(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074787
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】電気化学デバイスセパレーター
(51)【国際特許分類】
H01M 50/489 20210101AFI20240524BHJP
H01M 50/417 20210101ALI20240524BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240524BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240524BHJP
H01M 50/463 20210101ALI20240524BHJP
H01M 4/66 20060101ALI20240524BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20240524BHJP
H01M 10/0569 20100101ALI20240524BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240524BHJP
H01G 11/84 20130101ALI20240524BHJP
H01G 11/52 20130101ALN20240524BHJP
【FI】
H01M50/489
H01M50/417
H01M10/052
H01M4/38 Z
H01M50/463 A
H01M4/66 A
H01M10/0568
H01M10/0569
H01M10/058
H01G11/84
H01G11/52
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023196093
(22)【出願日】2023-11-17
(31)【優先権主張番号】63/426,864
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519146787
【氏名又は名称】ツー-シックス デラウェア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】II-VI Delaware,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウェン-チン シュイ
(72)【発明者】
【氏名】チャラン マサラプ
(72)【発明者】
【氏名】シンユイ ルー
(72)【発明者】
【氏名】リンゼ ドゥ ヒル
(72)【発明者】
【氏名】ツァン ガオ
(72)【発明者】
【氏名】シアオミン リー
【テーマコード(参考)】
5E078
5H017
5H021
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA10
5E078AB01
5E078CA06
5E078CA20
5E078LA08
5H017AA03
5H017AS02
5H017BB08
5H017DD05
5H017EE06
5H021CC09
5H021EE02
5H021EE04
5H021HH00
5H021HH01
5H021HH03
5H021HH07
5H029AJ05
5H029AK05
5H029AL12
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029AM11
5H029DJ04
5H029DJ07
5H029EJ04
5H029EJ07
5H029EJ12
5H050AA07
5H050BA16
5H050CA11
5H050CB12
5H050DA04
5H050DA19
5H050FA18
(57)【要約】
【課題】既存の電気化学デバイスは、何回かのサイクル数の後に寄生状態を示して故障するので、寄生状態を示す前のサイクル数を延ばす電気化学デバイスを提供すること。
【解決手段】アノード、カソード、電解質、およびカソードからアノードを分離するセパレーターを含む電気化学デバイス。セパレーターは、線状ポリマー;2.0以下の動摩擦係数;少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または270以下のMPaの弾性率のうちの少なくとも1つを含む材料を含む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アノード;
カソード;
電解質;および
カソードからアノードを分離するセパレーター
を含む電気化学デバイスであって、前記セパレーターは材料を含み、前記材料は、
線状ポリマー;
2.0以下の動摩擦係数;
少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;
少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または
270MPa以下の弾性率
のうちの少なくとも1つを含む、電気化学デバイス。
【請求項2】
前記材料がポリエチレンポリマーを含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項3】
リチウム-カルコゲン電池を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項4】
前記アノードが、IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項5】
前記カソードがカルコゲンを含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項6】
前記セパレーターが、少なくとも1150オングストロームの表面粗さ(Ra)を有する、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項7】
