(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074698
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】電源制御装置及び電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
H02J7/00 302D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186027
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【弁理士】
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】時岡 良宜
【テーマコード(参考)】
5G503
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA11
5G503DA04
5G503DA13
5G503EA05
5G503EA08
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】蓄電池からの電力供給が再開されるときに負荷を適切に起動させることができる。
【解決手段】電源制御装置3は、蓄電池2の充電状態の良否を負荷へ通知する状態通知器32と、蓄電池2から負荷への電力の供給及び供給停止を切り替える電源制御器33とを備える。状態通知器32は、充電状態が所定の第1基準を下回った場合に充電状態が不良であることを負荷へ通知する一方、充電状態が第1基準よりも高い第2基準を上回った場合に充電状態が良好であることを負荷へ通知する。電源制御器33は、状態通知器32が充電状態の不良を通知してから充電状態の良好を通知するまでの間に負荷への電力の供給を停止し、状態通知器32が充電状態の良好を通知するときに負荷への電力の供給を開始する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電池の電力を負荷へ供給する電源制御装置であって、
前記蓄電池の充電状態の良否を前記負荷へ通知する状態通知器と、
前記蓄電池から前記負荷への電力の供給及び供給停止を切り替える電源制御器とを備え、
前記状態通知器は、前記充電状態が所定の第1基準を下回った場合に前記充電状態が不良であることを前記負荷へ通知する一方、前記充電状態が前記第1基準よりも高い第2基準を上回った場合に前記充電状態が良好であることを前記負荷へ通知し、
前記電源制御器は、前記状態通知器が前記充電状態の不良を通知してから前記充電状態の良好を通知するまでの間に前記負荷への電力の供給を停止し、前記状態通知器が前記充電状態の良好を通知するときに前記負荷への電力の供給を開始する電源制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源制御装置において、
前記電源制御器は、前記状態通知器が前記充電状態の不良を通知した場合、前記負荷におけるシャットダウン処理が完了した後に前記負荷への電力の供給を停止する電源制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電源制御装置において、
前記電源制御器は、前記シャットダウン処理の完了に要する以上の時間が経過したことを前記充電状態が前記第1基準と前記第2基準との間の第3基準を上回ることによって判定する電源制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の電源制御装置において、
前記電源制御器は、前記充電状態が前記第1基準よりも低い第4基準を下回った場合に前記負荷への電力の供給を停止する電源制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電源制御装置において、
前記電源制御器は、前記状態通知器が前記充電状態の不良を通知した後は、前記充電状態が前記第4基準を下回らなくても前記負荷への電力の供給を一旦停止する電源制御装置。
【請求項6】
再生可能エネルギから電気を生成する発電機と、
前記発電機によって発電された電力を貯める蓄電池と、
請求項1乃至5の何れか1つに記載の電源制御装置とを備える電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、電源制御装置及び電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、蓄電池の充電状態に応じて、蓄電システムをシャットダウンさせる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、蓄電池からの電力供給が停止される場合には、電力の供給される負荷もシャットダウンする。そして、蓄電池からの電力供給が再開される場合には、負荷も適切に起動する必要がある。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、蓄電池からの電力供給が再開されるときに負荷を適切に起動させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された電源制御装置は、蓄電池の電力を負荷へ供給する電源制御装置であって、前記蓄電池の充電状態の良否を前記負荷へ通知する状態通知器と、前記蓄電池から前記負荷への電力の供給及び供給停止を切り替える電源制御器とを備え、前記状態通知器は、前記充電状態が所定の第1基準を下回った場合に前記充電状態が不良であることを前記負荷へ通知する一方、前記充電状態が前記第1基準よりも高い第2基準を上回った場合に前記充電状態が良好であることを前記負荷へ通知し、前記電源制御器は、前記状態通知器が前記充電状態の不良を通知してから前記充電状態の良好を通知するまでの間に前記負荷への電力の供給を停止し、前記状態通知器が前記充電状態の良好を通知するときに前記負荷への電力の供給を開始する。
【0007】
ここに開示された電源システムは、再生可能エネルギから電気を生成する発電機と、前記発電機によって発電された電力を貯める蓄電池と、前記電源制御装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電源制御装置によれば、蓄電池からの電力供給が再開されるときに負荷を適切に起動させることができる。
【0009】
本開示の電源システムによれば、蓄電池からの電力供給が再開されるときに負荷を適切に起動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、電源システムの構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、測定システムの構成を示す説明図である。
【
図3】
図3は、電源制御装置の機能ブロック図である。
【
図5】
図5は、電源制御装置による電源制御のフローチャートである。
【
図6】
図6は、状態通知器及び電源制御器の動作例を示すタイミングチャートである。
【
図7】
図7は、状態通知器及び電源制御器の別の動作例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、電源システム100の構成を示す説明図である。
【0012】
