(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074768
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】芯鞘型複合モノフィラメント及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 8/10 20060101AFI20240524BHJP
D01F 8/14 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
D01F8/10 A
D01F8/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151806
(22)【出願日】2023-09-20
(31)【優先権主張番号】P 2022185359
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】金築 亮
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】西井 義尚
【テーマコード(参考)】
4L041
【Fターム(参考)】
4L041AA07
4L041BA02
4L041BA05
4L041BA21
4L041BA46
4L041BC20
4L041BD02
4L041CA06
4L041CA47
4L041DD01
(57)【要約】
【課題】 テニスラケットのストリング又はストリング用芯糸に用いるのに適した引掛強さ及び結節強さ持つ複合フィラメントを提供する。
【解決手段】 この複合フィラメントは、芯成分がポリフッ化ビニリデン系樹脂で鞘成分がポリエステル系樹脂よりなる芯鞘型複合モノフィラメントである。芯鞘型複合モノフィラメント全体の横断面形状は円形であり、芯成分の横断面形状は多葉型となっている。多葉型というのは、外側に出っ張った部分である葉部分1を複数持ち、葉部分1の内側に中心部分2を持つものである。この芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法は以下のとおりである。ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂を用いて複合溶融紡糸し、芯成分が横断面多葉型となっているポリフッ化ビニリデン系樹脂と、鞘成分がポリエステル系樹脂よりなる芯鞘型複合未延伸フィラメントを得る。この後、この芯鞘型複合未延伸フィラメント加熱下で多段階で延伸するという方法で製造する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯成分がポリフッ化ビニリデン系樹脂で鞘成分がポリエステル系樹脂よりなる芯鞘型複合モノフィラメントであって、該芯鞘型複合モノフィラメント全体の横断面形状は円形であり、該芯成分の横断面形状が多葉型である芯鞘型複合モノフィラメント。
【請求項2】
多葉型が三葉型乃至八葉型である請求項1記載の芯鞘型複合モノフィラメント。
【請求項3】
芯成分の体積割合が10~35体積%である請求項1記載の芯鞘型複合モノフィラメント。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の一本の芯鞘型複合モノフィラメントよりなるテニスラケット用ストリング。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の芯鞘型複合モノフィラメントを芯糸として用いたテニスラケット用ストリング。
【請求項6】
一本の芯鞘型複合モノフィラメントを芯糸とした用いた請求項5記載のテニスラケット用ストリング。
【請求項7】
芯鞘型複合モノフィラメントの直径が0.8~1.0mmである請求項5記載のテニスラケット用ストリング。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の芯鞘型複合モノフィラメントよりなる釣り糸。
【請求項9】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂を用いて複合溶融紡糸し、芯成分が横断面多葉型となっている該ポリフッ化ビニリデン系樹脂と、鞘成分が該ポリエステル系樹脂よりなる芯鞘型複合未延伸フィラメントを得た後、該未延伸フィラメントを加熱下で延伸することを特徴とする芯鞘型複合モノフィラメントの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯成分がポリフッ化ビニリデン系樹脂で鞘成分がポリエステル系樹脂よりなる芯鞘型複合モノフィラメント及びその製造方法に関し、特に、テニスラケットのストリング又はストリング用芯糸に用いるのに適した芯鞘型複合モノフィラメント及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリオレフィン系樹脂よりなる複合モノフィラメントとして、海島型複合モノフィラメントや芯鞘型複合モノフィラメントが知られている(特許文献1)。ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を複合するのは、釣り糸として適切な比重とするため、すなわち、ポリフッ化ビニリデン系樹脂よりも低比重でポリオレフィン系樹脂よりも高比重とするためである。特許文献1には、海島型複合モノフィラメントの場合には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を海成分とし、ポリオレフィン系樹脂を島成分とするものが記載されている。また、芯鞘型複合モノフィラメントの場合には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を鞘成分とし、ポリオレフィン系樹脂を芯成分とするものが記載されている。さらに、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂よりなる複合モノフィラメントとして、芯鞘型複合モノフィラメントが知られている(特許文献2)。特許文献2には、ポリフッ化ビニリデン系樹脂は芯成分であっても鞘成分であってもよいと記載されている。これも、特許文献1の場合と同様に、釣り糸として適切な比重とするため、すなわち、ポリフッ化ビニリデン系樹脂よりも低比重でポリエステル系樹脂よりも高比重とするためである。
【0003】
特許文献1及び2記載の複合モノフィラメントは、いずれも、釣り糸や漁網用糸等の水産資材用のものである。本発明者は、テニスラケットのストリングの開発を行っていたが、特許文献1及び2記載の複合フィラメントは釣り糸として適切な比重及び引張強さを持つものではあるが、テニスラケットのストリングとして適切なものではなかった。テニスラケットのストリングは、フレームに引っ掛けて張るため、ストリングには高い引掛強さが要求されるのである。また、ストリングの終端を結んでノットを形成するため、高い結節強さも要求されるのである。
【0004】
【特許文献1】特開2003-64530号公報
【特許文献2】特開2022-34119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、テニスラケットのストリング又はストリング用芯糸に用いるのに適した引掛強さ及び結節強さを持つ複合フィラメントを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記の課題を解決するために、芯成分がポリフッ化ビニリデン系樹脂で鞘成分がポリエステル系樹脂よりなる芯鞘型複合モノフィラメントの引掛強さ及び結節強さが低い理由を検討した。この結果、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂との密着性が低く、引掛部及び結節部において鞘成分が芯成分から剥離するためであるという知見を得た。
【0007】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、芯成分と鞘成分との密着性を向上させることにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、芯成分がポリフッ化ビニリデン系樹脂で鞘成分がポリエステル系樹脂よりなる芯鞘型複合モノフィラメントであって、該芯鞘型複合モノフィラメント全体の横断面形状は円形であり、該芯成分の横断面形状が多葉型である芯鞘型複合モノフィラメント及びその製造方法に関するものである。
【0008】
本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントは、芯成分としてポリフッ化ビニリデン系樹脂が用いられ、鞘成分としてポリエステル系樹脂が用いられる。ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンのホモポリマー(ポリフッ化ビニリデン)又はフッ化ビニリデンと他種モノマーとのフッ化ビニリデン系共重合体が用いられる。他種モノマーとしては、フッ化ビニリデンと共重合するものであれば任意に採用でき、たとえば、テトラフルオロエチレン、モノクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプレピレン又はパーフルオロイソプロポキシエチレンを単独で又は混合して用いることができる。芯成分は、複数のポリフッ化ビニリデン系樹脂の混合物であってもよいし、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に他の樹脂が少量混合されていてもよい。また、ポリフッ化ビニリデン系樹脂に熱安定剤、着色剤、抗酸化剤又は可塑剤等が単独で又は混合して添加されていてもよい。特に、熱可塑性エラストマーを添加するのは好ましいことである。熱可塑性エラストマーは、熱を加えると流動性を示し、常温に戻すと高弾性になるゴム的性質を有する高分子物質であるため、芯成分と鞘成分の密着性がより向上する。熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー又はポリスチレン系熱可塑性エラストマー等の公知のものが単独で又は混合して用いられる。熱可塑性エラストマーの添加量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100質量部に対し、1~10質量%程度であるのが好ましい。