前記線状ポリマーが、少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項8】
前記セパレーターが2μm~100μmの厚さを有する、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項9】
前記カソードが、炭素-カルコゲン複合物を含むコーティングでコーティングされた基材を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項10】
前記コーティングがバインダーおよび導電性炭素をさらに含む、請求項9に記載の電気化学デバイス。
【請求項11】
寄生状態を示す前に少なくとも2サイクルを実施する二次電池を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項12】
前記線状ポリマーが少なくとも70%の線形性を含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項13】
前記電解質が、LiBF4、LiC2F6NO4S2、LiNS2O4F2、LiBOB、LiPO2F2、LiPF6、エーテル、カーボネート、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の電気化学デバイス。
【請求項14】
二次電池をサイクルする方法であって、
(i)請求項1に記載の電気化学デバイスを用意し、前記電気化学デバイスは二次電池を含むステップと;
(ii)前記二次電池を少なくとも部分的に放電するステップと;
(iii)前記二次電池を少なくとも部分的に充電するステップと;
(iv)充電中に前記二次電池が寄生状態を示すまで、(ii)および(iii)を繰り返すステップと
を含む、方法。
【請求項15】
前記二次電池が、寄生状態を示す前に少なくとも部分的に放電され、少なくとも2回充電される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
電気化学デバイスにおける使用のために構成されたセパレーターであって、前記セパレーターは材料を含み、前記材料は、
線状ポリマー;
2.0以下の動摩擦係数;
少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;
少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または
270MPa以下の弾性率
のうちの少なくとも1つを含む、セパレーター。
【請求項17】
前記材料がポリエチレンポリマーを含む、請求項16に記載のセパレーター。
【請求項18】
少なくとも1150オングストロームの表面粗さ(Ra)を有する、請求項16に記載のセパレーター。
【請求項19】
前記線状ポリマーが、少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有する、請求項16に記載のセパレーター。
【請求項20】
2μm~100μmの厚さを有する、請求項16に記載のセパレーター。
【請求項21】
二次電池に配置され、前記二次電池が、
IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むアノード;
カルコゲンを含むカソード;
電解質;ならびに
カソードからアノードを分離するセパレーター、
を含む、請求項16に記載のセパレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2022年11月21日に出願された米国仮特許出願第63/426,864号の優先権を主張し、その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示の主題は、一般に電気化学デバイス、二次電池をサイクルする方法、および電気化学デバイスにおける使用のために構成されたセパレーターに関する。
【背景技術】
【0003】
技術的な考慮事項
電池、キャパシタ、電気化学センサー、および燃料電池などの電気化学デバイスの製造には、多くの課題がある。例えば二次電池などの特定の電気化学デバイスは、放電および再充電することができ(サイクルとして定義される)、その結果複数回使用することができる。しかし、既存の電気化学デバイスは、何回かのサイクル数の後に寄生状態(parasitic condition)を示して電気化学デバイスは故障するので、無限数回サイクルすることができない。寄生状態を示す前のサイクル数を延ばすことが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、上で明らかにされた欠点の一部または全てを克服する電気化学デバイスを提供することが、本開示の主題の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
非限定的な実施形態または態様によれば、アノード;カソード;電解質;およびカソードからアノードを分離するセパレーターを含む電気化学デバイスであって、セパレーターは材料を含み、材料は、線状ポリマー;2.0以下の動摩擦係数;少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または270MPa以下の弾性率のうちの少なくとも1つを含む、電気化学デバイスが提供される。
【0006】
一部の非限定的な実施形態または態様では、材料は、ポリエチレンポリマーを含み得る。
【0007】
一部の非限定的な実施形態または態様では、電気化学デバイスはリチウム-カルコゲン電池を含み得る。
【0008】
一部の非限定的な実施形態または態様では、アノードは、IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0009】
