(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074791
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】アンモニアを分解するためのプロセス及び装置
(51)【国際特許分類】
C01B 3/04 20060101AFI20240524BHJP
B01J 23/89 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C01B3/04 B
B01J23/89 M
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023196411
(22)【出願日】2023-11-20
(31)【優先権主張番号】17/990,823
(32)【優先日】2022-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ショウ
(72)【発明者】
【氏名】サイモン クレイグ サロウェイ
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA03
4G169BB02A
4G169BB02B
4G169BC68A
4G169BC68B
4G169BC70A
4G169BC70B
4G169CB81
4G169DA06
4G169EC28
4G169EE06
4G169EE09
(57)【要約】
【課題】アンモニアを分解するためのプロセス及び装置を提供する。
【解決手段】本発明は、炉内の触媒を充填した反応器管において超大気圧のアンモニアガスを分解するためのプロセス及び装置に関する。管は、各々、第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層を有し、第1の触媒は、第2の触媒よりも活性である。より活性な触媒を上流に有することは、バーナ火炎の領域内の管の外壁の温度及びアンモニアのモル分率が最も高い領域内の管の内壁の温度を低減させる。それによって、この領域における管の金属の窒化が低減される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを分解するためのプロセスであって、
超大気圧の加熱されたアンモニアガスを提供することと、
炉内で燃料を酸化剤ガスで燃焼させて、触媒を含む反応器管であって、各管が第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層を含む、反応器管を加熱し、煙道ガスを生成することと、
前記加熱されたアンモニアガス、又はそれに由来する部分的に分解されたアンモニアガスを、前記触媒を含む反応器管に供給して、アンモニアの分解を引き起こし、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアガスを含む分解されたガスを生成することと、を含み、
前記第1の触媒が、前記第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、プロセス。
【請求項2】
前記第1の触媒が、ルテニウム系触媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記第2の触媒が、ニッケル系触媒である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記触媒を含む反応器管が、前記第2の触媒の前記層の下流の第3の触媒の層を含み、前記第3の触媒が、前記第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第3の触媒が、前記第1の触媒と同じ触媒活性金属を含有する、請求項4に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第3の触媒が、ルテニウム系触媒である、請求項4に記載のプロセス。
【請求項7】
少なくとも0.1モル%の水を含有する液体アンモニアをポンプ圧送して、ポンプ圧送された液体アンモニアを生成することと、
前記ポンプ圧送された液体アンモニアを予熱して、予熱された液体アンモニアを生成することと、
前記予熱された液体アンモニアを気化して、アンモニアガスを生成することと、
前記アンモニアガスを加熱して、前記超大気圧の加熱されたアンモニアガスを生成することと、を含み、
前記液体アンモニアからの前記水が、前記加熱されたアンモニアガス中に存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
前記加熱されたアンモニアガスを提供するために必要な加熱デューティの少なくとも一部が、前記分解されたガスとの熱交換によって提供される、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水が、1モル%以下の量で前記加熱されたアンモニアガス中に存在する、請求項7に記載のプロセス。
【請求項10】
前記触媒を含む反応器管が、鉄系触媒を含有しない、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
少なくとも1つの触媒床を備える断熱反応ユニット内で前記加熱されたアンモニアガスを部分的に分解して、触媒を充填した反応器管に供給するための前記部分的に分解されたアンモニアガスを生成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項12】
前記断熱反応ユニットの前記少なくとも1つの触媒床が、ニッケル系触媒及びルテニウム系触媒から選択される少なくとも1つの触媒を含む、請求項11に記載のプロセス。
【請求項13】
前記断熱反応ユニットの前記少なくとも1つの触媒床が、鉄系触媒を含有しない、請求項11に記載のプロセス。
【請求項14】
加熱されたアンモニアガスを分解するための炉であって、
少なくとも1つのバーナと流体流動連通している燃料及び酸化剤ガスのための少なくとも1つの入口と、アンモニア供給入口と、前記アンモニア供給入口と流体流動連通している上流端部、及び分解されたガスのための出口と流体流動連通している下流端部を有する触媒を含む反応器管と、を備え、各管が、第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層を備える輻射セクションと、
前記輻射セクションと流体流動連通し、煙道ガスのための出口を備える対流セクションと、を備え、
前記第1の触媒が、前記第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、炉。
【請求項15】
前記第1の触媒が、ルテニウム系触媒である、請求項14に記載の炉。
【請求項16】
前記第2の触媒が、ニッケル系触媒である、請求項14に記載の炉。
【請求項17】
各触媒を含む反応器管が、前記第2の触媒の前記層の下流の第3の触媒の層を含み、前記第3の触媒が、前記第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、請求項14に記載の炉。
【請求項18】
前記第3の触媒が、前記第1の触媒と同じ触媒活性金属を有する、請求項17に記載の炉。
【請求項19】
前記第3の触媒が、ルテニウム系触媒である、請求項17に記載の炉。
【請求項20】
前記触媒を含む反応器管が、鉄系触媒を含有しない、請求項14に記載の炉。
【請求項21】
加熱されたアンモニアガスを分解するための装置であって、
液体アンモニア源と、
液体アンモニアをポンプ圧送するための前記液体アンモニア源と流体流動連通しているポンプと、
前記アンモニア供給入口が、前記ポンプと流体流動連通している、請求項14において定義された炉と、を備え、
前記装置が、
前記ポンプの上流の液体アンモニアを予熱するために配置された少なくとも1つの熱交換器と、
ポンプ圧送された液体アンモニアを気化し、前記ポンプと前記炉の前記アンモニア供給入口との間に位置付けられた煙道ガス及び/又は分解されたガスとの熱交換によってアンモニアガスを加熱するために配置された、少なくとも1つの熱交換器と、を更に備える、装置。
【請求項22】
超大気圧の加熱されたアンモニアガスを部分的に分解するための断熱反応ユニットであって、前記ポンプと流体連通している超大気圧の加熱されたアンモニアガスのための入口と、前記入口と流体連通している上流端部及び部分的に分解されたアンモニアガスのための出口と流体連通している下流端部を有する少なくとも1つの触媒床と、を備える、断熱反応ユニットを備え、
前記炉の前記アンモニア供給入口が、前記断熱反応ユニットの部分的に分解されたアンモニアガスのための前記出口と流体流動連通している、請求項21に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニアを分解して、水素ガスを生成する技術分野にあり、好ましい実施形態は、具体的には、液体アンモニアから水素ガスを生成するためのプロセス及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
