(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074666
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】校正装置および校正方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/04 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
H05K13/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185976
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大月 孝浩
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353AA01
5E353CC01
5E353CC03
5E353CC04
5E353EE90
5E353GG01
5E353GG29
5E353HH11
5E353HH51
5E353JJ01
5E353JJ22
5E353JJ45
5E353JJ48
5E353JJ52
5E353JJ54
5E353KK02
5E353KK03
5E353KK11
5E353NN12
5E353QQ08
(57)【要約】
【課題】校正ツールが不足しても校正処理を実行することができる作業ヘッドの校正装置および校正方法を提供することを目的とする。
【解決手段】校正装置は、ツールステーションにおける校正ツールの収容数が作業ヘッドにおけるホルダ数より少ない場合に、校正処理における測定工程が複数回に亘り実行されるように設定する設定部を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機内に設けられたツールステーションとの間でツールを自動交換可能に構成され、基板に前記ツールを用いた所定の対基板作業を実行する作業ヘッドを備える対基板作業機に適用され、前記作業ヘッドの校正処理を実行する校正装置であって、
前記校正処理には、対基板作業機の前記作業ヘッドに設けられた複数のホルダに前記校正処理に適用可能な校正ツールを取り付けて機内における複数の前記ホルダの実位置をそれぞれ測定する測定工程が含まれ、
前記ツールステーションにおける前記校正ツールの収容数が前記作業ヘッドにおけるホルダ数より少ない場合に、前記校正処理における前記測定工程が複数回に亘り実行されるように設定する設定部を備える校正装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記ホルダ数を前記収容数で除算したときの商に、剰余があれば1を加え、剰余がなければ0を加えた数を前記測定工程の実行回数に設定する、請求項1に記載の校正装置。
【請求項3】
前記校正処理には、複数の前記ホルダごとの実位置に基づいて複数の前記ホルダの校正量を算出する算出工程が含まれ、
複数回の前記測定工程が実行された後に、前記算出工程を実行する処理制御部をさらに備える、請求項1または2に記載の校正装置。
【請求項4】
前記処理制御部は、前記測定工程において不良の前記ホルダである不良ホルダを検出した場合に、前記算出工程における前記不良ホルダに対する処理をスキップするようにスキップ設定を行う、請求項3に記載の校正装置。
【請求項5】
前記処理制御部は、複数の前記ホルダのうち前記校正ツールの取り付けに失敗した前記ホルダ、または測定された前記実位置が許容範囲外である前記ホルダを前記不良ホルダとして検出する、請求項4に記載の校正装置。
【請求項6】
前記処理制御部は、前記不良ホルダの識別情報に前記スキップ設定を関連付けたスキップ情報を、他の前記ホルダの前記校正量を示す校正情報とともに、前記対基板作業機による前記対基板作業において使用可能に記憶する、請求項4に記載の校正装置。
【請求項7】
前記処理制御部は、前記不良ホルダを検出した場合に、作業者に対して、前記作業ヘッドのメンテナンスを案内し、または前記作業ヘッドによる前記対基板作業において前記不良ホルダを除いた正常の前記ホルダが用いられることを通知する、請求項4に記載の校正装置。
【請求項8】
前記対基板作業機は、複数の前記作業ヘッドおよび複数の前記ツールステーションを備え、
前記校正ツールの前記収容数は、複数の前記ツールステーションのそれぞれに収容された前記校正ツールの収容数の合計である、請求項1または2に記載の校正装置。
【請求項9】
複数の前記作業ヘッドのそれぞれを対象とした前記校正処理の実行時期を示す校正処理スケジュールに基づいて、複数の前記ツールステーションのそれぞれにおける前記校正ツールの前記収容数を調整する、請求項8に記載の校正装置。
【請求項10】
複数の前記作業ヘッドのそれぞれを対象とした前記校正処理が同時期に実行予定である場合に、複数の前記ツールステーションのそれぞれにおける前記校正ツールの前記収容数を、同時期に実行される複数の前記校正処理の全体の所要時間に基づいて調整する、請求項8に記載の校正装置。
【請求項11】
前記校正ツールは、前記校正処理に専用である、請求項1または2に記載の校正装置。
【請求項12】
前記作業ヘッドは、前記ツールとして部品を保持する保持部材を前記ホルダに取り付けられて、基板に前記部品を装着する装着ヘッドであり、
前記測定工程は、複数の前記保持部材に保持された前記部品を撮像する部品カメラにより複数の前記校正ツールを撮像して取得された画像データを用いて、複数の前記校正ツールの実位置をそれぞれ測定する、請求項1または2に記載の校正装置。
【請求項13】
機内に設けられたツールステーションとの間でツールを自動交換可能に構成され、基板に前記ツールを用いた所定の対基板作業を実行する作業ヘッドを備える対基板作業機に適用され、前記作業ヘッドの校正処理を実行する校正方法であって、
前記校正処理には、対基板作業機の前記作業ヘッドに設けられた複数のホルダに前記校正処理に適用可能な校正ツールを取り付けて機内における複数の前記ホルダの実位置をそれぞれ測定する測定工程が含まれ、
前記ツールステーションにおける前記校正ツールの収容数が前記作業ヘッドにおけるホルダ数より少ない場合に、前記校正処理における前記測定工程が複数回に亘り実行されるように設定する設定工程を備える校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、校正装置および校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
