(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074696
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】含ベントナイト組成物
(51)【国際特許分類】
C09K 8/20 20060101AFI20240524BHJP
E21B 21/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C09K8/20
E21B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186025
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000104814
【氏名又は名称】クニミネ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】山田 真
(57)【要約】
【課題】淡水や、海水等のような電解質水溶液を分散媒とした場合でも、少量の添加剤の配合だけで、得られるベントナイト泥水に、掘削泥水として好適な所望の優れた特性を付与することができる、含ベントナイト組成物、及び当該組成物を分散してなるベントナイト泥水を提供する。
【解決手段】ベントナイトを85~99質量%、ダイユータンガムを1~15質量%含有する、含ベントナイト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベントナイトを85~99質量%、ダイユータンガムを1~15質量%含有する、含ベントナイト組成物。
【請求項2】
前記含ベントナイト組成物が、ベントナイトを85~98.5質量%、ダイユータンガムを1~14.5質量%、消泡剤を0.01~0.5質量%含有する、請求項1に記載の含ベントナイト組成物。
【請求項3】
請求項2に記載の含ベントナイト組成物を分散媒中に分散してなり、ベントナイトの含有量が3~15質量%である、ベントナイト泥水。
【請求項4】
ベントナイト泥水であって、
前記ベントナイト泥水の固形分中にベントナイトを82~99質量%、ダイユータンガムを0.9~15質量%含有し、前記ベントナイト泥水中のベントナイトの含有量が3~15質量%である、ベントナイト泥水。
【請求項5】
前記分散媒が水又は電解質水溶液であり、該分散媒中の塩濃度が0~4質量%である、請求項3に記載のベントナイト泥水。
【請求項6】
降伏値が20~40lb/100ft2である請求項3~5のいずれかに記載のベントナイト泥水。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含ベントナイト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ベントナイト泥水とは、水等の分散媒に対して適量のベントナイトを加えて分散させた懸濁液であり、その適度な高粘度、高降伏値、高ゲル強度、低脱水性等により、掘削泥水として坑井掘削等の現場で広く用いられている。
例えば坑井掘削では、地上で調製されたベントナイト泥水が送泥管を通してビット(先端部)に送られ、次いで掘削した掘り屑(カッティングス、ザク、スライム)と一緒に、排泥管を通して地上に搬出されることで、掘り屑を効率的に除去することができる。またベントナイト泥水は、薄くて浸透性の小さい泥壁を形成することにより、坑壁が崩れるのを抑制し、坑壁を安定化させる作用も発揮する。一度使用されたベントナイト泥水は、掘り屑等を分離除去して再びベントナイト泥水として再利用される。カルボキシセルロース(CMC)等の多糖類は、ベントナイト泥水の増粘剤として広く用いられている。
一方で、ベントナイト泥水は分散媒が淡水(清水)である場合には上記の掘削泥水として適した特性を示すのに対し、海水、塩水のような電解質を多く含む分散媒(電解質水溶液)にベントナイトを分散させた場合には、掘削泥水としての所望の性能の発現が難しくなる。すなわち、泥水の粘度が低下し、泥水中の水分が地層中に失われて流動性が低下し、地盤採掘が困難となる。また、ベントナイトの分散安定性が損なわれて掘り屑の搬送能も低下してしまう。このような電解質水溶液を分散媒として用いる場合には、上記のようなCMC等の増粘剤を添加しても、掘削泥水としての所望の性能を十分に回復させることはできない。
【0003】
これまでに、海洋掘削のような淡水が入手困難な環境や、ベントナイト泥水に海水等が混入するような環境下においても、ベントナイト泥水が掘削泥水として所望の性能を発揮できるような、添加剤、ないし増粘方法や分散性向上方法等が開発されている。例えば特許文献1には、ベントナイトと、カルボキシメチル化グアガム、ヒドロキシプロピル化グアガム、及びカルボキシメチル化ヒドロキシプロピル化グアガムから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする土木用添加剤が開示されており、当該剤が耐塩性に優れ、また当該剤を添加して得られる懸濁液の粘性をコントロールしやすいことが記載されている。
