(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074684
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】位置決め装置及び位置決め方法
(51)【国際特許分類】
G01C 15/02 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
G01C15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186003
(22)【出願日】2022-11-21
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 1.展示日 令和4年3月9日 2.展示会名 第19回国際オートアフターマーケットEXPO2022 3.開催場所 東京都江東区有明3丁目11-1 東京ビッグサイト 4.公開者 株式会社 ニフコ
(71)【出願人】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100158964
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 和郎
(72)【発明者】
【氏名】福本 充
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両の調整で用いるターゲットの位置を決めるための位置決め装置及び位置決め方法を提供する。
【解決手段】位置決め装置10は、軸受け部26を含み、車両に対する基準位置に設置される軸受け装置25と、軸受け装置25を基準位置に設置するための位置合わせ具と、軸受け部26を中心に回動可能であるよう軸受け装置25に接続されるアーム45と、描線具58を保持する保持部53を含み、アーム45の長さ方向に沿って移動可能であるようアーム45に接続されるホルダ50と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の調整で用いるターゲットの位置を決めるための位置決め装置であって、
軸受け部を含み、前記車両に対する基準位置に設置される軸受け装置と、
前記軸受け装置を前記基準位置に設置するための位置合わせ具と、
前記軸受け部を中心に回動可能であるよう前記軸受け装置に接続されるアームと、
描線具を保持する保持部を含み、前記アームの長さ方向に沿って移動可能であるよう前記アームに接続されるホルダと、を備える、位置決め装置。
【請求項2】
前記位置合わせ具は、前記軸受け装置に着脱可能である、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項3】
前記位置合わせ具は、前記車両に対して位置合わせされる位置合わせ部と、前記軸受け部に着脱可能な軸部と、を含む、請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項4】
前記位置合わせ具は、上端に向かって先細になる錐形を有する位置合わせ部を含む、請求項2に記載の位置決め装置。
【請求項5】
前記軸受け部に着脱可能な軸部と、前記アームを支持する支持部と、を含む支持装置を備える、請求項1に記載の位置決め装置。
【請求項6】
前記支持装置は、コンベックスの爪が取り付けられる溝部を含む、請求項5に記載の位置決め装置。
【請求項7】
前記支持装置に取り付けられるリフレクタを備え、
前記リフレクタは、前記ホルダに設置されるレーザ距離計からのレーザを反射する反射面を含む、請求項5に記載の位置決め装置。
【請求項8】
前記軸受け装置の前記軸受け部は、貫通孔が形成された底部を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の位置決め装置。
【請求項9】
請求項1に記載の位置決め装置を用いて前記ターゲットの位置を決める位置決め方法であって、
前記位置合わせ具を用いて前記軸受け装置を前記基準位置に設置する工程と、
前記アームを前記軸受け装置に接続する工程と、
前記軸受け装置の前記軸受け部に対して所定の距離だけ離れた位置で前記ホルダを前記アームに接続する工程と、
前記軸受け部を中心に前記アームを回動させることにより、前記ホルダが保持する前記描線具が円弧を描く工程と、を備える、位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の調整で用いるターゲットの位置を決めるための位置決め装置及び位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
