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特開2024-74789被験者の聴力を推定するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074789
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】被験者の聴力を推定するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/12 20060101AFI20240524BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A61B5/12
A61B10/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023196332
(22)【出願日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】22208537
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519235841
【氏名又は名称】インターアコースティックス アー/エス
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ラウル サンチェス‐ロペス
(72)【発明者】
【氏名】セーアン ラウガセン
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス ザール
(72)【発明者】
【氏名】リスベト ビアゲロン スィモンスン
【テーマコード(参考)】
4C038
【Fターム(参考)】
4C038AA04
4C038AB03
4C038VA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】被験者の聴力を推定するシステムを提供する。
【解決手段】音響出力ユニットはトランスデューサを介して被験者の耳に少なくとも1つの刺激を提供するように構成される少なくとも1つの出力ユニットと、被験者入力を検出し被験者に出力を提供するための被験者インターフェースと、少なくとも1つの刺激を生成するように構成された刺激生成器であって、試験プロトコルに従って複数の連続する試行を提供するように構成され、試験プロトコルに従って目標刺激または参照刺激のいずれかであり、2つの参照刺激および1つの試験刺激を含み、目標刺激に対応する代替オプションと参照刺激に対応する別の代替オプションを含む刺激生成器と、試行と後続の被験者入力との間の対応を分析する分析ユニットであって、分析された対応に従って前記試験プロトコルを調整するように構成される分析ユニットを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の聴力を推定するためのシステムであって、前記システムは、
トランスデューサを備える少なくとも1つの出力ユニットであって、音響出力ユニットは、前記トランスデューサを介して前記被験者の耳に少なくとも1つの刺激を与えるように構成された、少なくとも1つの出力ユニットと
被験者入力を検出し、前記被験者に出力を供給するための被験者インターフェースと、
前記少なくとも1つの刺激を生成するように構成された刺激生成器であって、
前記刺激生成器は、試験プロトコルに従った複数の連続した試行を供給し、前記試験プロトコルは被験者の聴力を推定するために作成され、各試行は2つの参照刺激と1つの試験刺激を含み、前記試験刺激は前記試験プロトコルにより目標刺激または参照刺激であり、
前記被験者入力は、一方は前記目標刺激に対応し、他方は前記参照刺激に対応する、2つの代替的な選択肢を含み、前記刺激生成器は、検出された被験者入力に応答して試行を提供するように構成されている、刺激生成器と、
前記提供された試行の各々と後続の被験者入力との間の対応関係を分析するために分析ユニットであって、前記分析ユニットは、前記分析された対応関係に従って、前記試験プロトコルを調節するように構成されている、分析ユニットと、
を備える、システム。
【請求項2】
前記試験プロトコルは、予備試験プロトコルと実際の試験プロトコルの2つの段階に分割される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記目標刺激は、スペクトル時間変調されたオーディオ信号を含み、変調度は、前記目標刺激のコントラストレベル(CL)を規定する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
前記目標刺激は、試験オーディオ信号とノイズオーディオ信号との組み合わせを含み、前記試験オーディオ信号と前記ノイズオーディオ信号との間の音圧レベルは、前記目標刺激の信号対ノイズ比(SNR)を規定する、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項5】
前記参照刺激は、ノイズオーディオ信号を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記分析された対応関係に従って前記試験プロトコルを調整するように構成された前記分析ユニットは、前記推定された聴力を適応的に更新することを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記刺激生成器は、前記目標刺激のCL又はSNRを提供するように構成され
(a)それぞれ、前記被験者の前記推定された聴力よりも高いCLまたはSNRと、
(b)それぞれ、前記被験者の前記推定された聴力よりも低いCLまたはSNRと、
の間を交互の前記目標刺激のCLまたはSNRを提供するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記推定された聴力は、
陽性被験者入力は、前記目標刺激または前記参照刺激の識別と同一であり、
陰性被験者入力は、前記目標刺激または前記参照刺激の不正確な識別と同一である、
前記被験者入力に応答して適応的に更新される、請求項6または7に記載のシステム。
【請求項9】