校正装置は、基板に吸着ノズルなどのツールを用いた所定の対基板作業を実行する作業ヘッドを対象とした校正処理に用いられる。作業ヘッドの校正処理には、移動台に対する作業ヘッドの相対位置を取得し、またツールを取り付けられるホルダの状態を検査するものが知られている(特許文献1,2を参照)。上記の校正処理において、処理精度の向上などを目的として、ホルダに取り付けられた校正ツールが取り付けられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-191888号公報
【特許文献2】特開2009-164276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業ヘッドが吸着ノズルなどのツールをツールステーションとの間で自動交換可能な場合には、校正処理の実行に際して、少なくとも作業ヘッドにおけるホルダ数の校正ツールがツールステーションに予め収容される。しかしながら、ツールステーションにおける校正ツールが不足していると、校正処理を実行できずにエラー停止することになる。
【0005】
本明細書は、校正ツールが不足しても校正処理を実行することができる作業ヘッドの校正装置および校正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、機内に設けられたツールステーションとの間でツールを自動交換可能に構成され、基板に前記ツールを用いた所定の対基板作業を実行する作業ヘッドを備える対基板作業機に適用され、前記作業ヘッドの校正処理を実行する校正装置であって、前記校正処理には、対基板作業機の前記作業ヘッドに設けられた複数のホルダに前記校正処理に適用可能な校正ツールを取り付けて機内における複数の前記ホルダの実位置をそれぞれ測定する測定工程が含まれ、前記ツールステーションにおける前記校正ツールの収容数が前記作業ヘッドにおけるホルダ数より少ない場合に、前記校正処理における前記測定工程が複数回に亘り実行されるように設定する設定部を備える校正装置を開示する。
【0007】
本明細書は、機内に設けられたツールステーションとの間でツールを自動交換可能に構成され、基板に前記ツールを用いた所定の対基板作業を実行する作業ヘッドを備える対基板作業機に適用され、前記作業ヘッドの校正処理を実行する校正方法であって、前記校正処理には、対基板作業機の前記作業ヘッドに設けられた複数のホルダに前記校正処理に適用可能な校正ツールを取り付けて機内における複数の前記ホルダの実位置をそれぞれ測定する測定工程が含まれ、前記ツールステーションにおける前記校正ツールの収容数が前記作業ヘッドにおけるホルダ数より少ない場合に、前記校正処理における前記測定工程が複数回に亘り実行されるように設定する設定工程を備える校正方法を開示する。
【0008】
本明細書では、出願当初の請求項6において「請求項4に記載の校正装置」を「請求項4または5に記載の校正装置」に変更した技術的思想や、出願当初の請求項7において「請求項4に記載の校正装置」を「請求項4-6の何れか一項に記載の校正装置」に変更した技術的思想、出願当初の請求項8において「請求項1または2に記載の校正装置」を「請求項1-7の何れか一項に記載の校正装置」に変更した技術的思想、出願当初の請求項10において「請求項8に記載の校正装置」を「請求項8または9に記載の校正装置」に変更した技術的思想、出願当初の請求項11において「請求項1または2に記載の校正装置」を「請求項1-10の何れか一項に記載の校正装置」に変更した技術的思想、出願当初の請求項12において「請求項1または2に記載の校正装置」を「請求項1-11の何れか一項に記載の校正装置」に変更した技術的思想も開示されている。
【発明の効果】
【0009】
上記のような校正装置および校正方法の構成によると、校正ツールの収容数が作業ヘッドにおけるホルダ数より少ない場合において、測定工程の実行回数が適宜設定されるので、校正処理に必要な複数のホルダの実位置の測定を行うことができる。これにより、ツールステーションにおいて校正ツールが不足する場合においても校正処理を実行することが可能となる。また、対基板作業に必要なツールをツールステーションに収容したときに、残りの収容可能数がホルダ数より少なくても校正ツールを収容しておくことで、校正処理を実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】作業ヘッドの校正装置を適用された生産システムを示す模式図である。
【
図4】
図3のIV方向から見たホルダおよび校正ツールを示す図である。
【
図7】校正ツールの収容数と作業ヘッドにおけるホルダ数に基づいて設定される測定工程の実行回数を示す表である。
【
図8】校正情報およびスキップ情報を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.作業ヘッドの校正装置の概要
校正装置は、基板にツールを用いた所定の対基板作業を実行する作業ヘッドを対象とした校正処理に用いられる。例えば、校正装置は、例えば、
図3に示すように、ツールとしての吸着ノズル46を用いて基板91に部品を装着する装着処理を実行する部品装着機2における装着ヘッド40を校正処理の対象とする。校正処理は、ツールを取り付けられる作業ヘッドのホルダの制御上の位置と、実際の位置との誤差を割り出して校正値を取得する。校正処理は、対基板作業の段取り作業において必要に応じて(例えば、作業ヘッドが交換された場合など)実行される。本実施形態において、対基板作業機としての部品装着機2が構成する生産システムSyに校正装置が適用された態様を例示する。
【0012】
2.生産ラインLnの構成
上記の部品装着機2は、装着処理を所定の対基板作業として実行する対基板作業機である。生産ラインLnは、
図1に示すように、複数の対基板作業機を基板91の搬送方向に複数設置して構成される。複数の対基板作業機のそれぞれは、生産ラインLnを統括して制御するホストコンピュータ70に通信可能に接続される。
【0013】
ホストコンピュータ70は、
図5に示すように、記憶部71を備える。記憶部71は、校正処理スケジュールM1と、収容スケジュールM2とを記憶する。校正処理スケジュールM1は、校正処理の実行時期を示す。校正処理の実行時期は、生産予定の製品基板の種類および生産順序を示す生産計画において、それぞれの対基板作業機に割り当てられた生産処理の段取り替えの実行時期に相当する。但し、生産処理の段取り替えにおいて校正処理が省略される場合もある。
【0014】
