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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074753
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】アンテナモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01Q 5/30 20150101AFI20240524BHJP
   H01Q 9/04 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
H01Q5/30
H01Q9/04
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023065132
(22)【出願日】2023-04-12
(31)【優先権主張番号】111144326
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】504429600
【氏名又は名称】緯創資通股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WISTRON CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】沈 素梅
(57)【要約】
【課題】アンテナモジュールを提供する。
【解決手段】アンテナモジュールは、接地放射体と、第1放射体と、第2放射体と、第3放射体とを含むアンテナ構造を含む。接地放射体は、主接地部分と、主接地部分の一方側から延伸する分岐部分とを含む。第1放射体は、主接地部分の一方側に位置し、フィード端を含む。第2放射体は、主接地部分の一方側に接続される。第1放射体は、分岐部分と第2放射体との間に位置する。主接地部分、分岐部分、第1放射体、及び第2放射体は、導波構造を共に形成する。第1放射体と第2放射体は第1の高周波帯域を励起するよう構成される。第3放射体は主接地部分の一方側に位置しており、第1放射体に接続され、分岐部分の近傍に位置する。第1放射体と第3放射体は第2の高周波数帯域を励起するよう構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのアンテナ構造を含み、
各前記少なくとも1つのアンテナ構造が、
主接地部分と、前記主接地部分の一方側から延伸する分岐部分とを含む、接地放射体と、
前記主接地部分の前記一方側に位置し、フィード端を含む、第1放射体と、
前記接地放射体の前記主接地部分の前記一方側に接続される、第2放射体と、
前記接地放射体の前記主接地部分の前記一方側に位置し、前記第1放射体に接続され、前記分岐部分の近傍に位置する、第3放射体と
を含み、
前記第1放射体が前記分岐部分と前記第2放射体との間に位置し、前記主接地部分、前記分岐部分、前記第1放射体、及び前記第2放射体が、導波構造を共に形成し、前記第2放射体が前記第1放射体の近傍に設けられ、
前記第1放射体と前記第2放射体が第1の高周波数帯域を励起するよう構成され、
前記第1放射体と前記第3放射体が第2の高周波数帯域を励起するよう構成される、
アンテナモジュール。
【請求項2】
各前記少なくとも1つのアンテナ構造が、前記接地放射体の前記主接地部分の前記一方側に位置し、前記第1放射体に接続される、第4放射体を更に含み、
前記第1放射体と前記第4放射体が、低周波帯域を励起するよう構成され、
前記第2放射体が、前記第4放射体の一部を介して前記第1放射体に接続され、前記分岐部分、前記第1放射体、及び前記第2放射体が互いに平行であり、前記第1放射体と前記第2放射体との間の距離が、前記第1放射体と前記分岐部分との間の距離よりも短く、
前記第1放射体と前記第2放射体との間の距離が0.3mm~0.7mmの範囲であり、前記第1放射体と前記分岐部分との間の距離が0.8mm~1.2mmの範囲である、
請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項3】
各前記少なくとも1つのアンテナ構造が、前記接地放射体の前記主接地部分の前記一方側に位置し、前記第1放射体に接続される、第4放射体を更に含み、
前記第1放射体と前記第4放射体が、低周波帯域を励起するよう構成され、
