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特開2024-74737光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法、光触媒と多孔質材料の混合粉末、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法及び光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材
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  • 特開-光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法、光触媒と多孔質材料の混合粉末、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法及び光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材 図1
  • 特開-光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法、光触媒と多孔質材料の混合粉末、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法及び光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074737
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法、光触媒と多孔質材料の混合粉末、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法及び光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/39 20240101AFI20240524BHJP
   B01J 37/04 20060101ALI20240524BHJP
   B01J 37/08 20060101ALI20240524BHJP
   B01J 37/02 20060101ALI20240524BHJP
   B01J 23/89 20060101ALI20240524BHJP
   B01J 29/76 20060101ALI20240524BHJP
   B01J 31/28 20060101ALI20240524BHJP
   A61L 9/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20240524BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/04 101
B01J37/08
B01J37/04 102
B01J37/02 301C
B01J23/89 A
B01J29/76 A
B01J31/28 A
A61L9/00 C
A61L9/01 B
A61L9/014
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022196662
(22)【出願日】2022-11-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】520399268
【氏名又は名称】フォトジェン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(72)【発明者】
【氏名】中澤 滋
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180BB09
4C180CC03
4C180CC04
4C180CC15
4C180DD03
4C180DD04
4C180EA03X
4C180EA06X
4C180EA07X
4C180EA23X
4C180EA24X
4C180EA27X
4C180EA34X
4C180EA36X
4C180EA39X
4C180EA40X
4C180HH15
4C180HH17
4C180MM03
4C180MM07
4G169AA02
4G169AA03
4G169AA08
4G169AA09
4G169BA02B
4G169BA04A
4G169BA04B
4G169BA04C
4G169BA07B
4G169BA08B
4G169BA13B
4G169BA17
4G169BA21C
4G169BA22B
4G169BA29B
4G169BA48A
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BB02C
4G169BB04A
4G169BB04C
4G169BB19A
4G169BB19C
4G169BC04A
4G169BC04C
4G169BC09A
4G169BC09C
4G169BC10A
4G169BC10B
4G169BC10C
4G169BC16A
4G169BC16C
4G169BC31A
4G169BC31B
4G169BC31C
4G169BC32A
4G169BC32B