上記の収容スケジュールM2は、複数のツールステーション(本実施形態において、ノズルステーション53)に、校正処理に用いられる校正ツール60をどのように収容するかを、校正処理の実行時期に対応させて示す。収容スケジュールM2は、校正ツール60の移動処理に用いられる。校正処理スケジュールM1および収容スケジュールM2の詳細については後述する。
【0015】
生産ラインLnは、複数の対基板作業機としての印刷機1、複数の部品装着機2、リフロー炉3、および検査機4を備える。印刷機1は、搬入された基板91における部品の装着位置にペースト状のはんだを印刷する。複数の部品装着機2のそれぞれは、生産ラインLnの上流側から搬送された基板91に部品を装着する。部品装着機2の構成については後述する。リフロー炉3は、生産ラインLnの上流側から搬送された基板91を加熱して、基板91上のはんだを溶融させてはんだ付けを行う。検査機4は、生産ラインLnにより生産された製品基板の外観または機能が正常であるか否かを検査する。
【0016】
本実施形態において、製品基板の工場には、複数の生産ラインLn(Ln1,Ln2,・・)が構成されていてもよい。なお、複数の生産ラインLnのそれぞれは、例えば生産する製品基板の種類などに応じて、その構成を適宜追加、変更され得る。具体的には、複数の生産ラインLnには、搬送される基板91を一時的に保持するバッファ装置や基板供給装置や基板反転装置、各種検査装置、シールド装着装置、接着剤塗布装置、紫外線照射装置などの対基板作業機が適宜設置され得る。
【0017】
3.部品装着機2の構成
部品装着機2は、
図2に示すように、基板搬送装置10、部品供給装置20、部品移載装置30、部品カメラ51、基板カメラ52、およびノズルステーション53からなる作業ユニットを2組と、制御装置55を備える。以下の説明において、水平方向であって部品装着機2の前後方向(
図2の左下から右上に向かう方向)をY方向とし、Y方向に交差する水平方向であって部品装着機2の左右方向(
図2の左上から右下に向かう方向)をX方向とし、X方向およびY方向に直交する鉛直方向(
図2の上下方向)をZ方向とする。
【0018】
上記の2組の作業ユニットは、Y方向に並んで配置され、Y方向中央部で線対称となるように構成されている。以下では、2組の作業ユニットが設置された一方側(
図2の下側)を第一サイドS1とし、他方側(
図2の上側)を第二サイドS2とし、第一サイドS1の作業ユニットについて構成を説明する。なお、
図2において、2組のユニットを区別するために、各構成の符号に、第一サイドS1側には「A」を付し、第二サイドS2側には「B」を付している。
【0019】
3-1.基板搬送装置10
基板搬送装置10は、Y方向に並んで設置された搬送機構11などにより構成される。搬送機構11は、一対のガイドレール12および一対のコンベアベルト13をそれぞれ有する。一対のガイドレール12は、基板の搬送方向(X方向)に延伸し、コンベアベルト13に載置されて搬送される基板91の周縁を支持する。一対のガイドレール12の少なくとも一方は、Y方向に移動可能に基台に設けられる。
【0020】
基板搬送装置10は、基板91を搬送方向へと順次搬送するとともに、基板91を機内の所定位置に位置決めする。基板搬送装置10は、位置決めされた基板91をクランプするバックアップ装置15を有する(
図3を参照)。基板搬送装置10は、部品の装着処理の実行後に、基板91を部品装着機2の機外に搬出する。
【0021】
3-2.部品供給装置20
部品供給装置20は、X方向に並んで配置された複数のスロット21および複数のリール保持部22を備える。複数のスロット21には、フィーダ23が着脱可能にそれぞれセットされる。フィーダ23は、多数の部品が収納されたキャリアテープを送り移動させて、部品を採取可能に供給する。リール保持部22は、キャリアテープが巻回されたリールを交換可能に保持する。また、部品供給装置20は、例えば比較的大型の部品を、パレットに載置されたトレイ上に並べた状態で供給してもよい。上記のような構成において、部品供給装置20は、複数のパレットを収納する収納装置から装着処理に応じて所定のパレットを引き出して部品を供給する。
【0022】
3-3.部品移載装置30
部品移載装置30は、部品供給装置20により供給された部品を、基板搬送装置10により機内に搬入された基板91上の所定の装着位置まで移載する。部品移載装置30のヘッド駆動装置31は、直動機構により移動台32を水平方向(X方向およびY方向)に移動させる。移動台32には、図示しないクランプ部材により作業ヘッドとしての装着ヘッド40が交換可能に固定される。装着ヘッド40には、種々のツールが着脱可能に取り付けられる。上記のツールには、部品を保持する吸着ノズル46や、後述する校正ツール60が含まれる(
図3を参照)。
【0023】
装着ヘッド40は、
図3に示すように、鉛直軸(Z軸)に平行なR軸回りに回転可能に設けられたロータリヘッド41を有する。ロータリヘッド41は、複数のホルダ42を昇降可能に且つ複数のホルダ42ごとの中心軸(Q軸)回りに回転可能に支持する。複数のホルダ42は、部品92を保持する保持部材をそれぞれ取り付けられる。本実施形態において、保持部材は、ツールの一種であり、供給される負圧エアにより部品92を吸着することにより保持する吸着ノズル46である。なお、保持部材としては、部品を把持することにより保持するチャックなどが採用され得る。
【0024】
吸着ノズル46は、中心軸方向に延伸し、筒状に形成された軸部461を有する。軸部461には、フランジ462が固定される。フランジ462の下面は、吸着ノズル46を下方から撮像する際の背景となる部位である。フランジ462の上面には、吸着ノズル46の識別情報を示すコード463が付されている。
【0025】
装着ヘッド40は、ロータリヘッド41をR軸回りに回転させるR軸回転装置43を有する。R軸回転装置43は、ロータリヘッド41をR軸回りの所定角度に角度決めすることによって、一のホルダ42を後述する昇降装置45により昇降させる昇降位置に割り出す。装着ヘッド40は、ホルダ42をQ軸回りに回転させるQ軸回転装置44を有する。本実施形態において、Q軸回転装置44は、複数のホルダ42を連動して回転させる機構を有し、複数のホルダ42の回転に共用される。上記の構成によると、一のホルダ42がQ軸回りの所定角度に角度決めされると、他の複数のホルダ42は、連動して所定角度に角度決めされる。
【0026】
