(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074664
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】エンジンの回転変動抑制装置
(51)【国際特許分類】
B60W 20/15 20160101AFI20240524BHJP
B60K 6/485 20071001ALI20240524BHJP
B60W 10/08 20060101ALI20240524BHJP
F02B 63/04 20060101ALI20240524BHJP
F02D 45/00 20060101ALI20240524BHJP
F02D 29/06 20060101ALI20240524BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20240524BHJP
B60L 15/20 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B60W20/15
B60K6/485 ZHV
B60W10/08 900
F02B63/04 Z
F02D45/00 362
F02D29/06 G
B60L50/16
B60L15/20 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185971
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 智也
【テーマコード(参考)】
3D202
3G093
3G384
5H125
【Fターム(参考)】
3D202AA09
3D202BB00
3D202BB16
3D202CC41
3D202DD05
3D202DD17
3D202DD18
3G093BA02
3G093CA09
3G093DA01
3G093DA06
3G093EA03
3G093FA04
3G384AA28
3G384BA52
3G384DA56
3G384ED03
3G384ED04
3G384ED06
3G384FA07Z
3G384FA56Z
3G384FA58Z
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125BA01
5H125CA01
5H125EE31
5H125EE42
(57)【要約】
【課題】エンジンの回転変動をより一層抑制することが可能なエンジンの回転変動抑制装置を提供する。
【解決手段】回転変動抑制装置は、エンジンと、エンジンの回転軸に連結された発電モータ(発電電動機)と、を備えて、発電モータが発生するトルクによって、エンジンの回転変動を抑制するものであって、エンジンが排気行程にあることを検出する排気行程検出部(第1の検出部)と、エンジンの回転数が所定値以下であって、尚且つ、エンジンが排気行程にあることを条件として、発電モータを力行運転させるモータ駆動制御部(駆動制御部)と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンの回転軸に連結された発電電動機と、を備えて、前記発電電動機が発生するトルクによって、前記エンジンの回転変動を抑制するエンジンの回転変動抑制装置であって、
前記エンジンが排気行程にあることを検出する第1の検出部と、
前記エンジンの回転数が所定値以下であって、尚且つ、前記エンジンが排気行程にあることを条件として、前記発電電動機を力行運転させる駆動制御部と、を備える
エンジンの回転変動抑制装置。
【請求項2】
前記エンジンが燃焼行程にあることを検出する第2の検出部を更に備えて、
前記駆動制御部は、前記エンジンが燃焼行程にあることを条件として、前記発電電動機を回生運転させない、
請求項1に記載のエンジンの回転変動抑制装置。
【請求項3】
前記エンジンの目標回転数と実際の回転数との差分量を検出する第3の検出部を更に備えて、
前記駆動制御部は、前記差分量に基づいて、前記発電電動機を力行運転させる際に印加する電流値を決定する、
請求項1または請求項2に記載のエンジンの回転変動抑制装置。
【請求項4】
前記エンジンのアクセル開度を検出する第4の検出部を更に備えて、
前記駆動制御部は、前記アクセル開度に基づいて、前記発電電動機を力行運転させる際に印加する電流値を決定する、
請求項1または請求項2に記載のエンジンの回転変動抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの回転変動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンが発生するトルクを打ち消す方向にモータによる反力を加えることによって、エンジンの回転数変動を抑制するエンジンの回転数変動抑制装置が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたエンジンの回転数変動抑制装置では、例えば、エンジンの燃焼行程中においては、燃焼によりピストンが下降する力と、モータによりエンジンの回転変動を抑制する反力とが合成される。これによって、ピストンが振動して、エンジンの振動が増加してしまう恐れがあった。
