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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074828
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】燃費算出装置及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/42 20060101AFI20240524BHJP
   B63B 43/06 20060101ALI20240524BHJP
   B63H 21/21 20060101ALI20240524BHJP
   B63H 25/00 20060101ALI20240524BHJP
   B63H 25/04 20060101ALI20240524BHJP
   B63H 25/24 20060101ALI20240524BHJP
   B63B 79/40 20200101ALI20240524BHJP
   B63B 79/00 20200101ALI20240524BHJP
【FI】
B63H25/42 Z
B63B43/06 Z
B63H21/21
B63H25/00 Z
B63H25/04 G
B63H25/24 Z
B63B79/40
B63B79/00
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024047461
(22)【出願日】2024-03-25
(62)【分割の表示】P 2020012071の分割
【原出願日】2020-01-28
(71)【出願人】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】坂部 明信
(72)【発明者】
【氏名】川谷 聖
(72)【発明者】
【氏名】岡本 武史
(72)【発明者】
【氏名】村木 宏行
(72)【発明者】
【氏名】片山 和久
(72)【発明者】
【氏名】榊原 隆嗣
(57)【要約】
【課題】
船舶の姿勢を目的の角度に到達させるときの燃費を向上させる。
【解決手段】
船体の両側にそれぞれ設けられた2つの推進力発生装置113L,113Rと、船体の旋回を制御するための舵機115と、旋回方向及び旋回量を含む旋回指令値を取得する旋回指令取得部103と、船体の速度指令値を取得する速度取得部107と、速度取得部107が取得した速度指令値が速度閾値以上の場合、舵機115を中立位置にし、かつ旋回方向内側の推進力発生装置113L,113Rの推進力が旋回方向外側の推進力発生装置113L,113Rの推進力よりも小さくなるように2つの推進力発生装置113L,113Rを制御して旋回指令値に従って前記船舶を旋回させる旋回制御部111とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶の幅方向の異なる位置に設けられ前記船舶の推進力を発生させるための2つの推進力発生装置と、前記船舶を旋回させるための舵機と、前記船舶の旋回方向及び旋回量を含む旋回指令を発する旋回指令部とを備える船舶の旋回を制御する旋回制御装置であって、
前記旋回指令部からの前記旋回指令を取得する旋回指令取得部と、
前記船舶の速度を取得する速度取得部と、
前記旋回指令部から前記旋回指令を取得したときに前記速度取得部から取得した速度が所定の速度閾値以上の場合、前記舵機を中立位置に制御し、かつ前記旋回方向の内側の前記推進力発生装置による推進力が前記旋回方向の外側の前記推進力発生装置による推進力よりも小さくなるように前記2つの推進力発生装置を制御する旋回制御部とを備える、旋回制御装置。
【請求項2】
前記速度取得部で取得した速度が前記速度閾値以上の場合、前記旋回制御部は、前記旋回方向の内側の前記推進力発生装置の推進力を減らし前記旋回方向の外側の前記推進力発生装置の推進力を増やす、請求項1に記載の旋回制御装置。
【請求項3】
前記速度取得部で取得した速度が前記速度閾値以上の場合、前記旋回制御部は、前記旋回方向の内側の前記推進力発生装置の推進力だけを制御する、請求項1に記載の旋回制御装置。
【請求項4】
前記旋回指令取得部は、指定された航路に従って航行するための自動旋回指令、及び手動入力された舵角量に応じた手動旋回指令を取得し、
前記旋回制御部は、前記手動旋回指令に従う場合には、前記自動旋回指令に従う場合よりも前記2つの推進力発生装置の推進力の差が大きくなるように前記2つの推進力発生装置を制御する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の旋回制御装置。
【請求項5】
前記船舶の現在位置を取得する位置取得部を備え、
前記旋回制御部は、前記位置取得部で取得した現在位置が予め指定された所定区域内である場合には、前記旋回制御部は現在位置が前記所定区域外にいるときよりも前記2つの推進力発生装置の推進力の差が大きくなるように前記2つの推進力発生装置を制御する、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の旋回制御装置。
【請求項6】
前記旋回制御部は、前記旋回指令に含まれる旋回量の変化量が所定の旋回閾値以上の場合、前記船舶を前記旋回方向に旋回させるように前記舵機を駆動させる、請求項4に記載の旋回制御装置。
【請求項7】
前記旋回制御部は、前記旋回方向の内側の推進力発生装置の推進力を最小にし、前記旋回方向の外側の推進力発生装置の推進力を最大にする、請求項6に記載の旋回制御装置。
【請求項8】
船体の幅方向の異なる位置に設けられ前記船体の推進力を発生させるための2つの推進力発生装置と、
前記船体を旋回させるための舵機と、
前記船体の旋回方向及び旋回量を含む旋回指令を発する旋回指令部とを備える船舶の旋回を制御する旋回制御装置とを備え、
前記旋回制御装置は、
前記旋回指令部からの前記旋回指令を取得する旋回指令取得部と、
前記船舶の速度を取得する速度取得部と、
前記旋回指令部から前記旋回指令を取得したときに前記速度取得部から取得した速度が所定の速度閾値以上の場合、前記舵機を中立位置に制御し、かつ前記旋回方向の内側の前記推進力発生装置による推進力が前記旋回方向の外側の前記推進力発生装置による推進力よりも小さくなるように前記2つの推進力発生装置を制御する旋回制御部とを備える、船舶。
【請求項9】
船舶の推進力発生装置を制御する推進制御装置であって、
前記船舶の目標速度と前記船舶の現在の速度を取得する速度取得部と、
前記現在の速度が前記目標速度に近付く推進力を発生させるように前記推進力発生装置に指令を出力する推進力指令部とを備える、推進制御装置。
【請求項10】
前記推進力指令部は、前記目標速度と前記現在の速度との差に基づいて、前記推進力発生装置の主機の目標回転数を算出する、請求項9に記載の推進制御装置。
【請求項11】
前記推進力指令部は、前記目標速度と前記現在の速度との差に基づいて、前記推進力発生装置の可変ピッチプロペラの目標翼角を算出する、請求項9に記載の推進制御装置。
【請求項12】
現在位置から目的地までの航路を取得する航路取得部と、
現在時刻、及び船舶が前記目的地に到着すべき目標時刻を取得する時刻取得部と、を備え、
前記目標速度は、前記航路、前記現在時刻、及び前記目標時刻から算出される所要時間に基づいて算出された目標対地船速であり、
前記推進力指令部は、船舶の現在の速度が前記目標対地船速に近付く推進力を発生させるように前記推進力発生装置に指令を出力する、請求項9に記載の推進制御装置。
【請求項13】
前記速度取得部は、速度が異なる複数の目標船速を取得し、
前記複数の目標船速のそれぞれに基づいて前記現在位置から前記目的地まで所定経路で航行した場合の燃費及び到着時刻を報知する報知部を備える、請求項12に記載の推進制御装置。
【請求項14】
前記複数の目標船速のうちのいずれか1つを選択可能に表示する表示部を更に備え、
推進力指令部は、選択された前記目標速度と実際の速度との差分に基づいて、前記実際の速度が前記目標速度に近づくように前記推進力の大きさを指令する、請求項13に記載の推進制御装置。
【請求項15】
前記船舶の現在位置を取得する位置取得部と、
前記主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
前記主機の実回転数を取得する実回転数取得部と、
前記実回転数と前記操縦レバーの位置とに基づいて、前記主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
前記現在位置が所定区域内であれば、前記推進力指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させ、前記現在位置が前記所定区域外であれば、前記回転数指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備える、請求項10に記載の推進制御装置。
【請求項16】
前記船舶の現在位置を取得する位置取得部と、
他船の位置を取得する他船位置取得部と、
前記主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
前記主機の実回転数を取得する実回転数取得部と、
前記実回転数と前記操縦レバーの位置とに基づいて、前記主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