4G169BC32C
4G169BC66A
4G169BC66C
4G169BC68B
4G169BD01B
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4G169BD04C
4G169BD05C
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4G169CA02
4G169CA10
4G169CA17
4G169DA06
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4G169EA01Y
4G169EA04Y
4G169EA08
4G169EB01
4G169EB14Y
4G169EB15Y
4G169EB17Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC03Y
4G169EC14Y
4G169EC17Y
4G169EC22Y
4G169ED10
4G169FA01
4G169FA06
4G169FB06
4G169FB07
4G169FB15
4G169FB29
4G169FB57
4G169FC02
4G169FC07
4G169FC08
4G169FC10
4G169HA01
4G169HB02
4G169HC15
4G169HC24
4G169HD03
4G169HD04
4G169HD10
4G169HE03
4G169ZA02B
(57)【要約】
【課題】 光触媒と多孔質材料を近接させて配置し光を照射する構成において、吸着物質の分解機能をさらに高めるために、多孔質材料と光触媒を複合化する新たな製造方法及び新たな複合粉末を得ること。
【解決手段】 TiO2粉末と、TiO2粉末に対して30~70wt%の多孔質粉末と、TiO2粉末及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、TiO2粉末及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、を均一に混合して第1の混合物粉末を得、当該第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して第1の混合粉末を得、
当該第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法。
【請求項2】
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末の粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法。
【請求項3】
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末の表面および多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末。
【請求項4】
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末の粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末の表面および多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末。
【請求項5】
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5度、16.4±5度、13.7±5度である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法。
【請求項6】
光触媒と多孔質材料との混合粉末は、請求項1又は2に記載の光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法によって製造されていることを特徴とする請求項5に記載の光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法。
【請求項7】
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5度、16.4±5度、13.7±5度である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、得られる光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材。
【請求項8】
光触媒と多孔質材料との混合粉末は、請求項1又は2に記載の光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法によって製造されていることを特徴とする請求項7に記載の光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の本発明は、TiO2系光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法に関し、また、TiO2系光触媒と多孔質材料の混合粉末に関する。