電源システム100は、発電機1と、発電機1によって発電された電力を貯める蓄電池2と、蓄電池2の電力を負荷へ供給する電源制御装置3とを備える。発電機1は、再生可能エネルギを使って電気を生成する。発電機1は、生成された電気を蓄電池2へ供給する。蓄電池2は、例えば、リチウムイオン電池である。電源制御装置3は、蓄電池2から負荷へ供給する電力を制御する。さらに、電源制御装置3は、蓄電池2の充電状態を負荷へ通知する。
【0013】
この例では、負荷は、測定システム7の制御装置8である。詳しくは、測定システム7は、パルス渦電流探傷(PEC:Pulsed Eddy Current)によって対象物9の厚さを測定する。測定システム7は、プローブ71と制御装置8とを備える。プローブ71は、対象物9に渦電流を発生させ且つ発生した渦電流を検出する。この例では、対象物9は、石油精製物が流通する金属製の配管である。
【0014】
図2は、測定システム7の構成を示す説明図である。プローブ71は、非接触型のプローブであり、対象物9に近接して配置される。尚、「非接触型」とは、非接触でも使用可能であることを意味し、接触状態での使用を除外するものではない。プローブ71は、変動磁場を形成することによって対象物に渦電流を発生させる。また、プローブ71は、対象物に発生した渦電流の変化を誘導電圧として検出する。
【0015】
プローブ71は、励磁電流による磁束で対象物9に渦電流を発生させる励磁コイル72と、対象物9の渦電流を検出する検出コイル73とを備える。プローブ71は、励磁コイル72及び検出コイル73を収容するケーシング74をさらに備えていてもよい。プローブ71は、励磁コイル72によって対象物9に渦電流を発生させ、発生した渦電流を検出コイル73で検出する。この例では、プローブ71は、励磁コイル72と検出コイル73とを1組として、2組の励磁コイル72及び検出コイル73を有している。各組の励磁コイル72の軸心と検出コイル73の軸心とが一直線状になるように、励磁コイル72と検出コイル73とが配列されている。このとき、検出コイル73の方が対象物9の近くに配置されている。
【0016】
励磁コイル72は、電流が印加されることによって、その軸心の方向に磁場を形成する。一方の励磁コイル72と他方の励磁コイル72とは、軸心の方向において互いに反対向きの磁場を形成するように電流が印加される。例えば、一方の励磁コイル72から対象物9へ向かって磁束が発生し、対象物9から他方の励磁コイル72へ向かって磁束が発生する。その結果、一方の励磁コイル72から発せられる大部分の磁束は、一方の励磁コイル72の軸心の方向に出て対象物9内へ入り、対象物9内を略円弧状に通過し、他方の励磁コイル72の軸心の方向へ向かい他方の励磁コイル72に入っていく。励磁コイル72に印加する電流を変動させることによって、対象物9に発生する磁場が変動し、対象物9に渦電流が発生する。
【0017】
一方、対象物9のうち検出コイル73の近傍の部分に発生した渦電流によって、検出コイル73を貫通する磁束が形成される。検出コイル73を貫通する磁束が変化すると、検出コイル73に誘導起電力が発生する。検出コイル73は、この誘導起電力を検出することによって、対象物9の渦電流を検出する。
【0018】
制御装置8は、励磁コイル72に励磁電流を印加する励磁器81と、対象物9の渦電流の過渡変化を検出する検出器82と、制御装置8の電源電圧を制御する電源回路83と、外部機器と通信を行う通信器84と、各種情報を記憶する記憶器85と、少なくとも励磁器81、検出器82、電源回路83、通信器84及び記憶器85を制御する制御器86とを有している。
【0019】
制御装置8の各要素は、電源システム100から供給された電力によって動作する。例えば、励磁器81は、電源システム100から供給された電力からパルス状の励磁電流を生成して、励磁コイル72へ供給する。
【0020】
励磁器81は、パルス状の励磁電流を励磁コイル72に供給する。励磁器81は、パルス信号を発生するパルス発生器81aと、パルス発生器81aからのパルス信号を増幅して、励磁電流として出力する送信アンプ81bとを有している。
【0021】
検出器82は、対象物9の渦電流に応じて検出コイル73に発生する誘導起電力を検出する。検出コイル73に発生する誘導起電力の過渡変化は、対象物9に発生する渦電流の過渡変化と関連している。検出器82は、検出コイル73に発生する電圧を増幅する受信アンプ82aを少なくとも有している。検出器82は、電圧信号にフィルタ処理を施すフィルタをさらに有していてもよい。
【0022】
電源回路83には、蓄電池2から電力が供給される。電源回路83は、電源電圧を所定の電圧に調節して、制御装置8の各要素へ印加する。
【0023】
通信器84は、外部機器と無線通信を行う。例えば、通信器84は、検出器82によって検出された電圧信号(即ち、検出信号)を外部装置に送信する。
【0024】
記憶器85は、制御器86で実行されるプログラム及び各種データを格納している。例えば、記憶器85は、オペレーティングシステム(OS:Operating System)及び制御プログラムが格納されている。記憶器85は、検出器82の検出信号を記憶している。記憶器85は、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等で形成される。
【0025】
制御器86は、制御装置8の全体を制御する。例えば、制御器86は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで形成されている。制御器86は、MCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)、システムLSI等で形成されていてもよい。制御器86は、オペレーティングシステム上で動作する。制御器86は、制御プログラムをメモリに読み出して展開することによって、各種の処理を行う。
【0026】
例えば、制御器86は、励磁器81に所定期間だけ励磁電流を出力させる一方、励磁電流の出力停止後に検出器82による検出信号を取得する。制御器86は、検出器82からの検出信号を記憶器85に記憶させ、記憶器85に記憶された検出信号を所定のタイミングで通信器84を介して外部装置へ送信する。
【0027】
制御器86は、パワーオンリセット機能を有する。すなわち、制御器86は、パワーオンリセット回路を内蔵する。制御器86は、電源投入時に、電源電圧を監視して電源電圧に基づいて内部状態を初期化する。電源電圧が所定の閾値を下から上へ通過することが、内部状態を初期化するための条件の1つである。
【0028】
外部装置は、検出された渦電流の過渡変化に基づいて対象物9の厚さを求める。渦電流に基づいた厚さの測定は、公知の技術が用いられる。例えば、渦電流は、対象物9に浸透していくのに従って減衰していく。渦電流は、対象物9の表面(プローブ71が対向している面)から裏面に到達するまでの間は徐々に減衰し、裏面に到達すると急激に減衰する。検出コイル73によって検出される電圧も渦電流と同様に変化する。対象物9の厚さと検出電圧が急激に減衰するまでの時間とには相関がある。対象物9の厚さは、検出電圧が急激に減衰するまでの時間に基づいて求められる。尚、外部装置ではなく、制御器86が、渦電流の過渡変化に基づいて対象物9の厚さを求めてもよい。
【0029】
発電機1は、熱電発電を行う。発電機1は、熱エネルギを電気エネルギに変換する熱電発電を行う熱電変換モジュールを有する。熱電変換モジュールは、複数の熱電変換素子を含んでいる。熱電変換素子は、熱エネルギを電気エネルギに変換するデバイスであり、ゼーベック素子とも呼ばれる。熱電変換素子は、p型半導体及びn型半導体の対で形成される。この例では、発電機1は、比較的高温となる配管に設置されている。発電機1は、配管の熱を利用して発電する。そのため、発電機1の発電電力は、配管の温度に応じて変動する。より具体的には、発電機1は、プローブ71が設置される対象物9に設置されている。