前記現在位置と前記他船の位置が距離閾値未満であれば前記推進力指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させ、前記現在位置と前記他船の位置が距離閾値以上であれば前記回転数指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備える、請求項10に記載の推進制御装置。
【請求項17】
前記船舶の現在位置、前記船舶の向きを取得する船舶情報取得部と、
他船の位置、前記他船の速度、及び前記を取得する他船情報取得部と、
前記主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
前記主機の実回転数を取得する実回転数取得部と、
前記実回転数と前記操縦レバーの位置とに基づいて、前記主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
前記船舶情報取得部、及び前記速度取得部で取得した情報、並びに前記他船情報取得部で取得した情報に基づいて危険度を算出し、算出した危険度が危険度閾値以上であれば前記推進力指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させ、前記危険度が危険度閾値未満であれば前記回転数指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備える、請求項10に記載の推進制御装置。
【請求項18】
前記主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
前記主機の実回転数を取得する回転数取得部と、
前記実回転数と前記操縦レバーの位置とに基づいて、前記主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
前記現在の速度が速度閾値未満であれば前記推進力指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させ、前記現在の速度が前記速度閾値以上であれば前記回転数指令部からの指令に基づいて前記推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備える、請求項10に記載の推進制御装置。
【請求項19】
推進力発生装置と、
前記推進力発生装置を制御する推進制御装置であって、
船体の目標速度と前記船体の現在の速度を取得する速度取得部と、
前記現在の速度が前記目標速度に近付く推進力を発生させるように前記推進力発生装置に指令を出力する推進力指令部とを備える推進制御装置とを備える船舶。
【請求項20】
プロペラに回転動力を伝達する主機を備える船舶の燃費を算出する燃費算出装置であって、
第1船速から、第2船速に加速するときの加速度を算出する加速度算出部と、
前記算出した加速度が所定の値以上であるか否かを判断する判断部と、
第1のタイミングから第2のタイミングまでの所要時間、及び前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの間に前記主機に投入された燃料投入量に基づいて、加速時の燃費を算出する算出部とを備える燃費算出装置。
【請求項21】
プロペラに回転動力を伝達する主機と、
燃費算出装置とを備え、
前記燃費算出装置は、
第1船速から、第2船速に加速するときの加速度を算出する加速度算出部と、
前記算出した加速度が所定の値以上であるか否かを判断する判断部と、
第1のタイミングから第2のタイミングまでの所要時間、及び前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの間に前記主機に投入された燃料投入量に基づいて、加速時の燃費を算出する算出部とを備える、船舶。
【請求項22】
複数の推進力発生装置と、
複数の進行方向制御装置と、を備える船舶を制御するための制御装置であって、
目的地に到着すべき目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って前記目標時刻までに前記目的地に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、複数の推進力発生装置のうちの少なくとも1つの推進力発生装置、及び前記複数の進行方向制御装置のうちの少なくとも1つの進行方向制御装置の組み合わせによる消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
前記算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる推進力発生装置及び進行方向制御装置を用いて船舶を推進させる推進制御部とを含む、船舶制御装置。
【請求項23】
複数の推進力発生装置と、
複数の進行方向制御装置と、
制御装置とを備える船舶であって、
前記制御装置は、
目的地に到着すべき目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って前記目標時刻までに前記目的地に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、前記複数の推進力発生装置のうちの少なくとも1つの推進力発生装置、及び前記複数の進行方向制御装置のうちの少なくとも1つの進行方向制御装置の組み合わせによる消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
前記算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる推進力発生装置及び進行方向制御装置を用いて船舶を推進させる推進制御部とを含む、船舶。
【請求項24】
推進力発生装置と、
複数の進行方向制御装置と、を備える船舶を制御するための制御装置であって、
目的地に前記船舶を到着させる目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って前記目標時刻までに前記目的地に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、前記複数の進行方向制御装置のうちの少なくとも1つの進行方向制御装置による消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
前記算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる進行方向制御装置を用いて船舶の進行方向を制御する進行方向制御部とを含む、船舶制御装置。
【請求項25】
推進力発生装置と、
複数の進行方向制御装置と、
制御装置とを備える船舶であって、
前記制御装置は、
目的地に前記船舶を到着させる目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的地までの指定航路に従って前記目標時刻までに前記目的地に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、前記複数の進行方向制御装置のうちの少なくとも1つの進行方向制御装置による消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
前記算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる進行方向制御装置を用いて船舶の進行方向を制御する進行方向制御部とを含む、船舶。
【請求項26】
複数の推進力発生装置と、
進行方向制御装置と、を備える船舶制御装置であって、
目的地に船舶を到着させる目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って前記目標時刻までに前記目的地に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、前記複数の推進力発生装置のうちの少なくとも1つの推進力発生装置による消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
前記算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる推進力発生装置を用いて船舶を推進させる推進制御部とを含む、船舶制御装置。
【請求項27】
複数の推進力発生装置と、
進行方向制御装置と、
制御装置とを備える船舶であって、
前記制御装置は、
目的地に前記船舶を到着させる目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って前記目標時刻までに前記目的地に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、前記複数の推進力発生装置のうちの少なくとも1つの推進力発生装置による消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
前記算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる推進力発生装置を用いて船舶を推進させる推進制御部とを含む、船舶。
【請求項28】
航行中の複数の船舶の対地船速、対水船速、前記船舶の位置情報、及び前記船舶の進行方向に関する情報を収集する情報収集部と、
前記情報収集部で収集した情報に基づき前記位置情報に対応する海域の外乱の速度、及び向きを算出する算出部とを備える、外乱データ収集システム。
【請求項29】
前記算出部の算出結果を、ネットワークを介して共有されている電子海図表示システムに送信する送信部を備える、請求項28に記載の外乱データ収集システム。
