(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074725
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】画像投影装置
(51)【国際特許分類】
G02B 27/01 20060101AFI20240524BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240524BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20240524BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20240524BHJP
B60K 35/23 20240101ALI20240524BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B5/30
G02B5/32
G02B5/18
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186073
(22)【出願日】2022-11-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001667
【氏名又は名称】弁理士法人プロウィン
(72)【発明者】
【氏名】村上 一臣
(72)【発明者】
【氏名】籾山 大輔
【テーマコード(参考)】
2H149
2H199
2H249
3D344
【Fターム(参考)】
2H149AA01
2H149BA05
2H149BA22
2H149DA03
2H149DA04
2H149DA12
2H149FA21W
2H199DA03
2H199DA12
2H199DA15
2H199DA19
2H199DA23
2H199DA25
2H199DA26
2H199DA28
2H199DA30
2H199DA41
2H199DA46
2H249AA04
2H249AA14
2H249AA26
2H249AA60
2H249AA61
2H249CA03
2H249CA22
3D344AA03
3D344AA26
3D344AC25
(57)【要約】
【課題】投影光学部材の部品点数の増加を抑制し、光学部材の小型化を図りながら、複数の画像を投影することが可能な画像投影装置を提供する。
【解決手段】虚像(P1,P2)を表示するための表示部(WS)に対して投影画像を投影する画像投影装置(100)であって、第1回転方向の円偏光である第1画像光と、第1回転方向と逆回転の円偏光である第2画像光とを照射する画像照射部(10)と、偏光方向によって異なる屈折率分布を有する偏光ホログラフィック光学素子(20)と、偏光ホログラフィック光学素子(20)を介した第1画像光および第2画像光が入射し、第1画像光および第2画像光を表示部(WS)に対して投影する投影光学部(30)を備える画像投影装置(100)。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、
第1回転方向の円偏光である第1画像光と、前記第1回転方向と逆回転の円偏光である第2画像光とを照射する画像照射部と、
偏光方向によって異なる屈折率分布を有する偏光ホログラフィック光学素子と、
前記偏光ホログラフィック光学素子を介して前記第1画像光および前記第2画像光が入射し、前記第1画像光および前記第2画像光を前記表示部に対して投影する投影光学部を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光ホログラフィック光学素子は、レンズ機能を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光ホログラフィック光学素子は、回折格子機能を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項4】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光ホログラフィック光学素子は、レンズ機能および回折格子機能を備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項5】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光ホログラフィック光学素子と前記投影光学部の間において、前記第1画像光と前記第2画像光の光路が重なっていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光ホログラフィック光学素子よりも前記画像照射部側に、前記第1画像光と前記第2画像光の光路長を変更する光路変更部が配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項7】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記画像照射部は、第1画像および第2画像を表示して、所定方向の偏光を出射する画像表示部を有し、