再生可能エネルギーへの世界的な関心、及びこの再生可能エネルギーを使用して「グリーン」水素を発生させることは、アンモニアが数百又は数千マイルの距離を移送することにおいてより簡単であるため、「グリーン」水素を「グリーン」アンモニアに変換することへの関心を高めている。特に、液体水素の輸送は、現在商業的には可能ではないが、液体状態にあるアンモニアの輸送は、現在実践されている。
【0003】
市販の燃料電池における使用の場合、アンモニアは、反応により水素に変換されなければならない。
【数1】
これは、吸熱プロセス、すなわち、熱を必要とするプロセスであり、したがって、より高い温度は、生成物の生成を有利にする。1bar及び0℃における(アンモニア1モル当たりの)標準反応熱は、45.47kJ/molである。プロセスの吸熱性は、炉の必要性を決定付ける。
【0004】
プロセスは、分解(又は時には「解離」)として知られており、通常、触媒を介して実施される。生成されるガス(又は「分解されたガス」)は、水素(H2)と窒素(N2)ガスとの混合物であるが、分解反応は、平衡反応であるため、一部の残留アンモニアも存在する。概して、「アンモニアスリップ」と称される、分解されたガス中のアンモニアの量は、温度を変更することによって変化し得、アンモニアは、変換を促進するより高い温度で加熱され、それによって、アンモニアスリップを低減させる。
【0005】
現在の分解装置のほとんどの用途において、水素と窒素との混合物は、そのまま利用される。しかしながら、アンモニアは、燃料電池にとって害になるものであり得るため、この流れは、水で洗浄することによってなど、アンモニアを好適に除去することで、燃料電池において直接使用することができる。しかしながら、水素が車両の燃料供給において使用される場合、存在する窒素は、プロセスにペナルティを提供する。車両の燃料供給システムへの燃料は、最大900barという著しい圧力に圧縮される。これは、プロセスにおいて単なる希釈剤である窒素も圧縮され、電力を要し、貯蔵量を要し、アノードガスパージ要件を増加させ、効率を低下させることを意味する。したがって、水素が車両の燃料供給において使用される場合、水素及び窒素が分離されることが有益である。
【0006】
当該技術分野において、多くのアンモニア分解プロセスの例、例えば、GB977830A、JP5330802A、CN111957270A、US2020/0398240A、及びKR2022/0085469Aが存在する。
【0007】
加えて、GB1142941Aは、都市ガスと交換可能な燃料ガスを生成するためのプロセスを開示している。アンモニアが分解されて、水素と窒素との混合物を形成し、混合物は、次いで、メタン、プロパン若しくはブタン、又はこれらの混合物などの混合物よりも高い発熱量を有するガスを添加することによって濃縮される。液体アンモニアは、低温の液体としてポンプ圧送され、閉鎖した温水回路によって気化する。アンモニア気化ガスは、炉からの煙道ガスとの熱交換によって過熱された後、直接燃焼管状炉の管内の好適な触媒上で分解される。分解されたガスは、残留アンモニアを回収するために水で洗浄され、最終的には、アンモニア供給から、炉の触媒を充填した管に再循環される。精製された、分解されたガスは、プロパン及び/又はブタンで濃縮されて、都市ガス生成物を生成する。
【0008】
GB1142941Aは、好適な触媒の存在下での直接燃焼管状炉におけるアンモニアの分解が好ましいことを開示する。しかしながら、参考文献はまた、代わりに他の分解プロセスを代替的に使用することができることを開示する。この文脈において、GB1142941は、アンモニアを好適な温度に加熱し、次いでアンモニアをアンモニア分解触媒の未加熱床に通して、アンモニアの一部を水素及び窒素に分解し、プロセス中にガスを冷却することに言及している。未変換のアンモニアは、上で説明されたように回収することができる。代替的に、ガス混合物は再加熱され、触媒の第2の床を通過させて、アンモニア含有量を更に低減させることができ、これを所望される回数だけ繰り返すことができる。
【0009】
GB1353751Aは、20atm~300atmの範囲内の圧力のアンモニアが加熱反応器管内で2段階で分解されるプロセスを開示する。第1の段階では、450~800℃の範囲内の温度のガスを、アルミニウムオキシド及びマグネシウムオキシド又はマグネシウム-アルミニウムスピネルの担体と共沈殿させることによって生成されるニッケル、鉄、又はコバルト含有触媒の層に通過させる。代替的に、第1の段階の触媒は、鉄で含浸されたセラミック材料、又はマグネシウムオキシド及びアルミニウムオキシドからなる予め形成された担体上に含浸され、カリウムオキシドで促進された鉄のいずれかからなり得る。第1の段階の後、次いで、ガスは、450~600℃の範囲内の温度で、第2の段階を形成する二重又は三重に促進された鉄触媒の層を通過する。
【0010】
WO2022/189560Aは、鉄触媒で充填された管を有する燃焼反応器を伴うアンモニア分解プロセスを開示する。液体アンモニアが、貯蔵部から取り出され、ポンプ圧送され、次いで、予熱され、蒸発されて、アンモニアガスを形成し、それが分解されたガスとの熱交換によって加熱される。加熱されたアンモニアガスは、燃焼炉の対流セクション内の煙道ガスに対する熱交換によって更に加熱され、次いで、それが部分的に分解される(煙道ガスに対する段間加熱を伴う)直列の2つの断熱反応器に供給される。次いで、部分的に分解されたガスは、対流セクション内の煙道ガスとの熱交換によって加熱され、その後、燃焼炉の触媒を充填した管に供給して、残ったアンモニアを分解する。
【0011】
US11287089Aは、アンモニアが5bar~40barの範囲の圧力で動作するアンモニア分解装置内で現場で水素及び窒素に分解され、水素が少なくとも30MPa(300bar)の圧力に圧縮され、車両に分配する準備ができて貯蔵される水素燃料供給システムを開示する。分配されるとき、貯蔵部からの圧縮されたガスは、閉ループの周りを循環するD-リモネン、FP40、又は水/グリコール混合物などの熱交換流体との熱交換によって、-40℃~5℃の範囲内の温度に冷却される。熱交換流体は、分解装置へのアンモニア供給との熱交換によって冷却され、従来の冷却システムにおいて更に冷却され得る。アンモニア供給が液体である場合、液体アンモニアを気化するために必要なデューティの少なくとも一部は、熱交換流体によって提供される。液体アンモニアの気化は、多くの場合、標準又は準大気圧でもたらされる。US11287089Aは、7.5トン/日の水素ガスを生成するシステムを例解する。
【0012】
しかしながら、概して、アンモニアからの水素の生成のための改善されたプロセス、具体的には、エネルギー消費の観点からより効率的であるプロセス、及び/又はより高いレベルの水素回収を有するプロセス、及び/又は化石燃料を燃焼させる必要性を低減若しくは排除するプロセスのための改善されたプロセスが依然として必要である。
【発明の概要】
【0013】
本発明の第1の態様によれば、アンモニアを分解するためのプロセスであって、超大気圧の加熱されたアンモニアガスを提供することと、炉内で燃料を酸化剤ガスで燃焼させて、触媒を含む反応器管であって、各管が第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層を含む、反応器管を加熱し、煙道ガスを生成することと、加熱されたアンモニアガス、又はそれに由来する部分的に分解されたアンモニアガスを、触媒を含む反応器管に供給して、アンモニアの分解を引き起こし、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアガスを含む分解されたガスを生成することと、を含み、第1の触媒が、第2の触媒よりもアンモニアを分解するために活性が高い、プロセスが提供される。
【0014】
アンモニア分解装置の反応器管において異なる活性を有する異なる触媒の層を使用することは、新しいことではない。既知のプロセスでは、より活性の高い触媒は、従来、活性の低い触媒の上流層の下流にある反応器管の層、典型的には、管の出口における触媒床の最終セクションで、平衡への近接アプローチを確実にするために使用される。
【0015】
しかしながら、本発明者らは、反応器管の上流層、典型的には、管の入口にある触媒床の第1のセクションにおいてより活性な触媒を使用することは、反応器管の金属の窒化を低減するので有益であることを発見した。
【0016】
金属窒化は、アンモニア分解装置内で認識される問題である。窒化の量は、アンモニア、窒素、及び水素の分圧、並びにプロセスの温度に依存する。窒化は、アンモニア及び窒素のより高い温度及びより高い分圧で最も深刻であり、アンモニアは、典型的なアンモニア分解温度においてより大きなリスクである(窒素に起因する窒化は、アンモニア分解のために温度が過度に高くなるまで、例えば、1000℃以上、可能性が低い)。構造の材料が窒化物を形成する正確な程度は、現在のところ不明である。しかしながら、650℃未満では、選択された構造材料に応じて窒化の程度が許容範囲であるべきであることを示すデータが存在する。高圧、例えば、10~50barでアンモニア分解装置を操作することは、アンモニア及び窒素の分圧が増加し、窒化が反応容器又は管の脆性破断をもたらす場合、より深刻な破損につながる可能性がある。
