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特開2024-74747メーキャップ圧縮パウダー、メーキャップ圧縮パウダー組成物およびその製造方法
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  • 特開-メーキャップ圧縮パウダー、メーキャップ圧縮パウダー組成物およびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074747
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】メーキャップ圧縮パウダー、メーキャップ圧縮パウダー組成物およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/25 20060101AFI20240524BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20240524BHJP
   A61K 8/81 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61K8/25
A61Q1/00
A61K8/81
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023035011
(22)【出願日】2023-03-07
(31)【優先権主張番号】10-2022-0156192
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ペ, ギュタク
(72)【発明者】
【氏名】キム, キョンナム
(72)【発明者】
【氏名】パク, セジュン
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB362
4C083AB381
4C083AB382
4C083AB432
4C083AC242
4C083AD021
4C083AD072
4C083AD091
4C083AD092
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD191
4C083AD351
4C083AD352
4C083BB01
4C083BB11
4C083BB23
4C083BB36
4C083CC11
4C083DD17
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083FF04
(57)【要約】
【課題】見掛け密度は低くて軽いが、硬度は高く、安定的に成形され、薄くて均一な塗布と軽い使用性を実現できるメーキャップ圧縮パウダー、その製造のためのメーキャップ圧縮パウダー組成物およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明のメーキャップ圧縮パウダーは、1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有する、メーキャップ圧縮パウダー。
【請求項2】
前記圧縮パウダーは、0.9g/cm以下の見掛け密度を有する、請求項1に記載のメーキャップ圧縮パウダー。
【請求項3】
前記圧縮パウダーは、50%以上の空隙率を有する、請求項1に記載のメーキャップ圧縮パウダー。
【請求項4】
粉体部および溶媒を含み、
前記溶媒は、水および水溶性増粘剤を含む、メーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項5】
前記水溶性増粘剤は、無機増粘剤、アクリレート系化合物、またはこれらの組み合わせを含む、請求項4に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項6】
前記無機増粘剤は、ソジウムマグネシウムシリケート(Sodium Magnesium Silicate)、マグネシウムアルミニウムシリケート(Magnesium Aluminum Silicate)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項7】
前記アクリレート系化合物は、グリセリルポリメタクリレート(Glyceryl Polymethacrylate)、ソジウムポリアクリロイルジメチルタウレート(Sodium Polyacryloyldimethyl Taurate)、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー(Ammonium Acryloyldimethyl taurate/VP Copolymer)、またはこれらの組み合わせを含む、請求項5に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項8】
前記水溶性増粘剤は、糖類をさらに含む、請求項5に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項9】