【0005】
本発明の目的は、エンジンの回転変動をより一層抑制することが可能なエンジンの回転変動抑制装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の目的を達成するため、本発明のエンジンの回転変動抑制装置は、エンジンと、前記エンジンの回転軸に連結された発電電動機と、を備えて、前記発電電動機が発生するトルクによって、前記エンジンの回転変動を抑制するエンジンの回転変動抑制装置であって、前記エンジンが排気行程にあることを検出する第1の検出部と、前記エンジンの回転数が所定値以下であって、尚且つ、前記エンジンが排気行程にあることを条件として、前記発電電動機を力行運転させる駆動制御部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、エンジンの回転変動をより一層抑制することができる。
【0008】
また、本発明に係るエンジンの回転変動抑制装置は、前記エンジンが燃焼行程にあることを検出する第2の検出部を更に備えて、前記駆動制御部は、前記エンジンが燃焼行程にあることを条件として、前記発電電動機を回生運転させない。
【0009】
この構成によれば、エンジンが燃焼行程にある場合に、発電電動機によるエンジンの回転変動の抑制制御を行わないため、燃焼行程におけるエンジンの回転変動の増加を防止することができる。
【0010】
また、本発明に係るエンジンの回転変動抑制装置は、前記エンジンの目標回転数と実際の回転数との差分量を検出する第3の検出部を更に備えて、前記駆動制御部は、前記差分量に基づいて、前記発電電動機を力行運転させる際に印加する電流値を決定する。
【0011】
この構成によれば、エンジンの運転状態に応じて、エンジンの回転変動の抑制量を適切に設定することができる。
【0012】
また、本発明に係るエンジンの回転変動抑制装置は、前記エンジンのアクセル開度を検出する第4の検出部を更に備えて、前記駆動制御部は、前記アクセル開度に基づいて、前記発電電動機を力行運転させる際に印加する電流値を決定する。
【0013】
この構成によれば、エンジンに対する運転者の運転指示に応じて、エンジンの回転変動の抑制量を適切に設定することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エンジンの回転変動をより一層抑制することが可能なエンジンの回転変動抑制装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、実施形態に係るエンジンの回転変動抑制装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、エンジンの回転変動抑制装置が備えるECUの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【
図3A】
図3Aは、回転変動抑制装置による回転数変動の抑制制御を行わない場合のエンジンの回転数とエンジンマウントの振動加速度の一例を示すグラフである。
【
図3B】
図3Bは、回転変動抑制装置による回転数変動の抑制効果の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、比較例における回転数変動の抑制例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、実施形態に係る回転変動抑制装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0017】
(エンジンの回転変動抑制装置の概略構成)
図1を用いて、本発明の実施形態のエンジンの回転変動抑制装置10の概略構成を説明する。
図1は、実施形態に係るエンジンの回転変動抑制装置の概略構成を示すブロック図である。
【0018】
エンジンの回転変動抑制装置10は、非図示の車両に搭載されて、エンジン12と、発電モータ13と、ECU15と、クランク角センサ16と、回転数センサ17と、インバータ18と、コンバータ19と、バッテリー20とを備える。
【0019】
エンジン12は、例えば、ガソリンエンジンであって、車両の駆動源である。
【0020】
