(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074737
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法、光触媒と多孔質材料の混合粉末、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法及び光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材
(51)【国際特許分類】
B01J 35/39 20240101AFI20240524BHJP
B01J 37/04 20060101ALI20240524BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20240524BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20240524BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20240524BHJP
B01J 29/76 20060101ALI20240524BHJP
B01J 31/28 20060101ALI20240524BHJP
A61L 9/00 20060101ALI20240524BHJP
A61L 9/01 20060101ALI20240524BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B01J35/02 J
B01J37/04 101
B01J37/08
B01J37/04 102
B01J37/02 301C
B01J23/89 A
B01J29/76 A
B01J31/28 A
A61L9/00 C
A61L9/01 B
A61L9/014
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022196662
(22)【出願日】2022-11-21
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.パイレックス
(71)【出願人】
【識別番号】520399268
【氏名又は名称】フォトジェン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097319
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 彰
(72)【発明者】
【氏名】中澤 滋
【テーマコード(参考)】
4C180
4G169
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA16
4C180BB09
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4G169HC15
4G169HC24
4G169HD03
4G169HD04
4G169HD10
4G169HE03
4G169ZA02B
(57)【要約】
【課題】 光触媒と多孔質材料を近接させて配置し光を照射する構成において、吸着物質の分解機能をさらに高めるために、多孔質材料と光触媒を複合化する新たな製造方法及び新たな複合粉末を得ること。
【解決手段】 TiO2粉末と、TiO2粉末に対して30~70wt%の多孔質粉末と、TiO2粉末及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、TiO2粉末及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、を均一に混合して第1の混合物粉末を得、当該第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して第1の混合粉末を得、
当該第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法。
【請求項2】
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末の粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法。
【請求項3】
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末の表面および多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末。
【請求項4】
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末の粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末の表面および多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末。
【請求項5】
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5度、16.4±5度、13.7±5度である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法。
【請求項6】
光触媒と多孔質材料との混合粉末は、請求項1又は2に記載の光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法によって製造されていることを特徴とする請求項5に記載の光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法。
【請求項7】
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5度、16.4±5度、13.7±5度である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、得られる光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材。
【請求項8】
光触媒と多孔質材料との混合粉末は、請求項1又は2に記載の光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法によって製造されていることを特徴とする請求項7に記載の光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