前記被験者インターフェースは、前記陽性又は陰性被験者入力に応答して、前記被験者に対して試験結果の形態で出力を提供するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記分析ユニットは、1つ以上の以前に決定された被験者入力に基づいて前記試験刺激を決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記試験刺激は、N回の前記試行に対する目標刺激であり、前記試験刺激は、M回の前記試行に対する参照刺激であり、N>Mである、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記試験プロトコルは、前記試行の回数NおよびMのランダムな分布を提供する、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
各試験プロトコルの開始時において、
第1に、前記刺激生成器は、第1の試行及び第2の試行を提供するように構成され、前記第1の試行は、目標刺激である試験刺激を含んでもよく、前記第2の試行は、参照刺激である試験刺激を含み、
第2に、固定された試行回数に対して、前記刺激生成器は、(a) 陽性被験者入力後にCLまたはSNRを減少させることと、(b)陰性被験者入力後にCLまたはSNRを増加させることと、によって調節される前記目標刺激のCLまたはSNRを提供するように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項14】
前記目標刺激に対応する2つ以上の被験者入力に応答して、前記分析ユニットは、前記試験プロトコルを調節して、
(a)前記刺激生成器は、現在の試行が参照刺激である試験刺激を含むことを提供するということと、
(b)連続する試行は、目標刺激を含む最も前の試行と比較して、減少したCLまたはSNRを有する目標刺激である試験刺激を備えるということと、
を含むように構成される、請求項8に記載のシステム。
【請求項15】
前記被験者からの前記参照刺激に対応する2つ以上の連続する同一の被験者入力に応答して、前記分析ユニットは、前記試験プロトコルを調節して、
前記刺激生成器は、現在の試行が、目標刺激を含む最も前の試行と比較して増加したCLまたはSNRを有する目標刺激を備えることを提供するということ
を含むように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項16】
前記分析ユニットは、複数の前記目標刺激の前記CLまたはSNRから導出された心理測定関数から、被験者の可聴コントラスト閾値またはノイズ中聴覚閾値を推定するように構成される、請求項3に記載のシステム。
【請求項17】
被験者の聴力を推定する方法であって、前記方法は、
被験者の推定される聴力に基づいて、試験プロトコルに従って刺激発生器によって生成された複数の連続する試行を、少なくとも1つの出力ユニットのトランスデューサを介して被験者の耳に提供することであって、各試行は、2つの参照刺激と1つの試験刺激とを含む、ことと、
被験者インターフェースを介して被験者入力を検出することと、
検出された被験者入力に応答して前記刺激発生器によって試行を提供することであって、前記試験刺激は、前記試験プロトコルに従った目標刺激または参照刺激のいずれかであり、前記被験者入力は、2つの代替選択肢を含み、一方は前記目標刺激に対応し、他方は前記参照刺激に対応する、ことと、
この方法は、前記提供された試行の各々と、後続の被験者入力との間の対応関係を、分析ユニットによって分析することと、
前記分析ユニットによって、前記分析された対応関係に従って前記試験プロトコルを調節することと、
を含む、方法。
【請求項18】
前記試験プロトコルの開始前に実行される予備試験プロトコルにおいて、前記被験者の前記聴力を予備的に推定することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
プロセッサと、請求項17または18に記載の方法のステップの少なくとも一部を前記プロセッサに実行させるためのプログラムコード手段と、を備える、データ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験者の聴力を推定するシステムに関する。
【0002】
本出願は、さらに、被験者の聴力を推定する方法に関する。
【0003】
本出願は、プロセッサと、プロセッサに方法のステップの少なくとも一部を実行させるためのプログラムコード手段とを備えるデータ処理システムにさらに関する。
【背景技術】
【0004】
システム
STM(スペクトル-時間変調)試験の一バージョンは、可聴コントラスト閾値(ACT)試験と呼ばれる。ACT試験では、聴覚訓練士が、目標信号のコントラストレベル(変調の量)を制御し、参照ノイズのシーケンス内で試験対象(たとえば、患者)に変調が提示される時間を制御する。
【0005】
閾値を決定するために、聴覚訓練士は、最も高いコントラストレベルから開始し、いわゆるHughson-Westlake手順[1]を使用して閾値を近似する。目標刺激が検出された場合、コントラストレベルは2ステップだけ減少される(下降近似)。目標刺激が検出されない場合、コントラストレベルは1ステップだけ増加される(上昇近似)。上昇近似における最後の5つの検出のうちの3つが同じコントラストレベルに対応するとき、手順は停止する。上昇近似における検出は、いわゆる閾値候補であり、応答を伴うかまたは伴わない、最後の5つの閾値候補を含む提示は、閾値候補ウィンドウ(TCW)である。最終ACTは、TCWに含まれる試行に適合された心理測定関数の特定の点に対応する。
【0006】
この試験は、音声試験[2]において補聴器を装着した個々の聴覚障害者(HI)の音声受信性能を正確に予測できることが示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、聴覚専門家に検査を行わせることによって、聴覚専門家は、必然的に、彼/彼女の注意を機器に集中させなければならず、被験者にはあまり集中させなくてもよい。
【0008】
したがって、聴覚訓練士が少なくとも部分的に検査/機器の操作から解放されるように検査を最適化する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本出願は、検査を行うために、例えば聴覚専門家/聴覚ケア専門家(HCP)などの人を必要としないユーザ操作ACT(UACT)検査の実施に関し、したがって、検査対象にサービスを提供するためのより多くの時間をもたらす。
【0010】
本出願の一態様では、被験者の聴力を推定するためのシステムが提供される。例えば、システムは、被験者の超閾値(可聴)聴覚能力を評価するのに適している。
【0011】
システムは、トランスデューサを含む少なくとも1つの出力ユニットを含む。(音響)出力ユニットは、前記トランスデューサを介して被験者の耳に少なくとも1つの刺激を与えるように構成される。例えば、トランスデューサは、刺激を音響信号として被験者に提供するためのレシーバ(スピーカ)を備えてもよい。