前記糖類は、キサンタンガム、ゲランガム(gellan gum)、カラギーナン、またはこれらの組み合わせを含む、請求項8に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項10】
前記粉体部は、パウダーおよびオイルバインダーを含む、請求項4に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項11】
前記粉体部は、界面活性剤をさらに含む、請求項10に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項12】
前記粉体部および溶媒は、1:1~1:2の重量比で混合される、請求項4に記載のメーキャップ圧縮パウダー組成物。
【請求項13】
パウダーおよびオイルバインダーを含む粉体部を用意する段階;
水および水溶性増粘剤を含む溶媒を用意する段階;
前記粉体部および溶媒を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を湿式設備を用いて吸湿する段階;および
乾燥する段階を含む、メーキャップ圧縮パウダーの製造方法。
【請求項14】
前記混合物を湿式設備を用いて吸湿する段階は、前記混合物中の溶媒を基準として60%~80%の吸湿率を有するようにする段階である、請求項13に記載のメーキャップ圧縮パウダーの製造方法。
【請求項15】
前記粉体部は、界面活性剤をさらに含み、
前記粉体部の総量を基準として、前記パウダー、オイルバインダーおよび界面活性剤が、それぞれ85重量%~90重量%、8重量%~10重量%および2重量%~5重量%含まれる、請求項13に記載のメーキャップ圧縮パウダーの製造方法。
【請求項16】
前記水溶性増粘剤は、無機増粘剤およびアクリレート系化合物をさらに含む、請求項13に記載のメーキャップ圧縮パウダーの製造方法。
【請求項17】
前記溶媒は、前記溶媒の総量を基準として、前記水、無機増粘剤およびアクリレート系化合物が、それぞれ90重量%~99.9重量%、0.05重量%~4重量%および0.05重量%~6重量%含まれる、請求項16に記載のメーキャップ圧縮パウダーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本記載は、1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有するメーキャップ圧縮パウダー、その製造のためのメーキャップ圧縮パウダー組成物およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
圧縮パウダーは、市場でパウダーパクトおよびツインパクトなどのようなメーキャップ化粧品製品群を形成している。圧縮パウダーは、粉パウダーとは異なり、成形された状態での安定性を必要とする。つまり、外部衝撃による割れがあってはならないため、圧縮された状態で一定以上の物理的衝撃に耐えるように設計される。また、粉パウダーとは異なり、化粧道具、一般にパフに取られる量が一定で、かつ、塗布に適した量でなければならない。また、パフで圧縮パウダーをたたく時、パウダーの粉飛びがないように設計される。
【0003】
このように設計された一般的な圧縮パウダーは乾式成形により製造される。乾式成形は粉体を圧縮して成形する方法で、成形工程が最も単純かつ安価であるが、成形性が低下する。乾式成形方法で成形が困難な粉体(球状顔料、真珠光沢顔料など)を成形する方法として、粉体部に粘度が高い油性成分を混合することがあるが、ケーキングのような問題が発生し、使用感が重くなり、粉体上に油性成分を分散するので、かたまるように粉体が浮いてしまう問題がある。
【0004】
そこで、最近は、パウダーにオイルバインダーを混合した後、これらの成分を粉砕し圧縮して成形している。
【0005】
オイルバインダーは、主にパウダーの凝集性を高めることによって、パウダー圧縮時の成形性を補助し、外的衝撃に対して割れを防止し、化粧道具で圧縮パウダーを取る時の粉飛びを防止するために使用される。しかし、オイルバインダーを使用すれば、粉飛びは低減できるものの、塗布時に重さを感じさせるというデメリットがある。
【0006】
このようなオイルバインダーの使用によるデメリットを低減するようにした成形方法が湿式成形法である。
【0007】
湿式成形は、ソルベント(溶媒)に粉体を濡らしてスラリーにした後、真空吸湿して成形物を作る。成形物で使用されたソルベントを乾燥させるか(揮発性ソルベント)、乾燥させないか(不揮発性ソルベント)によって、乾燥湿式と、非乾燥湿式とに分けられる。メリットは、ソルベントで粉体を完全に濡らすため、ソルベントと油性成分の特性を均等に顔料に付与できるという点である。しかし、乾燥湿式は、スラリー状態で成形はされるものの、ソルベントが揮発し、粉体の成形性を再び低下させて粉飛びが激しくなるという問題がある。また、非乾燥湿式の場合、外相が油性成分であるのでベタベタした使用感が現れ、塗布時にオイルによる光沢感が現れて、真珠光沢顔料だけの光沢を表現することが不可能である。