さらに、第2の本発明は、TiO2系光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法に関し、また、TiO2系光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材に関する。
【背景技術】
【0002】
「多孔質材料」は多くの細孔が空いている材料であり、吸着剤や触媒担体として用いられる。「多孔質材料」は、細孔の大きさによって、ミクロポーラス(ミクロ孔)材料、メソポーラス(メソ孔)材料、マクロポーラス(マクロ孔)材料に分類される。ミクロポーラス材料として活性炭やゼオライトなどを挙げることができ、メソポーラス材料としてポーラスシリカやシリカゲルなどを挙げることができ、そして、マクロポーラス材料として軽石、多孔質セラミックス、多孔質樹脂、多孔質金属などを挙げることができる。
【0003】
多孔質材料においては、それぞれの細孔の多くは片側が閉じていて、細孔の外部における物質(吸着物質)の濃度は細孔の内部における物質(吸着物質)の濃度よりも高い。この物質濃度の差が駆動力となって、細孔の外部から細孔の内部に向かって物質(吸着物質)が移動し細孔の内部に吸着される。水分や悪臭分子などの物質(吸着物質)を引き寄せ吸着することによって、湿気の吸着除去や悪臭ガスの吸着浄化等に多孔質材料は利用されている。多孔質材料の吸着効果は、粉末形状の方が粒状や塊状に比べて優れている。比表面積がより広く、質量当たりの活性点がより多いためである。
【0004】
しかしながら、多孔質材料の吸着機能には寿命がある。多孔質材料の細孔の内部に物質が取り込まれるに従って吸着性能は低下し、ほとんどすべての細孔に吸着物質が取り込まれると吸着機能は飽和し、その後は細孔に吸着できなくなり吸着機能は失われる。
【0005】
一方、光触媒は太陽や蛍光灯などの光が照射されると光触媒の表面が酸化還元活性化され、光触媒の表面において水や酸素と反応して活性酸素や水酸ラジカルが生成され、これらの強い酸化力によって有害物質を二酸化炭素や水に分解する。この分解作用が抗菌、脱臭、大気浄化などに利用されている。
【0006】
しかしながら、光触媒による有害物質の分解は、光触媒の表面における酸化還元活性によるため、表面近くに存在する物質のみに作用し、表面から離れた位置に存在する物質には作用しない。また、光触媒による有害物質の分解は緩慢である。光触媒による有害物質の分解性能を最大限発揮させるためには、光触媒の性能を高めるとともに、光触媒の表面近くに分解対象物質を集めて、分解対象物の濃度を高めることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-218635
【特許文献2】特開平8-208211
【特許文献3】特開平10-226509
【特許文献4】特開平6-315614
【特許文献5】特開2007-203223
【特許文献6】特開2004-351249
【0008】
光触媒による有害物質の分解性能を高めるために、光触媒と多孔質材料とを隣接させて光を照射する発明が多く開発されてきた。多孔質材料の細孔の周辺に吸着物質が集められ、吸着物質の濃度が高くなるが、多孔質材料の細孔に近接して光触媒を配置しておくと、光触媒による物質の時間当たりの分解性能が高められる。
【0009】
また、光触媒と多孔質材料とを隣接させて配置し、光を照射すると、多孔質材料による物質の吸着と光触媒による物質の分解が同時かつ連続的に生じ、多孔質材料の細孔は吸着物質によって飽和されることなく、吸着性能が継続され、長寿命化される。
【0010】
従来、活性炭などの吸着材は、吸着機能が飽和すると、吸着材を800℃以上に加熱して、吸着機能を回復させ、吸着剤を回復していた。しかし、活性炭などに近接して光触媒を配置し光を照射することによって、活性炭などに吸着された物質が光触媒によって分解されるので、再生するために活性炭などを加熱する必要はなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
第1の本発明
光触媒と多孔質材料とを隣接させて配置し光を照射する構成において、吸着物質の分解機能をさらに高めるために、多孔質材料と光触媒を複合化する新たな製造方法及び新たな複合粉末を得るために発明者は鋭意研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
多孔質粉末と光触媒とFe、Cu若しくはAgなどの粉末とAl,Li、Mg若しくはCaなどの粉末との混合粉末を真空中で加熱することによって、TiO2の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入するとともにTiO2粉末及び多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAgなどを担持することができることを本発明者は見出し、第1の本発明に至った。
【0013】
本発明1は、請求項1に記載のとおり、
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して第1の混合粉末を得、
当該第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法