【0030】
図3は、電源制御装置3の機能ブロック図である。電源制御装置3は、充電状態判定器31と、蓄電池2の充電状態の良否を負荷、即ち、制御装置8へ通知する状態通知器32と、蓄電池2から制御装置8への電力の供給及び供給停止を切り替える電源制御器33とを備える。
【0031】
充電状態判定器31は、蓄電池2の充電状態を判定する。充電状態判定器31は、蓄電池2の充電状態を蓄電池2の電圧(即ち、出力電圧)によって判定する。充電状態判定器31は、蓄電池2の充電状態が所定の基準よりも高いか低いかを判定する。詳しくは、充電状態判定器31は、第1基準としての第1基準電圧V1と、第2基準としての第2基準電圧V2、第3基準としての第3基準電圧V3及び第4基準としての第4基準電圧V4を有している。第2基準電圧V2が最も大きく、第4基準電圧V4が最も小さい。第1基準電圧V1は、第4基準電圧V4よりも大きく且つ第2基準電圧V2よりも小さい。第3基準電圧V3は、第1基準電圧V1よりも大きく且つ第2基準電圧V2よりも小さい。すなわち、第4基準電圧V4<第1基準電圧V1<第3基準電圧V3<第2基準電圧V2の順になっている。充電状態判定器31は、蓄電池2の電圧が各基準電圧よりも大きいか小さいかを判定する。
【0032】
状態通知器32は、充電状態判定器31による判定結果に基づいて、蓄電池2の充電状態の良否を出力する。状態通知器32は、蓄電池2の充電状態が第1基準を下回った場合に充電状態が不良であることを負荷へ通知する一方、蓄電池2の充電状態が第1基準よりも高い第2基準を上回った場合に充電状態が良好であることを負荷へ通知する。この例では、状態通知器32は、充電状態の良否を電力良好信号の出力のオン及びオフによって表す。電力良好信号の出力オンは、充電状態の良好を示す。電力良好信号の出力オフは、充電状態の不良を示す。具体的には、状態通知器32は、制御装置8へ電力良好信号を出力している状態から蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回った場合に、制御装置8への電力良好信号の出力を停止する。一方、状態通知器32は、制御装置8への電力良好信号の出力を停止している状態から蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回った場合に、電力良好信号を制御装置8へ出力する。
【0033】
ここで、制御装置8は、シャットダウンの状態において電力良好信号を受信すると、制御装置8の起動処理を実行する。一方、制御装置8は、起動している状態において電力良好信号の受信が停止すると、制御装置8のシャットダウン処理を実行する。つまり、充電状態の良好の通知は、起動の許可通知に相当する。充電状態の不良の通知は、シャットダウンの勧告通知に相当する。
【0034】
電源制御器33は、電力供給信号のオン及びオフを切り替えることによって、負荷への電力の供給及び供給停止を制御する。具体的には、電力供給信号がオンにされると、電源制御装置3は、蓄電池2の電力を制御装置8へ供給する。電力供給信号がオフにされると、電源制御装置3は、蓄電池2から制御装置8への電力供給を停止する。
【0035】
電源制御器33は、状態通知器32が充電状態の不良を通知してから充電状態の良好を通知するまでの間に負荷への電力の供給を停止し、状態通知器32が充電状態の良好を通知するときに負荷への電力の供給を開始する。詳しくは、状態通知器32が電力良好信号の出力をオフにすると、制御装置8はシャットダウン処理を実行する。制御装置8は、シャットダウン後に待機状態、即ち、スタンバイ状態となるので、制御装置8の消費電力が低減する。発電機1の発電電力が制御装置8の消費電力を上回ると、蓄電池2の充電状態が回復する。充電状態が第2基準を上回ると、状態通知器32が電力良好信号の出力をオンにする。制御装置8は、電力良好信号の出力オンに応じて、起動処理を実行する。ここで、電源制御器33は、状態通知器32が電力良好信号の出力をオフにしてからオンにするまでの間に、制御装置8への電力供給を一旦停止する。そして、状態通知器32が電力良好信号の出力をオンにするときに、電源制御器33は、制御装置8への電力供給を再開する。充電状態の悪化によって制御装置8がシャットダウンした後には、充電状態が回復して制御装置8が再び起動するとしても、制御装置8への電力供給がずっと維持されるわけではなく、電力供給が一旦停止した後に制御装置8の起動に合わせて再開される。制御装置8は、パワーオンリセット機能を有するので、電力供給が停止した状態から再開されることによって、内部状態の初期化を適切に実行、即ち、起動処理を適切に実行することができる。
【0036】
また、電源制御器33は、状態通知器32が充電状態の不良を通知した場合、負荷におけるシャットダウン処理が完了した後に負荷への電力の供給を停止する。つまり、状態通知器32による充電状態の不良の通知後の電力供給の停止のタイミングは、制御装置8のシャットダウン処理が完了した後である。電源制御器33は、状態通知器32が充電状態の不良の通知を制御装置8へ通知した後、制御装置8のシャットダウン処理の完了を待ってから、制御装置8への電力供給を停止する。充電状態が悪化して状態通知器32が制御装置8へ充電状態の不良を通知しても、制御装置8への電力供給が直ちに停止されるわけではなく、制御装置8がシャットダウン処理を完了するまでの間は制御装置8への電力供給が維持される。これにより、制御装置8は、シャットダウン処理を適切に実行することができる。
【0037】
具体的には、電源制御器33は、シャットダウン処理の完了に要する以上の時間が経過したことを充電状態が第1基準と第2基準との間の第3基準を上回ることによって判定する。つまり、制御装置8がシャットダウンすると、制御装置8の消費電力が低減するため、発電機1の発電電力が制御装置8の消費電力を上回り、蓄電池2の充電状態は回復し得る。この場合、発電機1の発電電力が或る程度予測できるため、蓄電池2の充電状態の回復に要する時間も或る程度予測できる。制御装置8のシャットダウン処理の完了に要する大体の時間は既知である。つまり、充電状態の不良が通知されてから制御装置8のシャットダウン処理が完了するまでの時間に蓄電池2の充電状態がどの程度回復するのかは概ね予測できる。第3基準電圧V3は、回復すると予測される電圧よりも高い電圧である。そのため、電源制御器33は、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3を上回ることをもって制御装置8のシャットダウン処理の完了に要する以上の時間が経過したと判定し、制御装置8への電力供給を停止する。これにより、電源制御器33は、シャットダウン処理の完了に要する以上の時間の経過の判定を、ソフトウェア的な処理を要さずに、回路、即ち、ハードウェアによって実現できる。
【0038】