装着ヘッド40は、複数のホルダ42のうちロータリヘッド41の回転によって昇降位置に割り出されたホルダ42を昇降させる昇降装置45を有する。昇降装置45は、ホルダ42を下降および上昇させることによって、ホルダ42に取り付けられた吸着ノズル46を下降および上昇させる。なお、装着ヘッド40は、2箇所以上の昇降位置を設け、それぞれに位置決めされたホルダ42を昇降可能とするように独立して駆動可能な複数の昇降装置を有する構成を採用し得る。
【0027】
上記のような構成からなる装着ヘッド40に支持されるホルダ42の数(以下、「ホルダ数Vs」)は、装着ヘッド40の種類によって相違し得る。また、装着ヘッド40は、本実施形態のように複数のホルダ42を円環状に等間隔で支持する態様の他に、種々の態様を採用し得る。例えば、装着ヘッド40は、直線状に、またはマトリックス状に配列された複数のホルダ42を支持する態様を採用してもよい。
【0028】
上記のように、本実施形態の部品装着機2は、複数の作業ヘッド(装着ヘッド40A,40B)をY方向に対向して配置された対向ロボットを備える。複数の装着ヘッド40A,40Bのそれぞれの可動領域は重複しており、自機が近接するサイド(例えば、第一装着ヘッド40Aの第一サイドS1)とは反対側のサイド(例えば、第二サイドS2)へアクセス可能に構成され、同一の基板91に対して交互に作業することができる。複数の装着ヘッド40A,40Bは、可動領域が互いに重複する領域において干渉が発生しないように非干渉制御を実行される。
【0029】
3-4.部品カメラ51、基板カメラ52
部品カメラ51、および基板カメラ52は、CMOSなどの撮像素子を有するデジタル式の撮像装置である。部品カメラ51、および基板カメラ52は、制御信号に基づいて撮像を行い、当該撮像により取得した画像データを送出する。部品カメラ51は、吸着ノズル46に保持された部品を下方から撮像可能に構成される。基板カメラ52は、装着ヘッド40と一体的に水平方向に移動可能に移動台32に設けられる。基板カメラ52は、基板91を上方から撮像可能に構成される。
【0030】
また、基板カメラ52は、基板91の表面を撮像対象とする他に、移動台32の可動範囲であれば種々の機器などを撮像対象にできる。例えば、基板カメラ52は、本実施形態において、
図3に示すように、ノズルステーション53に付されたコード(図略)、ノズルステーション53に収容されたツール(吸着ノズル46や校正ツール60)をカメラ視野に収めて撮像することができる。このように、基板カメラ52は、種々の画像処理に用いられる画像データを取得するために、異なる撮像対象の撮像に兼用され得る。
【0031】
3-5.ノズルステーション53
ノズルステーション53は、部品装着機2の機内に設けられる。ノズルステーション53は、対基板作業機としての部品装着機2が対基板作業に用いる種々のツールを収容するツールステーションである。本実施形態において、ノズルステーション53は、複数の吸着ノズル46および校正ツール60を着脱可能に保持する。ノズルステーション53は、吸着ノズル46の交換処理において、装着ヘッド40から取り外された吸着ノズル46を保持するとともに、別の吸着ノズル46を取り出し可能に保持する。これにより、部品装着機2は、例えば装着処理の実行中に、装着対象の部品の種別に応じて吸着ノズル46を自動交換可能に構成される。
【0032】
ノズルステーション53は、部品装着機2の基台に着脱可能に設置される。ノズルステーション53の上面に付されたコードは、ノズルステーション53の識別情報を示す。この識別情報には、ノズルステーション53が収容するツールの識別情報および収容位置が関連付けられる。この収容位置は、例えばノズルステーション53の基準位置に対する収容部の相対位置により示される。
【0033】
3-6.制御装置55
制御装置55は、主として、CPUや各種メモリ、制御回路により構成される。制御装置55は、基板91に部品を装着する装着処理を実行する。制御装置55は、装着処理において、各種センサから出力される情報や画像処理の結果、記憶部56に予め記憶された制御プログラムなどに基づき、部品移載装置30の動作を制御する。これにより、装着ヘッド40に支持された複数の吸着ノズル46の位置および角度が制御される。
【0034】
また、記憶部56には、後述する校正装置80により生成または編集された校正情報D1およびスキップ情報D2が記憶されている。上記の校正情報D1は、
図8に示すように、校正処理によって複数のホルダ42ごとに算出された校正量を示す。スキップ情報D2は、校正処理において検出され得る不良のホルダ42が装着処理に用いられないようにスキップ設定されているか否かを示す。
【0035】
制御装置55は、校正情報D1およびスキップ情報D2に基づいて、装着処理を実行する。これにより、制御装置55は、装着処理における部品92の装着精度の向上を図るとともに、不良ホルダを用いた装着動作の実行を規制して装着エラーの発生を防止する。校正装置80による校正情報D1およびスキップ情報D2の生成等の詳細については後述する。
【0036】
4.作業ヘッドの校正装置80
4-1.校正装置80の概要および構成
校正装置80は、装着処理の実行前に装着ヘッド40を対象とした校正処理を実行する。校正処理は、装着ヘッド40の構成上の個体差などを把握し、動作条件や動作状況に応じた適切な補正値を装着処理の実行前に取得することを目的としてなされる。上記の「個体差など」には、例えば移動台32と装着ヘッド40の取り付け誤差や、装着ヘッド40の基準位置に対する複数のホルダ42の位置誤差が含まれる。なお、校正装置80は、ホルダ42のR軸回りの回転誤差、Q軸回りの回転誤差、および昇降動作による高さ誤差などを校正してもよい。
【0037】
本実施形態において、校正処理は、保持部材などのツールを取り付けられる装着ヘッド40のホルダ42ごとの制御上の位置と、実際の位置との誤差を割り出して校正値を取得する。具体的には、校正装置80は、装着ヘッド40を部品カメラ51の上方に移動させて、下方からの撮像により画像データD5(
図4を参照)を取得する。
【0038】
そして、校正装置80は、画像データD5を画像処理し、装着ヘッド40の下面に設けられた基準マーク48を認識する。これにより、機内の規定位置に設けられた部品カメラ51の光軸に対する装着ヘッド40の相対位置を取得する。校正装置80は、撮像時における装着ヘッド40の制御上の位置と、上記のように取得した装着ヘッド40実位置との誤差を割り出す。
【0039】
