(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074682
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】FGF21受容体発現亢進剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/9789 20170101AFI20240524BHJP
G01N 33/15 20060101ALI20240524BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240524BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 17/16 20060101ALI20240524BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K8/9789
G01N33/15 Z
G01N33/50 Z
A61Q19/00
A61P17/16
C12Q1/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186001
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000113470
【氏名又は名称】ポーラ化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悠
(72)【発明者】
【氏名】本郷 麻耶
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4C083
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB01
2G045DA14
2G045DA36
4B063QA01
4B063QA20
4B063QQ04
4B063QR77
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS34
4B063QS36
4C083AA111
4C083CC02
4C083EE12
(57)【要約】
【課題】線維芽細胞又はメラノサイトにおいてFibroblast Growth Factor 21(FGF21)の機能をより発揮させる技術を提供することを課題とする
。
【解決手段】特定の植物抽出物を用いて、線維芽細胞又はメラノサイトにおけるFGF21受容体の発現を亢進させる。フトモモ科植物の抽出物及び/又はキク科植物の抽出物を、線維芽細胞におけるFGF21受容体発現亢進剤の有効成分とする。かかる剤は、抗シワ用組成物に好適に配合しうる。フトモモ科植物の抽出物及び/又はマメ科植物の抽出物を、メラノサイトにおけるFGF21受容体発現亢進剤の有効成分とする。かかる剤は、美白用組成物に好適に配合し得る。好ましい態様において、フトモモ科植物の抽出物はチョウジエキスであり、キク科植物の抽出物はセイヨウノコギリソウエキスであり、マメ科植物の抽出物はルイボスエキスである。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フトモモ科植物の抽出物、キク科植物の抽出物、及びマメ科植物の抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する、Fibroblast Growth Factor 21(FGF21)受容体発現亢進剤。
【請求項2】
フトモモ科植物の抽出物及び/又はキク科植物の抽出物を含有し、線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現を亢進させる、請求項1に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
【請求項3】
前記フトモモ科植物の抽出物がチョウジエキスであり、前記キク科植物の抽出物がセイヨウノコギリソウエキスである、請求項2に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のFGF21受容体発現亢進剤を含有する、抗シワ用組成物。
【請求項5】
フトモモ科植物の抽出物及び/又はマメ科植物の抽出物を含有し、メラノサイトにおけるFGF21受容体の発現を亢進させる、請求項1に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
【請求項6】
前記フトモモ科植物の抽出物がチョウジエキスであり、前記マメ科植物の抽出物がルイボスエキスである、請求項5に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
【請求項7】
請求項5又は6に記載のFGF21受容体発現亢進剤を含有する、美白用組成物。
【請求項8】
化粧料である、請求項4又は7に記載の組成物。
【請求項9】
線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現量を指標とする、抗シワ剤をスクリーニングする方法。
【請求項10】
線維芽細胞に被験試料を添加する工程、及び
前記線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現量を測定する工程を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記発現量が、被験試料を添加しなかった線維芽細胞における発現量と比較して大きい場合に、前記被験試料は抗シワ作用を有すると判定する、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はFibroblast Growth Factor 21(以降、FGF21
