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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074692
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】配管設置方法
(51)【国際特許分類】
   F23K 5/00 20060101AFI20240524BHJP
   F23K 1/00 20060101ALI20240524BHJP
   F17D 1/02 20060101ALI20240524BHJP
   F17D 5/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
F23K5/00 301A
F23K5/00 303
F23K5/00 304
F23K1/00 B
F17D1/02
F17D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186017
(22)【出願日】2022-11-21
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/燃料アンモニアサプライチェーンの構築/アンモニアの発電利用における高混焼化・専焼化/石炭ボイラにおけるアンモニア高混焼技術(専焼技術含む)の開発・実証」委託研究、産業技術力強化法第17条の規定の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】鶴丸 慧
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅之
(72)【発明者】
【氏名】住田 忠
(72)【発明者】
【氏名】羽有 絵莉
【テーマコード(参考)】
3J071
3K068
【Fターム(参考)】
3J071AA01
3J071AA05
3J071CC06
3J071CC07
3J071EE37
3J071FF16
3K068AA01
3K068BA03
3K068CA05
3K068CA06
3K068CA07
3K068DA01
(57)【要約】
【課題】既設の微粉燃料焚きのボイラシステムを改良してアンモニア燃料をボイラへ供給するためのアンモニア供給管を設置する際に、アンモニア供給管が他の配管等と干渉することを適切に防止する。
【解決手段】ボイラへ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管を備えるボイラシステムに対してボイラへアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管を設置する配管設置方法であって、微粉燃料供給管の内部にアンモニア供給管を設置してアンモニア供給管と微粉燃料供給管とで二重管構造を形成する配管設置工程(S103)と、微粉燃料供給管の上流側端部を封止する封止工程(S104)と、アンモニア燃料の供給源に接続された接続配管とアンモニア供給管とを接続する接続工程(S105)と、を備える配管設置方法を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラへ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管を備えるボイラシステムに対して前記ボイラへアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管を設置する配管設置方法であって、
前記微粉燃料供給管の内部に前記アンモニア供給管を設置して前記アンモニア供給管と前記微粉燃料供給管とで二重管構造を形成する配管設置工程と、
前記微粉燃料供給管の上流側端部を封止する封止工程と、
前記アンモニア燃料の供給源に接続された接続配管と前記アンモニア供給管とを接続する接続工程と、を備える配管設置方法。
【請求項2】
前記微粉燃料供給管と前記アンモニア供給管との間に空気を供給するように前記空気を流通させる空気供給配管と前記微粉燃料供給管とを連結する連結工程を備える請求項1に記載の配管設置方法。
【請求項3】
前記空気供給配管に供給される空気は、前記ボイラから排出される燃焼ガスにより前記アンモニア燃料が気化する温度以上に加熱されている請求項2に記載の配管設置方法。
【請求項4】
前記微粉燃料供給管と前記アンモニア供給管との間の空間に、前記アンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器を設置する検知器設置工程を備える請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の配管設置方法。
【請求項5】
ボイラへ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管を備えるボイラシステムに対して前記ボイラへアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管を設置する配管設置方法であって、
前記微粉燃料供給管を前記微粉燃料供給管が配置された配置領域から撤去する撤去工程と、
前記配置領域に前記アンモニア供給管を設置する配管設置工程と、
前記アンモニア燃料の供給源に接続された接続配管と前記アンモニア供給管とを接続する接続工程と、を備える配管設置方法。
【請求項6】
前記配管設置工程は、前記アンモニア供給管の外部に保護配管を設置して前記アンモニア供給管と前記保護配管とで二重管構造を形成する請求項5に記載の配管設置方法。
【請求項7】
前記保護配管と前記アンモニア供給管との間に空気を供給するように前記空気を流通させる空気供給配管と前記保護配管とを連結する連結工程を備える請求項6に記載の配管設置方法。
【請求項8】
前記空気供給配管に供給される空気は、前記ボイラから排出される燃焼ガスにより前記アンモニア燃料が気化する温度以上に加熱されている請求項7に記載の配管設置方法。
【請求項9】
前記保護配管と前記アンモニア供給管との間の空間に、前記アンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器を設置する検知器設置工程を備える請求項6から請求項8のいずれか一項に記載の配管設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、配管設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、脱炭素化に有効な技術として、発電機等を駆動する蒸気を発生させるための燃料として石炭燃料に替えてアンモニア燃料を用いる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されるボイラは、アンモニア燃料と石炭燃料の双方をボイラの火炉内で混焼させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-112280号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アンモニアは毒物及び劇物取締法(毒劇法)では劇物に、悪臭防止法では特定悪臭物質に指定されている。燃料として用いられるアンモニアに関する法規は今後制定される見込みであり、その際に安全対策として、アンモニア供給配管の外周を保護管で囲んだ二重管構造とするよう求められる可能性がある。また、法規上、二重管構造を求められない場合でも、アンモニアは毒性ガスであるため、漏洩した際の対人暴露を防止するために、可能な限りアンモニアを供給する配管は二重管構造とするか、もしくはそれに準じた仕様とすることが望ましい。