さらに、校正装置80は、装着ヘッド40の基準位置(例えば、基準マーク48の位置)に対する複数のホルダの相対位置を取得する。これは、複数のホルダ42がR軸回りに等間隔で配置されていたとしても、ある程度の位置誤差を含む場合があるからである。そこで、校正装置80は、画像データD5における装着ヘッド40の基準マーク48に対して、それぞれのホルダ42の中心(Q軸)がどのような位置関係にあるのかを個々に取得する。
【0040】
校正装置80は、複数のホルダ42の制御上の位置と実位置との誤差を打ち消すように、ホルダ42の識別情報(ID)ごとに校正量を算出する。算出された校正量は、
図8に示すように、校正情報D1に記録される。ここでは、説明を簡易にするために校正処理における複数のホルダ42は、Q軸回りの角度が0度である状態で校正量をそれぞれ算出されるものとした。これに対して、校正装置80は、Q軸回りに所定角度(例えば、90度、180度)だけ回転させた状態で、同様に校正量を算出してもよい。これにより、装着処理における装着角度と同じまたは近似した角度における校正量をもってホルダ42の位置を補正することができ、Q軸回りの回転に起因する誤差を吸収して装着精度の向上を図ることができる。
【0041】
ところで、上記のような校正処理において、部品カメラ51により装着ヘッド40を撮像する際に、複数のホルダ42には校正ツール60が取り付けられていることが、画像処理の精度向上の観点からは好適である。このとき、ホルダ42に取り付けられる校正ツール60としては、実行予定の装着処理に実際に用いられる吸着ノズル46としてもよい。また、校正ツール60としては、校正処理に専用であってもよい。専用の校正ツール60は、例えば、汎用的な吸着ノズル46と比較して形状精度が高く形成され、また校正処理における画像処理に適した形状、彩色を採用され、精度向上の観点から校正処理に適している。
【0042】
ここで、本実施形態の装着ヘッド40のようにノズルステーション53との間でツールを自動交換可能な場合には、校正処理の実行前にノズルステーション53に校正ツール60が収容される。従来の校正装置においては、校正処理の実行時にノズルステーション53から校正ツール60を全てのホルダ42に支持させるため、ノズルステーション53には少なくともホルダ数Vsだけ校正ツール60が事前に収容される必要があった。
【0043】
しかしながら、多種の製品基板の生産に対応するためにノズルステーション53に収容する吸着ノズル46の数、種類を多くしたいとの要請がある。そのため、ノズルステーション53にホルダ数Vsだけ校正ツール60を収容すると、その後の生産において使用されない校正ツール60がノズルステーション53に存在することになり、生産性向上の観点からは好適でない場合が生じ得た。また、外段取りにおいて、ノズルステーション53に収容する校正ツール60の数を誤ってホルダ数Vs未満とし、校正ツール60の不足により校正処理を実行できずにエラー停止すると、生産性が低下することが懸念される。
【0044】
そこで、本実施形態の校正装置80は、校正ツール60が作業ヘッド(装着ヘッド40)におけるホルダ数Vs未満であっても校正処理を実行することができる構成を採用する。ここで、校正処理には、複数のホルダ42の実位置を測定する測定工程と、複数のホルダ42ごとの実位置に基づいて複数のホルダ42の校正量を算出する算出工程とが含まれる。そして、本実施形態の校正装置80は、ホルダ数Vsと、ノズルステーション53における校正ツール60の収容数Vcとに基づいて、測定工程の実行回数を適宜設定する。
【0045】
これにより、ノズルステーション53において校正ツール60が不足する場合においても校正処理を実行することが可能となる。また、装着処理などの対基板作業に必要なツールをノズルステーション53に収容したときに、残りの収容可能数がホルダ数Vsより少なくても校正ツール60を収容しておくことで、校正処理を実行させることができる。具体的には、校正装置80は、
図5に示すように、設定部81と、処理制御部82とを備える。以下では、
図6に示す校正処理における各ステップと、校正装置80の各構成の詳細とを対応させて説明する。
【0046】
校正処理は、上述のように校正処理スケジュールM1に基づいて実行される。校正処理において、校正装置80は、ノズルステーション53における校正ツール60の収容数Vcを取得する(S11)。詳細には、校正装置80は、複数のノズルステーション53に収容されている複数のツール(吸着ノズル46,校正ツール60)に付されたコード463,64の読み取り処理を実行する。校正ツール60のコード64は、校正ツール60の識別情報を示す。ツールの識別情報には、ツールの種類やメンテナンス記録などが関連付けられる。校正装置80は、読み取り処理の結果に基づいて校正ツール60を含む複数のツールの種類を取得する。
【0047】
上記の読み取り処理には、例えばノズルステーション53の上方に専用のコードリーダを設けることもできる。本実施形態において、校正装置80は、装着ヘッド40と一体的に移動可能に設けられた基板カメラ52を用いてコード64の読み取り処理を実行する。校正装置80は、コード342,64を基板カメラ52が撮像する際の基板カメラ52の位置に基づいてツールの収容位置を取得する。
【0048】
具体的には、読み取り処理において、ノズルステーション53に収容されているツールのコード342,64が付されている位置の上方に基板カメラ52を移動させて、撮像を行う。このように、基板カメラ52の移動と撮像を繰り返すことにより、ノズルステーション53の複数の収容部ごとにツールの有無、ツールがある場合にはツールの種類を取得する。さらに、ツールがどの収容部に収容されているかを撮像時の基板カメラ52の位置から割り出す。これにより、校正ツール60が収容されているか否か、収容されている場合には校正ツール60の収容位置が割り出される。
【0049】
また、校正装置80は、機内における校正ツール60の収容位置および収容数Vcを取得できるのであれば、上記の他に種々の態様を採用することができる。例えば、機外においてツールステーションに校正ツール60を含むツールを自動または手動でセットしたセット情報と、このツールステーションを機内に自動または手動で設置した設置情報と、を外部入力して、機内における校正ツール60の収容位置および収容数Vcを割り出してもよい。
【0050】
4-2.設定部81
設定部81は、校正処理における測定工程(S20)の実行回数を設定する(S12)。本実施形態において、設定部81は、ノズルステーション53における校正ツール60の収容数Vcが装着ヘッド40におけるホルダ数Vsより少ない場合に、校正処理における測定工程(S20)が複数回に亘り実行されるように設定する。具体的には、設定部81は、ホルダ数Vsを収容数Vcで除算したときの商に、剰余があれば1を加え、剰余がなければ0を加えた数を測定工程の実行回数Nmに設定する。