また特許文献2には、ベントナイト、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸系重合体または共重合体、ゼオライト類、分散剤そして無機塩類を均一に混練し、粉末化したことを特徴とする掘削流体用組成物が開示されており、当該組成物は海水に対しても容易に懸濁、膨潤し、増粘効果が期待でき、坑井の状況に適合した特性を有することが記載されている。
また特許文献3には、少なくともアルコールよりも高い比誘電率を有する非プロトン性極性有機化合物の1種または2種以上の混合物を、スメクタイト粘土に吸収させて電解質水溶液中で膨潤し、および/あるいは分散する性能を付与することを特徴とするスメクタイト粘土の活性化方法が開示されている。
また特許文献4には、(メタ)アクリル酸100重量部と、アルキル基の炭素数が12~24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5~6重量部と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物0~0.1重量部とを重合させて得られるアルキル変性カルボキシル基含有水溶性共重合体からなり、純水に対する1重量%中和粘稠液の温度25℃における粘度が1500mPa・s以下であり、かつ、電解質を含む海水に対する1重量%中和粘稠液の温度25℃における粘度が1000~20000mPa・sであることを特徴とする掘削泥水用添加剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-187503号公報
【特許文献2】特開平7-003254号公報
【特許文献3】特開平8-169712号公報
【特許文献4】特開2011-225758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の特許文献1~4に記載される技術を適用しても、電解質水溶液を分散媒として得られるベントナイト泥水は、ゲル強度や降伏値の向上作用は限定的であった。また、海水、塩水等の電解質水溶液を分散媒とする場合には、掘削泥水として使用可能な降伏値、ゲル強度等を得るには、添加剤を多量に混合する必要があり、製造コストが上昇してしまうばかりか、見掛粘度も過度に高くなってしまい、ベントナイト泥水を送泥する際に輸送ポンプに不具合を生じさせる原因ともなり得た。さらに、添加剤が海水等に存在するバクテリアにより腐敗(変質、分解等)し、ベントナイト泥水が劣化するという問題もあった。
【0006】
本発明は、淡水や、海水等のような電解質水溶液を分散媒とした場合でも、少量の添加剤の配合だけで、得られるベントナイト泥水に、掘削泥水として好適な所望の優れた特性を付与することができる、含ベントナイト組成物、及び当該組成物を分散してなるベントナイト泥水を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、ダイユータンガムをベントナイトと混合した含ベントナイト組成物が、ベントナイトに対するダイユータンガムの含有割合を特定の少量として、当該組成物を淡水や電解質水溶液に分散させても、掘削泥水として所望の優れた特性を示すことを見出した。
本発明はこれらの知見に基づき、更に検討を重ねて完成されるに至ったものである。
【0008】
本発明の上記課題は、下記の手段により解決された。
〔1〕
ベントナイトを85~99質量%、ダイユータンガムを1~15質量%含有する、含ベントナイト組成物。
〔2〕
前記含ベントナイト組成物が、ベントナイトを85~98.5質量%、ダイユータンガムを1~14.5質量%、消泡剤を0.01~0.5質量%含有する、前記〔1〕に記載の含ベントナイト組成物。
〔3〕
前記〔1〕又は〔2〕に記載の含ベントナイト組成物を分散媒中に分散してなり、ベントナイトの含有量が3~15質量%である、ベントナイト泥水。
〔4〕
ベントナイト泥水であって、
前記ベントナイト泥水の固形分中にベントナイトを82~99質量%、ダイユータンガムを0.9~15質量%含有し、前記ベントナイト泥水中のベントナイトの含有量が3~15質量%である、ベントナイト泥水。
〔5〕
前記分散媒が水又は電解質水溶液であり、該分散媒中の塩濃度が0~4質量%である、前記〔3〕又は〔4〕に記載のベントナイト泥水。
〔6〕
降伏値が10~40lb/100ft2である、前記〔3〕~〔5〕のいずれかに記載のベントナイト泥水。
【発明の効果】
【0009】
本発明の含ベントナイト組成物によれば、当該組成物を分散媒中に分散させることにより、得られるベントナイト泥水に、掘削泥水として好適な所望の優れた特性を付与することができる。
また本発明のベントナイト泥水は、掘削泥水としての所望の優れた特性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明のベントナイト泥水(実験例16)、及び比較例相当のベントナイト泥水(実験例17、18)を調製後に10分間静置したときの、遊離水の発生の様子を示す、図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の好ましい実施の形態について具体的に説明するが、本発明は、本発明で規定すること以外はこれらの形態に限定されるものではない。