である。
「多孔質粉末」には、ミクロポーラス多孔質材料、メソポーラス多孔質材料若しくはマクロポーラス多孔質材料の多孔質粉末又はそれらの混合物の粉末が含まれる。ミクロポーラス多孔質材料には活性炭やゼオライトが含まれ、メソポーラス多孔質材料にはポーラスシリカやシリカゲルが含まれ、マクロポーラス多孔質材料には軽石や多孔質セラミックスが含まれる。
「TiO2」には、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型又はこれらの混合物が含まれる。
【0014】
本発明2は、請求項2に記載のとおり、
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法
である。
第2の混合粉末を得るために「多孔質粉末」ではなく「多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末」を用いた理由は、「多孔質樹脂及び多孔質金属」が当該溶解液によって溶解される、又は熱処理によって溶融されるので「多孔質樹脂及び多孔質金属」を用いる意味がないからである。
【0015】
本発明3は、請求項3に記載のとおり、
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末及び多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末
であり、第1の本発明に対応する「光触媒と多孔質材料の混合粉末」である。
TiO2粉末とAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末とを混合して真空中で熱処理することによってTiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入することができることを発明者は見出した。
また、TiO2粉末と多孔質粉末と担持金属とを混合して真空中で熱処理することによってTiO2粉末の表面及び多孔質粉末の表面にFe、Cu、Agなどを担持できることを発明者は見出した。
【0016】
本発明4は、請求項4に記載のとおり、
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末及び多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末
であり、第2の本発明に対応する「光触媒と多孔質材料の混合粉末」である。
【0017】
第2の本発明
また、光触媒と多孔質材料の混合粉末又は光触媒を多孔質材料バルク材に担持し固定した、新たな光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を得るために発明者は鋭意研究を行った。
【0018】
光触媒と多孔質材料との混合粉末又は光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5度、16.4±5度、13.7±5度である溶液を作成し、多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して多孔質材料バルク材の表面に光触媒を担持し固定することができることを本発明者は見出し、第2の本発明に至った。
【0019】
本発明5は、請求項5に記載のとおり、
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5°、16.4±5°、13.7±5°である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法
である。
多孔質材料バルク材の形状は平面板状のみならず曲面板状であっても良く、あるいは、円筒状や円柱状や円錐状や三角角錐状や四角錐状や球状や星形やハート形であっても良い。
「多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着する」方法としては、ロールによる塗布や刷毛による塗布や回転塗布やシャワー塗布やコーティングや当該溶液への多孔質材料バルク材の浸漬が含まれる。
【0020】
本発明6は、請求項7に記載のとおり、
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5°、16.4±5°、13.7±5°である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、得られる光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材
である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】 使用した製造装置の概略図である。
図2】 本実施例の光触媒と多孔質材料の混合粉末製造の熱処理において実施した温度-時間グラフの概略図である。
図3】 VOC分解評価試験に用いた装置の概略図である。
図4】 得られた試料粉末のVOC分解評価で24時間後の結果を示すグラフである。
図5】 得られた試料粉末を担持した多孔質材料バルク材のVOC分解評価で24時間後の結果を示すグラフである。