【0051】
具体的には、
図7の上段に示すように、部品装着機2が1機の装着ヘッド40からなるシングルロボットを備え、仮にノズルステーション53における校正ツール60の収容数Vcが8とする。このとき、ホルダ数Vsが8,12,24であれば、上記の商は1,1,3であり、剰余は0,1,0であるため、設定部81は、実行回数Nmを1,2,3に設定する。
【0052】
また、
図7の中段に示すように、部品装着機2が2機の装着ヘッド40からなる対向ロボットを備え、仮に第一サイドS1のノズルステーション53Aにおける校正ツール60の収容数Vc1が8,第二サイドS2のノズルステーション53Bにおける校正ツール60の収容数Vc2が16とする。このとき、第一サイドS1の装着ヘッド40Aのホルダ数Vs1が12、第二サイドS2の装着ヘッド40Bのホルダ数Vs2が24であれば、設定部81は、実行回数Nmを2,2に設定する。
【0053】
ここで、部品装着機2が複数の装着ヘッド40A,40Bおよび複数のノズルステーション53A,53Bを備え、且つ複数のノズルステーション53A,53Bの間で校正ツール60の移動が許容されることがある。この場合には、校正ツール60の収容数Vcは、複数のノズルステーション53A,53Bのそれぞれに収容された校正ツール60の収容数Vc1,Vc2の合計(Vc=Vc1+Vc2)であるものとして処理することができる。
【0054】
そして、設定部81は、対向ロボットを備える部品装着機2を対象とする場合には、校正処理の実行直前における複数のノズルステーション53A,53Bの収容数Vc1,Vc2に基づいて、校正処理における測定工程の実行回数Nmを設定する。そのため、上記のように、複数のノズルステーション53A,53Bの間で校正ツール60の移動が許容されている場合には、設定部81による設定処理の前に校正ツール60の移動を行い、収容数Vc1,Vc2を調整することで、校正処理の所要時間などを管理することができる。校正ツール60の移動を含む収容数Vc1,Vc2の調整の詳細については、後述する。
【0055】
4-3.処理制御部82
処理制御部82は、校正装置80が測定工程(S20)を実行した後に、算出工程(S14)を実行する。詳細には、設定部81により設定された実行回数Nmだけ測定対象のホルダ42が互いに異なる測定工程(S20)が繰り返し実行される。そして、測定工程の実際の実行回数が予定の実行回数Nmに達すると(S13:Yes)、全てのホルダ42の実位置が測定されたことになる。
【0056】
そして、処理制御部82は、複数のホルダ42ごとの実位置に基づいて複数のホルダ42の校正量を算出する(S14)。具体的には、処理制御部82は、複数のホルダ42の制御上の位置と実位置との誤差を打ち消すように、ホルダ42の識別情報(ID)ごとに校正量を算出する。算出された校正量は、
図8に示すように、ホルダ42の識別情報(ID)に関連付けられて、校正情報D1として制御装置55の記憶部56に記憶される。
【0057】
5.校正装置80による校正処理
装着ヘッド40の校正処理の詳細について説明する。先ず、
図9に示すように、所定の生産ラインLnにおける第一サイドS1および第二サイドS2で生産予定の製品基板の種類および生産順序が計画される。そして、各製品基板の生産に対応する段取り作業(
図9のT11,T12,・・,T21,T22,・・)において、例えば装着ヘッド40の交換に伴って校正処理の実行の要否が設定される。これにより、装着ヘッド40の校正処理(C11,C12,・・,C21,C22,・・)の実行時期を示す校正処理スケジュールM1が生成される。
図9は、校正処理の実行を要する段取り作業を斜線部に「○」付して示す。
【0058】
また、複数のノズルステーション53A,53Bには、実行予定の装着処理に必要な吸着ノズル46に加えて、所定数の校正ツール60がそれぞれ収容される。校正ツール60の収容数Vcは、段取り作業を行う作業者により任意に設定される他に、作業者に対して校正装置80が実行予定の校正処理に基づいて推奨する収容数Vcを案内したものとしてもよい。
【0059】
校正処理は、
図6に示すように、先ず全てのノズルステーション53における校正ツール60の収容数Vcを取得する(S11)。ここでは、上述したように、校正ツール60の収容数Vcは、複数のノズルステーション53A,53Bのそれぞれに収容された校正ツール60の収容数Vc1,Vc2の合計(Vc=Vc1+Vc2)とする。次に、設定部81は、校正処理における測定工程(S20)の実行回数を設定する(S12)。ここでは、
図7の中段に示すように、収容数Vc1,Vc2、それぞれのホルダ数Vsに基づいて、実行回数Nm(第一サイドS1および第二サイドS2において共に2回)が設定されたものとする。
【0060】
第一サイドS1および第二サイドS2における個別の生産開始にあたり、それぞれの装着ヘッド40A,40Bを対象とした測定工程(S20)が並行して実行される。それぞれの測定工程(S20)は実質的に同一であるため、ここでは一方の測定工程(S20)について説明する。測定工程では、先ず測定対象のホルダ42に校正ツール60を取り付ける(S21)。続いて、校正装置80は、装着ヘッド40を部品カメラ51の上方に移動させて、下方からの撮像により画像データD5(
図4を参照)を取得する(S14)。
図4は、複数のホルダ42のうち一部のみに校正ツール60が取り付けられた状態を示す。
【0061】
校正装置80は、画像データD5を画像処理し(S22)、測定対象のホルダ42ごとの実位置を取得する(S23)。ここで、上記の画像処理において、処理制御部82は、不良のホルダ42である不良ホルダ42xを検出する処理を併せて実行する。上記の「不良ホルダ42x」とは、対基板作業(装着処理)に不適なホルダ42である。処理制御部82は、例えば複数のホルダ42のうち校正ツール60の取り付けに失敗したホルダ42、または測定された実位置が許容範囲外であるホルダ42を不良ホルダ42xとして検出する。
【0062】
校正装置80は、
図8に示すように、ホルダ42の識別情報(ID)ごとに実位置、および正常なホルダ42であるか不良ホルダ42xであるかを関連付けて記憶する。続いて、今回の測定工程(S20)において不良ホルダ42xを検出した場合に(S30:Yes)、処理制御部82は、後の算出工程(S14)における不良ホルダ42xに対する処理をスキップするようにスキップ設定を行う(S31)。