安全運転を支援する先進的な検知機器が搭載されている車両が利用されている。検知機器は、カメラ、レーダー、センサーなどである。検知機器を車両に搭載する時などに、検知機器のエーミングの調整が実施される。エーミングとは、検知機器が対象物に狙いをつける機能である。検知機器に所定のターゲットを認識させることにより、エーミングが調整される。
【0003】
ターゲットは、車両から所定の距離だけ離れた位置に配置される。ターゲットの位置は、車両の型式などに応じて予め定められている。例えば、車両に添付されている整備書が、ターゲットの位置を記載している。エーミングの調整を実施する作業者は、整備書に基づいてターゲットを所定の位置に配置する。
【0004】
特許文献1は、レーザ距離計を用いてターゲットの位置を決定する方法を開示している。特許文献1においては、車両に対する基準位置に、レーザ距離計からのレーザが当てられる板が配置される。レーザ距離計は、移動可能な移動台に設置される。レーザ距離計と板との間の距離が、整備書に記載されている所定の距離になるように、移動台の位置が調整される。調整された移動台に基づいて、ターゲットが配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の方法においては、2つの位置の中間を求める場合に、作業工数及び誤差が大きくなりやすい。
【0007】
本発明は、このような課題を解決できる位置決め装置及び位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の[1]~[9]に関する。
[1] 車両の調整で用いるターゲットの位置を決めるための位置決め装置であって、
軸受け部を含み、前記車両に対する基準位置に設置される軸受け装置と、
前記軸受け装置を前記基準位置に設置するための位置合わせ具と、
前記軸受け部を中心に回動可能であるよう前記軸受け装置に接続されるアームと、
描線具を保持する保持部を含み、前記アームの長さ方向に沿って移動可能であるよう前記アームに接続されるホルダと、を備える、位置決め装置。
【0009】
[2] [1]に記載の位置決め装置において、前記位置合わせ具は、前記軸受け装置に着脱可能であってもよい。
【0010】
[3] [2]に記載の位置決め装置において、前記位置合わせ具は、前記車両に対して位置合わせされる位置合わせ部と、前記軸受け部に着脱可能な軸部と、を含んでもよい。
【0011】
[4] [1]~[3]のいずれか1つに記載の位置決め装置において、前記位置合わせ具は、上端に向かって先細になる錐形を有する位置合わせ部を含んでもよい。
【0012】
[5] [1]~[4]のいずれか1つに記載の位置決め装置は、前記軸受け部に着脱可能な軸部と、前記アームを支持する支持部と、を含む支持装置を備えてもよい。
【0013】
[6] [5]に記載の位置決め装置において、前記支持装置は、コンベックスの爪が取り付けられる溝部を含んでもよい。
【0014】
[7] [5]又は[6]に記載の位置決め装置は、前記支持装置に取り付けられるリフレクタを備えてもよく、前記リフレクタは、前記ホルダに設置されるレーザ距離計からのレーザを反射する反射面を含んでもよい。
【0015】
[8] [1]~[7]のいずれか1つに記載の位置決め装置において、前記軸受け装置の前記軸受け部は、貫通孔が形成された底部を含んでもよい。
【0016】
[9] [1]~[8]のいずれか1つに記載の位置決め装置を用いて前記ターゲットの位置を決める位置決め方法であって、
前記位置合わせ具を用いて前記軸受け装置を前記基準位置に設置する工程と、
前記アームを前記軸受け装置に接続する工程と、
前記軸受け装置の前記軸受け部に対して所定の距離だけ離れた位置で前記ホルダを前記アームに接続する工程と、
前記軸受け部を中心に前記アームを回動させることにより、前記ホルダが保持する前記描線具が円弧を描く工程と、を備える、位置決め方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、車両の調整で用いるターゲットの位置を容易に決めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図2】ターゲットの位置を決める方法の一例を示す図である。
【
図3】下げ振り錘、位置合わせ具及び軸受け装置の一例を示す図である。
【
図10】支持装置にコンベックスを取り付ける様子の一例を示す図である。
【
図11】支持装置にコンベックスを取り付ける様子の一例を示す図である。
【