一部の非限定的な実施形態または態様では、カソードはカルコゲンを含み得る。
【0010】
一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーターは、少なくとも1150オングストロームの表面粗さ(Ra)を有し得る。
【0011】
一部の非限定的な実施形態または態様では、線状ポリマーは、少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。
【0012】
一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーターは、2μm~100μmの厚さを有し得る。
【0013】
一部の非限定的な実施形態または態様では、カソードは、炭素-カルコゲン複合物を含むコーティングでコーティングされた基材を含み得る。
【0014】
一部の非限定的な実施形態または態様では、コーティングはバインダーおよび導電性炭素をさらに含み得る。
【0015】
一部の非限定的な実施形態または態様では、電気化学デバイスは、寄生状態を示す前に少なくとも2サイクルを実施する二次電池を含み得る。
【0016】
一部の非限定的な実施形態または態様では、線状ポリマーは、少なくとも70%の線形性を含み得る。
【0017】
一部の非限定的な実施形態または態様では、電解質は、LiBF4、LiC2F6NO4S2、LiNS2O4F2、LiBOB、LiPO2F2、LiPF6、エーテル、カーボネート、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。
【0018】
非限定的な実施形態または態様によれば、二次電池をサイクルする方法であって:(i)本明細書に記述の電気化学デバイスを用意し、電気化学デバイスは二次電池を含むステップと;(ii)二次電池を少なくとも部分的に放電するステップと;(iii)二次電池を少なくとも部分的に充電するステップと;(iv)充電中に二次電池が寄生状態を示すまで、(ii)および(iii)を繰り返すステップと、を含む方法が提供される。
【0019】
一部の非限定的な実施形態または態様では、二次電池は、寄生状態を示す前に少なくとも部分的に放電され、少なくとも2回充電され得る。
【0020】
非限定的な実施形態または態様によれば、電気化学デバイスにおける使用のために構成されたセパレーターは材料を含み、材料は、線状ポリマー;2.0以下の動摩擦係数;少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または270MPa以下の弾性率のうちの少なくとも1つを含む。
【0021】
一部の非限定的な実施形態または態様では、材料はポリエチレンポリマーを含み得る。
【0022】
一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーターは、少なくとも1150オングストロームの表面粗さ(Ra)を有し得る。
【0023】
一部の非限定的な実施形態または態様では、線状ポリマーは、少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。
【0024】
一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーターは、2μm~100μmの厚さを有し得る。
【0025】
一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーターを二次電池に配置してもよく、二次電池は、IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むアノード;カルコゲンを含むカソード;電解質;ならびにカソードからアノードを分離するセパレーター、を含み得る。
【0026】
さらなる実施形態または態様は、以下の番号付けされた条項で説明される。
【0027】
条項1:アノード;カソード;電解質;およびカソードからアノードを分離するセパレーターを含む電気化学デバイスであって、セパレーターは材料を含み、材料は、線状ポリマー;2.0以下の動摩擦係数;少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または270MPa以下の弾性率のうちの少なくとも1つを含む。
【0028】
条項2:材料がポリエチレンポリマーを含む、条項1に記載の電気化学デバイス。
【0029】
条項3:リチウム-カルコゲン電池を含む、条項1または条項2に記載の電気化学デバイス。
【0030】
条項4:アノードが、IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、条項1~3のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0031】
条項5:カソードがカルコゲンを含む、条項1~4のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0032】
条項6:セパレーターが少なくとも1150オングストロームの表面粗さ(Ra)を有する、条項1~5のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0033】
条項7:線状ポリマーが少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有する、条項1~6のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0034】
条項8:セパレーターが2μm~100μmの厚さを有する、条項1~7のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0035】