【0009】
本発明において、芯成分はその横断面形状が多葉型となっている。多葉型とは、
図1乃至
図3に示すように、外側に出っ張った部分(葉部分1)を複数持つものをいう。
図1乃至
図3は、葉部分1を六つ持つものであるので六葉型である。そして、葉部分1の内側に中央部分2が存在する。本発明においては、葉部分1を三つ乃至八つ持つものが好ましく、すなわち、三葉型乃至八葉型であるのが好ましい。三葉型未満であると出っ張った部分が少な過ぎて、鞘成分との密着性が向上しない傾向となる。また、八葉型を超えると、横断面が円形に近似する傾向となり、鞘成分との密着性が向上しない傾向となる。
【0010】
鞘成分であるポリエステル系樹脂は、芯成分であるポリフッ化ビニリデン系樹脂を囲繞している。ポリエステル系樹脂としては、分子内にエステル結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、また、脂肪族ポリエステルとしては、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。また、上記したポリエステル同士のブレンドや、上記したポリエステルと他の成分が共重合されてなるポリエステルとをブレンドしたものであってもよい。共重合できる他の成分としては、ジカルボン酸では、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、セバシン酸、アジピン酸、コハク酸等が挙げられ、ジオール成分では、エタンジオール、プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、ポリエステル系樹脂に熱安定剤、着色剤、抗酸化剤又は可塑剤等が単独で又は混合して添加されていてもよい。特に、シリコーンオイルよりなるシリコーン系離型剤やフッ素オイルよりなるフッ素系離型剤等の公知の離型剤を少量添加しておくのが好ましい。鞘成分に離型剤を添加しておくと、表面の摩擦抵抗が低下し摩耗強さが向上するからである。離型剤の添加量は、ポリエステル系樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部程度であるのが好ましい。
【0011】
ポリエステル系樹脂の中でも、ポリエチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステルは、外力によって割れやすい傾向がある。このような場合、ポリエステル系樹脂にポリエチレン樹脂を混合すれば、割れが生じにくい傾向となる。ポリエチレン樹脂としては高密度ポリエチレン樹脂を用いるのが好ましく、また、ポリエチレン樹脂の混合量は、ポリエステル系樹脂に対し、1~5重量%程度が好ましい。
【0012】
芯成分はポリフッ化ビニリデン系樹脂よりなるため、その比重は概ね1.7以上である。なお、ポリフッ化ビニリデンのみよりなる場合、その比重は概ね1.78である。鞘成分はポリエステル系樹脂よりなるため、その比重は概ね1.2~1.4の範囲内である。したがって、芯成分と鞘成分の体積比により、芯鞘型複合モノフィラメントの比重を適宜に調整しうる。本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントにおいて、芯成分の体積割合は10~35体積%であるのが好ましく、この場合、芯鞘型複合モノフィラメントの比重は概ね1.25~1.53の範囲内で調整しうる。芯成分の体積割合が10体積%未満になると、芯鞘型複合モノフィラメントの比重又は剛性が高くならず、テニスラケットのストリングに用いた場合、パワフルな打球感が得られにくい傾向が生じる。芯成分の体積割合が35体積%を超えると、テニスラケットのストリングに用いた場合、芯鞘型複合モノフィラメントの柔軟性が低下し、テニスボールを打つ際の衝撃が強くなる傾向が生じる。
【0013】
本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントの全体の横断面形状は、円形となっている。すなわち、横断面形状が多葉型の芯成分の周囲を鞘成分が囲繞し、この結果、横断面形状が円形の芯鞘型複合モノフィラメントとなっている。芯鞘型複合モノフィラメントの線径は任意である。芯鞘型複合モノフィラメントの一本をテニスラケットのストリングにする場合、線径は約1.33~1.41mmにするのが好ましい。また、テニスラケットのモノストリング用芯糸とする場合は、モノストリングの一般的な線径(約1.33~1.41mm)に合わせて、芯鞘型複合モノフィラメントの線径を0.8~1.0mmとするのが好ましい。また、テニスラケットのマルチストリング用芯糸とする場合は、線径50~100μmのモノフィラメントを複数本集束したマルチフィラメント糸を用いるのが好ましい。さらに、釣り糸(道糸及びハリスを含む。)とする場合は、0.1~1.0mmであるのが好ましい。