【0012】
[含ベントナイト組成物]
(ベントナイト)
本発明の含ベントナイト組成物の主要構成成分はベントナイトである。このベントナイトは、シリカとアルミナとを主成分とする層状ケイ酸塩鉱物の1種であるモンモリロナイトを主成分とする粘土である。本発明において「ベントナイト」という場合、通常よりも広義の意味で用いている。すなわち、天然由来のベントナイトであっても良いし、天然由来のベントナイトを精製した精製ベントナイト(好ましくは、精製モンモリロナイト)であってもよい。製造コストの観点から、前記ベントナイトは天然由来のベントナイトであることが好ましく、かつ未精製品であることが好ましい。市販品としては、例えば、クニゲルU、クニゲルV1、クニゲルCB、クニゲルVO(いずれもNa型ベントナイト)、ネオクニボンド(活性型ベントナイト)、クニボンド(Ca型ベントナイト)(いずれもクニミネ工業社製)、アースゲル1(関ベン鉱業社製)が挙げられる。
【0013】
モンモリロナイトは、厚みが約1nmの薄い板状結晶が積み重なった層状構造を形成しており、結晶同士の間である層間には、一般的にアルカリ金属やアルカリ土類金属などの陽イオンが存在する。本発明に用いるベントナイトにおいて、モンモリロナイトの結晶層間に存在する陽イオンに特に限定はない。例えば、Na(ナトリウム)型、Li(リチウム)型、K(カリウム)型、NH4(アンモニウム)型、Ca(カルシウム)型、Mg(マグネシウム)型、Ba(バリウム)型、Al(アルミニウム)型、Fe(鉄)型、Cu(銅)型、及びZn(亜鉛)型の各ベントナイトから選ばれる1種又は2種以上のベントナイトを用いることができる。中でも、天然に多く存在するNa型ベントナイトや、Ca型ベントナイトを、本発明に用いるベントナイトとすることができる。膨潤性及び泥水の分散安定性の観点から、Na型ベントナイトであることが好ましい。
【0014】
前記ベントナイト中の前記モンモリロナイトの含有量は、50質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であってもよく、70質量%以上であってもよい。
前記ベントナイトは、主成分であるモンモリロナイトを除いた残部には、クリストバライト、石英、長石、ゼオライト(沸石)、カルサイト(方解石)、マイカ(雲母)等の随伴鉱物(夾雑鉱物)が含まれ得る。
【0015】
本発明で用いるベントナイトは、低品質であっても、掘削泥水として所望の性状を発揮させることができる。すなわち、本発明の含ベントナイト組成物で用いるベントナイトは、上記の通り、モンモリロナイトの含有量が50質量%程度であっても、得られるベントナイト泥水に、所望の特性を付与することができる。したがって、本発明の含ベントナイト組成物で用いるベントナイトの陽イオン交換容量(CEC:Cation Exchange Capacity)は、40meq(ミリ当量)/100g以上であってもよく、50meq/100g以上とすることもでき、60meq/100g以上とすることもできる。また通常、本発明で用いるベントナイトのCECは120meq/100g以下である。CECは常法により測定することができる。
【0016】
本発明の含ベントナイト組成物において、ベントナイトの含有量は85質量%以上である。含ベントナイト組成物を分散してなるベントナイト泥水に目的の特性をより高いレベルで発現させる観点から、当該組成物中のベントナイトの含有量は、90質量%以上であることが好ましく、92質量%以上であることがより好ましく、93質量%以上であることがさらに好ましく、94質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有量は99質量%以下であり、98.5質量%以下であることが好ましく、98質量%以下であることがより好ましい。
【0017】
(ダイユータンガム)
本発明の含ベントナイト組成物は、ダイユータンガム(デュータンガム)を含有する。本発明の含ベントナイト組成物がダイユータンガムを有することにより、含ベントナイト組成物を海水等の電解質水溶液に分散させて得られる泥水であっても、掘削泥水として好適な優れた特性を付与することができる。
ダイユータンガムは、グルコース、グルクロン酸、グルコース、ラムノースを構成成分とする主鎖に、ラムノース成分が2つ連なった側鎖が付いた構造ユニットの繰り返し構造を有するバイオポリマー(多糖類)である。ダイユータンガムは、常法により生物学的に合成することもでき、また市販品を用いることもできる。市販品としては、例えば三晶社製のKELCO-VIS DG、KELCO-VIS DG-F(いずれも商品名)が挙げられる。
前記ダイユータンガムの重量平均分子量(Mw)は特に限定されない。例えば、重量平均分子量を288万~600万の範囲とすることもできる。
【0018】