発電モータ13は、エンジン12と連結される、例えば、永久磁石同期モータである。発電モータ13の回転軸は、エンジン12のクランクシャフト14と非図示のギヤを介して機械的に連結されている。発電モータ13は、エンジン12を始動する際に、力行運転することによって、スタータモータの役割を果たす。また、発電モータ13は、力行運転することによって、エンジン12の駆動トルクに自身の駆動トルクを加えて、車両の駆動力を補助する、いわゆるマイルドハイブリッドシステムを構成する。更に、発電モータ13は、クランクシャフト14の回転トルクによって回生運転を行うことによって発電を行い、後述するバッテリー20の充電を行う。なお、発電モータ13に要求される出力がバッテリー20の出力よりも小さいときには、エンジン12を停止して、発電モータ13のみで車両を駆動してもよい。なお、発電モータ13は、本開示における発電電動機の一例である。
【0021】
ECU15は、各種センサの情報を取得して、必要な演算を行うことによって、回転変動抑制装置10の制御を行う。
【0022】
クランク角センサ16は、エンジン12の回転駆動力を伝達する。
【0023】
回転数センサ17は、発電モータ13の回転数を検出する。回転数センサ17は、例えばレゾルバである。
【0024】
インバータ18は、発電モータ13が出力する交流電圧を直流電圧に変換する。また、インバータ18は、コンバータ19が出力する直流電圧を交流電圧に変換する。
【0025】
コンバータ19は、インバータ18が出力する直流電圧を降圧する。また、コンバータ19は、バッテリー20が出力する直流電圧を昇圧する。
【0026】
バッテリー20は、充電が可能な二次電池であり、例えば、リチウムイオン電池である。
【0027】
エンジン12の始動時において、回転変動抑制装置10は、バッテリー20から出力される直流電圧をコンバータ19により昇圧して、昇圧された直流電圧をインバータ18で交流電圧に変換する。そして、回転変動抑制装置10は、インバータ18で変換された交流電圧を発電モータ13に供給する。これにより、発電モータ13が力行運転されて、エンジン12が発電モータ13によりクランキングされる。クランキングによりエンジン12のクランクシャフトの回転数が始動に必要な回転数まで上昇した状態で、エンジン12の点火プラグがスパークされると、エンジン12が始動する。
【0028】
また、エンジン12が運転中に、回転変動抑制装置10は、発電モータ13を力行運転させることによって、エンジン12が発生する駆動トルクと、発電モータ13が発生する駆動トルクとによって、車両を駆動する。
【0029】
また、回転変動抑制装置10は、車両が減速した際や、バッテリー20の容量が所定値以下である場合に、発電モータ13を回生運転する。このとき、発電モータ13からの交流電圧がインバータ18で直流電圧に変換され、インバータ18から出力される直流電圧がコンバータ19で降圧されて、降圧後の直流電圧がバッテリー20に供給されることにより、バッテリー20が充電される。
【0030】
なお、
図1において、回転変動抑制装置10は、更に、バッテリー20の電力によって駆動される駆動用モータを備える構成であってもよい。
【0031】
(ECUの機能構成)
図2を用いて、エンジンの回転変動抑制装置10が備えるECU15の機能構成を説明する。
図2は、エンジンの回転変動抑制装置が備えるECUの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0032】
回転変動抑制装置10のECU15は、エンジン運転状態検出部31と、クランク角検出部32と、エンジン回転数検出部33と、排気行程検出部34と、燃焼行程検出部35と、回転数変動量検出部36と、アクセル開度検出部37と、モータ駆動制御部38とを備える。
【0033】
エンジン運転状態検出部31は、エンジン12が運転中であるか否かを判断する。エンジン運転状態検出部31は、例えば、車両に搭載された非図示のイグニッションスイッチや電源スイッチがONであるときに、エンジン12が運転中であると判断する。
【0034】
クランク角検出部32は、エンジン12のクランクシャフト14の回転角度を検出する。具体的には、クランク角検出部32は、例えば、クランクシャフト14の外周に形成した複数の突起を電磁ピックアップによって検出する非図示のクランク角センサによって、クランクシャフト14の回転角度を検出する。
【0035】
エンジン回転数検出部33は、エンジン12の回転数を検出する。エンジン回転数検出部33は、例えば、磁気ピックアップを利用した回転数センサによって、エンジン12の回転数を検出する。
【0036】
排気行程検出部34は、エンジン12が排気行程にあることを検出する。具体的には、排気行程検出部34は、クランク角検出部32が検出したクランク角に基づいて、エンジン12が排気行程にあることを検出する。なお、排気行程検出部34は、本開示における第1の検出部の一例である。
【0037】
燃焼行程検出部35は、エンジン12が燃焼行程にあることを検出する。具体的には、燃焼行程検出部35は、クランク角検出部32が検出したクランク角に基づいて、エンジン12が燃焼行程にあることを検出する。なお、燃焼行程検出部35は、本開示における第2の検出部の一例である。