【0005】
また、既設のボイラを、石炭やバイオマスなどの微粉燃料とアンモニア燃料との混焼、あるいはアンモニア燃料のみを用いる専焼に改良する場合、安全性を考慮してボイラ建屋外部に設けられるアンモニアタンクからボイラのバーナ部までアンモニア供給配管を布設する必要があるが、他の配管やダクト等とアンモニア供給管が干渉し、布設が難しい場合がある。またアンモニア供給管として二重管構造が求められる場合は保護管により配管径が増大するため、より干渉が発生しやすくなり更に布設が難しくなる可能性がある。
【0006】
本開示は、このような事情に鑑みてなされたものであって、既設の微粉燃料焚きのボイラシステムを改良してアンモニア燃料をボイラへ供給するためのアンモニア供給管を設置する際に、アンモニア供給管が他の配管等と干渉することを適切に防止することが可能な配管設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示は以下の手段を採用する。
本開示に係る配管設置方法は、ボイラへ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管を備えるボイラシステムに対して前記ボイラへアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管を設置する配管設置方法であって、前記微粉燃料供給管の内部に前記アンモニア供給管を設置して前記アンモニア供給管と前記微粉燃料供給管とで二重管構造を形成する配管設置工程と、前記微粉燃料供給管の上流側端部を封止する封止工程と、前記アンモニア燃料の供給源に接続された接続配管と前記アンモニア供給管とを接続する接続工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、既設の微粉燃料焚きのボイラシステムを改良してアンモニア燃料をボイラへ供給するためのアンモニア供給管を設置する際に、アンモニア供給管が他の配管等と干渉することを適切に防止することが可能な配管設置方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態に係るボイラシステムの概略構成図であり、アンモニア供給管を設置する前の状態を示す。
図2】本開示の第1実施形態に係るボイラシステムの概略構成図であり、アンモニア供給管を設置した後の状態を示す。
図3】本開示の第1実施形態に係る配管設置方法を示すフローチャートである。
図4図2のA1部分の部分拡大図である。
図5図2のA2部分の部分拡大図である。
図6】本開示の第2実施形態に係るボイラシステムの概略構成図であり、アンモニア供給管を設置した後の状態を示す。
図7】本開示の第3実施形態に係るボイラシステムの概略構成図であり、アンモニア供給管を設置した後の状態を示す。
図8】本開示の第3実施形態に係る配管設置方法を示すフローチャートである。
図9】本開示の第4実施形態に係るボイラシステムの概略構成図であり、アンモニア供給管を設置した後の状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下、本開示の第1実施形態に係るボイラシステム100について、図面を参照して説明する。図1および図2は、本開示の第1実施形態に係るボイラシステムの概略構成図である。図1は、既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100にアンモニア供給管91を設置する前の状態を示す。図2は、既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100にアンモニア供給管91を設置した後の状態を示す。
【0011】
図1に示すように、本実施形態のボイラシステム100は、ボイラ10と、ミル20と、微粉燃料供給管21と、脱硝装置30と、空気予熱器40と、集じん装置50と、脱硫装置60と、煙突70と、を備える。図1に示す既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100は、ミル20からボイラ10へ微粉燃料を供給し、ボイラ10の燃焼装置11で微粉燃料を燃焼させて蒸気を生成する。
【0012】
ボイラ10は、ミル20から微粉燃料供給管21を介して供給される微粉燃料を燃焼装置11により燃焼させ、燃焼により発生した熱を給水や蒸気と熱交換して過熱蒸気を生成する装置である。微粉燃料は、例えば石炭をミル20で粉砕した微粉炭燃料である。
【0013】
燃焼装置11は、微粉燃料供給管21から供給される微粉燃料と燃焼用空気ダクト41aから供給される空気とを混合して燃焼させる装置である。ボイラ10は、複数の燃焼装置11を有する。
【0014】
ミル20は、例えば、内部に粉砕テーブル(図示略)が回転可能に支持されており、粉砕テーブルの上方に複数の粉砕ローラ(図示略)が粉砕テーブルの回転に連動可能に支持されている竪型ローラミルである。粉砕ローラと粉砕テーブルが協働して粉砕された石炭等の固体燃料は、一次空気ダクト43aからミル20に供給される一次空気により、ミル20が備える分級機(図示略)に搬送される。
【0015】
分級機では、燃焼装置11での燃焼に適した粒径以下の微粉燃料と、微粉燃料より粒径が大きい粗粉燃料とに分級される。微粉燃料は、分級機を通過して、一次空気と共に微粉燃料供給管21を介して燃焼装置11に供給される。分級機を通過しなかった粗粉燃料は、ミル20の内部で、自重により粉砕テーブル上に落下し、再粉砕される。
【0016】
微粉燃料供給管21は、ミル20からボイラ10の燃焼装置11へ微粉燃料を供給する配管である。微粉燃料供給管21は、ミル20の分級機を通過した微粉燃料を一次空気により搬送し、ボイラ10の燃焼装置11へ供給する。
【0017】
脱硝装置30は、アンモニア、尿素水等の窒素酸化物を還元する作用を有する還元剤を、ボイラ10から排出される燃焼ガスに供給する。脱硝装置30は、還元剤が供給された燃焼ガス中の窒素酸化物(NOx)と還元剤との反応を、脱硝装置30内に設置された脱硝触媒の触媒作用により促進させることで、燃焼ガス中の窒素酸化物を除去、低減する。
【0018】
空気予熱器40は、脱硝装置30を通過した燃焼ガスと押込通風機41および一次空気通風機43からの空気との熱交換を行う装置である。空気予熱器40を通過した燃焼ガスは、集じん装置50へ導かれる。
【0019】
押込通風機41は、外気を取り込んで送風し、燃焼用空気ダクト41aを介して燃焼用空気を燃焼装置11へ供給する装置である。燃焼用空気ダクト41aを流通する燃焼用空気は、空気予熱器40を通過する際に脱硝装置30を通過した燃焼ガスとの熱交換により加熱される。
【0020】
一次空気通風機43は、外気を取り込んで送風し、一次空気ダクト43aを介して一次空気をミル20へ供給する装置である。一次空気ダクト43aを流通する一次空気は、空気予熱器40を通過する際に脱硝装置30を通過した燃焼ガスとの熱交換により加熱される。
【0021】