ダイユータンガムと類似の主鎖構造を有するポリマーとして、ジェランガムやウェランガムが知られている。本発明では、含ベントナイト組成物のポリマーとしてダイユータンガムを用いることにより、ジェランガムやウェランガムを含有してなる含ベントナイト組成物と比較して、海水等の電解質水溶液に分散して得られるベントナイト泥水を、掘削泥水として、より優れた特性へと導くことができる。
【0019】
本発明の含ベントナイト組成物において、ダイユータンガムの含有量は、1質量%以上である。得られるベントナイト泥水の流動特性等を向上させる観点から、前記含有量は1.5質量%以上であることが好ましく、2質量%以上であることがより好ましい。また、当該含有量は15質量%以下であり、14.5質量%以下とすることもでき、また流動特性を向上させる観点、及び製造コスト削減の観点から、10質量%以下であることがより好ましく、9.5質量%以下であることがさらに好ましく、8質量%以下であることがさらに好ましく、6質量%以下であることがさらに好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。
【0020】
(消泡剤)
本発明の含ベントナイト組成物は、消泡剤を含有することが好ましい。消泡剤を含有することにより、当該含ベントナイト組成物を分散してなるベントナイト泥水の攪拌時に発生する泡を消失(消泡)させ、所望の流動特性等を発揮させることができる。
本発明の含ベントナイト組成物に用いることができる消泡剤としては、ベントナイト泥水に通常用いられる消泡剤を用いることができる。市販品としては、例えばSNディフォーマ55-P(商品名、サンノプコ社製)が挙げられる。
【0021】
本発明の含ベントナイト組成物において、消泡剤の含有量は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.02質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有量は0.5質量%以下であることが好ましく、0.3質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以下であることがさらに好ましい。
【0022】
(増粘剤)
本発明の含ベントナイト組成物は、さらに増粘剤を含有することが好ましい。増粘剤を含有することにより、ベントナイトを凝集させて微細なベントナイトフロックを形成させることができ、このベントナイトフロックが前記ダイユータンガムと相互作用することにより、本発明の含ベントナイト組成物を分散してなる泥水に、所望の流動特性等を付与することができると考えられる。
本発明の含ベントナイト組成物に用いることができる増粘剤としては、ベントナイト泥水に通常用いられる増粘剤を用いることができる。市販品としては、例えばME-350(松本油脂薬品工業社製)、CMCダイセル1390(ダイセルミネラルズ社製)等が挙げられる。
【0023】
本発明の含ベントナイト組成物において、増粘剤の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有量は3.0質量%以下であることが好ましく、2.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以下であることがさらに好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0024】
(膨潤助剤)
本発明の含ベントナイト組成物は、さらに膨潤助剤としてソーダ灰を含有することが好ましい。当該組成物がソーダ灰を含有することにより、ベントナイトの結晶層間に存在する陽イオンがNaイオンにイオン置換され、Na型ベントナイトとすることができる。Na型ベントナイトは膨潤性に優れるため、ソーダ灰を含有する本発明の含ベントナイト組成物を分散してなる泥水に高膨潤性を付与することができる。また、ソーダ灰はアルカリ性であるため、得られる泥水のpHをアルカリ性側にすることができ、微生物による泥水の劣化抑制や消泡効果を発現させることもできる。さらに、海水のような電解質水溶液を分散媒とする場合には、ソーダ灰が海水中のMgイオンやCaイオンを炭酸塩として不活化することで、得られる泥水の粘性をさらに向上させることができる。
本発明の含ベントナイト組成物に用いることができるソーダ灰としては、例えばトクヤマ社製のソーダ灰が挙げられる。
【0025】
本発明の含ベントナイト組成物において、膨潤助剤の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.2質量%以上であることがより好ましく、0.3質量%以上であることがさらに好ましい。また、当該含有量は2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
【0026】
本発明の含ベントナイト組成物は、上述した構成成分以外にも、例えば分散剤、防腐剤、pH調整剤等を含有していてもよい。
上記各構成成分の混合方法は限定されず、均一に混合できれば特に制限はない。
【0027】