【0038】
回転数変動量検出部36は、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量を検出する。なお、回転数変動量検出部36は、本開示における第3の検出部の一例である。
【0039】
アクセル開度検出部37は、アクセルペダルの踏込量に応じたアクセル開度を検出する。具体的には、なお、アクセル開度検出部37は、アクセルペダルの操作量を検出する非図示のアクセルポジションセンサ等を用いてアクセル開度を検出する。アクセル開度検出部37は、本開示における第4の検出部の一例である。
【0040】
モータ駆動制御部38は、エンジン12の動作状態に応じて、発電モータ13の運転状態を制御する。具体的には、モータ駆動制御部38は、エンジン12の回転数が、所定値以下であって、尚且つ、エンジン12が排気行程にあることを条件として、発電モータ13を力行運転させる。また、モータ駆動制御部38は、エンジン12が燃焼行程にあることを条件として、発電モータ13を回生運転させない。また、モータ駆動制御部38は、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量に基づいて発電モータ13を力行運転させる際に印加する電流値を決定する。また、モータ駆動制御部38は、アクセル開度に基づいて、発電モータ13を力行運転させる際に印加する電流値を決定する。
【0041】
(エンジンの回転数変動の抑制効果)
図3A,
図3Bと
図4を用いて、回転変動抑制装置10による回転数変動の抑制効果について説明する。
図3Aは、回転変動抑制装置による回転数変動の抑制制御を行わない場合のエンジンの回転数とエンジンマウントの振動加速度の一例を示すグラフである。
図3Bは、回転変動抑制装置による回転数変動の抑制効果の一例を示すグラフである。
図4は、比較例における回転数変動の抑制効果の一例を示すグラフである。
【0042】
図3A,
図3Bは、本実施形態の回転変動抑制装置10の動作の一例を示す。
図3A,
図3Bの横軸は時刻tを示す。
図3Aの縦軸は、エンジン回転数Rと、車両のフロントエンジンマウントの振動加速度aとを示す。
図3Bの縦軸は、エンジン回転数Rと、発電モータ13に流す電流Id、電流Iqと、車両のフロントエンジンマウントの振動加速度aとを示す。なお、電流Id、電流Iqは、発電モータ13が三相交流モータである場合に、3相電流を、直交する2相電流に変換したものである。この変換は、周知のクラーク変換によって行われる。
【0043】
図3Аに示すように、回転変動抑制装置10が回転変動抑制を行わない場合、エンジン回転数Rは、時刻とともに変動する。そして、エンジン回転数Rの変動によって発生する振動がエンジンマウントに伝わる。その結果、エンジンマウントには、
図3Aに示す振動加速度aが生じる。この振動加速度aは、車両の乗員に伝わるため、乗員に不快感を与える場合がある。
【0044】
本実施形態の回転変動抑制装置10は、エンジン12の排気行程中に、発電モータ13を力行運転させる。また、回転変動抑制装置10は、エンジン12の燃焼行程中に、発電モータ13に電流Id、電流Iqを流さない。
【0045】
その結果、
図3Bに示すように、エンジン回転数Rの振動(回転数変動量)が、回転変動抑制装置10を動作させていない
図3Aに比べて減少する。なお、
図3Aと
図3Bとは横軸のスケールが異なっているため、エンジン回転数Rの位相が異なるように見えるが、
図3Bは
図3Aに対して、エンジン回転数Rの振幅が明らかに小さくなっていることがわかる。
【0046】
そして、
図3Bは
図3Aに対して、エンジン回転数Rの振動(回転数変動量)が小さくなることによって、エンジンマウントの振動加速度aも小さくなっている。そのため、車両の乗員に伝わる振動も小さくなる。
【0047】
なお、
図3Bに示すように、回転変動抑制装置10は、エンジン12の排気行程中に、発電モータ13に電流Id、電流Iqを流して力行運転を行わせる。そして、回転変動抑制装置10は、エンジン12の燃焼行程中には、発電モータ13への通電を停止する。
【0048】
本実施形態の回転変動抑制装置10は、排気行程中に発電モータ13に流す電流Id、電流Iqの量(電流値)を、例えば、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量に応じて決定する。そして、例えば、差分量が大きいほど、電流Id、電流Iqの量を多くする。なお、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量は、前記した回転数変動量検出部36(
図2参照)で検出される。そして、回転変動抑制装置10は、検出された差分量に応じて決定された印加電流を、例えばPI制御に反映させることによって、エンジン12の次の周期の排気行程において、発電モータ13に印加する。