【0012】
このシステムは、被験者入力(すなわち、被験者からの応答)を検出し、前記被験者に出力を提供するための被験者インターフェースを備える。
【0013】
システムは、前記少なくとも1つの刺激を生成するように構成された刺激生成器を備える。
【0014】
刺激生成器は、試験プロトコルに従って複数の連続する試行を提供するように構成され、試験プロトコルは、被験者の聴覚能力を推定するために作成され、各試行は、2つの参照刺激と1つの試験刺激とを含み、試験刺激は、前記試験プロトコルに従った目標刺激または参照刺激のいずれかである。
【0015】
被験者入力は、2つの代替選択肢を含み、一方は目標刺激に対応し、他方は参照刺激に対応する。目標刺激に対応し、他の刺激が参照刺激に対応するという用語は、刺激が目標刺激であることを推定/指示するためのオプション、及び刺激が参照刺激であることを推定/指示するためのオプションが提供されることを意味する。例えば、オプション(例えば、画面上のボタンなどの領域)は、目標および参照に対応してもよく(すなわち、「目標」および「参照」と述べる)、または「はい」および「いいえ」などと述べてもよい。例えば、被験者は、試験刺激(例えば、第2の刺激)が参照刺激であるか、または目標刺激であるかを示さなければならない。刺激発生器は、検出された被験者入力に応答して次の試行を提供するように構成され得る。
【0016】
システムは、提供された試行のそれぞれと、後続の被験者入力との間の対応を分析するための分析ユニットを備え、分析ユニットは、前記分析された対応に従って前記試験プロトコルを調整するように構成される。
【0017】
これにより、聴覚訓練士/HCPが検査を行う必要性を最小限にするか、またはせいぜい排除するUACT検査が提供され、したがって、検査対象に役立つためのより多くの時間がもたらされる。
【0018】
例えば、聴覚専門家はUACTを得るプロセスの一部ではないので、試験プロトコルは、好ましくは、以下の点を考慮に入れるべきである。
1. 被験者の作業は容易であるべきである。
2. 試験プロトコルは、被験者の能力に難易度を適合させ、閾値の上下で刺激を交互にするべきである。
3. 試験プロトコルは、試験対象のパフォーマンスの対照として「キャッチ試行」を含むべきである。
4. 試験プロトコルは、手動ACTを使用するときに聴覚医の観察された挙動に基づく「人間の知能」を含むべきである。
【0019】
例えば、この手順は、25回以下の試行(試験刺激が参照刺激である場合の可能な試行、すなわちキャッチ試行を除く)で、信頼できる有効な閾値推定を提供すべきである。
【0020】
試験プロトコルは、少なくとも2つの段階に分割されてもよい。少なくとも2つのフェーズは、事前試験プロトコルと実際の試験プロトコルとを含むことができる。例えば、事前試験プロトコルは、被験者の前記聴覚能力の(予備的な)推定を得るために、実際の試験プロトコルの開始前に行われてもよい。例えば、実際の検査プロトコルは、前記(予備的)推定に基づいて、検査対象の(実際の)聴力を推定するように行われてもよい。事前試験プロトコルからの前記推定は、実際の試験プロトコルを通して更新されてもよい。
【0021】
目標刺激は、スペクトル時間変調されたオーディオ信号を含むことができる。
前記スペクトル時間変調されたオーディオ信号の変調度は、目標刺激のコントラストレベル(CL)を定義してもよい。
【0022】
目標刺激は、組み合わされた試験ディオ信号およびノイズオーディオ信号を含んでもよい。試験ディオ信号とノイズオーディオ信号との間の音圧レベルは、目標刺激の信号対ノイズ比(SNR)を定義し得る。
【0023】
参照刺激は、変調されていないオーディオ信号を定義し得る。参照刺激は、ノイズオーディオ信号を含んでもよい。
【0024】
分析ユニットが前記分析された対応に従って前記試験プロトコルを調整するように構成されるという用語は、前記推定された聴力を適応的に更新することを含んでもよい。
【0025】
刺激発生器は、(a)前記被験者の前記推定された聴力よりも高いCLと(b)前記被験者の前記推定された聴力よりも低いCLとの間で交互に切り替わる前記目標刺激のCLを提供するように構成されてもよい。
【0026】
刺激生成器は、(a)前記被験者の前記推定された聴力よりも高いSNRと(b)前記被験者の前記推定された聴力よりも低いSNRとの間で交互に切り替わる前記目標刺激のSNRを提供するように構成されてもよい。
【0027】
推定された聴覚能力は、前記被験者入力に応答して適応的に更新されてもよく、ここで、陽性被験者入力は、前記目標刺激または前記参照刺激の識別と同一である。
【0028】
推定された聴覚能力は、前記被験者入力に応答して適応的に更新されてもよく、ここで、陰性被験者入力は、前記目標刺激または前記参照刺激の誤った識別と同一である。
【0029】
例えば、閾値を得るための手順は、いわゆるキャッチ試行を含み、ここで、試験刺激(例えば、第2の刺激)は、参照刺激である。試験対象は、それが目標刺激ではなかったことを示すことが期待される。例えば、被験者が、代わりに目標刺激を聞いたことを示す場合、被験者入力が正しくなかったことを示す陰性フィードバックが被験者インターフェース上に示され得る。
【0030】
被験者インターフェースは、前記陽性被験者入力に応答して、前記被験者に対して試験結果の形態で出力を提供するように構成され得る。被験者インターフェースは、前記陰性被験者入力に応答して、前記被験者に対して試験結果の形態で出力を提供するように構成され得る。
【0031】
分析ユニットは、1つ以上の以前に決定された被験者入力に基づいて前記試験刺激を決定するように構成されてもよい。
【0032】
試験刺激は、N回の前記試行に対する目標刺激であってもよく、試験刺激は、M回の前記試行に対する参照刺激であってもよい。数N>数Mである。
【0033】
試験プロトコルは、試行の前記数Nおよび数Mのランダム分布を提供してもよい。言い換えれば、試験プロトコルは、前記目標刺激および前記参照刺激のランダム分布を提供し得る。
【0034】
各試験プロトコルは、予備試験プロトコルによって先行されてもよい。
【0035】
各試験プロトコルの開始時において、
第1に、前記刺激生成器は、第1の試行及び第2の試行を提供するように構成されてもよく、前記第1の試行は、目標刺激である試験刺激を含んでもよく、前記第2の試行は、参照刺激である試験刺激を含んでもよく、
第2に、固定された試行回数に対して、前記刺激生成器は、(a)陽性試験対象入力後にCLを減少させることと、(b)陰性試験対象入力後にCLを増加させることと、によって調節される前記目標刺激のCLを提供するように構成されてもよい。