【0017】
この問題は、プロセス側触媒を保持する反応管を取り囲む温度が、650℃を著しく上回る焼成反応器において特に懸念される。
【0018】
燃焼反応器上部において、バーナは、上部に位置付けられ、バーナ火炎は、反応器管の長さの一部を下に延在する。アンモニア供給は、管の上部に供給され、下方に、すなわち、煙道ガスと並流で、管の底部に流動する。管の上部はバーナ火炎に最も近いため、管のこの領域は、最高の熱流束を有する。管の上部はまた、プロセス側のアンモニアの分圧が最も高い場所でもあることが見出される。したがって、管のこの領域は、窒化の可能性が最も高く、したがって、最も懸念される。
【0019】
反応器管の触媒床の第1のセクション内により活性の高い触媒を配置することは、管の金属からより多くの熱を引き出し、分解プロセス自体に吸収する強力な吸熱をもたらし、それによって、管の内壁の温度を低減させ、内壁温度を、例えば、700℃(又はマージンを可能にするために660℃)の予め定義された限界を下回って保つことを可能にする。このようにして内壁温度を低減することは、管の金属壁の窒化を低減させる。
【0020】
本発明の第2の態様によれば、超大気圧の加熱されたアンモニアガスを分解するための炉、典型的には、上部焼成炉が提供され、少なくとも1つのバーナと流体流動連通している燃料及び酸化剤ガスのための少なくとも1つの入口を備える輻射セクションと、アンモニア供給入口と、アンモニア供給入口と流体流動連通している上流端部及び分解されたガスのための出口と流体流動連通している下流端部を有する触媒を含む反応器管であって、各管が、第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層を備える、触媒を含む反応器管と、輻射セクションと流体流動連通しており、煙道ガスのための出口を備える対流セクションと、を備え、第1の触媒は、第2の触媒よりもアンモニアを分解するために活性が高い。
【0021】
各反応器管内の触媒床は、典型的には、2つ又は3つの触媒層(又はセクション)を含む。3層以上の触媒を有する床もまた、特定の用途に好適であり得る。
【0022】
上流層は、典型的には、各反応器管内の触媒床の第1の層であり、第1の触媒を含む、例えば、含有するか、又はそれからなるであろう。上流層は、触媒床全体の長さの少なくとも20%、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は少なくとも35%であり得る長さを有する。典型的には、上流層の長さは、触媒床の長さの50%以下である。多くの場合、上流層は、バーナの炎の端部を超えて延在する。
【0023】
下流層は、典型的には、触媒床の第2の層であり、第2の触媒を含む、例えば、含有するか、又はそれからなるであろう。上流層と下流層との間に介在層が存在する場合があるが、これは通常はそうではない。触媒床に2つの層のみがある場合、下流層の長さは、床の残りということになる。しかしながら、いくつかの実施形態では、第2の触媒の層の下流に第3の触媒の層が存在することがある。第3の触媒の層の長さは、典型的には、全床長の10%を超えないであろう。このため、触媒床に3つの層が存在する場合、下流層は、再び、床の残りを構成する。
【0024】
第3の触媒は、理想的には、第2の触媒よりも活性が高いため、存在する場合、第3の触媒の層は、平衡への近接アプローチを可能にする。
【0025】
本発明の第2の態様の炉は、本発明の第1の態様のプロセスを実行するのに特に好適である。
【0026】
本発明の第3の態様によれば、超大気圧の加熱されたアンモニアガスを分解するための装置が提供され、液体アンモニア源と、液体アンモニアをポンプ圧送するための液体アンモニア源と流体流動連通するポンプと、第2の態様に定義されるような炉であって、炉のアンモニア供給入口が、ポンプと流体流動連通する炉と、を備え、装置が、ポンプの上流の液体アンモニアを予熱するために配置された少なくとも1つの熱交換器と、ポンプ圧送された液体アンモニアを気化し、ポンプと炉のアンモニア供給入口との間に位置付けられた煙道ガス及び/又は分解されたガスとの熱交換によってアンモニアガスを加熱するために配置された少なくとも1つの熱交換器と、を更に備える。
【0027】
本発明の第3の態様の装置は、本発明の第1の態様のプロセスを実行するのに特に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明が使用され得る、アンモニア分解プロセスの簡略化されたフローシートである。
【
図2】単独の触媒としてニッケル系触媒を使用する比較例について、様々な温度及びアンモニアモル分率が分解装置の長さの関数としてどのように変化するかを描画するグラフである。
【
図3】ルテニウム系触媒の上流層及びニッケル系触媒の下流層を使用する本発明の一実施例について、様々な温度及びアンモニアモル分率が分解装置の長さの関数としてどのように変化するかを描画するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
特に明記しない限り、百万分の一(又はppm)で与えられる成分の量は、重量によって計算される。加えて、特に明記しない限り、全てのパーセンテージは、モルによって計算される。更に、圧力へのいずれかの言及は、特に明記されない限り、絶対圧力への言及である。
【0030】
本発明の文脈では、触媒の活性は、特定の温度及び全体的な圧力において所与の期間にわたる所与の量の触媒に対する所与の分圧におけるアンモニアの変換レートを指すと理解される。不均一触媒の活性を定義するために使用される単位は、1秒当たりの触媒(存在する場合は基質を含む)1グラム当たり(又はモルg-1s-1)に変換されるアンモニアのモルである。
【0031】
「流体流動連通している」という表現は、配管又は他の好適な導管が、1つの指定された場所から別の場所に流体を搬送するために使用されることを意味すると理解される。2つの場所の間の通過中、流体は、流体の物理的条件、例えば、流体の温度(例えば、熱交換器)及び/若しくは圧力(例えば、圧縮機又はポンプ)、又は流体内の成分の反応を通じて流体の組成を変更するように設計及び/又は配置され得る1つ以上の他のユニット(例えば、触媒反応器)を通って流動し得る。「直接流体流動連通している」という表現は、流体が一方の場所から他方の場所に直接流れること、すなわち、その通過中に別のかかるユニットを通って流動しないこと、したがって、流体の組成又は物理的条件に本質的に変化がないことを意味すると理解されるであろう。
【0032】
「超大気圧」という用語は、少なくとも5barの圧力、例えば、少なくとも10barの圧力、又は少なくとも20bar若しくは少なくとも30barの圧力など、大気圧よりも著しく高い圧力を意味すると理解されるであろう。典型的には、圧力は、60bar以下である。
【0033】
「上流」という用語は、通常の動作中の流体の流動とは反対の方向を意味することが理解されるであろう。「下流」という用語は、それに応じて解釈される。
【0034】
アンモニア供給の典型的な組成物を、表1に示す。
表1
【表1】
【0035】
油は、アンモニア貯蔵に使用されるボイルオフガス圧縮機に起因して、ローカル貯蔵タンク、生成場所、又はその間の他のいずれかの貯蔵タンクにおいてアンモニア中に存在し得る。油の存在は、閉塞及び/又は汚染のリスクをもたらすため、問題である。これは、熱交換器の性能不良又は反応器における触媒活性の低減につながる可能性がある。したがって、存在する場合、油は何らかの方法で除去する必要があり得る。これに関して、油は、液体アンモニアを活性炭の床に通過させることによって除去することができる。しかしながら、好ましい実施形態では、断熱反応ユニット内で使用される触媒は、油を短鎖炭化水素に分解し、これは、存在する任意の水と反応して、一酸化炭素、水素、及びメタンを形成し得る。
【0036】
不活性ガスは、生成物水素になる可能性がある以外、問題となるように予想されていない。これに関して、ヘリウムは、天然ガス由来のアンモニア中に存在し得るが、再生可能な水素由来のアンモニアは、ヘリウムを含有しない。
【0037】
液体アンモニアは、典型的には、貯蔵部から取り出され、貯蔵圧力(例えば、約1bar)から約5bar~約60barの範囲の圧力、例えば、約10bar~約30bar、又は約40bar~約50barなどの約10bar~約50barにポンプ圧送される。液体アンモニアの温度は、貯蔵温度(例えば、約-34℃)から約-32℃にわずかに増加する。
【0038】
