装置100に含まれる構成要素の一部は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号をコンピュータで読み取り可能な記録媒体、例えば、フレキシブルディスク、ハードディスク、CD-ROM、MO、DVD、DVD-ROM、DVD-RAM、BD(Blu-ray(登録商標) Disc)、半導体メモリ等に記録したものとしてもよい。また、これらの記録媒体に記録されている前記デジタル信号であるとしてもよい。
【0097】
また、上記の走行支援装置100に含まれる構成要素の一部は、前記コンピュータプログラム又は前記デジタル信号を、電気通信回線、無線又は有線通信回線、インターネットを代表とするネットワーク、データ放送等を経由して伝送するものとしてもよい。
【0098】
(5)本開示は、上記に示す走行支援方法であるとしてもよい。また、上記の走行支援方法をコンピュータにより実現させるためのコンピュータプログラムであるとしてもよいし、前記コンピュータプログラムからなるデジタル信号であるとしてもよい。さらに、本開示は、そのコンピュータプログラムを記録したCD-ROM等である非一時的なコンピュータ読み取り可能な記録媒体として実現してもよい。
【0099】
(6)また、本開示は、マイクロプロセッサとメモリを備えたコンピュータシステムであって、前記メモリは、上記コンピュータプログラムを記憶しており、前記マイクロプロセッサは、前記コンピュータプログラムにしたがって動作するとしてもよい。
【0100】
(7)また、前記プログラム又は前記デジタル信号を前記記録媒体に記録して移送することにより、又は前記プログラム又は前記デジタル信号を、前記ネットワーク等を経由して移送することにより、独立した他のコンピュータシステムにより実施するとしてもよい。
【0101】
(8)上記実施の形態及び上記変形例をそれぞれ組み合わせるとしてもよい。
【0102】
(付記)
また、以上の記載により、下記の技術が開示される。
【0103】
(技術1)自車両の走行を支援する走行支援方法であって、前記自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体が前記自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定ステップと、前記移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出ステップと、前記自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出ステップと、前記自車両軌道と、前記判定対象移動体の前記移動体軌道とに基づいて前記自車両と前記判定対象移動体との衝突判定を行う衝突判定ステップとを含み、前記移動体判定ステップにおいて、前記自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある前記移動体のみを前記判定対象移動体と判定する走行支援方法。
【0104】
(技術2)前記衝突判定ステップでの判定結果に基づいて、前記自車両の走行制御を行う走行制御ステップをさらに含み、前記衝突判定ステップにおいて、前記自車両と前記判定対象移動体とが衝突すると判定した場合に、前記走行制御ステップにおいて、衝突を回避するための前記自車両の走行制御を行い、前記衝突判定ステップにおいて、前記自車両と前記判定対象移動体とが衝突しないと判定した場合に、前記走行制御ステップにおいて、衝突を回避するための前記自車両の制御を行わない技術1に記載の走行支援方法。
【0105】
(技術3)前記移動体軌道算出ステップにおいて、前記移動体のうち前記判定対象移動体のみの前記移動体軌道を算出する技術1又は2に記載の走行支援方法。
【0106】
(技術4)前記移動体判定ステップにおいて、前記自車両を基準とした前記移動体の位置に対応する前記方位角を示す第一角度が所定の閾値角度未満である場合に、前記移動体が前記判定対象移動体であると判定し、前記第一角度が前記閾値角度以上である場合に、前記移動体が前記判定対象移動体ではないと判定し、前記第一角度は、前記自車両と前記移動体との間の、前記自車両が走行する軌道に沿った方向における間隔の、前記自車両が走行する軌道に垂直な方向における間隔に対する比が正接となる角度である技術1~3のいずれか1つに記載の走行支援方法。
【0107】
(技術5)前記衝突判定ステップにおいて、前記自車両軌道及び前記移動体軌道の各々の前記衝突判定の対象に設定される範囲を、前記第一角度に応じて変更する技術4に記載の走行支援方法。
【0108】
(技術6)前記衝突判定ステップにおいて、前記第一角度が0度以下である場合、前記自車両軌道及び前記移動体軌道の全範囲が衝突判定の対象に設定される技術5に記載の走行支援方法。
【0109】
(技術7)前記衝突判定ステップにおいて、前記第一角度が0度より大きく、前記閾値角度未満である場合、前記自車両軌道及び前記移動体軌道の一部の範囲のみが前記衝突判定の対象に設定される技術5又は6に記載の走行支援方法。
【0110】
(技術8)前記閾値角度は、変更可能である技術4~7のいずれか1つに記載の走行支援方法。
【0111】
(技術9)技術1~8のいずれか1つに記載の走行支援方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0112】
(技術10)自車両の走行を支援する走行支援装置であって、前記自車両が走行する車線の隣の車線を走行する後続の移動体が前記自車両との衝突判定の対象となる判定対象移動体であるか否かを判定する移動体判定部と、前記移動体の予測軌道である移動体軌道を算出する移動体軌道算出部と、前記自車両の予測軌道である自車両軌道を算出する自車両軌道算出部と、前記自車両軌道と、前記判定対象移動体の前記移動体軌道とに基づいて前記衝突判定を行う衝突判定部とを備え、前記移動体判定部は、前記自車両を基準とした方位角のうち、所定の方位角範囲内にある前記移動体のみを前記判定対象移動体と判定する走行支援装置。
【0113】
(技術11)技術10に記載の走行支援装置と、前記移動体の位置情報を取得する取得部とを備える自律移動体。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の一態様に係る走行支援方法等は、例えば、自動運転を支援するために車両等に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
10 取得部
30 自車両軌道算出部
40 移動体軌道算出部
50 移動体判定部
60 衝突判定部
70 走行制御部
80 記憶部
100 走行支援装置
L1、L2 車線
V10 自律移動体
V20 移動体
図1
図2
図3
図4
図5
図6