と記す)受容体発現亢進剤に関し、さらにこれを含有する抗シワ用組成物又は美白用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
線維芽細胞増殖因子(fibroblast growth factor:FGF)は、線維芽細胞をはじめとする種々の細胞に対して増殖活性や分化誘導など多彩な作用を示す多機能性細胞間シグナル因子である。FGFはヒトにおいては22種類存在し、その中でもFGF21は、肥満症や肥満症を発症基盤とする代謝異常に対する治療薬の候補因子として注目されている。FGF21は、主に肝臓から分泌され、脂肪代謝促進や糖に対する食欲抑制作用をもつ多機能な「抗肥満因子」として知られている(非特許文献1)。また、FGF21はメラニンの生成を抑制する作用を有することも報告されている(非特許文献2)。
【0003】
FGF21は、他の多くのFGFと同様に細胞表面に存在する受容体に結合することにより活性を示す。具体的には、FGF21は、標的細胞表面上のFGR1にそのN末端が結合し、共受容体であるβKlotho(KLB)にそのC末端が結合して、細胞内にシグナルを伝達する(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Itoh, N., Cell Tissue Res., 342, 1-11 (2010)
【非特許文献2】R. Wang, et al., Biochem Biophys Res Commun. 19;490(2):466-471 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シミやそばかす等の色素沈着による皮膚症状は顔の印象に大きく影響するため、美白剤や美白用化粧料の需要は大きい。色素沈着が生じる原因の一つに色素細胞(メラノサイト)のメラニン産生が亢進することがあるところ、前述のようにFGF21はメラノサイトにおけるメラニンの生成を抑制することから、FGF21の機能発揮により美白効果が得られる見込みがある。
【0006】
また、シワもまた顔の印象に大きく影響するため、抗シワ剤や抗シワ用化粧料の需要も大きい。シワが形成されるメカニズムは複雑でまた多様であるが、皮膚のコラーゲン繊維の減少が原因の一つであることが分かっている。本発明者は新たにFGF21が線維芽細胞においてデコリンの遺伝子発現を亢進することを見出した。プロテオグリカンの一種であるデコリンは、コラーゲン繊維に会合して結合することによりコラーゲンを分解から保護する役割をもつ。そのため、FGF21の機能発揮によりデコリンの産生促進を介して、抗シワ効果が得られる見込みがある。
【0007】
かかる状況において、本発明は線維芽細胞又はメラノサイトにおいてFGF21の機能をより発揮させる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、FGFはFGF受容体に
結合することによりその機能を発揮するところ、本発明者らは、FGF21受容体の発現量が様々な生活要因により発生する過酸化水素により減少することを見出した。そのことから、FGF21受容体の発現量を亢進させることにより、FGF21の機能をより発揮させることができることに着目した。そして、FGF21受容体の発現亢進作用を有する植物エキスを見出し、それらが抗シワ効果や美白効果をもたらす有効成分になることに想到し、本発明を完成するに至った。
さらに本発明者らは、前述したようにFGF21の機能発揮によりデコリンの産生促進を介して抗シワ効果が得られるという新たな知見に基づいて、FGF21受容体の発現量を指標として抗シワ剤の有効成分をスクリーニングする方法を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
[1]フトモモ科植物の抽出物、キク科植物の抽出物、及びマメ科植物の抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する、Fibroblast Growth Factor 21(FGF21)受容体発現亢進剤。
[2]フトモモ科植物の抽出物及び/又はキク科植物の抽出物を含有し、線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現を亢進させる、[1]に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
[3]前記フトモモ科植物の抽出物がチョウジエキスであり、前記キク科植物の抽出物がセイヨウノコギリソウエキスである、[2]に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
[4][2]又は[3]に記載のFGF21受容体発現亢進剤を含有する、抗シワ用組成物。
[5]フトモモ科植物の抽出物及び/又はマメ科植物の抽出物を含有し、メラノサイトにおけるFGF21受容体の発現を亢進させる、[1]に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
[6]前記フトモモ科植物の抽出物がチョウジエキスであり、前記マメ科植物の抽出物がルイボスエキスである、[5]に記載のFGF21受容体発現亢進剤。
[7][5]又は[6]に記載のFGF21受容体発現亢進剤を含有する、美白用組成物。
[8]化粧料である、[4]又は[7]に記載の組成物。
[9]線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現量を指標とする、抗シワ剤をスクリーニングする方法。