条項9:カソードが、炭素-カルコゲン複合物を含むコーティングでコーティングされた基材を含む、条項1~8のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0036】
条項10:コーティングがバインダーおよび導電性炭素をさらに含む、条項9に記載の電気化学デバイス。
【0037】
条項11:寄生状態を示す前に少なくとも2サイクルを実施する二次電池を含む、条項1~10のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0038】
条項12:線状ポリマーが少なくとも70%の線形性を含む、条項1~11のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0039】
条項13:電解質が、LiBF4、LiC2F6NO4S2、LiNS2O4F2、LiBOB、LiPO2F2、LiPF6、エーテル、カーボネート、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む、条項1~12のいずれかに記載の電気化学デバイス。
【0040】
条項14:二次電池をサイクルする方法であって、(i)条項1~13のいずれかに記載の電気化学デバイスを用意し、電気化学デバイスは二次電池を含むステップと;(ii)二次電池を少なくとも部分的に放電するステップと;(iii)二次電池を少なくとも部分的に充電するステップと;(iv)充電中に二次電池が寄生状態を示すまで、(ii)および(iii)を繰り返すステップと、を含む方法。
【0041】
条項15:二次電池が、寄生状態を示す前に少なくとも部分的に放電され、少なくとも2回充電される、条項14に記載の方法。
【0042】
条項16:電気化学デバイスにおける使用のために構成されたセパレーターであって、セパレーターは材料を含み、材料は、線状ポリマー;2.0以下の動摩擦係数;少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または270MPa以下の弾性率のうちの少なくとも1つを含む、セパレーター。
【0043】
条項17:材料がポリエチレンポリマーを含む、条項16に記載のセパレーター。
【0044】
条項18:セパレーターが少なくとも1150オングストロームの表面粗さ(Ra)を有する、条項16または17に記載のセパレーター。
【0045】
条項19:線状ポリマーが少なくとも200,000g/モルの重量平均分子量を有する、条項16~18のいずれかに記載のセパレーター。
【0046】
条項20:2μm~100μmの厚さを有する、条項16~19のいずれかに記載のセパレーター。
【0047】
条項21:二次電池に配置され、二次電池が、IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むアノード;カルコゲンを含むカソード;電解質;ならびにカソードからアノードを分離するセパレーターを含む、条項16~20のいずれかに記載のセパレーター。
【0048】
本開示の主題のこれらおよび他の特徴および特性、ならびに構造の関連する要素の実施方法および機能、ならびに部品の組み合わせおよび製造の経済性は、添付図面を参照して、以下の記述および添付の特許請求の範囲を考察してより明白になり、その全てはこの明細書の一部を形成し、様々な図において同一の参照番号は対応する部分を示す。しかし、図面は例証および説明のみの目的であり、開示された主題の境界を定義する意図ではないことを明確に理解されたい。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、「a」「an」および「the」の単数形は、文脈で明確に指示しない限り、複数の指示物を含む。
【0049】
本開示の主題の追加の利点および詳細は、添付の図で説明される例示的な実施形態または態様を参照して、以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】本開示の主題の一部の非限定的な実施形態または態様による、電気化学デバイスを示す図である。
【0051】
【
図2】本開示の主題の一部の非限定的な実施形態または態様による、放電/充電プロセスのサイクルを受ける再充電可能な電気化学デバイスに対する、電圧および電流の経時的なグラフを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
以下の説明の目的で、「端部」、「上側」、「下側」、「右」、「左」、「鉛直」、「水平」、「頂部」、「底部」、「横方向」、「長手方向」という用語およびその派生語は、描いた図で向けられた本開示の主題に関連するものとする。しかし、反対と明確に規定された場合を除いて、本開示の主題は様々な代替的変化およびステップの順序を想定し得ることを理解されたい。さらに、添付図面で説明され、以下の明細書に記述される特定の装置およびプロセスは、本開示の主題の単に例示的な実施形態または態様であることも理解されたい。故に、本明細書に開示する実施形態または態様に関連した特定の寸法および他の物理的特性は、特に断りのない限り限定的と見なすべきではない。
【0053】
本明細書で使用されるいかなる態様、部品、要素、構造、行為、ステップ、機能、指示、および/または同様なものも、明示的に記述されない限り、重要または不可欠と解釈すべきでない。また、本明細書で使用される場合、冠詞「a」および「an」は、1つまたは複数の項目を含む意図であり、「1つまたは複数」および「少なくとも1つ」と互換的に使用され得る。さらに、本明細書で使用される場合、「セット」という用語は、1つまたは複数の項目(例えば、関連項目、非関連項目、関連および非関連項目の組み合わせ、ならびに/または同様なもの)を含む意図であり、「1つまたは複数で」または「少なくとも1つ」と互換的に使用され得る。1つの項目だけが意図される場合、「one」という用語または類似の言語が使用される。また本明細書で使用される場合、「有する(has)」「有する(have)」「有する(having)」という用語または同様のものは、非制限的用語であると意図される。さらに、「基づく」という表現は、明示的に述べられない限り、「少なくとも部分的に基づく」ことを意味する意図である。