前記画像表示部は、前記第1画像を表示する第1領域と、前記第2画像を表示する第2領域を備え、
前記第1領域に対向して配置された第1円偏光変換部と、
前記第2領域に対向して配置された第2円偏光変換部とを備えることを特徴とする画像投影装置。
【請求項8】
請求項7に記載の画像投影装置であって、
前記画像表示部は液晶表示装置であり、
前記第1円偏光変換部と前記第2円偏光変換部は、それぞれ四分の一波長板または四分の三波長板であり、ファスト軸およびスロー軸が前記所定方向と交差するように配置されていることを特徴とする画像投影装置。
【請求項9】
請求項1に記載の画像投影装置であって、
前記偏光ホログラフィック光学素子は、透過型の液晶ホログラフィック素子であることを特徴とする画像投影装置。
【請求項10】
請求項1から8の何れか一つに記載の画像投影装置であって、
前記虚像の結像位置は、前記第1画像光のほうが前記第2画像光よりも視点位置から遠いことを特徴とする画像投影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像投影装置に関し、特に複数の画像を投影するための画像投影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両内に各種情報を表示する装置として、アイコンを点灯表示する計器盤が用いられている。また、表示する情報量の増加とともに、計器盤に画像表示装置を埋め込むことや、計器盤全体を画像表示装置で構成することも提案されている。
【0003】
しかし、計器盤は車両のフロントガラス(ウィンドシールド)より下方に位置しているため、計器盤に表示された情報を運転者等の搭乗者が視認するには、運転中に視線を下方に移動させる必要があり好ましくない。そこで、フロントガラスに画像を投影して、搭乗者が車両の前方を視認したときに情報を読み取れるようにするヘッドアップディスプレイ(以下HUD:Head Up Display)のような画像投影装置が提案されている。(例えば、特許文献1,2を参照)。
【0004】
従来の画像投影装置は、画像照射部が画像を含んだ照射光を照射し、自由曲面ミラー等で照射光を反射させて、ウィンドシールド等の表示部を介して空間中に画像が結像するように搭乗者の視点の位置に到達させる。これにより、搭乗者は視点に入射した照射光によって、奥行き方向における結像位置に画像が表示されているように認識することができる。また、より多くの情報を提示するために、運転支援HUD装置を用いて複数の画像をウィンドシールドに投影することも提案されている。
【0005】
しかし、複数の画像を異なる距離に虚像として投影して結像するためには、画像照射部と投影光学系を複数備える必要があり、インストルメントパネル内に収容するためには設計の自由度が低いという問題があった。そこで本願出願人は、一つの画像照射部内に複数の画像を表示し、各画像の光路を分岐することで、省スペース化を図った画像投影装置を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-119248号公報
【特許文献2】特開2019-119262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の複数画像を投影する画像投影装置では、各画像の光路を変更して虚像の結像位置を分離するため、必要な光学部材の部品点数が増加してしまう。また、他の画像を投影するための光路を避けて光学部材を配置する必要があるため、小型化が困難であるという問題があった。
【0008】
そこで本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、投影光学部材の部品点数の増加を抑制し、光学部材の小型化を図りながら、複数の画像を投影することが可能な画像投影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の画像投影装置は、虚像を表示するための表示部に対して投影画像を投影する画像投影装置であって、第1回転方向の円偏光である第1画像光と、前記第1回転方向と逆回転の円偏光である第2画像光とを照射する画像照射部と、偏光方向によって異なる屈折率分布を有する偏光ホログラフィック光学素子と、前記偏光ホログラフィック光学素子を介して前記第1画像光および前記第2画像光が入射し、前記第1画像光および前記第2画像光を前記表示部に対して投影する投影光学部を備えることを特徴とする。
【0010】
このような本発明の画像投影装置では、偏光方向によって異なる屈折率分布を有する偏光ホログラフィック光学素子を介して、第1回転方向の円偏光である第1画像光と、逆回転の円偏光である第2画像光を表示部に投影することで、投影光学部材の部品点数の増加を抑制し、光学部材の小型化を図りながら、複数の画像を投影することが可能となる。