本発明の含ベントナイト組成物は、好ましくは分散媒として海水を適用する、海水用の含ベントナイト組成物である。本発明ないし本明細書において、「海水」を適用するとは、例えば、海洋掘削のように、海水そのものを分散媒としてベントナイト泥水を調製する形態、及び、淡水で調製したベントナイト泥水に海水が混入した液分散媒をベントナイト泥水とする形態の両方を含む意味である。すなわち、淡水で希釈された海水を分散媒としてベントナイト泥水を調製する形態も「海水」を適用する形態に包含される。このような海水の混入は、作業現場が沿岸部や河口付近、埋立地等において発生しやすい。
また本発明の含ベントナイト組成物を分散してなるベントナイト泥水は、掘削泥水として用いることができる。すなわち本発明の含ベントナイト組成物は、好ましくは掘削泥水用の含ベントナイト組成物である。
【0028】
[ベントナイト泥水]
本発明の含ベントナイト組成物は、淡水や海水等に分散させることにより、掘削泥水として所望の特性を発現するベントナイト泥水(以下、「本発明の泥水」とも称す。)を得ることができる。
【0029】
(分散媒)
本発明の泥水は、清水泥水であってもよく、海水泥水ないし塩水泥水であってもよい。すなわち、本発明の泥水は、淡水だけではなく、電解質を多く含む海水等を分散媒としても、優れた流動特性、脱水特性、分散安定性、及び腐敗免疫性を示す。また、例えば分散媒を淡水として調製された泥水に、海水等が混入しても、掘削泥水としての所望の特性を維持することができる。本発明の泥水の分散媒は淡水(水)とすることもでき、海水等の電解質水溶液とすることもでき、これらの混合液であってもよい。また、分散媒中の塩濃度を、0~5質量%とすることができ、0~4質量%とすることができ、0~3質量%とすることもでき、0~2質量%とすることもでき、0~1質量%とすることもできる。
【0030】
(調製方法)
本発明の泥水は、分散媒に含ベントナイト組成物を分散させて得られる形態に限られない。例えば、分散媒に対し、含ベントナイト組成物の各構成成分を独立して順次混合、分散させることにより得ることもできる。
分散媒に含ベントナイト組成物を分散させて得る場合には、掘削泥水としての所望の優れた特性を発揮させる観点から、本発明の泥水における上記含ベントナイト組成物の含有量は、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、6質量%以上であることがさらに好ましい。また、上記と同様の観点から、前記含有量は15質量%以下であることが好ましく、12質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0031】
分散媒に対して含ベントナイト組成物の各構成成分を独立して順次混合、分散させる場合には、当該各構成成分の含有量は、上記ベントナイト組成物を上記の好ましい範囲内で分散させたときの各構成成分の含有量と同じ範囲とすることもできる。例えば、本発明の泥水の固形分中のベントナイトの含有量は、82~99質量%とすることができ、90~98質量%であることが好ましく、93~95質量%であることがより好ましい。また、本発明の泥水中の固形分中のダイユータンガムの含有量は、0.9~15質量%とすることができ、1~7質量%であることが好ましく、2~5質量%であることがより好ましい。また本発明の泥水が消泡剤を含有する場合、本発明の泥水の固形分中の消泡剤の含有量は、0.01~0.5質量%であることが好ましく、0.02~0.3質量%であることがより好ましく、0.05~0.2質量%であることがさらに好ましい。
本発明の泥水中のベントナイトの含有量は、3質量%以上とすることができ、掘削泥水としての所望の優れた特性を発揮させる観点から、4質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましい。また、当該含有量は15質量%以下とすることができ、上記と同様の観点から、12質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
本発明の泥水のファンネル粘度(FV:funnel viscosity)は、泥水の地盤への浸透抵抗の観点から、30sec(秒)以上であることが好ましく、40sec以上であることがより好ましく、50sec以上であることがさらに好ましい。また、前記ファンネル粘度は、120sec以下であってもよく、送泥ポンプへの負荷を軽減する観点から、80sec以下であることが好ましく、70sec以下であることがより好ましく、60sec以下であることがさらに好ましい。
本発明の泥水のファンネル粘度は、ファンネル粘度計(型番:S-251、西日本試験機社製)を用い、泥水を泥水採取容器で500cc分測り取り、ファンネル本体(漏斗部分)の上方から注ぎ入れ、室温条件(20℃)において泥水全量がファンネル本体下方から流出する時間を測定することにより決定することができる。
【0033】
本発明の泥水の降伏値(YV:Yield Value)は、掘り屑(カッティングス、ザク、スライム)を地上まで排出する(ザク上げを行う)観点から、10lb/100ft2以上であることが好ましく、15lb/100ft2以上であることがより好ましく、20lb/100ft2以上であることがさらに好ましい。また、前記降伏値は、土砂運搬及び送泥ポンプへの負荷を軽減する観点から、50lb/100ft2以下であることが好ましく、45lb/100ft2以下であることがより好ましく、40lb/100ft2以下であることがさらに好ましい。