図6】 多孔質セラミックをデコンボ溶液に浸漬した後に乾燥することにより、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0022】
以下、第1の本発明、第2の本発明の実施例について、それぞれ、添付図面を参照して説明する。
【0023】
第1の本発明の実施例
【実施例1】
「第2の混合粉末」はTiO2粉末とシリカゲル粉末とを混合して得た。
「溶解液」はCuとAgを硝酸で溶解して得た。
第2の混合粉末の水懸濁液と溶解液とを混合した後に乾燥して「第3の混合粉末」を得た。
Mg粉末と第3の混合粉末とを混合して「第4の混合粉末」を得た。
そして、第4の混合粉末を真空中で熱処理して実施例1の「光触媒と多孔質材料の混合粉末」を製造した。
【0024】
試料粉末の作製
TiO2原料粉末は石原産業(株)製のアナターゼ型であり、純度は85%以上であり、1次粒径は7nmである。
【0025】
シリカゲル原料粉末は豊田化工株式会社製のB型球状粉であり、規格メッシュ10-20(mm換算 約1.68~0.84)であり、表面積が約450m2である。
【0026】
Mg原料粉末は、関東金属製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は100μmである。
【0027】
Ag原料粉末は、高純度化学製であり、純度は99.5%以上であり、平均粒子径D50は1μmである。
【0028】
最初に、25~30%硝酸溶液に担持金属であるCuを0.6gとAgを0.08gとを溶解した硝酸塩溶液を作製した。次に、TiO2原料粉末40.0gとシリカゲル原料粉末40.0gを水で懸濁させた水懸濁液を作成した。当該水懸濁液と前記硝酸塩溶液とを混合して撹拌し混合溶液を得た。続いて、この混合溶液を170℃以上の温度で乾燥して得た第1の混合乾燥粉末とMg原料粉末0.4gを容器内に秤量して、振とうしたところ、混合乾燥粉末とMg原料粉末が均一に混合された第4の原料混合粉末を得た。
【0029】
図1は試料粉末作製に使用した製造装置の概略図である。黒鉛るつぼ1は内径φ70mm×高さ125mmであり、上面の中央にガス抜き穴11が設けられている。原料混合粉末2を黒鉛るつぼ1内に収納した後に、高周波加熱装置4を備えた真空加熱炉3内に水平に配置した。
【0030】
そして、第4の原料混合粉末2が飛散しないように注意しながら、配管5を通じて真空ポンプ6を用いて真空加熱炉3内を8Paまで真空排気した。
【0031】
8Paまで真空排気した直後に、図2に示す熱処理パターンのように、室温(Tr)~450℃(Tmax)まで1時間(0~t1)かけて昇温し、450℃(Tmax)で3時間(t1~t2)保持し、その後、加熱電源をOFFにして、自然冷却した。昇温、保持、冷却の間も真空ポンプ6を用いて真空排気を続けた。
【0032】
十分に冷却した後、真空ポンプ6を停止し大気圧に戻し、黒鉛るつぼ1を取り出し、試料粉末(#021F10)を得た。
【0033】
得られた試料粉末(#021F10)を目視観察したところ、薄緑色に色づいた、一様の微粉末であった。
【実施例0034】
実施例1との違いは、シリカゲル原料粉末が豊田化工株式会社製のB型粉末であり、規格メッシュ200(mm換算 0.074以下)であり、表面積が約450m2である点のみである。
【0035】
得られた試料粉末(#021A28)を目視観察したところ、TiO2原料粉末とほぼ同じ色であり、一様の微粉末であった。
【実施例0036】
実施例1との違いは、シリカゲル原料粉末が豊田化工株式会社製のB型粉末であり、規格メッシュ400(mm換算 0.037以下)であり、表面積が約450m2である点のみである。
【0037】
得られた試料粉末(#021F08)を目視観察したところ、緑系色に色づいた、一様の微粉末であった。
【実施例0038】
実施例1との違いは、シリカゲル原料粉末が豊田化工株式会社製のA型球状粉であり、規格メッシュ200であり、表面積が約700m2である点のみである。
【0039】
得られた試料粉末(#021F07)を目視観察したところ、緑系色に色づいた、一様の微粉末であった。
【実施例0040】
実施例3との違いは、TiO2原料粉末とシリカゲル原料粉末との比率が1:1ではなく、0.6:0.4である点のみである。
【0041】
得られた試料粉末(#021H16)を目視観察したところ、緑系色に色づいた、一様の微粉末であった。
【実施例0042】
実施例1との違いは、シリカゲル原料粉末を使用せずに粒状活性炭原料を粉末状に破砕して使用した点とゼオライト原料粉末を使用した点と加熱温度が400℃である点である。ゼオライト原料粉末は東ソー株式会社製のA型ゼオライトであり、細孔径が3オングストロームであり大きさが100メッシュの粉末状である。
【0043】
得られた試料粉末(#021B01)を目視観察したところ、灰色に色づいた、一様の微粉末であった。
【0044】
【実施例0045】
実施例6との違いは、活性炭原料粉末とゼオライト原料粉末を使用せずにゼオライト原料粉末のみを使用した点である。
【0046】
得られた試料粉末(#021F15)を目視観察したところ、やや濃い薄黄緑色に色づいた、一様の微粉末であった。
【0047】
<比較例>