一次空気ダクト43aの空気予熱器40の下流側には、熱空気ダンパ43cが配置されている。一次空気ダクト43aの熱空気ダンパ43cの上流側と一次空気ダクト43aの空気予熱器40の下流側は、冷空気ダクト43bにより接続されている。冷空気ダクト43bには、冷空気ダンパ43dが配置されている。熱空気ダンパ43cと冷空気ダンパ43dの開度を調整することにより、ミル20へ供給される一次空気の温度を調整することができる。
【0022】
集じん装置50は、空気予熱器40を通過した燃焼ガスに含まれる灰などの煤塵を除去する装置である。集じん装置50は、例えば、電圧の作用により煤塵を除去する電気集じん機である。集じん装置50を通過した燃焼ガスは、誘引通風機51により脱硫装置60に供給される。
【0023】
脱硫装置60は、燃焼ガスに含まれる硫黄酸化物を除去する装置である。脱硫装置60で硫黄酸化物が除去された燃焼ガスは、煙突70から系外に排出される。
【0024】
図1に示すように、ボイラシステム100のうち、ボイラ10と脱硝装置30と空気予熱器40と押込通風機41と一次空気通風機43と熱空気ダンパ43cと冷空気ダンパ43dは、ボイラ10の建屋Bの内部空間に設置される。一方、ボイラシステム100のうち、ミル20と集じん装置50と誘引通風機51と脱硫装置60と煙突70は、ボイラ10の建屋Bの外部に配置される。
【0025】
次に、図2を参照して、既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100にアンモニア供給管91を設置した後の状態について説明する。図2に示すように、ボイラシステム100は、アンモニアタンク80と、アンモニア供給管81と、供給ポンプ85と、気化器90と、アンモニア供給管91,92,93と、保護配管94と、アンモニア検知器95と、を備える。
【0026】
図2に示すように、アンモニアタンク80と、アンモニア供給管81と、供給ポンプ85と、気化器90と、アンモニア供給管91は、ボイラ10の建屋Bの外部に設置されている。一方、アンモニア供給管92,93と、保護配管94と、アンモニア検知器95は、ボイラ10の建屋Bの内部に設置されている。
【0027】
アンモニアタンク80は、液体のアンモニア燃料を貯蔵するタンクである。アンモニアタンク80に貯蔵された液体のアンモニア燃料は、アンモニア供給管81に設置された供給ポンプ85により、気化器90へ供給される。
【0028】
気化器90は、アンモニアタンク80から供給される液体のアンモニア燃料を気化させる装置である。気化器90で気化したアンモニア燃料は、アンモニア供給管91,92,93を介してボイラ10の燃焼装置11Aへ供給される。
【0029】
保護配管94は、ボイラ10の建屋Bの内部において、アンモニア供給管92の外部を覆うように設置される管体である。保護配管94は、アンモニア供給管92からアンモニア燃料が漏出したとしてもアンモニア燃料が建屋Bの内部空間に漏出しないように保護するための部材である。
【0030】
アンモニア供給管91は、気化器90からボイラ10の建屋Bに至るまでの建屋Bの外部に配置されるため、保護配管94により覆われていない。これは、ボイラ10の建屋Bの外部であれば、アンモニア供給管91から微量のアンモニア燃料が漏出したとしても、建屋Bの内部で作業する作業者等への影響がないからである。なお、漏出時の臭気対策として、気化器90からボイラ10の建屋Bに至るまでの建屋Bの外部においても、アンモニア供給管91を保護配管94で覆うようにしてもよい。
【0031】
アンモニア検知器95は、微粉燃料供給管21とアンモニア供給管93との間の空間、および保護配管94とアンモニア供給管92との間の空間に、アンモニア燃料が存在するか否かを検知する装置である。アンモニア検知器95は、これらの空間にアンモニア燃料が存在すると検知した場合、警報を発するかボイラシステム100の制御部(図示略)にアンモニア燃料が存在する旨を報知する。
【0032】
ボイラ10の燃焼装置11Aは、例えば、図1の微粉燃料用の燃焼装置11とは異なるアンモニア燃料用の燃焼装置である。燃焼装置11Aは、例えば、アンモニア供給管93から供給される気体のアンモニア燃料(アンモニアガス)を噴射するアンモニアガス噴射方式の燃焼装置である。
【0033】
次に、本実施形態に係る配管設置方法について図面を参照して説明する。図3は、本開示の第1実施形態に係る配管設置方法を示すフローチャートである。本実施形態の配管設置方法は、微粉燃料供給管21を備えるボイラシステム100にボイラ10へアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管91,92,93を設置する方法である。
【0034】
ステップS101で、作業者は、ボイラ10の建屋Bの内部空間Sにおいて、図1に示すボイラシステム100の位置P1から位置P2に至る経路にアンモニア供給管92および保護配管94を設置して図2に示す状態とする。位置P1は、アンモニア供給管91がボイラ10の建屋Bに接続される接続位置である。位置P2は、微粉燃料供給管21の外周面においてアンモニア供給管92が貫通する位置である。アンモニア供給管92および保護配管94を位置P1から位置P2に至る経路に設置することにより、保護配管94の内部にボイラ10の建屋Bの内部空間Sから隔離された閉空間が形成される。
【0035】
ステップS102で、作業者は、微粉燃料供給管21とミル20の切り離しを行う。作業者は、例えば、微粉燃料供給管21を位置P2の近傍で切断することで、微粉燃料供給管21とミル20の切り離しを行う。また、微粉燃料供給管21が複数の配管を連結して形成される場合には、一部の配管の連結を解除することで微粉燃料供給管21とミル20の切り離しを行ってもよい。
【0036】
図2では、ボイラ10に接続される微粉燃料供給管21を実線で示し、実線の微粉燃料供給管21から切り離されたミル20および微粉燃料供給管21の一部を一点鎖線で示している。なお、図2に点線で示すミル20および微粉燃料供給管21の一部は、ボイラシステム100から除去しても良いし、ボイラシステム100に放置してもよい。
【0037】
ステップS103(配管設置工程)で、作業者は、微粉燃料供給管21の内部にアンモニア供給管93を設置してアンモニア供給管93と微粉燃料供給管21とで二重管構造を形成する。
【0038】
ステップS104(封止工程)で、作業者は、ステップS103で微粉燃料供給管21の内部にアンモニア供給管93を設置した後、ステップS102で切断した微粉燃料供給管21の上流側端部を封止する。微粉燃料供給管21の上流側端部を封止することにより、微粉燃料供給管21が建屋Bの内部空間Sと連通しない状態となる。アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したとしても、アンモニア供給管93と微粉燃料供給管21との間に封止されるため、アンモニア燃料の建屋Bへの漏出を防止することができる。
【0039】
ステップS105(接続工程)で、作業者は、保護配管94の内部に設置されたアンモニア供給管(接続配管)92と微粉燃料供給管21の内部に設置されたアンモニア供給管93とを接続する。アンモニア供給管92は、アンモニア供給管91およびアンモニア供給管81を介してアンモニア燃料の供給源であるアンモニアタンク80と接続されている。そのため、アンモニア供給管92とアンモニア供給管93とを接続することにより、アンモニア供給管93にアンモニア燃料が供給可能な状態となる。