ポンプ圧送された(超大気圧の)液体アンモニアは、次いで、理想的にはプロセス内の適切な熱統合によって、典型的にはその沸点まで予熱される。好ましくは、予熱の一部は、例えば、PSAオフガス圧縮機の中間冷却及び後冷却からの熱が、グリコールの水溶液、例えば、約50重量%~約60重量%のエチレングリコール又はプロピレングリコールなどのグリコールを含む水溶液などの熱伝達流体を使用して、任意選択的に、分解されたガス及び/又は煙道ガスからの熱とともに回収され、液体アンモニアを予熱するために使用される、熱伝達回路を使用して達成される。圧縮機が稼働していない場合など、かかる統合が不可能である場合、電気ヒータなどの外部源からの熱は、アンモニアを予熱するために必要とされ得る。
【0039】
予熱された液体アンモニアは、次いで蒸発され、アンモニアガスは、触媒を含む反応器管又は断熱反応器ユニットに供給される前に更に加熱される。これに関して、アンモニアガスは、典型的には、過熱され、すなわち、その沸点を超える温度、350℃を超える温度に加熱されて、触媒を含む反応器管又は断熱反応ユニットにおける有用な反応レートを確実とする。
【0040】
予熱された液体アンモニアの加熱及び蒸発のためのデューティは、分解されたガス、煙道ガス、又は分解されたガスと煙道ガスの両方の組み合わせによって提供され得る。好ましい実施形態では、分解されたガスは、熱交換によって予熱された液体アンモニアを加熱及び蒸発させるために使用され、次いでアンモニアガスは、煙道ガスとの熱交換によって更に加熱される。
【0041】
加熱されたアンモニアガスは、触媒を含む反応器管に、すなわち、最初にアンモニアの一部を部分的に分解することなく、直接供給され得る。
【0042】
炉の反応器管は、異なる活性を有する少なくとも2つの異なるアンモニア分解触媒で充填され、そのうちの第1の(より活性の高い)触媒は、第2の(活性の低い)触媒の上流に位置付けられる。いくつかの実施形態では、各反応器管内の床は、第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層の2つの層のみを有する。しかしながら、他の実施形態では、床は、第3の触媒が第2の触媒よりもより活性であり、管の短縮を可能にし得る、第2の触媒の層の下流の第3の触媒の層を有し得る。第1及び第3の触媒の触媒活性金属は、異なる場合があるが、好ましい実施形態では、金属は、同じ、例えば、ルテニウムである。
【0043】
第1の(又は第3の)触媒の活性は、典型的には、第2の触媒の活性よりも少なくとも50%大きい。しかしながら、相対的な活性における差は、多くの場合、実質的に50%を超える。この点で、第1の(又は第3の)触媒の活性は、多くの場合、少なくとも2倍(すなわち、ダブル)、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、第2の触媒の活性よりも大きい。いくつかの実施形態では、第1の(又は第3の)触媒の活性は、第2の触媒の活性よりも少なくとも10倍(すなわち、1桁)、又は少なくとも15倍大きい。
【0044】
多数の金属が当該技術分野において既知であり、アンモニアの分解を触媒する。これらの金属には、周期表の6族の遷移金属、例えば、クロム(Cr)及びモリブデン(Mo);8族、例えば、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)及びオスミウム(Os);9族、例えば、コバルト(Co)、ロジウム(Rh)及びイリジウム(Ir);10族、例えば、ニッケル(Ni)、パラジウム(Pd)及び白金(Pt);並びに11族、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)及び金(Au)が含まれる。テルル(Te)などの半金属もまた、使用され得る。
【0045】
アンモニア分解のための触媒としてのこれらの金属のいくつかの活性は、以下の順序で変化するように、Maselら(Catalyst Letters,vol.96,Nos 3-4,July 2004)によって報告されている:
Ru>Ni>Rh>Co>Ir>Fe>>Pt>Cr>Pd>Cu>>Te
金属は、担持されていなくてもよいが、多くの場合、好適な担体(又は基材)、典型的には、シリカ(SiO2)、アルミナ(Al2O3)、ジルコニア(ZrO2)などの金属担体、又はスピネル(MgAl2O4)又はペロブスカイト(CaTiO3)などの混合金属酸化物担体上に担持される。
【0046】
当業者に理解されるように、担持金属触媒の活性は、典型的には、担体への触媒活性金属の装填に部分的に依存する。この点で、金属の装填は、特定の要件に従って変化するが、典型的には、約0.1重量%~約70重量%の範囲内にある。装填は、より活性の高い金属、例えば、ルテニウムについて、範囲の下端部、例えば、約0.1重量%~約10重量%、又は約0.2重量%~約5重量%に向かってもよい。活性の低い金属、例えば、ニッケルの場合、負荷は、範囲の上限に向かって、例えば、約20重量%~約65重量%であり得る。
【0047】
担持金属触媒は、促進されない可能性があり、又は当該技術分野において既知であるように、活性を改善させるために、少なくとも1つの他の金属、例えば、1つ以上の1族金属、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)及びカリウム(K);2族金属、例えば、マグネシウム(Mg)及びカルシウム(Ca)、又は13族金属、例えば、アルミニウム(Al)で促進され得る。
【0048】
アンモニア分解のために既知の任意の従来の触媒が、本発明において使用され得る。好適な触媒は、US2015/0217278A、Maselら(上記)、Lambら(Int.J.Hydrogen Energy,44(2019)pp3726-3736)及びBoisenら(J.Catalysis 230(2005)pp309-312)において開示される。
【0049】
二金属触媒、又は2つの触媒活性金属を含有する触媒もまた、本発明とともに使用するのに好適である。実施例は、ペロブスカイト、複合酸化物若しくは窒化物、又はCoNi-MgSrCeO4及び1重量%のK-CoNi-MgSrCeO4などのUS2021/0001311Aに開示されている混合酸化物又は混合窒化物上に担持された、複合金属又は金属合金又は金属ナノクラスタが挙げられる。
【0050】
本発明の触媒は、典型的には、例えば、金属系触媒を含む、例えば、含有するか、又はそれからなる。触媒活性金属は、典型的には、周期表の遷移金属から選択される。好適な遷移金属系触媒は、典型的には、少なくとも0.2倍、又は少なくとも0.5倍、又は少なくとも等しい、又は少なくとも2倍、又は少なくとも5倍の反応レートを達成するために好適な475℃~600℃の範囲内の温度で活性を有し、Lambらによって提案された方程式9に従って計算されたレート、すなわち、
r=8.73exp[-76710/RT].(P
NH3)
0.28.(P
H2)
-0.42.(1-β
2)
式中:
「r」は、触媒の反応レート(又は「活性」)であり、
「RT」は、理想ガス定数「R」(8.314Jmol
-1K
-1)にケルビンの温度「T」を掛けたものであり、
P
NH3は、アンモニアの分圧であり、
P
H2は、水素の分圧であり、
βは、以下のように研究論文において定義される(Lambらによって提案された方程式5を参照されたい)、
【数2】
P
N2は、窒素の分圧であり、
K
eは、反応の平衡定数である(Lambらによって提案された方程式6及び7を参照されたい)。
【0051】
発明者らは、Lambらの方程式9が、475℃~600℃の外、例えば、450℃~700℃の範囲内の温度に外挿され得ることを認識している。
【0052】
反応器管の触媒床における触媒の主要な触媒活性金属としての使用に特に好適であり得る遷移金属は、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、及び銅、例えば、鉄、コバルト、ニッケル、及びルテニウムから選択される。
【0053】
第1の(より活性の高い)触媒の触媒活性金属は、好ましくは、ルテニウムであり、第2の(より活性の低い)触媒の触媒活性金属は、典型的には、ニッケルである。
【0054】
好ましい実施形態では、上流層における第1の触媒は、ルテニウム系触媒であり、下流層における第2の触媒は、ニッケル系触媒である。これらの実施形態において第3の触媒が存在する場合、その触媒は、好ましくは、ルテニウム系触媒であるが、触媒は、第1の触媒とは異なるルテニウム系触媒であり得、例えば、触媒は、異なる担体及び/若しくは触媒装填を有し、かつ/又は両方が促進される場合、次いで異なる金属で促進される。
【0055】
このため、「ルテニウム系触媒」という用語は、唯一の(又は少なくとも優勢な)触媒活性金属、すなわち、分解反応を触媒するための金属としてルテニウムを含有する触媒を指す。ルテニウムは、触媒中の唯一の金属であり得るか、又は代替的に、例えば、ルテニウムを担持する材料中に1つ以上の他の金属が存在し得る。「ニッケル系触媒」及び「鉄系触媒」という用語は、それに応じて解釈されることが意図される。
【0056】
好適なルテニウム系触媒及びニッケル系触媒は、例えば、アルミナ(Lambら又はMaselらに開示される)又はスピネル(Boisenらに開示される)上で担持され得、任意選択的に、1族又は2族の金属で促進され得る。