図17】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図18】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図19】位置決め装置及びコンベックスを用いて距離を測定する方法の一例を示す図である。
【
図20】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図21】位置決め装置及びレーザ距離計を用いて距離を測定する方法の一例を示す図である。
【
図22】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図23】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図24】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図25】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図26】ターゲットの位置決め方法の一工程を示す図である。
【
図27】ターゲット位置に設置されたターゲットの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0020】
図1は、車両1の調整で用いるターゲットの位置の一例を示す図である。車両1は、床などの面に置かれている。
【0021】
本実施の形態においては、位置G、J、Kという3つの位置にターゲットが配置される例を説明する。ターゲットの位置G、J、Kは、2つの位置A、Bに対して相対的に定められる。位置A、Bは、車両1に対する基準となる位置である。位置A、B、G、J、Kなどの位置は、車両1が置かれている面上で定められる。車両1が置かれている面のことを、載置面とも称する。
【0022】
位置Aを第1基準位置とも称し、位置Bを第2基準位置とも称する。第1基準位置Aは、例えば、平面視において車両1のリアエンブレム2の中心に重なる位置である。第2基準位置Bは、例えば、平面視において車両1のフロントエンブレム3の中心に重なる位置である。
【0023】
ターゲット位置Kは、第1基準位置A及び第2基準位置Bを通る直線S1上に位置し、且つ、第2基準位置Bの前方に位置する。ターゲット位置G、J、Kは、直線S2上に位置する。ターゲット位置Gは、第2基準位置Bの左前方に位置する。ターゲット位置Gは、ターゲット位置Jは、第2基準位置Bの右前方に位置する。
【0024】
図2は、ターゲットの位置を決める方法の一例を示す図である。本実施の形態においては、第1基準位置A及び第2基準位置Bに基づいて、位置C、Dが定められる。続いて、位置C、Dに基づいて、位置G、Jが求められる。続いて、位置G、Jに基づいて、位置Kが定められる。
【0025】
位置C、Dは、第2基準位置Bの前方に位置する。位置Cは、第2基準位置Bから距離L1だけ離れている。位置Dは、第2基準位置Bから、距離L1よりも大きい距離L2だけ離れている。ターゲット位置Gは、位置Cから距離L3だけ離れ、且つ位置Dから距離L3だけ離れた、第2基準位置Bの左前方の位置として定められる。ターゲット位置Jは、位置Cから距離L3だけ離れ、且つ位置Dから距離L3だけ離れた、第2基準位置Bの右前方の位置として定められる。ターゲット位置Kは、ターゲット位置Gとターゲット位置Jの中間の位置として定められる。距離L1、L2、L3は、車両に添付されている整備書においてあらかじめ定められていてもよい。
【0026】
ターゲットの位置を決めるために用いられる位置決め装置について説明する。
図3は、下げ振り錘15、位置合わせ具20及び軸受け装置25の一例を示す図である。これらの構成要素は、第1基準位置A及び第2基準位置Bを決めるために用いられる。
【0027】
下げ振り錘15は、糸16に吊り下げられている。下げ振り錘15は、下端151に向かって先細になる錐形を有する。第1基準位置Aを決める工程においては、糸16がリアエンブレム2の中心を通るように配置される。第2基準位置Bを決める工程においては、糸16がフロントエンブレム3の中心を通るように配置される。下げ振り錘15の下端151に基づいて、基準位置A、Bが定められる。
【0028】
位置合わせ具20は、下げ振り錘15の下端151に対する位置合わせを行うための位置合わせ部21を含む。位置合わせ部21は、上端211に向かって先細になる錐形を有してもよい。これにより、下げ振り錘15の下端151に対する位置合わせ部21の位置合わせの精度を高めることができる。軸受け装置25は、位置合わせ具20を下方から支持する。