【0063】
詳細には、処理制御部82は、
図8に示すように、不良ホルダ42xの識別情報(ID)にスキップ設定を関連付けたスキップ情報D2を、他のホルダ42の校正量を示す校正情報D1とともに、部品装着機2による装着処理において使用可能に記憶する。さらに、本実施形態において、処理制御部82は、不良ホルダ42xを検出した場合に(S30:Yes)、作業者に対して、装着ヘッド40のメンテナンスを案内し、または装着ヘッド40による対基板作業において不良ホルダ42xを除いた正常のホルダ42が用いられることを通知する(S32)。
【0064】
このような構成によると、装着処理に不適な不良ホルダ42xの使用が防止されるとともに、メンテナンスの案内があれば適宜のタイミングで作業者によるメンテナンスがなされることを促すことができる。また、正常なホルダ42のみを使用した生産を許容しつつ、メンテナンスにより装着ヘッド40の早期改善を図り、生産性を向上できる。
【0065】
測定工程(S20)において不良ホルダ42xが検出されなかった場合(S30:No)、または検出された場合の対応処理(S31,S32)が終了した場合に、校正装置80は、測定工程(S20)の実際の実行回数が予定の実行回数Nmに達したか判定する(S13)。予定の実行回数Nmに達していない場合には(S13:No)、測定工程(S20)が繰り返し実行される。再度の測定工程(S20)では、測定対象のホルダ42を変更し、ノズルステーション53を介した校正ツール60の交換により、測定対象のホルダ42に校正ツール60が取り付けられる(S21)。
【0066】
複数回に亘り測定工程(S20)が実行され、予定の実行回数Nmに達した場合には(S13:Yes)、処理制御部82は、算出工程(S14)を実行する。処理制御部82は、
図8に示すように、複数のホルダ42ごとの実位置に基づいて算出した校正量を、複数のホルダ42の識別情報(ID)に関連付けて、校正情報D1として記憶する。校正装置80は、本実施形態のように部品装着機2が対向ロボットを備える場合には、それぞれの装着ヘッド40A,40Bごとに校正処理を実行し、それぞれの校正情報D1を生成または編集する。
【0067】
上記のような構成によると、校正ツール60の収容数Vcが装着ヘッド40におけるホルダ数Vsより少ない場合において、測定工程(S20)の実行回数Nmが適宜設定される。これにより、算出工程(S14)で必要とされる複数のホルダ42の実位置の測定を行うことができる。これにより、ノズルステーション53において校正ツール60が不足する場合においても校正処理を実行することが可能となる。また、装着処理に必要なツール(吸着ノズル46などの保持部材)をノズルステーション53に収容したときに、残りの収容可能数がホルダ数Vsより少なくても校正ツール60を収容しておくことで、校正処理を実行させることができる。
【0068】
6.校正ツールの配置調整
校正装置80は、上記のような校正処理を例えば段取り作業の一部として必要に応じて実行する。また、本実施形態のように、複数のノズルステーション53A,53Bの間で校正ツール60の移動が許容される場合には、複数のノズルステーション53A,53Bの収容数Vc1,Vc2を所定のタイミングで調整することにより、校正処理の効率化を図ることができる。
【0069】
詳細には、校正装置80は、例えば複数の装着ヘッド40A,40Bのそれぞれを対象とした校正処理の実行時期を示す校正処理スケジュールM1に基づいて、複数のノズルステーション53A,53Bのそれぞれにおける校正ツール60の収容数Vc1,Vc2を調整する。ここで、
図9に示すように、複数種類の生産が一連で実行されるように開始されると、第一サイドS1と第二サイドS2とで校正処理が実行されるタイミングが相違し得る(例えば、第一サイドS1の校正処理C12と、第二サイドS2の校正処理C22)。
【0070】
そこで、校正装置80は、校正処理が実行される前に、校正処理が実行されるサイドのノズルステーション53に必要分だけ校正ツール60が収容されるように移動させる。この収容数Vc1,Vc2の調整により、設定部81が校正処理の実行前に、直前の収容数Vc1,Vc2に基づいて、測定工程の実行回数を適宜設定し、測定工程の実行回数を低減させることができる。
【0071】
また、校正装置80は、複数の装着ヘッド40のそれぞれを対象とした校正処理が同時期に実行予定である場合に(例えば、第一サイドS1の校正処理C13と、第二サイドS2の校正処理C23)、複数のノズルステーション53A,53Bのそれぞれにおける校正ツール60の収容数Vc1,Vc2を、同時期に実行される複数の校正処理の全体の所要時間に基づいて調整してもよい。上記の「校正処理が同時期に実行予定である」とは、それぞれの校正処理の実行期間の少なくとも一部が重複することが推定された状態をいう。
【0072】
このような場合に、仮に一方のサイドにおける必要数だけ校正ツール60を偏らせて収容すると、却って全体の所要時間としては増加することがある。そこで、校正装置80は、複数の校正ツール60をどのような割合で第一サイドS1と第二サイドS2に配分すれば、同時期に実行される校正処理の全体の所要時間が短くなるのかを割り出し、その結果に基づいて収容数Vc1,Vc2を調整する。これにより、設定部81が校正処理の実行前にそれぞれの収容数Vc1,Vc2に基づいて、それぞれの校正処理における測定工程の実行回数を適宜設定し、全体の所要時間の短縮を図ることができる(
図7の中段および下段を参照)。
【0073】
校正装置80は、校正処理スケジュールM1において段取り作業(T11,T12,・・,T21,T22,・・)により区分される各期間(
図9の破線で区画される期間)で最適な収容数Vc1,Vc2を割り出す。この最適な収容数Vc1,Vc2とは、測定工程の実行回数Nmの低減により、校正処理の所要時間が短くなる数である。校正装置80は、割り出した期間ごとの収容数Vc1,Vc2に基づいて、校正処理の実行時期に対応させた収容スケジュールM2を生成する。
【0074】
校正装置80は、例えば上記の各期間のうち連続する2つの期間において、最適な収容数Vc1,Vc2が等しいまたは近似する場合には、一つの期間とする。このように生成された収容スケジュールM2は、
図9に示すように、複数の期間(F1,F2,F3,・・)ごとの収容数Vc1,Vc2(Vc1:K11,K12,K13・・,Vc2:K21,K22,K23,・・)を示す。