【0040】
ステップS106で、作業者は、微粉燃料供給管21と保護配管94とを位置P2で接続し、微粉燃料供給管21の内部空間と保護配管94の内部空間とが連通した状態とする。微粉燃料供給管21の内部空間と保護配管94の内部空間とは、それぞれ建屋Bの内部空かSから隔離された空間となる。
【0041】
ステップS107(連結工程)で、作業者は、空気供給配管43eと保護配管94とを連結し、空気供給配管43eから保護配管94および微粉燃料供給管21の内部空間に空気が供給される状態とする。空気供給配管43eは、一次空気ダクト43aに位置P3で接続される配管である。一次空気ダクト43aは、位置P3において、ミル20に空気を供給することのないようにミル20へ向けた部分(図2で一点鎖線で示す部分)を閉塞するのが好ましい。
【0042】
空気供給配管43eは、位置P1の近傍で保護配管94に接続される。なお、ステップS107で、空気供給配管43eと保護配管94とを連結することにより、微粉燃料供給管21とアンモニア供給管93との間に空気を供給するように空気供給配管43eと微粉燃料供給管21とが連結される。
【0043】
空気供給配管43eに供給される空気は、ボイラ10から排出される燃焼ガスにより気体のアンモニア燃料が凝縮しない温度となるように加熱されている。空気供給配管43eに供給される空気は、例えば、160℃かつ200℃以下の範囲となるように加熱される。保護配管94および微粉燃料供給管21の内部を適切に加熱し、アンモニア供給管92,93の内部で気体のアンモニア燃料が凝縮することを防止することができる。
【0044】
空気供給配管43eから保護配管94および微粉燃料供給管21の内部空間に供給された空気は、燃焼装置11Aに供給されるものとする。アンモニア供給管93から保護配管94の内部にアンモニア燃料が漏洩したとしても、アンモニア燃料を空気供給配管43eから保護配管94に供給される空気により燃焼装置11Aに供給し、燃焼装置11Aで燃焼させることができる。アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したとしても、保護配管94の内部に滞留しないため、建屋Bの安全性を高めることができる。
【0045】
ステップS108(検知器設置工程)で、作業者は、微粉燃料供給管21とアンモニア供給管93との間の空間にアンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器95を設置する。
【0046】
ここで、図4を参照して、本実施形態の配管設置方法によりアンモニア供給管91,92,93が設置された後のボイラシステム100の位置P1におけるアンモニア供給管91とアンモニア供給管92との連結部分について説明する。図4は、図2のA1部分の部分拡大図である。
【0047】
図4に示すように、アンモニア供給管91とアンモニア供給管92は、位置P1で連結されている。図4に示すアンモニア供給管92および保護配管94は、図3のステップS101で設置されたものである。保護配管94の端部は、封止部材94aを保護配管94に溶接することで封止されている。アンモニア供給管91とアンモニア供給管92と保護配管94は、それぞれ軸線X1に沿って同軸に配置されている。
【0048】
位置P1の近傍において、空気供給配管43eの端部が保護配管94の外周面に連結されている。空気供給配管43eは、ステップS107で、保護配管94に連結されたものである。空気供給配管43eから、保護配管94の内部空間に空気予熱器40により加熱された空気Ahが導入される。加熱された空気Ahは、保護配管94の内部空間に導入された後、軸線X1に沿ってアンモニア燃料Faと同方向に導かれる。アンモニア燃料Faは、アンモニア供給管91からアンモニア供給管92に導かれ、軸線X1に沿って位置P2に向けて流通する。
【0049】
ここで、図5を参照して、本実施形態の配管設置方法によりアンモニア供給管91,92,93が設置された後のボイラシステム100の位置P2におけるアンモニア供給管92とアンモニア供給管93との連結部分について説明する。図5は、図2のA2部分の部分拡大図である。
【0050】
図5に示すように、アンモニア供給管92とアンモニア供給管93は、位置P2で連結されている。図5に示すアンモニア供給管92および保護配管94は、図3のステップS101で設置されたものである。図5に示すアンモニア供給管93は、図3のステップS103で設置されたものである。微粉燃料供給管21の上流側端部21aは、図3のステップS102で切断されたものである。微粉燃料供給管21の上流側端部21aは、図3のステップS104(封止工程)で封止部材21bにより封止されている。アンモニア供給管93と微粉燃料供給管21は、それぞれ軸線X2に沿って同軸に配置されている。
【0051】
位置P2において、保護配管94の端部が微粉燃料供給管21の外周面に連結されている。微粉燃料供給管21と保護配管94は、ステップS106で接続されたものである。保護配管94から、微粉燃料供給管21の内部空間に空気予熱器40により加熱された空気Ahが導入される。加熱された空気Ahは、微粉燃料供給管21の内部空間に導入された後、軸線X2に沿ってアンモニア燃料Faと同方向に導かれる。アンモニア燃料Faは、アンモニア供給管92からアンモニア供給管93に導かれ、軸線X2に沿ってボイラ10の燃焼装置11Aに向けて流通する。
【0052】
以上説明した本実施形態の配管設置方法が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の配管設置方法によれば、配管設置工程(S103)で、ボイラ10へ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管21の内部にアンモニア供給管93を設置することで、アンモニア供給管93と微粉燃料供給管21とで二重管構造が形成される。既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100に設置された微粉燃料供給管21の上流側端部は、封止工程(S104)で、建屋Bの内部空間Sと連通しないように封止される。アンモニア供給管93は、接続工程(S105)で、アンモニアタンク80に接続されたアンモニア供給管92に接続される。
【0053】
既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100に設置された微粉燃料供給管21の内部にアンモニア供給管93を設置するため、既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100を改良してアンモニア燃料をボイラ10へ供給するためのアンモニア供給管93を設置する際に、アンモニア供給管93が他の配管等と干渉することを適切に防止することができる。また、アンモニア供給管93と微粉燃料供給管21とで二重管構造が形成されるため、アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したとしても、アンモニア供給管93と微粉燃料供給管21との間に封止されるため、アンモニア燃料の外部への漏出を防止することができる。