【0036】
各試験プロトコルの開始時において、
第1に、前記刺激生成器は、第1の試行及び第2の試行を提供するように構成されてもよく、前記第1の試行は、目標刺激である試験刺激を含んでもよく、前記第2の試行は、参照刺激である試験刺激を含んでもよく、
第2に、固定された試行回数に対して、前記刺激生成器は、(a)陽性被験者入力後にSNRを減少させることと、(b)陰性試験対象入力後にSNRを増加させることと、によって調節される前記目標刺激のSNRを提供するように構成されてもよい。
【0037】
目標刺激に対応する2つ以上の被験者入力に応答して、分析ユニットは、前記試験プロトコルを調節して、
(a)前記刺激生成器は、現在の(すなわち、次の)試行が参照刺激である試験刺激を含むことを提供するということと、
(b)連続する試行は、目標刺激を含む最も前の試行と比較して、減少したCLを有する目標刺激である試験刺激を備えるということと、
を含むように構成されてもよい。例えば、連続試行は、現在の閾値推定値よりも6 dB nCLだけ低いCLを有する目標刺激である試験刺激を含むことができる。
【0038】
目標刺激に対応する2つ以上の被験者入力に応答して、分析ユニットは、前記試験プロトコルを調節して、
(a)前記刺激生成器は、現在の(すなわち、次の)試行が参照刺激である試験刺激を含むことを提供するということと、
(b)連続する試行は、目標刺激を含む最も前の試行と比較して、減少したSNRを有する目標刺激である試験刺激を備えるということと、
を含むように構成されてもよい。
【0039】
例えば、連続的な試行は、現在の閾値推定値よりも6 dBだけ低いSNRを有する目標刺激である試験刺激を含むことができる。例えば、これは、患者が様々な連続した時間に「はい/目標」と応答し、患者にとって楽すぎるか、または患者がちょうど横たわっていることを示唆すると見られ得る。次いで、最初に、彼らが検査に注意を向けているかどうかをチェックするための参照刺激が提供され、続いて、CL/SNRが減少した目標刺激が提供され、したがって、閾値から離れている場合、手順を修正することができる。
【0040】
例えば、2つ以上の被験者入力は、2、4、6、または別の数の入力を指し得る。好ましくは、それは4つの被験者入力に応答してもよい。
【0041】
目標刺激に対応する被験者入力は、試験刺激が目標刺激であることを被験者が示すことを指し得る。参照刺激に対応する被験者入力は、被験者が、試験刺激が参照刺激であることを示すことを指し得る。
【0042】
参照刺激に対応する2つ以上の連続する同一の被験者入力に応答して、分析ユニットは、前記試験プロトコルを調節して、
前記刺激生成器は、現在の試行が、目標刺激を含む最も前の試行と比較して増加したCLを有する目標刺激を備えることを提供するということ
を含むように構成されてもよい。例えば、現在の試行は、現在の閾値推定値を6 dB nCLだけ上回るCLを有する目標刺激を含むことができる。これにより、被験者は、目標刺激がどのように聞こえるかを覚えるように手助けされる。
【0043】
参照刺激に対応する2つ以上の連続する同一の被験者入力に応答して、分析ユニットは、前記試験プロトコルを調節して、
前記刺激生成器は、現在の試行が、目標刺激を含む最も前の試行と比較して増加したSNRを有する目標刺激を備えることを提供するということ
を含むように構成されてもよい。例えば、現在の試行は、現在の閾値推定値よりも6 dB高いSNRを有する目標刺激を含むことができる。これにより、被験者は、対象刺激がどのように聞こえるかを覚えるように手助けされる。
【0044】
例えば、2つ以上の連続する同一の試験対象入力は、2、4、6、または別の数の入力を指し得る。好ましくは、それは、4つの連続する同一の被験者入力に応答してもよい。
【0045】
分析ユニットは、前記複数の目標刺激のCLから導出された心理測定関数から、被験者の可聴コントラスト閾値またはノイズ中聴覚閾値を推定するように構成されてもよい。
【0046】
分析ユニットは、前記複数の目標刺激のSNRから導出された心理測定関数から、被験者の可聴コントラスト閾値またはノイズ中聴覚閾値を推定するように構成されてもよい。
【0047】
分析ユニットは、ニューラルネットワークを備えてもよい。分析ユニットは、前記ニューラルネットワークを使用することによって、被験者の可聴コントラスト閾値またはノイズ中聴覚閾値を推定するように構成されてもよい。
【0048】
分析ユニットは、ベイズの定理に基づいてもよい。手順は、次の目標刺激のCLまたはSNRを、より多くの情報利得を有するレベルになるように選択するように構成され得る[3]。
【0049】
使用
一態様において、上記及び特許請求の範囲に記載されるシステムの使用が更に提供される。
【0050】
方法
一態様において、被験者の聴覚能力を推定する方法が、本出願によってさらに提供される。
【0051】
この方法は、試験プロトコルに従って刺激発生器によって生成された複数の連続する試行を、少なくとも1つの出力ユニットのトランスデューサを介して被験者の耳に提供することを含む。試験プロトコルは、被験者の推定された聴力に基づいてもよい。
【0052】
各試行は、2つの参照刺激と1つの試験刺激とを含む。したがって、各試行は、3つの刺激のトリプレットを含むことができる。例えば、第1および第3の刺激は、常に参照刺激(例えば、非変調ノイズ信号)であってもよく、一方、第2の刺激は、参照刺激または目標刺激(例えば、スペクトル時間変調ノイズ信号)のいずれかであってもよい。
【0053】
この方法は、被験者インターフェースを介して被験者入力を検出することを含む。
【0054】
本方法は、検出された被験者入力に応答して刺激発生器によって試行を提供することを含むことができる。
【0055】
試験刺激は、前記試験プロトコルに従った目標刺激または参照刺激のいずれかである。被験者入力は、2つの代替選択肢を含み、一方は目標刺激に対応し、他方は参照刺激に対応する。
【0056】
この方法は、提供された各試行と、入力された後続の被験者との間の対応関係を、分析ユニットによって分析することを含む。
【0057】
この方法は、前記分析ユニットによって、前記分析された対応関係に従って前記試験プロトコルを調節することを含む。
【0058】
本方法は、前記試験プロトコルの開始前に実行される予備試験プロトコルにおいて、試験対象の前記聴力を(予備的に)推定することをさらに含んでもよい。(予備的な)推定は、試験プロトコルを通して更新されてもよい。
【0059】