第1の本発明は、TiO2系光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法に関し、また、TiO2系光触媒と多孔質材料の混合粉末に関する。
さらに、第2の本発明は、TiO2系光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法に関し、また、TiO2系光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材に関する。
【背景技術】
【0002】
「多孔質材料」は多くの細孔が空いている材料であり、吸着剤や触媒担体として用いられる。「多孔質材料」は、細孔の大きさによって、ミクロポーラス(ミクロ孔)材料、メソポーラス(メソ孔)材料、マクロポーラス(マクロ孔)材料に分類される。ミクロポーラス材料として活性炭やゼオライトなどを挙げることができ、メソポーラス材料としてポーラスシリカやシリカゲルなどを挙げることができ、そして、マクロポーラス材料として軽石、多孔質セラミックス、多孔質樹脂、多孔質金属などを挙げることができる。
【0003】
多孔質材料においては、それぞれの細孔の多くは片側が閉じていて、細孔の外部における物質(吸着物質)の濃度は細孔の内部における物質(吸着物質)の濃度よりも高い。この物質濃度の差が駆動力となって、細孔の外部から細孔の内部に向かって物質(吸着物質)が移動し細孔の内部に吸着される。水分や悪臭分子などの物質(吸着物質)を引き寄せ吸着することによって、湿気の吸着除去や悪臭ガスの吸着浄化等に多孔質材料は利用されている。多孔質材料の吸着効果は、粉末形状の方が粒状や塊状に比べて優れている。比表面積がより広く、質量当たりの活性点がより多いためである。
【0004】
しかしながら、多孔質材料の吸着機能には寿命がある。多孔質材料の細孔の内部に物質が取り込まれるに従って吸着性能は低下し、ほとんどすべての細孔に吸着物質が取り込まれると吸着機能は飽和し、その後は細孔に吸着できなくなり吸着機能は失われる。
【0005】
一方、光触媒は太陽や蛍光灯などの光が照射されると光触媒の表面が酸化還元活性化され、光触媒の表面において水や酸素と反応して活性酸素や水酸ラジカルが生成され、これらの強い酸化力によって有害物質を二酸化炭素や水に分解する。この分解作用が抗菌、脱臭、大気浄化などに利用されている。
【0006】
しかしながら、光触媒による有害物質の分解は、光触媒の表面における酸化還元活性によるため、表面近くに存在する物質のみに作用し、表面から離れた位置に存在する物質には作用しない。また、光触媒による有害物質の分解は緩慢である。光触媒による有害物質の分解性能を最大限発揮させるためには、光触媒の性能を高めるとともに、光触媒の表面近くに分解対象物質を集めて、分解対象物の濃度を高めることが重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平1-218635
【特許文献2】特開平8-208211
【特許文献3】特開平10-226509
【特許文献4】特開平6-315614
【特許文献5】特開2007-203223
【特許文献6】特開2004-351249
【0008】
光触媒による有害物質の分解性能を高めるために、光触媒と多孔質材料とを隣接させて光を照射する発明が多く開発されてきた。多孔質材料の細孔の周辺に吸着物質が集められ、吸着物質の濃度が高くなるが、多孔質材料の細孔に近接して光触媒を配置しておくと、光触媒による物質の時間当たりの分解性能が高められる。
【0009】
また、光触媒と多孔質材料とを隣接させて配置し、光を照射すると、多孔質材料による物質の吸着と光触媒による物質の分解が同時かつ連続的に生じ、多孔質材料の細孔は吸着物質によって飽和されることなく、吸着性能が継続され、長寿命化される。
【0010】
従来、活性炭などの吸着材は、吸着機能が飽和すると、吸着材を800℃以上に加熱して、吸着機能を回復させ、吸着剤を回復していた。しかし、活性炭などに近接して光触媒を配置し光を照射することによって、活性炭などに吸着された物質が光触媒によって分解されるので、再生するために活性炭などを加熱する必要はなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
第1の本発明
光触媒と多孔質材料とを隣接させて配置し光を照射する構成において、吸着物質の分解機能をさらに高めるために、多孔質材料と光触媒を複合化する新たな製造方法及び新たな複合粉末を得るために発明者は鋭意研究を行った。
【課題を解決するための手段】
【0012】
多孔質粉末と光触媒とFe、Cu若しくはAgなどの粉末とAl,Li、Mg若しくはCaなどの粉末との混合粉末を真空中で加熱することによって、TiO2の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入するとともにTiO2粉末及び多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAgなどを担持することができることを本発明者は見出し、第1の本発明に至った。
【0013】
本発明1は、請求項1に記載のとおり、
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して第1の混合粉末を得、
当該第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法
である。
「多孔質粉末」には、ミクロポーラス多孔質材料、メソポーラス多孔質材料若しくはマクロポーラス多孔質材料の多孔質粉末又はそれらの混合物の粉末が含まれる。ミクロポーラス多孔質材料には活性炭やゼオライトが含まれ、メソポーラス多孔質材料にはポーラスシリカやシリカゲルが含まれ、マクロポーラス多孔質材料には軽石や多孔質セラミックスが含まれる。
「TiO2」には、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型又はこれらの混合物が含まれる。
【0014】
本発明2は、請求項2に記載のとおり、
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して光触媒と多孔質材料の混合粉末を製造する方法
である。