【0008】
乾式成形および湿式成形のほか、焼成成形法もあるが、焼成成形は、バインダーを用いて粉体を練り込んだ後に成形をすることである。練り込むので最終成形物を所望の形に華やかに演出できるが、顔料をスラリー化してじっくり濡らす湿式と比較して、顔料に油性成分の特性を均一に付与するには限界がある。また、揮発性バインダーを使用する場合、非乾燥湿式と同様に、粉体の成形性が再び低下して粉飛びが激しくなるという問題がある。
【0009】
このため、メーキャップ圧縮パウダーを製造するに際して、成形が容易でない粉体を安定的に成形して、優れた使用感を付与できる技術へのニーズを依然として満たしていない状態である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2019-31456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一実施形態は、水を用いた乳化湿式方法を用いることで、見掛け密度は低くて軽いが、むしろ硬度は高く、安定的に成形されて、薄くて均一な塗布と軽い使用性を実現できるメーキャップ圧縮パウダー、その製造のためのメーキャップ圧縮パウダー組成物およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実施形態によれば、1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーを提供する。
【0013】
前記圧縮パウダーは、1.9g/cm~2.1g/cmの真密度を有することができる。
【0014】
前記圧縮パウダーは、0.9g/cm以下の見掛け密度を有することができる。
【0015】
前記圧縮パウダーは、50%以上の空隙率を有することができる。
【0016】
前記圧縮パウダーは、水溶性増粘剤を含むことができる。
【0017】
前記圧縮パウダーは、オイルバインダー、界面活性剤、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0018】
他の実施形態によれば、粉体部および溶媒を含み、前記溶媒は、水および水溶性増粘剤を含むメーキャップ圧縮パウダー組成物を提供する。
【0019】
前記水溶性増粘剤は、無機増粘剤、アクリレート系化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0020】
前記無機増粘剤は、ソジウムマグネシウムシリケート(Sodium Magnesium Silicate)、マグネシウムアルミニウムシリケート(Magnesium Aluminum Silicate)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0021】
前記アクリレート系化合物は、グリセリルポリメタクリレート(Glyceryl Polymethacrylate)、ソジウムポリアクリロイルジメチルタウレート(Sodium Polyacryloyldimethyl Taurate)、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー(Ammonium Acryloyldimethyl taurate/VP Copolymer)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
前記水溶性増粘剤は、糖類をさらに含むことができる。
【0023】
前記糖類は、キサンタンガム、ゲランガム(gellan gum)、カラギーナン、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0024】
前記粉体部は、パウダーおよびオイルバインダーを含むことができる。
【0025】
前記粉体部は、界面活性剤をさらに含むことができる。
【0026】
前記粉体部および溶媒は、1:1~1:2の重量比で混合できる。
【0027】
さらに他の実施形態は、
パウダーおよびオイルバインダーを含む粉体部を用意する段階;
水および水溶性増粘剤を含む溶媒を用意する段階;
前記粉体部および溶媒を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を湿式設備を用いて吸湿する段階;および
乾燥する段階を含む、メーキャップ圧縮パウダーの製造方法を提供する。
【0028】
前記混合物を湿式設備を用いて吸湿する段階は、前記混合物中の溶媒を基準として60%~80%の吸湿率を有するようにする段階であってもよい。
【0029】
前記粉体部は、界面活性剤をさらに含み、前記粉体部の総量を基準として、前記パウダー、オイルバインダーおよび界面活性剤が、それぞれ85重量%~90重量%、8重量%~10重量%および2重量%~5重量%含まれる。
【0030】
前記水溶性増粘剤は、無機増粘剤およびアクリレート系化合物をさらに含むことができる。
【0031】