【0011】
また、本発明の一態様では、前記偏光ホログラフィック光学素子は、レンズ機能を備える。
【0012】
また、本発明の一態様では、前記偏光ホログラフィック光学素子は、回折格子機能を備える。
【0013】
また、本発明の一態様では、前記偏光ホログラフィック光学素子は、レンズ機能および回折格子機能を備える。
【0014】
また、本発明の一態様では、前記偏光ホログラフィック光学素子と前記投影光学部の間において、前記第1画像光と前記第2画像光の光路が重なっている。
【0015】
また、本発明の一態様では、前記偏光ホログラフィック光学素子よりも前記画像照射部側に、前記第1画像光と前記第2画像光の光路長を変更する光路変更部が配置されている。
【0016】
また、本発明の一態様では、前記画像照射部は、第1画像および第2画像を表示して、所定方向の偏光を出射する画像表示部を有し、前記画像表示部は、前記第1画像を表示する第1領域と、前記第2画像を表示する第2領域を備え、前記第1領域に対向して配置された第1円偏光変換部と、前記第2領域に対向して配置された第2円偏光変換部とを備える。
【0017】
また、本発明の一態様では、前記画像表示部は液晶表示装置であり、前記第1円偏光変換部と前記第2円偏光変換部は、それぞれ四分の一波長板または四分の三波長板であり、ファスト軸およびスロー軸が前記所定方向と交差するように配置されている。
【0018】
また、本発明の一態様では、前記偏光ホログラフィック光学素子は、透過型の液晶ホログラフィック素子である。
【0019】
また、本発明の一態様では、前記虚像の結像位置は、前記第1画像光のほうが前記第2画像光よりも視点位置から遠い。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、投影光学部材の部品点数の増加を抑制し、光学部材の小型化を図りながら、複数の画像を投影することが可能な画像投影装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
【
図2】画像表示部12における画像表示領域と、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bの位置関係の一例を示す図であり、
図2(a)は画像表示部12の模式平面図であり、
図2(b)は第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bの模式平面図である。
【
図3】レンズ機能を有する偏光ホログラフィック光学素子20での円偏光の進行方向について説明する図であり、
図3(a)は左回り円偏光の場合を示し、
図3(b)は右回り円偏光の場合を示す。
【
図4】第1実施形態に係る画像投影装置100で投影された虚像P1,P2の位置関係を示す模式斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る画像投影装置110の構成を示す模式図である。
【
図6】回折格子機能を有する偏光ホログラフィック光学素子50での円偏光の進行方向について説明する図であり、
図6(a)は左回り円偏光の場合を示し、
図6(b)は右回り円偏光の場合を示す。
【
図7】第2実施形態に係る画像投影装置110で投影された虚像P1,P2の位置関係を示す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付すものとし、適宜重複した説明は省略する。
図1は、本実施形態に係る画像投影装置100の構成を示す模式図である。
図1中に示した一点鎖線は後述する第1画像光の光路を示し、破線は第2画像光の光路を示している。
【0023】
図1に示すように、画像投影装置100は、画像照射部10と、偏光ホログラフィック光学素子20と、第1ミラー30と、外光カットフィルター40を備えている。
図1に示すように、画像投影装置100から投影された第1画像光と第2画像光は、ウィンドシールド(表示部)WSで反射されて運転者の視点位置に照射される。運転者は、第1画像光と第2画像光が入射してきた光路の延長上に結像された虚像P1,P2を視認する。
【0024】
図1に示した画像投影装置100では、各部と情報通信可能に接続された制御部を用いて、各部を制御している。制御部の構成は限定されないが、一例として情報処理を行うためのCPU(Central Processing Unit)や、メモリ装置、記録媒体、情報通信装置等を備えるものが挙げられる。制御部は、予め定められたプログラムに従って各部の動作を制御し、画像を含んだ情報(画像情報)を画像照射部10に送出する。
【0025】
画像照射部10は、制御部からの画像情報に基づいて、画像を含んだ光照射する部分である。