上述のシステムの構造的特徴の一部又は全て、又は特許請求の範囲は、対応するプロセスによって適切に置換される場合、方法の実施形態と組み合わせることができ、その逆も同様であることが意図される。本方法の実施形態は、対応するシステムと同じ利点を有する。
【0060】
コンピュータ可読媒体またはデータキャリア
一態様では、コンピュータプログラムがデータ処理システム上で実行されるときに、データ処理システム(コンピュータ)に、上記および特許請求の範囲に記載の方法(のステップ)の少なくとも一部(例えば、大部分またはすべて)を実行(実施)させるためのプログラムコード手段(命令)を含むコンピュータプログラムを記憶する有形コンピュータ可読媒体(データキャリア)が、本出願によってさらに提供される。
【0061】
コンピュータプログラム
プログラムがコンピュータによって実行されるときに、コンピュータに、上記で説明され、特許請求の範囲に記載された方法(のステップ)を実行させる命令を含むコンピュータプログラム(製品)が、本出願によってさらに提供される。
【0062】
データ処理システム
一態様では、プロセッサと、上記および特許請求の範囲に記載された方法のステップの少なくとも一部(大部分またはすべてなど)をプロセッサに実行させるためのプログラムコード手段とを備えるデータ処理システムが、本出願によってさらに提供される。
【0063】
補助装置
さらなる態様では、上記および特許請求の範囲に記載された、補助装置を備えるシステムがさらに提供される。
【0064】
システムは、システムのオペレータデバイス(例えば、分析ユニットおよび/または信号発生器を備える)と補助デバイス(例えば、試験対象インターフェースを備える)との間に通信リンクを確立して、情報(例えば、制御およびステータス信号)を一方から他方に交換または転送することができるように適合され得る。
【0065】
システムは、オペレータデバイスとオーディオデバイス(例えば、出力ユニット、例えばヘッドセット及び/又はイヤホンを備える)との間に通信リンクを確立して、情報(例えば、刺激)を一方から他方に交換又は転送することができるようにするように適合されてもよい。
【0066】
補助デバイスは、リモコン制御、スマートフォン、またはタブレットなどの他のポータブル電子デバイスを備え得る。
【0067】
通信リンクは、例えば、ブルートゥース(登録商標)または他の何らかの標準化された方式に基づく有線または無線リンクであってもよい。
【0068】
APP
さらなる態様では、APPと呼ばれる非一時的アプリケーションが、本開示によってさらに提供される。APPは、例えば、補助デバイス上で実行されて、上記および特許請求の範囲に記載の試験対象インターフェースを実装するように構成された実行可能命令を含む。APPは、リモコン制御、スマートフォン、またはタブレットなどの他の携帯型電子デバイス上で実行されて、前記オペレータデバイスとの通信を可能にするように構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0069】
本開示の態様は、添付の図面と併せて以下の詳細な説明から最もよく理解され得る。図面は、明瞭化のために概略的であり且つ単純化されており、特許請求の範囲の理解を改善するための詳細を示すに過ぎず、他の詳細は省略されている。全体を通して、同一の参照番号は、同一のまたは対応する部分に使用される。各態様の個々の特徴は、それぞれ、他の態様の任意のまたはすべての特徴と組み合わせることができる。これらの及び他の態様、特徴及び/又は技術的効果は、以下に記載される図面を参照して明らかになり、解明されるであろう。
【0070】
図1】被験者の聴力を検査するためのシステムを示す図である。
図2】被験者の聴力を検査する方法のフロー図である。
図3】修正されたHughson-Westlake手順のフロー図である。
図4A】心理測定関数(Ψ)と情報利得関数(IG)との間の関係を示す図である。
図4B】心理測定関数(Ψ)と情報利得関数(IG)との間の関係を示す図である。
図5】25回の試行を含む試験プロトコルの開発を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本開示の適用可能性のさらなる範囲は、以下に与えられる詳細な説明から明らかになるであろう。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本開示の好ましい実施形態を示すが、例示としてのみ与えられることを理解されたい。他の実施形態は、以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【0072】
添付の図面に関して以下に記載される詳細な説明は、様々な構成の説明として意図される。詳細な説明は、様々な概念の完全な理解を提供する目的で具体的な詳細を含む。しかしながら、これらの概念がこれらの具体的な詳細なしに実施され得ることは、当業者には明らかであろう。システムおよび方法のいくつかの態様は、様々なブロック、機能ユニット、モジュール、コンポーネント、ステップ、プロセス、アルゴリズムなど(集合的に「要素」と呼ばれる)によって説明される。特定の用途、設計制約、または他の理由に応じて、これらの要素は、電子ハードウェア、コンピュータプログラム、またはそれらの任意の組合せを使用して実装され得る。
【0073】
図1は、被験者の聴力を検査するためのシステムを示す。
【0074】
図1において、システム1は、2つ以上の装置に分割されてもよいことが示されている。しかしながら、システム1は、1つの装置だけであってもよいことが予見される。したがって、刺激生成器SGおよび分析ユニットAUの一方または両方が、ヘッドセットなどのオーディオデバイスに組み込まれ得ることが予見される。
【0075】
したがって、システム1は、オペレータデバイス2、オーディオデバイス3、および補助デバイス4を備えるように示されている。オペレータデバイス2は、刺激発生器SGおよび分析ユニットAUを備えてもよい。オーディオ装置3は、少なくとも1つの出力ユニット5を有してもよい。図1には、2つの出力ユニット5が示されている。補助装置4は、被験者インターフェース6を備えてもよい。
【0076】
刺激生成器SGは、少なくとも1つの刺激を生成し、前記少なくとも1つの刺激をオーディオデバイス3に送信するように構成されてもよい。
【0077】
刺激発生器SGは、試験プロトコルに従って複数の連続した試行8を提供するように構成されるように示されている。図1では、3つの連続する試行8が、オーディオ装置3の2つの出力ユニット5のそれぞれに提示されるように示されている。しかしながら、試験プロトコルは、(キャッチ試行を除き)20、25、30等のような、いくつかの連続した試行8を提示することを含んでもよい。