【請求項30】
船舶を旋回させるための舵機と、前記船舶の旋回方向及び旋回量を含む指令を出力する旋回指令部と、を備える船舶の旋回を制御するための旋回制御装置であって、
前記旋回指令部からの指令を取得する旋回指令取得部と、
前記船舶の推進抵抗を推定する推定部と、
前記推進抵抗が基準値と比較して増大する場合、指令に従って前記船舶を旋回させるための舵機の角度を示す目標舵角値を増やすように補正し、前記推進抵抗が基準値と比較して減少する場合、前記目標舵角値を減らすように補正する補正部と、
補正された前記目標舵角値に従って舵機を制御する舵機制御部と、を備える旋回制御装置。
【請求項31】
前記推定部は、第1のタイミング、及び前記第1のタイミングより後の第2のタイミングのそれぞれのタイミングで推進抵抗を推定し、
舵機制御部は、前記第1のタイミングで推定した推進抵抗を基準値として、前記第2のタイミングで推定した推進抵抗と比較する、請求項30に記載の旋回制御装置。
【請求項32】
前記船舶の位置情報を取得する位置取得部と、
前記位置情報に基づいて前記船舶の入港及び出港を検知する検知部とを備え、
前記推定部は、前記第1のタイミングが船舶の入港前、前記第2のタイミングが船舶の出港後になるように前記検知部の検知結果に基づいて推進抵抗を推定する、請求項31に記載の旋回制御装置。
【請求項33】
前記推定部は、船舶の推進力と対水速度とに基づいて、推進抵抗を推定する、請求項30乃至32のいずれか1項に記載の旋回制御装置。
【請求項34】
前記推定部は、舵角と推進力と方位の変化量、又は舵角と推進力と旋回半径に基づいて推進抵抗を推定する、請求項30乃至32のいずれか1項に記載の旋回制御装置。
【請求項35】
船体を旋回させるための舵機と、
前記船体の旋回方向及び旋回量を含む指令を出力する旋回指令部と、
旋回を制御するための旋回制御装置とを備え、
前記旋回制御装置は、
前記旋回指令部からの指令を取得する旋回指令取得部と、
前記船体の推進抵抗を推定する推定部と、
前記推進抵抗が基準値と比較して増大する場合、指令に従って前記船体を旋回させるための舵機の角度を示す目標舵角値を増やすように補正し、前記推進抵抗が基準値と比較して減少する場合、前記目標舵角値を減らすように補正する補正部と、
補正された前記目標舵角値に従って舵機を制御する舵機制御部と、を備える船舶。
【請求項36】
船舶を旋回させるための舵機と、前記船舶の旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、を備える船舶の旋回を制御するための旋回制御装置であって、
現在位置を取得する位置取得部と、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記現在位置に応じて、前記舵角指令取得部で取得した前記舵角指令を補正する補正部と、
補正した前記舵角指令を前記舵機に送信する送信部とを備える、旋回制御装置。
【請求項37】
前記補正部は、前記現在位置が港湾であることを示す場合には、前記舵角指令を増加させるように補正する、請求項34に記載の旋回制御装置。
【請求項38】
船舶を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
旋回を制御するための旋回制御装置とを備え、
前記旋回制御装置は、
現在位置を取得する位置取得部と、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記現在位置に応じて、前記舵角指令取得部で取得した前記舵角指令を補正する補正部と、
補正した前記舵角指令を前記舵機に送信する送信部とを備える、船舶。
【請求項39】
推進力発生装置と、
船舶を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
前記推進力発生装置の推進力指令を出力する推進力指令部と、を備える船舶の旋回を制御するための旋回制御装置であって、
前記推進力指令を取得する推進力取得部と、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記推進力指令が推進力閾値以上である場合には前記舵角指令を減少させ、前記推進力が前記推進力閾値未満である場合には前記舵角指令を増加させる補正を行う補正部と、
補正した前記舵角指令を前記舵機に送信する送信部とを備える、旋回制御装置。
【請求項40】
推進力発生装置と、
船舶を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
前記推進力発生装置の推進力指令を出力する出力指令部と、
旋回を制御するための旋回制御装置とを備え、
前記旋回制御装置は、
前記推進力指令を取得する推進力取得部と、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記推進力指令が推進力閾値以上である場合には前記舵角指令を減少させ、前記推進力が前記推進力閾値未満である場合には前記舵角指令を増加させる補正を行う補正部と、
補正した前記舵角指令を前記舵機に送信する送信部とを備える、船舶。
【請求項41】
推進力発生装置と、
船舶を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、を備える船舶の旋回を制御するための旋回制御装置であって、
前記船舶の現在の速度を取得する速度取得部と、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記速度が速度閾値以上である場合には前記舵角指令を減少させ、前記速度が前記速度閾値未満である場合には前記舵角指令を増加させる補正を行う補正部と、
補正した前記舵角指令を前記舵機に送信する送信部とを備える、旋回制御装置。
【請求項42】
推進力発生装置と、
船体を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
前記船体の旋回を制御するための旋回制御装置とを備え、
前記旋回制御装置は、現在の速度を取得する速度取得部と、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記速度が速度閾値以上である場合には前記舵角指令を減少させ、前記速度が前記速度閾値未満である場合には前記舵角指令を増加させる補正を行う補正部と、
補正した前記舵角指令を前記舵機に送信する送信部とを備える、船舶。
【請求項43】
推進力発生装置と、
船体を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
前記推進力発生装置の推進力指令を出力する推進力指令部と、を備える船舶の推進力を制御するための推進力制御装置であって、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記推進力指令を取得する推進力指令取得部と、
前記舵角指令が大きい場合には推進力を増加させ、前記舵角指令が小さい場合には前記推進力を減少させる補正を行う補正部と、
補正した前記推進力を前記推進力発生装置に送信する送信部とを備える、
を備える、推進力制御装置。
【請求項44】
推進力発生装置と、
船体を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
前記推進力発生装置の推進力指令を出力する推進力指令部と、
旋回を制御するための推進力制御装置とを備え、
前記推進力制御装置は、
前記舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記推進力指令を取得する推進力指令取得部と、
前記舵角指令が大きい場合には推進力を増加させ、前記舵角指令が小さい場合には前記推進力を減少させる補正を行う補正部と、
補正した前記推進力を前記推進力発生装置に送信する送信部とを備える、船舶。
【請求項45】
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部を備える船舶のバラストを制御するバラスト制御装置であって、
左舷側のバラスト水量を調整する左舷バラスト調整部と、
右舷側のバラスト水量を調整する右舷バラスト調整部と、
舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記舵角指令に基づいて前記左舷バラスト調整部と前記右舷バラスト調整部のうち旋回内側にある方の水量を、旋回外側にある方の水量よりも多くするようにバラスト水量を決定するバラスト決定部とを備える、バラスト制御装置。
【請求項46】
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
バラストを制御するバラスト制御装置とを備え、
前記バラスト制御装置は、
左舷側のバラスト水量を調整する左舷バラスト調整部と、
右舷側のバラスト水量を調整する右舷バラスト調整部と、
舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
前記舵角指令に基づいて前記左舷バラスト調整部と前記右舷バラスト調整部のうち旋回内側にある方の水量を、旋回外側にある方の水量よりも多くするようにバラスト水量を決定するバラスト決定部とを備える、船舶
【請求項47】
舵機を備える船舶の進行方向制御装置であって、
複数の通過点を結んで形成される指定航路を管理する指定航路管理部と、
前記指定航路上の進行方向に最も近くにあるn番目の通過点と、n+1番目の通過点との位置関係を加味して前記n番目の通過点を通過するときの船体の向きを決定する方向決定部と、