本発明の泥水の降伏値は、回転粘度計(FANN VISCOMETER、型式:35SA、FANN Instrument社製)を用い、泥水300ccをサーキュレーティングカップに取り、室温条件(20℃)において600rpm、300rpmで撹拌した際の読み値(Dial Reading、それぞれθ600、θ300)を計測し、得られた読み値から、下記式1により塑性(プラスチック)粘度(PV:Plastic viscosity、単位:cP)を算出し、さらに得られた塑性粘度とθ300の読み値から、下記式2により決定することができる。
・塑性粘度(PV)(cP) = θ600 - θ300・・・(式1)
・降伏値(YV)(lb/100ft2) = θ300 - PV ・・・(式2)
なお、上記得られた読み値から、下記式3により見掛粘度(AV:Apparent Viscosity、単位:cP)を算出することもできる。
・見掛粘度(AV)(cP) = θ600 / 2・・・(式3)
【0034】
本発明の泥水の初期ゲル強度は、泥水中でのザク上げの観点から、10lb/100ft2以上であることが好ましく、15lb/100ft2以上であることがより好ましく、20lb/100ft2以上であることがさらに好ましい。また、前記初期ゲル強度は、送泥ポンプへの負荷を軽減する観点から、50lb/100ft2以下であることが好ましく、40lb/100ft2以下であることがより好ましく、35lb/100ft2以下であることがさらに好ましい。
また、本発明の泥水の発達ゲル強度は、ザクの沈降抑制の観点から、10lb/100ft2以上であることが好ましく、15lb/100ft2以上であることがより好ましく、25lb/100ft2以上であることがさらに好ましい。また、前記発達ゲル強度は、送泥ポンプへの負荷を軽減する観点から、50lb/100ft2以下であることが好ましく、40lb/100ft2以下であることがより好ましく、35lb/100ft2以下であることがさらに好ましい。
本発明の泥水のゲル強度(初期ゲル強度、及び発達ゲル強度)は、回転粘度計(FANN VISCOMETER、型式:35SA、FANN Instrument社製)を用い、泥水300ccをサーキュレーティングカップに取り、室温条件(20℃)において3rpmで撹拌した際の平衡点での目盛りの読み値を測定することにより決定することができ、また初期ゲル強度を測定した泥水を再度600rpmで10秒間撹拌した後、10分間静置させ、その後3rpmで撹拌した時の平衡点での読み値を測定することにより発達ゲル強度を決定することができる。なお、上記「平衡点」とは、3rpmで回転させた時に測定目盛りの上昇が止まる点のことを意味する。
【0035】
本発明の泥水の加圧脱水量(WL:Water Loss)は、泥水の坑壁浸入防止の観点から、20ml以下であることが好ましく、15ml以下であることがより好ましく、10ml以下であることがさらに好ましい。また、前記加圧脱水量は、坑壁への造壁膜の強度の観点から、1ml以上であることが好ましく、5ml以上であることがより好ましく、8ml以上であることがさらに好ましい。
本発明の泥水の加圧脱水量は、加圧脱水試験機(FANN Instrument社製)のセル(容器)にOリングとろ紙(No.50φ90 mm、Whatman社製)をセットし、泥水(ベントナイト含有量:9.5質量%)を250cc注ぎ入れ、底蓋を閉め、N2ガスカートリッジを装填し、3kgf/cm2(約42.7psi)の圧力をかけ、30分後の脱水量(加圧脱水試験機の下方から漏れ出た液量)を計測することにより決定することができる。
【0036】
本発明の泥水のpH(20℃)は、掘削泥水の安定した粘度発現の観点から、6以上が好ましく、6.5以上であることがより好ましく、7以上であることがさらに好ましい。また、前記pHは、海水、淡水の環境負荷を軽減する観点からpH10以下であることが好ましく、pH9以下であることがより好ましく、8以下であることがさらに好ましい。本発明の泥水のpHは、パーソナルpHメーターのように、pHの測定に通常用いられている機器により測定することができる。例えば、三商社製のSPH71(商品名)を用いることができる。
【0037】
(泥水の用途)
本発明の泥水は、例えば坑井掘削、海上調査ボーリング、プレボーリング工法、泥水式シールド工法等に用いることができる。また、沿岸部、河口付近での掘削や、海洋掘削など、海水が混入しやすい条件下においても好適に用いることができる。
【実施例0038】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0039】
(実験例1~15)
ベントナイト(商品名:クニゲルU、CEC:68meq(ミリ当量)/100g、クニミネ工業社製)を94.9質量部、ポリマー1~15を4質量部、ME-350(松本油脂薬品工業社製)を0.5質量部、ソーダ灰(トクヤマ社製)を0.5質量部、SNディフォーマ55-P(消泡剤、サンノプコ社製)を0.1質量部として混合し、ポリマー1~15に対応する15種の含ベントナイト組成物を得た。用いた各種ポリマー1~15の詳細は、下記表1の通りである。