【0029】
(位置合わせ具及び軸受け装置)
図4は、位置合わせ具20及び軸受け装置25の一例を示す斜視図である。位置合わせ具20は、位置合わせ部21に接続された軸部22を含んでもよい。軸部22は、位置合わせ部21から下方へ突出している。軸部22は、例えば円筒の形状を有する。
【0030】
軸受け装置25は、軸受け部26を含む。位置合わせ具20の軸部22は、軸受け部26に挿入される。これによって、位置合わせ具20が軸受け装置25によって支持される。位置合わせ具20の軸部22は、軸受け装置25に着脱可能であってもよい。例えば、軸部22が軸受け部26に挿入されている状態において、位置合わせ具20を持ち上げると、位置合わせ具20が軸受け装置25から分離されてもよい。
【0031】
基準位置A、Bを決める工程においては、位置合わせ具20の位置が下げ振り錘15の位置に一致するよう、位置合わせ具20が動かされる。位置合わせ具20を動かすと、軸受け装置25も同時に、載置面の上で動かされる。これにより、軸受け装置25が基準位置A、Bに設置される。
【0032】
図5は、軸受け装置25の一例を示す平面図である。軸受け部26は、貫通孔271が形成された底部27を含んでもよい。貫通孔271は、ペンなどの描線具が挿入される程度の寸法を有する。ペンなどの描線具は、軸受け装置25が基準位置A、Bに設置された後、貫通孔271に挿入される。貫通孔271に挿入された描線具を用いて、基準位置A、Bを示すマークを載置面に描いてもよい。
【0033】
図6は、位置決め装置10の一例を示す斜視図である。位置決め装置10は、上述の軸受け装置25に加えて、アーム45及びホルダ50を少なくとも備える。
図7は位置決め装置10の各構成要素が分離された状態を示す図である。
【0034】
アーム45は、軸受け装置25の軸受け部26を中心に回動可能であるよう、軸受け装置25に接続される。符号Rは、軸受け部26を中心とするアーム45の回動方向を表す。
【0035】
アーム45は、少なくとも1つのロッド46を含む。後述するように、アーム45は、連結された複数のロッド46を含んでもよい。ロッド46の数を調整することにより、アーム45の長さを調整できる。
【0036】
アーム45は、軸受け装置25に直接的に接続されていてもよい。アーム45は、軸受け装置25に間接的に接続されていてもよい。例えば、位置決め装置10は、軸受け装置25とアーム45との間に位置する支持装置30を備えてもよい。位置決め装置10は、支持装置30に取り付けられるカバー40を備えてもよい。
【0037】
ホルダ50は、描線具58を保持する保持部53を含む。ホルダ50は、アーム45の長さ方向に沿って移動可能であるよう、アーム45に接続されている。描線具58は、アーム45の回動に伴って載置面に円又は円弧を描くためのものである。描線具58は、例えばペンである。円又は円弧は、軸受け装置25の軸受け部26とホルダ50の保持部53との間の距離に等しい半径を有する。
【0038】
図6において、符号D1は、アーム45の長さ方向に直交する方向における、軸受け装置25の軸受け部26とアーム45との間の距離を表す。符号D2は、アーム45の長さ方向に直交する方向における、ホルダ50の保持部53とアーム45との間の距離を表す。距離D1と距離D2とが同一であるか、距離D1と距離D2の差が小さいことが好ましい。距離D1と距離D2とが同一である場合、平面視において軸受け装置25の軸受け部26とホルダ50の保持部53とを結ぶ直線の方向が、アーム45の長さ方向に平行である。この場合、アーム45の長さ方向に沿って測定した距離が、アーム45によって描かれる円又は円弧の半径に一致する。距離D1と距離D2との間に多少の差があったとしても、十分な精度で円又は円弧の半径を調整できる。
【0039】
支持装置30、カバー40及びホルダ50について詳細に説明する。
【0040】
(支持装置)
図8及び
図9は、支持装置30の一例を示す斜視図である。支持装置30は、軸部32及び支持部33を少なくとも含む。軸部32は、軸受け部26に挿入される。軸部32は、位置合わせ具20の軸部22と同様に、軸受け装置25に着脱可能であってもよい。支持部33は、アーム45を支持する。例えば、支持部33は、アーム45の内部に挿入される、アーム45の長さ方向に延びる部分を含んでもよい。軸部32が軸受け部26において回転することにより、アーム45が軸受け部26を中心に回動できる。
【0041】
支持装置30は、ベース部31を含んでもよい。軸部32は、ベース部31から下方に突出していてもよい。支持部33は、ベース部31から水平方向に突出していてもよい。