【0057】
上で挙げられたように、水は、多くの場合、汚染物質としてアンモニア中に存在する。水は、アンモニアから除去され得、この場合、水を許容しない触媒、例えば、鉄系触媒は、反応器管内で使用され得る。しかしながら、水は、資本及び運用コストを節約し、エネルギー消費を低減するために、好ましい実施形態では除去されない。これらの実施形態では、水に耐えることができない触媒、例えば、鉄系触媒は使用されない。代わりに、反応器管内の触媒は、アンモニア供給中最大1モル%の水を許容することができる。かかる触媒としては、ニッケル系及びルテニウム系触媒が挙げられる。
【0058】
好ましい実施形態では、ルテニウム系触媒は、各管内の第1の層内に使用され、そのためより速い反応レートにより、金属温度を660℃の設計限界内に保つことを可能にする。これらの実施形態では、管の第2の層は、より低コストであるが、活性の低いニッケル系触媒を含有する。触媒は、好ましい実施形態では、このように層にされ、管内の反応の吸熱を使用して、管の外側で燃焼が最も激しい領域で管金属を冷却し続ける。ルテニウムはより触媒活性が高いため、プロセス側の高アンモニア濃度領域において内管壁を冷却し、高アンモニア濃度及び高温によって引き起こされる過剰な窒化から管を保護する強力な吸熱を生成する。
【0059】
炉内の燃焼プロセスは、好ましくは、少なくとも部分的に内部に燃料供給され、すなわち、燃料の少なくとも一部は、分解されたガスから水素の回収中に発生したアンモニア若しくはオフガスのいずれか、又は2つの混合物である。しかしながら、C1~C3炭化水素又は天然ガスなどのトリム燃料は、必要に応じて使用されるが、炭化水素トリム燃料を使用することは、プロセスの炭素強度を増加させるであろう。しかしながら、プロセスの炭素強度を低減するために、かかるトリム燃料の使用を最小限に抑えるか、又は実に排除することが概して望ましい。
【0060】
酸化剤ガスは、典型的には、空気であるが、必要に応じて、酸素濃縮ガス又は純粋な酸素であり得る。
【0061】
炉の触媒を充填した反応器管への供給は、反応器壁の材料がより高い温度に耐えることができる場合、最大約800℃の温度であり得る。より低い温度サイクルの場合、供給は、典型的には、約400℃~約600℃、又は約450℃~約550℃の範囲内の温度、例えば、約500°である。より高い温度サイクルの場合、供給は、約500℃~約800℃、又は約600℃~約700℃の範囲内の温度、例えば、約650°であり得る。
【0062】
分解温度及び圧力は、典型的には、反応器管内のアンモニアスリップが、3モル%以下、例えば、約0.5モル%~約1.5モル%であることを決定付ける。
【0063】
いくつかの実施形態では、加熱されたアンモニアガスは、少なくとも1つの触媒床を備える断熱反応ユニット内で部分的に分解されて、触媒を充填した反応器管に供給するための部分的に分解されたアンモニアガスを生成する。
【0064】
断熱反応ユニットを通過するガス中のアンモニアのモル分率は、典型的には、少なくとも20%、例えば、少なくとも25%、又は少なくとも30%、又は更に少なくとも35%、例えば、約40%、及び場合によっては最大約50%低減される。別の言い方をすれば、アンモニアのモル分率は、加熱されたアンモニアガス中の1(又はほぼ1)から、部分的に分解されたアンモニアガス中で約0.5~約0.8の範囲内の量に、又は約0.5~約0.7の範囲内の量に、又は約0.55~約0.65の範囲内の量、例えば、約0.6に低減され得る。
【0065】
断熱反応ユニットは、全体的な効率を改善するために、具体的には、このユニット内の断熱分解プロセスに熱を提供するために煙道ガス内で利用可能な熱を使用することによって、プロセスの設計に組み込まれ得る。これに関して、断熱反応ユニットの周りの温度は、典型的には、材料に関する懸念のために約660℃を超える温度を回避しながら、煙道ガスからの熱の回収を最大化するように最適化される。
【0066】
断熱反応ユニットに対する主要な設計パラメータは、入口温度である。入口温度が高いほど、アンモニア分解反応が吸熱性であるため、ユニット内の変換が大きくなることが可能になる。しかしながら、より高い温度は、構築材料及び触媒に大きな要求を課す。入口温度は、典型的には、約350℃~約800℃の範囲にあり、より低い温度サイクルの場合、約400℃~約600℃、又は約400℃~約450℃の範囲内にあり得る。より高い温度サイクルの場合、入口温度は、約500℃~約700℃、又は約550℃~約650℃の範囲内にあり得る。
【0067】
高温及びアンモニア濃度に起因して、分解反応器容器、例えば、断熱反応器及び炉内の反応器管は、典型的には、アンモニア及び/又は窒化に耐性のある材料から構築されなければならない。好適な材料としては、少なくとも40重量%又は少なくとも50重量%のニッケルを含むニッケル系合金が挙げられる。かかる合金は、典型的には、90重量%以下、又は80重量%以下のニッケルを有する。合金は、典型的には、クロム、コバルト、モリブデン、及び鉄から選択される1つ以上の他の金属を含む。
【0068】
好適なニッケル系合金の特定の例には、UNS N06600、N06625、N06601、N06617、N06025、N06230、N07214、N08811が挙げられる。いくつかの実施形態では、インコネルなどのオーステナイトニッケル-クロム系超合金が使用され得る。
【0069】
ユニファイドナンバリングシステム(UNS)は、北米で広く受け入れられている合金記号システムである。各UNS番号は、特定の金属又は合金に関連し、その特定の化学組成、又はいくつかの場合では、特定の機械的若しくは物理的特性を定義する。
【0070】
他の好適な材料としては、UNS R30188などのコバルト系合金が挙げられる。加えて、UNS N08811などのアンモニア窒化に対する耐性が低い高温合金、又はHPNb、HP Micro-Alloyed、MA-1(MetalTek International、USA)などの鋳造合金は、特に、アルミニウム化、アルミニウム化に次いで予備酸化、又はセラミックスコーティングなどの耐食性層によって表面が改質されるか又はコーティングされるときに、好適であり得る。窒化耐性合金はまた、改善された性能のために表面改質又はコーティングとともに使用することもできる。
【0071】
断熱反応ユニットは、1つ以上の断熱反応器を備え、その又は各反応器は、触媒床を備える。断熱反応器又は各断熱反応器は、上で列挙されたアンモニア耐性及び/又はアンモニア窒化耐性材料のうちの1つ以上から作製され得る。
【0072】
好ましい実施形態では、断熱反応ユニットは、2つ以上の断熱反応器、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つの反応器を備え、必要に応じて段間加熱を行う。反応器は、プロセスの要件に応じて、直列若しくは並列に、又は直列及び並列の組み合わせで配置され得る。しかしながら、好ましい実施形態では、断熱反応ユニットは、好ましくは、分解されたガス又は煙道ガスに対する熱交換によって、中間の部分的に分解されたアンモニアガスの段間加熱と直列に配置された2つのかかる反応器を有する。
【0073】
各断熱反応器は、アンモニアを分解するために好適な少なくとも1つの触媒を含む床を有する。任意の従来のアンモニア分解触媒が、断熱反応器の床又は各断熱反応器の床において使用することができる。好適な触媒は、反応器管の触媒の文脈において上で考察される。
【0074】
分解の前に水がアンモニアから除去される実施形態では、耐水性ではない触媒、例えば、鉄系触媒は、断熱反応器内で使用され得る。しかしながら、水は、資本及び運用コストを節約し、エネルギー消費を低減するために、好ましい実施形態では除去されない。これらの実施形態では、断熱反応ユニットの触媒床は、鉄系触媒を含有せず、代わりに、耐水性触媒、すなわち、最大1モル%の水の存在に耐性のある金属系触媒の使用が好ましい。これに関して、ニッケル系触媒又はルテニウム系触媒、又はニッケル系触媒とルテニウム系触媒との組み合わせのいずれかが、断熱反応器ユニットの床において使用され得る。
【0075】
上で挙げられたように、ルテニウム系触媒は、ニッケル系触媒よりも活性が高い傾向があるが、より高価である。したがって、更なる最適化は、触媒の選択によって、及び1種類以上の触媒が使用される場合には、断熱反応ユニットの床内の触媒の層の順序付けによって可能である。
【0076】
直列に2つの断熱反応器を有するいくつかの好ましい実施形態では、第1の反応器の触媒床は、第1の触媒、例えば、ルテニウム系触媒の単層を備え、例えば、含むか、又はそれからなり、第2の反応器の触媒床は、典型的には、第1の触媒よりも活性が低い、第2の触媒、例えば、ニッケル系触媒の上流層、及び典型的には、第2の触媒よりも活性が高い、第3の触媒、例えば、ルテニウム系触媒の下流層を備え、例えば、含むか、又はそれらからなる。
【0077】
