IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ジーイー・ヘルスケア・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグの特許一覧

<>
  • 特開-アデノウイルス精製の方法 図1
  • 特開-アデノウイルス精製の方法 図2
  • 特開-アデノウイルス精製の方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074802
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】アデノウイルス精製の方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/02 20060101AFI20240524BHJP
   C12N 15/861 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C12N7/02
C12N15/861 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024030080
(22)【出願日】2024-02-29
(62)【分割の表示】P 2020558871の分割
【原出願日】2019-04-24
(31)【優先権主張番号】1806736.3
(32)【優先日】2018-04-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】516105833
【氏名又は名称】サイティバ・バイオプロセス・アールアンドディ・アクチボラグ
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100154922
【弁理士】
【氏名又は名称】崔 允辰
(74)【代理人】
【識別番号】100207158
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 研二
(72)【発明者】
【氏名】オーサ・ハーグナー・マクワーター
(72)【発明者】
【氏名】アンナ・オーケルブローム
(57)【要約】
【課題】本発明は、ウイルス精製の方法に関する。
【解決手段】本発明は、細胞培養収集物からのアデノウイルスの精製のための下流方法を提供する。より詳細には、ウイルス捕捉及びウイルス最終精製工程を使用するアデノウイルス精製の方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アデノウイルス精製の方法であって、以下:a)アデノウイルスを含有する細胞培養収集物から、アニオン交換樹脂にアデノウイルスを捕捉する工程、b)前記アデノウイルスを、勾配にわたり15~25%、好ましくは18~20%の増加する塩濃度を有する浅い導電率勾配で溶出させる工程、c)溶出した前記アデノウイルスを、多孔性シェル及び多孔性コアを含むシェルビーズ樹脂に添加する工程であり、前記コアには疎水性相互作用リガンドが提供されており、前記シェルにはいかなるリガンドも提供されていない、工程、並びにd)前記シェルビーズ樹脂から前記アデノウイルスをフロースルー中に溶出させる工程を含み、工程d)で溶出したアデノウイルスが、1ng/ml未満の宿主細胞タンパク質(HCP)を含む、方法。
【請求項2】
前記塩が、NaCl、KCl及びLiCl、又はそれらの任意の組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩がNaClであり、前記勾配が18~20%増加し、前記塩濃度が0~700mMの間である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アニオン交換樹脂が、カラムに充填され、前記シェルビーズ樹脂が、別のカラムに充填され、前記アニオン交換樹脂から溶出した前記アデノウイルスが、シェルビーズ樹脂を含む前記カラムの15~30カラム容量(CV)に対応する体積で前記シェルビーズ樹脂に添加される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記アニオン交換樹脂から溶出した前記アデノウイルスが、シェルビーズ樹脂を含む前記カラムの25~30カラム容量(CV)に対応する体積で前記シェルビーズ樹脂に添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記コア及びシェルの多孔度が前記シェルビーズ樹脂と同じである、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コア及びシェルの多孔度が前記シェルビーズ樹脂と異なる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記宿主細胞タンパク質(HCP)が1ng/ml未満である、請求項1から7のいずれか一項に規定の精製されたアデノウイルスを含む組成物。