【0042】
支持装置30は、溝部34を含んでいてもよい。溝部34は、ベース部31の上面に形成されていてもよい。溝部34は、アーム45の長さ方向に直交する方向に延びていてもよい。平面視において、溝部34は、アーム45の長さ方向に直交する方向において軸部32に並んでいてもよい。
【0043】
支持装置30は、上方に突出する突出部35を含んでもよい。突出部35は、ベース部31から上方に突出していてもよい。突出部35は、上方に開口した孔351を含んでもよい。突出部35は、平面視において軸部32に重なっていてもよい。
【0044】
図10及び
図11は、支持装置30にコンベックス60を取り付ける様子の一例を示す斜視図である。コンベックス60は、金属製の巻き尺であり、目盛りが表示されている。コンベックス60は、先端に位置する爪61を含んでもよい。
図10に示すように、コンベックス60の爪61は、支持装置30の溝部34に取り付けられてもよい。例えば、爪61が溝部34に引っ掛けられてもよい。これにより、アーム45の長さ方向に沿って、軸受け装置25からの距離を容易に測定できる。例えば、軸受け装置25からの距離を測定する工程が、1人の作業者によって実現されることができる。上述のように、アーム45の長さ方向に直交する方向において溝部34が軸部32に並んでいる場合、アーム45の長さ方向における溝部34の位置と軸部32の位置とが一致する。このため、爪61が始点である一般的なコンベックス60を用いて距離を測定できる。
【0045】
図示はしないが、距離を表す目盛りが、アーム45のロッド46に表示されていてもよい。この場合、コンベックス60が用いられなくてもよい。
【0046】
(カバー)
図10及び
図11に示すように、コンベックス60の爪61が取り付けられた状態の支持装置30に、カバー40が取り付けられてもよい。カバー40は、コンベックス60の爪61を少なくとも部分的に覆ってもよい。これにより、爪61が支持装置30から分離することを抑制できる。
【0047】
カバー40は、支持装置30の突出部35に取り付けられるグリップ部41を含んでもよい。グリップ部41は、突出部35の外面を弾性的に把持してもよい。
【0048】
カバー40は、載置面に接触する脚部42を含んでもよい。脚部42は、カバー40の姿勢を安定化することに役立つ。
【0049】
カバー40は、上方に突出した突出部43を含んでもよい。突出部43は、上方に開口した孔431を含んでもよい。突出部43は、アーム45の長さ方向に直交する方向においてグリップ部41に並んでいてもよい。後述するように、レーザ距離計からのレーザを反射するリフレクタの脚部が、カバー40の突出部43の孔431及び支持装置30の突出部35の孔351に挿入されてもよい。
【0050】
(ホルダ)
図12~
図14は、ホルダ50の一例を示す斜視図である。ホルダ50は、グリップ部52及び保持部53を少なくとも含む。グリップ部52は、アーム45のロッド46に取り付けられる。グリップ部52は、ロッド46の外面を弾性的に把持してもよい。ホルダ50は、複数のグリップ部52を含んでもよい。保持部53は、描線具58を保持する。例えば、保持部53は、描線具58が挿入される貫通孔を含む。
【0051】
ホルダ50は、ベース部51を含んでもよい。グリップ部52は、ベース部51の側面に位置していてもよい。保持部53の貫通孔は、上下方向においてベース部51を貫通していてもよい。
【0052】
ホルダ50は、載置面に接触する脚部を含んでもよい。脚部は、上下方向において弾性的に変形可能であってもよい。脚部が弾性的に変形することにより、載置面に対する描線具58の位置を容易に調整できる。このため、例えば、描線具58の先端が載置面に接触する状態を容易に維持できる。脚部は、例えば、下端において接続された2枚の樹脂のプレートによって構成されていてもよい。
【0053】
ホルダ50の脚部は、第1脚部541及び第2脚部542を含んでもよい。第1脚部541及び第2脚部542は、アーム45の長さ方向に直交する方向において並んでいてもよい。第1脚部541は、第2脚部542よりもアーム45に近接している。第1脚部541は、グリップ部52の下方に位置してもよい。
【0054】
図14に示すように、ホルダ50は、保持部53に挿入される中間部56を含んでもよい。この場合、描線具58は、中間部56に挿入される。すなわち、中間部56は、保持部53と描線具58との間に位置する。中間部56は、保持部53の貫通孔とは異なる輪郭を有する貫通孔を含んでもよい。例えば、保持部53の貫通孔が、平面視において矩形の輪郭を有し、中間部56の貫通孔が、平面視において円形の輪郭を有してもよい。