図1に示した例では、画像照射部10はバックライト11、画像表示部12、第1円偏光変換部13a、第2円偏光変換部13bを備えている。バックライト11は、画像表示部12に対して照射光を照射する部分であり、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)により光を照射するものを用いることができる。バックライト11が照射する光は白色が好ましいが、青色や緑色、赤色などの単色を発光するものを用いるとしてもよい。
【0026】
画像表示部12は、制御部からの画像信号に応じて投影画像を表示する部分である。画像表示部12に表示された投影画像に対して、バックライト11からの照射光が照射されることで、画像表示部12から第1画像光および第2画像光が照射される。画像表示部12の具体的構成は限定されず、例えば液晶表示装置等を用いることができる。後述するように画像表示部12は、遠方画像と近方画像をそれぞれ表示する遠方表示領域(第1領域)と近方表示領域(第2領域)を含んで構成されている。
【0027】
第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bは、画像表示部12から照射される第1画像光と第2画像光を透過して、円偏光に変換する部分である。第1円偏光変換部13aと第2円偏光変換部13bは、互いに逆回転の円偏光に変換するように設定されている。
【0028】
画像表示部12からの第1画像光および第2画像光が直線偏光していない場合には、所定方向の直線偏光だけを透過する偏光板と、四分の一波長板または四分の三波長板を組み合わせて、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bを構成する。画像表示部12として液晶表示装置を用いる場合には、画像表示部12から照射される第1画像光と第2画像光は共に所定方向に直線偏光しているため、別途偏光板を用いず、四分の一波長板または四分の三波長板で、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bを構成する。
【0029】
一例としては、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bに四分の一波長板を用い、所定方向の偏光方向に対して、四分の一波長板のファスト軸およびスロー軸がそれぞれ45度と-45度傾いて交差するように配置する。また、第1円偏光変換部13aと第2円偏光変換部13bの一方に四分の一波長板を用い、他方に四分の三波長板を用い、それぞれのファスト軸およびスロー軸が所定方向の偏光方向に対して45度傾いて交差するように配置するとしてもよい。
【0030】
図2は、画像表示部12における画像表示領域と、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bの位置関係の一例を示す図であり、
図2(a)は画像表示部12の模式平面図であり、
図2(b)は第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bの模式平面図である。
図2(a)に示すように、画像表示部12では、画像を表示可能な全表示領域に対して、遠方表示領域(第1領域)12aおよび近方表示領域(第2領域)12bにそれぞれ遠方画像(第1画像)と近方画像(第2画像)が表示される。また、
図1および
図2(b)に示すように、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bは、それぞれ画像表示部12の遠方表示領域12aと近方表示領域12bに重ねて配置される。
【0031】
ここで、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bを画像表示部12に重ねて配置するとは、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bを配置した領域が平面視において画像表示部12の画像表示領域と重複することを意味している。また、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bが画像表示部12と接触している場合も非接触の場合も重ねて配置に含まれるものとする。また、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bと画像表示部12の間に光を透過する光学部材や、両者の間隔を維持するための保持部材を介在させている場合も、重ねて配置に含まれる。
【0032】
偏光ホログラフィック光学素子20は、偏光方向によって異なる屈折率分布を有する光学部材である。偏光ホログラフィック光学素子20の具体例は限定されないが、一例としてAPPLIED PHYSICS LETTERS Vol. 82, No.3, 328-330ページに記載された公知の液晶ホログラフィック素子を用いることができる。