前記方向決定部で決定された向きに基づいて前記舵機を制御する舵角制御部とを備える、進行方向制御装置。
【請求項48】
船体を旋回させるための舵機と、
進行方向制御装置とを備え、
前記進行方向制御装置は、
複数の通過点を結んで形成される指定航路を管理する指定航路管理部と、
前記指定航路上の進行方向に最も近くにあるn番目の通過点と、n+1番目の通過点との位置関係を加味して前記n番目の通過点を通過するときの船体の向きを決定する方向決定部と、
前記方向決定部で決定された向きに基づいて前記舵機を制御する舵角制御部とを備える、船舶。
【請求項49】
船舶が航海する航路中の所定の地点における海象情報及び気象情報の少なくともいずれか一方を取得する情報取得部と、
取得した前記情報に基づいて、前記所定の地点で発生する外乱による船体姿勢の変化を予測する予測部と、
予測された船体姿勢の変化を打ち消すための船舶の姿勢を推定する姿勢推定部と、
前記所定の地点で推定された前記船舶の姿勢となるように、前記船舶の荷室内の積み荷の配置を決定する配置決定部と、
決定された配置を操船者に報知する報知部と、を備える、船舶姿勢算出システム。
【請求項50】
前記情報取得部は、航路中の複数の地点における海象情報及び気象情報の少なくともいずれか一方を取得し、
前記予測部は、前記複数の地点の各地点での外乱による船体姿勢の変化を予測し、
前記姿勢推定部は、前記各地点での船体姿勢の変化を打ち消す姿勢を推定し、
前記姿勢推定部の推定結果に基づいて算出された外乱が無い状態での姿勢で航路を航海した場合の燃費を算出する算出部を更に備え、
前記配置決定部は、前記算出部の算出結果に基づき最も燃費が良い姿勢となるように積み荷の配置を決定する、請求項49に記載の船舶姿勢算出システム。
【請求項51】
船舶の両舷に独立して設けられ船舶の推進抵抗を低減させるための2つの推進抵抗低減部と、前記船舶の旋回方向及び旋回量を指令する旋回指令部と、を備える船舶の旋回を制御する旋回制御装置であって、
前記旋回指令部からの指令を取得する旋回指令取得部と、
前記旋回指令部から指令を受けたとき、前記旋回方向の内側の前記推進抵抗の低減量を前記旋回方向の外側の前記推進抵抗の低減量よりも小さくなるように前記2つの推進抵抗低減部を制御する抵抗制御部と、を備える、旋回制御装置。
【請求項52】
前記抵抗制御部は、前記船舶の舵機を制御する舵角指令を出力する舵角指令出力部を備える、請求項51に記載の旋回制御装置。
【請求項53】
前記舵角指令が所定角度以上の場合、前記舵機にのみ制御値を供給する、請求項51又は請求項52に記載の旋回制御装置。
【請求項54】
船体抵抗情報を取得する抵抗情報取得部を備え、
前記抵抗制御部は、前記船体抵抗情報に基づいて前記2つの抵抗制御装置に制御値を供給する、請求項51乃至53のいずれか1項に記載の旋回制御装置。
【請求項55】
前記2つの抵抗制御装置は、船底に泡を発生させる泡発生装置である、請求項51乃至54のいずれか1項に記載の旋回制御装置。
【請求項56】
前記泡発生装置は、右舷側と左舷側のそれぞれに泡を排出するための複数の排出口を備え、泡排出量を、旋回外側の排出口からの排出量よりも少なくする、請求項55に記載の旋回制御装置。
【請求項57】
船体に取り付けられた舵機と、
前記舵機を制御する舵機制御部と、
舵角指令を取得する舵角情報取得部、
左舷側に設けられ、前記舵角指令に基づいて左舷側の船体抵抗を減らす第1抵抗制御装置、及び
右舷側に設けられ、前記舵角指令に基づいて右舷側の船体抵抗を減らす第2抵抗制御装置を備える舵制御装置とを備える、船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2つの主機と、それぞれの主機に固定された2つのプロペラを備えるいわゆる2機2軸型の船舶が知られている。例えば、特許文献1には2機2軸型の船舶において、それぞれの主機の推進力の差及び舵操作の組み合わせにより操舵性を高めることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-068580号公報
【0004】
しかしながら特許文献1のシステムは、旋回時に必ず当て舵を行うため、船舶の姿勢を目的の角度に到達させるまでの燃料消費が低下する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記課題を解決するためのものであり、船舶の姿勢を目的の角度に到達させるときの燃費を向上させられる旋回制御装置及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題を解決するために、一態様における旋回制御装置は、
船舶の幅方向の異なる位置に設けられ船舶の推進力を発生させるための2つの推進力発生装置と、船舶を旋回させるための舵機と、船舶の旋回方向及び旋回量を含む旋回指令を発する旋回指令部とを備える船舶の旋回を制御する旋回制御装置であって、
旋回指令部からの旋回指令を取得する旋回指令取得部と、
船舶の速度を取得する速度取得部と、
旋回指令部から旋回指令を取得したときに速度取得部から取得した速度が所定の速度閾値以上の場合、舵機を中立位置に制御し、かつ旋回方向内側の推進力発生装置による推進力が旋回方向外側の推進力発生装置による推進力よりも小さくなるように2つの推進力発生装置を制御する旋回制御部とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1実施形態による船舶のブロック図である。
図2】第1実施形態によるオートパイロット制御時の旋回制御部による一連の処理を示すフロー図である。
図3】第2実施形態による船舶のブロック図である。
図4】第3実施形態による船舶のブロック図である。
図5】第4実施形態による外乱データ収集システムの概略構成図である。
図6】第4実施形態による船舶の概略上面図を示す。
図7】第4実施形態における電子海図の一例である。
図8】第5実施形態による船舶のブロック図である。
図9】第6実施形態による船舶のブロック図である。
図10】第7実施形態による船舶のブロック図である。
図11】第8実施形態による船舶のブロック図である。
図12】第9実施形態による船舶のブロック図である。
図13】第9実施形態による船舶の正面図である。
図14】第9実施形態による船舶の正面図である。
図15】第9実施形態による船舶の正面図である。
図16】第10実施形態による船舶のブロック図である。
図17】第10実施形態における指定航路の一例を示す。
図18】第11実施形態における船舶姿勢算出システムのブロック図である。
図19】第12実施形態による船舶のブロック図である。
図20】第12実施形態による旋回制御装置による制御処理を示すフロー図である。
図21】第12実施形態によるマイクロバブル発生装置の概略構成図である。
図22】第13実施形態による船舶のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔第1実施形態〕
図1は、船舶のブロック図である。船舶V1は、旋回制御装置100と、手動入力に応じた旋回指令を出力する手動操舵部101と、指定された航路に従って旋回方向及び旋回量を含む旋回指令を旋回指令取得部103に出力する自動操舵部105とを備える。手動操舵部101は、図示せぬ操舵部の操作量に応じた旋回指令を旋回指令取得部103に出力する。自動操舵部105は、指定航路に従って船首の向きを制御するオートパイロット制御を実行し、旋回指令を旋回指令取得部103に出力する。
【0009】
旋回制御装置100は、手動操舵部101に入力された速度指令を取得する速度取得部107と、GPSや海図等を用いて現在位置を取得する位置取得部109とを備える。現在位置に関する情報は、現在位置が湾内等の所定区域内であるのか、所定区域外であるのかに関する情報を含む。速度取得部107は、速度指令を旋回制御部111に出力する。速度指令は、推進速度の指令値であり操作者の要求速度を含む。速度は、対地速度又は対水速度のどちらでもよい。速度指令は、後述する推進力発生装置の出力値を示してもよい。
【0010】
船舶V1は、船体の幅方向の異なる位置に設けられた2つの推進力発生装置113L,113Rと、舵機115とを備える。旋回制御部111は、速度指令、現在位置、及び旋回指令に基づいて推進力発生装置113L,113R、及び舵機115を制御して船体を旋回させる。なお、船舶V1を進行方向に進める際の制御については公知技術であるため詳細な説明は省略する。
【0011】
推進力発生装置113L,113Rは、エンジン117及びプロペラ119を備える。プロペラ119は、翼角を制御可能な可変ピッチプロペラであってもよい。プロペラ119が可変ピッチプロペラである場合、推進力発生装置113L,113Rの推進力とは、エンジン117、及びプロペラ119の翼角の両方で制御される推進力の合計値となる。
【0012】
旋回制御部111は、旋回指令に応じて推進力発生装置113L,113Rの推進力に差を持たせるか、舵機115を制御するか、その両方を行い旋回指令に基づいて船体を旋回させる。旋回制御部111は、船速が速度閾値以上であり船体の旋回性能が高く推進力発生装置113L,113Rだけで船体を旋回させられる状況では、舵機115を中立位置に制御し、推進力発生装置113L,113Rのみで船体を旋回させる。旋回制御部111は、推進力発生装置113L,113Rの推進力に差を持たせ、旋回指令で指示された旋回方向内側の推進力が旋回方向外側の推進力よりも小さくなるよう、推進力発生装置113L,113Rを制御する。推進力発生装置113L,113Rの推進力に差を持たせるためには、一方の制御値を変えず他方の制御値だけを増減するか、両方の制御値を増減させることができる。推進力の差が旋回量に相当するため、旋回制御部111は旋回指令に応じた旋回量に応じて推進力の差を決定する。