邪魔板付3Lポリ容器に人工海水(テトラマリンソルトプロ(商品名);スペクトラムブランズジャパン社製を、蒸留水1Lに対して33g溶解させてなる人工海水、塩濃度:3.3質量%)を1L入れ、1000~1200rpmで撹拌しながら、上記で得られた各含ベントナイト組成物を10質量%となるように(ベントナイトが9.5質量%となるように)入れ、さらに10分間撹拌して実験例1~15のベントナイト泥水(以下、単に「泥水」とも称す。)を得た。
【0040】
【0041】
得られた実験例1~15の泥水の物性(流動特性等)を、下記試験により測定した。結果を下記表2に示す。
【0042】
<ファンネル粘度>
ファンネル粘度計(型番:S-251、西日本試験機社製)を用い、上記で得られた泥水を泥水採取容器で500cc分測り取り、ファンネル本体(漏斗部分)の上方から注ぎ入れ、室温条件(20℃)において泥水全量がファンネル本体下方から流出する時間を測定し、ファンネル粘度(FV:funnel viscosity、単位:sec)とした。
【0043】
<見掛粘度、塑性粘度、降伏値>
回転粘度計(FANN VISCOMETER、型式:35SA、FANN Instrument社製)を用い、泥水300ccを付属のサーキュレーティングカップに取り、室温条件(20℃)において600rpm、300rpmで撹拌した際の読み値(Dial Reading、それぞれθ600、θ300)を計測した。得られた読み値から、下記式3より見掛粘度(AV:Apparent Viscosity、単位:cP)を算出した。
・見掛粘度(AV)(cP) = θ600 / 2・・・(式3)
また、下記式1により塑性(プラスチック)粘度(PV:Plastic viscosity、単位:cP)を算出し、さらに得られた塑性粘度とθ300の読み値から、下記式2により降伏値(YV:Yield Value、単位:lb/100ft2)を算出した。
・塑性粘度(PV)(cP) = θ600 - θ300・・・(式1)
・降伏値(YV)(lb/100ft2) = θ300 - PV ・・・(式2)
【0044】
<ゲル強度>
前記回転粘度計を用い、泥水300ccを付属のサーキュレーティングカップに取り、室温条件(20℃)において600rpmで10秒間撹拌した後、10秒間静置させ、その後3rpmで撹拌した時の平衡点での目盛りの読み値を測定し、これを初期ゲル強度(Initial Gel Strength、単位:lb/100ft2、表中「GS(ini)」と表記)とした。
その後、初期ゲル強度を測定した泥水を再度600rpmで10秒間撹拌した後、10分間静置させ、その後3rpmで撹拌した時の平衡点での目盛りの読み値を測定し、これを発達ゲル強度(単位:lb/100ft2、表中「GS(10min)」と表記)とした。
【0045】
【0046】
表2から明らかなように、実験例2~15の泥水は、ファンネル粘度、降伏値、ゲル強度に劣っていた。
これに対し、ポリマーにダイユータンガムを使用した実験例1の泥水は、十分な粘性を示し、高い降伏値と高いゲル強度を示した。
【0047】
(実験例16~18)
ポリマーとして、ダイユータンガム(上記ポリマー1、三晶社製)、ウェランガム(商品名:Welan Gum BG3810、三晶社製)、及びジェランガム(商品名:KELCO GEL CG-LA、三晶社製)を用いた以外は、上記と同様にして含ベントナイト組成物を得た。
邪魔板付3Lポリ容器に前記と同様の人工海水を1L入れ、1000~1200rpmで撹拌しながら、上記で得られた含ベントナイト組成物を10質量%となるように(ベントナイトが9.5質量%となるように)入れ、さらに10分間撹拌し、実験例16~18の泥水を得た。
【0048】
得られた実験例16~18の各泥水の性状を、下記試験により測定した。結果を下記表3に示す。ファンネル粘度、見掛粘度、塑性粘度、降伏値、ゲル強度は、上記と同様にして測定した。
なお、下記表中「GS(lb/100ft2)」の数値を「X~Y」と表記する場合、Xの値が初期ゲル強度「GS(ini)(lb/100ft2)」の値を示し、Yの値が発達ゲル強度「GS(10min)(lb/100ft2)」の値を示す。以下同様である。
【0049】
<加圧脱水量>
加圧脱水試験機(FANN Instrument社製)のセル(容器)にOリングとろ紙(No.50φ90 mm、Whatman社製)をセットし、泥水を250cc注ぎ入れ、底蓋を閉めた。N2ガスカートリッジを装填し、3kgf/cm2(約42.7psi)の圧力をかけ、30分後の脱水量(加圧脱水試験機の下方から漏れ出た液量)を、加圧脱水量(WL:Water Loss、単位:ml)とした。
【0050】
<pH>
室温条件(20℃)において、得られた泥水のpHをSPH71(三商社製)により測定した。
【0051】
<分散安定性>
製造後の各泥水を10分間静置した時の分散安定性を目視により観察した。10分静置後の写真を、