図1では偏光ホログラフィック光学素子20として、透過型の液晶ホログラフィック素子を用いた例を示しているが、反射型の液晶ホログラフィック素子を用いるとしてもよい。偏光ホログラフィック光学素子20には、第1円偏光変換部13aと第2円偏光変換部13bを透過した円偏光が入射し、第1画像光と第2画像光のそれぞれが偏光方向に応じた屈折率によって干渉して、進行方向が変換される。偏光ホログラフィック光学素子20による第1画像光と第2画像光の進行方向の変換については、詳細を後述する。
【0033】
第1ミラー30は、偏光ホログラフィック光学素子20を透過した第1画像光および第2画像光が入射し、第1画像光および第2画像光を外光カットフィルター40を介してウィンドシールドWS方向に反射する光学部材である。 第1ミラー30は、本発明における投影光学部に相当している。ここでは投影光学部として第1ミラー30を用いた例を示したが、第1ミラー30の他に複数の反射ミラーを用いるとしてもよく、レンズやプリズム等の光学部材を用いるとしてもよい。
【0034】
図1に示した例では、第1ミラー30として凹面形状の自由曲面ミラーを示している。第1ミラー30の反射面は、ウィンドシールドWSを介して第1画像光および第2画像光を虚像P1,P2として投影するために、運転者の視点方向に光径が拡大するように設計されている。ここで、視点方向に光径が拡大するとは、反射後に光径が一貫して拡大する場合だけでなく、光径が縮小して中間地点において結像した後に拡大する場合も含む。
【0035】
図1では、第1画像光と第2画像光の光路を一本の直線として描いている。しかし、実際の第1画像光と第2画像光は、画像照射部10において所定の面積で表示されたものであり、進行方向に垂直な方向に所定の面積をもっている。また、第1画像光と第2画像光は、第1ミラー30で反射されて光径が縮小されながら進行し、第1ミラー30とウィンドシールドWSとの間において結像されるとしてもよい。
【0036】
外光カットフィルター40は、第1ミラー30とウィンドシールドWSの間に配置され、外部から画像投影装置100の内部に到達する外光の一部をカットする部分である。特に、ウィンドシールドWSの上方から画像照射部10に太陽光が到達して、画像表示部12の温度が上昇することを防止するために、可視光を透過して赤外光や紫外光をカットする波長フィルタを用いることが好ましい。
【0037】
ウィンドシールドWSは、車両の運転席前方に設けられて可視光を透過する部分である。ウィンドシールドWSは、車両の内側面では第1ミラー30から入射した第1画像光および第2画像光を視点方向に対して反射し、車両の外部からの光を視点方向に対して透過するため、本発明における表示部に相当している。ここでは表示部としてウィンドシールドWSを用いた例を示したが、ウィンドシールドWSとは別に表示部としてコンバイナーを用意し、第1ミラー30からの光を視点方向に反射するとしてもよい。また、車両の前方に位置するものに限定されず、搭乗者の視点に対して画像を投影するものであれば側方や後方に配置するとしてもよい。
【0038】
虚像P1,P2は、ウィンドシールドWSで反射された第1画像光および第2画像光が運転者等の視点(アイボックス)に到達した際に、空間中に結像されたように表示される画像である。虚像P1,P2が結像される位置は、画像照射部10から照射された光が、偏光ホログラフィック光学素子20、第1ミラー30およびウィンドシールドWSの合成焦点距離によって決まる。
【0039】
画像投影装置100では、画像表示部12の遠方表示領域12aに表示された遠方画像が第1画像光として照射され、近方表示領域12bに表示された近方画像が第2画像光として照射される。遠方表示領域12aに表示される遠方画像としては、注意喚起の画像や緊急情報等の運転に関する補助的な情報が挙げられる。また、近方表示領域12bに表示される近方画像としては、速度と音量インジケータ、進行方向ガイド等が挙げられる。
【0040】
本実施形態では、偏光ホログラフィック光学素子20としてレンズ機能を有するものを用いる。レンズ機能を有する偏光ホログラフィック光学素子20とは、偏光方向によって異なる屈折率となる屈折率分布が存在し、その屈折率分布によって光が面内の各所において回折され、結果として光の光径が拡大または縮小する進行方向に変換されるものである。
【0041】
図3は、レンズ機能を有する偏光ホログラフィック光学素子20での円偏光の進行方向について説明する図であり、
図3(a)は左回り円偏光の場合を示し、
図3(b)は右回り円偏光の場合を示す。
図3(a)に示したように、偏光ホログラフィック光学素子20に左回りの円偏光が入射した場合には、透過した円偏光は光径が縮小し、焦点F2に集光された後に光径が拡大して実像が結像される。つまり、偏光ホログラフィック光学素子20は左回りの円偏光に対して正の光学的パワーを与えたものと同様になる。
【0042】