さらに、電源制御器33は、充電状態が第1基準よりも低い第4基準を下回った場合に負荷への電力の供給を停止する。つまり、蓄電池2の充電状態が第1基準を下回ることによって制御装置8がシャットダウンした後は、充電状態が回復する場合も悪化する場合も制御装置8への電力供給が停止される。発電機1による発電が十分でない場合には、制御装置8がシャットダウンしても、蓄電池2の充電状態が十分に回復しない場合もあり得る。蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回ると、電源制御器33は、制御装置8への電力供給を停止する。第4基準電圧V4は、シャットダウンの契機となる第1基準電圧V1よりも低い電圧である。制御装置8はシャットダウン後に待機状態、即ち、スタンバイ状態となるため、制御装置8は、待機電力を消費し続ける。蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回ると、制御装置8への待機電力の供給も停止されるので、蓄電池2の過放電が防止される。
【0039】
このように、充電状態が第1基準よりも低い第4基準を下回った場合に負荷への電力の供給が停止される構成において、電源制御器33は、状態通知器32が充電状態の不良を通知した後、充電状態が第4基準を下回らなくても前述のように負荷への電力の供給を一旦停止する。制御装置8のシャットダウン後に充電状態が回復しない場合には、電力消費の抑制のために電力供給が停止される一方、制御装置8のシャットダウン後に充電状態が回復した場合には、制御装置8の適切な起動処理のために電力停止が一旦停止される。
【0040】
続いて、電源制御装置3の概略的な回路構成について説明する。
図4は、電源制御装置3の回路図である。
【0041】
電源制御装置3は、第1コンパレータ41と第2コンパレータ42と第3コンパレータ43と第4コンパレータ44と第1内部基準電源45と第2内部基準電源46と第1RSラッチ回路47と第2RSラッチ回路48とNOT回路49とOR回路410と第1AND回路411と第2AND回路412とを有する。第1コンパレータ41、第2コンパレータ42、第3コンパレータ43、第4コンパレータ44、第1内部基準電源45及び第2内部基準電源46は、充電状態判定器31に相当する。第1RSラッチ回路47、第2RSラッチ回路48、NOT回路49、OR回路410及び第1AND回路411は、状態通知器32に相当する。第1RSラッチ回路47、第2RSラッチ回路48、NOT回路49、OR回路410及び第2AND回路412は、電源制御器33に相当する。
【0042】
第1コンパレータ41において、プラス入力端子には、第1内部基準電源45が印加され、マイナス入力端子には、蓄電池2の分圧された電圧が印加される。具体的には、第1内部基準電源45の出力電圧を第1内部基準電圧とする。マイナス入力端子に印加される電圧は、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4と一致するときに第1内部基準電圧と等しくなるように分圧された蓄電池2の電圧である。つまり、第1コンパレータ41は、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4よりも低い場合にHigh信号を出力し、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4よりも高い場合にLow信号を出力する。
【0043】
第2コンパレータ42において、プラス入力端子には、蓄電池2の分圧された電圧が印加され、マイナス入力端子には、第1内部基準電源45が印加される。具体的には、プラス入力端子に印加される電圧は、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2と一致するときに第1内部基準電圧と等しくなるように分圧された蓄電池2の電圧である。つまり、第2コンパレータ42は、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2よりも高い場合にHigh信号を出力し、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2よりも低い場合にLow信号を出力する。
【0044】
第3コンパレータ43において、プラス入力端子には、第2内部基準電源46が印加され、マイナス入力端子には、蓄電池2の分圧された電圧が印加される。具体的には、第2内部基準電源46の出力電圧を第2内部基準電圧とする。マイナス入力端子に印加される電圧は、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1と一致するときに第2内部基準電圧と等しくなるように分圧された蓄電池2の電圧である。つまり、第3コンパレータ43は、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1よりも低い場合にHigh信号を出力し、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1よりも高い場合にLow信号を出力する。
【0045】
第4コンパレータ44において、プラス入力端子には、蓄電池2の分圧された電圧が印加され、マイナス入力端子には、第2内部基準電源46が印加される。具体的には、プラス入力端子に印加される電圧は、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3と一致するときに第2内部基準電圧と等しくなるように分圧された蓄電池2の電圧である。つまり、第4コンパレータ44は、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3よりも高い場合にHigh信号を出力し、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3よりも低い場合にLow信号を出力する。
【0046】
第1RSラッチ回路47のR入力端子R1には、第1コンパレータ41の出力が入力される。第1RSラッチ回路47のS入力端子S1には、第2コンパレータ42の出力が入力される。第1RSラッチ回路47は、第1コンパレータ41の出力がLowの間に第2コンパレータ42の出力がHighとなった場合に、出力端子Q1からHigh信号を出力する。その後、第2コンパレータ42の出力がLowに戻っても、第1RSラッチ回路47は、High信号の出力を保持する。第1RSラッチ回路47は、第2コンパレータ42の出力がLowの間に第1コンパレータ41の出力がHighとなった場合に、出力端子Q1からLow信号を出力する。その後、第1コンパレータ41の出力がLowに戻っても、第1RSラッチ回路47は、Low信号の出力を保持する。
【0047】
つまり、第1RSラッチ回路47は、High信号を出力する状態から蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回るとLow信号を出力し、その後、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回るとHigh信号の出力する。
【0048】
第2RSラッチ回路48のR入力端子R2には、第3コンパレータ43の出力が入力される。第2RSラッチ回路48のS入力端子S2には、第2コンパレータ42の出力が入力される。第2RSラッチ回路48は、第3コンパレータ43の出力がLowの間に第2コンパレータ42の出力がHighとなった場合に、出力端子Q2からHigh信号を出力する。その後、第2コンパレータ42の出力がLowに戻っても、第2RSラッチ回路48は、High信号の出力を保持する。第2RSラッチ回路48は、第2コンパレータ42の出力がLowの間に第3コンパレータ43の出力がHighとなった場合に、出力端子Q2からLow信号を出力する。その後、第3コンパレータ43の出力がLowに戻っても、第2RSラッチ回路48は、Low信号の出力を保持する。