図1に示す。
【0052】
【0053】
上記表中、ファンネル粘度(FV)の試験結果の欄に示す「∞」の記号は、試験に供した泥水の粘性が十分に高く、ファンネル粘度計本体の下方からの泥水の流出が、試験途中から断続的に滴り落ち、正確な測定値が得られない状態にあったことを示している。「∞」の左側に示される数値は、泥水が連続的に流出する状態から、泥水が断続的に滴り落ちる状態に変化した時の計測時間を表す。以下同様である。
【0054】
表3及び
図1より、ポリマーとしてダイユータンガム用いて作製した含ベントナイト組成物を分散してなる泥水(実験例16)は、十分な粘性(ファンネル粘度、見掛粘度、塑性粘度)を示し、高い降伏値と高いゲル強度を示し、脱水量が少なく抑えられ、かつ分散安定性にも優れることが示された。
一方で、ポリマーとしてウェランガムを用いて作成した含ベントナイト組成物を分散してなる泥水(実験例17)は、高いファンネル粘度、見掛粘度、塑性粘度、降伏値を示し、脱水量を少なく抑えることができ、分散安定性も示すものの、ゲル強度に劣っていた。また、ポリマーとしてジェランガムを用いて作製した含ベントナイト組成物を分散してなる泥水(実験例18)は、ファンネル粘度等の全ての性質に劣り、さらに遊離水が発生して分散安定性にも劣ることが示された。
【0055】
(実験例19~22)
ベントナイトとして、クニゲルU(クニミネ工業社製)、アースゲル1(関ベン鉱業社製)(いずれもNa型ベントナイト)、ネオクニボンド(活性型ベントナイト、クニミネ工業社製)、又はクニボンド(Ca型ベントナイト、クニミネ工業社製)を94.9質量部、ダイユータンガム(三晶社製)を4質量部、ME-350を0.5質量部、ソーダ灰を0.5質量部、消泡剤を0.1質量部として混合し、各含ベントナイト組成物を得た。
邪魔板付3Lポリ容器に海水(福島県いわき市小名浜湾産、塩濃度:約3.4質量%)を1L入れ、1000~1200rpmで撹拌しながら上記により得られた各含ベントナイト組成物を入れ、さらに10分間撹拌し、実験例19~22の泥水を得た。
【0056】
上記と同様にして、ファンネル粘度、見掛粘度、塑性粘度、降伏値、ゲル強度、加圧脱水量を測定した。結果を下記表4に示す。
【0057】
【0058】
いずれのベントナイトを使用して得られた含ベントナイト組成物を分散してなる泥水(実験例19~22)も、上記性状の全てに優れていることがわかる。
【0059】
(実験例23~25)
ベントナイト(商品名:クニゲルU、クニミネ工業社製)、ダイユータンガム(三晶社製)、消泡剤(商品名:SNディフォーマ55-P、サンノプコ社製)、を、下記表5に記載の配合比で混合し、各ベントナイト組成物を得た。得られた各ベントナイト組成物を用いて、上記実験例1~15と同様にして、実験例23~25の泥水を得た。
【0060】
上記と同様にして、ファンネル粘度、見掛粘度、塑性粘度、降伏値、ゲル強度、加圧脱水量を測定した。結果を下記表5に示す。
【0061】
【0062】
ポリマーとベントナイトの配合量を変更した各含ベントナイト組成物を用いて得られた泥水は、いずれも所望の特性を有することが示された。
【0063】
(実験例26~34)
邪魔板付3Lポリ容器に海水(福島県いわき市小名浜湾産、塩濃度:約3.4質量%)を1L入れ、1000~1200rpmで撹拌しながら、上記実験例1で用いた含ベントナイト組成物を6~10質量%となるように(ベントナイトが5.7~9.5質量%となるように)投入し、さらに10分間撹拌した。
得られた各泥水について、製造直後、1晩静置後、及び3晩静置後の各性状を、上記と同様に測定した。結果を下記表6に示す。
【0064】
【0065】
それぞれ含ベントナイト組成物の濃度を変えて調製した泥水は、製造直後から3晩静置後まで、ファンネル粘度等の全てにおいて優れた性状を示すことが明らかとなった。すなわち、海水中の微生物の代謝によりバイオポリマーが分解されることなく、性状を維持すうことができ、腐敗免疫性を有していることが示された。
【0066】
(実験例35~39)
海水(福島県いわき市小名浜湾産、塩濃度:約3.4質量%)に蒸留水を加え、海水濃度を70%、50%、30%と希釈した希釈海水を調製した。海水(海水濃度100%)、清水(蒸留水、海水濃度0%)、及びこれらの希釈海水をそれぞれ1L用い、邪魔板付3Lポリ容器中で1000~1200rpmで撹拌しながら、上記実験例1で用いた含ベントナイト組成物を6質量%となるように(ベントナイトが5.7質量%となるように)投入し、さらに10分間撹拌して実験例35~39の泥水を得た。
得られた泥水の各性状を、上記と同様に測定した。結果を下記表7に示す。
【0067】
【0068】
表7に示す通り、海水又は希釈海水に、含ベントナイト組成物を6質量%濃度とやや低い濃度として分散して得られた実験例36~39の泥水は、分散媒の海水濃度に関わらず、ファンネル粘度等の全てにおいて優れた性状を示した。さらに、蒸留水に含ベントナイト組成物を分散して得られた実験例35の泥水は、さらに高いファンネル粘度、降伏値、ゲル強度を示し、また脱水量も少なく抑えられていた。