これらの実施形態では、第1及び第3の触媒は、同一であり得る。代替的に、第1及び第3の触媒は、異なる場合があり、例えば、異なる触媒活性金属を含むか、又は同じ触媒活性金属を、異なる担体上に含むか、又は同じ担体上で同じ触媒活性金属を異なる装填で含む。
【0078】
直列の2つの断熱反応器を有する実施形態では、第1の反応器の触媒床は、第1の触媒、例えば、ニッケル系触媒の単層を備え、例えば、含むか、又はそれからなり、第2の反応器の触媒床は、第1の触媒と同様の活性を有する第2の触媒、例えば、ニッケル系触媒の上流層、及び典型的には、第1及び第2の触媒よりも活性が高い第3の触媒、例えば、ルテニウム系触媒の下流層を備え、例えば、含むか、又はそれらからなる。
【0079】
これらの実施形態では、第1及び第2の触媒は、同一であり得る。代替的に、第1及び第2の触媒は、異なる場合があり、例えば、異なる触媒活性金属を含むか、又は同じ触媒活性金属を、異なる担体上に含むか、又は同じ担体上で同じ触媒活性金属を異なる装填で含む。
【0080】
両方の組の好ましい実施形態では、第2の反応器の床内の第2の触媒の上流層の体積は、床の総体積の約40%~約90%、例えば、約50%~約70%又は約60%であり得る。触媒の別の層が存在しない場合、第2の反応器の床内の第3の触媒の下流層の体積は、床の総体積の約10%~約60%、例えば、約30%~約50%、又は約40%であり得る。
【0081】
本発明者らは、ルテニウム系触媒は、水に対して十分に耐性があるだけでなく、一酸化炭素及び水素とともに、炭化水素油をメタンなどのより短い炭化水素に分解することも可能であることを認識している。したがって、断熱反応ユニットにおけるこれらの触媒の使用は、液体アンモニアから油を除去するための上流の専用ユニットの必要性を排除することができる。
【0082】
また、より高い温度において、触媒焼結は、触媒の活性及び寿命を低減させることが知られている。これに関して、当業者は、改善された変換を、より高い容器コスト及びより短い触媒寿命とバランスをとる必要があることを認識するであろう。
【0083】
分解されたガス及び煙道ガスからの熱は、典型的には、断熱反応ユニット及び炉への供給流を加熱するために使用され、それによって、プロセスによって消費される全体的なエネルギーを低減する。これに関して、分解されたガスの温度は、動作しているサイクルに依存する。
【0084】
より低い温度サイクルでは、分解されたガスの温度は、最大約700℃、例えば、典型的には、約550℃~約700℃、又は約600℃~約650℃であり得る。煙道ガスの温度は、その最高点において最大約750℃であり得る。しかしながら、熱漏れに起因して温度が低下し、典型的には、その熱を効果的に利用することができる点において約600℃~約700℃である。
【0085】
より高い温度サイクルでは、分解されたガスの温度は、最大約750℃、例えば、典型的には、約650℃~約750℃、又は約675℃~約725℃であり得る。煙道ガスの温度は、その最高点において最大約840℃であり得る。しかしながら、熱漏れに起因して温度が低下し、典型的には、その熱を効果的に利用することができる点において約700℃~約800℃である。
【0086】
断熱反応ユニットが、加熱されたアンモニアガスを部分的に分解するために使用され、部分的に分解されたガスが、炉の触媒を充填した反応器管の供給温度まで加熱される場合、部分的に分解されたガスを加熱するために必要なデューティの少なくとも一部は、分解されたガスとの熱交換によって提供される。好ましい実施形態では、分解されたガスは、部分的に分解されたガスを加熱する前に、別のプロセス流体を加熱するために他の場所で使用されない。この加熱デューティのいくつかは、例えば、煙道ガスとの熱交換によって、別の方法で提供され得る。しかしながら、この加熱デューティの全ては、好ましくは、分解されたガスによって提供される。
【0087】
好ましい実施形態では、アンモニアの組成は、典型的には、貯蔵中の液体アンモニアから断熱反応ユニットに供給されている加熱されたアンモニアガスまで少なくとも実質的に変化しない。液体アンモニア中に存在する油は、アンモニアの部分的な分解の前のある時点で除去され得るが、ルテニウム系触媒が使用される場合、油を除去する必要はない。しかしながら、水は、典型的には、除去されないため、液体アンモニア中に存在する任意の水もまた加熱アンモニアガス中に存在する。
【0088】
部分的に分解されたガスが、分解されたガスとの熱交換によって加熱される場合、分解されたガスの温度が低減される。次いで、冷却された分解されたガスは、典型的には、液体アンモニアから加熱されたアンモニアガスを発生させるために必要な加熱デューティの少なくとも一部を提供することによって更に冷却される。冷却後、分解されたガスから生成物として、水素が回収され得る。回収は、圧力変動吸着(PSA)プロセスにおいて、又は1つ以上の選択的透過性膜を使用することによって、又はPSAと膜分離の組み合わせによって達成され得る。好ましい実施形態では、水素回収は、PSAプロセス単独で、すなわち、膜分離を使用せずに達成される。
【0089】
PSAプロセスを使用する実施形態では、窒素ガス、残留アンモニア、及び残留水素を含む、オフガスが発生する。このオフガスは、予熱され、炉内での燃焼のための燃料として使用され得る。代替的に、オフガスの一部は、燃料として使用され得るが、別の部分は圧縮され、水素回収を改善するためにPSAプロセスに戻される場合がある。
【0090】
本発明の態様は、以下を含む。
#1.アンモニアを分解するためのプロセスであって、
超大気圧の加熱されたアンモニアガスを提供することと、
炉内で燃料を酸化剤ガスで燃焼させて、触媒を含む反応器管であって、各管が第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層を含む、反応器管を加熱し、煙道ガスを生成することと、
加熱されたアンモニアガス、又はそれに由来する部分的に分解されたアンモニアガスを、触媒を含む反応器管に供給して、アンモニアの分解を引き起こし、水素ガス、窒素ガス、及び残留アンモニアガスを含む分解されたガスを生成することと、を含み、
第1の触媒が、第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、プロセス。
#2.第1の触媒が、ルテニウム系触媒である、#1に記載のプロセス。
#3.第2の触媒が、ニッケル系触媒である、#1又は#2に記載のプロセス。
#4.触媒を含む反応器管が、第2の触媒の層の下流の第3の触媒の層を含み、第3の触媒が、第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、#1~3のいずれかに記載のプロセス。
#5.第3の触媒が、第1の触媒と同じ触媒活性金属を含有する、#4に記載のプロセス。
#6.第3の触媒が、ルテニウム系触媒である、#4又は#5に記載のプロセス。
#7.少なくとも0.1モル%の水を含有する液体アンモニアをポンプ圧送して、ポンプ圧送された液体アンモニアを生成することと、
ポンプ圧送された液体アンモニアを予熱して、予熱された液体アンモニアを生成することと、
予熱された液体アンモニアを気化して、アンモニアガスを生成することと、
アンモニアガスを加熱して、超大気圧の加熱されたアンモニアガスを生成することと、を含み、
液体アンモニアからの水が、加熱されたアンモニアガス中に存在する、#1~#6のいずれかに記載のプロセス。
#8.加熱されたアンモニアガスを提供するために必要な加熱デューティの少なくとも一部、好ましくは、半分より多く、例えば、50%超、任意選択的に、最大80%が、分解されたガスとの熱交換によって提供される、#7に記載のプロセス。
#9.水が、1モル%以下の量で加熱されたアンモニアガス中に存在する、#7又は#8に記載のプロセス。
#10.触媒を含む反応器管が、鉄系触媒を含有しない、#1~#9のいずれかに記載のプロセス。
#11.少なくとも1つの触媒床を含む断熱反応ユニット内で加熱されたアンモニアガスを部分的に分解して、触媒を充填した反応器管に供給するための部分的に分解されたアンモニアガスを生成することを含む、#1~#10のいずれかに記載のプロセス。
#12.断熱反応ユニットの触媒床が、ニッケル系触媒及びルテニウム系触媒から選択される少なくとも1つの触媒を含む、#11に記載のプロセス。
#13.断熱反応ユニットの触媒床が、鉄系触媒を含有しない、#11又は#12に記載のプロセス。
#14.加熱されたアンモニアガスを分解するための炉であって、
少なくとも1つのバーナと流体流動連通している燃料及び酸化剤ガスのための少なくとも1つの入口と、アンモニア供給入口と、アンモニア供給入口と流体流動連通している上流端部、及び分解されたガスのための出口と流体流動連通している下流端部を有する触媒を含む反応器管と、を備え、各管が、第1の触媒の上流層及び第2の触媒の下流層を備える、輻射セクション、並びに
輻射セクションと流体流動連通し、煙道ガスのための出口を備える対流セクションを備え、
第1の触媒が、第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、炉。