[10]線維芽細胞に被験試料を添加する工程、及び
前記線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現量を測定する工程を含む、[9]に記載の方法。
[11]前記発現量が、被験試料を添加しなかった線維芽細胞における発現量と比較して大きい場合に、前記被験試料は抗シワ作用を有すると判定する、[10]に記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、線維芽細胞又はメラノサイトにおいてFGF21受容体の発現を亢進させる成分が提供される。また、かかる成分を組成物に含有させることにより抗シワ用組成物又は美白用組成物とすることができる。
さらに本発明により、抗シワ作用を有する成分をスクリーニングする方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】過酸化水素を添加又は非添加してインキュベートしたときの線維芽細胞におけるFGF21受容体のKLB遺伝子の発現を示す図面。(A)コントロールを1としたときのKLB遺伝子の相対発現量を示すグラフ。(B)免疫染色した線維芽細胞の蛍光顕微鏡写真。赤色がKLBタンパク質を示す。
【
図2】植物エキスを添加又は非添加してインキュベートしたときの線維芽細胞におけるFGF21受容体遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量はコントロールを1としたときの相対量である。(A)チョウジエキス、FGFR1遺伝子。(B)セイヨウノコギリソウエキス、KLB遺伝子。
【
図3】FGF21を添加又は非添加してインキュベートしたときの線維芽細胞におけるデコリン遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量はコントロールを1としたときの相対量である。
【
図4】FGF21又はFGF21と植物エキスを添加又は非添加してインキュベートしたときの線維芽細胞におけるデコリン遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量はコントロールを1としたときの相対量である。
【
図5】過酸化水素を添加又は非添加してインキュベートしたときのメラノサイトにおけるFGF21受容体遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量はコントロールを1としたときの相対量である。(A)FGFR1遺伝子。(B)KLB遺伝子。
【
図6】植物エキスを添加又は非添加してインキュベートしたときのメラノサイトにおけるFGF21受容体遺伝子の発現量を表すグラフ。発現量はコントロールを1としたときの相対量である。(A)チョウジエキス、FGFR1遺伝子。(B)ルイボスエキス、KLB遺伝子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<1>FGF21受容体発現亢進剤
本発明の剤は、フトモモ科植物の抽出物、キク科植物の抽出物、及びマメ科植物の抽出物からなる群から選択される一種又は二種以上を含有する。
フトモモ科植物としては、フトモモ属植物が好ましく、チョウジノキ(Paeonia lactiflora)がさらに好ましい。フトモモ科植物の抽出物としては、チョウジエキスが特に好ましい。なお、チョウジエキスは、フトモモ科フトモモ属チョウジノキの花蕾(丁子)の抽出物である。
キク科植物としては、ノコギリソウ属植物が好ましく、セイヨウノコギリソウ(Achillea millefolium Linne)がさらに好ましい。キク科植物の抽出物としては、セイヨウノコギリソウの抽出物であるセイヨウノコギリソウエキスが特に好ましい。
マメ科植物としてはアスパラトゥス属植物が好ましく、ルイボス(Aspalathus linearis)がさらに好ましい。マメ科植物の抽出物としては、ルイボスの抽出物であるルイボス
エキスが特に好ましい。
【0013】
上記抽出物は、抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物又は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとする。
【0014】
また、抽出物としては、通常化粧料や医薬品等の皮膚外用剤や経口摂取組成物に用いられるものであればよく、植物体から常法により抽出されたものを用いることができる。
抽出元としては、例えば、植物の全体を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花、花蕾、果実、果汁等の部位を用いて抽出操作に供される。
【0015】
抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される一種又は二種以上が好適に用いられる。
【0016】
具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位又はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0017】
本発明の剤におけるフトモモ科植物の抽出物、キク科植物の抽出物、及びマメ科植物の抽出物から選択される一種又は二種以上の植物抽出物の含有量は、組成物全体に対して、固形物換算で0.00001~0.09質量%が好ましく、0.00005~0.03質量%がより好ましく、0.0001~0.003質量%がさらに好ましい。
含有量を上記範囲とすることで所望の効果を得やすく、また処方設計の自由度を確保できる。
なお、上記含有量は、後述する投与経路や含有させる組成物の態様に合わせて適宜調整することができる。
