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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074743
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 25/08 20060101AFI20240524BHJP
   C08L 71/12 20060101ALI20240524BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20240524BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240524BHJP
   C08K 5/5415 20060101ALI20240524BHJP
   C08K 3/016 20180101ALI20240524BHJP
【FI】
C08L25/08
C08L71/12
C08L53/02
C08K3/36
C08K5/5415
C08K3/016
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023023860
(22)【出願日】2023-02-17
(31)【優先権主張番号】111144454
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100204490
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 葉子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】黄 威儒
(72)【発明者】
【氏名】張 宏毅
(72)【発明者】
【氏名】劉 家霖
(72)【発明者】
【氏名】李 紘帆
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB041
4J002BC021
4J002BL021
4J002BP013
4J002CH072
4J002CH074
4J002DJ017
4J002EB006
4J002EW006
4J002EX018
4J002EX038
4J002EX068
4J002EX078
4J002FB087
4J002FB107
4J002FD136
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低誘電率、低誘電正接、および高いガラス転移温度(Tg)を備える低誘電率樹脂組成物を提供する。
【解決手段】樹脂組成物は、樹脂混合物と、難燃剤と、球状シリカと、シロキサンカップリング剤とを含む。前記樹脂混合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、ビスマレイミドにより変性されるポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、SBS樹脂とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂混合物と、
難燃剤と、
球状シリカと、
シロキサンカップリング剤と、を含み、
前記樹脂混合物は、
スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、
ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、
SBS樹脂と、を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂混合物の総重量に基づき、前記第1の樹脂の含有量が30重量%~60重量%であり、前記第2の樹脂の含有量が20重量%~40重量%であり、前記SBS樹脂の含有量が10重量%~30重量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記球状シリカの添加量が20重量部~50重量部である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記難燃剤の添加量が10重量部~50重量部である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記シロキサンカップリング剤の添加量が0.1重量部~5重量部である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記モノマー混合物におけるスチレン:ジビニルベンゼン:エチレンのモル比は1:1:1~2:2:1である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1の樹脂の数平均分子量が4,500~6,500である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂が、以下の化学式で表し:
【化1】