【0054】
本明細書で使用する場合、移行的用語「含む(comprise)」(および他の同等の用語、例えば、「含む(containing)」および「含む(including)」)は、「非制限的」であり、不特定の事項を含めることに開放的である。「含む(comprising)」という用語で記述されるが、「主としてからなる(consisting essentially of)」および「からなる(consisting of)」という用語も本開示の範囲内である。
【0055】
本開示の主題の非限定的な実施形態または態様は、アノード;カソード;電解質;およびカソードからアノードを分離するセパレーターを含む電気化学デバイスであって、セパレーターは材料を含み、材料は、線状ポリマー;2.0以下の動摩擦係数;少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び;少なくとも10の伸びの厚さに対する比;および/または270MPa以下の弾性率の少なくとも1つを含む、電気化学デバイスを対象とする。
【0056】
図1を参照すると、非限定的な実施形態または態様による電気化学デバイス10が示される。電気化学デバイス10は、電池、キャパシタ、電気化学センサー、燃料電池、またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。電気化学デバイスは、二次(再充電可能)電池を含み得る。
【0057】
電気化学デバイス10は、セパレーター16によって分離された、カソード12およびアノード14を含み得る。セパレーター16は、カソード12とアノード14の接触を防ぎ得る。電気化学デバイス10は、電解質18を含み得る。電解質18は、充電中にカソード12からアノード14へのイオンの移動を促進し、放電時にはその逆の移動を促進し得る。セパレーター16は、電気化学デバイス10の充電および/または放電中に、セパレーター16を通るイオン輸送を可能にするように構成され得る。電気化学デバイス10は、電気化学デバイス10の少なくとも部分的な放電の後に、電気化学デバイス10を再充電するように構成された充電器20を含み得る。
【0058】
一部の非限定的な実施形態または態様では、カソード12は、カルコゲン元素(例えば、S、Se、O、およびTe)、フッ化物、少なくとも1種のインターカレートカソード材料(intercalated cathode material)(例えば、LiCoO2、LiMnO2、LiNiO2、LiCoxNiyMn1-x-yO2)、ならびにNi、Mg、Al、Cr、Zn、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Nd、およびLaなどの様々なドーパントを含み得るLiFePO4、少なくとも1種の超キャパシタ材料(例えば金属酸化物/水酸化物)、導電性ポリマー、またはいくつかのそれらの組み合わせ、を含む少なくとも1つの材料のうちの少なくとも1つを含み得る。カソード12はカルコゲンを含み得る。カソード12は硫黄を含み得る。
【0059】
一部の非限定的な実施形態または態様では、カソード12は、炭素-カルコゲン複合物を含むコーティングでコーティングされた基材を含み得る。コーティングはバインダーおよび導電性炭素をさらに含み得る。バインダーはポリマー材料を含み得る。好適なポリマー材料の非限定的な例としては、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル(PEGDME)、導電性ポリマー(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン(PEDOT)など)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリエチレンイミン(PEI)、ラテックスポリマー、アクリレート、ポリウレタン、ポリウレタンアクリレート等が挙げられる。
【0060】
アノード14は、IVA族からの少なくとも1つの元素(例えば、C、Si、Sn)、IIIA族からの少なくとも1つの元素(例えば、Al)、IB族~VIIIB族からの少なくとも1つの遷移金属(例えば、Zn、Cd、Ag)、IIA族からの少なくとも1つのアルカリ土類金属(例えば、Mg、Ca)、IA族からの少なくとも1つのアルカリ金属(例えば、Li、Na、K)、少なくとも1つの化合物(例えば、LixSiy、LixGey、LiAl、LixSny、LTO、NiO、SiOx)、またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。アノード14は、IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。アノード14は、リチウムを含み得る。
【0061】
一部の非限定的な実施形態または態様では、電気化学デバイス10は、硫黄カソード12およびリチウムアノード14(例えば、リチウム-カルコゲンおよび/またはリチウム-硫黄電池)などの、カルコゲンを含むカソード12およびリチウムを含むアノード14を含み得る。
【0062】