前記分岐部分、前記第1放射体、及び前記第2放射体が前記主接地部分の前記一方側から第1の方向に沿って延伸し、前記第1の方向に垂直な第2の方向に沿って並んで設けられ、
前記第2の方向における前記第4放射体の縁部が、前記第2の方向における前記主接地部分の縁部を超え、
前記第4放射体が第1部分と第2部分とを含み、前記第1放射体が前記第1部分と前記第2部分との間に位置しており、前記第2放射体が前記第1部分に接続され、
前記第1部分が、屈折して接続された第1区域と第2区域と第3区域とを含み、前記第1区域が前記第2部分に接続され、前記第3区域が前記第1区域と前記主接地部分との間に位置し、前記第3区域が重複領域を含み、前記重複領域の前記第1の方向に沿った前記主接地部分上の投影が、前記主接地部分と重なり、前記第2の方向における前記重複領域の長さが5mm未満である、
請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項4】
前記第1放射体の長さと前記第2放射体の長さが、前記第1の高周波数帯域の波長の0.2倍から前記第1の高周波数帯域の波長の0.3倍までの範囲であり、
前記第1放射体の長さと前記第3放射体の長さが、前記第2の高周波数帯域の波長の0.2倍から前記第2の高周波数帯域の波長の0.3倍までの範囲であり、
前記分岐部分、前記第1放射体、及び前記第2放射体が、前記第1の方向に沿って前記主接地部分の前記一方側から延伸し、前記第1の方向に垂直な前記第2の方向に沿って並んで設けられ、前記主接地部分の幅が前記第2の方向に沿って漸減し、
前記主接地部分が三角形状又は矩形状である
請求項1に記載のアンテナモジュール。
【請求項5】
前記少なくとも1つのアンテナ構造が、中線の両側に鏡像的に設けられる2つのアンテナ構造を含み、前記2つのアンテナ構造のうちの一方の前記第3放射体が、前記2つのアンテナ構造のうちの他方の前記第3放射体に面しており、前記2つのアンテナ構造のうちの前記一方の前記第3放射体と前記2つのアンテナ構造のうちの前記他方の前記第3放射体との間の距離が、前記第2の高周波数帯域の波長の0.5倍以上であり、
前記2つのアンテナ構造のうちの前記一方の前記接地放射体が、2つのアンテナ構造のうちの前記他方の前記接地放射体から分離されており、
前記2つのアンテナ構造のうちの前記一方の前記接地放射体と前記2つのアンテナ構造のうちの前記他方の前記接地放射体との間の距離が、1mm以上である、
請求項1に記載のアンテナモジュール。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明はアンテナモジュールに関するものであり、より具体的には、複数の周波数帯域を励起可能なアンテナモジュールに関するものである。
【0002】
科学技術に伴い、マルチ帯域アンテナに対するユーザの需要が日に日に増加している。複数の周波数帯域を励起し、寸法が小さく、放射効率の良いアンテナを如何に設計するかが、当業者が達成するよう努力している目標の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、マルチ周波数帯域の要件に符合するのできるアンテナモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の1つの実施形態は、少なくとも1つのアンテナ構造を含むアンテナモジュールを提供する。少なくとも1つのアンテナ構造のそれぞれは、接地放射体と、第1放射体と、第2放射体と、第3放射体とを含む。接地放射体は、主接地部分と、主接地部分の一方側から延伸する分岐部分とを含む。第1放射体は、主接地部分の一方側に位置し、フィード端(feeding terminal)を含む。第2放射体は、接地放射体の主接地部分の一方側に接続される。第1放射体は、分岐部分と第2放射体との間に位置する。主接地部分、分岐部分、第1放射体、及び第2放射体は、導波構造を共に形成する。第2放射体は第1放射体の近傍に設けられ、第1放射体と第2放射体は第1の高周波帯域を励起するよう構成される。第3放射体は接地放射体の主接地部分の一方側に位置しており、第1放射体に接続され、分岐部分の近傍に位置する。第1放射体と第3放射体は、第2の高周波数帯域を励起するよう構成される。
【0005】
本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つのアンテナ構造のそれぞれは、接地放射体の主接地部分の一方側に位置して第1放射体に接続される第4放射体を更に含み、第1放射体と第4放射体は低周波帯域を励起するよう構成される。