【0055】
図15は、アーム45に接続された状態のホルダ50の一例を示す平面図である。ホルダ50は、弾性的に変形可能な爪55を含んでもよい。爪55は、平面視において部分的に中間部56に重なっていてもよい。描線具58が中間部56に挿入されると、爪55が弾性的に変形する。爪55に生じる弾性的な復元力が、描線具58を中間部56又は保持部53に押し付けることにより、描線具58がホルダ50に対して移動することを抑制できる。
【0056】
図14に示すように、ホルダ50は、アーム45の長さ方向に直交する方向において、保持部53の貫通孔の中心に並ぶ基準部531を含んでもよい。基準部531は、アーム45の長さ方向に沿って延ばされたコンベックス60の目盛りを読み取るための部分である。基準部531は、例えば、矩形の輪郭を有する保持部53のコーナーによって構成されていてもよい。基準部531は、例えば、中間部56のフランジ部のコーナーによって構成されていてもよい。
【0057】
図16は、アーム45のロッド46に接続され、描線具58が挿入された状態のホルダ50の一例を示す側面図である。
図16においては、アーム45の長さ方向に沿ってホルダ50を見た状態が示されている。符号D3は、アーム45の長さ方向に直交する方向における、保持部53の中心とロッド46の中心との間の距離を表す。符号D4は、アーム45の長さ方向に直交する方向における、第1脚部541の下端と保持部53の中心との間の距離を表す。符号D5は、アーム45の長さ方向に直交する方向における、第2脚部542の下端と保持部53の中心との間の距離を表す。
【0058】
距離D3は、距離D4よりも小さいことが好ましい。これにより、ロッド46の重量に起因してホルダ50の姿勢が不安定になることを抑制できる。例えば、ホルダ50が転倒することを抑制できる。
【0059】
距離D4及び距離D5は、第1回動運動及び第2回動運動の両方を安定に実施できるように設定されることが好ましい。第1回動運動とは、第1脚部541が前方に位置するようアーム45が回動する運動である。第2回動運動とは、第2脚部542が前方に位置するようアーム45が回動する運動である。
【0060】
(位置決め方法)
次に、位置決め装置10を用いてターゲットの位置を決める位置決め方法の一例を、
図17~
図26を参照して説明する。
【0061】
まず、車両1に対する基準位置に軸受け装置25を設置する設置工程を実施する。例えば、リアエンブレム2の下方において載置面に軸受け装置25を暫定的に配置する。続いて、軸受け装置25の軸受け部26に位置合わせ具20の軸部22を挿入する。続いて、リアエンブレム2の中心を通るように配置された下げ振り錘15の下端151と、位置合わせ具20の位置合わせ部21の上端211とが一致するよう、位置合わせ具20及び軸受け装置25の位置を調整する。これにより、軸受け装置25が第1基準位置Aに設置される。その後、位置合わせ具20を軸受け装置25から外してもよい。その後、軸受け装置25の底部27の貫通孔271に描線具を挿入し、第1基準位置Aを示すマークを載置面に描いてもよい。
【0062】
第1基準位置Aの場合と同様の方法によって、軸受け装置25が第2基準位置Bに設置される。その後、第1基準位置Bを示すマークが載置面に描かれてもよい。
【0063】
続いて、
図18に示すように、第1基準位置Bを中心として第1円弧R1を載置面に描く第1描線工程を実施する。第1円弧R1は、第1基準位置Bの前方に位置し、半径L1を有する。第1円弧R1は、載置面に置かれたシート81に描かれてもよい。
【0064】
位置決め装置10を用いて第1描線工程を実施する方法の一例を説明する。まず、第2基準位置Bに設置された軸受け装置25にアーム45を接続する。例えば、軸受け装置25の軸受け部26に支持装置30の軸部32を挿入する。また、支持装置30の支持部33とアーム45とを接続する。
【0065】
続いて、
図19に示すように、コンベックス60を用いて、アーム45の長さ方向に沿って距離L1を測定する。例えば、コンベックス60の爪61を支持装置30の溝部34に引っ掛ける。続いて、コンベックス60の目盛りが距離L1を示す位置を特定する。続いて、距離L1を示す位置においてホルダ50をアーム45に接続する。例えば、グリップ部52によってアーム45に接続されたホルダ50を、距離L1を示す位置へアーム45に沿って移動させる。これにより、軸受け装置25の軸受け部26に対して距離L1だけ離れた位置にホルダ50の保持部53が配置される。
【0066】