実施例1との相違は、多孔質材料の原料粉末を混合しない点と加熱温度が475℃である点である。
【0048】
得られた比較例試料粉末(#021C24)を目視観察したところ、薄緑色に色づいた、一様の微粉末であった。
【0049】
第2の本発明の実施例
【実施例8】
可視光応答型光触媒粒子をバインダー成分としてアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5°、16.4±5°、13.7±5°である、濡れ性が非常に高いフォトジェン(株)製のデコンボ溶液を作成した。デコンポ溶液における可視光応答型光触媒粒子の濃度は10wt%である。
【0050】
多孔質材料バルク材は、アネスティ株式会社の多孔質の吸水セラミックであり、寸法が5×5cmで厚さが6mmである。
【0051】
多孔質材料バルク材の表面にデコンボ溶液を付着した後に自然乾燥して光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を得た。「付着」には「塗布」や「浸漬」が含まれる。
【0052】
フォトジェン(株)製のデコンボ溶液500mLをガラスビーカー20に取り、このデコンボ溶液21の中に多孔質セラミックバルク材22を30秒間浸漬した後に、引き上げ自然乾燥した。
【0053】
図6は、多孔質セラミックをデコンボ溶液に浸漬した後に乾燥することにより、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法を示す概略図である。
【0054】
得られた光触媒を担持し固定した多孔質セラミックバルク材23を目視観察したところ、多孔質担体の表面全体に均一に光触媒粉末が薄黄緑色に付着され担持されていることを確認できた。
【実施例0055】
実施例8との相違点は、多孔質材料バルク材が多孔質セラミックではなく、杉木材合板である点であり、寸法が5×5cmで、厚さが6mmである。
【0056】
得られた多孔質材料バルク材を目視観察したところ、多孔質担体の表面全体に木目に沿うような模様で均一に光触媒粉末が白っぽく薄黄緑色に付着され担持されていることを確認できた。
【実施例0057】
実施例8との相違点は、多孔質材料バルク材が株式会社クラレ製の活性炭シート#5113である点であり、寸法が5×5cmで厚さが3mmである。
【0058】
得られた多孔質材料バルク材を目視観察したところ、多孔質担体の孔の内部及び表面全体に均一に光触媒粉末が薄黄緑色に白く付着され担持されていることを確認できた。
【実施例0059】
実施例8との相違点は、多孔質材料バルク材が多孔質金属であり株式会社サンリック製のニッケル合金フォームで、セルサイズが450μmであり、寸法が5×5cmで厚さが4mmである。
【0060】
得られた多孔質材料バルク材を目視観察したところ、多孔質担体の孔の内部及び表面全体に均一に光触媒粉末が薄黄緑色に白く付着され担持されていることを確認できた。
【実施例0061】
実施例8との相違点は、多孔質材料バルク材が富士ケミカル株式会社のポリプロピレン製による多孔質樹脂であり、平均気孔径が200μmで、寸法が5×5cmで厚さが3mmである。
【0062】
得られた多孔質材料バルク材を目視観察したところ、多孔質担体の孔の内部及び表面全体に均一に光触媒粉末が薄黄緑色に白く付着され担持されていることを確認できた。
【0063】
<比較例2>
実施例8との相違点は、多孔質材料バルク材の代わりに実験研究用に使用される透明ガラス基板を用いて、デコンポ溶液の中に浸漬塗布した点であり、寸法は5×5cmで厚さが2mmである。
【0064】
得られた試料を目視観察したところ、ガラス基板の表面全体に均一に光触媒粉末が薄黄緑色に白く付着され担持されていることを確認できた。
【0065】
光触媒によるVOC分解評価試験
本発明において、光触媒は、揮発性有機化合物(VOC)を分解することが期待されている。VOCを分解する能力の優劣を評価するために、気化したイソプロピルアルコール(IPA)が充満した容器内に実施例や比較例の光触媒と多孔質材料の混合粉末あるいは光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を配置し、キセノンランプから発する光が光触媒と多孔質材料の混合粉末あるいは光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材に照射されて、時間経過とともに変化するIPA残存率及びCO2発生量を測定した。IPAは光照射された光触媒によって一次分解されアセトンが生成され、アセトンがさらに完全分解されてCO2が発生する反応を利用するものである。
【0066】
図3に光触媒によるVOC分解評価試験に用いた装置の概観を示す。バッチ式パイレックス製反応器を用いて、下記条件で試験を行った。
i) 反応器容量:約392ml
ii) 光源:キセノンランプ300W(波長範囲:300~800nm)
iii) カットフィルター:420nm(420nm以下の波長をカットするときに使用)
iv) 雰囲気:乾燥空気(エアーコンプレッサーより供給)、室温
v) VOC(揮発性有機化合物)種類:IPA(イソプロピルアルコール)
vi) VOC濃度:約258ppm