【0006】
本発明の1つの実施形態において、第2放射体は第4放射体の一部を介して第1放射体に接続され、分岐部分、第1放射体、及び第2放射体は互いに平行であり、第1放射体と第2放射体との間の距離は、第1放射体と分岐部分との間の距離よりも短い。
【0007】
本発明の1つの実施形態において、第1放射体と第2放射体との間の距離は0.3mm~0.7mmの範囲であり、第1放射体と分岐部分との間の距離は0.8mm~1.2mmの範囲である。
【0008】
本発明の1つの実施形態において、分岐部分、第1放射体、及び第2放射体は、主接地部分の一方側から第1の方向に沿って延伸し、第1の方向と垂直な第2の方向に沿って並んで設けられ、第2の方向における第4放射体の縁部は、第2の方向における主接地部分の縁部を超える。
【0009】
本発明の1つの実施形態において、第4放射体は第1部分と第2部分とを含み、第1放射体は第1部分と第2部分との間に位置しており、第2放射体は第1部分に接続される。
【0010】
本発明の1つの実施形態において、第1部分は、屈折して接続された第1区域と第2区域と第3区域とを含み、第1区域は第2部分に接続され、第3区域は第1区域と主接地部分との間に位置し、第3区域は重複領域を含み、重複領域の第1の方向に沿った主接地部分上の投影は、主接地部分と重なる。
【0011】
本発明の1つの実施形態において、第2の方向における重複領域の長さは5mm未満である。
【0012】
本発明の1つの実施形態において、第1放射体の長さと第4放射体の長さは、低周波数帯域の波長の0.2倍から低周波数帯域の波長の0.3倍までの範囲である。
【0013】
本発明の1つの実施形態において、第1放射体の長さと第2放射体の長さは、第1の高周波数帯域の波長の0.2倍から第1の高周波数帯域の波長の0.3倍までの範囲である。
【0014】
本発明の1つの実施形態において、第1放射体の長さと第3放射体の長さは、第2の高周波数帯域の波長の0.2倍から第2の高周波数帯域の波長の0.3倍までの範囲である。
【0015】
本発明の1つの実施形態において、分岐部分、第1放射体、及び第2放射体は、主接地部分の一方側から第1の方向に沿って延伸し、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って並んで設けられ、主接地部分の幅は第2の方向に沿って漸減する。
【0016】
本発明の1つの実施形態において、主接地部分は三角形状又は矩形状である。
【0017】
本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つのアンテナ構造は、中線の両側に鏡像的に設けられる2つのアンテナ構造を含み、2つのアンテナ構造のうちの一方の第3放射体は、2つのアンテナ構造のうちの他方の第3放射体に面しており、2つのアンテナ構造のうちの一方の第3放射体と2つのアンテナ構造のうちの他方の第3放射体との間の距離は、第2の高周波数帯域の波長の0.5倍以上である。
【0018】
本発明の1つの実施形態において、2つのアンテナ構造のうちの一方の接地放射体は、2つのアンテナ構造のうちの他方の接地放射体から分離されている。
【0019】
本発明の1つの実施形態において、2つのアンテナ構造のうちの一方の接地放射体と2つのアンテナ構造のうちの他方の接地放射体との間の距離は、1mm以上である。
【0020】
本発明の1つの実施形態において、2つのアンテナ構造のそれぞれが、対応する接地放射体の主接地部分の一方側上に位置して、対応する第1放射体に接続される第4放射体を更に含み、第1放射体と対応する第4放射体とは低周波数帯域を励起するよう構成される。
【0021】
本発明の1つの実施形態において、第4放射体は、中線から離れた第1部分と、中線に近い第2部分とを含み、第1放射体は第1部分と第2部分との間に位置しており、第1部分の長さは第2部分の長さよりも長い。
【発明の効果】
【0022】