前記溶媒は、前記溶媒の総量を基準として、前記水、無機増粘剤およびアクリレート系化合物が、それぞれ90重量%~99.9重量%、0.05重量%~4重量%および0.05重量%~6重量%含まれる。
【0032】
さらに他の実施形態は、前記製造方法で製造して1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーを提供する。
【発明の効果】
【0033】
一実施形態によるメーキャップ圧縮パウダーは、水を用いた乳化湿式の方法で成形をすることでオイルによるベタベタした使用感がなく、水溶性増粘剤を含むことで乾燥後にも安定的に粉体を成形することができる。また、かつて湿式成形工程で水を使用すれば、収縮の問題と粉体がぱさつく現象(洗濯物が乾燥後に硬くなるのと同じく、粉体も水に濡れた後に乾くと同様の現象が発生)が生じる問題を、無機増粘剤およびアクリレート系化合物を含む水溶性増粘剤を用いて解決した。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】一実施形態による水を用いた乳化湿式成形工程を示す図である。
図2】オイルを用いた非乾燥乳化湿式成形工程を示す図である。
図3】焼成成形工程を示す図である。
図4】真密度と見掛け密度の差異を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳細に説明する。しかし、本発明は種々の異なる形態で実現可能であり、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0036】
本明細書において、硬度とは、針硬度計Teclock GS-706Nを用いて測定した硬度を意味する。
【0037】
以下、一実施形態によるメーキャップ圧縮パウダーについて説明する。
【0038】
一般に、メーキャップ用圧縮パウダーを製造するに際して使用されるパウダーは、球状パウダー、アスペクト比(aspect ratio)が高くてサイズが大きい板状顔料、真珠光沢顔料などを使用するが、これらは圧縮パウダー状に成形することが容易でない粉体であるので、メーキャップ圧縮パウダーは通常粉飛びが激しいという問題がある。
【0039】
このため、湿式工程でメーキャップ圧縮パウダーを製造しようとする試みがあったが、揮発性溶媒を用いて湿式工程を進行させるので、溶媒が揮発し、粉体の成形性を低下させて粉飛び問題が解決されないことが発見され、図2のように、不揮発性オイルを用いた非乾燥乳化湿式成形工程が考案された。非乾燥乳化湿式成形工程の場合、顔料のような粉体の均一な配列と濡れ(wetting)による顔料などの粉体の均一なオイル特性の付与が可能であり、粉飛び現象を防止できるが、このような工程で製造されたメーキャップ圧縮パウダーは、空隙率が過度に低くて塗布性などの使用感があまりにも良くないという問題が発生した。そこで、成形物中に空隙を発生させるために、図3のように、焼成(baked)成形工程を導入してメーキャップ圧縮パウダーを製造しようと試みたが、この場合、練り込みと乾燥による気泡で成形物中に空隙が発生して軽い塗布性は実現できたが、粉体が均一に配列されない問題が発生した。つまり、どの成形工程を用いても各成形工程上のメリット・デメリットがあまりにも著しいので、メーキャップ圧縮パウダーに適した工程を見つけようとする試みが続いている。
【0040】
そこで、本発明者らは、メーキャップ圧縮パウダーに関する研究開発を行い続け、粉飛びがなく、薄く塗布されるなどの使用感にも優れたメーキャップ圧縮パウダーの場合、適切な硬度を有する、つまり、ある程度の硬さを維持しながらも、低い見掛け密度を実現することが核心であることを確認するようになった。しかし、薄くて軽い塗布性実現のためには、成形物中に空隙を発生させて空隙率を高めなければならないが、この場合、硬度が低くならざるを得ない。ある程度の硬さを維持するためには、空隙率の面で少しダメージ、つまり、空隙率が低くなることを甘受せざるを得ず、ここで研究開発の限界にぶつかってしまった。
【0041】
しかし、本発明者らはここで諦めずに、引き続き関連する研究開発を行った結果、一般に業界で重要視する見掛け密度ではない、圧縮パウダーの真密度を制御することによって、従来の圧縮パウダーと同等レベルの硬度を有しながらも、粉飛びなしに薄く塗布される圧縮パウダーの製造が可能であることを確認して、本発明を完成するに至った。
【0042】
具体的には、一実施形態によるメーキャップ圧縮パウダーは、1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度(例えば、45~60の硬度)を有する。メーキャップ圧縮パウダーが前記範囲の真密度と硬度を同時に有する場合、粉飛びもなく、軽くて薄く塗布される塗布性によって、ベタベタした使用感ではない、さわやかな使用感を提供することができる。
【0043】