Rは直接結合、メチレン基、エチレン基、イソプロピル基、1-メチルプロピレン基、スルホニレン基またはフルオレニレン基であり、nは3~25の整数である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記SBS樹脂が、5%~40%のスチレンと、55%~90%の1,2ブタジエンと、5%~30%の1,4ブタジエンを含むモノマー混合物を重合して得られる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記SBS樹脂の重量平均分子量が3,500~5,500である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂混合物は、前記ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂と異なるポリフェニレンエーテル樹脂をさらに含む、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記球状シリカは、アクリルまたはビニルによる表面改質を有する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記球状シリカの平均粒子径D50が2.0μm~3.0μmである、請求項1記載の樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に関するものであり、特に低誘電(low-k)樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、5G通信の発展に伴い、誘電率を下げる目的のために銅箔基板が開発されている。現在の銅箔基板の誘電率(Dk)は約3.2~5.0であり、これは将来における高周波数及び高速伝送の応用に対して役に立たない。現在、ポリスチレン樹脂などの新規低誘電樹脂を樹脂組成物に添加することにより、銅箔基板の誘電正接を低減する試みがされている。しかし、このような新規低誘電樹脂を使用して製造された銅箔基板は、誘電正接は低減したが、ガラス転移温度も低下している。
【0003】
上記に基づき、当業者にとって喫緊の課題である低誘電率、低誘電正接、および高いガラス転移温度(Tg)を備える低誘電率樹脂組成物が開発されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、低誘電率、低誘電正接、および高いガラス転移温度(Tg)を備える低誘電率樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の樹脂組成物は、樹脂混合物と、難燃剤と、球状シリカと、シロキサンカップリング剤とを含む。前記樹脂混合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、SBS樹脂とを含む。
【0006】
本発明の一実施例において、前記樹脂混合物の総重量に基づき、前記第1の樹脂の含有量が30重量%~60重量%であってよく、前記第2の樹脂の含有量が20重量%~40重量%であり、前記SBS樹脂の含有量が10重量%~30重量%であってよい。
【0007】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記球状シリカの添加量が20重量部~50重量部である。
【0008】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記難燃剤の添加量が10重量部~50重量部である。
【0009】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記シロキサンカップリング剤の添加量が0.1重量部~5重量部である。
【0010】
前記モノマー混合物におけるスチレン:ジビニルベンゼン:エチレンのモル比は1:1:1~2:2:1である。
【0011】
本発明の一実施例において、前記第1の樹脂の数平均分子量が4,500~6,500である。
【0012】
本発明の一実施例において、前記ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂が、以下の化学式で表し:
【化1】
Rは直接結合、メチレン基、エチレン基、イソプロピル基、1-メチルプロピレン基、スルホニレン基またはフルオレニレン基であり、nは3~25の整数である。
【0013】
本発明の一実施例において、前記SBS樹脂が、5%~40%のスチレンと、55%~90%の1,2ブタジエンと、5%~30%の1,4ブタジエンを含むモノマー混合物を重合して得られる。
【0014】
本発明の一実施例において、前記SBS樹脂の重量平均分子量が3,500~5,500である。
【0015】
本発明の一実施例において、前記樹脂混合物は、前記ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂と異なるポリフェニレンエーテル樹脂をさらに含む。
【0016】
本発明の一実施例において、前記球状シリカは、アクリルまたはビニルによる表面改質を有する。
【0017】
本発明の一実施例において、前記球状シリカの平均粒子径D50が2.0μm~3.0μmである。
【発明の効果】
【0018】
上記に基づき、本発明の樹脂組成物は、スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、ビスマレイミドにより変性されるポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、SBS樹脂とを組み合わせることにより、低い誘電率、低誘い電正接、及び高いガラス転移温度(Tg)を達成する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、これら実施形態は例示であり、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