【請求項9】
前記アデノウイルスが、細胞療法に適したアデノウイルスベクターである、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウイルス精製の方法に関する。本発明は、細胞培養収集物からのアデノウイルスの精製のための下流方法を提供する。より詳細には、ウイルス捕捉及びウイルス最終精製工程を使用するアデノウイルス精製の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトアデノウイルスは6種(AからF)に分類され、幼児の軽度の呼吸器感染(風邪として知られている)から免疫系の弱った人における生命を脅かす多臓器疾患まで、多種多様な病気を引き起こす55の血清型が知られている。アデノウイルスは、腫瘍学、心臓血管学及び再生医療において、並びにワクチンベクターとして、遺伝子送達のために、実験で、並びに完了済み及び進行中の臨床試験で、広く使用されている一般的な病原体である。
【0003】
アデノウイルスは、様々な感染性疾患の多くの前臨床及び臨床研究においてワクチン送達系として評価されている(Kallel, H.及びKamen, A.A. Large-scale adenovirus and poxvirus-vectored vaccine manufacturing to enable clinical trials. Biotechnol J 10, 741~747 (2015)。アデノウイルスはまた、遺伝子療法のための可能性のあるウイルスベクターとして、及び腫瘍溶解性ウイルスとしてよく調べられている。生産性を高め、より効果的で安全なワクチンを生産するために、数世代の組換えアデノウイルスベクターが開発されてきた(Appaiahgari, M.B.及びVrati, S. Adenoviruses as gene/vaccine delivery vectors: promises and pitfalls. Expert Opin Biol Ther 15, 337~351 (2015)。最も研究されているアデノウイルスベクターは、第1世代の組換えアデノウイルス血清型5(AdV5)であり、これはアデノウイルス生産方法の開発に適した系である。
【0004】
アデノウイルス精製にはクロマトグラフィー技術が使用されるが、純度、収量、能力の点で結果が不十分であることがよくある。
【0005】
したがって、特にこのウイルスをアデノウイルス遺伝子送達ベクターとして使用する場合は、アデノウイルス精製のより優れた、より効率的な方法を見つけることが依然として必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Kallel, H.及びKamen, A.A. Large-scale adenovirus and poxvirus-vectored vaccine manufacturing to enable clinical trials. Biotechnol J 10, 741~747 (2015)
【非特許文献2】Appaiahgari, M.B.及びVrati, S. Adenoviruses as gene/vaccine delivery vectors: promises and pitfalls. Expert Opin Biol Ther 15, 337~351 (2015)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い能力と高い収量のアデノウイルス精製のための効率的な方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アデノウイルス精製の方法であって、以下:a)アデノウイルスを含有する細胞培養収集物から、アニオン交換樹脂にアデノウイルスを捕捉する工程、b)前記アデノウイルスを、15~25%、好ましくは18~20%の増加する塩濃度を有する浅い導電率勾配で溶出させる工程、c)前記溶出アデノウイルスを、多孔性シェル及び多孔性コアを含むシェルビーズ樹脂に添加する工程であり、コアには疎水性相互作用リガンドが提供されており、シェルにはいかなるリガンドも提供されていない、工程、並びにd)前記シェルビーズ樹脂から前記アデノウイルスをフロースルー中に溶出させる工程を含み、工程d)で溶出したアデノウイルスが、1ng/ml未満の宿主細胞タンパク質(HCP)を含む、方法に関する。