より具体的には、メーキャップ圧縮パウダーの真密度が1.9g/cm未満の場合、空隙率の低下が著しくなって硬度が過度に高くなることによってメーキャップ圧縮パウダーがあまりにも硬くなり、これによってパフに取られる量が一定でなくなる問題がある。また、硬度が40未満の場合、メーキャップ圧縮パウダーが過度にもろくなって、パフで圧縮パウダーをたたく時、パウダーの粉飛びが発生し、硬度が60超過の場合、前述したように、メーキャップ圧縮パウダーがあまりにも硬くなって、パフに取られる量が一定でなくなる問題がある。
【0044】
図4を参照すれば、真密度は粉体自体が占める体積部分だけの体積を意味するのに対し、見掛け密度は成形物全体の体積を意味するもので、両者はその意味するところが異なることを確認できる。見掛け密度は、シリンダに粉体含有成形物を入れた時の体積で算出した密度で、粉体と粉体との間の空間、そして粉体内部の空間まで体積に含まれるので、見掛け密度は空隙率に影響される。このため、見掛け密度を制御するとしても空隙率によって必ず影響を受けざるを得ず、製品開発に際して引き続き限界にぶつかるしかなかった。
【0045】
しかし、真密度は粉体1つ1つそれ自体の体積で算出した密度であって、粉体間の空間および粉体内部の空間とも体積に含まれないので、空隙率に影響されない。このため、真密度を制御することによって、高い空隙率(低い見掛け密度)を有しながらも、40~60レベルの硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーの製造が可能であった。
【0046】
例えば、一実施形態によるメーキャップ圧縮パウダーは、1.9g/cm~2.1g/cmの真密度を有することができる。前記メーキャップ圧縮パウダーの真密度が2.1g/cmを超える場合、40~60の硬度レベルを維持しにくいことがある。
【0047】
例えば、前記メーキャップ圧縮パウダーは、0.9g/cm以下、例えば、0.8g/cm以下の見掛け密度を有することができる。例えば、前記メーキャップ圧縮パウダーは、0.4g/cm以上、例えば、0.5g/cm以上の見掛け密度を有することができる。前記メーキャップ圧縮パウダーが前記範囲の見掛け密度を有する場合、空隙率を高められるので、硬度を40~60レベルに制御することができる。
【0048】
例えば、前記メーキャップ圧縮パウダーは、50%以上、例えば60%以上の空隙率を有することができる。前記メーキャップ圧縮パウダーが前記範囲の空隙率を有する場合、硬度を40~60レベルに制御することができる。
【0049】
つまり、一実施形態によるメーキャップ圧縮パウダーは、真密度を1.9g/cm以上に設定することを前提に、見掛け密度および空隙率により硬度を40~60レベルに制御することが核心といえる。
【0050】
しかし、従来と同様の成形工程では、このような真密度と硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーの製造が困難である。そこで、本発明者らは、乳化湿式剤形にメーキャップ圧縮パウダーを製造しかつ、粉体部と溶媒の組成を制御したメーキャップ圧縮パウダー組成物を開発し、これを乳化湿式成形工程に適用することによって、このような真密度と硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーを製造することができた。
【0051】
具体的には、他の実施形態によるメーキャップ圧縮パウダー組成物は、粉体部および溶媒を含み、前記溶媒は、水および水溶性増粘剤を含む。
【0052】
前記水溶性増粘剤が溶媒に含まれることによって、前述した真密度と硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーの製造が可能であり、このように製造されたメーキャップ圧縮パウダーは、粉飛びなしに軽く塗布されて、使用感が非常に優れることができる。さらに、前記組成物を吸湿成形後に乾燥させると、水に濡れていた粉体部のパウダーが乾燥しながらサクサクした使用感が現れる。これは溶媒として水を使用する場合に避けられない現象であるが、一実施形態によれば、溶媒として水と共に水溶性増粘剤を一緒に用いることによって、このようなサクサクした使用感の発生を未然に防止することができる。
【0053】
例えば、前記溶媒の総量(100重量%)を基準として、前記水は90重量%~99.9重量%含まれ、前記水溶性増粘剤は0.1重量%~10重量%含まれる。
【0054】
例えば、前記水溶性増粘剤は、無機増粘剤、アクリレート系化合物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0055】
例えば、前記無機増粘剤は、ソジウムマグネシウムシリケート(Sodium Magnesium Silicate)、マグネシウムアルミニウムシリケート(Magnesium Aluminum Silicate)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0056】
例えば、前記無機増粘剤は、前記溶媒の総量(100重量%)を基準として0.05重量%~4重量%含まれる。
【0057】
前記無機増粘剤の種類および含有量を前記のように制御する場合、最終的に製造されたメーキャップ圧縮パウダーの粉飛び現象を最小化できる。
