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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074694
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】建築物の施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/348 20060101AFI20240524BHJP
   E04B 1/00 20060101ALI20240524BHJP
   E04G 21/14 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
E04B1/348 B
E04B1/00 501C
E04G21/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186022
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】516152952
【氏名又は名称】構法開発株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507011611
【氏名又は名称】株式会社進富
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 克則
(72)【発明者】
【氏名】依田 佳幸
【テーマコード(参考)】
2E174
【Fターム(参考)】
2E174BA02
2E174CA03
2E174CA07
2E174CA12
2E174CA16
2E174DA07
2E174DA21
(57)【要約】
【課題】施工上の自由度も高く、ユニットを簡便な方法で躯体内に搬入できる。
【解決手段】多層階で構成され、各階において複数のユニットを設置することで構築される建築物の施工方法であって、建築物の躯体を構築する躯体構築工程と、各階について、バルコニー部分の載置部を片持ち構造で前記躯体に接合する接合工程と、前記載置部の上方からクレーンによりユニットを当該載置部に載置する載置工程と、前記載置部に載置した前記ユニット牽引することで、前記躯体内に当該ユニットを搬入する搬入工程とを含む。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層階で構成され、各階において複数のユニットを設置することで構築される建築物の施工方法であって、
建築物の躯体を構築する躯体構築工程と、
各階について、
前記ユニットを載置するための載置部を片持ち構造で前記躯体に接合する接合工程と、
前記載置部の上方からクレーンによりユニットを当該載置部に載置する載置工程と、
前記載置部に載置した前記ユニットを牽引することで、前記躯体内に当該ユニットを搬入する搬入工程とを含む
施工方法。
【請求項2】
前記複数のユニットの全てを前記躯体内に搬入した後に、前記載置部は、バルコニー部分の躯体として用いられる
請求項1の施工方法。
【請求項3】
前記載置部にユニットを設置することで、前記バルコニー部分を構築するバルコニー構築工程を含む
請求項2の施工方法。
【請求項4】
前記接合工程において、前記載置部は、前記躯体と面一になるように接合する
請求項1の施工方法。
【請求項5】
前記接合工程において、前記躯体における前記載置部との接合部分に埋め込んだブラケットプレートを介して、当該載置部を当該躯体に接合する
請求項1の施工方法。
【請求項6】
前記複数のユニットの全てを前記躯体内に搬入した後に、当該躯体のうち当該ユニットを搬入した開口部を塞ぐためのパネルを設置するパネル設置工程を含む
請求項1の施工方法。
【請求項7】
前記載置工程において、前記載置部に設けられたガイドレールの間に当該ユニットを載置する
請求項1の施工方法。
【請求項8】
前記接合工程と前記載置工程と前記搬入工程と前記バルコニー構築工程とは、最下階から最上階にむかって順次に行われる
請求項3の施工方法。
【請求項9】
前記接合工程は、施工対象となる階の下階について構築された前記バルコニー部分から行われる
請求項3の施工方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の施工構法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物を施工する方法として、スケルトン(建物を支える躯体)とインフィル(間仕切り、内装および設備)とを分離して施工するスケルトン・インフィル構法(SI工法)が従来から提案されている(例えば特許文献1)。躯体を構築した後に、当該躯体にインフィル部分を組み合わせることで、建築物が完成される。スケルトン・インフィル工法によれば、躯体を維持しつつ、間取りや内装を変更できるため、リフォームが容易であるという利点がある。