vii) CO2及びVOCはガスクロマトグラフ(GC)(アジレント(株)製,Agilent 3000A MicroGC)のPlotQカラム及びOV-1カラムを用いて検出した。CO2濃度はCO2センサー(理研計器(株)製,RI-2150)で測定した空気中の濃度を基にGCの積分値から簡易的に割り出した。VOCの初期濃度は光イオン化ガス検出センサー(RAE Systems社製、MiniRAE 3000)で測定し、系内のVOC濃度減少率はGC積分値の変化から計算した。
【0067】
VOC分解評価試験は、容器内に無灯火で18時間イソプロピルアルコール(IPA)を流して容器内に配置した実施例や比較例の光触媒と多孔質材料の混合粉末あるいは光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材により吸着を促した後、イソプロピルアルコールの供給を止め容器を閉鎖系にして、キセノンランプを点灯して、キセノンランプの下で分解されたガスをガスクロマトグラフで分析した。
【0068】
表1に得られた試料粉末のVOC分解評価結果を示す。
【表1】
また、図4には、300~800nmの光(紫外光から可視光)を照射した場合における、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5、実施例6、実施例7及び比較例1で得られた試料粉末によってVOCが分解され発生したCO2量(ppm)をガスクロマトグラフで測定した結果が示されている。
【0069】
実施例1から実施例5のVOC分解評価の結果から分かるように、光触媒であるTiO2粉末とメソポーラスな細孔を持つシリカゲル多孔質粉末との混合粉末は、原料配合におけるTiO2量が1/2であるにもかかわらず、比較例1に示された光触媒であるTiO2粉末担体よりVOC分解性能が高くなることが分かる。特に実施例1のシリカゲルが球状粉でメッシュ規格が大きいものとの混合粉を用いた実施例では、VOC分解性能がTiO2単体に比べて2倍近く高い。また、実施例6の粒状活性炭の破砕粉末とゼオライトの混合粉を用いた実施例では、比較例1に比べ24時間照射した場合のVOC分解によるCO2発生量は少なくなっている。
【0070】
これは原料配合におけるTiO2量が1/2であるため単位粉末量に含まれる光触媒TiO2が50%であるからであって、比較例1に単位粉末量に含まれる光触媒TiO2量を合わせると、実施例6の24時間におけるCO2発生量の計算値は約16000ppmとなり、比較例1より高い。一方、実施例7のミクロ孔を持つゼオライトとTiO2粉末との混合粉では比較例1のTiO2粉末担体よりVOC分解性能が悪く、比較例1に単位粉末量に含まれるTiO2の量を合わせても、かなり低い値となった。
【0071】
以上の結果は、VOCガスであるイソプロピルアルコールは、多孔質粉に多く吸着されるものの、TiO2粉末の粒径が1~20nmの凝集粉体であり、TiO2の粒径より細孔が小さいゼオライトでは、TiO2が細孔に吸着されたVOC物質に近接できず作用し難いためと考えられる。一方、実施例1~実施例5の場合には、シリカゲルの細孔は平均細孔径が6nmで2~50nmのメソ孔径がTiO2の粒径と比較的近く、互いに近くに存在するシリカゲルの細孔に吸着されたVOC分子とTiO2粒子が近接し相互作用をし易く、吸着されたVOC分子が光触媒であるTiO2によって分解されるためVOC分解性能が高くなると考えられる。
また、実施例6の場合は、粒状活性炭はマクロ孔の内壁にメソ孔が分布し、メソ孔の内壁にミクロ孔が分布した構造を持っているため、シリカゲル程ではないが活性炭のもつマクロ孔とメソ孔に吸着されたVOCガスがTiO2との近接相互作用によって分解されるため、TiO2の単位粉末量を合わせた値は高くなるものと考えられる。
【0072】
表2に得られた試料粉末を担持した多孔質材料バルク材のVOC分解評価結果を示す。
【表2】
また、図5には、300~800nmの光(紫外光から可視光)を照射した場合における実施例8、実施例9、実施例10、実施例11及び比較例2で得られた光触媒を担持した多孔質材料バルク材及びガラス基板試料によってVOCが分解され発生したCO2量(ppm)の結果が示されている。
【0073】
実施例8から実施例12の結果から分かるように、デコンポ溶液を用いて光触媒粒子を担持した多孔質材料バルク材は、比較例2の多孔質材バルク材ではないガラス基板よりVOC分解性能が遥に高い。特に、実施例8では24時間照射した場合のVOC分解で18,927ppmのCO2が発生し、実施例9では17,494ppmのCO2が発生しており、比較例2に比べ4倍以上のVOC分解性能が得られた。また、実施例10では10,722ppmのCO2が発生し、実施例11では8,965ppmのCO2が発生し、実施例12では7,946ppmのCO2が発生しており、比較例2に比べ約2~3倍近い高いVOC分解性能が得られた。
【0074】
一般に、光触媒溶液はバインダー成分や溶剤によって希釈されていることやバインダー成分等が光触媒粒子の表面を覆うことで光触媒の活性を阻害するため、光触媒粉体自体より性能が劣る。従って、ガラス基板のように担体基材がVOC分解性能に寄与しないと考えられる場合、比較例2に見られるように光触媒溶液を塗布したもののVOC分解性能は、光触媒粉体自体のVOC分解性能を表す比較例1に比べ3分に1以下になっている。