【0054】
また、本実施形態の配管設置方法によれば、連結工程(S107)により微粉燃料供給管21と保護配管94を介して連結された空気供給配管43eから、微粉燃料供給管21とアンモニア供給管93との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したとしても、微粉燃料供給管21とアンモニア供給管93との間にアンモニア燃料が滞留することを防止することができる。また、微粉燃料供給管21とアンモニア供給管93との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管93の温度を一定に保ち、アンモニア供給管93を流通するアンモニア燃料の温度変化を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態の配管設置方法によれば、ボイラ10から排出される燃焼ガスにより空気供給配管43eに供給される空気が、空気予熱器40によりアンモニア燃料が気化状態を維持する温度以上に加熱されている。そのため、アンモニア供給管92,93を流通する気体のアンモニア燃料がアンモニア供給管92,93の内部で凝縮することを防止することができる。
【0056】
また、本実施形態の配管設置方法によれば、設置工程(S108)において、微粉燃料供給管21とアンモニア供給管93との間の空間にアンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器95が設置されるため、アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したことを適切に検知して警告を発することができる。
【0057】
〔第2実施形態〕
次の本開示の第2実施形態に係る配管設置方法について図面を参照して説明する。第1実施形態の配管設置方法は、気化器90により気化した気体のアンモニア燃料をボイラ10へ供給するアンモニア供給管91,92,93を既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100に設置するものであった。それに対して、本実施形態の配管設置方法は、アンモニアタンク80から供給される液体のアンモニア燃料をボイラ10へ供給するアンモニア供給管81,92A,93Aを既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100Aに設置するものである。
【0058】
図6は、本開示の第2実施形態に係るボイラシステム100Aの概略構成図であり、アンモニア供給管81,92A,93Aを設置した後の状態を示す。図6に示すように、ボイラシステム100Aは、アンモニアタンク80と、アンモニア供給管81と、供給ポンプ85と、アンモニア供給管92A,93Aと、保護配管94と、アンモニア検知器95と、を備える。
【0059】
アンモニアタンク80と、アンモニア供給管81と、供給ポンプ85は、第1実施形態と同様であるので以下での説明を省略する。アンモニア供給管92A,93Aは、位置P1で導入されるアンモニア燃料が液体である点を除き、第1実施形態と同様であるため以下での説明を省略する。
【0060】
第1実施形態のボイラシステム100は、位置P1の近傍の保護配管94の内部空間に空気予熱器40により加熱された空気を導く空気供給配管43eを備えるものであった。それに対して、第1実施形態のボイラシステム100は、位置P1の近傍の保護配管94の内部空間に空気予熱器40により加熱されていない大気温度の空気を導く空気供給配管43fを備える。
【0061】
図6に示すように、空気供給配管43fは、一次空気ダクト43aに位置P4で接続される配管である。位置P4は、空気予熱器40の上流側かつ熱空気ダンパ43cの下流側である。位置P4で一次空気ダクト43aから空気供給配管43fに導かれる空気は外部から取り込んだ外気と同じ温度である。
【0062】
空気供給配管43fが保護配管94の内部空間に導く空気の温度を大気温度としているのは、アンモニア供給管81から位置P1でアンモニア供給管92Aに供給される液体のアンモニア燃料が気化することを防止するためである。保護配管94の内部空間は、大気温度と同程度の温度に維持される。保護配管94の内部を流通する液体のアンモニア燃料は、液体のまま燃焼装置11Aに導かれる。
【0063】
〔第3実施形態〕
次の本開示の第3実施形態に係る配管設置方法について図面を参照して説明する。第1実施形態の配管設置方法は、既設のボイラシステム100が備える微粉燃料供給管21の内部にアンモニア供給管93を設置するものであった。それに対して、本実施形態の配管設置方法は、微粉燃料供給管21を配置領域Cから撤去し、配置領域Cにアンモニア供給管93を配置するものである。
【0064】
図7は、本開示の第3実施形態に係るボイラシステム100Bの概略構成図であり、アンモニア供給管91,92,93を設置した後の状態を示す。図7に示すように、ボイラシステム100Bは、アンモニアタンク80と、アンモニア供給管81と、供給ポンプ85と、気化器90と、アンモニア供給管91,92,93と、アンモニア検知器95と、第1保護配管96と、第2保護配管97と、を備える。第1保護配管96と、第2保護配管97を除く他の構成については、第1実施形態と同様であるため、以下での説明を省略する。
【0065】
第1保護配管96は、ボイラ10の建屋Bの内部において、アンモニア供給管92の外部に設置される管体である。第1保護配管96は、アンモニア供給管92からアンモニア燃料が漏出したとしてもアンモニア燃料が建屋Bの内部空間Sに侵入しないように保護するための部材である。第2保護配管97は、ボイラ10の建屋Bの内部において、アンモニア供給管93の外部に設置される管体である。第2保護配管97は、アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏出したとしてもアンモニア燃料が建屋Bの内部空間Sに侵入しないように保護するための部材である。
【0066】
次に、本実施形態に係る配管設置方法について図面を参照して説明する。図8は、本開示の第3実施形態に係る配管設置方法を示すフローチャートである。本実施形態の配管設置方法は、微粉燃料を供給する微粉燃料供給管21を備えるボイラシステム100にボイラ10へアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管91,92,93を設置する方法である。
【0067】
ステップS201で、作業者は、ボイラ10の建屋Bの内部空間Sにおいて、図1に示すボイラシステム100の位置P1から位置P2に至る経路にアンモニア供給管92および第1保護配管96を設置して図8に示す状態とする。位置P1は、アンモニア供給管91がボイラ10の建屋Bに接続される接続位置である。位置P2は、第2保護配管97の外周面においてアンモニア供給管92が貫通する位置である。アンモニア供給管92および第1保護配管96を位置P1から位置P2に至る経路に設置することにより、第1保護配管96の内部にボイラ10の建屋Bの内部空間Sから隔離された閉空間が形成される。
【0068】
ステップS202(撤去工程)で、作業者は、微粉燃料供給管21を微粉燃料供給管21が配置された配置領域Cから撤去する。図7に点線で示すミル20は、ボイラシステム100Bから除去しても良いし、ボイラシステム100Bに放置してもよい。