【0013】
旋回制御部111は、旋回指令の出力元が手動操舵部101であるのか、自動操舵部105であるのかに応じて旋回量を変えてもよい。旋回指令取得部103が手動操舵部101から旋回指令を取得した場合、緊急回避を行うことが考えられる。したがって、旋回制御部111は、旋回指令取得部103が手動操舵部101から旋回指令を取得した場合には自動操舵部105から同一の舵角を示す旋回指令を取得した場合よりも推進力発生装置113L,113Rの推進力の差を大きくする。この場合、旋回方向内側の推進力発生装置113L,113Rの推進力を最大にし、旋回方向内側の推進力発生装置113L,113Rの推進力を最小(アイドリング状態又はデッドスロー)にしてもよい。これにより手動操舵に対する追従性を向上させられる。手動操舵部101からの旋回指令の変化量が一定以上の場合にのみ、推進力発生装置113L,113Rの推進力の差を大きくしてもよい。旋回制御部111は、手動操舵部101から出力された旋回指令に対しては推進力発生装置113L,113Rに加えて舵機115を制御して船体を旋回させてもよい。
【0014】
現在位置を参照して湾内、水道内、沿岸等の所定区域にいるときに旋回指令が入力された場合、旋回制御部111は所定区域外で同一の旋回指令が入力されたときよりも推進力発生装置113L,113Rの推進力の差を大きくしてもよい。これにより所定区域内での操舵性を向上させられる。また、旋回制御部111は、所定区域内では舵機115を制御して船体を旋回させてもよい。
【0015】
図2は、オートパイロット制御時の旋回制御部による一連の処理を示すフロー図である。自動操舵部105より旋回指令が入力されて一連の処理が開始すると、ステップS1において旋回制御部111は、旋回指令に基づいて旋回方向及び旋回量を決定する。ステップS2において旋回制御部111は、旋回方向内側の推進力発生装置113L,113Rの推進力が旋回方向外側の推進力発生装置113L,113Rの推進力よりも小さくなるよう、エンジン117の回転数及びプロペラ119の翼角を制御する。ステップS3において旋回制御部111は、所望の旋回角度が得られたかを判断する。この判断は、推進力の差及び船体抵抗等から算出した時間の経過に基づくもの、又は位置情報に基づいて船首角度をモニタリングした結果でもよい。なお、ステップS3では、旋回角度の代わりに旋回度(単位時間あたりの旋回角度の変化量)を参照してもよい。ステップS4において旋回制御部111は推進力発生装置113L,113Rの推進力の差をゼロにし、一連の処理を終了する。
【0016】
上記のような制御により、舵機115の作動量を減らせ、当て舵による燃費の低下を抑制できる。また、速度指令が速度閾値以上の場合にのみ、推進力発生装置113L,113Rにより船体を旋回させることで船速が遅い状態での旋回性能を確保できる。
【0017】
また、手動操舵部101から旋回指令が出力された場合には、推進力発生装置113L,113Rの推進力の差を大きくしたり、舵機115を併用したりすることで手動操舵に対する追従性を向上させられる。
【0018】
また現在位置に基づいて推進力発生装置113L,113Rの推進力の差を制御することで、港湾、水道内での安全性を高められる。
【0019】
〔第2実施形態〕
従来、オートパイロット時の船舶速度は、エンジンの出力を基準に制御されていた。即ち、操作者は自身の経験に基づきエンジン出力を調整して船速を調整していた。
【0020】
船舶速度を経験的にではなく、理論的に制御できるようにすることについての要望も存在する。
【0021】
このような課題を解決するために、一態様における推進制御装置は、
船舶の推進力発生装置を制御する推進制御装置であって、
船舶の目標速度と船舶の現在の速度を取得する速度取得部と、
現在の速度が目標速度に近付く推進力を発生させるように推進力発生装置に指令を出力する推進力指令部とを備える。
【0022】
この構成により、目標速度に従って船速を制御できる。
【0023】
この場合において、
推進力指令部は、目標速度と現在の速度との差に基づいて、推進力発生装置の主機の目標回転数を算出するか、目標速度と現在の速度との差に基づいて、推進力発生装置の可変ピッチプロペラの目標翼角を算出してもよい。
【0024】
この構成により、目標速度に従って船速を制御できる。
【0025】
この場合において、
現在位置から目的地までの航路を取得する航路取得部と、
現在時刻、及び船舶が目的地に到着すべき目標時刻を取得する時刻取得部と、を備え、
目標速度は、航路、現在時刻、及び目標時刻から算出される所要時間に基づいて算出された目標対地船速であり、
推進力指令部は、船舶の現在の速度が目標対地船速に近付く推進力を発生させるように推進力発生装置に指令を出力してもよい。
【0026】
この構成により、目標時刻までに目的地に到着できる。
【0027】
この場合において、
速度取得部は、速度が異なる複数の目標船速を取得し、
複数の目標船速のそれぞれに基づいて現在位置から目的位置まで所定経路で航行した場合の燃費及び到着時刻を報知する報知部を備えてもよい。
【0028】
この構成により、目標船速毎の燃費及び到着時刻を報知できる。
【0029】
この場合において、
複数の目標船速のうちのいずれか1つを選択可能に表示する表示部を更に備え、
推進力指令部は、選択された目標速度と実際の速度との差分に基づいて、実際の速度が目標速度に近づくように推進力の大きさを指令してもよい。
【0030】
この場合において、
船舶の現在位置を取得する位置取得部と、
主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
主機の実回転数を取得する実回転数取得部と、
実回転数と操縦レバーの位置とに基づいて、主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
現在位置が所定区域内であれば、推進力指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させ、現在位置が所定区域外であれば、回転数指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備えてもよい。
【0031】
この構成により、現在位置に応じて推進力の制御態様を変えられる。
【0032】
この場合において、
船舶の現在位置を取得する位置取得部と、
他船の位置を取得する他船位置取得部と、
主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
主機の実回転数を取得する実回転数取得部と、
実回転数と操縦レバーの位置とに基づいて、主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
現在位置と他船の位置が距離閾値未満であれば推進力指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させ、現在位置と他船の位置が距離閾値以上であれば回転数指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備えてもよい。
【0033】
この構成により、他船との距離に応じて推進力の制御態様を変えられる。
【0034】
この場合において、
船舶の現在位置、船舶の向きを取得する船舶情報取得部と、
他船の位置、他船の速度、及びを取得する他船情報取得部と、
主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
主機の実回転数を取得する実回転数取得部と、
実回転数と操縦レバーの位置とに基づいて、主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
船舶情報取得部、及び速度取得部で取得した情報、並びに他船情報取得部で取得した情報に基づいて危険度を算出し、算出した危険度が危険度閾値以上であれば推進力指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させ、危険度が危険度閾値未満であれば回転数指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備えてもよい。
【0035】
この構成により、自船の現在位置、速度、及び向きと、他船の位置、速度、及び向きに基づいて算出される危険度に基づいて推進力の制御態様を変えられる。
【0036】
この場合において、
主機の回転数を制御するための操縦レバーの位置を取得するレバー位置取得部と、
主機の実回転数を取得する回転数取得部と、
実回転数と操縦レバーの位置とに基づいて、主機の目標回転数の指令を出力する回転数指令部と、
現在の速度が速度閾値未満であれば推進力指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させ、現在の速度が速度閾値以上であれば回転数指令部からの指令に基づいて推進力発生装置に推進力を発生させる制御部とを備えてもよい。
【0037】
この構成により、現在速度に応じて推進力の制御態様を変えられる。
【0038】