【0049】
つまり、第2RSラッチ回路48は、High信号を出力する状態から蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回るとLow信号を出力し、その後、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回るとHigh信号を出力する。
【0050】
NOT回路49には、第4コンパレータ44の出力が入力される。NOT回路49は、第4コンパレータ44の出力を反転させた信号を出力する。
【0051】
OR回路410には、第2RSラッチ回路48の出力とNOT回路49の出力とが入力される。第4コンパレータ44の出力がHighで且つ第2RSラッチ回路48の出力がLowの場合に、OR回路410は、Low信号を出力する。それ以外の場合には、OR回路410は、High信号を出力する。
【0052】
第1AND回路411には、第1RSラッチ回路47の出力と第2RSラッチ回路48の出力とが入力される。第1AND回路411は、第1RSラッチ回路47及び第2RSラッチ回路48の出力が共にHighの場合にはHigh信号を出力し、それ以外の場合にはLow信号を出力する。第1AND回路411の出力信号が電力良好信号である。
【0053】
つまり、第1AND回路411は、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回るとHigh信号、即ち、電力良好信号を出力し、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回るとLow信号を出力、即ち、電力良好信号の出力を停止する。
【0054】
第2AND回路412には、第1RSラッチ回路47の出力とOR回路410の出力とが入力される。第2AND回路412は、第1RSラッチ回路47及びOR回路410の出力が共にHighの場合にはHigh信号を出力し、それ以外の場合にはLow信号を出力する。第2AND回路412の出力信号が電力供給信号である。
【0055】
つまり、第2AND回路412は、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回った場合、又は、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回った後に第3基準電圧V3を上回った場合にLow信号を出力、即ち、電力供給信号の出力を停止し、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回った場合にHigh信号を出力、即ち、電力供給信号を出力する。
【0056】
このように構成された電源制御装置3の動作について説明する。
図5は、電源制御装置3による電源制御のフローチャートである。
図6は、状態通知器32及び電源制御器33の動作例を示すタイミングチャートである。
図7は、状態通知器32及び電源制御器33の別の動作例を示すタイミングチャートである。
【0057】
通常、発電機1が発電して蓄電池2を充電する一方、蓄電池2は制御装置8へ電力を供給する。発電機1による発電電力と制御装置8の消費電力とのバランスによって、蓄電池2の充電状態は変化する。例えば、蓄電池2の電圧は、第1基準電圧V1より高く且つ第3基準電圧V3よりも低いものとする。状態通知器32は、電力良好信号を出力し、電源制御器33は、電力供給信号を出力している。すなわち、電源制御装置3が蓄電池2の電力を制御装置8へ供給し、制御装置8は通常の処理を行っている。例えば、制御装置8は、通常の処理として、渦電流の検出等の所定の処理を適宜実行する。
【0058】
電源制御装置3の充電状態判定器31は、ステップS101において、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1よりも低いか否かを判定する。蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1以上の場合には、充電状態判定器31がステップS101を繰り返す。つまり、充電状態判定器31は、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回らないか監視する。蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1よりも低い場合には、状態通知器32は、ステップS102において、電力良好信号の出力を停止する。
【0059】
例えば、発電機1の発電量が低下すると、
図6及び
図7に示すように、蓄電池2の充電状態が低下し、蓄電池2の電圧が低下し得る。時間T1,T4において蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回ると、状態通知器32は、電力良好信号の出力を停止する。電力良好信号の出力の停止は、充電状態の不良を意味する。制御装置8が電源電圧の低下した状態で渦電流の検出を行うと、検出精度が低下する虞がある。また、蓄電池2の充電状態がさらに低下すると、制御装置8への電力供給が急に遮断される虞もある。そのため、制御装置8は、電力良好信号の出力が停止されると、シャットダウン処理を開始する。
【0060】
このとき、電源制御器33は、電力供給信号の出力を継続する。制御装置8へは、蓄電池2からの電力供給が維持される。ただし、制御装置8がシャットダウンすると、制御装置8の消費電力は待機電力だけになるので、蓄電池2の電力消費が低下する。
【0061】
状態通知器32が電力良好信号の出力を停止した後、充電状態判定器31は、ステップS103において、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4よりも低いか否かを判定する。蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4よりも低い場合には、電源制御器33は、ステップS105において、電力供給信号の出力を停止する。
【0062】
例えば、発電機1の発電量が非常に少ない場合には、制御装置8がシャットダウンしてもなお、蓄電池2の充電状態が悪化する場合がある。そのような場合には、
図6に示すように、蓄電池2の電圧は、第4基準電圧V4を下回る場合がある。時間T2において蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回ると、電源制御器33は、電力供給信号の出力を停止する。すなわち、蓄電池2から制御装置8への電力供給が停止される。制御装置8への電力供給が停止されると、蓄電池2の電力消費がさらに低下する。これにより、蓄電池2の過放電が防止される。
【0063】
制御装置8への電力供給が停止された後、充電状態判定器31は、ステップS106において、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2よりも高いか否かを判定する。蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2よりも高い場合には、電源制御器33は、ステップS107において電力供給信号を出力し、状態通知器32は、ステップS108において電力良好信号を出力する。
【0064】
例えば、蓄電池2の電力消費の低下及び発電機1の発電量の回復等によって、