【0058】
例えば、前記アクリレート系化合物は、グリセリルポリメタクリレート(Glyceryl Polymethacrylate)、ソジウムポリアクリロイルジメチルタウレート(Sodium Polyacryloyldimethyl Taurate)、アンモニウムアクリロイルジメチルタウレート/VPコポリマー(Ammonium Acryloyldimethyl taurate/VP Copolymer)、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0059】
例えば、前記アクリレート系化合物は、前記溶媒の総量(100重量%)を基準として0.05重量%~6重量%含まれる。
【0060】
前記アクリレート系化合物の種類および含有量を前記のように制御する場合、最終的に製造されたメーキャップ圧縮パウダーの真密度および硬度を前述した範囲に制御することが容易であり得る。
【0061】
例えば、前記水溶性増粘剤は、糖類をさらに含むことができる。
【0062】
例えば、前記糖類は、キサンタンガム、ゲランガム(gellan gum)、カラギーナン、またはこれらの組み合わせを含むことができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。前記水溶性増粘剤が前記糖類をさらに含むことによって、前記サクサクした使用感に対するマスキング効果を極大化可能で、柔らかい使用感の実現に有利であり得る。
【0063】
例えば、前記粉体部は、パウダーおよびオイルバインダーを含むことができる。
【0064】
例えば、前記粉体部は、界面活性剤をさらに含むことができる。前記粉体部が界面活性剤をさらに含むことによって、乳化湿式工程による時、前記水を含む溶媒中の粉体部の分散性を高めてより均一なスラリーを製造することができ、これによって最終成形物においてより滑らかで柔らかな表面状態の実現が可能である。
【0065】
例えば、前記界面活性剤としては、PEG-Sorbitan(Polysorbate85、Polysorbate60、Polysorbate20)、Sorbitan(Sorbitan Stearate、Sorbitan Sesquioleate、Sorbitan isostearate)、PEG-sililcone(PEG-10 Dimethicone、PEG-12 Dimethicone、Lauryl PEG-9 Polydimethylsiloxyethyl Dimethicone)、PEG-Ester(PEG-15 Glyceryl Stearate、PEG-7 Glyceryl Cocoate)、Polyglyceryl Ester(Polyglyceryl-10 dioleate、polyglyceryl-10 laurate、polyglyceryl-5 oleate)、Polyglyceryl Silicone(Lauryl Polyglyceryl-3 Polydimethylsiloxyethyl dimethicone、Polyglyceryl-3 Polydimethylsiloxyethyl dimethicone)などを使用することができるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0066】
例えば、前記粉体部は、前記粉体部の総量(100重量%)を基準として、前記パウダー85重量%~90重量%、前記オイルバインダー8重量%~10重量%および前記界面活性剤2重量%~5重量%を含むことができる。前記粉体部の組成が前記のような場合、粉飛び現象の抑制とともに、前述した水溶性増粘剤を含む水(溶媒)と反応して前述した真密度および硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーを容易に製造することができる。特に、前記オイルバインダーは、前記粉体部の総量(100重量%)を基準として、8重量%未満で使用されると、粉飛び現象があり、オイルバインダーの使用効果がわずかであり、10重量%超過で使用されると、表面の光沢感は向上できるが、ケーキング現象およびベタつきなどが発生して剤形的価値が低下することがある。
【0067】
例えば、前記パウダーは、化粧品分野にて化粧用パウダーとして通常使用されるものであれば特に制限されないが、例えば、体質顔料(板状、球状)、色素および/またはパール、例えば、タルク、マイカ、シリカ、ナイロン粉、酸化鉄およびパールからなる群より選択される少なくとも1種以上が使用できる。
【0068】
例えば、前記パウダーとして、その表面を重合体でコーティング処理したパウダーを使用してもよいし、例えば、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー&ポリメチルメタクリレート、シリカ(HDI/Trimethylol Hexyllactone Crosspolymer&Polymethyl Methacrylate、silica;柔らかさを左右するK valueが高くて押されやすいのに対し、弾性指数のRecovery rate(押されてから本来の形に戻ろうとする性質)は低くて圧縮されやすいので、成形性が良い)、HDI/トリメチロールヘキシルラクトンクロスポリマー、シリカ(HDI/Trimethylol Hexyllactone Crosspolymer、silica)、合成フルオロフロゴパイト、硫酸バリウム、ミリスチン酸マグネシウム、またはこれらの組み合わせなどを使用してもよい。