上記から、本発明の1つ以上の実施形態において提供されるアンテナモジュールの少なくとも1つのアンテナ構造のそれぞれは、接地放射体と、第1放射体と、第2放射体と、第3放射体とを含む。接地放射体は、主接地部分と、主接地部分の一方側から延伸する分岐部分とを含む。第1放射体は、主接地部分の一方側に位置しており、フィード端(feeding terminal)を含む。第2放射体は、接地放射体の主接地部分の一方側に接続される。第1放射体は、分岐部分と第2放射体との間に位置する。第3放射体は、接地放射体の主接地部分の一方側に位置しており、第1放射体に接続され、分岐部分の近傍に位置する。主接地部分、分岐部分、第1放射体、及び第2放射体は、導波構造を共に形成する。第1放射体と第2放射体は第1の高周波帯域を励起するよう構成され、第1放射体と第3放射体は、第2の高周波数帯域を励起するよう構成される。前記構成において、本発明の1つ以上の実施形態において提供されるアンテナモジュールは、マルチ周波数帯域の要件に符合することができる。
【0023】
上記をより理解し易くするため、いくつかの実施形態を図面と併せて以下に詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
添付図面は、本発明の更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する。図面は本発明の実施形態を示し、明細書と共に、本発明の原理を説明する役割を果たす。
【0025】
図1】本発明の1つの実施形態による、筐体内に設けられたアンテナモジュールの外観を表す概略図である。
図2図1に図示したアンテナモジュールのアンテナ構造のうちの1つの外観を表す概略図である。
図3】SパラメータS11、S22、S21に対応する図1の2つのアンテナ構造の周波数間の関係を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
既存の市販されている無線通信装置は、主に、全アルミニウム-マグネシウム材料製の筐体、小型化された寸法、高データ伝送効率を有するよう開発されている。高データ伝送効率を達成するため、無線通信システムは、複数の周波数帯域の信号を同時にするためにMIMO(multi-input multi-output)マルチアンテナシステムを採用している。
【0027】
しかし、微細化の要件に符合させるため、アンテナは互いに過度に接近して配置されることが多く、アンテナ間分離が劣り、更にはデータ伝送効率が下がる結果となる。同時マルチ周波数帯域(WiFi2.4GとWiFi7、即ち、2.4GHz~2.5GHz及び5.15GHz~7.125GHzの範囲の周波数帯域)の要件を満たし、良好なアンテナ間分離を有し、良好なアンテナ放射効率を有するアンテナモジュール10を以下に説明する。
【0028】
図1は、本発明の1つの実施形態による、筐体内に設けられたアンテナモジュールの外観を表す概略図である。図1を参照し、アンテナモジュール10は少なくとも1つのアンテナ構造を含む。具体的には、本発明の1つの実施形態において、少なくとも1つのアンテナ構造は、2つのアンテナ構造100と200を含み、2つのアンテナ構造200と200は中線Aの両側に鏡像的に設けられる。
【0029】
アンテナモジュール10は、平衡型ダイポールアンテナに基づき改良された非対称アンテナ構造100と200から成る。平衡型ダイポールアンテナの長さ及び幅は、例えば100mm及び36mmであり、本実施形態におけるアンテナモジュール10の長さ及び幅は、例えば75mm及び14.5mmである。言及すべき点として、ここでの「非対称」は、上下非対称な単一のアンテナ構造、即ち、放射体と接地面とが非対称であることを指す。2つのアンテナ構造100と200は構造的に同一であることから、図1の左側に示すアンテナ構造100を先ず詳細に説明する。実際、2つのアンテナ構造100と200は同一の技術的効果を奏する。
【0030】
図2は、図1に図示したアンテナモジュールのアンテナ構造のうちの1つの外観を表す概略図である。図2を参照し、本発明の1つの実施形態によると、アンテナ構造100と200のそれぞれは、接地放射体110と、第1放射体120と、第2放射体130とを含む。接地放射体110は、主接地部分112と、主接地部分112の一方側から延伸する分岐部分114とを含む。主接地部分112は、三角形状又は矩形状であるが、これは本発明を限定すると見なされるべきではない。本実施形態における分岐部分114の長さ及び幅は、例えばそれぞれ4mm及び2mmである。
【0031】