図3(b)に示したように、偏光ホログラフィック光学素子20に右回りの円偏光が入射した場合には、透過した円偏光は光径が拡大してく。この場合には、偏光ホログラフィック光学素子20を透過する前の仮想的な焦点F1に光が集光され、焦点F1から光が発せられた虚像が結像される。つまり、偏光ホログラフィック光学素子20は左回りの円偏光に対して正の光学的パワーを与えたものと同様になる。
【0043】
図3(a)(b)に示した例では、偏光ホログラフィック光学素子20として、左回りの円偏光に対して正の光学的パワーを与え、右回りの円偏光に対して負の光学的パワーを与えるものを示したが、円偏光の回転方向とパワーの正負は逆であってもよい。また、
図3(a)(b)では別の偏光ホログラフィック光学素子20に右回りと左回りの円偏光を入射させているが、共通の偏光ホログラフィック光学素子20の異なる領域に右回りと左回りの円偏光を入射させるとしてもよい。
【0044】
本実施形態の画像投影装置100では、遠方表示領域12aに表示された遠方画像の第1画像光を第1円偏光変換部13aで右回り円偏光に変換し、
図3に示したレンズ機能を有する偏光ホログラフィック光学素子20に入射させて、負の光学的パワーを与える。これにより、第1画像光は仮想的な焦点F1に集光された光として第1ミラー30に到達する。
【0045】
また画像投影装置100では、近方表示領域12bに表示された近方画像の第2画像光を第2円偏光変換部13bで左回り円偏光に変換し、
図3に示したレンズ機能を有する偏光ホログラフィック光学素子20に入射させて、正の光学的パワーを与える。これにより、第2画像光は焦点F2に集光された光として第1ミラー30に到達する。
【0046】
図4は、本実施形態に係る画像投影装置100で投影された虚像P1,P2の位置関係を示す模式斜視図である。上述したように、レンズ機能を有する偏光ホログラフィック光学素子20に入射した右回りの円偏光である第1画像光と、左回りの円偏光である第2画像光では、焦点F1と焦点F2間の距離だけ集光位置が異なるものとなる。これにより第1画像光および第2画像光は、第1ミラー30およびウィンドシールドWSで反射されて視点位置に到達し、虚像P1,P2の結像位置が異なるものとして視認される。具体的には、
図1および
図4に示したように、虚像P1,P2の結像位置は、第1画像のほうが第2画像よりも視点位置から遠いものとなる。
【0047】
また、本実施形態の画像投影装置100では、偏光ホログラフィック光学素子20の異なる領域に第1画像光と第2画像光を入射させているため、第1画像光と第2画像光はそれぞれ第1ミラー30およびウィンドシールドWSの異なる領域に到達して反射される。したがって、第1画像光で結像される虚像P1と第2画像光で結像される虚像P2は、
図4に示したように高さ方向に分離されて奥行きが異なるものとなる。
【0048】
上述したように、本実施形態の画像投影装置100では、偏光方向によって異なる屈折率分布を有する偏光ホログラフィック光学素子20を介して、第1回転方向の円偏光である第1画像光と、逆回転の円偏光である第2画像光をウィンドシールドWSに投影することで、投影光学部材であるレンズや反射ミラーを別途用いずに第1画像光と第2画像光の光路差を設けることができ、部品点数の増加を抑制し光学部材の小型化を図りながら、複数の画像を投影することが可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について
図5から
図7を用いて説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。
図5は、本実施形態に係る画像投影装置110の構成を示す模式図である。
【0050】
図5に示すように、画像投影装置110は、画像照射部10と、偏光ホログラフィック光学素子50と、第1ミラー30と、外光カットフィルター40を備えている。
図5に示すように、画像投影装置110から投影された第1画像光と第2画像光は、ウィンドシールド(表示部)WSで反射されて運転者の視点位置に照射される。運転者は、第1画像光と第2画像光が入射してきた光路の延長上に結像された虚像P1,P2を視認する。
【0051】
図5では図示を省略しているが、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bと偏光ホログラフィック光学素子50の間には、偏光ホログラフィック光学素子50に対する第1画像光および第2画像光の入射角度を調整する光学素子を配置するとしてもよい。また、第1円偏光変換部13aおよび第2円偏光変換部13bと偏光ホログラフィック光学素子50の間に、第1画像光または第2画像光の光路長を変更する光路変更部を配置するとしてもよい。
【0052】