【0078】
刺激生成器SGは、有線又は無線接続11を介して、オーディオ装置3に試行8を送信してもよい。
【0079】
各試行8は、2つの参照刺激REFと1つの試験刺激とを含むことができ、試験刺激は、前記試験プロトコルに従って目標刺激または参照刺激REFのいずれかである。図1において、被験者に提示される第1の試行8は、参照-目標-参照の刺激トリプレットを含み、後続の第2の試行8は、参照-参照-参照の刺激トリプレットを含む(いわゆるキャッチ試行)。
【0080】
例えば、可聴コントラスト閾値を試験するとき、目標刺激は、変調された刺激(組み合わせではない)であってもよく、変調深度は、試験プロトコルに従って変化し、それは、CLで定義される。例えば、代替的に、雑音下での聴覚を試験するとき、目標刺激は、試験ディオ信号+雑音オーディオ信号の組み合わせであり、試験ディオ信号のレベルは、試験プロトコルに従って変化し、閾値は、SNRで定義される。
【0081】
図1では、オーディオデバイス3は、被験者7の耳に配置されるヘッドセットとして示されているが、オーディオデバイス3は、代わりに、耳の一方のみに配置されてもよく、他のイヤホンまたはトランスデューサを備える他のデバイスが代替的に使用されてもよい。オーディオ装置3の2つの出力ユニット5は、(それぞれ)トランスデューサを有してもよく、音響出力ユニット5は、それぞれ、前記トランスデューサを介して被験者7の耳に少なくとも1つの刺激を与えるように構成されてもよい。したがって、連続する試行8は、オーディオ装置3に送信されてもよく、出力ユニット5のそれぞれは、前記トランスデューサを介して、試行8の刺激を被験者7の耳に提示してもよい。
【0082】
図1では、補助装置4はタブレットとして示されているが、他の(例えば、携帯型)装置が使用されてもよい。補助装置4の検査用サンプルインターフェース6は、検査用サンプル7による検査用サンプル入力を検出し、検査用サンプル7に出力を提供するように構成されてもよい。
【0083】
被験者入力は、2つの代替選択肢を含むことができ、1つは、目標刺激に対応し、例えば、目標ボタン9「TARGET」であり、被験者7は、現在の試行において目標刺激を識別する場合に押すことができ、もう1つは、参照刺激に対応し、例えば、参照ボタン10「REF」であり、被験者7は、現在の試行において参照刺激を識別する場合に押すことができることが示されている。刺激生成器SGは、検出された被験者入力に応答して次の試行8を提供/設計するように構成されてもよい。
【0084】
分析ユニットAUは、提供された試験8のそれぞれと、補助デバイス4によって検出された後続の試験対象入力との間の対応を分析するのに適していることがある。
分析ユニットAUは、前記分析された対応に従って前記試験プロトコルを調整するように構成されてもよい。
【0085】
通信リンク12は、情報が往復して送信されることができるように、補助装置4と分析ユニットAUとの間に存在してもよい。例えば、補助装置4は、入力された検査対象を解析ユニットAUに送信してもよい。分析ユニットAUは、被験者インターフェース6上で被験者7に提示される出力を送信することができる。
【0086】
図2は、被験者の聴力を検査する方法のフロー図を示す。
【0087】
図2は、聴覚能力を試験するための全体的な手順、言い換えれば試験プロトコルを示す。手順の別個のステップのいくつかは、以下の図においてさらに詳細に説明される。図2に示される試験プロトコルは、2つのフェーズ、すなわち、事前試験プロトコルと実際の試験プロトコルとに分割される。試行数n<NPreの場合、事前試験プロトコルが実行され、n>NPreの場合、実際の試験プロトコルが実行される。
【0088】
試験プロトコルの開始(ステップ「開始」)時に、n番目の試行(刺激トリプレット)は、試験刺激が目標刺激である試行であるか、または参照刺激である試行である(ステップ「キャッチ試行か?」)。
【0089】
n番目の試行がキャッチ試行である場合、試行は、参照-参照-参照のトリプレットで提示される(ステップ[1])。次に、被験者が応答を与える(ステップ[2])。キャッチ試行は、手順の開始時に、4~8試行離れた試行にランダムに割り当てられる。キャッチ試行への試験対象入力は、試験プロトコルの信頼性の指標となり得るので、記憶される。
【0090】
キャッチ試行は、実際の試験プロトコルのn回の試行のうちの1つとしてカウントされない。これにより、n回目の試行が再度提示される。n回目の試行がキャッチ試行でない場合には、目標刺激のCLを調整し(ステップ[3])、被験者に試行を提示する(ステップ[4])。以下のステップ(ステップ[5]+[6])では、応答(すなわち、試験対象入力)が収集され、確率が更新される。
【0091】
n<NPreであるn回目の試行については、予備試験プロトコルが実行される。試験前プロトコルは、修正されたHughson-Westlake手順(ステップ[7])に基づいて、次の試行(n+1)のCLを調整すること(ステップ[3])を含む。修正Hughson-Westlake手順(ステップ[7])を以下でより詳細に説明する。事前試験プロトコルの終わりに、被験者の推定された聴覚能力が得られ、これは実際の試験プロトコルにおいて使用され得る。
【0092】
n>NPreで、実際の試験プロトコルが開始される。実際の試験プロトコルの間、事前試験プロトコルで推定された聴覚能力は、適応的に更新される。
【0093】
n回目の試行について、各可能な閾値(th)および傾き(sl)の確率は、ベイズの法則に基づいて更新される(ステップ[6])。
【0094】
ベイズの定理に基づいて、以下の式
【数1】
を簡略化することができる。ここでλは、2つのパラメータ、すなわち、心理測定関数の閾値の推定値であるλth、または、心理測定関数の勾配の推定値であるλslからなってもよく、rはK個の応答(1は正しい、0は正しくない)であり、CLは、所与の試行のコントラストレベルである。
【0095】
簡単にするために、確率は、
【数2】
のように理解することができる。したがって、事後確率は、尤度
【数3】
と(前の試行の事後確率であった)事前確率との積の結果である。
【0096】
第1の試行では、事前確率はは均一であり、したがって、閾値thの可能な値に対応する項および傾きslの可能な値に対応する項の各項が同一である確率P(th,sl)として、
【数4】
であり、ここで、
th=[-4,-3,…,16]
Sl=[0.50,0.75,1,1.25,1.5]
である。
【0097】