一部の非限定的な実施形態または態様では、電解質18は、LiBF4、LiC2F6NO4S2、LiNS2O4F2、LiBOB、LiPO2F2、LiPF6、エーテル、カーボネート、またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み得る。電解質18は、米国特許第11,114,696号に開示され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるものなどの、コインセル電池で使用される電解質であり得る。電解質18は、リチウムおよび/またはナトリウムなどのアルカリ金属を含み得る。
【0063】
電解質18は、液体、固体、またはゲル材料であり得る。電解質18は、カソード12とアノード14(電極)の間に配置され得る。電解質18は、電極を濡らすまたは浸してもよい。
【0064】
セパレーター16は、線状ポリマー、2.0以下の動摩擦係数、少なくとも240の、破断時伸びとして定義される伸び、少なくとも10の伸びの厚さに対する比、270MPa以下の弾性率、または任意のそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含む材料を含み得る。
【0065】
一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーター16はポリマー材料を含み得る。ポリマー性セパレーターは、単層セパレーター(例えば、単層ポリプロピレンまたはポリエチレン)、3層または他の多層セパレーター(例えば、ポリプロピレン-ポリエチレン-ポリプロピレンセパレーター、任意選択でセラミックおよび/または界面活性剤変性)を含み得る。ポリマー材料は、ポリプロピレンポリマーおよび/またはポリエチレンポリマーを含み得る。ポリマー材料は、ポリエチレンポリマーを含み得る。
【0066】
一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーター16はポリエチレンポリマーを含み得る。ポリエチレンポリマーは、本明細書に定義される線状ポリマーを含み得る。ポリエチレンポリマーは、高密度ポリエチレン(Mwは200,000~500,000g/モル)を含み得る。ポリエチレンポリマーは、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)(Mwは4,000,000~6,000,000g/モル)を含み得る。本明細書で使用する場合、重量平均分子量(Mw)は、標準高温ゲル透過クロマトグラフィー(HT-GPC、ASTM D6474-19)によって決定される。
【0067】
セパレーター16は、線状ポリマーを含み得る。線状ポリマーは、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または100%などの少なくとも70%の線形性を含み得る。本明細書で開示するポリマー線形性は、13C-NMR(液体NMRまたは溶融状態マジック角回転(MAS)NMR)を使用した単純化されたランダル法によって決定され、線形性は、100-[第三級炭素のNMR曲線下の面積/全炭素のNMR曲線下の面積]%によって決定される。液体NMR試験では、ポリマーを溶解させるために塩化炭化水素溶媒(例えば、o-ジクロロベンゼン-d4、1,2,4-トリクロロベンゼン(TCB))を使用することができる。溶融状態MASでは、13C-NMRは、7mm13C-1H最適化高温プローブを使用して500MHzで実施される。
【0068】
線状ポリマーは、少なくとも200,000g/モル、少なくとも500,000g/モル、少なくとも800,000g/モル、または少なくとも1,000,000g/モルの重量平均分子量を有し得る。線状ポリマーは、100,000,000g/モル以下、10,000,000g/モル以下、または6,000,000g/モル以下など、1,000,000,000g/モル以下の重量平均分子量を有し得る。線状ポリマーはポリエチレンを含み得る。
【0069】
セパレーター16は、ASTM D1894-14によって決定される、1.5以下、または1.0以下など、2.0以下の動摩擦係数を含み得る。セパレーター16は、0.4~1.0など、0.4~2.0の動摩擦係数を含み得る。
【0070】
セパレーター16は、少なくとも275、または少なくとも300など、少なくとも240の伸びを含み得る。セパレーター16は、1000以下、または750以下など、1200以下の伸びを含み得る。セパレーター16は、275~1200、275~750、または300~750など、240~1200の伸びを含み得る。本明細書で開示する伸びは、ASTM D882引張試験によって定義される破断時で決定される。
【0071】
セパレーター16は、8μm~30μm、7μm~35μm、5μm~50μm、5μm~30μm、または9μm~25μmなど、2μm~100μmの厚さを有し得る。セパレーター16は、少なくとも5μm、または少なくとも7μmなど、少なくとも2μmの厚さを有し得る。セパレーター16は、50μm以下、または30μm以下など、100μm以下の厚さを有し得る。
【0072】
セパレーター16は、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、または少なくとも16など、少なくとも10の伸びの厚さに対する比を有し得る。セパレーター16は、70以下など、100以下の伸びの厚さに対する比を有し得る。セパレーター16は、13~70、または15~70など、10~100の伸びの厚さに対する比を有し得る。伸びの厚さに対する比は、セパレーター16の破断時伸びをセパレーターの厚さで割ることによって決定され得る。
【0073】
セパレーター16は、240MPa以下、230MPa以下、220MPa以下、または200MPa以下など、270MPa以下の弾性率を有し得る。セパレーター16は、少なくとも90MPa、または少なくとも100MPaなど、少なくとも80MPaの弾性率を有し得る。セパレーター16は、90~240、90~200、または90~190など、80~270の弾性率を有し得る。本明細書で開示する弾性率は、ASTM D882引張試験によって決定される。