【0009】
好ましくは、塩はNaClであり、勾配は18~20%増加し、塩濃度は0~700mM、例えば、以下の実施例におけるようにNaCl 480~570mMであるか、又は開始塩濃度から18~20%増加する浅い勾配に対応する0~700mMの間の任意の間隔である。
【0010】
好ましくは、アニオン交換樹脂はマルチモーダルCapto Q ImpResアニオン交換樹脂であり、シェルビーズ樹脂はCapto Core700樹脂である。
【0011】
アニオン交換樹脂は、カラムに充填され、シェルビーズ樹脂は、別のカラムに充填され、溶出したアデノウイルスは、シェルビーズ樹脂を含むカラムの15~30カラム容量(CV)、好ましくは25~30CVに対応する体積でシェルビーズ樹脂に添加(負荷)される。コアとシェルの多孔度は同じでも異なっていてもよい。
【0012】
工程d)で溶出したアデノウイルスは非常に純粋であり、検出可能な不純物を含まない。宿主細胞タンパク質(HCP)のレベルは検出できないか、又は1ng/ml未満である。
【0013】
実験の項で示したように、工程d)で溶出したアデノウイルスの回収率は80~100%である。
【0014】
アデノウイルスの好ましい使用は、細胞療法のためのアデノウイルスベクターである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】アデノウイルス精製のための2つの2段階クロマトグラフィー方法、本発明の方法、参照方法の概要を示した図である。
図2】(A)Capto Q ImpResを捕捉工程に、(B)Capto Core700を最終精製工程に使用して、本発明の方法を規模拡大したクロマトグラムを示した図である。
図3】(A)セファロースQXLを捕捉工程に、(B)セファロース4ファーストフローを最終精製工程に使用して、参照方法を規模拡大したクロマトグラムを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、HEK293細胞培養収集物からのアデノウイルス精製の下流クロマトグラフィー工程の開発について記載する。10種類の異なるアニオン交換又はマルチモーダル樹脂及び1種類のアニオン交換膜を小規模でスクリーニングした後、最高の動的結合能力に基づいて2種類の樹脂を選択した。方法条件が最適化され、不純物を更に低減して規制要件を満たすために最終精製工程が含まれた。第1のアニオン交換捕捉工程の性能を小規模で比較した後、サイズ除外か、又はCapto Coreマルチモーダル樹脂を使用して最終精製を行った。参照方法及び本発明で開発した下流方法は、3L細胞培養収集物を使用して、より大きな規模で比較した。方法全体の結果は、開発された2段階クロマトグラフィー方法間で同程度の性能を示しているが、負荷能力は、従来のサイズ除外の代わりにCapto Core700樹脂を使用することにより、本発明の方法の最終精製工程では約150倍高かった。
【0017】
材料及び方法
ウイルス増殖及び試料調製
Xcellerex(商標)XDR-10又はReadyToProcess WAVE(商標)25バイオリアクターシステムにおいてHyClone(商標)CDM4HEK培地中で増殖したHEK293.2sus細胞(ATCC)に、緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードするAdV5を感染させた。細胞をバイオリアクター中で0.5%Tween(商標)20で4時間混合しながら溶解した。同時に、20U/mLのベンゾナーゼ(商標)を添加して、宿主細胞DNA(hcDNA)を消化した。細胞残渣の除去及び初回不純物低減のために、ULTA(商標)2μm及び0.6μmのGFフィルターの組み合わせを使用して、通常のフローろ過(NFF)によって収集物の清澄化を実施した。タンジェンシャルフローろ過(TFF)は、AKTA(商標)フラックス6ろ過システムで実施し、濃縮及び20mMトリス、pH8.0への緩衝液交換のために公称分子量カットオフMr300000の中空繊維フィルターを使用した。捕捉工程の前の試料調整には塩化ナトリウムを使用した。
【0018】
アデノウイルス捕捉工程の開発
動的結合能力(DBC)のスクリーニングは、樹脂については1mLの充填済HiTrap(商標)カラム(SOURCE Q 15についてはRESOURCE(商標)Qカラム)、膜については1mLのReadyToProcess Adsorber Qカプセルにおいて、AKTA pure 25クロマトグラフィーシステムを使用して実施した。DBCは、20mMトリス、pH8.0の様々なNaCl濃度で測定した(表1)。TFFを行った試料の負荷は、ウイルスのブレークスルーまで、カラムでは10分、カプセルでは0.2分の滞留時間で実施した。