第1放射体120はフィード端(feeding terminal)125を含み、第1放射体120は主接地部分112の一方側に位置している。第2放射体130は、接地放射体110の主接地部分112の一方側に接続される。フィード端125と主接地部分112との間には同軸伝送線(未図示)が存在する。同軸伝送線の正極端子はフィード端125に接続され、同軸伝送線の負極端子は主接地部分112に接続される。
【0032】
具体的には、分岐部分114、第1放射体120、第2放射体130は、主接地部分112の一方側から第1の方向D1に沿って延伸し、互いに平行であり、分岐部分114、第1放射体120、第2放射体130は、第1の方向D1に垂直な第2の方向D2に沿って並んで設けられる。第2放射体130は第1放射体120の傍らに設けられ、第1放射体120は分岐部分114と第2放射体130との間に位置する。第1の方向D1及び第2の方向D2は、例えばそれぞれアンテナ構造100の幅方向及び長手方向である。
【0033】
加えて、第1放射体120と第2放射体130との間の距離は、第1放射体120と分岐部分114との間の距離よりも短い。例えば、第1放射体120と第2放射体130との間の距離は0.3mm~0.7mmの範囲であり、第1放射体120と分岐部分114との間の距離は0.8mm~1.2mmの範囲である。1つの実施形態において、第1放射体120と第2放射体130との間の距離は例えば0.5mmであり、第1放射体120と分岐部分114との間の距離は例えば1mmである。
【0034】
1つの実施形態において、主接地部分112、分岐部分114、第1放射体120、第2放射体130は、高周波帯域幅を増加させるための非対称同一平面導波路構造を共に形成する。加えて、第1放射体120と第2放射体130は第1の高周波数帯域を励起するよう構成され、第1の高周波数帯域は、例えば5G周波数帯域(5.15GHz~5.85GHz)である。第1放射体120の長さと第2放射体130の長さは、第1の高周波数帯域の波長の0.2倍から第1の高周波数帯域の波長の0.3倍である。本発明の1つの実施形態において、第1放射体120の長さ及び第2放射体130の長さは、例えばそれぞれ5mm及び5.5mmである。
【0035】
図2に示すように、本実施形態の各アンテナ構造100は、接地放射体110の主接地部分112の一方側に第3放射体140を含む。第3放射体140は第2の方向S2に沿って延伸して第1放射体120に接続され、第3放射体140は分岐部分114の傍らに位置する。第1放射体120と第3放射体140は、第2の高周波数帯域を励起するよう構成され、第2の高周波数帯域は、例えば6G周波数帯域(5.945GHz~7.125GHz)である。第1放射体120の長さ及び第3放射体140の長さは、第2の高周波数帯域の波長の0.2倍から第2の高周波数帯域の波長の0.3倍である。1つの実施形態において、第3放射体140の長さは例えば4mmである。
【0036】
各アンテナ構造100は、接地放射体110の主接地部分112の一方側に第4放射体150を更に含む。第4放射体150は第1放射体120に接続され、第2放射体130は第4放射体150の一部を通じて第1放射体120に接続される。具体的には、第4放射体150は、中線Aから離れた第1部分152と、中線Aに近い第2部分154とを含み、第1部分152の長さは第2部分154の長さよりも長い。第1放射体120は、第1部分152と第2部分154との間に位置し(合流点で)、第2放射体130は第1部分152に接続される。即ち、フィード端125から遠い第1放射体120の一端は、第1部分152と第2部分154とが接続される箇所(合流点)と接触する。
【0037】
具体的には、第4放射体150の第1部分152は、屈折して接続された、第1区域1521と、第2区域1522と、第3区域1523とを含む。第1区域1521は第2部分154に接続され、第3区域1523は第1区域1521と主接地部分112との間に位置する。図2に示すように、第1部分152の第1区域1521は第2部分154に接続され且つ第2の方向D2に沿って延伸し、第2区域1522は第1区域1521と第3区域1523に垂直であり且つ第1の方向D1に沿って延伸し、第1区域1521、第2区域1522、第3区域1523は鈎状を呈する。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、第1放射体120と第4放射体150は低周波数帯域を励起するよう構成され、低周波数帯域の周波数は、例えばWiFi2.4G周波数帯域(2.4GHz~2.5GHz)である。第1放射体120の長さ及び第4放射体150の長さは、低周波数帯域の波長の0.2倍から低周波数帯域の波長の0.3倍の範囲である。1つの実施形態において、第1区域1521の長さと第2区域1522の長さとの和は例えば26mmであり、第2区域1522の長さは例えば4.85mmであり、第3区域1523の長さは例えば12mmであり、第4放射体150の各部分の幅は例えば1.5mmである。