【0074】
セパレーター16は、少なくとも1150オングストローム、少なくとも1175オングストロームなど、少なくとも1100オングストロームの表面粗さ(Ra)を含み得る。セパレーター16は、6000オングストローム以下、5000オングストローム以下、または4000オングストローム以下など、6500オングストローム以下の表面粗さ(Ra)を有し得る。セパレーター16は、1150~6500オングストローム、または1175~6500オングストロームなど、1100~6500の表面粗さ(Ra)を有し得る。本明細書で開示する表面粗さは、ZYGO NewView600干渉計を使用して決定される。
【0075】
セパレーター16は、Micromeritics AutoPore V9600ポロシメーターを使用して決定される、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、または少なくとも60%など、少なくとも15%の気孔率を含み得る。セパレーター16は、85%以下、または80%以下など、90%以下の気孔率を含み得る。セパレーター16は、20~85%、または25~80%など、15~90%の気孔率を含み得る。
【0076】
セパレーター16は、Micromeritics AutoPore V9600ポロシメーターを使用して決定される、少なくとも0.07μmなど、少なくとも0.05μmの平均孔径を含み得る。セパレーター16は、0.8μm以下、0.6μm以下、0.15μm以下、または0.11μm以下など、1.0μm以下の平均孔径を含み得る。セパレーター16は、0.05μm~0.8μm、0.05μm~0.6μm、0.05μm~0.15μm、または0.07μm~0.11μmなど、0.05μm~1.0μmの平均孔径を含み得る。
【0077】
セパレーター16は、ASTM D882引張試験によって決定される、少なくとも200MPa、または少なくとも300MPaなど、少なくとも180MPaの靭性を含み得る。セパレーター16は、1000MPa以下、または600MPa以下など、1250MPa以下の靭性を含み得る。セパレーター16は、200~1000MPa、または300~600MPaなど、180~1250MPaの靭性を含み得る。
【0078】
セパレーター16は、ASTM D882引張試験によって決定される、少なくとも25MPaなど、少なくとも20MPaの引張応力を含み得る。セパレーター16は、35MPa以下など、40MPa以下の引張応力を含み得る。セパレーター16は、25~35MPaなど、20~40MPaの引張応力を含み得る。
【0079】
セパレーター16は、ASTM D882引張試験によって決定される、少なくとも14MPaなど、少なくとも10MPaの引張歪を含み得る。セパレーター16は、27MPa以下など、30MPa以下の引張歪を含み得る。セパレーター16は、14~27MPaなど、10~30MPaの引張歪を含み得る。
【0080】
引き続き
図1を参照すると、セパレーター16は本明細書に記述されるように電気化学デバイス10に配置され得る。一部の非限定的な実施形態または態様では、セパレーター16は、二次(再充電可能)電池(電気化学デバイス10の形態)に配置され得る。セパレーター16を含む二次電池は、カルコゲンを含むカソード12などの本明細書に記述のカソード12を含み得る。セパレーター16を含む二次電池は、IA族からのアルカリ金属、IIA族からのアルカリ土類金属、IIIA族からの元素、および/またはいくつかのそれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むアノード14(例えば、リチウムアノード)など、本明細書に記述されるアノード14を含み得る。セパレーター16を含む二次電池は、本明細書に記述される電解質18を含み得る。セパレーター16を含む二次電池は、アノード14からカソード12を分離するように配置されたセパレーター16を含み得る。
【0081】
図1および2を参照すると、電気化学デバイス10は二次(再充電可能)電池を含み得る。二次電池は、(例えば、電池の使用によって)少なくとも部分的に電池を放電することによって、続いて(例えば、充電器20を使用して)少なくとも部分的に電池を充電することによって、使用され得る。二次電池は、寄生状態を示す前に、少なくとも5サイクル、少なくとも10サイクル、少なくとも15サイクル、または少なくとも20サイクルなど、少なくとも2サイクルを実施し得る。二次電池は、寄生状態を示す前に、5~45サイクルなど、10~45サイクルなど、2~45サイクルを実施し得る。
【0082】
本明細書で使用される「サイクル」は、充電イベントに続く放電イベントを指し(
図2を参照)、例外として、第1のサイクルは、完全に充電された電気化学デバイスが放電されることのみを含む。「故障までのサイクル」または「寄生状態を示す前のサイクル数」とは、電気化学デバイスが寄生状態を示すのに要するサイクル数を指す。寄生状態は、電気化学デバイスのクーロン効率が100%未満に落ちる1サイクル前のサイクル数として定義される。クーロン効率は、式1または式2で定義される:
式1。クーロン効率(%)=(放電容量/充電容量)×100、または、
式2。クーロン効率(%)=(比放電容量/比充電容量)×100
(式中、比放電容量および比充電容量は、電気化学デバイスの放電/充電容量を活物質のグラムで割ることによって決定される)。
【0083】
例えば、二次電池は、寄生状態を示す前に二次電池が再充電するのと同数のサイクルだけ非寄生サイクル状態22を示すことがあり、二次電池は、二次電池が寄生状態を示す最初のサイクルで寄生状態24を示すことがある。例えば、
図2のグラフで実施され示される試験では、二次電池は非寄生サイクル状態22を示す12サイクルを実施し、13番目のサイクルで寄生状態24を示した。