【0018】
フトモモ科植物の抽出物、キク科植物の抽出物、及びマメ科植物の抽出物は、いずれもFGF21受容体遺伝子の発現を亢進する作用を有する。すなわち、これらの抽出物はそれぞれ、FGF21受容体発現亢進剤の有効成分である。
具体的には、フトモモ科植物の抽出物及びキク科植物の抽出物は、それぞれ、線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現を亢進する作用を有する。さらに具体的には、フトモモ科植物の抽出物、特に好ましくはチョウジエキスは、線維芽細胞におけるFGFR1の発現を、キク科植物の抽出物、特に好ましくはセイヨウノコギリソウエキスは、線維芽細胞におけるβKlotho(KLB)の発現を、それぞれ亢進する作用を有する。
また、フトモモ科植物の抽出物及びマメ科植物の抽出物は、それぞれ、メラノサイトにおけるFGF21受容体の発現を亢進する作用を有する。さらに具体的には、フトモモ科植物の抽出物、特に好ましくはチョウジエキスは、メラノサイトにおけるFGFR1の発現を、マメ科植物の抽出物、特に好ましくはルイボスエキスは、メラノサイトにおけるKLBの発現を、それぞれ亢進する作用を有する。
【0019】
なお、任意の物質のFGF21受容体発現亢進作用は、対象物質を添加した細胞におけるFGF21受容体発現量が、添加しなかった細胞における発現量よりも大きいこと、通常110%以上、好ましくは120%以上、より好ましくは130%以上となることにより確認することができる。FGF21受容体の発現量は、例えば、FGF21受容体遺伝子、具体的にはFGFR1遺伝子やKLB遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、mRNA量を測定することにより行うことができる。また、例えば、FGF21受容体遺伝子、具体的にはFGFR1遺伝子やKLB遺伝子によりコードされるタンパク質の細胞内存在量を、常法により定量的に測定して、FGF21受容体の発現量としてもよい。
【0020】
後述の実施例に示されるように、FGF21は線維芽細胞においてデコリンの遺伝子発現を亢進することが見出された。そして、線維芽細胞においてFGF21受容体の発現が亢進すると、FGF21によるデコリン遺伝子発現亢進作用がさらに増強することも分かった。デコリンは、コラーゲン繊維に会合して結合することによりコラーゲンを分解から保護する。コラーゲン繊維の減少はシワ発生の要因の1つである。そのため、線維芽細胞においてFGF21受容体の発現を亢進することは、デコリンの増加を介してコラーゲンの分解抑制につながり、ひいてはシワが生じるのを抑制したりシワが悪化するのを抑制したりする効果につながると考えられる。したがって、本発明における線維芽細胞におけるFGF21受容体発現促進剤は、抗シワ用組成物に好適に含有させることができる。
【0021】
また、FGF21はメラノサイトにおいてメラニンの産生を抑制する作用を有することが知られている。FGF21受容体の発現を亢進すると、FGF21がメラノサイトにおいて活性化し機能しやすくなる。したがって、本発明におけるメラノサイトにおけるFGF21受容体発現促進剤は、美白用組成物に好適に含有させることができる。
ここでいう「美白」には、メラニンの生成を抑制すること、皮膚における色素沈着を抑制すること、肌の黒化を抑制すること、が含まれる。
【0022】
本発明の剤の投与経路は、経皮、経口、経鼻、静脈注射等、特に限定されないが、経皮投与されることが好ましい。なお、ここで「投与」は「摂取」と置換されてもよい。
投与量としては、特に限定されないが、所望の効果と安全性とを考慮して、フトモモ科植物の抽出物、キク科植物の抽出物、及びマメ科植物の抽出物から選択される一種又は二種以上の植物抽出物の総量として、固形物換算で0.3~300μg/日を1回又は数回に分けて摂取されることが好ましい。また、単回摂取する他に、連続的に又は断続的に数週間~数か月の間摂取することが好ましい。
【0023】
本発明の剤を経皮投与で摂取する場合は、皮膚外用組成物とすることが好ましい。
皮膚外用組成物の態様としては、皮膚に外用で適用されるものであれば特に限定されないが、化粧料(医薬部外品を含む)、医薬品等が好ましく挙げられ、化粧料がより好ましい。
フトモモ科植物の抽出物及び/又はキク科植物の抽出物、特に好ましくはチョウジエキス及び/又はセイヨウノコギリソウエキスを含有する場合は、抗シワ用化粧料とすることが好ましい。フトモモ科植物の抽出物及び/又はマメ科植物の抽出物、特に好ましくはチョウジエキス及び/又はルイボスエキスを含有する場合は、美白用化粧料とすることが好ましい。
皮膚外用組成物を塗布する部位は特に限定されないが、通常は顔面、四肢、首、デコルテである。
【0024】
皮膚外用組成物の剤型としては、例えば、ローション剤型、乳液やクリーム等の乳化剤型、オイル剤型、ジェル剤型、パック、洗浄料等が挙げられ、特に限定されない。
また、皮膚外用組成物の態様としては、リーブオンタイプ、リーブオフタイプのいずれでも構わない。
【0025】
本発明の組成物を皮膚外用組成物の態様とする場合、その製造に際しては、化粧料、医薬部外品、医薬品などの製剤化で通常使用される成分を任意に配合することができる。