【0003】
また、建築物を複数に区分したユニットを事前に工場で製造した後に、建築現場へ搬送して、各ユニットを建築現場で組み立てることによって建築物を施工するユニット工法がある(特許文献2)。
【0004】
スケルトン・インフィル工法とユニット工法とを組み合わせた技術(方法Aおよび方法B)がある。方法Aは、まず、躯体全体を構築した後に各ユニットを設置することで建築物を施工する方法である。
【0005】
図1に示す通り、方法Aでは、まず、バルコニー部分を含む躯体全体を構築する。そして、施工対象となる階(以下「対象階」という)の躯体におけるバルコニー部分の開口(以下「搬入口」という)からユニットを搬入して、所望の位置まで牽引装置(ウインチ)で牽引することで当該ユニットを躯体内に設置する。具体的には、ユニットが載置されたコンテナを、クレーンで吊り上げることで、搬入口に接近させる。搬入口に接近させた後は、躯体とコンテナとをボルトで接合する。そして、コンテナからユニットを牽引して躯体内に移動させる。コンテナからユニットを躯体内に移動させた後に、躯体とコンテナとの接合を解除する。全てのユニットの設置が完了すると、対象階(バルコニー部分を含む)における内外装や設備を施工して、対象階を完成させる。
【0006】
一方で、方法Bは、躯体の構築とユニットの設置とを並行して行うことで建築物を施工する方法である。図2に示す通り、方法Bでは、まず、対象階の躯体(バルコニー部分を含む)を構築する。そして、対象階の上階の躯体は施工していない状態で、ユニットをクレーンで吊り上げることで対象階に搬入する。対象階への全てのユニットの搬入が完了した後に、対象階(バルコニー部分を含む)における内外装や設備を施工して、対象階を完成させる。そして、対象階が完成した後に、上階の躯体を構築する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2020-041261号公報
【特許文献2】特許7127921号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、方法Aでは、ユニットの搬入の際にコンテナを躯体とボルトで接合する必要があり、ユニット搬入時における重量移動によるクレーン操作が難しいという問題があった。すなわち、方法Aにおいては、ユニットを躯体内に搬入するのに手間がかかった。したがって、実用化が進まなかった。
【0009】
一方で、方法Bでは、ユニットを設置した後に(すなわちユニットがある状態で)上階の躯体を設置する関係から、一般的なRC施工ができないという問題や、速やかに施工をして雨天による雨漏り対策を施さないと、ユニットが濡れて損傷するという問題があった。すなわち、方法Bにおいては、施工上に制限があり自由度が低かった。以上の事情を考慮して、本発明では、施工上の自由度も高く、ユニットを簡便な方法で躯体内に搬入することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]本発明に係る建築物の施工方法は、多層階で構成され、各階において複数のユニットを設置することで構築される建築物の施工方法であって、建築物の躯体を構築する躯体構築工程と、各階について、載置部を片持ち構造で前記躯体に接合する接合工程と、前記載置部の上方からクレーンによりユニットを当該載置部に載置する載置工程と、前記載置部に載置した前記ユニット牽引することで、前記躯体内に当該ユニットを搬入する搬入工程とを含む。
【0011】
[2]前記複数のユニットの全てを前記躯体内に搬入した後に、前記載置部は、バルコニー部分の躯体として用いられる[1]の施工方法。
【0012】
[3]前記載置部にユニットを設置することで、前記バルコニー部分を構築するバルコニー構築工程を含む[2]の施工方法。
【0013】
[4]前記接合工程において、前記載置部は、前記躯体と面一になるように接合する[1]の施工方法。
【0014】
[5]前記接合工程において、前記躯体における前記載置部との接合部分に埋め込んだブラケットプレートを介して、当該載置部を当該躯体に接合する[1]または[2]の施工方法。
【0015】
[6]前記複数のユニットの全てを前記躯体内に搬入した後に、当該躯体のうち当該ユニットを搬入した開口部を塞ぐためのパネルを設置するパネル設置工程を含む[1]から[5]の施工方法。
【0016】
[7]前記載置工程において、前記載置部に設けられたガイドレールの間に当該ユニットを載置する[1]から[6]の施工方法。
【0017】
[8]前記接合工程と前記載置工程と前記搬入工程と前記バルコニー構築工程とは、最下階から最上階にむかって順次に行われる[3]の施工方法。
【0018】