【0049】
また、本実施形態の回転変動抑制装置10は、排気行程中に発電モータ13に流す電流Id、電流Iqの量(電流値)を、アクセル開度に応じて決定する。そして、例えば、アクセル開度が大きいほど、電流Id、電流Iqの量を多くする。アクセル開度は、前記したアクセル開度検出部37(
図2参照)で検出される。そして、回転変動抑制装置10は、検出されたアクセル開度に応じて決定された印加電流を、例えばPI制御に反映させることによって、エンジン12の次の周期の排気行程において、発電モータ13に印加する。
【0050】
なお、回転変動抑制装置10は、所定の回転数以下の領域(例えば、毎分2000回転以下の領域)のみで、前記したエンジン12の回転変動抑制制御を行うのが望ましい。これは、エンジン12の高回転領域においては、発電モータ13からバッテリー20に充電を行うために、発電モータ13に無駄な運転をさせないためである。なお、所定の回転数は、エンジン12の仕様によって異なるため、適宜設定される。
【0051】
(比較例におけるエンジンの回転数変動の抑制例)
図4を用いて、比較例によるエンジン12の回転数変動の抑制例を説明する。
図4は、比較例における回転数変動の抑制例を示すグラフである。
【0052】
図4では、エンジン12が排気行程中に発電モータ13を力行運転させて、エンジン12が燃焼行程中に発電モータ13を回生運転させている。その結果、エンジン回転数Rの振動(回転数変動量)は、確かに減少する。
【0053】
しかしながら、エンジン12の燃焼行程中において、エンジンマウントの振動加速度aが極端に増大している。これが、前記したように、エンジンの燃焼によりピストンが下降する力と、モータによりエンジンの回転変動を抑制する反力とが合成されることによって生じた振動である。
【0054】
そして、
図4と
図3Bとを比較すると、本実施形態の回転変動抑制装置10を動作させることによって、燃焼行程におけるエンジンマウントの振動加速度aの増加が抑制されることがわかる。
【0055】
(回転変動抑制装置が行う処理の流れ)
図5を用いて、回転変動抑制装置10が行う処理の流れを説明する。
図5は、実施形態に係る回転変動抑制装置が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0056】
エンジン運転状態検出部31は、エンジン12が運転中であるかを判定する(ステップS11)。エンジン12が運転中であると判定される(ステップS11:Yes)とステップS12に進む。一方、エンジン12が運転中であると判定されない(ステップS11:No)とステップS11の判定を繰り返す。
【0057】
ステップS11において、エンジン12が運転中であると判定されると、エンジン回転数検出部33は、エンジン12の回転数が所定値(例えば、毎秒2000回転)以下であるかを判定する(ステップS12)。エンジン12の回転数が所定値以下であると判定される(ステップS12:Yes)とステップS13に進む。一方、エンジン12の回転数が所定値以下であると判定されない(ステップS12:No)とステップS14に進む。
【0058】
ステップS12において、エンジン12の回転数が所定値以下であると判定されると、排気行程検出部34は、エンジン12が排気行程にあるかを判定する(ステップS13)。エンジン12が排気行程にあると判定される(ステップS13:Yes)とステップS15に進む。一方、エンジン12が排気行程にあると判定されない(ステップS13:No)とステップS19に進む。
【0059】
ステップS12に戻り、ステップS12において、エンジン12の回転数が所定値以下であると判定されないと、モータ駆動制御部38は、発電モータ13を回生運転させる(ステップS14)。その後、ステップS12に戻る。
【0060】
ステップS13に戻り、ステップS13において、エンジン12が排気行程にあると判定されると、回転数変動量検出部36は、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量を取得する(ステップS15)。
【0061】
次に、モータ駆動制御部38は、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分値に応じた、発電モータ13の印加電流を決定する(ステップS16)。
【0062】
そして、モータ駆動制御部38は、ステップS16で決定した印加電流を発電モータ13に印加することによって、発電モータ13を力行運転させる(ステップS17)。なお、より詳細には、モータ駆動制御部38は、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量に応じた発電モータ13への印加電流を、エンジン12の次の周期の排気行程において、発電モータ13に印加する。