ここで用いられる場合、「1つの数値~もう1つの数値」により表される範囲は、本明細書において該範囲内の全ての数値の列記を避けるための一般的表現である。このため、特定の数値範囲の記述は、その数値範囲内の任意の数値、並びに該範囲内の任意の数値により定義される最小数値を含み、本明細書における任意の数値及びそれ以下の数値範囲についても同様である。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、樹脂混合物と、難燃剤と、球状シリカと、シロキサンカップリング剤とを含む。前記樹脂混合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、ビスマレイミドにより変性されるポリフェニレンエーテル樹脂(あるいは、いくつかの例において、「ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂」と称する)を含む第2の樹脂と、SBS樹脂とを含む。以下に、上述した様々な成分を詳細に説明する。
【0022】
樹脂混合物
本実施形態において、前記樹脂混合物は、スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、SBS樹脂とを含むことができる。前記樹脂混合物は、必要に応じて、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂と異なるポリフェニレンエーテル樹脂などの他の樹脂を含むことができる。
【0023】
第1の樹脂
本実施形態において、前記第1の樹脂は、スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られることができる。前記モノマー混合物において、スチレン:ジビニルベンゼン:エチレンのモル比は1:1:1~2:2:1であってよい。前記第1の樹脂の数平均分子量は、4,500~6,500であってよい。前記樹脂混合物の総重量に基づき、前記第1の樹脂の含有量は、30重量%~60重量%であってよい。前記樹脂混合物に前記第1の樹脂を添加することにより、樹脂の誘電率を低下させるのに役立ち得る。
【0024】
第2の樹脂
本実施形態において、前記第2の樹脂は、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む。例えば、本発明の第2の樹脂は、台湾特許公開第I774559号に公開されるビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂であってよく、台湾特許公開第I774559号の公開全文の内容が参照により本明細書に組み込まれ、本明細書の一部として援用する。
【0025】
例えば、前記ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、以下の化学式で表することができ:
【化2】
Rは例えば、直接結合、メチレン基、エチレン基、イソプロピル基、1-メチルプロピレン基、スルホニレン基またはフルオレニレン基であってよく、
nは3~25の整数であってよく、10~18の整数が好ましい。
【0026】
ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂は台湾特許公開第I774559号に公開される製造方法により製造することができるが、本発明を限定するものではない。ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂は、例えば、他の好適な変性方法により形成することができる。
【0027】
前記樹脂混合物の総重量に基づき、前記第2の樹脂の含有量は、20重量%~40重量%である。前記第2の樹脂の化学的構造は、主鎖がポリフェニレンエーテルであり、末端が高耐熱性を有する反応性基(即ち、ビスマレイミド)により変性されるため、前記第2の樹脂は、比較的低い誘電率および誘電損失を有する。
【0028】
SBS樹脂
本実施形態において、前記SBS樹脂は、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)と称する。前記SBS樹脂は、5%~40%のスチレンと、55%~90%の1,2ブタジエンと、5%~30%の1,4ブタジエンを含むモノマー混合物を重合して得られることができる。前記SBS樹脂の重量平均分子量は、3,500~5,500である。前記樹脂混合物の総重量に基づき、前記SBS樹脂の含有量は、10重量%~30重量%である。SBS樹脂は、樹脂間の相分離、流動性及び充填性を向上させることができ、これにより低誘電特性を維持しつつ全体的な加工性を向上させる。
【0029】
ポリフェニレンエーテル樹脂
いくつかの実施例において、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂以外に、前記樹脂混合物は、他のポリフェニレンエーテル樹脂、例えば、少なくとも1つの変性基を有する熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂などをさらに含むことができる。前記変性基は、ヒドロキシル基、アミン基、ビニル基、スチリル基、メタクリレート基、エポキシ基、およびそれらの組み合わせからなる群より選ばれることができる。樹脂混合物の総重量に基づき、ポリフェニレンエーテル樹脂の添加量は、例えば、0重量%~20重量%であってよい。
【0030】
前記ポリフェニレンエーテルの具体例は、MX90(両末端の変性基が水酸基)またはMX9000(両末端の変性基がメタクリレート基)(Saudi Basic Industries Corporation(SABIC)から入手可能)、OPE-2St(両末端の変性基がスチレン基)、OPE-2EA(両末端の変性基がメタクリレート基)、OPE-2Gly(両末端の変性基がエポキシ基)(三菱ガス化学株式会社(MGC)から入手可能)を含むが、これらに限定されない。