【0075】
ところが、光触媒の担持基材として実施例8から実施例12のように多孔質材料バルク材を用い、その表面にデコンポ溶液を用いて光触媒を担持し固定することで、VOC分解性能を何倍にも高めることができることが明らかになった。
【0076】
これは多孔質材料バルク材表面に粘度が低く、濡れ性の高いデコンポ溶液を用いて光触媒を担持し固着させることによって、多孔質材料バルク材の持つマクロ孔やメソ孔に光触媒粒子が深く入り込むためであり、光触媒が担持し固定される比表面積が増大することによると考えられる。
【0077】
また、更に実施例8や実施例9の場合は、実施例10、実施例11、実施例12と比較して、多孔質材料バルク材がマクロ孔だけでなくメソ孔を有するため、VOCガスの分子がメソ孔により多く吸着され、この吸着されたVOC分子をメソ孔に隣接するTiO2光触媒粒子が分解するためにガス分解性能が更に向上しているものと考えられる。
【0078】
以上の通り、実施例1から実施例7によるVOC分解評価試験の結果として、単独の可視光応答型光触媒に比べて第1の本発明の光触媒と多孔質材料の混合粉末(複合粉末)はVOC分解性能が優れていることが明らかになった。
【0079】
このVOC分解性能は光触媒粒子と多孔質材料の細孔径が隣接しており、更に光触媒の粒子径と多孔質材料の細孔径との相対的関係に左右され、光触媒径が多孔質材料の持つ細孔径と同等の大きさかまたは小さい場合に効果を発揮することが判明した。
【0080】
また、多孔質材料のみにFe、Cu又はAgを担持してもVOC分解効果は発揮されないことは従来から知られている。
【0081】
しかしながら、光触媒と多孔質材料が隣接され、これらの表面にFe、Cu又はAgを担持するとVOC分解効果が生じることを本発明者は初めて知得したものである。
【0082】
光触媒に担持された導電性金属は、光触媒において励起された電子が外部へ移動するための通り道や電子蓄積場所として機能すると考えられる。
【0083】
光触媒の粒子間において光触媒に担持された導電性金属も、同様に、光触媒において励起された電子が外部へ移動するための通り道や電子蓄積場所として機能すると考えられる。
【0084】
これらのことから、光触媒と多孔質材料が隣接し、光触媒に担持された導電性金属と多孔質材料に担持された導電性金属も、同様に、光触媒において励起された電子が外部へ移動するための通り道や電子蓄積場所として機能すると考えられる。
【0085】
また、実施例8~実施例12によるVOC分解評価試験の結果として、粘性が低く濡れ性のよい光触媒溶液を用いて多孔質材料バルク材に光触媒を担持し固定した第2の本発明のバルク材は、同じように処理した細孔を持たないバルク材に比べてVOC分解性能が格段に優れていることが明らかになった。
【0086】
このVOC分解性能は、粘性が低く濡れ性のよい光触媒溶液によって、多孔質材料バルク材の持つマクロ孔あるいはメソ孔に光触媒粒子が深く入り込むためであり、光触媒が担持し固定される比表面積が増大することでVOC分解反応の活性点が増えることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0087】
本発明に係る光触媒と多孔質材料の混合粉末及び本混合粉末溶液は、VOC等のガス吸着性に優れると同時にガス分解性に優れ、また光触媒の持つ超親水性にも優れているので、室外で建造物の壁等の汚れ防止に用いることができるばかりでなく、一般家庭の冷蔵庫、衣類保管ケース、靴、靴の中敷き、靴保管棚、トイレ、生ごみ入れや事務所の喫煙ルームや映画館や自動車や列車(特に地下鉄列車)の室内やトンネル内に設置して、シックハウス原因物質や有害有機化合物や悪臭物質を分解して、より健全な環境を保つことができる。
【0088】
また、本発明に係る光触媒と活性炭の混合粉末及び混合粉末溶液を担持した多孔質材料バルク材に光を照射することによって、活性炭を加熱し再生することなしに、飽和することなく吸湿や脱臭を持続させることができる。
【0089】
本発明に係る光触媒と多孔質材料の混合粉末及び本混合粉末溶液を担持した多孔質材料バルク材を水中に配置すると、大腸菌などを殺菌することができ、水の清浄化にも役立ち、トイレ、風呂、プール、理容院、病院の内部や周辺に配置することによって、衛生的な水の環境を維持することができる。
【0090】
また、本発明に係る光触媒と多孔質材料の混合粉末及び本混合粉末溶液を担持した多孔質材料バルク材によって、臭いの原因物質を分解することができ、靴、スリッパ、運動施設等のロッカー、トイレ、風呂、プール、理容院、病院、鉄道列車、自動車の内部や周辺に配置することによって、衛生的で悪臭の少ない環境を維持することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 黒鉛るつぼ
2 原料混合粉末
3 真空加熱炉
4 高周波加熱装置
5 配管
6 真空ポンプ
11 ガス抜き穴
20 ガラスビーカー
22 多孔質セラミックバルク材
23 光触媒を担持し固定した多孔質セラミックバルク材
図1
図2
図3
図4
図5
図6