【0019】
溶出条件の最適化
DBCスクリーニングの結果に基づいて、Capto Q、Capto Q ImpRes、QセファロースXL、SOURCE 15Q及びCapto adhere ImpRes樹脂並びにReadyToProcess Adsorber Q膜を更に評価するために選択した。線形溶出勾配は、選択した樹脂については1mLの充填済カラムで評価し、膜については1mLの膜カプセルを使用した。カラム及びカプセルを20mMトリス、pH8.0+NaCl 300mM(Capto adhere ImpResについてはNaCl 0mM)で平衡化した。試料負荷は、DBCの80%で実施した。NaCl 700mMまで溶出勾配全体にわたって、分析のために画分を収集した。
【0020】
更に最適化するためにCapto Q、Capto Q ImpRes及びReadyToProcess Adsorber Qを選択し、これらの吸着剤の段階溶出条件を評価した。負荷工程の後、ウイルスがブレークスルーしない可能な限り高いNaClで洗浄する工程、続いて導電率の増加を可能な限り低くして完全にウイルスを溶出させる工程が、DNAとウイルスの共溶出を回避するために望まれた。ReadyToProcess Adsorber Qの性能は、NFFのみ、又はNFFに続いてTFFを行った試料で評価した。
【0021】
アデノウイルス最終精製工程の樹脂の評価
Capto Core700(1mLのHiTrapカラムに充填済み)及びセファロース4ファーストフロー(HiScale(商標)16/40に充填、71mLカラム容量(CV))樹脂を、最終精製工程のために評価した。Capto Q、Capto Q ImpRes及びReadyToProcess Adsorber Qを使用して、評価した捕捉工程で精製した材料を試料として使用した。CVの10%をセファロースファーストフローに負荷し、最大30CVをCapto Core700に負荷した。Capto Core700については許容されたウイルス純度で可能な最大試料負荷体積を決定するために、試料負荷段階全体にわたって画分を収集し、不純物含有量を分析した。
【0022】
樹脂は全て、GE Healthcare Bio-Sciences AB社から入手した。
【0023】
アデノウイルス捕捉及び最終精製工程の規模拡大
TFF及びCapto Q ImpResアニオン交換樹脂とCapto Core700樹脂との組み合わせで実施した試料を使用する方法1(=本発明の方法)、並びにTFF及びセファロースQXLアニオン交換とセファロース4ファーストフローサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)樹脂との組み合わせで実施した試料を使用する参照方法の2つの方法を、3L細胞培養収集物を処理するために規模拡大した。捕捉のために、Capto Q ImpResはHiScale26カラム(88mL)に充填されたが、セファロースQXLはHiScale50(249mL)に充填された。最終精製のために、Capto Core700はHiScale16カラム(10mL)に充填され、セファロース4ファーストフローはHiScale50(382mL)に充填された。カラムは、AKTA pure 150システムで操作した。最終精製工程後、濃縮、調合、及び最終滅菌ろ過のために第2のTFF工程を含めた。方法は、2連で実施した。
【0024】
分析方法
総ウイルス力価は、PureLink(商標)ウイルスRNA/DNAミニキット、TaqMan(商標)汎用PCRマスターミックス、並びにヘキソンDNA用のフォワード及びリバースプライマー並びにStepOnePlus(商標)リアルタイムPCRシステムのTaqMan MGB 6-FAMプローブ(いずれもApplied Biosystems社)を使用するqPCRによって3連の試料で分析した。ヒトAdV5 DNA(3.1×107コピー/mL)(ViraPur社)を標準物として使用した。
【0025】
IN Cell Analyzerを使用した生細胞の自動蛍光顕微鏡法によって、3連の試料中で感染性ウイルスの力価を分析し、TCID50と類似の方法で画像のGFPシグナル(ウイルスによってコードされている)を分析した。
【0026】
無傷のウイルス粒子の分析のためにQセファロースXLを充填した1mLのTricorn(商標)5/50カラムを用いたHPLC法を使用した。溶出は、20mMトリス、pH7.5に溶かしたNaClの勾配を用いて、1.5mL/分の流速で実施した。
【0027】