図6に示すように、蓄電池2の充電状態はやがて回復し得る。時間T3において蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回ると、電源制御器33は、電力供給信号の出力を開始し、状態通知器32は、電力良好信号の出力を開始する。
【0065】
これにより、制御装置8への電力供給が開始される。それに加えて、制御装置8は、電力良好信号を受信することによって起動処理を開始する。制御装置8は、パワーオンリセット機能を有するので、起動処理において電源電圧を監視する。制御装置8への電力供給が停止した状態から開始されるので、制御装置8の電源電圧は、初期化のための閾値を下から上へ通過して上昇する。これにより、制御装置8は、内部状態を適切に初期化し、起動処理を適切に実行することができる。起動後、制御装置8は、渦電流の検出等の所定の動作を適宜実行する。
【0066】
一方、ステップS103において蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4以上の場合には、充電状態判定器31は、ステップS104において、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3よりも高いか否かを判定する。蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3よりも高い場合には、電源制御器33は、ステップS105において、電力供給信号の出力を停止する。
【0067】
尚、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3以下の場合には、充電状態判定器31は、ステップS103へ戻る。つまり、充電状態判定器31は、ステップS103及びS104を繰り返すことによって、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4以上で且つ第3基準電圧以下の範囲から外れることを監視する。
【0068】
ステップS105以降の処理は、前述の通りである。つまり、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2よりも高くなると、電源制御器33はステップS107において電力供給信号を出力し、状態通知器32はステップS108において電力良好信号を出力する。
【0069】
例えば、制御装置8がシャットダウンすると、制御装置8の消費電力は待機電力だけになるので、蓄電池2の電力消費が低下する。発電機1の発電電力と蓄電池2の電力消費とのバランスによっては、蓄電池2の充電状態が回復し得る。つまり、
図7に示すように、蓄電池2の電圧は、第1基準電圧V1を下回った後に第4基準電圧V4まで低下することなく、上昇に転じる。蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回らないので、蓄電池2から制御装置8への電力供給は継続される。
【0070】
やがて、時間T5において蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3を上回ると、電源制御器33は、電力供給信号の出力を停止する。すなわち、蓄電池2から制御装置8への電力供給が停止される。これにより、制御装置8の電源電圧が略ゼロになる。
【0071】
その後、時間T6において蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回ると、電源制御器33は、電力供給信号の出力を開始し、状態通知器32は、電力良好信号の出力を開始する。
【0072】
制御装置8への電力供給が開始されると共に、制御装置8は、電力良好信号を受信することによって起動処理を開始する。制御装置8への電力供給が停止した状態から開始されるので、制御装置8の電源電圧は、初期化のための閾値を下から上へ通過して上昇する。これにより、制御装置8は、内部状態を適切に初期化し、起動処理を適切に実行することができる。起動後、制御装置8は、渦電流の検出等の所定の動作を適宜実行する。
【0073】
その後は、前述の如く、発電機1による発電電力と制御装置8の消費電力とのバランスによって、蓄電池2の充電状態は変動する。蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回ると、電源制御装置3は、前述のような制御を実行する。
【0074】
以上のように、電源制御装置3は、蓄電池2の電圧が第1基準電圧V1を下回ると充電状態の不良を制御装置8、即ち、負荷へ通知し、充電状態の不良に対応する動作を制御装置8へ促す。例えば、制御装置8は、シャットダウンする。これにより、電力不足に起因する制御装置8の不安定な動作を防止することができる。特に、再生可能エネルギ、即ち、自然エネルギから電気を生成する発電機1においては、発電量が安定しない場合がある。そのため、このような制御を行うことが有効である。
【0075】
その後、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3を上回るか、又は、第4基準電圧V4を下回ると、電源制御装置3は、制御装置8への電力供給を停止する。蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3を上回った場合の電力供給の停止は、その後の制御装置8の適切な起動に寄与する。つまり、その後、蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回ると、電源制御装置3は、制御装置8へ電力の供給を再開すると共に、充電状態の良好を通知する。これを受けて、制御装置8は、起動処理を実行する。電源電圧が起動に先立って一旦ゼロになっているので、電源電圧が適切に立ち上がり、制御装置8は、適切に起動することができる。
【0076】
一方、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回った場合の電力供給の停止によって、蓄電池2の過放電を防止できる。尚、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回った後に回復する場合には、制御装置8への電力供給が既に停止されているので、電源制御装置3は、第3基準電圧V3の判定は行わない。蓄電池2の電圧が第2基準電圧V2を上回ると、電源制御装置3は、制御装置8へ電力の供給を再開すると共に、充電状態の良好を通知する。
【0077】
その結果、蓄電池2の充電状態に起因する制御装置8の不安定な動作を防止すると共に、制御装置8を蓄電池2の充電状態に応じて適切にシャットダウン及び起動させることができる。特に、PECは比較的大きな動作電流を要するので、蓄電池2の充電状態が悪化すると、PECの検出精度に影響を与え得る。前述の電源制御によって、制御装置8は、PECによる渦電流の検出を適切に実行することができる。さらに、再生可能エネルギから電力を生成する発電機1を採用することによって、大掛かりな電源工事が不要となり、電源確保のためのコストを低減することができる。
【0078】
さらに、電源制御装置3は、蓄電池2の充電状態の不良を制御装置8へ通知する際にすぐには、制御装置8への電力供給を停止しない。前述の如く、電源制御装置3は、電力良好信号の出力を停止した後は、蓄電池2の電圧が回復する場合も悪化する場合も、しばらくしてから制御装置8への電力供給を停止する。つまり、電源制御装置3は、充電状態の不良に対応する、制御装置8の処理、即ち、シャットダウン処理が完了するまでは、制御装置8への電力供給を継続する。その結果、充電状態の不良に対応する処理を制御装置8に適切に実行させることができる。