#15.第1の触媒が、ルテニウム系触媒である、#14に記載の炉。
#16.第2の触媒が、ニッケル系触媒である、#14又は#15に記載の炉。
#17.各触媒を含む反応器管が、第2の触媒の層の下流の第3の触媒の層を含み、第3の触媒が、第2の触媒よりもアンモニアを分解するためにより活性である、#14~#16のいずれかに記載の炉。
#18.第3の触媒が、第1の触媒と同じ触媒活性金属を含有する、#17に記載の炉。
#19.第3の触媒が、ルテニウム系触媒である、#17又は#18に記載の炉。
#20.触媒を含む反応器管が、鉄系触媒を含有しない、#14~#19のいずれかに記載の炉。
#21.加熱されたアンモニアガスを分解するための装置であって、
液体アンモニア源と、
液体アンモニアをポンプ圧送するための液体アンモニア源と流体流動連通しているポンプと、
アンモニア供給入口が、ポンプと流体流動連通している、#14~#20のいずれかに定義される炉と、を備え、
装置が、
ポンプの上流の液体アンモニアを予熱するために配置された少なくとも1つの熱交換器と、
ポンプ圧送された液体アンモニアを気化し、ポンプと炉のアンモニア供給入口との間に位置付けられた煙道ガス及び/又は分解されたガスとの熱交換によってアンモニアガスを加熱するために配置された、少なくとも1つの熱交換器と、を更に備える、装置。
#22.超大気圧の加熱されたアンモニアガスを部分的に分解するための断熱反応ユニットであって、ポンプと流体連通している超大気圧の加熱されたアンモニアガスのための入口と、入口と流体連通している上流端部及び部分的に分解されたアンモニアガスのための出口と流体連通している下流端部を有する少なくとも1つの触媒床と、を備える、断熱反応ユニットを備え、
炉のアンモニア供給入口が、断熱反応ユニットの部分的に分解されたアンモニアガスのための出口と流体流動連通している、#21に記載の装置。
【0091】
ここで、本発明を、図面を参照しながら例としてのみ説明する。
【0092】
図1では、約-32℃の液体アンモニアの流れ2が貯蔵部(図示せず)から除去され、ポンプP101に供給され、ここで約46barの圧力で加圧された液体アンモニアの流れ4を生成するためにポンプ圧送され、これは、この場合、典型的には、約55重量%のエチレングリコール又はプロピレングリコールのグリコールの水溶液である熱伝達流体との、熱交換器E271における、熱交換によって余熱されて、約55℃で予熱された液体アンモニアの流れ6を生成する。電気ヒータは、熱交換器E271に供給されるグリコール溶液の温度が、液体アンモニアを必要な温度まで予熱するのに十分であることを確実とするために使用され得る。
【0093】
流れ6内の予熱された液体アンモニアは、熱交換器E312内の熱交換によって更に加熱されて、更に加熱された液体アンモニアの流れ8を生成する。次いで、流れ8内の更に加熱された液体アンモニアは、熱交換器E311内の熱交換によって蒸発して、アンモニア気化ガスの流れ10を生成する。次いで、流れ8内のアンモニア気化ガスは、熱交換器E310内の熱交換によって過熱されて、約260℃で加熱されたアンモニアガスの流れ12を生成する。
【0094】
流れ12内の加熱されたアンモニアガスは、熱交換器E2102内の熱交換によって更に加熱されて、約420℃で過熱されたアンモニアガスの流れ14を生成する。便宜上、熱交換器E2102は、単一のユニットとして示される。しかしながら、実際には、その間に位置付けられた選択的触媒反応器(SCR)を有する2つの別個の交換器が存在し得る。
【0095】
流れ14内の過熱されたアンモニアガスは、約420℃及び約43barで第1の断熱反応器容器C141に供給され、ルテニウム系触媒の床を通過する。アンモニアガスの一部は、触媒上で分解されて、いくらかの分解されたアンモニアを含有する中間ガスの流れ16を形成する。第1の断熱反応器容器C141を通過するガス中のアンモニアのモル分率は、ほぼ1から約0.9に低下する。
【0096】
中間ガスは、熱交換器E2103内の熱交換によって加熱される前に約360℃であり、過熱された中間ガスの流れ18を生成し、次いで、約590℃で第2の断熱反応器容器C142に供給され、ニッケル系触媒の上流層及びルテニウム系触媒の下流層を含む床を通過して、部分的に分解されたアンモニアガスの流れ20を生成する。第2の断熱反応器容器C142を通過するガス中のアンモニアのモル分率は、約0.9から約0.6に低下する。
【0097】
第2の断熱反応器容器C142の触媒床は、ルテニウム系触媒の層の上にニッケル系触媒の層を有する2つの層を有して、熱をより効率的に使用し、したがってアンモニア変換を最大化する。触媒体積はまた、最適化される、すなわち、第2の断熱反応器容器の出口温度を約390℃に制限することによって、ルテニウム系触媒の体積を最小限に抑える。発明者らは、この温度の低減が、ルテニウム系触媒に必要な体積を更に増加させることを見出した。
【0098】
ルテニウム系触媒は、第1及び第2の断熱反応器容器の両方において同じである。しかしながら、異なるルテニウム系触媒が、使用され得る。
【0099】
流れ20内の部分的に分解されたアンモニアは、流れ22として約38barの圧力で、炉(又は反応器)の輻射セクションF201内の触媒を充填した管に供給される前に、熱交換器(又は「エコノマイザ」)E305内の熱交換によって加熱される。管への供給物を加熱することは、部分的に分解された流れを反応温度まで加熱するために必要なデューティを低減することによって、バーナからの熱で行うことができる分解の量を増加させる。管からの分解された流れを利用することで、この高温流を効率的に使用することが可能になる。直接燃焼管状炉の入口温度は、分解装置の管の内壁温度を制限するために約500℃に制限される。
【0100】
空気の流れ62は、熱交換器E2141内の熱交換によって予熱される前に強制通風機K212を通過して、予熱された空気の流れ64を生成する。流れ64の予熱された空気は、トリム燃料としての天然ガスの流れ70と混合され、炉F201のバーナ(図示せず)に供給され得る。このように空気を予熱することは、燃料要件を低減することに役立つ。
【0101】
炉の輻射セクションF201内の管は、2つの異なる層における2つのタイプのアンモニア分解触媒で充填される。ルテニウム系触媒は、各管内の第1の層内に使用され、そのためより速い反応レートにより、金属温度を約660℃の設計限界内に保つことを可能にする。第1の層の下流にある管内の第2の層は、低コストであるが、活性の低いニッケル系触媒を含有する。
【0102】
分解されたガスの流れ24は、約640℃で直接燃焼管状炉の輻射セクションF201を出て、次いでエコノマイザE305に供給されて、部分的に分解されたアンモニアを加熱するために必要なデューティを提供し、それにより、分解されたガスの温度を約530℃に低減させる。
【0103】
エコノマイザE305は、部分的に分解されたアンモニアガスが管を通過し、分解されたガスがシェル側を通過するシェル-管型の熱交換器として図示される。しかしながら、この配置は、逆転させることができるか、又は実際に異なる型の熱交換器が使用されることもできる。
【0104】
次いで、分解されたガスの流れ26は、エコノマイザE305から熱交換器E310に供給されて、アンモニアガスを過熱するために必要なデューティを提供し、それによって分解されたガスの温度を約389℃に更に低減させる。
【0105】
次いで、分解されたガスの流れ28が、熱交換器E310から熱交換器E311に供給されて、更なる加熱された液体アンモニアを蒸発させるために必要なデューティを提供し、それによって分解されたガスの温度を更に約109℃まで低減させる。
【0106】
次いで、分解されたガスの流れ30は、熱交換器E311から熱交換器E312に供給されて、加熱された加圧された液体アンモニアを更に加熱するために必要なデューティを提供し、それによって分解されたガスの温度を再び約70℃に更に低減させる。
【0107】
熱交換器E310、E311及びE312の各々は、アンモニアが管を通過し、分解されたガスがシェル側を通過する個々のシェル-管型の熱交換器として図示される。しかしながら、この配置は、逆転させることができる。代替的に、熱交換器は、単一のシェル-管型の熱交換器に組み合わせるか、又は実際には、異なる型の熱交換器を使用することができる。
【0108】
次いで、熱交換器E312からの分解されたガスの流れ32は、冷却器E323内の熱伝達流体との熱交換によって更に冷却され、次いで、流れ34としてPSAシステムU501に供給され、ここで生成物として除去される水素ガスの流れ40と、窒素ガス、残留水素ガス及び残留アンモニアガスを含むPSAオフガスの流れ42とに分離される。流れ40内の水素ガスは、水素液化ユニット(図示せず)に供給されて、液体水素を生成し得る。
【0109】
流れ42内のPSAオフガスの全ては、炉F201内の燃焼のために燃料(流れ60)として直接送られ得る。代替的に、流れ42は、2つの部分に分割され得る。
【0110】