【0069】
例えば、前記オイルバインダーは、化粧品分野にて通常使用されるものであれば特に制限されないが、例えば、ヘキシルラウレート(Hexyl laurate)、ジカプリリルカーボネート(Dicaprylyl carbonate)、ジイソステアリルマレート(Diisostearyl malate)、ブチレングリコールジカプリレート/ジカプレート(Butylene glycol dicaprylate/dicaprate)、セチルエチルヘキサノエート(Cetyl ethylhexanoate)、トリエチルヘキサノイン(Triethylhexanoin)、ジセテアリルダイマージリノレエート(Dicetearyl dimer dilinoleate)、カプリリック/カプリックトリグリセリド(Caprylic/Capric Triglyceride)、ポリグリセリル-2トリイソステアレート(Polyglyceryl-2 Triisostearate)、ペンタエリスリチルテトライソステアレート(Pentaerythrityl Tetraisostearate)などのエステル系オイル;ポリブテン(Polybutene)、水添ポリイソブテン(Hydrogenated polyisobutene)、植物性スクワラン(Phytosqualane)などの炭化水素系オイル;フェニルトリメチコン(Phenyl trimethicone)、ジメチコン(Dimethicone)などのシリコーン系オイルのうちの1種または2種以上を混合したものが使用できる。
【0070】
例えば、前記粉体部および溶媒は、1:1~1:2の重量比で混合できる。前記粉体部および溶媒が前記重量比で混合される場合、前記混合組成物を乳化湿式成形工程に適用して、前述した真密度および硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーを容易に製造することができる。
【0071】
さらに他の実施形態によれば、
パウダーおよびオイルバインダーを含む粉体部を用意する段階;
水および水溶性増粘剤を含む溶媒を用意する段階;
前記粉体部および溶媒を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を湿式設備を用いて吸湿する段階(吸湿成形する段階);および
乾燥する段階を含む、メーキャップ圧縮パウダーの製造方法を提供する。
【0072】
この時、前記溶媒は、必ず水および水溶性増粘剤を含まなければならない。既存の湿式成形工程でも水を溶媒として用いる場合があったが、この場合、製造単価を低減できるというメリットがあるが、乾燥後に成形物が収縮する現象が発生し、また、水に濡れていた粉体が乾燥しながら生じるサクサクした使用感のため、水ではないオイルを溶媒として用いる湿式成形工程が主に用いられている。しかし、一実施形態によれば、水と共に水溶性増粘剤も含む溶媒を用いて湿式成形工程を行うので、粉体が水を含む溶媒中に均一に分散する湿式成形工程のメリットと、空隙の形成による軽い塗布性の実現が容易な焼成成形工程のメリットを同時に有するメーキャップ圧縮(色調)パウダーを容易に製造することができる。言い換えれば、水および水溶性増粘剤を含む溶媒を粉体と混合し、この混合物(スラリー)を乳化湿式成形工程に適用することによって、従来の湿式成形工程および焼成成形工程のメリットをすべて生かすことができ、したがって、真密度および硬度が前述した範囲に制御されるメーキャップ圧縮パウダーを容易に製造することができる。
【0073】
例えば、前記混合物を湿式設備を用いて吸湿する段階(吸湿成形する段階)は、前記混合物中の溶媒を基準として60%~80%の吸湿率を有するようにする段階であってもよい。前記吸湿成形する段階で吸湿率が80%を超える場合には、後続の乾燥段階後に粉体の成形性が低下して、粉飛び現象が発生したり、粉体が激しく収縮する現象が発生したりするので好ましくない。前記吸湿率が60%未満の場合には、前述したサクサクした使用感の発生を防止しにくいことがあるので好ましくない。
【0074】
湿式状態は、パウダーが吸収できる限界値を超えてその吸収能より多い溶媒が含まれた時に流れ性を有する状態であって、パウダーが溶媒に浮いて練り込み不可能なスラリー状態をいう。湿式状態では、オイルバインダーがパウダー粒子の周囲を完全にコーティングすることによって、一般の乾式成形に比べてより柔らかな使用感を期待できる。湿式状態でスラリー化された混合物の一定量を皿に充填した後、圧着および吸引により溶媒を抽出し、真空状態で圧縮させて成形した後、内容物を乾燥させる。
【0075】