続いて、描線具58をホルダ50の保持部53に挿入する。続いて、軸受け装置25の軸受け部26を中心として、アーム45を回動させる。保持部53が保持する描線具58によって第1円弧R1が描かれる。
【0067】
第1円弧R1などの円弧を描く作業は、作業者が描線具58に対して下方への力を加えながら実施されてもよい。これにより、描線具58の先端581が安定に載置面に接触できる。例えば、載置面が、上下方向における位置が変動する起伏部を含んでいる場合であっても、描線具58の先端581が起伏部に接触し続けることができる。
【0068】
図示はしないが、第1描線工程は、後述する第2描線工程と同様に、レーザ距離計を用いて実施されてもよい。
【0069】
続いて、
図20に示すように、第1基準位置Bを中心として第2円弧R2を載置面に描く第2描線工程を実施する。第2円弧R2は、第1基準位置Bの前方に位置し、半径L2を有する。第2円弧R2は、載置面に置かれたシート82に描かれてもよい。
【0070】
位置決め装置10を用いて第2描線工程を実施する方法の一例を説明する。まず、第2基準位置Bに設置された軸受け装置25にアーム45を接続する。例えば、軸受け装置25の軸受け部26に支持装置30の軸部32を挿入する。また、支持装置30の支持部33とアーム45とを接続する。
図21に示すように、アーム45は、複数のロッド46を含んでもよい。アーム45は、2つのロッド46を接続するジョイント47を含んでもよい。
【0071】
続いて、
図21に示すように、レーザ距離計70を用いて、アーム45の長さ方向に沿って距離L2を測定する。例えば、まず、レーザホルダ72をホルダ50に取り付ける。レーザホルダ72は、第1面73及び第2面74を含む。第1面73は、例えば、レーザ距離計70が配置される水平面である。第2面74は、例えば、レーザ距離計70の端面が接触する鉛直面である。第2面74は、平面視においてホルダ50の保持部53の中心に重なっていてもよい。続いて、レーザホルダ72の上にレーザ距離計70を配置する。
【0072】
また、反射面76を含むリフレクタ75が配置される。反射面76は、レーザ距離計70からのレーザ71を反射する。反射面76は、平面視において軸受け装置25の軸受け部26の中心に重なっていてもよい。リフレクタ75の配置は、反射面76の脚部を、支持装置30の突出部35の貫通孔及びカバー40の突出部43の貫通孔に挿入することによって実現されてもよい。
第2面74が保持部53の中心に重なり、反射面76が軸受け部26の中心に重なる場合、レーザ距離計70で測定された距離が、保持部53の中心から軸受け部26の中心までの距離に等しくなる。このため、保持部53の中心から軸受け部26の中心までの距離を容易且つ正確に測定できる。
仮に、第2面74が保持部53の中心からずれているか、又は、反射面76が軸受け部26の中心からずれている場合、保持部53の中心から軸受け部26の中心までの距離の算出には、レーザ距離計70で測定された距離の補正が必要になる。仮に、第2面74が保持部53の中心からずれており、且つ、反射面76が軸受け部26の中心からずれている場合、保持部53の中心から軸受け部26の中心までの距離の算出精度が低下する。
【0073】
続いて、距離L2を示す位置においてホルダ50をアーム45に接続する。例えば、グリップ部52によってアーム45に接続されたホルダ50を、距離L2を示す位置へアーム45に沿って移動させる。これにより、軸受け装置25の軸受け部26に対して距離L2だけ離れた位置にホルダ50の保持部53が配置される。
【0074】
続いて、描線具58をホルダ50の保持部53に挿入する。続いて、軸受け装置25の軸受け部26を中心として、アーム45を回動させる。保持部53が保持する描線具58によって第2円弧R2が描かれる。
【0075】
図示はしないが、第2描線工程は、上述の第1描線工程と同様に、コンベックスを用いて実施されてもよい。第1描線工程における距離L1の測定方法と、第2描線工程における距離L2の測定方法は、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0076】
続いて、
図22に示すように、位置C及び位置Dを定める工程を実施する。例えば、第1基準位置A及び第2基準位置Bを通る第1線部材91を設置する。第1線部材91は、例えば糸である。第1線部材91の一端は、第1基準位置Aに設置された軸受け装置25に固定されてもよい。この場合、第1線部材91は、車両1の下方を通過し、且つ第2基準位置Bを通るように作業者によって引っ張られる。第1線部材91と第1円弧R1とが交わる位置が、位置Cに定められる。第1線部材91と第2円弧R2とが交わる位置が、位置Dに定められる。