【0069】
ステップS203(配管設置工程)で、作業者は、配置領域Cにアンモニア供給管93および第2保護配管97を設置して図8に示す状態とする。作業者は、アンモニア供給管93の外部に第2保護配管97を設置してアンモニア供給管93と第2保護配管97とで二重管構造を形成する。
【0070】
ステップS204(封止工程)で、作業者は、ステップS203で第2保護配管97の内部にアンモニア供給管93を設置した後、ステップS203で設置した第2保護配管97の上流側端部を封止する。第2保護配管97の上流側端部を封止することにより、第2保護配管97の上流側端部が建屋Bの内部空間Sと連通しない状態となる。
【0071】
ステップS205(接続工程)で、作業者は、第1保護配管96の内部に設置されたアンモニア供給管(接続配管)92と第2保護配管97の内部に設置されたアンモニア供給管93とを接続する。アンモニア供給管92は、アンモニア供給管91およびアンモニア供給管81を介してアンモニア燃料の供給源であるアンモニアタンク80の接続されている。そのため、アンモニア供給管92とアンモニア供給管93とを接続することにより、アンモニア供給管93にアンモニア燃料が供給可能な状態となる。
【0072】
ステップS206で、作業者は、第1保護配管96と第2保護配管97とを位置P2で接続し、第1保護配管96の内部空間と第2保護配管97の内部空間とが連通した状態とする。第1保護配管96の内部空間と第2保護配管97の内部空間とは、それぞれ建屋Bの内部空間Sから隔離された空間となる。
【0073】
ステップS207(連結工程)で、作業者は、空気供給配管43eと第1保護配管96とを連結し、空気供給配管43eから第1保護配管96および第2保護配管97の内部空間に空気が供給される状態とする。空気供給配管43eは、一次空気ダクト43aに位置P3で接続される配管である。一次空気ダクト43aは、位置P3において、ミル20に空気を供給することのないようにミル20へ向けた部分(図7で点線で示す部分)を閉塞するのが好ましい。
【0074】
空気供給配管43eは、位置P1の近傍で第1保護配管96に接続される。なお、ステップS207で、空気供給配管43eと第1保護配管96とを連結することにより、第2保護配管97とアンモニア供給管93との間に空気を供給するように空気供給配管43eと第2保護配管97とが連結される。
【0075】
空気供給配管43eに供給される空気は、ボイラ10から排出される燃焼ガスにより気体のアンモニア燃料が凝縮しない温度となるように加熱されている。空気供給配管43eに供給される空気は、例えば、160℃かつ200℃以下の範囲となるように加熱される。第1保護配管96および第2保護配管97の内部を適切に加熱し、アンモニア供給管92,93の内部で気体のアンモニア燃料が凝縮することを防止することができる。
【0076】
空気供給配管43eから第1保護配管96および第2保護配管97の内部空間に供給された空気は、燃焼装置11Aに供給されるものとする。アンモニア供給管92,93から第1保護配管96および第2保護配管97の内部にアンモニア燃料が漏洩したとしても、アンモニア燃料を空気供給配管43eから第1保護配管96および第2保護配管97に供給される空気により燃焼装置11Aに供給し、燃焼装置11Aで燃焼させることができる。アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したとしても、保護配管94の内部に滞留しないため、建屋Bの安全性を高めることができる。
【0077】
ステップS208(検知器設置工程)で、作業者は、第2保護配管97とアンモニア供給管93との間の空間にアンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器95を設置する。
【0078】
以上説明した本実施形態の配管設置方法が奏する作用および効果について説明する。
本実施形態の配管設置方法によれば、配管設置工程(S203)で、ボイラ10へ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管21を撤去してアンモニア供給管93が設置される。アンモニア供給管93は、接続工程(S205)で、アンモニア燃料の供給源に接続されたアンモニア供給管92に接続される。
【0079】
既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100に設置された微粉燃料供給管21を撤去してアンモニア供給管93を設置するため、既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100を改良してアンモニア燃料をボイラ10へ供給するためのアンモニア供給管93を設置する際に、アンモニア供給管93が他の配管等と干渉することを適切に防止することができる。
【0080】
また、本実施形態の配管設置方法によれば、配管設置工程(S203)で、第2保護配管97の内部にアンモニア供給管93を設置することで、アンモニア供給管93と第2保護配管97とで二重管構造が形成される。第2保護配管97の端部は、封止工程(S204)で、建屋Bの内部空間Sと連通しないように封止される。アンモニア供給管93は、接続工程(S205)で、アンモニアタンク80に接続されたアンモニア供給管92に接続される。
【0081】
第2保護配管97の内部にアンモニア供給管93を設置するため、既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100を改良してアンモニア燃料をボイラ10へ供給するためのアンモニア供給管93を設置する際に、アンモニア供給管93が他の配管等と干渉することを適切に防止することができる。また、アンモニア供給管93と第2保護配管97とで二重管構造が形成されるため、アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したとしても、アンモニア供給管93と第2保護配管97との間に封止されるため、アンモニア燃料の外部への漏出を防止することができる。
【0082】
また、本実施形態の配管設置方法によれば、連結工程(S207)により第1保護配管96と第2保護配管97を介して連結された空気供給配管43eから、第2保護配管97とアンモニア供給管93との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したとしても、第2保護配管97とアンモニア供給管93との間にアンモニア燃料が滞留することを防止することができる。また、第2保護配管97とアンモニア供給管93との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管93の温度を一定に保ち、アンモニア供給管93を流通するアンモニア燃料の温度変化を抑制することができる。
【0083】
また、本実施形態の配管設置方法によれば、ボイラ10から排出される燃焼ガスにより空気供給配管43eに供給される空気が、空気予熱器40によりアンモニア燃料が気化する温度以上に加熱されている。そのため、アンモニア供給管92,93を流通する気体のアンモニア燃料がアンモニア供給管92,93の内部で凝縮することを防止することができる。