[9]前記接合工程は、施工対象となる階の下階について構築された前記バルコニー部分から行われる[3]の施工方法。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る施工方法は、施工上の自由度も高く、載置部ユニットを簡便な方法で躯体内に搬入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】方法A(比較例)に係る施工方法を説明する図である。
図2】方法B(比較例)に係る施工方法を説明する図である。
図3】本実施形態に係る施工方法を説明する図である。
図4】変形例に係る施工方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る建築物の施工方法を説明する。本実施形態では、住宅に用いられる建築物を想定する。図3は、本実施形態に係る建築物の施工方法を説明する図である。図3に例示される通り、本実施形態の施工方法の対象となる建築物は、多層階で構成され、各階において複数のユニットUを設置することで構成される。建築物の各階には、バルコニー部分Bが設けられる。具体的には、建築物は、躯体10と、複数のユニットUとを組み合わせることで構成される。躯体10は、建築物全体を構造的に支える骨組み部分(柱や梁など)の構造体である。ユニットUは、各階を所定の空間毎(例えば部屋毎)に分割した構造体であり、事前に工場で製造される。なお、躯体10はいわゆるスケルトンであり、複数のユニットUはインフィルである。
【0022】
概略的には、本実施形態の施工方法では、躯体10を構築した後に、各階に相当する部分に複数のユニットUを搬入する。図3では、A階は既に複数のユニットUを搬送して完成した階であり、B階は施工対象となる階(ユニットUを搬送中の階)であり、C階は施工前の階である場合を例示する。
【0023】
具体的には、本実施形態の施工方法は、例えば、躯体構築工程と、接合工程と、載置工程と、搬入工程と、バルコニー構築工程と、パネル設置工程とを含む。
【0024】
躯体構築工程は、建築物の躯体10を構築する工程である。躯体10を構築する方法には、公知の任意の技術が適宜に採用される。躯体10は、例えば、RC造、PCa(Precast Concrete)造またはS(Steel)造などといった鋼材を接合して構築される架構(骨組み)である。なお、柱と梁が交わる部分が剛接合されるラーメン構造で躯体10を構築することが、可変性を良好にする観点からは、好ましい。躯体構築工程では、バルコニー部分Bについては構築しない。具体的には、躯体構築工程では、バルコニー部分Bのフレーム部BF(躯体)、および、ユニットUを搬入する開口部(以下「搬入口O」という)における外壁部分は構築しない。搬入口Oは、複数の階の各々について、当該階の天井部分の躯体と床部分の躯体との間における開口である。なお、実際には、各階の天井端部の躯体の端部は、床側に向かって張り出す梁を含む。したがって、搬入口Oは、天井端部の躯体のうち端部にある梁と、床部分における躯体との間の開口である。以上の説明から理解される通り、躯体構築工程で構築する躯体10は、建築物のうちバルコニー部分Bを含まない躯体である。なお、躯体構築工程では、建築物のうち搬入口Oを塞ぐ外壁以外の外壁の構築が行われる。
【0025】
接合工程と載置工程と搬入工程とバルコニー構築工程とパネル設置工程とは、各階について一連に行われる。本実施形態では、接合工程と載置工程と搬入工程とバルコニー構築工程とパネル設置工程とは、最下階から最上階にむかって順次に行われる。すなわち、施工対象となる階(以下「対象階」という)について接合工程と載置工程と搬入工程とバルコニー構築工程とパネル設置工程との全てが完了した後に、上階について接合工程と載置工程と搬入工程とバルコニー構築工程とパネル設置工程とを行う。図3の例示では、まず、A階について接合工程~パネル設置工程が完了した後に、B階について接合工程~パネル設置工程を行って、最後にC階について接合工程~パネル設置工程を行う。
【0026】
接合工程は、バルコニー部分Bのフレーム部BF(「載置部」の例示)を躯体10に接合する工程である。具体的には、片持ち構造でフレーム部BFが躯体10に接合される。フレーム部BFは、RC造、PCa造またはS造といった鋼材を接合して構築される架構(骨組み)である。フレーム部BFは、躯体10から水平方向に張り出している部分であるとも換言できる。
【0027】
フレーム部BFを躯体10に接合する方法は、任意である。後述する載置工程および搬入工程において、フレーム部BFの強度を十分に向上させる観点からは、躯体10におけるフレーム部BFとの接合部分に埋め込んだブラケットプレートPを介して、フレーム部BFが躯体10に接合されることが好ましい。例えば、躯体10に埋め込まれたブラケットプレートPのうち当該躯体10から突出する部分を、フレーム部BFの梁部分であるH形鋼におけるウエッブに接合する。例えば、特開2020-172845号公報に記載の接合構造がフレーム部BFの接合に用いられる。