第2の混合粉末を得るために「多孔質粉末」ではなく「多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末」を用いた理由は、「多孔質樹脂及び多孔質金属」が当該溶解液によって溶解される、又は熱処理によって溶融されるので「多孔質樹脂及び多孔質金属」を用いる意味がないからである。
【0015】
本発明3は、請求項3に記載のとおり、
TiO2粉末と、
TiO2に対して30~70wt%の多孔質粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物の粉末と、
TiO2及び多孔質粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と、
を均一に混合して得た第1の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末及び多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末
であり、第1の本発明に対応する「光触媒と多孔質材料の混合粉末」である。
TiO2粉末とAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末とを混合して真空中で熱処理することによってTiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入することができることを発明者は見出した。
また、TiO2粉末と多孔質粉末と担持金属とを混合して真空中で熱処理することによってTiO2粉末の表面及び多孔質粉末の表面にFe、Cu、Agなどを担持できることを発明者は見出した。
【0016】
本発明4は、請求項4に記載のとおり、
TiO2粉末とTiO2に対して30~70wt%の多孔質樹脂及び多孔質金属を除く多孔質粉末とを混合して第2の混合粉末を得、
第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を塩酸又は硝酸で溶解して溶解液を得、
次に、前記第2の混合粉末の水懸濁液と前記溶解液とを混合した後に乾燥して第3の混合粉末を得、
続いて、第2の混合粉末に対して0.1~5wt%のAl、Li、Mg若しくはCa、その水素化物又はそれらの混合物の粉末と前記第3の混合粉末とを均一に混合して第4の混合粉末を得、
当該第4の混合粉末をるつぼ内に収納し、当該るつぼを真空加熱炉中に配置し、真空排気した後に、真空中で350~550℃の温度で熱処理して成り、
TiO2粉末の結晶構造を保持したまま酸素欠陥を導入すると共にTiO2粉末及び多孔質粉末の表面にFe、Cu若しくはAg、その酸化物又はそれらの混合物を担持している光触媒と多孔質材料の混合粉末
であり、第2の本発明に対応する「光触媒と多孔質材料の混合粉末」である。
【0017】
第2の本発明
また、光触媒と多孔質材料の混合粉末又は光触媒を多孔質材料バルク材に担持し固定した、新たな光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を得るために発明者は鋭意研究を行った。
【0018】
光触媒と多孔質材料との混合粉末又は光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5度、16.4±5度、13.7±5度である溶液を作成し、多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して多孔質材料バルク材の表面に光触媒を担持し固定することができることを本発明者は見出し、第2の本発明に至った。
【0019】
本発明5は、請求項5に記載のとおり、
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5°、16.4±5°、13.7±5°である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法
である。
多孔質材料バルク材の形状は平面板状のみならず曲面板状であっても良く、あるいは、円筒状や円柱状や円錐状や三角角錐状や四角錐状や球状や星形やハート形であっても良い。
「多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着する」方法としては、ロールによる塗布や刷毛による塗布や回転塗布やシャワー塗布やコーティングや当該溶液への多孔質材料バルク材の浸漬が含まれる。
【0020】
本発明6は、請求項7に記載のとおり、
粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒と多孔質材料との混合粉末又は粒径が0.01~100ミクロン、好ましくは0.1~数10ミクロンである光触媒の粉末をアルキルシラン系加水分解物にイソプロピルアルコールを溶剤として混合して得た溶液であって、粘度が3.2~3.8mPa・sであり、ステンレス鋼、ガラス、アクリル樹脂との接触角が、それぞれ、15.2±5°、16.4±5°、13.7±5°である溶液を得、
多孔質材料バルク材の表面に当該溶液を付着した後に自然乾燥して、得られる光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材
である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図2】 本実施例の光触媒と多孔質材料の混合粉末製造の熱処理において実施した温度-時間グラフの概略図である。
【
図3】 VOC分解評価試験に用いた装置の概略図である。
【
図4】 得られた試料粉末のVOC分解評価で24時間後の結果を示すグラフである。
【
図5】 得られた試料粉末を担持した多孔質材料バルク材のVOC分解評価で24時間後の結果を示すグラフである。
【
図6】 多孔質セラミックをデコンボ溶液に浸漬した後に乾燥することにより、光触媒を担持し固定した多孔質材料バルク材を製造する方法を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例0022】
以下、第1の本発明、第2の本発明の実施例について、それぞれ、添付図面を参照して説明する。
【0023】
第1の本発明の実施例
実施例1との違いは、シリカゲル原料粉末が豊田化工株式会社製のB型粉末であり、規格メッシュ200(mm換算 0.074以下)であり、表面積が約450m2である点のみである。