かかる任意成分としては例えば、スクワラン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックスなどの炭化水素類、ホホバ油、カルナウバワックス、オレイン酸オクチルドデシルなどのエステル類、オリーブ油、牛脂、椰子油などのトリグリセライド類、ステアリン酸、オレイン酸、レチノイン酸などの脂肪酸、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の高級アルコール、スルホコハク酸エステルやポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤類、アルキルベタイン塩等の両性界面活性剤類、ジアルキルアンモニウム塩等のカチオン界面活性剤類、ソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセライド、これらのポリオキシエチレン付加物、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル等の非イオン界面活性剤類、ポリエチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール類、増粘・ゲル化剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色剤、防腐剤、粉体等を任意に配合することができる。
【0026】
<2>スクリーニング法
本発明のスクリーニング方法は、線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現量を指標として、抗シワ剤をスクリーニングするものである。
【0027】
前述した通り、線維芽細胞においてFGF21受容体の発現を亢進することは、デコリンの増加を介して抗シワ作用の発揮につながる。このことから、線維芽細胞においてFGF21受容体の発現を亢進させる成分は、抗シワ剤の有効成分になり得る。
【0028】
本発明のスクリーニング方法において、FGF21受容体の発現量は、FGF21受容体の遺伝子、具体的にはFGFR1遺伝子又はKLB遺伝子の発現量や、前記遺伝子によ
りコードされるタンパク質の翻訳量又は存在量であってよい。
本発明のスクリーニング方法の好ましい態様としては、線維芽細胞に被験試料を添加して培養する工程、及び前記線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現量を測定する工程を含む。
FGF21受容体の発現量は、任意の方法を用いて測定することができる。例えば、FGF21受容体の発現量は、例えば、FGF21受容体遺伝子、具体的にはFGFR1遺伝子やKLB遺伝子の配列に特異的に結合する配列を有するDNA断片をプライマーとして用いてPCRを行い、mRNA量を測定することにより定量することができる。なお、既知のFGF21受容体に含まれるタンパク質をコードする遺伝子の塩基配列はそれぞれ公開されており、当業者は適宜プライマーを設計してPCRに供することができる。
また、例えば、FGF21受容体遺伝子、具体的にはFGFR1遺伝子やKLB遺伝子によりコードされるタンパク質の細胞内存在量を、常法により定量的に測定して、FGF21受容体の発現量としてもよい。
【0029】
本発明のスクリーニング方法においては、被験試料を添加して培養した線維芽細胞におけるFGF21受容体の発現量が、被験試料を添加しなかった場合の発現量(コントロール)と比較して大きい場合に、前記被験試料は抗シワ作用を有すると判定される。
なお、発現量が大きいことの程度としては、コントロールに対して好ましくは110%以上、より好ましくは120%以上、さらに好ましくは130%以上である。ただし、顕著な細胞毒性の起きない濃度範囲で試験試料を添加するものとする。
発現量が亢進するのは、FGF21受容体に含まれるタンパク質、例えばFGFR1やKLBなどの少なくとも1つであってよく、好ましくは2つ以上の発現量を亢進する。
【0030】
本発明のスクリーニング方法に使用する線維芽細胞としては、ヒト由来の線維芽細胞のほか、ラット、マウス、ウサギなどの哺乳動物由来の線維芽細胞であれば特段の限定なく使用することができるが、通常は、いずれも正常な細胞を用いることが好ましく、ヒト由来の正常な線維芽細胞を用いることがより好ましい。
細胞の培養の条件としては、通常の培養条件の他、本発明のスクリーニング方法の実行を妨げない培養条件であれば、特段の限定なく適用することができる。
【0031】
本発明のスクリーニング方法が対象とする被験試料は、純物質、動植物由来の抽出物、またはそれらの混合物等のいずれであってもよい。
動植物由来の抽出物は、動物又は植物由来の抽出物自体のみならず、抽出物の画分、精製した画分、抽出物又は画分、精製物の溶媒除去物の総称を意味するものとし、植物由来の抽出物は、自生若しくは生育された植物、漢方生薬原料等として販売されるものを用いた抽出物、市販されている抽出物等が挙げられる。
抽出操作は、植物部位の全草を用いるほか、植物体、地上部、根茎部、木幹部、葉部、茎部、花、花蕾、果実等の部位を使用することできるが、予めこれらを粉砕あるいは細切して抽出効率を向上させることが好ましい。抽出溶媒としては、水、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールなどのアルコール類、1,3-ブタンジオール、ポリプロピレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類等の極性溶媒から選択される一種又は二種以上が好適なものとして例示することができる。具体的な抽出方法としては、例えば、植物体等の抽出に用いる部位又はその乾燥物1質量部に対して、溶媒を1~30質量部加え、室温であれば数日間、沸点付近の温度であれば数時間浸漬し、室温まで冷却した後、所望により不溶物及び/又は溶媒除去し、カラムクロマトグラフィー等で分画精製する方法が挙げられる。
【0032】
本発明のスクリーニング方法における手順の一例を以下に挙げるが、本発明の趣旨を逸脱しない限り以下の内容に限定されるものではなく、適宜変更して実施することができる
。