【0028】
本実施形態の接合工程においては、フレーム部BFは、躯体10と面一になるように接合する。具体的には、フレーム部BFの上面と躯体10(躯体10のうち対象階の床に対応する部分)の上面とが面一になるように、フレーム部BFを躯体10に接合する。フレーム部BFが躯体10と面一になるように接合することで、後述する搬入工程においてユニットUの搬入を円滑に行うことができる。
【0029】
本実施形態では、接合工程は、対象階の下階について構築されたバルコニー部分Bから行われる。図3の例示では、A階について構築されたバルコニー部分Bから接合工程が行われる。なお、対象階(B階)における躯体10内からも適宜に接合工程が行われる。本実施形態では、完成済みの下階のバルコニー部分Bを足場として利用して接合工程を行うことができるから、接合工程のために個別に足場を設ける必要がないという利点がある。
【0030】
載置工程は、フレーム部BFの上方からクレーンによりユニットUを当該フレーム部BFに載置する工程である。ユニットUは、ワイヤを介してクレーンに接続される。ユニットUは、クレーンによりワイヤで吊り上げてフレーム部BFに載置される。なお、実際には、天秤フレームを用いた天秤釣りによりユニットがフレーム部BFに載置される。また、コンテナや収容体に載置した状態でユニットUをフレーム部BFに載置する構成も本発明には包含される。なお、遠隔解除装置が設けられたワイヤを用いることが好ましい。
【0031】
載置工程においては、フレーム部BFに設けられたガイドレールの間に当該ユニットUを載置する。例えば、躯体10内に向かって延在するように2本のガイドレールをフレーム部BFに平行に設ける。ガイドレールを用いることで、ユニットUの脱落や位置ずれを防止できる。
【0032】
搬入工程は、フレーム部BFに載置したユニットUを牽引することで、躯体10内に当該ユニットUを搬入する工程である。牽引することで躯体10内の所望する位置にユニットUを設置する。なお、ユニットUは、躯体10におけるバルコニー部分Bの搬入口Oから、当該躯体10内に搬入される。ユニットUを牽引する方法は、任意であるが、例えばウインチを用いてユニットUを牽引する。載置工程および搬入工程は、対象階に設置される全てのユニットUが搬入されるまで繰り返し行う。なお、ユニットUの下面には、躯体の表面を滑りやすくするために鋼板帯を設けることが好ましい。
【0033】
バルコニー構築工程は、バルコニー部分Bを構築する工程である。具体的には、バルコニー構築工程では、複数のユニットUの全てを躯体10内に搬入した後に、フレーム部BFにバルコニー部分BのユニットBUを設置することで、当該バルコニー部分Bを構築する。バルコニー部分BのユニットBUは、バルコニー部分Bの躯体以外の部分であり、事前に工場で製造され、床スラブや防水および手摺りを施工しておく。例えば、ユニットBUを上方からクレーンでフレーム部Bfに据え付けて、完成済みの下階のバルコニー部分Bからフレーム部BFとユニットBUとを接合ボルト締めやバルコニー裏の軒天を施工する。
【0034】
本実施形態のバルコニー構築工程によれば、フレーム部BFにユニットBUを設置することで、簡便にフレーム部BFの構築ができるという利点がある。なお、図3(A階)の例示では、フレーム部BFは、ユニットBUの内部に埋設されているので実際には見えないが、便宜的に図示する。
【0035】
パネル設置工程は、躯体10のうちユニットUを搬入した開口部(搬入口O)を塞ぐためのパネルHを設置する工程である。パネル設置工程は、例えば搬入工程またはバルコニー構築工程の後に行われる。パネルHは、搬入口Oを塞ぐための外壁部分を含むクラッディング(パネル)であり、搬入口Oに応じた大きさで、事前に工場で製造される。したがって、搬入口OにパネルHを嵌め込むことで、搬入口Oの部分に簡便に外壁を構築することができる。なお、パネル設置工程は、構築後のバルコニーBを足場にしてパネルHが設置できるという観点からは、バルコニー構築工程の後に行うことが好ましい。
【0036】
本実施形態の施工方法は、躯体構築工程と接合工程と載置工程と搬入工程とバルコニー構築工程とパネル設置工程とに加えて、他の工程が適宜に含まれる。上述した各工程に加えて、配管および配線を施工する設備工程、住戸内の内壁、天井および床を施工する内装工程、および、その他の各種の施工が適宜に行われることで、建築物が完成する。
【0037】
本実施形態では、フレーム部BFを先に構築して、当該フレーム部BFを利用してユニットUが躯体10内に搬入される。したがって、図1に例示した施工方法(方法A)と比較して、コンテナ(ユニットU)を搬入口Oから搬入する際に高度なクレーン操作が不要であるという利点や、コンテナを用いなくてもユニットUを搬入できるという利点がある。すなわち、本実施形態では、方法Aと比較して、簡便な方法でユニットUを躯体10内に搬入できる。