図3は、船舶のブロック図を示す。図3に示すように船舶200は、制御装置201と、操舵部203と、操作部205と、推進力発生装置207と、舵機209とを備える。操舵部203は、操作者が舵機209を手動操舵するために用いられる。操作部205は、テレグラフ211と表示部213と選択部215とを備える。テレグラフ211には操作者の操作によりエンジン回転数の指令又は速度の指令が入力される。表示部213は、操作者に対して情報を表示するモニターである。選択部215は、操作者が制御装置201に対する指令を入力したり、表示部213に表示された情報を選択したりするキーボード等の入力インターフェイスである。推進力発生装置207は、ガバナにより駆動制御されるエンジン217と、エンジン217の出力軸に固定された可変ピッチプロペラ219とを備える。
【0039】
制御装置201は、各種情報を取得する構成として、速度取得部221と、位置取得部223と、他船位置取得部225と、実回転数取得部227と、航路取得部229と、時刻取得部231と、レバー位置取得部233とを備える。速度取得部221は、船舶の現在の速度を取得する。またオートパイロット時には速度取得部221は、航行距離及び到着予定時刻から目標速度を取得する。船舶の航行速度は、速度センサ等の自船の計器類から取得してもよいし、外部から取得してもよい。位置取得部223は、GPS等の計測手段を用いて現在位置、及び海図を参照して現在位置に関する情報を取得する。現在位置に関する情報としては、現在位置が湾内、水道、近海等の航行速度が規制されている領域であるか、外洋等の航行速度が規制されていない領域であるか等の情報がある。他船位置取得部225は、他船と無線通信を行い他船の現在位置に関する情報を取得する。実回転数取得部227は、エンジン217の実回転数を取得する。航路取得部229は、現在位置から目的地までの航路を取得する。時刻取得部231は、現在時刻、及び目標時刻を取得する。レバー位置取得部233は、テレグラフ211の位置を取得する。
【0040】
制御装置201は、各種演算を行う構成として、加速度算出部235と、燃費算出部237とを備える。加速度算出部235は、加速度の変化量、即ち現在の船速と過去の船速とから加速度を算出する。燃費算出部237は、加速度、及び現在の燃料消費量から加速時の燃費を算出する。
【0041】
推進力指令部239は、現在の速度が目標速度に近付く推進力を発生させるように推進力発生装置207に指令を出力する。推進力指令部239は、目標速度と現在の速度との差に基づいて、推進力発生装置207の主機の目標回転数を算出する。推進力指令部239は、目標速度と現在の速度との差に基づいて、推進力発生装置207の可変ピッチプロペラ219の目標翼角を算出する。回転数指令部241は、実回転数とテレグラフ211の位置とに基づいて、エンジン217の目標回転数の指令を出力する。
【0042】
制御部243は、速度取得部221、位置取得部223、他船位置取得部225、実回転数取得部227、航路取得部229、時刻取得部231、及びレバー位置取得部233で得られた算出結果に基づき舵機209及び推進力発生装置207を制御する。制御部243は、現在速度が目標速度に近付くように船舶の推進力(エンジン217の出力又はプロペラ19の翼角)を制御する。これにより、目標速度を維持できる。また外乱の影響により指定航路からずれている場合には、指定航路からのずれ等に基づいて外乱を算出し、算出した外乱を加味して現在速度を制御してもよい。本明細書において外乱とは、航行時の潮流、風等の海象、気象要因を含む。また、船体抵抗を加味する場合の外乱には、海象、気象要因に加えて、船体汚損(プロペラに対するフジツボの付着)、乗員数による推進抵抗の変化が含まれる。また現在までの平均速度が目標速度になるように現在速度を制御してもよい。これにより、予定時刻までに目的位置に到着できる。また、予定時刻に目的位置に到着できるような平均速度を算出し、算出した平均速度で船舶を制御してもよい。これにより燃費を向上させられる。予定時刻と目的値を海図上にプロットすることで平均速度を算出できるようにすれば、操作が容易になる。
【0043】
制御部243は、位置取得部223で取得した位置情報が湾内等の所定区域を示す場合には速度取得部221で取得した現在速度をモニタリングしながら現在速度を一定に保つように推進力を制御する(速度フィードバック制御)。また、制御部243は、位置取得部223で取得した位置情報が外洋等を示す場合にはエンジン回転数をモニタリングしながらエンジン回転数を一定に保つように推進力を制御する(回転数フィードバック制御)。また制御部243は、現在速度に応じて速度フィードバック制御、及び回転数フィードバック制御を切り替える。この場合、制御部243は、現在速度が予め決定された速度閾値未満の場合には速度フィードバック制御を行い、現在速度が速度閾値以上の場合には回転数フィードバック制御を行う。
【0044】
速度フィードバック制御を実行する場合、制御部243はエンジンのガバナを制御する。所定区域内で速度フィードバック制御を行えば、他船との位置関係を保ちやすくなる。この場合、制御部243は他船の位置と自船の現在位置から両者の距離を算出し、距離が予め決められた距離閾値未満であれば、速度フィードバック制御を行う。距離が距離閾値以上の場合、制御部243は、回転数フィードバック制御を行う。
【0045】
また制御部243は、他船の位置、速度、及び向きと、自船の位置、速度、及び向きとを加味して危険度を算出してもよい。危険度が予め決定された危険度閾値以上の場合、制御部243は、速度フィードバック制御を行う。危険度が危険度閾値未満の場合、制御部243は、回転数フィードバック制御を行う。他船の対地速度情報を取得し、対地速度を他船と合わせる等の調整を行えば、他船との相対位置関係のみに基づいて他船との距離を保つ場合と比較して船舶の性能、各船の運転条件、外乱等の影響を受けにくくなる。
【0046】
制御装置201は、異なる運転条件に基づいて現在位置から目的値まで所定経路で航行した場合の燃費及び到着時間を表示部に表示させる。選択部215を用いて運転条件が選択されると、制御装置201は、選択された運転条件に基づいて舵機209及び推進力発生装置207を制御する。異なる運転条件とは、回転数フィードバック制御による運転、速度フィードバックによる運転、外乱を考慮して航路を維持する運転、速度を最優先にした運転、燃費を最優先にした運転等がある。
【0047】
操作者に、燃費を重視する燃費モード、船舶の運動性を重視する安全モード、又は最短の到着時刻で目的値まで航行する時間モードのいずれかを選択させるメッセージを表示部に表示させてもよい。燃費モードでは、制御部243は外乱によるエンジン負荷の変動を打ち消すように舵機209を制御する。
【0048】
燃費モードの別の例として、制御部243は出発値から現在位置までの距離、及び現在までの燃料消費量に基づいて速度と燃費の実績値を算出し、これら実績値を用いて目的値までの燃費及び到着時間を算出してもよい。制御部243は、実績値を加味して現在位置から目的値までの燃費、対地速度、及び到着時間を算出できる。このようなモードでは、予測が困難な外乱の影響を実績値内に含められるため、外乱の予測等を行わずにより正確な燃費を算出できる。現在位置から目的値までの気象状況、潮流等の外乱の影響を加味すれば、より正確な予測値を算出できる。
【0049】
安全モードでは、船舶の運動性を高めるために、例えば低速旋回時にはエンジンの出力を高めて旋回性能を向上させる。また、安全モードでは、海図上に従って進路を変更するための最適な推進力を算出し、算出した推進力に基づいて舵機209と推進力発生装置207を同時に制御してもよい。
【0050】
表示部に燃費を表示させてもよい。加速中には加速時の燃費を表示させ、エンジンを一定回転数で運転させているときには定速運転時の燃費を表示させる。運転状態に応じて表示させる燃費を変える。加速時の燃費としては、時間当たりの出力に対する燃料使用量(g/kWh)、又は式:加速度÷(瞬時燃料量-定常時燃料量)で求められる値がある。
【0051】
〔第3実施形態〕
船舶航行時には船舶を推進させるエネルギー、船舶を旋回させるエネルギー等、様々な場面でエネルギーが使用される。船舶航行時に必要とされるエネルギーを総合的に管理する技術は確立されていない。
【0052】
このような課題を解決するために、一態様における船舶制御装置は、
複数の推進力発生装置と、
複数の進行方向制御装置と、を備える船舶を制御するための制御装置であって、
目的地に到着すべき目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って目標時刻までに目的地に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、複数の推進力発生装置のうちの少なくとも1つの推進力発生装置、及び複数の進行方向制御装置のうちの少なくとも1つの進行方向制御装置の組み合わせによる消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる推進力発生装置及び進行方向制御装置を用いて船舶を推進させる推進制御部とを含む。
【0053】
また、一態様における船舶制御装置は、
推進力発生装置と、
複数の進行方向制御装置と、を備える船舶を制御するための制御装置であって、
目的地に船舶を到着させる目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って目標時刻までに目的値に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、複数の進行方向制御装置のうちの少なくとも1つの進行方向制御装置による消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる進行方向制御装置を用いて船舶の進行方向を制御する進行方向制御部とを含む。