【0014】
本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントは、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂を用いて複合溶融紡糸し、芯成分が横断面多葉型となっているポリフッ化ビニリデン系樹脂と、鞘成分がポリエステル系樹脂とよりなる芯鞘型複合未延伸フィラメントを得た後、未延伸フィラメントを加熱下で延伸することにより、製造することができる。複合溶融紡糸は、
図1乃至
図3の形状に近似した紡糸孔から芯成分を紡糸し、その周囲から鞘部分を紡糸することにより行う。また、複数の近接した円形孔から芯成分を紡糸し合体させると共に、その周囲から鞘成分を紡糸することにより行ってもよい。かかる複合溶融紡糸により、横断面が多葉型である芯成分を持つ芯鞘型複合未延伸フィラメントを得ることができる。
【0015】
芯鞘型複合未延伸フィラメントは、所望により冷却した後、加熱下で延伸する。加熱は、湯水中又は温油中等の湿熱雰囲気下で行ってもよいし、大気中又はガス中等の乾熱雰囲気下で行ってもよい。また、延伸は一段階で行ってもよいし、複数段階で行ってもよい。たとえば、第一段階では湿熱雰囲気下で延伸を行い、第二段階では乾熱雰囲気下で延伸を行ってもよい。本発明においては、芯成分が多葉型となっているので、横断面が円形の芯成分に比べて、芯成分の中央部分2まで熱が伝わりやすく、芯成分の延伸が行いやすいという利点がある。延伸倍率は任意であるが、総延伸倍率が2~8倍となる程度が好ましい。総延伸倍率が高くなる場合は、均一な糸質のものとするため、加熱下での延伸を複数段階で行うのが好ましい。
【0016】
本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントは、そのまま、すなわち芯鞘型複合モノフィラメントの一本をテニスラケット用ストリングとすることができる。また、本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントを芯糸として、その表面を細いマルチフィラメント糸や細いモノフィラメント糸で被覆して、ポリウレタン樹脂等の樹脂で固めて、テニスラケット用ストリングとすることもできる。芯糸とする場合、芯鞘型複合モノフィラメントの一本を芯糸としてもよいし、芯鞘型複合モノフィラメントを複数本集束させたマルチフィラメントを芯糸としてもよい。また、本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントは、そのまま、すなわち芯鞘型複合モノフィラメントの一本を釣り糸として用いることができる。本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントは、テニスラケット用ストリング、テニスラケット用ストリングの芯糸又は釣り糸だけでなく、漁網用糸等の水産資材用として、或いはその他の従来公知の用途に用いられる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る芯鞘型複合モノフィラメントは、芯成分がポリフッ化ビニリデン系樹脂よりなり、鞘成分がポリエステル系樹脂よりなり、芯成分の横断面形状が多葉型となっているので、芯成分と鞘成分の密着性が向上し、引掛強さ及び結節強さが向上するという効果を奏する。したがって、テニスラケット用ストリング又はこれの芯糸に用いた場合、ラケットのフレームに対する引っ掛け部の強さが向上し、ストリングが切断しにくいという効果を奏する。さらに、ストリング終端のノットの結節強さも高いので、ノットからストリングが切断しにくいという効果も奏する。また、釣り糸に用いた場合、釣り針との掛け結び部の強さが向上し、釣り糸が切断しにくいという効果を奏する。
【0018】
また、芯成分が横断面多葉型となっているので、芯鞘型複合モノフィラメントの製造時における加熱下での延伸工程において、熱が芯成分の中央部分まで伝わりやすく、ポリエステル系繊維の延伸条件でポリフッ化ビニリデン系樹脂も良好に延伸しうるという効果を奏する。
【実施例0019】
実施例1
ポリフッ化ビニリデン系樹脂として、ポリフッ化ビニリデン樹脂(住友3M社製 商品名「6010/0000」)を準備した。また、ポリエステル系樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂(ユニチカ社製 商品名「NEH2070」)100重量部と、高密度ポリエチレン樹脂(日本ポリエチレン社製 商品名「ノバテックHD」)2重量部とを均一に混合したものを準備した。そして、ポリフッ化ビニリデン系樹脂を、