【0038】
また、本実施形態では、建築物における全体の躯体10(バルコニー部分を除く)を構築した後に、各階にユニットUを搬入できる。したがって、図2に例示した施工方法(方法B)と比較して、施工上の自由度が高いという利点がある。具体的には、一般的なRC施工も可能であり、雨天による雨漏りを考慮した施工をしなくてもよい。
【0039】
<変形例>
以上に例示した態様に付加される具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様を、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合してもよい。
【0040】
(1)前述の形態では、バルコニー部Bを有する建築物を施工する場合を想定してが、例えばバルコニー部Bを有しない建築物(例えばオフィスビルなど)についても本発明の施工方法は適用できる。バルコニー部Bを有しない建築物を施工する場合の施工方法は、躯体構築工程と接合工程と載置工程と搬入工程とパネル設置工程とを含む。すなわち、施工方法において、バルコニー構築工程は省略される。躯体構築工程と載置工程と搬入工程とパネル設置工程とは、前述の形態と同様である。
【0041】
バルコニー部Bを有しない建築物の場合には、接合工程において、ユニットを載置するための載置部を片持ち構造で躯体10(躯体10のうち対象階の床に対応する部分)に接合する。載置部は、フレーム部BFと同様に、RC造、PCa造またはS造といった鋼材を接合して構築される架構(骨組み)であり、例えば前述したフレーム部BFと同様の方法で適宜に躯体10に接合される。なお、載置部は、ユニットUの全体が載置できる大きさにすることが好ましい。載置工程および搬入工程は、前述の形態と同様である。そして、パネル設置工程の後に、載置部は躯体10から取り外される。
【0042】
前述の形態では、最下階から最上階に向かって順次に施工を行ったが、バルコニー部Bを有しない建築物については、最下階から最上階に向かって順次に施工を行うことは必須ではなく、対象階の順番は任意に決定できる。バルコニー部Bを有しない建築物については、建築数年後にユニットUを交換するときに、各階に再度載置部を設置することで、旧ユニットの排出と、新ユニットの搬入とが可能になる。なお、躯体10における載置部ととの接合部分に用いられるブラケットプレートPには、バルコニー部Bに代えて、載置工程の際にユニットUの載置部への載置が障害にならない出寸法で庇などを適宜に設けてもよい。
【0043】
以上の説明から理解される通り、前述の形態(バルコニー部Bを有する建築物に施工方法を適用する場合)においては、フレーム部BFは、ユニットを載置するための載置部の例示であり、載置部が、複数のユニットUの全てを躯体10内に搬入した後に、バルコニー部分Bの躯体として用いられる。
【0044】
(2)図4は、変形例に係る施工方法を説明する図である。図4では、フレーム部BFの長さ(躯体10から張り出す方向の長さ)がユニットUの長さ(搬入方向に沿った辺の長さ)よりも小さい場合を想定する。図4に例示される通り、フレーム部BFの長さがユニットUの長さよりも小さい場には、載置工程においてユニットUをフレーム部BFに安定して載置するために、接合工程においてフレーム部BFに延長部Rを取り付けてもよい。
【0045】
延長部Rの構成は、ユニットUを載置することが可能であれば任意であるが、例えば角形鋼管で構成した構造体である。例えば、延長部Rをフレーム部BFの上面に取り付けることで、躯体10から張り出している部分の長さを伸長する。延長部Rをフレーム部BFの上面に取り付ける場合には、延長部Rの長さ(躯体10から張り出す方向の長さ)はユニットUの長さを上回るようにする。そして、延長部Rと躯体10とを面一にするため、フレーム部BFの上面が躯体10の上面よりも低い位置になるように配置しておく。例えば、下階のバルコニーBからフレーム部BFに延長部Rがボルト接合される。載置工程においては、延長部RにユニットUが載置される。なお、延長部Rには、ガイドレールを設けてもよい。延長部Rは、全てのユニットUを搬入した後にフレーム部BFから取り外され、次の対象階における接合工程で使用される。
【0046】
延長部Rをフレーム部BFに設ける構成によれば、フレーム部BFの長さがユニットUの長さよりも小さい場合にもユニットUを搬入できるという利点がある。なお、延長部Rは、フレーム部BFの側面(躯体10とは反対側の側面)に取り付けてもよい。以上の場合には、延長部Rの上面がフレーム部BFの上面と面一になるようにする。フレーム部BFと延長部Rとで構成される部分は、「載置部」の例示である。
【符号の説明】
【0047】
10 :躯体
B :バルコニー部分
BF :フレーム部
BU :ユニット
H :パネル
O :搬入口
R :延長部
U :ユニット



図1
図2
図3
図4