総タンパク質濃度の分析には、アルブミン標準物を含むBCAアッセイキット(Thermo Scientific社)を使用し、総DNAは、Quant-iT(商標)PicoGreen(商標)dsDNA 試薬(Invitrogen社)を用いて決定した。分析は、2連で実施した。
【0028】
宿主細胞タンパク質(HCP)の濃度は、HEK293 HCP ELISAキット(Cygnus社)で決定した。
【0029】
hcDNAの濃度は、GAPDH(Invitrogen社)及び精製したHEK293 DNAのプライマーを標準物として使用して、qPCR(Applied Biosystems社の試薬)によって3連の試料で決定した。試料は、PrepSEQ(商標)残留DNA試料調製キット及びMagMax(商標)Express 96精製装置(Life Technologies社)を使用して調製した。
【実施例0030】
(実施例1)
アデノウイルス捕捉工程
アニオン交換及びマルチモーダルクロマトグラフィー吸着剤の全面的なスクリーニングを実施した。スクリーニングは、利用可能な方法でウイルスを検出するのに十分な試料体積を提供する1mLのHiTrapカラムで実施した。以下に示すように、小さいビーズサイズをベースにした膜並びに樹脂は、ウイルス結合のための表面積が大きいので、最高の能力を示した(Table 1(表1))。
【0031】
【表1】
【0032】
線形溶出勾配実験では、Capto Q ImpRes及びCapto Qで不純物からアデノウイルスが良好に分離されるため、更に評価するために選択した(図示せず)。ReadyToProcess Adsorber Qは線形溶出勾配を使用しても不十分なウイルス純度しか実現できなかったが(図示せず)、膜はまた、その高い結合能力のため、更に評価するために選択した。
【0033】
方法の最適化中に、ウイルスの完全な溶出に必要な導電率は、Capto Q及びCapto Q ImpResの両方の線形溶出勾配と比較して、段階溶出勾配の方が著しく高いことが発見されたので(図示せず)、ウイルスの溶出導電率が高いほど、ウイルスがDNAと共溶出するリスクが高くなるため、樹脂には線形溶出勾配を選択した。DNAは負に帯電しており、陰イオン交換体に強く結合し、長いDNA配列(例えば、ベンゾナーゼ処理後の不完全に断片化したDNA)は、短いDNA断片よりも強く結合する。低い溶出導電率によって、ウイルス溶出プール中のhcDNAの低減がもたらされた。
【0034】
(実施例2)
アデノウイルス最終精製工程
不純物を更に減らすために、アデノウイルス最終精製工程を精製方法に含めた。この工程では、Capto Core700マルチモーダル及びセファロース4ファーストフローSEC樹脂の両方を評価した。Capto Core700は、不活性シェル及びリガンド含有コアで構成され、樹脂に二重の機能をもたらされている。シェルの孔は、ウイルス粒子が流路内を通過する間に、小タンパク質及び不純物がコアに入り捕捉されるのを可能にする。
【0035】
アデノウイルスの回収率と純度は、方法の工程全体にわたって分析した。セファロース4ファーストフロー及びCapto Core700樹脂は、アデノウイルス純度に関して類似の性能を発揮したが、Capto Core700は試料負荷量に関してセファロース4ファーストフローよりも明らかな優位性を示した。Capto Core700の試料負荷は最大30CVであったが、セファロース4ファーストフローカラムには0.1CVのみが負荷された。ウイルスの回収率も、qPCRアッセイのばらつきが大きかったが、Capto Core700の方が高いと判断された。小規模についての下流方法全体の結果をTable3(表2)にまとめて示す。
【0036】
【表2】
【0037】
Capto QはCapto Q ImpResよりも不純物をより多く低減させたが、最終精製樹脂の評価の結果は、Capto Core700が両方の樹脂からの溶出液中に残存する不純物を検出限界未満(LOD)まで低減させたことを示している。Capto Q ImpResはより高い負荷能力を示し、方法の経済性向上を支援するので、Capto QよりもCapto Q ImpResが選択された。
【0038】
これらの結果に基づいて、2つの並行した方法、Capto Q ImpRes及びCapto Core700を組み合わせた方法1並びにセファロースQXL及びセファロース4ファーストフローを組み合わせた参照を比較した(図1)。
【0039】
(実施例3)
規模拡大したアデノウイルス精製方法