【0031】
難燃剤
本実施形態において、前記難燃剤は、リン含有難燃剤または臭素含有難燃剤であってよい。前記難燃剤の具体例は、Exolit OP 935(クラリアント(Clariant)から入手可能)、SPB-100(大塚化学から入手可能)、PX-200(大八化学から入手可能)、PQ-60(晋一化工から入手可能)を含んでよいが、これらに限定されない。前記樹脂混合物100重量部に基づき、前記難燃剤の添加量は10重量部~50重量部であってよい。
【0032】
球状シリカ
本実施形態において、球状シリカは、電気特性を低下させて流動性と充填性を維持するため、合成法によって調製することが好ましい。球状シリカは、アクリル又はビニルによる表面改質を有し、99.0%以上の純度を有し、平均粒径D50が約2.0μm~3.0μmである。前記樹脂混合物100重量部に基づき、球状シリカの添加量は例えば、20重量部~50重量部である。
【0033】
シロキサンカップリング剤
本実施形態において、シロキサンカップリング剤はシロキサンを含んでよいが、これに限定されない。加えて、官能基の種類によって、アミノシラン化合物、エポキシドシラン化合物、ビニルシラン化合物、エステルシラン化合物、ヒドロキシシラン化合物、イソシアネートシラン化合物、メタクリルオキシシラン化合物、アクリルオキシシラン化合物に分けることができる。前記樹脂混合物が100重量部に基づき、前記シロキサンカップリング剤の添加量は、例えば、0.1重量部~5重量部であってよい。前記シロキサンカップリング剤は、樹脂組成物がガラス繊維布および粉末材料への相溶性および架橋度を向上させることができる。
【0034】
添加剤
本発明の樹脂組成物は、上記の成分以外に、その他の添加物、例えば、過酸化物開始剤をさらに備えることができる。
【0035】
注意すべき点として、本発明の樹脂組成物は、実際の設計要件に応じて、プリプレグ及び/又は銅箔基板(CCL)に加工されてよい。このため、本発明の樹脂組成物を用いて製造したプリプレグ及び銅箔基板も低い誘電率、低い誘電正接および高いガラス転移温度を有するため、好ましい信頼性を有する(必要とされる電気特性を維持することができる)。さらに具体的には、前記樹脂組成物により製造したプリプレグ又は基板の誘電率は約3.0~3.1であり、誘電正接は約0.0015または0.0015未満であり、且つ、ガラス転移温度は180℃以上であってよく、例えば、ガラス転移温度は約180℃~約250℃である。
【0036】
以下に、本発明の上述した樹脂組成物を実施例にて詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を限定することを意図していない。
【0037】
実施例
製造例:第2の樹脂を製造する
数平均分子量(Mn)が12,000以下、または10,000以下(例えば、Mn=500、1,400、1,600、1,800)であるポリフェニレンエーテル樹脂材料をジメチルアセトアミドに溶解し、炭酸カリウムおよびテトラフルオロニトロベンゼンを添加した。前記反応溶液を140℃まで昇温し、8時間反応させた後、室温まで冷却し、ろ過して固体を除去した。ろ過液をメタノール/水で沈殿させて、沈殿物がニトロ化ポリフェニレンエーテル樹脂であった。次に、ニトロ化ポリフェニレンエーテル樹脂をジメチルアセトアミドに溶解し、90℃で8時間水素化反応させてアミノ化ポリフェニレンエーテル樹脂を得た。その後、アミノ化ポリフェニレンエーテル樹脂をトルエンに投入し、無水マレイン酸とp-トルエンスルホン酸を添加し、120℃まで昇温して還流させ、8時間反応させて第2の樹脂を得た。得られた第2の樹脂は、ビスマレイミドにより変性されるポリフェニレンエーテル樹脂(あるいは、いくつかの例において、「PPE-BMI」と呼ばれる)であった。
【0038】
評価方法
それぞれの実施例及び比較例において製造した銅箔基板を下記方法で評価した。
【0039】
ガラス転移温度(℃)を動的機械分析装置(DMA)で試験した。
【0040】
吸水率(%)はサンプルを120℃の温度および2atmの圧力で圧力釜で120分加熱した後、加熱前後の重量変化を算出した。
【0041】
288℃でのはんだ耐熱性(秒):サンプルを120℃の温度および2atmの圧力で圧力釜で120分加熱した後、288℃のはんだ炉に浸漬し、サンプルが分解して剥離するのに要した時間を記録した。
【0042】
誘電率Dk:10GHzの周波数での誘電率を誘電分析装置(型番:HPアジレントE4991A)で試験した。
【0043】
誘電正接Df:10GHzの周波数での誘電正接を誘電分析装置(型番:HPアジレントE4991A)で試験した。
【0044】
樹脂流動率:170℃(±2.8℃)のプレスを200PSI(±25PSI)で10分間デプレスして、溶融及び冷却の後、ディスクを打ち抜き、該ディスクの重量を正確に量り、樹脂の流出量を算出した。
【0045】
樹脂相分離(スライス分析)
ステップ1:銅箔基板を1cm×1cmのサイズに切断し、樹脂グラウトのための金型に配置した。
ステップ2:樹脂が完全に乾燥して硬化した後、サンプルを研削・研磨した。
ステップ3:サンプルの内部で相分離が存在するか否かを確認するため、OM/SEMなどの高解像度顕微鏡でサンプルを分析した。
【0046】
特性の評価