【0054】
また、一態様における船舶制御装置は、
複数の推進力発生装置と、
進行方向制御装置と、を備える船舶制御装置であって、
目的地に船舶を到着させる目標時刻を取得する時刻取得部と、
オートパイロット制御時に目的位置までの指定航路に従って目標時刻までに目的値に到着するときの消費エネルギーを算出する算出部であって、複数の推進力発生装置のうちの少なくとも1つの推進力発生装置による消費エネルギーの合計を複数パターン算出する算出部と、
算出部で算出された複数パターンの中から最も消費エネルギーの少ないパターンに基づいて、当該パターンに含まれる推進力発生装置を用いて船舶を推進させる推進制御部とを含む。
【0055】
図4は、船舶のブロック図である。船舶300は、推進力発生装置301と、進行方向制御装置303と、制御装置305とを備える。推進力発生装置301は、エンジン、モータ、帆、可変ピッチプロペラのように船舶に推進力を与える複数の機構を含む。進行方向制御装置303は、舵機、サイドスラスタのように船舶の船頭の向きを変える複数の機構を含む。
【0056】
制御装置305は、算出部307と、制御部309と、時刻取得部311とを含む。時刻取得部311は、目的地に船舶を到着させる目標時刻を取得する。目標時刻は、操作者が入力した時刻である。算出部307は、オートパイロット制御時に、目的地までの指定航路に従って航行するときの消費エネルギーを算出する。より具体的には算出部307は、推進力発生装置301の複数の機構のそれぞれの消費エネルギー、及び進行方向制御装置303の複数の機構のそれぞれの消費エネルギーに関する情報を有する。消費エネルギーに関する情報は、理論値であってもよいし、過去の情報に基づいて統計的に得られた情報であってもよい。算出部307は、指定航路に従って航行したときの推進力発生装置301の複数の機構のうちの少なくとも1つの機構、及び進行方向制御装置303の複数の機構のうちの少なくとも1つの機構の組み合わせによる消費エネルギーの合計を複数パターン算出する。算出部307は、算出した複数パターンによる例えば算出部307は、エンジン及び舵機だけを用いて指定航路を航行したときの消費エネルギーの合計、及びエンジン、モータ、舵機、サイドスラスタを組み合わせて用いて指定航路を航行したときの消費エネルギーの合計を算出する。また、算出部307は、全ての組み合わせについて、航行速度を算出して目標時刻までに目的地に到着できない組み合わせと目的地に到着できる組み合わせとを区別する。なお、上述した複数のパターンでは、エンジン又はモータと、プロペラ(可変ピッチプロペラ又は固定ピッチプロペラ)とは常にセットで扱われる。換言すれば、上述の複数のパターンは、エンジンと可変ピッチプロペラ、エンジンと固定ピッチプロペラ、モータと可変ピッチプロペラ、又はモータと固定ピッチプロペラの組み合わせのいずれかを常に含む。組み合わせに可変ピッチプロペラを含む場合には、可変ピッチプロペラの翼角を制御したことによる消費ヘネルギーの変動を加味する。算出部307は、目標時刻までに目的地に到着できるすべての組み合わせについて消費エネルギーを算出する。算出部307は、風や潮流等の外乱に関する情報を加味してもよい。
【0057】
制御部309は、算出部307で算出された複数パターンの中から、目標時刻までに目的地に到着でき、かつ最も消費エネルギーの少ないパターンを選択し、選択したパターンに含まれる機構だけを用いて船舶を制御する。また、航路の途中で気象条件や潮流が変わることが予想される場合には、指定航路の途中まではエンジンを用いて進行し、それ以降は帆を用いて進行するというように使用する機構を切り替えてもよい。
【0058】
〔第4実施形態〕
従来、航行計画を立案するために潮流及び風のような外乱に関するデータを参照することが知られている。現在、多用されている潮流データ及び風速データはシミュレーションに基づくものである。
【0059】
外乱の実測値を収集するシステムについて要望が存在する。
【0060】
このような課題を解決するために、一態様における外乱データ収集システムは、
航行中の複数の船舶の対地船速、対水船速、船舶の位置情報、及び船舶の進行方向に関する情報を収集する情報収集部と、
情報収集部で収集した情報に基づき位置情報に対応する海域の外乱の速度、及び向きを算出する算出部とを備える。
【0061】
この場合において、
算出部の算出結果を、ネットワークを介して共有されている電子海図表示システムに送信する送信部を備えてもよい。
【0062】
図5は、外乱データ収集システムの概略構成図である。外乱データ収集システム400は、ネットワークを介して複数の船舶Sと接続されている。外乱データ収集システム400は、複数の船舶から対地船速、対水船速、船舶の位置情報、及び船舶の進行方向に関する情報を収集する情報収集部401と、情報収集部401で収集した情報に基づき位置情報に対応する海域の潮流及び風を含む外乱の速度影響、及び向きを算出する算出部403と、送信部405とを備える。
【0063】
図6は、船舶の概略上面図を示す。算出部403は、船舶の対地速度、対水速度、位置情報、及び進行方向から各船舶の周辺海域の外乱を算出する。外乱(一点鎖線で示す)は、対地速度及びその向きで示されるベクトル(実線で示す)、並びに対水速度及びその向きで示されるベクトル(破線で示す)の和として算出される。
【0064】
図5に戻り、送信部405は、各船舶の周辺海域の外乱を算出し算出結果を位置情報と関連付けて、電子海図表示システム407に送信する。電子海図表示システム407は、受信した情報を、図7に示すように電子海図上に表示する。これにより実測値に基づいた、より微小な海域の外乱データを共有できる。また、実測値に基づく外乱データを取得することで、外乱変化の予測精度も高められる。なお、各船舶への外乱影響は必ずしも同一ではない船舶毎に外乱影響度合いを示す独自の係数を定め、係数から外乱の大きさを逆算してもよい。
【0065】
〔第5実施形態〕
従来、潮流、風等の外乱の影響を加味して操舵制御を行うことが知られている。操舵角と旋回長は、潮流、風等の外乱の他に船舶の航行速度の影響を受けるため必ずしも比例しない。発明者等は、船舶の積載量が船体の推進抵抗に密接に関連し、これは旋回長にも影響を及ぼすという新たな着想を得た。
【0066】
このような課題を解決するために、一態様における旋回制御装置は、
船舶を旋回させるための舵機と、船舶の旋回方向及び旋回量を含む指令を出力する旋回指令部と、を備える船舶の旋回を制御するための旋回制御装置であって、
旋回指令部からの指令を取得する旋回指令取得部と、
船舶の推進抵抗を推定する推定部と、
推進抵抗が基準値と比較して増大する場合、指令に従って船舶を旋回させるための舵機の角度を示す目標舵角値を増やすように補正し、推進抵抗が基準値と比較して減少する場合、目標舵角値を減らすように補正する補正部と、
補正された目標舵角値に従って舵機を制御する舵機制御部と、を備える。
【0067】
この場合において、推定部は、第1のタイミング、及び第1のタイミングより後の第2のタイミングのそれぞれのタイミングで推進抵抗を推定し、舵機制御部は、第1のタイミングで推定した推進抵抗を基準値として、第2のタイミングで推定した推進抵抗と比較してもよい。
【0068】
この場合において、船舶の位置情報を取得する位置取得部と、
位置情報に基づいて船舶の入港及び出港を検知する検知部とを備え、
推定部は、第1のタイミングが船舶の入港前、第2のタイミングが船舶の出港後になるように検知部の検知結果に基づいて推進抵抗を推定してもよい。
【0069】
この場合において、推定部は、船舶の推進力と対水速度とに基づいて、推進抵抗を推定してもよい。
【0070】
この場合において、推定部は、舵角と推進力と方位の変化量、又は舵角と推進力と旋回半径に基づいて推進抵抗を推定してもよい。
【0071】
図8は、船舶のブロック図である。図8に示すように船舶500は、テレグラフ501と、旋回指令部としての操舵部503と、エンジン505と、舵機507と、制御装置509と、ガバナ511を備える。テレグラフ501には、操作者の制御によりエンジン505の目標回転数が入力される。操舵部503には、船舶の旋回方向及び旋回量を含む指令が入力される。操舵部503は、舵角指令を制御装置509に入力する。舵角指令は、手動により操作者が入力した値であってもよいし、オートパイロット制御に基づき決定された値でもよい。
【0072】
制御装置509は、推進抵抗を推定する推定部513と、目標舵角値を補正する補正部515と、舵角制御部517と、船舶の位置情報を取得する位置取得部519と、位置情報に基づいて船舶の入港及び出港を検知する検知部521とを備える。推定部513は、船舶の推進力と対水速度とに基づいて推進抵抗を推定する。推定部513は、舵角と推進力と方位の変化量、又は舵角と推進力と旋回半径に基づいて推進抵抗を推定してもよい。補正部515は、推進抵抗の増減に基づいて目標舵角値を補正する。具体的には補正部515は、推進抵抗が基準値と比較して増大する場合、指令に従って船舶500を旋回させるための舵機507の角度を示す目標舵角値を増やすように補正する。また補正部515は、推進抵抗が基準値と比較して減少する場合、目標舵角値を減らすように補正する。基準値は予め決定された値であり、過去の推進抵抗と目標舵角値に基づいて決定される。
【0073】