方法1及び参照方法は、3L細胞培養収集物からアデノウイルスを精製するために規模を決定した。方法1は、不純物低減及び最終精製工程での収量に関して参照方法よりも明らかな優位性を示し、規模拡大した実験の全体的な結果では、方法間で同程度の結果がもたらされた。規模拡大した実験では、最終試料のhcDNAレベルは類似していた。
【0040】
しかし、方法1ではHCPレベルがLOD未満に低減したが、参照方法では、最終試料中のHCPレベルは平均で22ng/mLであった。最終試料中のウイルス粒子の総量は、方法間で同程度であった(方法1:4.9×1013及び5.3×1013vp、参照方法:3.4×1013及び5.1×1013vp)。
【0041】
方法1のクロマトグラムを図2に、参照方法のクロマトグラムを図3に示す。規模拡大した方法の結果をTable 4(表3)にまとめて示す。
【0042】
方法1(図2A)
試料:20mMトリス、pH8.0+NaCl 450mM中でNFF及びTFFを行った収集物
樹脂:Capto Q ImpRes
カラム:HiScale 26
負荷:5.6×1011VP/mL樹脂(QB10の80%、滞留時間10分)
結合緩衝液:20mMトリス、pH8.0+NaCl 450mM、MgCl2 2mM
洗浄:20mMトリス、pH8.0+NaCl 480mM、MgCl2 2mM、2CV
溶出緩衝液:20mMトリス、pH8.0+2.5CVにおいてNaCl 450mMから570mM、MgCl2 2mM
システム:AKTA(商標) pure 150
【0043】
方法1(図2B)
試料:補足工程からの溶出液
樹脂:Capto Core700
カラム:HiScale 16
負荷:Capto Q ImpRes溶出液9CV
緩衝液:20mMトリス、pH8.0+NaCl 500mM、MgCl2 2mM
洗浄:結合緩衝液1.5CV
システム:AKTA pure 150
【0044】
参照方法(図3A)
試料:20mMトリス、pH8.0+NaCl 350mM中でNFF及びTFFを行った収集物
樹脂:QセファロースXL
カラム:HiScale 50
負荷:8.9×1011VP/mL樹脂(QB10の80%、滞留時間10分)
結合緩衝液:20mM NaP、pH7.3+NaCl 350mM、MgCl2 2mM、2%スクロース
洗浄:20mM NaP, pH7.3、NaCl 350mM、MgCl2 2mM、2%スクロースの5CV
溶出緩衝液:20mM NaP、pH7.3+NaCl 500mM、MgCl2 2mM、2%スクロース
システム:AKTA pure 150
【0045】
参照方法(図3B)
試料:補足工程からの溶出液
負荷:QセファロースXL溶出液0.2CV
樹脂:セファロース4ファーストフロー
カラム:HiScale 50
負荷:0.2CV
緩衝液:20mMリン酸ナトリウム、pH7.3+NaCl 200mM、MgCl2 2mM、2%スクロース
洗浄:結合緩衝液の1.5CV
システム:AKTA pure 150
【0046】
【表3】
【0047】
CaptoQImpresのNaCl 480mMから570mMの浅い塩勾配は、DNA断片をウイルス粒子から分離するために不可欠であった。これは、勾配における塩濃度の19%増加、又は勾配のCV当たりの塩濃度の7.5%増加に対応する(勾配計算:2.5CVで90mMの変化、36mM/CV)。第2の工程としてCapto Core700で最終精製すると、参照方法(セファロースQ XL段階溶出とそれに続くサイズ排除、図3A及び図3B、Table 4(表3))と比較して、透過型電子顕微鏡(TEM)画像処理により、残渣又は不純物が著しく低減した最終バルクが生じた。この手順は、KCl若しくはLiClの勾配、又はNaCl、KCl及びLiClの任意の組み合わせで、同じように良好に実施されることが期待される。
【0048】
上記から、Capto Q ImpResアニオン交換樹脂及びCapto Core700樹脂の組み合わせを使用する方法1には、参照方法よりもいくつかの優位性があることが明らかであろう。
【0049】
小規模の場合、方法1は不純物低減に関して明らかな優位性を示した。規模拡大実験では、方法1は良好なHCP削減を示した(<LOD対22ng/ml)。この特徴及びその他の特徴により、本発明の方法は、細胞療法のためにアデノウイルスベクターを精製するための適切な方法となる。
【0050】
本発明の別の主な利点は、方法1では最大30カラム容量(CV)をCapto Core700カラムに負荷することができるが、参照方法では、0.2CVのみしか負荷することができないことであった(負荷能力が150倍高い)。更に、サイズ排除クロマトグラフィー、SECと比較して、シェルビーズ工程を使用する方法1での最終精製の収量の方が明らかに優れていた(Table 3(表2))。
図1
図2
図3
【外国語明細書】