まず、プレ培養した線維芽細胞に被験試料を添加し、37℃で24~72時間インキュベーションする。その後、該線維芽細胞におけるFGF21受容体をコードする遺伝子又は前記タンパク質の発現量を常法により測定する。コントロールとして被験試料を添加せず同様に培養した線維芽細胞においても該発現量を測定する。被験試料を添加した線維芽細胞における発現量が、被験試料を添加しなかった線維芽細胞における発現量(コントロール)に対して大きい場合、前記被験試料は抗シワ作用を有すると判定する。
【0033】
本発明のスクリーニング方法により抗シワ作用を有すると判定された成分は、任意の調製方法により組成物に含有させることができる。すなわち、本発明のスクリーニング方法は、抗シワ用組成物を設計する際に好適に用いることができる。かかる組成物としては、例えば皮膚外用組成物が好ましく、化粧料がより好ましく、抗シワ用化粧料が好適に挙げられる。
【0034】
本発明のスクリーニングにより抗シワ作用を有すると判定された成分(有効成分)を組成物に含有させる場合、その含有量(配合量)は、通常、組成物全体の0.000001質量%以上、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下である。有効成分の含有量(配合量)が少なすぎると所望の効果が得られにくい場合があり、多すぎると効果が頭打ちになるばかりか組成物の処方の自由度を損なう場合があるからである。また、組成物に含有させる有効成分の種類は、1種類のみでなく2種類以上であってもよい。なお、動植物抽出物等についてはその配合量は固形物換算量とする。
【0035】
本発明のスクリーニングにより抗シワ作用を有すると判定された成分(有効成分)を抗シワ用組成物に含有させる場合、その製造に際しては、化粧料、医薬部外品、医薬品などの製剤化で通常使用される成分を任意に配合することができ、<1>で述べた説明に準ずることができる。
【実施例0036】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
<参考例1>
以下の手順で、各種エキスを調製した。
チョウジエキス:乾燥した丁子(フトモモ科フトモモ属チョウジノキの花蕾)に、10倍量の30%エタノール水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾燥により粉末化した。
セイヨウノコギリソウエキス:乾燥したキク科ノコギリソウ属セイヨウノコギリソウの全草を粉砕し、10倍量の30%エタノ-ル水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾燥により粉末化した。
ルイボスエキス:乾燥したマメ科アスパラトゥス属ルイボスの葉を粉砕し、10倍量の30%エタノ-ル水溶液を加えて、還流して抽出した液を、凍結乾燥により粉末化した。
【0038】
<参考例2>線維芽細胞における過酸化水素のFGF21受容体遺伝子発現量への影響の検討
以下の手順で、過酸化水素を添加した線維芽細胞におけるFGF21受容体遺伝子発現量を測定した。
10%FBS入りDMEM培地を用いてヒト正常線維芽細胞を24ウェルプレートに3×104cells/ウェル播種し、37℃・5%CO2環境下で一晩培養した。培養後、培地を除去し、30μM過酸化水素を含有する1%FBS入りDMEM培地に交換して
さらに3時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄し、10%FBS入りDMEM培地に交換してさらに24時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄して回収し、QIAshredder、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてQIAcube(QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。抽出したRNAをSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrigen社製)を用いてcDNA化し、SYBR(QIAGEN社製)を用い、QuantStudio 7(Applied Biosystems社製)にてRT-qPCRを行い、KLB遺伝子の発現量を解析した。内在性コントロールとしては、β-Actin遺伝子を用いた。
また、培養後に回収した細胞を、4%パラホルムアルデヒドを用いて常法により固定化した。KLBタンパク質を抗体(abcam社製)を用いて免疫染色し、蛍光顕微鏡にて観察
した。
【0039】
図1に、過酸化水素を添加した線維芽細胞におけるKLB遺伝子のmRNA発現量を、溶媒対照(コントロール)の線維芽細胞におけるKLB遺伝子のmRNA発現量を1とした場合の相対値で示した。
過酸化水素を添加した線維芽細胞においては、KLB遺伝子の各mRNA発現量がコントロールに対して有意に減少することが認められた。また、過酸化水素を添加した線維芽細胞においては、KLBタンパク質量がコントロールに対して減少することが認められた。
【0040】
<試験例1>線維芽細胞における各種エキスのFGF21受容体遺伝子発現量への影響の検討
以下の手順で、被験エキスを添加した線維芽細胞におけるFGF21受容体遺伝子発現量を測定した。