【0084】
また、本実施形態の配管設置方法によれば、設置工程(S208)において、第2保護配管97とアンモニア供給管93との間の空間にアンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器95が設置されるため、アンモニア供給管93からアンモニア燃料が漏洩したことを適切に検知して警告を発することができる。
【0085】
〔第4実施形態〕
次の本開示の第4実施形態に係る配管設置方法について図面を参照して説明する。第2実施形態の配管設置方法は、既設のボイラシステム100Aが備える微粉燃料供給管21の内部にアンモニア供給管92A,93Aを設置し、液体のアンモニア燃料をボイラ10へ供給するものであった。それに対して、本実施形態の配管設置方法は、微粉燃料供給管21を配置領域Cから撤去し、配置領域Cにアンモニア供給管92A,93Aを配置するものである。
【0086】
図9は、本開示の第4実施形態に係るボイラシステム100Cの概略構成図であり、アンモニア供給管81,92A,93Aを設置した後の状態を示す。図9に示すように、ボイラシステム100Cは、アンモニアタンク80と、アンモニア供給管81と、供給ポンプ85と、気化器90と、アンモニア供給管92A,93Aと、アンモニア検知器95と、第1保護配管98と、第2保護配管99と、を備える。アンモニア供給管92A,93Aと、第1保護配管98と、第2保護配管99を除く他の構成については、第2実施形態と同様であるため、以下での説明を省略する。
【0087】
第1保護配管98は、ボイラ10の建屋Bの内部において、アンモニア供給管92Aの外部に設置される管体である。第1保護配管98は、アンモニア供給管92Aからアンモニア燃料が漏出したとしてもアンモニア燃料が建屋Bの内部空間Sに侵入しないように保護するための部材である。第2保護配管99は、ボイラ10の建屋Bの内部において、アンモニア供給管93Aの外部に設置される管体である。第2保護配管99は、アンモニア供給管93Aからアンモニア燃料が漏出したとしてもアンモニア燃料が建屋Bの内部空間に侵入しないように保護するための部材である。
【0088】
本実施形態の配管設置方法は、微粉燃料を供給する微粉燃料供給管21を備えるボイラシステム100Cにボイラ10へアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管92A,93Aを設置する方法である。本実施形態の配管設置方法は、以下の点を除き、第3実施形態のステップS201からステップS208の各処理と同様の工程を実行するものである。第3実施形態との相違点は、第3実施形態のアンモニア供給管92が本実施形態ではアンモニア供給管92Aである点、第3実施形態のアンモニア供給管93が本実施形態ではアンモニア供給管93Aである点、第3実施形態の第1保護配管96が本実施形態では第1保護配管98である点、第3実施形態の第2保護配管97が本実施形態では第2保護配管99である点である。
【0089】
本実施形態の配管設置方法によれば、配管設置工程(S203)で、ボイラ10へ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管21を撤去してアンモニア供給管93Aが設置される。アンモニア供給管93Aは、接続工程(S205)で、アンモニア燃料の供給源に接続されたアンモニア供給管92Aに接続される。
【0090】
既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100に設置された微粉燃料供給管21を撤去してアンモニア供給管93Aを設置するため、既設の微粉燃料焚きのボイラシステム100を改良してアンモニア燃料をボイラ10へ供給するためのアンモニア供給管93Aを設置する際に、アンモニア供給管93Aが他の配管等と干渉することを適切に防止することができる。
【0091】
〔他の実施形態〕
以上の説明において、ボイラ10の建屋Bの内部空間Sに配置されるアンモニア供給管92,92A,93,93Aの外部の全ての領域には、内部空間Sへのアンモニア燃料の漏出を防止するために保護配管94,第1保護配管96,98,第2保護配管97,99を設置するものとしたが、他の態様であってもよい。例えば、アンモニア燃料の漏出によるリスクが極めて少ない場合には、アンモニア供給管92,92A,93,93Aの外部の一部の領域には保護配管94,第1保護配管96,第2保護配管97を設置しないものとしてもよい。この場合、アンモニア供給管92,92A,93,93Aの保護配管94,第1保護配管96,第2保護配管97が設置されない領域には、アンモニア燃料の気化および凝縮を防止するために断熱材を配置する。
【0092】
以上説明した各実施形態に記載の配管設置方法は例えば以下のように把握される。
本開示の第1態様に係る配管設置方法は、ボイラ(10)へ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管(21)を備えるボイラシステム(100)に対して前記ボイラへアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管(93)を設置する配管設置方法であって、前記微粉燃料供給管の内部に前記アンモニア供給管を設置して前記アンモニア供給管と前記微粉燃料供給管とで二重管構造を形成する配管設置工程(S103)と、前記微粉燃料供給管の上流側端部を封止する封止工程(S104)と、前記アンモニア燃料の供給源(80)に接続された接続配管(92)と前記アンモニア供給管とを接続する接続工程(S105)と、を備える。
【0093】
本開示の第1態様に係る配管設置方法によれば、配管設置工程で、ボイラへ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管の内部にアンモニア供給管を設置することで、アンモニア供給管と微粉燃料供給管とで二重管構造が形成される。既設の石炭焚き微粉燃料焚きボイラシステムに設置された微粉燃料供給管の上流側端部は、封止工程で、微粉燃料供給管の内部と外部空間とが連通しないように封止される。アンモニア供給管は、接続工程で、アンモニア燃料の供給源に接続された接続配管に接続される。
【0094】
既設の微粉燃料焚きボイラシステムに設置された微粉燃料供給管の内部にアンモニア供給管を設置するため、既設の微粉燃料焚きのボイラシステムを改良してアンモニア燃料をボイラへ供給するためのアンモニア供給管を設置する際に、アンモニア供給管が他の配管等と干渉することを適切に防止することができる。また、アンモニア供給管と微粉燃料供給管とで二重管構造が形成されるため、アンモニア供給管からアンモニア燃料が漏洩したとしても、アンモニア供給管と微粉燃料供給管との間に封止されるため、アンモニア燃料の外部への漏出を防止することができる。
【0095】
本開示の第2態様に係る配管設置方法は、第1態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記微粉燃料供給管と前記アンモニア供給管との間に空気を供給するように前記空気を流通させる空気供給配管と前記微粉燃料供給管とを連結する連結工程(S107)を備える。
【0096】