流れ44内のPSAオフガスの第1の部分は、熱交換器E2112内の熱交換によって加熱されて、加温されたPSAオフガスの流れ60を生成し、次いで、空気供給64、及び、任意選択的に、必要とされる際、天然ガス供給70とともに、炉F201内のバーナに供給される。燃焼セクション内に必要とされる燃料のバランスを提供するために、トリム燃料として最小量の天然ガスが使用される。
【0111】
第2の部分は、圧縮のために多段圧縮ユニットK681に流れ46として送られ得る。圧縮ユニットK681は、5つの段階を有し、最後の段階に続く、後冷却器とともに各段階の間に中間冷却器を備える。熱は、熱伝達流体との熱交換によって、中間冷却器及び後冷却器内の圧縮されたガスから回収される。熱はまた潤滑油から回収され得、正の変位圧縮ユニットが使用される場合、熱伝達流体を使用して圧縮ユニットのシリンダから回収され得る。
【0112】
便宜上、中間冷却器及び後冷却器は、熱伝達流体の流れ52との熱交換によって圧縮されたPSAオフガスの流れ48から熱を回収して、冷却された圧縮されたPSAオフガスの流れ50及び加温された熱伝達流体の流れ54を生成する単一の熱交換器(E6816A~Eと表示される)によって示される。
【0113】
次いで、冷却器E323、並びに中間冷却器及び後冷却器E6816A~Eなどにおいて加熱された熱伝達流体は、熱交換器E271内の熱交換によって液体アンモニアを予熱するために必要なデューティを提供するために使用される。
【0114】
流れ50内の冷却された圧縮されたPSAオフガスは、任意の凝縮が流れ56として除去される相分離器C6816に供給される。次いで、圧縮されたPSAオフガスは、更なる水素を回収するために、流れ58としてPSAシステムU501に再循環される。このようにして、水素の回収率は、(再循環なしの)85%から(再循環を使用して)95%に増加させることができる。
【0115】
上で示されたように、プロセスは、圧縮ユニットK681なしで動作することができ、結果として、PSAユニット501内の水素回収率の低下をもたらす。水素回収率を低減させることは、明らかに、水素ガス生成物の減少をもたらす。しかしながら、より多くの水素がオフガス中に存在する際、プロセスの炭素強度(CI)が低下し、それによってトリム燃料としての天然ガスの必要性を低減し、二酸化炭素排出量を低減するため、水素回収の低減が依然として望ましい場合がある。
【0116】
約686℃の煙道ガスの流れ72は、輻射セクションF201から炉F201の対流セクション90を通過し、ここで、熱交換器E2103において流れ16からの中間ガスを加熱するために必要なデューティを最初に提供し、それによって(流れ74として)使用される煙道ガスの温度を低減して、熱交換器E2102において流れ12からの加熱されたアンモニアガスを更に加熱するために必要なデューティを提供し、それによって煙道ガスの温度を更に低減する。したがって、煙道ガスは、直接燃焼管状炉の輻射セクションF201への供給ガスの流量に逆流する方向に加熱デューティを提供する。
【0117】
次いで、冷却された煙道ガスは、(流れ76として)熱交換器E2142において流れ62からの空気を加熱するために必要なデューティを提供し、それによって煙道ガスの温度を更に低減させるために使用される。次いで、更に冷却された煙道ガスは、熱交換器E2112において流れ44からのPSAオフガスを加熱するために必要なデューティを提供し、それによって煙道ガスを更に冷却するために(流れ78として)使用される。
【0118】
冷却された煙道ガスは、約121℃、すなわち、水の露点を上回る温度で、流れ80として直接燃焼管状炉F201の対流セクション90を離れ、誘導通風機K211を通過し、次いで流れ82としてプロセスを離れる。実用的なエネルギーの全ては、この時点で煙道ガスから抽出されており、任意選択的に、その組成に応じて必要とされる場合、更なる処理の後、大気に通気され得る。
【0119】
油は、アンモニアが生成される場所、又はアンモニアが分解される現場、又は実際には2つのサイト間を通過する任意の場所のいずれかにおいて、アンモニア貯蔵タンク(図示せず)とともに使用されるボイルオフガス圧縮機(図示せず)から最大約5ppmの量で液体アンモニア中に存在し得る。アンモニア中の油の存在は、アンモニア分解触媒が油を許容しない可能性があるため、困難を引き起こし得る。そのため、アンモニアが触媒に曝露される前に油を除去することが望ましい場合がある。油は、アンモニアを活性炭の床に通過させることによって除去され得る。
【0120】
油をアンモニアから除去する場合、次いで、油除去ユニット(図示せず)は、流れ2(すなわち、ポンプP101への供給ライン内)、流れ4(すなわち、ポンプP101とグリコールヒータE271との間)、流れ6(すなわち、グリコールヒータE271と熱交換器E312との間)、流れ8(すなわち、熱交換器E312とE311との間)、又は流れ10(すなわち、熱交換器E311とE310との間)において位置付けられ得る。
【実施例0121】
比較例
図1に図示されるプロセスは、コンピュータ(Aspen Plus,ver.10、Aspen Technology,Inc.、Massachusetts,USA)によって、30トン/日の水素(流れ40)を生成するように設計されたプラントに関してシミュレートされている。
【0122】
反応器は、60の管を有するようにシミュレートされ、各管は、4.313in(0.11m)の内径を有し、唯一の触媒としてニッケル系触媒を含有する40ft(12.2m)の触媒床を含む。
【0123】
断熱反応器内のルテニウム系触媒並びに断熱反応器及び反応器管の両方におけるニッケル系触媒の活性を、根拠として、Lambらにより与えられたレート方程式No.9(Int.J.Hydrogen Energy,44(2019)pp3726-3736)を使用してモデル化した。シミュレーションの目的のために、ルテニウム系触媒の活性は、レート方程式に適合したが、ニッケル系触媒の活性はレート方程式によって予測された活性の20%であると仮定した。
【0124】
図2では、分解装置の長さの関数として、様々な温度及びアンモニアのモル分率が描画される。結果は、管が、約750℃の最大外壁温度及び約724℃の最大内壁温度を有することを示す。
【0125】
実施例1
本発明に従う反応器管内の触媒の配置を使用して、比較例に従うシミュレーションを繰り返した。これに関して、各管は、比較例と同様に、ルテニウム系触媒の15ft(4.6m)の上流層と、同じニッケル系触媒の25ft(7.6m)の下流層と、を有するようにシミュレートされた。
【0126】
シミュレーションの他の全ての特徴は、断熱反応器の床における触媒の配置、及び両方のタイプの触媒の想定される活性を含み、変更されなかった。
【0127】
図3では、分解装置の長さの関数として、様々な温度及びアンモニアのモル分率が描画される。結果は、管が、最大外壁温度668℃及び最大内壁温度648℃を有することを示し、両方とも、それぞれ比較例からの750℃及び724℃の等価数値よりも著しく低い。
【0128】
より低い温度では、管が形成される金属の窒化の伸びは、著しく低いであろう。
【0129】
実施例1のシミュレーションのための熱及び質量バランスデータが、表2に提供される。
表2
【表2-1】
【表2-2】
【0130】
データは、分解装置(管状炉201)からの1.33モル%のアンモニアスリップ(流れ24)及びPSAユニットにおける水素の95%回収率、7626kg/時のアンモニア(流れ2)が供給として必要であり、分解装置を発火させるために、PSAオフガス(流れ60)に加えて472.7kg/時の天然ガス(流れ70)が燃料として必要である。
【0131】
所与の水素回収及びアンモニアスリップに関して、分解装置(F201)の触媒を充填した管の供給温度に部分的に分解したガス(流れ20)を加熱するために必要なデューティを提供するために、(煙道ガスの代わりに)分解したガスを使用する効果は、全体的な炭素強度(CI)プロセスを低減することである。
【0132】
本発明は、図において図示された好ましい実施形態を参照して説明されたが、様々な修正が、以下の特許請求の範囲で定義されるような本発明の趣旨又は範囲内で可能であることが理解されよう。
【0133】
本明細書では、明示的に別段の指示がない限り、「又は」という単語は、条件のうちの1つが満たされることのみを必要とする演算子「排他的論理和」とは対照的に、記載された条件のいずれか又は両方が満たされるときに真の値を返す演算子の意味で使用される。「含む(comprising)」という単語は、「含む(including)」という意味で使用され、「からなる(consisting of)」を排他的に意味するのではなく「からなる(consisting of)」を組み込む。
【0134】
上記の全ての先行する教示は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書に掲載されている事前に公開された文書の承認は、その教示がその日にオーストラリア又は他の場所で一般的な知識であったことの承認又は表明であると捉えられるものではない。