【0079】
具体的には、電源制御装置3は、電力良好信号の出力を停止した後、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3を上回った場合に、制御装置8への電力供給を停止する。第3基準電圧V3は、電力良好信号の出力の停止の基準となる第1基準電圧V1よりも高い電圧である。さらに、第3基準電圧V3は、電力良好信号の出力が停止されてから蓄電池2の電圧が順調に回復し、制御装置8の充電状態の不良に対応する処理が完了した時に到達する電圧よりも高い電圧である。つまり、蓄電池2の電圧が第3基準電圧V3まで達したときには、電力良好信号の出力が停止されてから制御装置8の充電状態の不良に対応する処理の完了に要する以上の時間が経過したと判定することができる。
【0080】
一方、電源制御装置3は、電力良好信号の出力を停止した後、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4を下回った場合に、制御装置8への電力供給を停止する。第4基準電圧V4は、電力良好信号の出力の停止の基準となる第1基準電圧V1よりも低い電圧である。また、第4基準電圧V4は、電力良好信号の出力が停止されてから蓄電池2の電圧がさらに低下した場合に、制御装置8の充電状態の不良に対応する処理が完了した時に到達する電圧よりも低い電圧である。つまり、蓄電池2の電圧が第4基準電圧V4まで達したときには、電力良好信号の出力が停止されてから制御装置8の充電状態の不良に対応する処理の完了に要する以上の時間が経過したと判定することができる。さらに、第4基準電圧V4は、蓄電池2が過放電となる電圧よりも高い電圧である。つまり、蓄電池2が過放電となる前に、蓄電池2から制御装置8への電力供給が停止される。
【0081】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0082】
前記実施形態について、以下のような構成としてもよい。
【0083】
例えば、電源制御装置3が電力を供給する負荷は、測定システム7の制御装置8に限定されない。任意の負荷が、電源制御装置3の負荷として採用され得る。
【0084】
制御装置8が制御する処理は、渦電流の検出に限定されない。制御装置8の処理がパルス渦流探傷である場合、対象物9は配管に限定されない。対象物9は、渦電流が発生する限り任意の物体が採用され得る。さらに、プローブ71は、前述の構成に限られない。例えば、プローブ71は、2組の励磁コイル72及び検出コイル73を備えているが、励磁コイル72及び検出コイル73は、1組でもよく、3組以上であってもよい。励磁コイル72と検出コイル73とはそれぞれの軸心が一直線状になるように配置されていなくてもよい。励磁コイル72又は検出コイル73の内部にコアが設けられてもよい。さらに、プローブ71の検出部は、検出コイル73に限定されない。検出部は、対象物9の渦電流を直接的又は間接的に検出できるものであればよく、例えば、ホール素子であってもよい。
【0085】
充電状態の不良に対応する負荷の処理は、シャットダウン処理に限定されない。例えば、充電状態の不良に対応する負荷の処理は、動作停止処理(シャットダウンまでは行わない)など、電源の切断に備えた状態への遷移処理であり得る。また、充電状態の良好に対応する負荷の処理は、起動処理に限定されない。充電状態の良好に対応する負荷の処理は、電源供給が停止された状態からの開始によって適切に実行される処理であることが好ましい。充電状態の良好に対応する負荷の処理は、通常処理であり得る。
【0086】
発電機1は、再生可能エネルギを使って電気を生成するものに限定されない。発電機1が再生可能エネルギを使って電気を生成するものでなくても、蓄電池2の充電状態は変動し得る。そのため、再生可能エネルギを使った発電機1でなくても、本開示の技術は有効である。発電機1は、熱エネルギを電気エネルギに変換する場合、制御装置8の対象物9以外の高温場所に設置されてもよい。
【0087】
蓄電池2は、リチウムイオン電池に限定されず、任意の二次電池が採用され得る。
【0088】
充電状態判定器31は、蓄電池2の充電状態を蓄電池2のSOC(State Of Charge)によって判定してもよい。その場合、第1基準等は、SOCで表される。
【0089】
また、電源制御において、蓄電池2の充電状態が第1基準を下回った後、充電状態が第4基準を下回った場合の処理は省略されてもよい。電源制御器33は、蓄電池2の充電状態が第1基準を下回った後に充電状態が第3基準を上回った場合に、負荷への電力供給を停止すればよい。
【0090】
電源制御装置3の回路構成は、一例に過ぎない。例えば、第4コンパレータ44のプラス入力端子とマイナス入力端子との入力が入れ替えられた場合、NOT回路49が省略される。
【0091】
電源制御装置3において、電源制御器33は、状態通知器32が充電状態の不良を通知してからの経過時間によってシャットダウン処理の完了を判定してもよい。つまり、電源制御装置3は、
図4の回路図で示される回路を有さず、同様の機能を実現するようにプログラムされたプロセッサ等を有し、負荷のシャットダウン処理の完了の判定をソフトウェア処理によって判定してもよい。
【0092】
フローチャートは、一例に過ぎない。フローチャートにおけるステップを適宜、変更、置き換え、付加、省略等を行ってもよい。また、フローチャートにおけるステップの順番を変更したり、直列的な処理を並列的に処理したりしてもよい。例えば、
図5のフローチャートにおいて、ステップS103が省略され、ステップS102の後にステップS104が実行されてもよい。その場合、蓄電池2の過放電の防止は、別の処理で実現されてもよい。また、ステップS107及びS108は、順番が変更されてもよく、並列的に処理されてもよい。
【0093】
本明細書中に記載されている構成要素により実現される機能は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、汎用プロセッサ、特定用途プロセッサ、集積回路、ASICs(Application Specific Integrated Circuits)、CPU(a Central Processing Unit)、従来型の回路、及び/又はそれらの組合せを含む、回路(circuitry)又は演算回路(processing circuitry)において実装されてもよい。プロセッサは、トランジスタ及びその他の回路を含み、回路又は演算回路とみなされる。プロセッサは、メモリに格納されたプログラムを実行する、プログラマブルプロセッサ(programmed processor)であってもよい。
【0094】
本明細書において、回路(circuitry)、ユニット、手段は、記載された機能を実現するようにプログラムされたハードウェア、又は実行するハードウェアである。当該ハードウェアは、本明細書に開示されているあらゆるハードウェア、又は、当該記載された機能を実現するようにプログラムされた、又は、実行するものとして知られているあらゆるハードウェアであってもよい。
【0095】
当該ハードウェアが回路(circuitry)のタイプであるとみなされるプロセッサである場合、当該回路、手段、又はユニットは、ハードウェアと、当該ハードウェア及び又はプロセッサを構成する為に用いられるソフトウェアの組合せである。