10%FBS入りDMEM培地を用いてヒト正常線維芽細胞を24ウェルプレートに3×104cells/ウェル播種し、37℃・5%CO2環境下で一晩培養した。培養後、培地を除去し、固形分濃度が1.0質量%になるように調整した被験エキスを0.1重量%含有する1%FBS入りDMEM培地に交換してさらに48時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄して回収し、QIAshredder、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてQIAcube(QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。抽出したRNAをSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrigen社製)を用いてcDNA化し、SYBR(QIAGEN社製)を用い、QuantStudio 7(Applied Biosystems社製)にてRT-qPCRを行い、FGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各発現量を解析した。内在性コントロールとしては、β-Actin遺伝子を用いた。
被験エキスとしては、いずれも参考例の方法で調製したものを用いた。
【0041】
図2に、各エキスを添加した線維芽細胞におけるFGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各mRNA発現量を、溶媒対照(コントロール)の線維芽細胞における各遺伝子のmRNA発現量を1とした場合の相対値で示した。
いずれのエキスを添加した線維芽細胞においても、FGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各mRNA発現量がコントロールに対して有意に増加することが認められた。
【0042】
<試験例2>線維芽細胞におけるFGF21のデコリン遺伝子発現量への影響の検討
以下の手順で、FGF21を添加した線維芽細胞におけるデコリン遺伝子発現量を測定した。
10%FBS入りDMEM培地を用いてヒト正常線維芽細胞を24ウェルプレートに4×104cells/ウェル播種し、37℃・5%CO2環境下で8時間培養した。培養後、培地を除去し、0.1%FBS入りDMEM培地に交換して一晩培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄し、FGF21を100pg/mL含有する0.1%FBS入りDMEM培地に交換してさらに72時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄して回収し、QIAshredder、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてQIAcube(QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。抽出したRNAをSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrigen社製)を用
いてcDNA化し、SYBR(QIAGEN社製)を用い、QuantStudio 7(Applied Biosystems社製)
にてRT-qPCRを行い、デコリン遺伝子の各発現量を解析した。内在性コントロールとして
は、β-Actin遺伝子を用いた。
【0043】
図3に、FGF21を添加した線維芽細胞におけるデコリン遺伝子のmRNA発現量を、溶媒対照(コントロール)の線維芽細胞におけるデコリン遺伝子のmRNA発現量を1とした場合の相対値で示した。
FGF21を添加した線維芽細胞においては、デコリン遺伝子のmRNA発現量がコントロールに対して有意に増加することが認められた。すなわち、FGF21の存在によりデコリン遺伝子の発現が亢進することが分かった。
デコリンはコラーゲンを分解から保護するため、コラーゲンの分解を抑制し、シワが生じるのを防いだりシワの悪化を抑制したりする作用につながることが推測される。
【0044】
<試験例3>線維芽細胞におけるFGF21受容体発現亢進剤のデコリン遺伝子発現量への影響の検討
以下の手順で、FGF21存在下で、FGF21受容体発現亢進作用が確認されたエキスを添加した線維芽細胞におけるデコリン遺伝子発現量を測定した。
10%FBS入りDMEM培地を用いてヒト正常線維芽細胞を24ウェルプレートに4×104cells/ウェル播種し、37℃・5%CO2環境下で8時間培養した。培養後、培地を除去し、0.1%FBS入りDMEM培地に交換して一晩培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄し、FGF21を100pg/mL含有する0.1%FBS入りDMEM培地、又はFGF21を100pg/mLと固形分濃度が1.0質量%になるように調整したチョウジエキス及びセイヨウノコギリソウエキス各0.1重量%とを含有する1%FBS入りDMEM培地に交換して、さらに72時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄して回収し、QIAshredder、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてQIAcube(QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。抽出したRNAをSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrigen社製)を用いてcDNA化し、SYBR(QIAGEN社製)を用い、QuantStudio 7(Applied
Biosystems社製)にてRT-qPCRを行い、デコリン遺伝子の各発現量を解析した。内在性コントロールとしては、β-Actin遺伝子を用いた。
前記エキスとしては、いずれも参考例の方法で調製したものを用いた。
【0045】