本開示の第2態様に係る配管設置方法によれば、連結工程により微粉燃料供給管と連結された空気供給配管から、微粉燃料供給管とアンモニア供給管との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管からアンモニア燃料が漏洩したとしても、微粉燃料供給管とアンモニア供給管との間にアンモニア燃料が滞留することを防止することができる。また、微粉燃料供給管とアンモニア供給管との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管の温度を一定に保ち、アンモニア供給管を流通するアンモニア燃料の温度変化を抑制することができる。
【0097】
本開示の第3態様に係る配管設置方法は、第2態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記空気供給配管に供給される空気は、前記ボイラから排出される燃焼ガスにより前記アンモニア燃料が気化する温度以上に加熱されている。
【0098】
本開示の第3態様に係る配管設置方法によれば、ボイラから排出される燃焼ガスにより空気供給配管に供給される空気が、アンモニア燃料が気化する温度以上に加熱されている。そのため、アンモニア供給管を流通する気体のアンモニア燃料がアンモニア供給管の内部で凝縮することを防止することができる。
【0099】
本開示の第4態様に係る配管設置方法は、第1態様から第3態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記微粉燃料供給管と前記アンモニア供給管との間の空間に、前記アンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器(95)を設置する検知器設置工程(S108)を備える。
【0100】
本開示の第4態様に係る配管設置方法によれば、設置工程において、微粉燃料供給管とアンモニア供給管との間の空間にアンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器が設置されるため、アンモニア供給管からアンモニア燃料が漏洩したことを適切に検知して警告を発することができる。
【0101】
本開示の第5態様に係る配管設置方法は、ボイラへ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管を備えるボイラシステムに対して前記ボイラへアンモニア燃料を供給するアンモニア供給管を設置する配管設置方法であって、前記微粉燃料供給管を前記微粉燃料供給管が配置された配置領域(C)から撤去する撤去工程(S202)と、前記配置領域に前記アンモニア供給管を設置する配管設置工程(S203)と、前記アンモニア燃料の供給源に接続された接続配管と前記アンモニア供給管とを接続する接続工程(S205)と、を備える。
【0102】
本開示の第5態様に係る配管設置方法によれば、配管設置工程で、ボイラへ微粉燃料を供給する微粉燃料供給管を撤去してアンモニア供給管が設置される。アンモニア供給管は、接続工程で、アンモニア燃料の供給源に接続された接続配管に接続される。
【0103】
既設の微粉燃料焚きボイラシステムに設置された微粉燃料供給管を撤去してアンモニア供給管を設置するため、既設の微粉燃料焚きのボイラシステムを改良してアンモニア燃料をボイラへ供給するためのアンモニア供給管を設置する際に、アンモニア供給管が他の配管等と干渉することを適切に防止することができる。
【0104】
本開示の第6態様に係る配管設置方法は、第5態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記配管設置工程は、前記アンモニア供給管の外部に保護配管(97)を設置して前記アンモニア供給管と前記保護配管とで二重管構造を形成する。
本開示の第6態様に係る配管設置方法によれば、アンモニア供給管と保護配管とで二重管構造が形成されるため、アンモニア供給管からアンモニア燃料が漏洩したとしても、アンモニア供給管と保護配管との間に封止されるため、アンモニア燃料の外部への漏出を防止することができる。
【0105】
本開示の第7態様に係る配管設置方法は、第6態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記保護配管と前記アンモニア供給管との間に空気を供給するように前記空気を流通させる空気供給配管と前記保護配管とを連結する連結工程(S207)を備える。
【0106】
本開示の第7態様に係る配管設置方法によれば、連結工程により保護配管と連結された空気供給配管から、保護配管とアンモニア供給管との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管からアンモニア燃料が漏洩したとしても、保護配管とアンモニア供給管との間にアンモニア燃料が滞留することを防止することができる。また、保護配管とアンモニア供給管との間に空気が供給されるため、アンモニア供給管の温度を一定に保ち、アンモニア供給管を流通するアンモニア燃料の温度変化を抑制することができる。
【0107】
本開示の第8態様に係る配管設置方法は、第7態様において、更に以下の構成を備える。すなわち、前記空気供給配管に供給される空気は、前記ボイラから排出される燃焼ガスにより前記アンモニア燃料が気化する温度以上に加熱されている。
本開示の第8態様に係る配管設置方法によれば、ボイラから排出される燃焼ガスにより空気供給配管に供給される空気が、アンモニア燃料が気化する温度以上に加熱されている。そのため、アンモニア供給管を流通する気体のアンモニア燃料がアンモニア供給管の内部で凝縮することを防止することができる。
【0108】
本開示の第9態様に係る配管設置方法は、第6態様から第8態様のいずれかにおいて、更に以下の構成を備える。すなわち、前記保護配管と前記アンモニア供給管との間の空間に、前記アンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器を設置する検知器設置工程(S208)を備える。
【0109】
本開示の第9態様に係る配管設置方法によれば、設置工程において、保護配管とアンモニア供給管との間の空間にアンモニア燃料が存在するか否かを検知するアンモニア検知器が設置されるため、アンモニア供給管からアンモニア燃料が漏洩したことを適切に検知して警告を発することができる。
【符号の説明】
【0110】
10 ボイラ
11,11A 燃焼装置
20 ミル
21 微粉燃料供給管
21a 上流側端部
21b 封止部材
30 脱硝装置
40 空気予熱器
41 押込通風機
41a 燃焼用空気ダクト
43 一次空気通風機
43a 一次空気ダクト
43b 冷空気ダクト
43c 熱空気ダンパ
43d 冷空気ダンパ
43e 空気供給配管
43f 空気供給配管
50 集じん装置
51 誘引通風機
60 脱硫装置
70 煙突
80 アンモニアタンク(供給源)
81 アンモニア供給管
85 供給ポンプ
90 気化器
91,92,92A,93,93A アンモニア供給管
94 保護配管
94a 封止部材
95 アンモニア検知器
96 第1保護配管
97 第2保護配管
100,100A,100B,100C ボイラシステム
Ah 空気
B 建屋
C 配置領域
Fa アンモニア燃料
S 内部空間
X1,X2 軸線
図1
図2
図3
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図9