【0096】
本開示の技術をまとめると、以下のようになる。
【0097】
[1]蓄電池2の電力を負荷へ供給する電源制御装置3は、前記蓄電池2の充電状態の良否を前記負荷へ通知する状態通知器32と、前記蓄電池2から前記負荷への電力の供給及び供給停止を切り替える電源制御器33とを備え、前記状態通知器32は、前記充電状態が所定の第1基準を下回った場合に前記充電状態が不良であることを前記負荷へ通知する一方、前記充電状態が前記第1基準よりも高い第2基準を上回った場合に前記充電状態が良好であることを前記負荷へ通知し、前記電源制御器33は、前記状態通知器32が前記充電状態の不良を通知してから前記充電状態の良好を通知するまでの間に前記負荷への電力の供給を停止し、前記状態通知器32が前記充電状態の良好を通知するときに前記負荷への電力の供給を開始する。
【0098】
この構成によれば、状態通知器32は、蓄電池2の充電状態が第1基準を下回った場合に充電状態の不良を負荷へ通知する一方、蓄電池2の充電状態が第2基準を上回った場合に充電状態の良好を負荷へ通知する。そして、電源制御器33は、状態通知器32が負荷へ充電状態の不良を通知してから充電状態の良好を通知するまでの間に負荷への電力供給を一旦停止し、状態通知器32が充電状態の良好を負荷へ通知するときに負荷への電力供給を再開する。つまり、蓄電池2の充電状態が回復する場合において、電源制御器33は、蓄電池2の充電状態が第1基準を下回ってから第2基準を上回るまでの間に負荷への電力供給を一旦停止し、状態通知器32が充電状態の良好を負荷へ通知するのに合わせて負荷への電力供給を開始する。
【0099】
蓄電池2の充電状態が第1基準を下回った場合に、負荷は、充電状態の不良を通知される。その後、蓄電池2の充電状態が回復して第2基準を上回った場合には、負荷は、充電状態の良好を通知される。通常、電力が供給される負荷は、蓄電池2の充電状態の不良が通知されるとシャットダウン処理を行い、充電状態の良好が通知されると起動処理をするものが多い。そのような負荷は、状態通知器32からの充電状態の不良の通知を受けて、シャットダウン処理を実行し、状態通知器32からの充電状態の良好の通知を受けて、起動処理を実行することができる。このように負荷がシャットダウン処理を実行してから起動処理を実行するまでの間に、負荷への電力供給が一旦停止されてから再開される。つまり、負荷に電力が継続的に供給されている状態において、負荷が起動処理を実行するのではない。負荷が起動処理を実行する際に、負荷への電力供給が停止された状態から電力供給が開始されるので、起動処理を適切に実行することができる。その結果、電源制御装置3は、蓄電池2の充電状態が悪化して制御装置8がシャットダウンした後に蓄電池2の充電状態が回復した場合に、制御装置8を適切に起動させることができる。
【0100】
[2] [1]に記載の電源制御装置3において、前記電源制御器33は、前記状態通知器32が前記充電状態の不良を通知した場合、前記負荷におけるシャットダウン処理が完了した後に前記負荷への電力の供給を停止する。
【0101】
この構成によれば、蓄電池2の充電状態の悪化のために負荷がシャットダウンする際に、負荷がシャットダウン処理を適切に実行できる。前述の如く、電源制御器33は、状態通知器32が負荷へ充電状態の不良を通知してから充電状態の良好を通知するまでの間に負荷への電力供給を一旦停止する。このとき、電源制御器33は、負荷におけるシャットダウン処理が完了した後に負荷への電力の供給を停止する。状態通知器32から負荷への充電状態の不良の通知と同時に、電源制御器33が負荷への電力供給を停止すると、負荷が適切にシャットダウンにできない虞がある。電源制御器33は、負荷のシャットダウン処理が完了を待ってから電力供給を停止することによって、負荷にシャットダウン処理を適切に実行させることができる。
【0102】
尚、「シャットダウン処理が完了した後に」は、シャットダウン処理の完了後であればいつでもよく、シャットダウン処理の完了後すぐを意味するものではない。
【0103】
[3] [1]又は[2]に記載の電源制御装置3において、前記電源制御器33は、前記シャットダウン処理の完了に要する以上の時間が経過したことを前記充電状態が前記第1基準と前記第2基準との間の第3基準を上回ることによって判定する。
【0104】
この構成によれば、負荷のシャットダウン処理の完了後に電力供給を停止する構成を回路によって実現することができる。つまり、充電状態の不良を通知してからシャットダウン処理が完了するまでの間に蓄電池2の充電状態が第1基準からどの程度まで回復するかは或る程度予測できる。第3基準は、回復が見込まれる充電状態よりも高い充電状態に設定される。これにより、蓄電池2の充電状態に基づいて、シャットダウン処理の完了に要する以上の時間の経過を判定することができる。
【0105】
[4] [1]乃至[3]の何れか1つに記載の電源制御装置3において、前記電源制御器33は、前記充電状態が前記第1基準よりも低い第4基準を下回った場合に前記負荷への電力の供給を停止する。
【0106】
この構成によれば、充電状態が第4基準を下回った場合には負荷への電力供給が停止されるので、充電状態のさらなる悪化が抑制される。その結果、蓄電池2の過放電を防止できる。
【0107】
[5] [1]乃至[4]の何れか1つに記載の電源制御装置3において、前記電源制御器33は、前記状態通知器32が前記充電状態の不良を通知した後は、前記充電状態が前記第4基準を下回らなくても前記負荷への電力の供給を一旦停止する。
【0108】
この構成によれば、充電状態が第4基準を下回った場合にも、充電状態が第4基準を下回らずに回復する場合にも、負荷への電力供給が停止される。前者は、蓄電池2の過放電防止のためであり、後者は、負荷が充電状態の良好に対応する処理を適切に実行するためである。
【0109】
[6]電源システム100は、再生可能エネルギから電気を生成する発電機1と、前記発電機1によって発電された電力を貯める蓄電池2と、[1]乃至[5]の何れか1つに記載の電源制御装置3とを備える。
【0110】
この構成によれば、状態通知器32は、蓄電池2の充電状態が第1基準を下回った場合に充電状態の不良を負荷へ通知する一方、蓄電池2の充電状態が第2基準を上回った場合に充電状態の良好を負荷へ通知する。そして、電源制御器33は、状態通知器32が負荷へ充電状態の不良を通知してから充電状態の良好を通知するまでの間に負荷への電力供給を一旦停止し、状態通知器32が充電状態の良好を負荷へ通知するときに負荷への電力供給を再開する。
【0111】
蓄電池2の充電状態が第1基準を下回った場合に、負荷は、充電状態の不良を通知されるので、充電状態の不良に対応する処理を実行することができる。その後、蓄電池2の充電状態が回復して第2基準を上回った場合には、負荷は、充電状態の良好を通知されるので、充電状態の良好に対応する処理を実行することができる。このように負荷が充電状態の不良に対応する処理を実行してから充電状態の良好に対応する処理を実行するまでの間に、負荷への電力供給が一旦停止されてから再開される。負荷が充電状態の良好に対応する処理を実行する際に、負荷への電力供給が停止された状態から再開されるので、充電状態の良好に対応する処理を適切に実行することができる。
【符号の説明】
【0112】
100 電源システム
2 蓄電池
3 電源制御装置
32 状態通知器
33 電源制御器
8 制御装置(負荷)