図4に示す如き近接して配列してなる直径1.0mmの円形の7個の紡糸孔3から溶融紡糸して合体させると同時に、その周囲からポリエステル系樹脂を溶融紡糸して複合溶融紡糸し、芯鞘型複合未延伸フィラメントを得た。この芯鞘型複合未延伸フィラメントの横断面形状は円形であり、芯成分の横断面形状は六葉型であった。なお、複合溶融紡糸において、ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂の体積比をポリフッ化ビニリデン系樹脂:ポリエステル系樹脂=20:80とし、溶融温度は265℃とした。
【0020】
芯鞘型複合未延伸フィラメントを60℃の水浴中に浸漬した後、90℃の温浴中に浸漬し湿熱雰囲気下で第一段階の延伸を行った。次いで、220℃の乾熱雰囲気下で第二段階の延伸を行った後、続けて240℃の乾熱雰囲気下で第三段階の延伸を行い、総延伸倍率5.0倍の延伸を施して、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。この芯鞘型複合モノフィラメントの横断面形状は円形であり、芯成分の横断面形状は六葉型であった。
【0021】
実施例2
ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂の体積比をポリフッ化ビニリデン系樹脂:ポリエステル系樹脂=15:85とした他は、実施例1と同一の方法で芯鞘型複合モノフィラメントを得た。この芯鞘型複合モノフィラメントの横断面形状は円形であり、芯成分の横断面形状は六葉型であった。
【0022】
比較例1
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の紡糸孔を直径7mmの単一の円形とした他は、実施例1と同一の方法で複合溶融紡糸し、芯鞘型複合未延伸フィラメントを得た。この芯鞘型複合未延伸フィラメントの横断面形状は円形であり、芯成分の横断面形状も円形であり、同心円状のものであった。
【0023】
この芯鞘型複合未延伸フィラメントを60℃の水浴中に浸漬した後、90℃の温浴中に浸漬し湿熱雰囲気下で第一段階の延伸を行った。次いで、220℃の乾熱雰囲気下で第二段階の延伸を行った後、続けて240℃の乾熱雰囲気下で第三段階の延伸を行い、総延伸倍率4.5倍の延伸を施して、芯鞘型複合モノフィラメントを得た。この芯鞘型複合モノフィラメントの横断面形状は円形であり、芯成分の横断面形状も円形であり、同心円状のものであった。なお、比較例1において、実施例1と同様の総延伸倍率5.0倍で延伸を行うと芯成分と鞘成分の密着性が乏しいことから、延伸切れが多発し安定して芯鞘型複合モノフィラメントを得られなかった。
【0024】
比較例2
ポリフッ化ビニリデン系樹脂とポリエステル系樹脂の体積比を、ポリフッ化ビニリデン系樹脂:ポリエステル系樹脂=15:85としとした他は、比較例1と同一の方法で芯鞘型複合モノフィラメントを得た。この芯鞘型複合モノフィラメントの横断面形状は円形であり、芯成分の横断面形状は同心円状のものであった。なお、比較例2において、実施例1と同様の総延伸倍率5.0倍で延伸を行うと芯成分と鞘成分の密着性が乏しいことから、延伸切れが多発し安定して芯鞘型複合モノフィラメントを得られなかった。
【0025】
実施例及び比較例で得られた芯鞘型複合モノフィラメントの線径、比重、引掛強さ及び結節強さを以下の方法で測定した。そして、測定結果を表1に示した。
(1)線径(mm)
ミツトヨ製デジマチックマイクロメーターMDH-25MBを用いて線径(mm)を測定した。
(2)比重
芯鞘型複合モノフィラメントの体積を線径に基づき算出し、芯鞘型複合モノフィラメントの質量を測定し、質量/体積を比重とした。したがって、この比重は密度と同義である。
(3)引掛強さ(N/mm2)
JIS L 1013(2021)引掛強さの項に記載の方法で測定した。なお、測定中に芯鞘型複合モノフィラメントが切断した場合、この時点での強さを引掛強さとし、測定中に芯鞘型複合モノフィラメントは切断していないけれども、鞘成分が切断し芯成分が露出した場合、この時点での強さを引掛強さとした。
(4)結節強さ(N/mm2)
JIS L 1013(2021)結節強さに記載の方法で測定した。
【0026】
[表1]
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線径 比重 引掛強さ 結節強さ
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
実施例1 1.027 1.47 364 354
実施例2 1.223 1.43 363 343
比較例1 1.200 1.48 347 299
比較例2 1.197 1.41 355 306
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【0027】
実施例及び比較例を対比すれば明らかなとおり、線径及び比重は殆ど変わらないにも拘わらず、実施例の芯鞘型複合モノフィラメントは、比較例のものに比べて、引掛強さ及び結節強さが向上しており、特に結節強さが顕著に向上していることが分かる。