【0039】
言及すべき点として、第4放射体150は第2の方向D2に直接延伸しないが、屈折点を有して折り返しており、このため鈎状を呈する。このような設計は、アンテナ構造100の全体的寸法を減少させると同時に低周波数帯域を励起するため第4放射体150の長さを調整することができる。
【0040】
加えて、第2の方向D2における第4放射体150の縁部は、第2の方向D2における主接地部分112の縁部を超えている。具体的には、第4放射体150の第3区域1523は重複領域1523aを含む。第1の方向D1に沿った主接地部分112上の第1の方向D1に沿った重複領域1523aの投影は、主接地部分112と重なる。1つの実施形態において、第2の方向D2における重複領域1523aの長さは5mm未満である。
【0041】
図2に示すように、重複領域1523aは低周波数帯域を励起する放射線の経路の末端に位置することから、重複領域1523aのエネルギーは比較的低い。たとえ主接地部分112が重複領域1523aに近くとも、低周波数帯域の放射効率は主接地部分112に影響されにくく、よって満足できるものに維持される。
【0042】
上記設計によると、本実施形態において提供されるアンテナ構造100の寸法は、従来のアンテナの寸法よりも小さく、アンテナ構造100の主接地部分112。分岐部分114、第1放射体120、第2放射体130は、高周波帯域幅を増加させるための非対称同一平面導波路構造を共に形成する。加えて、本実施形態において提供されるアンテナ構造100は、低周波数帯域(2.4GHz~2.5GHz)、第1の高周波数帯域(5.15GHz~5.85GHz)、第2の高周波数帯域(5.945GHz~7.125GHz)、及び他のWiFi2.4G及びWiFi7周波数帯域を励起することができる。
【0043】
図1に示すように、本発明の1つの実施形態において提供される2つのアンテナ構造100と200は筐体20に設けられ、筐体20は、例えば全アルミニウム-マグネシウム材料製である。加えて、筐体20は中線Aの両側に鏡像的に設けられたスロットSを備え、2つのスロットSはそれぞれ2つのアンテナ構造100と200の第4放射体150と250に対応して設けられる。スロットSの長さ及び幅は、例えば27.5mm及び3mmであり、スロットSは塑性材料で充填される。このような設計は、本実施形態において提供される2つのアンテナ構造100と200がスロットSを通じて外側へ放射することを可能とする。言及すべき点として、筐体20の材料及びスロットSの寸法は本発明において限定として解釈されず、スロットSの長さは20mm~30mmの間で調整されてよい。
【0044】
加えて、2つのアンテナ構造100と200の第3放射体140と240のうちの一方は2つのアンテナ構造100と200の第3放射体140と240のうちの他方に面しており、アンテナ構造100と200のうちの一方の第3放射体140又は240とアンテナ構造100と200のうちの他方の第3放射体140又は240との間の距離は第2の高周波数帯域の波長の0.5倍以上である。このような設計は、2つのアンテナ構造100と200が高周波数帯域(WiFi7)を放射する際に2つのアンテナ構造100と200の放射パターンがクロストーク問題に遭遇せず(互いに干渉しない)、良好なアンテナ間分離を有することができることを確実にし、これは2つのアンテナ構造100と200が高周波数帯域を放射する際の2つのアンテナ構造100と200の放射効率における良好な性能を導く。加えて、低周波数帯域を励起する放射経路が互いから背いて進むことはないことから、低周波数帯域の放射パターンは外側へ向かい延伸し、よって互いに干渉しない。
【0045】
1つの実施形態において提供される2つのアンテナ構造100と200の接地放射体110と210のうちの一方は、2つのアンテナ構造100と200のうちの他方の接地放射体110と210のうちの他方から分離される。具体的には、2つの接地放射体110と210の間の距離は、1mm以上である。即ち、アンテナモジュール10の全体的寸法を減少させるため、2つの接地放射体110と210は互いに接続されないが互いに接近している。