【0075】
そこで、校正装置80は、それぞれの期間(F1,F2,F3,・・)以外の期間(例えば、期間F1の終了時から期間F2の開始時までの間)において、校正ツール60が複数のノズルステーション53の間で移動させる。この校正ツール60の移動処理によって収容数Vc1,Vc2が変動し、校正処理における測定工程の実行回数が設定部81により適宜設定される。これにより、種々のタイミングで実行される校正処理に対応し、校正処理の全体の所要時間の短縮を図ることができる。
【0076】
7.部品装着機2による装着処理
部品装着機2の制御装置55は、基板91に部品92を装着する装着処理において、校正装置80により生成された校正情報D1を用いて、ホルダ42に取り付けられた吸着ノズル46の位置決めを行う。これにより、ホルダ42の校正量を反映させて吸着ノズル46が位置決めされるので、装着処理の精度向上を図ることができる。
【0077】
ここで、装着処理には、採取サイクルと装着サイクルとが含まれるPPサイクル(ピックアンドプレースサイクル)を複数回に亘って繰り返す処理が含まれる。上記の「採取サイクル」とは、部品供給装置20により供給された部品92を吸着ノズル46により採取する採取動作を、複数回に亘り繰り返す処理である。また、上記の「装着サイクル」とは、採取した部品92を基板91における所定の装着位置に、所定の装着角度で装着する装着動作を、複数回に亘り繰り返す処理である。
【0078】
制御装置55は、部品92の装着順序と装着ヘッド40に取り付けられた吸着ノズル46の数(即ち、ホルダ数Vsに相当)に基づいて、グループ化された複数回の採取動作および装着動作により構成されるPPサイクルを繰り返し実行する。そして、制御装置55は、装着処理の実行前に、校正情報D1とともに記憶されたスキップ情報D2を参照する。そして、制御装置55スキップ情報D2において「スキップ」に設定されているホルダ42(不良ホルダ42x)に関する処理をキャンセルする。
【0079】
具体的には、制御装置55は、装着処理の実行に際して、不良ホルダ42xへの吸着ノズル46の取り付けを試行することなく、また装着ヘッド40の内部において不良ホルダ42xに連通するエア流路を遮断する。そして、制御装置55は、PPサイクルを生成する際に、不良ホルダ42xを用いた採取動作および装着動作が行われないようにする。つまり、制御装置55は、装着ヘッド40のホルダ数Vsから不良ホルダ42xの数だけ減算した数のホルダ42に有効な吸着ノズル46が取り付けられているものとみなして、PPサイクルを生成する。
【0080】
これにより、全て正常である装着ヘッド40を用いた場合と比較して生産性は低下するものの、正常に校正処理を実行されたホルダ42を用いて装着処理を実行することができる。よって、製品基板の生産を継続することができるので、不良ホルダ42xに起因するエラー停止を防止することができる。
【0081】
また、制御装置55は、上記のような装着処理の実行中において、対向する装着ヘッド40A,40Bの干渉防止制御を実行しつつ、装着処理のサイクルタイムへの影響がないまたは小さいタイミングで、校正ツール60の移動処理を実行する。詳細には、制御装置55は、収容スケジュールM2を参照し、校正ツール60の移動を推奨された期間、移動させる校正ツール60の方向(例えば、第一サイドS1から第二サイドS2)と数を取得する。そして、制御装置55は、例えば第一サイドS1および第二サイドS2が共に基板91を搬送する期間が生じた場合に、移動すべき校正ツール60の一部または全部を移動させる。
【0082】
これにより、例えば次回の校正処理の実行時までに校正ツール60が適宜移動され、複数のノズルステーション53A,53Bにおける収容数Vc1,Vc2が調整される。そして、校正処理において、設定部81により測定工程の実行回数が適宜設定され、校正処理の効率化が図られる。
【0083】
8.作業ヘッドの校正方法
校正装置80について既述されていることは、校正方法についても同様に適用できる。具体的には、校正方法は、設定工程と、処理制御工程とを備える。設定工程は、ツールステーション(ノズルステーション53)における校正ツール60の収容数Vcが作業ヘッド(装着ヘッド40)におけるホルダ数Vsより少ない場合に、校正処理における測定工程が複数回に亘り実行されるように設定する。また、処理制御工程は、測定対象のホルダ42が互いに異なる複数回の測定工程を実行した後に、算出工程を実行する。
【0084】
9.実施形態の変形態様
実施形態において、対基板作業機は、基板91に部品92を装着する部品装着機2であるものとした。これに対して、校正装置80および校正方法は、種々の対基板作業機のうち作業ヘッドを備えるものに適用することができる。また、作業ヘッドは、対基板作業として部品装着を行う装着ヘッド40の他に、ツールを用いて所定の対基板作業を実行するものであれば、基板91に接合部材を塗布したり、基板91の外観や機能を検査したりするものであってもよい。
【0085】
実施形態において、設定部81、および処理制御部82は、制御装置55に組み込まれる構成とした。これに対して、設定部81および処理制御部82の少なくとも一部は、制御装置55の外部に設けられてもよい。例えば、設定部81および処理制御部82の一部または全部は、対基板作業機と通信可能なホストコンピュータ70や専用の外部装置に組み込まれる構成としてもよい。これに伴って、各種情報D1,D2および各種スケジュールM1,M2は、設定部81および処理制御部82がアクセス可能な記憶装置に記憶される。
【符号の説明】
【0086】
2:部品装着機、 10:基板搬送装置、 20:部品供給装置、 30:部品移載装置、 31:ヘッド駆動装置、 32:移動台、 40:装着ヘッド(作業ヘッド)、 41:ロータリヘッド、 42:ホルダ、 42x:不良ホルダ、 46:吸着ノズル(ツール、保持部材)、 48:基準マーク、 51:部品カメラ、 52:基板カメラ、 53:ノズルステーション(ツールステーション)、 55:制御装置、 56:記憶部、 60:校正ツール、 64:コード、 70:ホストコンピュータ、 71:記憶部、 80:校正装置、 81:設定部、 82:処理制御部、 91:基板、 92:部品、 D1:校正情報、 D2:スキップ情報、 D5:画像データ、 M1:校正処理スケジュール、 M2:収容スケジュール、 Vs:ホルダ数、 Vc,Vc1,Vc2:収容数、 Nm:(測定工程の)実行回数、 Sy:生産システム、 Ln,Ln1,L2:生産ライン、 S1:第一サイド、 S2:第二サイド