n回目の試行について、最後のK回の試行のCLおよび応答は、尤度を計算するために使用される。この手順では、k=[n-1,n]を利用し、これは、現在のn回目の応答と以前のn-1回目の応答とを使用して計算されることを意味する。しかしながら、第1の試行においては、k=[n]である。なぜなら、1つの試行しか提示されていないからである。
【0098】
一般的な心理測定関数
【数5】
を考える。閾値および勾配の各可能な値に対する尤度は、以下のように計算される。
【数6】
ここで、k=[n-1,n]である。
【0099】
したがって、事後確率は、事前確率行列と尤度行列の項ごとの積として計算される。
【数7】

したがって、本出願では、最後の2つの試行(n-1,n)が確率を更新するために使用される。
【0100】
次いで、閾値(λt)及び勾配(λsl)の現在の推定値を取得することができ(ステップ[8]、以下を参照)、情報利得の関数に基づいて次の試行のための最適なCLを計算するために使用することができる(ステップ[9]、更なる詳細については図5を参照)。以前の応答が、被験者の応答が信頼できないことを示唆する場合、閾値推定を改善するために、試験プロトコルの例外がトリガされてもよい(ステップ[10])。
【0101】
閾値及び勾配の推定値を得るステップ[8]は、事後確率から、事後行列(すなわち、行α及び列β)の最大値の引数を単に得ることによってパラメータλを推定することによって達成することができ、
【数8】
そして、これらのインデックスを、閾値及び勾配の可能な値λth=thα;λsl=slβのベクトルと共に使用する。
【0102】
手動で実施されたACT試験を使用することによって得られた経験に基づいて、以前に説明された試験プロトコルに対するいくつかの例外が、ステップとして含まれた[10]。例外は、2つのアクションに要約され、これらは、閾値を超える追加のキャッチ試行または提示の形態で、最後のX個の応答に基づいてシステムによって取られ得る。例えば、システムは、X=4を使用してもよく、したがって、χ=[n-3,n]である。
【0103】
追加のキャッチ試行:デフォルトで、システムは、間に4~8回の試行を有する特定の試行番号にランダムに割り当てられた4~5回のキャッチ試行を考慮してもよい。例外は二重にあり得る。
(a)第1の捕捉試行は、常に試行番号2であってもよい。これにより、第1の試行は、完全に調節された目標刺激を提示し、第2の試行は、(試験刺激としての)参照刺激を提示する。これは、被験者が自分自身の内部表現を作成するのを助けることを意味する。
(b)非捕捉試行におけるX回の連続する試験対象入力が目標刺激(例えば、「はい」または「目標」応答)に対応するたびに、追加の捕捉試行が追加されてもよい。被験者がボタン「TARGET」を系統的に押している場合、それは、1つおきの試行のキャッチ試行をトリガすることができる。多数のキャッチ試行は、信頼性のない試験実行を示す。
(c)追加のキャッチ試行の後、次の試行は、現在の閾値推定λthより6 dB低いnCLを提示され得る。これは、被験者が以前のX応答に対して肯定的に応答した(すなわち、目標刺激に対応する被験者入力を提供した)可能性があり、実際の閾値が以前の提示よりもかなり低い可能性があるという仮定の下で行われる。さらに、試験対象がキャッチ試行で「キャッチ」された場合、その応答参照は、その後の試行ではより保守的である可能性がある。その場合、次の試行(複数可)において、被験者は、(例えば、「REF」を押すことによって)参照刺激に対応する被験者入力を提供することが期待される。一方、目標刺激に対応する被験者入力を提供することによって(例えば、「TARGET」を押すことによって)、明らかに信頼できない被験者を示すことができる。
【0104】
閾値を超える提示: 被験者がX回の連続した試行において参照刺激に対応する入力を提供する(例えば、「REF」を押す)場合、次の試行は、現在の閾値推定λthを6 dB上回るnCLを提示され得る。これは、被験者が彼/彼女の内部参照を「失い」、「目標刺激がどのように聞こえるか」というリマインダを必要とすると仮定して行われる。その試行の後、被験者は、目標刺激を識別することに再び集中することができる。
【0105】
したがって、適応手順の他に、聴覚訓練士によって報告された手動試験の経験に基づく例外が試験プロトコルに含まれている。被験者の以前の応答に応じて、システムは、被験者の注意を維持し、一貫したパフォーマンスを保証するために、閾値を十分に上回る追加のキャッチ試行または提示をトリガしてもよい。
【0106】
図3は、修正されたHughson-Westlake手順[1]のフロー図を示す。
【0107】
被験者入力(ステップ「応答」)が正しい場合(ステップ「正しい?」)、後続のCLであるCLn+1のCLは2ステップだけ減少される、すなわち、CLn+1=CLn-2ステップである(ステップ[7a])。CLn+1が最小CL、CLminよりも小さい場合(ステップ[7b])、CLは、前記最小CLに調整され(ステップ[7c])、これが出力される(ステップ「継続」)。そうでない場合、既に決定されたCLn+1(ステップ[7d])が出力され(ステップ「継続」)、例えば、CLを調整する(ステップ[3])。
【0108】
被験者入力(ステップ「応答」)が正しくない場合(ステップ「正しい?」)、後続のCLであるCLn+1のCLは、1ステップだけ増加される、すなわち、CLn+1=CL+1ステップである(ステップ[7e])。CLn+1が最大CL、CLmaxを上回る場合(ステップ[7f])、CLは前記最大CLに調整され(ステップ[7g])、これが出力される(ステップ「継続」)。そうでない場合、既に決定されたCLn+1(ステップ[7h])が出力され(ステップ「継続」)、例えば、CLを調整する(ステップ[3])。
【0109】
図4Aおよび図4Bは、心理測定関数(Ψ)と情報利得関数(IG)との間の関係を示す。
【0110】
本出願では、2つの仮定、すなわち、
(1)刺激が(現在推定されている)閾値より少し上と少し下に交互に提示される場合、試験プロトコルを経験する(例えば、はい/いいえのタスクを実行する)被験者は、より一貫して彼らの注意を保つであろうことと、
(2)心理測定関数の傾きは、これらの2つの点(すなわち、閾値より少し上の刺激と閾値より少し下の刺激)の間のコントラストレベルの差を制御することと、
に基づいて、簡略化された情報利得関数が使用される。
【0111】
2つの点は、心理測定関数の82%(すなわち、閾値をわずかに上回る)および18%(すなわち、閾値をわずかに下回る)において推定され得る。
【0112】
心理測定関数の82%および18%の点の推定値を得るために、心理測定関数の導関数は、最初に、勾配に関して計算されなければならない。