前記成形方法としては特に制限されず、当業界にて使用する一般的な方法を用いることができ、例えば、プレス機を用いて成形することができる。一実施形態による組成物を用いて混合物を成形すれば、パウダーがよくかたまるので、前述した真密度および硬度範囲を有する圧縮パウダーの成形が容易であり得る。
【0076】
前記乾燥は、40℃~70℃の温度で行われる。前記温度が40℃未満であれば、乾燥効率が低下し、70℃を超えると、揮発する溶媒の量が急速に増加して、表面と内部とのバランスが崩れて粉飛び現象が発生するので、成形安定性に悪影響を及ぼすことがある。
【0077】
このように、成形後に使用した溶媒を乾燥させると、パウダーの圧縮された形態は維持されながら、使用感が軽い、つまり、1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有するメーキャップ圧縮パウダー製品を得ることができる。
【0078】
例えば、前記粉体部は、界面活性剤をさらに含むことができる。
【0079】
例えば、前記粉体部の総量(100重量%)を基準として、前記パウダー、オイルバインダーおよび界面活性剤は、それぞれ85重量%~90重量%、8重量%~10重量%および2重量%~5重量%含まれる。
【0080】
例えば、前記粉体部については上述した通りである。
【0081】
例えば、前記水溶性増粘剤は、無機増粘剤およびアクリレート系化合物を含むことができる。この時、前記無機増粘剤およびアクリレート系化合物については上述した通りである。
【0082】
さらに他の実施形態によれば、前記製造方法で製造された1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有するメーキャップ圧縮パウダーを提供する。
【0083】
以下、実施例を通じて上述した本発明の実施形態をより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は単に説明の目的のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0084】
[実施例および比較例]
圧縮パウダーの製造
(実施例1および実施例2)
下記の表1および表2に提示された組成により乳化湿式成形工程で実施例1および実施例2による圧縮パウダーをそれぞれ製造した。具体的には、パウダー、オイルバインダーおよび界面活性剤をヘンシェルミキサに投入し、均一に混合して粉体部を製造した。前記粉体部と溶媒とを100:150の重量比で均一に混合した。前記のように混合して作られた内容物(スラリー)を真空吸湿して成形(溶媒対比60%の吸湿率)した後、約50℃で約15時間乾燥して圧縮パウダーを製造した。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
(比較例1)
前記表1および表2に提示された組成により乾式成形工程で比較例1の圧縮パウダーを製造した。具体的には、粉体部をモールドに入れて、圧力を加えて圧縮成形して圧縮パウダーを製造した。
【0088】
(比較例2)
前記表1および表2に提示された組成により焼成成形工程で比較例2の圧縮パウダーを製造した。具体的には、エマルジョンを用いて練り粉(粉体部:エマルジョン=6:4の重量比を有するもの)にし、射出機を用いて射出した後、皿形状に合わせて入れて、圧縮および乾燥(50℃、12時間)して圧縮パウダーを製造した。
【0089】
(比較例3)
前記表1および表2に提示された組成により非乾燥湿式成形工程で比較例3の圧縮パウダーを製造した。具体的には、オイル(dimethicon類)を溶媒として用いてスラリーを製造(粉体部100重量部対比、オイルを80重量部使用)した後、前記スラリーを充填し、前記オイルを真空吸湿して成形して圧縮パウダーを製造した。この時、乾燥工程は別途に行わなかった。
【0090】
[評価]
真密度等
実施例1および比較例1~比較例3の圧縮パウダーの重量、真体積、真密度、全体体積、見掛け密度および空隙率をガスピクノメーター(https://www.anton-paar.com/kr-kr/products/details/ultrapyc/)を用いて評価し、下記の表3に示した。
【0091】
【表3】
【0092】
前記表3に示すように、実施例1による圧縮パウダーは、比較例1~比較例3による圧縮パウダーとは異なり、1.9g/cm以上の真密度および40~60の硬度を有することが分かる。
【0093】
成形安定性
下記の指数および評価基準で粉飛びおよび塗布性の有無を評価し、その結果を下記表4に示した。
<粉飛び指数>
上:成形割れするほどの粉飛び
中:まあまあの粉飛び
下:ほとんど粉飛びなし
<塗布性評価基準>
5 極めて優秀
4 優秀
3 普通
2 劣化
1 極めて劣化
【0094】
【表4】
【0095】
以上、本発明の好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の様々な変形および改良形態も本発明の権利範囲に属する。
図1
図2
図3
図4