図4に、FGF21又はFGF21とエキス2種とを添加した線維芽細胞におけるデコリン遺伝子のmRNA発現量を、溶媒対照(コントロール)の線維芽細胞における各遺伝子のmRNA発現量を1とした場合の相対値で示した。
FGF21を添加した線維芽細胞においては、デコリン遺伝子のmRNA発現量がコントロールに対して有意に増加した。また、FGF21とエキス2種とを添加した線維芽細胞においては、デコリン遺伝子のmRNA発現量がコントロール及びFGF21添加群のいずれに対しても有意に増加することが認められた。
この結果から、チョウジエキス及びセイヨウノコギリソウエキスによりFGF21受容体の発現が亢進し、該受容体に結合するFGF21が活性化しやすくなったため、FGF21によるデコリン発現亢進作用がさらに増強されたことが分かる。そのため、FGF21受容体の発現亢進剤の有効成分であるこれらのエキスは、デコリンの発現亢進をさらに促進することを介して、抗シワ作用に寄与することが推測される。
【0046】
<参考例3>メラノサイトにおける過酸化水素のFGF21受容体遺伝子発現量への影響の検討
以下の手順で、過酸化水素を添加したメラノサイトにおけるFGF21受容体遺伝子発現量を測定した。
HMGS添加Medium254培地を用いてヒト正常メラノサイトを24ウェルプレートに1×104cells/ウェル播種し、37℃・5%CO2環境下でコンフルエン
トになるまで培養した。培養後、培地を除去し、30μM過酸化水素を含有するHMGS添加Medium254培地に交換してさらに24時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄し、HMGS添加Medium254培地に交換してさらに48時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄して回収し、QIAshredder、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてQIAcube(QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。抽出したRNAをSuperScript VILO cDNA
Synthesis Kit(Invitrigen社製)を用いてcDNA化し、SYBR(QIAGEN社製)を用い、QuantStudio 7(Applied Biosystems社製)にてRT-qPCRを行い、FGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各発現量を解析した。内在性コントロールとしては、β-Actin遺伝子を用いた。
【0047】
図5に、過酸化水素を添加したメラノサイトにおけるFGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各mRNA発現量を、溶媒対照(コントロール)のメラノサイトにおける各遺伝子のmRNA発現量を1とした場合の相対値で示した。
過酸化水素を添加したメラノサイトにおいては、FGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各mRNA発現量がコントロールに対して有意に減少することが認められた。
【0048】
<試験例4>メラノサイトにおける各種エキスのFGF21受容体遺伝子発現量への影響の検討
以下の手順で、被験エキスを添加したメラノサイトにおけるFGF21受容体遺伝子発現量を測定した。
HMGS添加Medium254培地を用いてヒト正常メラノサイトを24ウェルプレートに1×104cells/ウェル播種し、37℃・5%CO2環境下でコンフルエントになるまで培養した。培養後、培地を除去し、固形分濃度が1.0質量%になるように調整した被験エキスを0.1重量%含有するHMGS添加Medium254培地に交換してさらに48時間培養した。培養後に細胞をPBSで洗浄して回収し、QIAshredder、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)を用いてQIAcube(QIAGEN社製)にてRNAを抽出した。抽出したRNAをSuperScript VILO cDNA Synthesis Kit(Invitrigen社製)を用いてcDNA化し、SYBR(QIAGEN社製)を用い、QuantStudio 7(Applied Biosystems社製)にてRT-qPCRを行い、FGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各発現量を解析した。内在性コントロールとしては、β-Actin遺伝子を用いた。
被験エキスとしては、いずれも参考例の方法で調製したものを用いた。
【0049】
図6に、各エキスを添加したメラノサイトにおけるFGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各mRNA発現量を、溶媒対照(コントロール)のメラノサイトにおける各遺伝子のmRNA発現量を1とした場合の相対値で示した。
いずれのエキスを添加したメラノサイトにおいても、FGFR1遺伝子及びKLB遺伝子の各mRNA発現量がコントロールに対して有意に増加することが認められた。
本発明により、線維芽細胞又はメラノサイトにおいてFGF21受容体の発現を亢進させる成分が提供される。また、かかる成分を組成物に含有させることにより抗シワ用組成物又は美白用組成物とすることができる。さらに本発明により、抗シワ作用を有する成分をスクリーニングする方法が提供される。これらの発明は、美容業界における開発に貢献し、また消費者の需要に応えるものであり、産業上非常に有用である。