【数9】
情報利得(IG)関数は、th=λth及びsl=λslについて定義される(式)である。
【数10】
対応するIG関数は、心理測定関数の18%で最小値を有して減少し、次いで82%で最大値を有して増加する。
【0113】
図4A及び図4 Bでは、心理測定関数(「Ψ」実線)と情報利得関数(「IG」点線)とがどのように関連するかが例示されている。
【0114】
図4Aは、被験者からの非常に一貫した応答を有する試験実行を示し、したがって、最大値および最小値は互いに近く、CLとCLn+1(IGの最小および最大)との間の距離は小さい(約2 dB nCI)。閾値は6 dBと決定され、心理測定関数の傾きは1.4である。
【0115】
図4Bは、CLとCLn+1がさらに離れている(約4 dB nCL)、一貫性の低い試験実行を示す。閾値は6 dBと決定され、心理測定関数の傾きは0.5である。
【0116】
前記2つの点(すなわち、82%および18%)の交互の提示を使用するために、偶数試行では最小値が提示され、奇数試行では最大値が提示されてもよい。
【数11】
【0117】
この手順の利点は、CLとCLn+1との間のステップサイズが、勾配の現在の推定値に反映される性能に依存することである。以前の試行において、試験対象が一貫した応答を示した場合、勾配はより大きくなり、ステップサイズは最小になる。以前の試行における応答が一貫性に欠ける場合、勾配はより小さくなり、ステップサイズはより大きくなる。N回の試行の最後に、データに適合された心理測定関数から可聴コントラスト閾値が得られる。この手順は、推定された18%および82%の点で多くの試行の応答を収集するので、結果として得られる閾値は、多くの提示が18%または82%の点よりも十分に下または上であり得る別の適応手順よりも、よりロバストで効率的である。重要なことに、CLn+1は、ステップサイズに従った値にのみ調整され、この場合、2 dB nCLである。
【0118】
図5は、25回の試行を含む試験プロトコルの開発を示す。
【0119】
図5の上のグラフには、25回の試行のそれぞれについての目標刺激のnCIが示されている。6 dBの点線は、例えば、図5に示される試験プロトコルの前の予備試験プロトコル中に決定された、記憶された閾値を示す。
【0120】
最初の4つの刺激に対して、被験者は、目標刺激が識別されるという入力を提供する(「+」によって示される)。各ステップについて、nCLは4 dB(2ステップサイズ)だけ減少される。5回目の刺激では、被験者は、目標刺激が特定されないという入力を提供し(「.」で示される)、これは、以下の3回の刺激の場合も同様である。これらのステップの各々に対して、CLは2 dBだけ増加される。被験者は、8 dBのnCLで再び目標刺激を識別する。その後、目標刺激は、閾値を下回るnCLと閾値を上回るnCLとの間で変動する。
【0121】
図5の下のグラフでは、nCLの関数としての正確な応答のパーセントが、試験のデータに適合された心理測定関数の形態で示されている。結果として得られる可聴コントラスト閾値は、試験プロトコルの終わりに心理測定関数から決定されてもよい。しきい値は、点線で示されるように7.1 dBと推定される。
【0122】
詳細な説明及び/又は特許請求の範囲のいずれかにおいて、上述した装置及びシステムの構造的特徴は、対応するプロセスによって適切に置換される場合、方法のステップと組み合わされてもよいことが意図される。
【0123】
使用される場合、単数形「a」、「an」、および「the」は、別段に明記されていない限り、複数形も含む(すなわち、「少なくとも1つ」という意味を有する)ことが意図される。本明細書で使用される場合、「含む(includes)」、「備える(comprises)」、「含んでいる(including)」、および/または「備えている(comprising)」という用語は、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことがさらに理解されよう。また、ある要素が別の要素に「接続される」または「結合される」と言及される場合、その要素は、他の要素に直接接続または結合され得るが、別段の明示的な記載がない限り、介在要素も存在し得ることも理解されよう。さらに、本明細書で使用される「接続される」または「結合される」は、ワイヤレスで接続または結合されることを含み得る。本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つまたは複数の任意のおよびすべての組合せを含む。開示された方法のステップは、特に明記しない限り、本明細書に記載された正確な順序に限定されない。
【0124】
特許請求の範囲は、本明細書に示される態様に限定されることを意図されず、特許請求の範囲の言語と一致する全範囲を与えられるべきであり、単数形での要素への言及は、特にそのように述べられない限り、「1つおよび1つのみ」を意味することを意図されず、むしろ「1つまたは複数」を意味する。
【0125】
参考文献
[1] Carhart, R., & Jerger, J. F. (1959). Preferred Method For Clinical Determination Of Pure-Tone Thresholds. Journal of Speech and Hearing Disorders, 24(4), 330-345.
[2] Zaar, J., Simonsen, L. B., Behrens, T., Dau, T., & Laugesen, S. (2019). Investigating the relationship between spectro-temporal modulation detection, aided speech perception, and noise reduction preference. ISAAR.
[3] Remus, J. J., & Collins, L. M. (2008). Comparison of adaptive psychometric procedures motivated by the Theory of Optimal Experiments: Simulated and experimental results. The Journal of the Acoustical Society of America, 123(1), 315-326. https://doi.org/10.1121/1.2816567
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
【外国語明細書】