表1に示すそれぞれの樹脂組成物をトルエンと混合し、熱硬化性樹脂組成物のワニスを形成した。次いで、該ワニスをガラス繊維布(南亜プラスチック、布タイプ1078LD)に室温で含浸させ、79重量%の樹脂含有量を有するプリプレグを取得するため、170℃(含浸装置で)で数分間乾燥させた。最後に、4つのプリプレグを2つの厚さが35μmの銅箔の間で互いに上に積み重ね、25kg/cmの圧力及び85℃の温度において20分間一定温度に保ち、再び毎分3℃の加熱速度で210℃まで加熱し、再び120分間一定温度に保ち、そして130℃までゆっくり冷却して厚さが0.59mmの銅箔基板を取得した。
【0047】
表1における各成分の詳細を以下に示す。
第1の樹脂:デンカ株式会社から購入、型番:Poly-DVB
第2の樹脂:製造例から得られた第2の樹脂
SBS樹脂:日本曹達株式会社から購入、型番:1,2-SBS Type-C
ポリフェニレンエーテル樹脂:SABICから購入、型番:MX9000
球状シリカ:三時紀から購入、型番:EQ2410-SMC
難燃剤:晋一化工から購入、型番:PQ-60
シロキサンカップリング剤:ダウコーニング(Dow Corning Corp.)より購入、型番:Z-6030
過酸化物:アルケマ株式会社から購入、型番:Luperox F
【0048】
【表1】
【0049】
表1から分かるように、比較例1の銅箔基板は、ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂を含まないため、ガラス転移温度が低いという欠点がある。これに対し、実施例1および実施例2の銅箔基板は、本発明の第2の樹脂が添加される処方が使用するため、低い誘電率および低い誘電正接を維持しつつ、高いガラス転移温度を達成できる。
【0050】
以上より、本発明の樹脂組成物は、本発明の樹脂組成物は、スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、ビスマレイミドにより変性されるポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、SBS樹脂とを組み合わせるため、樹脂組成物は高いガラス転移温度、低い誘電率および低誘い電正接を達成する。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の低誘電率樹脂組成物は銅箔基板およびその製造方法に適用できる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂混合物と、
難燃剤と、
球状シリカと、
シロキサンカップリング剤と、を含み、
前記樹脂混合物は、
スチレン、ジビニルベンゼン、およびエチレンを含むモノマー混合物を重合して得られる第1の樹脂と、
ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂を含む第2の樹脂と、
SBS樹脂と、を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記樹脂混合物の総重量に基づき、前記第1の樹脂の含有量が30重量%~60重量%であり、前記第2の樹脂の含有量が20重量%~40重量%であり、前記SBS樹脂の含有量が10重量%~30重量%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記球状シリカの添加量が20重量部~50重量部である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記難燃剤の添加量が10重量部~50重量部である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記樹脂混合物100重量部に対して、前記シロキサンカップリング剤の添加量が0.1重量部~5重量部である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記モノマー混合物におけるスチレン:ジビニルベンゼン:エチレンのモル比は1:1:1~2:2:1である、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記第1の樹脂の数平均分子量が4,500~6,500である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂が、以下の化学式で表し:
【化1】
Rは直接結合、メチレン基、エチレン基、イソプロピル基、1-メチルプロピレン基、スルホニレン基またはフルオレニレン基であり、nは3~25の整数である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記SBS樹脂が、5重量%~40重量%のスチレンと、55重量%~90重量%の1,2ブタジエンと、5重量%~30重量%の1,4ブタジエンを含むモノマー混合物を重合して得られる、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記SBS樹脂の重量平均分子量が3,500~5,500である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
前記樹脂混合物は、前記ビスマレイミド変性ポリフェニレンエーテル樹脂と異なるポリフェニレンエーテル樹脂をさらに含む、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項12】
前記球状シリカは、アクリルまたはビニルによる表面改質を有する、請求項1記載の樹脂組成物。
【請求項13】
前記球状シリカの平均粒子径D50が2.0μm~3.0μmである、請求項1記載の樹脂組成物。
【外国語明細書】