【0063】
次に、エンジン運転状態検出部31は、エンジン12が運転中であるかを判定する(ステップS18)。エンジン12が運転中であると判定される(ステップS18:Yes)とステップS12に戻る。一方、エンジン12が運転中であると判定されない(ステップS18:No)と、回転変動抑制装置10は、
図5の処理を終了する。
【0064】
ステップS13に戻り、ステップS13において、エンジン12が排気行程にあると判定されないと、モータ駆動制御部38は、発電モータ13に印加する電流を0にする(ステップS19)。
【0065】
次に、エンジン運転状態検出部31は、エンジン12が運転中であるかを判定する(ステップS20)。エンジン12が運転中であると判定される(ステップS20:Yes)とステップS12に戻る。一方、エンジン12が運転中であると判定されない(ステップS20:No)と、回転変動抑制装置10は、
図5の処理を終了する。
【0066】
なお、
図5に記載した処理の流れは一例であって、回転変動抑制装置10が行う処理の流れは、
図5の流れに限定されるものではない。
【0067】
例えば、回転数変動量検出部36が、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量を取得する代わりに、アクセル開度検出部37が、アクセル開度を検出してもよい。そして、モータ駆動制御部38は、アクセル開度に応じた発電モータ13への印加電流を決定して、決定した印加電流を発電モータ13に印加することによって、発電モータ13を力行運転させてもよい。更に、モータ駆動制御部38は、回転数変動量検出部36が検出したエンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量と、アクセル開度検出部37が検出したアクセル開度と、をともに用いて、発電モータ13への印加電流を決定してもよい。
【0068】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、実施形態の回転変動抑制装置10は、エンジン12と、エンジン12の回転軸に連結された発電モータ13(発電電動機)と、を備えて、発電モータ13が発生するトルクによって、エンジン12の回転変動を抑制するものであって、エンジン12が排気行程にあることを検出する排気行程検出部34(第1の検出部)と、エンジン12の回転数が所定値以下であって、尚且つ、エンジン12が排気行程にあることを条件として、発電モータ13を力行運転させるモータ駆動制御部38(駆動制御部)と、を備える。したがって、エンジン12の回転変動をより一層抑制することができる。
【0069】
また、実施形態の回転変動抑制装置10は、エンジン12が燃焼行程にあることを検出する燃焼行程検出部35(第2の検出部)を更に備えて、モータ駆動制御部38(駆動制御部)は、エンジン12が燃焼行程にあることを条件として、発電モータ13を回生運転させない。したがって、エンジン12が燃焼行程にある場合に、発電モータ13によるエンジン12の回転変動の抑制制御を行わないため、燃焼行程におけるエンジン12の回転変動の増加を防止することができる。
【0070】
また、実施形態の回転変動抑制装置10は、エンジン12の目標回転数と実際の回転数との差分量を検出する回転数変動量検出部36(第3の検出部)を更に備えて、モータ駆動制御部38(駆動制御部)は、差分量に基づいて、発電モータ13を力行運転させる際に印加する電流値を決定する。したがって、エンジン12の運転状態に応じて、エンジン12の回転変動の抑制量を適切に設定することができる。
【0071】
また、実施形態の回転変動抑制装置10は、エンジン12のアクセル開度を検出するアクセル開度検出部37(第4の検出部)を更に備えて、モータ駆動制御部38(駆動制御部)は、アクセル開度に基づいて、発電モータ13を力行運転させる際に印加する電流値を決定する。したがって、エンジン12に対する運転者の運転指示に応じて、エンジン12の回転変動の抑制量を設定に変更することができる。
【0072】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、上述した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0073】
10 回転変動抑制装置
12 エンジン
13 発電モータ(発電電動機)
14 クランクシャフト
15 ECU
16 クランク角センサ
17 回転数センサ
18 インバータ
19 コンバータ
20 バッテリー
31 エンジン運転状態検出部
32 クランク角検出部
33 エンジン回転数検出部
34 排気行程検出部(第1の検出部)
35 燃焼行程検出部(第2の検出部)
36 回転数変動量検出部(第3の検出部)
37 アクセル開度検出部(第4の検出部)
38 モータ駆動制御部(駆動制御部)