本実施形態では、偏光ホログラフィック光学素子50として、回折格子機能を有するものを用いる。回折格子機能を有する偏光ホログラフィック光学素子50とは、偏光方向によって異なる屈折率となる屈折率分布が存在し、その屈折率分布によって光が面内の各所において回折され、結果として光の進行方向が変化するものである。このような回折格子機能を有する偏光ホログラフィック光学素子50では、面に垂直に右回り円偏光が入射した場合に出射される光の進行方向を+θであるとすると、左回りの円偏光が入射した場合に出射される光の進行方向は-θとなる。逆に、+θの方向から入射した左回りの円偏光と、-θの方向から入射した右回りの円偏光は、同じ光路で出射されることとなる。
【0053】
図6は、回折格子機能を有する偏光ホログラフィック光学素子50での円偏光の進行方向について説明する図であり、
図6(a)は左回り円偏光の場合を示し、
図6(b)は右回り円偏光の場合を示す。
図6(a)に示したように、+θの方向から偏光ホログラフィック光学素子50に左回りの円偏光を入射させることで、透過した光は右回りの円偏光に変換されて面に垂直な方向に進行する。また、
図6(b)に示したように、-θの方向から偏光ホログラフィック光学素子50に右回りの円偏光を入射させることで、透過した光は左回りの円偏光に変換されて面に垂直な方向に進行する。
【0054】
本実施形態の画像投影装置110では、第1画像光または第2画像光の一方を第1円偏光変換部13aで右回り円偏光に変換し、他方を第2円偏光変換部13bで左回り円偏光に変換し、偏光ホログラフィック光学素子50にそれぞれ+θと-θの角度で入射させることで、透過した第1画像光と第2画像光の光路は重なることとなる。
図5に示したように、偏光ホログラフィック光学素子50を透過した第1画像光と第2画像光は、光路が重なったまま第1ミラー30の同じ領域に到達して反射される。これにより、第1ミラー30の別の領域で第1画像光と第2画像光を反射する場合と比較して、第1ミラー30の反射面を小さくして小型化を図ることができる。
【0055】
図6(a)(b)に示した例では、偏光ホログラフィック光学素子50として、左回りの円偏光を+θの方向から入射させ、右回りの円偏光を-θの方向から入射させる例を示したが、円偏光の屈折方向は逆であってもよい。また、
図6(a)(b)では別の偏光ホログラフィック光学素子50に右回りと左回りの円偏光を入射させているが、共通の偏光ホログラフィック光学素子50の同じ領域に右回りと左回りの円偏光を入射させるとしてもよい。
【0056】
図7は、本実施形態に係る画像投影装置110で投影された虚像P1,P2の位置関係を示す模式斜視図である。上述したように、回折格子機能を有する偏光ホログラフィック光学素子50に入射した第1画像光および第2画像光は、第1ミラー30までの光路が重なっている。これにより第1画像光および第2画像光は、第1ミラー30およびウィンドシールドWSの同じ領域で反射されて視点位置に到達し、虚像P1,P2が同じ視線の延長線上に重なったものとして視認される。また、第1円偏光変換部13aと偏光ホログラフィック光学素子50の間に光路調整部を設けて、第1画像光の光路を第2画像光より長くすることで、虚像P1,P2の結像位置は、第1画像のほうが第2画像よりも視点位置から遠いものとなる。
【0057】
上述したように、本実施形態の画像投影装置110では、偏光方向によって異なる屈折率分布を有する偏光ホログラフィック光学素子50を介して、第1回転方向の円偏光である第1画像光と、逆回転の円偏光である第2画像光をウィンドシールドWSに投影することで、投影光学部材であるレンズや反射ミラーを別途用いずに第1画像光と第2画像光の光路を重ねて第1ミラー30の小型化を図ることができ、部品点数の増加を抑制し光学部材の小型化を図りながら、複数の画像を投影することが可能となる。
【0058】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第1実施形態と重複する内容は説明を省略する。第1実施形態ではレンズ機能を有する偏光ホログラフィック光学素子20を用い、第2実施形態では回折格子機能を有する偏光ホログラフィック光学素子50を用いたが、一つの偏光ホログラフィック光学素子50にレンズ機能と回折格子機能を含ませるとしてもよい。
【0059】
偏光ホログラフィック光学素子50にレンズ機能と回折格子機能の双方を含ませることで、1つの偏光ホログラフィック光学素子50によって、レンズ機能による結像位置に差を生じさせる効果と、回折格子機能による光路の重ね合わせの効果を実現することができる。
【0060】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0061】
100,110…画像投影装置
10…画像照射部
11…バックライト
12…画像表示部
12a…遠方表示領域
12b…近方表示領域
13a…第1円偏光変換部
13b…第2円偏光変換部
20,50…偏光ホログラフィック光学素子
30…第1ミラー
40…外光カットフィルター