【0084】
一部の非限定的な実施形態または態様では、本明細書に記述の二次電池の形態にある電気化学デバイス10を用意することによって、二次電池はサイクルされ得る。二次電池は、少なくとも部分的に放電され得、その後少なくとも部分的に充電され得る。二次電池は、本明細書に記述されるサイクル様式で放電され充電され得、このサイクルは、充電ステップ中に二次電池が少なくとも寄生状態を示すまで繰り返され得る。
【0085】
二次電池は、2032コインセル電池などのコインセル電池を含み得る。こうしたコインセル電池は、以下により下部から上部へ製作され得る:負極ケースの蓋の中に、2枚のステンレス鋼スペーサー(例えば、厚さ500μmおよび直径18mm)、1枚のリチウム金属ディスク(例えば、厚さ250μmおよび直径16mm)を積み重ね、電解質(例えば、200μl)を添加し、セパレーター(例えば、直径20mm)を配置し、追加の電解質(例えば、100μl)を添加し、カソードを配置し、ステンレス鋼スペーサー(例えば、厚さ500μmおよび直径18mm)、ウェーブスプリング、および正極ケースを積み重ね、続いて(例えば、MTI MSK-110油圧クリンパを使用して)圧力1,000psiまで圧着し、続いて圧着圧力を解放する。
【実施例0086】
以下の実施例は、本開示の一般的な原理を実証するために示される。本開示は、示された特定の実施例に限定されると考えるべきではない。
【0087】
実施例1~23
二次電池の形態にある実施例の電気化学デバイスを、表1~2に示す以下の特性を有するポリマー性セパレーターを使用して調製した。二次電池は、前に記述のように調製したコインセル電池であった。電気化学デバイスで使用するアノードは、厚さ250μmのリチウムディスクであった。電気化学デバイスで使用する電解質は、溶媒系電解質であった。電気化学デバイスで使用するカソードは、炭素-硫黄複合材料を含んだ。
【表1】
【表2】
【0088】
表1~2からの特性および結果に基づいて、回帰分析をデータに関して実施し、どの特性、複数の特性、および/または特性の組み合わせが、寄生状態を示す前のサイクル数に最も影響を及ぼすか決定した。回帰分析では、各独立変数(例えば、セパレーターの特性)のP値によって、変数が従属変数(例えば、寄生状態を示す前のサイクル)と相関性を有さないという帰無仮説を検定する、線形回帰分析を実施した。変数のP値が有意水準より小さく、例えば0.01以下である場合、回帰線の勾配はゼロではなく、故に従属変数と独立変数の間に有意な直線関係があることを99%の信頼度で示すことになる。
【0089】
最初の線形回帰は、セパレーターの気孔率、孔径、厚さ(mm)、粗さ、および動摩擦係数による、寄生状態を示す前のサイクルへの有意性を試験し、以下の式を得た。表3は、各特性に関連付けられた係数およびそのP値も示している。
【0090】
式:魚鱗カソード寄生(Fish Scale Cathode Parasitic)=43.1-0.863気孔率+640孔径+0.996厚さ-0.00379粗さ-52.6動摩擦係数。最初の線形回帰は、63.79のR-2乗値を有した。
【表3】
【0091】
表3からのP値は、セパレーターの動摩擦係数と寄生状態を示す前のサイクルとの間の強い相関性を示した。
【0092】
2回目の線形回帰は、セパレーターの厚さ(mm)、破断時伸び、靭性(MPa)、および弾性率(MPa)による、寄生状態を示す前のサイクルへの有意性を試験し、以下の式を得た。表4は、各特性に関連付けられた係数およびそのP値も示している。
【0093】
式:魚鱗カソード寄生=20.95+1.369厚さ-0.0599伸び+0.0467靭性-0.1619弾性率。2回目の線形回帰は、56.33のR-2乗値を有した。
【表4】
【0094】
表4からのP値は、セパレーターの弾性率および/または厚さと、寄生状態を示す前のサイクルとの間の強い相関性を示した。
【0095】
3回目の線形回帰は、セパレーターの気孔率、孔径、動摩擦係数、および破断時伸びによる、寄生状態を示す前のサイクルへの有意性を試験した。この3回目の線形回帰では、実施例1~7および11~23からのデータのみを使用した(実施例1~7および11~23と比較して、著しく高い破断時伸び、伸び/厚さ、および靭性値を有した実施例8~10を省いた)。下の式を得た。表5は、各特性に関連付けられた係数およびそのP値も示している。
【0096】
式:魚鱗カソード寄生=-897+15.54気孔率-1964孔径+88.7動摩擦係数+0.1183伸び。3回目の線形回帰は、68.25のR-2乗値を有した。
【表5】
【0097】
表5からのP値は、セパレーターの破断時伸びと寄生状態を示す前のサイクルとの間の強い相関性を示した。セパレーターの厚さおよびセパレーターの破断時伸びと寄生状態を示す前のサイクルとの間の強い相関性を示すデータのために、伸び:厚さの比と寄生状態を示す前のサイクルとの間に強い相関性があることも予想される。
【0098】
実験データは、ポリエチレンセパレーター(例えば、線状ポリマー)は、ポリプロピレンセパレーター(例えば、非線状ポリマー)と比較して、改善されたサイクルを達成したことも示している。
【0099】
現在最も実用的であり好ましい実施形態または態様であると考えられるものに基づいて、例証の目的で本開示の主題を詳細に記述してきたが、こうした詳細は単にその目的に向けたものであり、本開示の主題は本開示の実施形態または態様に限定されず、それどころか、添付特許請求の範囲の趣旨および範囲内にある修正および等価なアレンジを包含する意図であると理解されたい。例えば、本明細書で開示される主題は、可能な範囲で、任意の実施形態または態様の1つまたは複数の特徴を他の任意の実施形態または態様の1つまたは複数の特徴と組み合わせることができることを、意図していることを理解されたい。