【0046】
図3は、SパラメータS11、S22、S21に対応する図1の2つのアンテナ構造の周波数間の関係を表す図である。図3を参照し、本発明の1つの実施形態によると、アンテナ構造100のS11とアンテナ構造200のS22はいずれも、低周波数帯域(2400MHz~2500MHz)、第1の高周波数帯域及び第2の高周波数帯域(5150MHz~7125MHz)で-10dB未満である。1つの実施形態において提供される非対称アンテナ構造100と200の間のS21は、低周波数帯域(2400MHz~2500MHz)、第1の高周波数帯域及び第2の高周波数帯域(5150MHz~7125MHz)で20dBよりも高い。これは、本実施形態において提供される非対称アンテナ構造は良好なアンテナ間分離を達成し、信号損失の程度は大きくはないことを意味する。
【0047】
従来の板状逆F型アンテナ(planar inverted-F dual-antenna, PIFA)の放射体と接地面とは対称であり、両者の長さは波長の0.25倍である。同一の寸法で、PIFAデュアルアンテナのS11及びS22は、低周波数帯域(2400MHz~2500MHz)、第1の高周波数帯域及び第2の高周波数帯域(5150MHz~7125MHz)で-4dB~-10dBの範囲であり、S21は低周波数帯域で13dBよりも僅かに高く、第1の高周波数帯域及び第2の高周波数帯域で20dBよりも高い。これに比べ、アンテナ構造100と200のアンテナ間分離の性能及び信号伝送の性能は、低周波数帯域又は高周波数帯域での従来のPIFAデュアルアンテナの性能よりも優れる。
【0048】
また、3D放射パターン実験から、本実施形態の2つのアンテナ構造100と200の放射効率は、低周波数帯域(2400MHz~2500MHz)、第1の高周波数帯域及び第2の高周波数帯域(5150MHz~7125MHz)で40%~47%であり、これら全てで30%よりも高いことが分かる。このため、本実施形態において提供される2つのアンテナ構造100と200は、2つのアンテナ構造100と200が低周波数帯域か高周波数帯域かに関わらず、良好な放射効率を有する。
【0049】
まとめると、本発明の1つ以上の実施形態において提供される主接地部分、分岐部分、第1放射体、及び第2放射体は、高周波数帯域を増加させるため導波構造を共に形成する。第1放射体と第2放射体は第1の高周波数帯域(5.15GHz~5.85GHz)を励起するよう構成され、第1放射体と第3放射体は第2の高周波数帯域(5.945GHz~7.125GHz)を励起するよう構成され、第1放射体と第4放射体は低周波数帯域(2.4GHz~2.5GHz)を励起するよう構成される。加えて、2つのアンテナ構造のうちの一方の第3放射体と他方のアンテナ構造の第3放射体との間の距離は、第2の高周波数帯域の波長の0.5倍以上である。上記構成を通じて、本発明の1つ以上の実施形態において提供されるアンテナモジュールはマルチ周波数帯域の要件に符合し、微小化された寸法を有し、良好なアンテナ間分離の程度を達成し、良好な放射効率を有することができる。
【0050】
本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、開示された実施形態に対して様々な改変及び変形を行うことができることは、当業者にとって明らかであろう。上記を考慮し、本発明は、以下の特許請求の範囲及びそれらの均等物の範囲内にあるという条件で、改変及び変形をカバーすることを意図している。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、マルチ周波数帯域の要件に符合することのできるアンテナモジュールを提供する。
【符号の説明】
【0052】
10:アンテナモジュール
20:筐体
100、200:アンテナ構造
110、210:接地放射体
112:主接地部分
114:分岐部分
120:第1放射体
125:フィード端
130:第2放射体
140、240:第3放射体
150、250:第4放射体
152:第1部分
1521:第1区域
1522:第2区域
1523:第3区域
1523a:重複領域
154:第2部分
A:中線
D1:第1の方向
D2:第2の方向
S:スロット
図1
図2
図3
【外国語明細書】