【0077】
続いて、
図23に示すように、第3描線工程及び第4描線工程を実施する。第3描線工程は、位置Cを中心として第3円弧R3を載置面に描く工程である。第3円弧R3は、位置Cの左前方に位置し、半径L3を有する。第3円弧R3は、載置面に置かれたシート83に描かれてもよい。第4描線工程は、位置Cを中心として第4円弧R4を載置面に描く工程である。第4円弧R4は、位置Cの右前方に位置し、半径L3を有する。第4円弧R4は、載置面に置かれたシート84に描かれてもよい。
【0078】
第3描線工程及び第4描線工程においては、位置決め装置10の軸受け装置25を位置Cに設置する。例えば、位置Cを示すマークが軸受け装置25の底部27の貫通孔271に現れるよう、軸受け装置25が配置される。続いて、軸受け装置25の軸受け部26に対して距離L3だけ離れた位置でホルダ50をアーム45に接続する。距離L3の測定は、第1描線工程と同様に、コンベックスを用いて実施されてもよく、第2描線工程と同様に、レーザ距離計を用いて実施されてもよい。続いて、軸受け装置25の軸受け部26を中心として、アーム45を回動させる。描線具58によって第3円弧R3及び第4円弧R4が描かれる。
【0079】
続いて、
図24に示すように、第5描線工程及び第6描線工程を実施する。第5描線工程は、位置Dを中心として第5円弧R5を載置面に描く工程である。第5円弧R5は、位置Dの左後方に位置し、半径L3を有する。第5円弧R5は、載置面に置かれたシート83に描かれてもよい。第6描線工程は、位置Dを中心として第6円弧R6を載置面に描く工程である。第6円弧R6は、位置Dの右後方に位置し、半径L3を有する。第6円弧R6は、載置面に置かれたシート84に描かれてもよい。
【0080】
第5描線工程及び第6描線工程においては、位置決め装置10の軸受け装置25を位置Dに設置する。例えば、位置Dを示すマークが軸受け装置25の底部27の貫通孔271に現れるよう、軸受け装置25が配置される。続いて、軸受け装置25の軸受け部26に対して距離L3だけ離れた位置でホルダ50をアーム45に接続する。距離L3の測定は、第1描線工程と同様に、コンベックスを用いて実施されてもよく、第2描線工程と同様に、レーザ距離計を用いて実施されてもよい。続いて、軸受け装置25の軸受け部26を中心として、アーム45を回動させる。保持部53が保持する描線具58によって第5円弧R5及び第6円弧R6が描かれる。
【0081】
続いて、
図25に示すように、ターゲット位置G及びターゲット位置Jを定める工程を実施する。第3円弧R3と第5円弧R5とが交わる位置が、ターゲット位置Gに定められる。第4円弧R4と第6円弧R6とが交わる位置が、ターゲット位置Jに定められる。
【0082】
続いて、
図26に示すように、ターゲット位置Kを定める工程を実施する。例えば、ターゲット位置G及びターゲット位置Jを通る第2線部材92を設置する。第2線部材92は、例えば糸である。第2線部材92の一端は、ターゲット位置Gに固定されてもよい。第2線部材92は、ターゲット位置Jを通るように引っ張られる。第2線部材92は、テープなどによって載置面に固定されてもよい。第1線部材91と第2線部材92とが交わる位置が、ターゲット位置Kに定められる。このようにして、位置決め装置10を用いてターゲット位置G、J、Kが決められる。
【0083】
続いて、
図27に示すように、ターゲット位置G、J、Kにターゲット95、96、97が配置される。続いて、ターゲット95、96、97を利用して、車両1に搭載される検知機器のエーミングが調整される。
【0084】
本実施の形態によれば、位置合わせ具20及び軸受け装置25を用いることにより、車両1に対する基準位置A、Bに容易に軸受け装置25を設置できる。また、軸受け装置25の軸受け部26を中心とする円弧を容易に描くことができる。円弧を描くことにより、2つの位置の中間の位置を容易に決めることができる。このため、車両1の調整で用いるターゲット位置G、J、Kを容易に決めることができる。例えば、ターゲット位置G、J、Kを決める作業が、1人の作業者によって実施され得る。
【符号の説明】
【0085】
1 車両
2 リアエンブレム
3 フロントエンブレム
10 位置決め装置
15 下げ振り錘
20 位置合わせ具
21 位置合わせ部
22 軸部
25 軸受け装置
26 軸受け部
30 支持装置
40 カバー
45 アーム
46 ロッド
50 ホルダ
58 描線具
60 コンベックス
70 レーザ距離計
75 リフレクタ