推定部513は、第1のタイミング、及び第1のタイミングより後の第2のタイミングのそれぞれのタイミングで推進抵抗を推定してもよい。この場合、制御装置509は、第1のタイミングで推定した推進抵抗を基準値として、第2のタイミングで推定した推進抵抗と比較する。また第1のタイミングは船舶が港湾に入る前であり、第2のタイミングは船舶が港湾を出た後である。これにより、入港後に積み荷の量が変化して船舶の推進抵抗が変化した場合でも、目標舵角値を適切に補正できる。
【0074】
舵角制御部517は、抵抗増加による応答性の変化を加味し、補正された舵角指令に基づいて舵機507を制御する。
【0075】
また舵角による運動性能、特に旋回半径は積み荷を含む船舶全体の質量の影響(慣性力の影響)を受ける。よって、燃料投入量の増加量から荷の積載による船舶全体の質量変化を算出し、舵角指令を補正するときに加味してもよい。
【0076】
〔第6実施形態〕
第5実施形態においても述べたように、従来、荷や燃料を積載したことにより船舶の運動性能が低下するという課題に対して、現段階では有用な解決策が提案されていない。運動性能の低下は、緊急事態等に退避航路を航行する場合に特に影響が大きい。
【0077】
このような課題を解決するために、一態様における旋回制御装置は、
船舶を旋回させるための舵機と、船舶の旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、を備える船舶の旋回を制御するための旋回制御装置であって、
現在位置を取得する位置取得部と、
舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
現在位置に応じて、舵角指令取得部で取得した舵角指令を補正する補正部と、
補正した舵角指令を舵機に送信する送信部とを備える。
【0078】
この場合において、
補正部は、現在位置が港湾であることを示す場合には、舵角指令を増加させるように補正する。
【0079】
図9は、船舶のブロック図である。旋回制御装置600は、位置取得部601と、舵角指令取得部603と、補正部605とを備える。船舶V6は、旋回制御装置600により制御される舵機607を備える。位置取得部601は、GPSの情報と電子海図の情報を用いて位置情報を取得する。位置情報は、現在位置が、航行速度が制限されている湾内等の所定区域であるかの情報を含む。舵角指令取得部603は、操舵角を示す舵角指令を取得する。舵角指令は、手動により操作者が入力した値であってもよいし、オートパイロット制御に基づき決定された値でもよい。
【0080】
補正部605は位置情報に基づき舵角指令を補正し、舵機607に出力する。例えば、港湾で燃料や荷物を積んだ直後には船舶の運動性能が低下する。また、港湾で補充した燃料の品質によっては、燃料使用量に対するエンジン出力が低下する場合がある。したがって補正部605は、港湾内のように急旋回を行う可能性がある海域では、船舶の運動性能が低下している前提で、入力された舵角指令を補正して増加させる。舵角指令の増加量は、予め決定された量であっても良いし、増加した重量を推定し重量に応じて決定された量であってもよい。補正部605は、一度決定した補正量を維持する必要はなく、時間の経過にしたがって補正量を漸減させてもよい。これにより運転性能が低下していると想定される場合でも、適切に退避運動を行える。
【0081】
補正部605は、位置情報に基づき外海等に出たと判断した場合には、舵角指令の補正を終了する。
【0082】
〔第7実施形態〕
船舶の旋回性能を向上させる技術を提案する。
【0083】
この課題を解決するために、一態様における旋回制御装置は、
主機と、
船舶を旋回させるための舵機と、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部と、
主機の出力指令を出力する出力指令部と、を備える船舶の旋回を制御するための旋回制御装置であって、
出力指令を取得する出力取得部と、
舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
主機の出力が出力閾値以上である場合には舵角指令を減少させ、主機の出力が出力閾値未満である場合には舵角指令を増加させる補正を行う補正部と、
補正した舵角指令を舵機に送信する送信部とを備える。
【0084】
図10は、船舶のブロック図である。旋回制御装置700は、推進力取得部701と、舵角指令取得部703と、補正部705と、送信部707とを備える。船舶V7は、旋回制御装置700に加えて舵機709と推進力発生装置711とを備える。旋回制御装置700は、算出した舵角補正値を船舶V7の舵機709に送信して舵角を制御する。
【0085】
推進力取得部701は、推進力発生装置711の推進力情報を取得する。推進力発生装置711は、推進力を発生させるエンジン713及び可変ピッチプロペラ715を含む。エンジン713の推進力情報はエンジン回転数であり、可変ピッチプロペラ715の推進力情報は翼角である。舵角指令取得部703は、操舵角を示す舵角指令を取得する。舵角指令は、手動により操作者が入力した値であってもよいし、オートパイロット制御に基づき決定された値でもよい。補正部705は、推進力発生装置711の推進力に応じて舵角指令を補正する。補正部705は、推進力発生装置711の推進力が大きい場合には舵角指令を減少させ、推進力発生装置711の推進力が小さい場合には舵角指令を増加させる。補正部705は、推進力発生装置711の推進力が推進力閾値以上であるか、推進力閾値未満であるかという判断に基づいて推進力が大きいか小さいかを判断する。舵角指令を補正する量は、定量であってもよいし、推進力発生装置711の推進力の量に応じて決定された量でもよい。補正部705が補正した舵角指令は、送信部707により舵機709に送信される。
【0086】
旋回性能が高い(推進力発生装置711の推進力が大きい)状況では舵角指令を少なくし、旋回性能が低い(推進力発生装置711の推進力が小さい)状況では舵角指令を大きくできる。これにより、安定した旋回性能を得られる。
【0087】
〔第8実施形態〕
船舶の旋回性能を向上させる技術を提案する。
【0088】
この課題を解決するために、一態様における旋回制御装置は、
舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
出力指令が入力される出力指令入力部と、
舵角指令が大きい場合には出力を増加させ、舵角指令が小さい場合には出力を減少させる補正を行う補正部とを備える。
【0089】
図11は、船舶のブロック図である。旋回制御装置800は、推進力指令入力部801と、舵角指令取得部803と、補正部805とを備える。また旋回制御装置800は船舶V8に備えられている。船舶V8は、舵機807と、推進力発生装置809とを備える。旋回制御装置800は、補正部805で算出した推進力を推進力発生装置809に供給して推進力を制御する。
【0090】
推進力指令入力部801には、テレグラフ等の入力装置から推進力発生装置809の推進力指令が入力される。推進力発生装置809は、推進力を発生させるエンジン811及び可変ピッチプロペラ813を含む。エンジン811の推進力指令はエンジン回転数であり、可変ピッチプロペラ813の推進力指令は翼角である。舵角指令取得部803は、操舵角を示す舵角指令を取得する。舵角指令は、手動により操作者が入力した値であってもよいし、オートパイロット制御に基づき決定された値でもよい。補正部805は、舵角指令に応じて推進力指令を補正する。補正部805は、舵角指令が大きい場合には推進力を増加させ、舵角指令が小さい場合には推進力を減少させる。補正部805は、舵角指令が舵角閾値以上であるか、舵角閾値未満であるかという判断に基づいて舵角指令が大きいか小さいかを判断する。推進力を補正する量は、定量であってもよいし、推進力発生装置809の推進力の量に応じて決定された量でもよい。
【0091】
舵角指令が大きい場合には、推進力発生装置809の推進力を増加させて旋回性能を向上させ、舵角指令が小さい場合には、推進力発生装置809の推進力を減少させて燃費を向上させる。これにより、安定した旋回性能を得られる。
【0092】
また、旋回制御装置800に船舶の現在の速度を取得する速度取得部を設け、速度に応じて舵角指令を補正してもよい。この場合、補正部は、速度が速度閾値以上である場合には舵角指令を減少させ、速度が速度閾値未満である場合には舵角指令を増加させる。
【0093】
また、同様の制御を用いて推進力を制御する推進力制御装置を構成してもよい。この場合、推進力制御装置は、推進力指令を出力する船舶の推進指令部から推進力指令取得部を備える。補正部は、舵角指令が大きい場合には推進力を増加させ、舵角指令が小さい場合には推進力を減少させる補正を行う。
【0094】
〔第9実施形態〕
船舶の旋回性能を向上させる技術を提案する。
【0095】
この課題を解決するために、一態様におけるバラスト制御装置は、
旋回方向及び旋回量を含む舵角指令を出力する舵角指令部を備える船舶のバラストを制御するバラスト制御装置であって、
左舷側のバラスト水量を調整する左舷バラスト調整部と、
右舷側のバラスト水量を調整する右舷バラスト調整部と、
舵角指令を取得する舵角指令取得部と、
舵角指令に基づいて左舷バラスト調整部と右舷バラスト調整部のうち旋回内側にある方の水量を、旋回外側にある方の水量よりも多くするようにバラスト水量を決定するバラスト決定部とを備える。
【0096】
図12は、船舶のブロック図である。バラスト制御装置900は、左右に配置され互いに独立した左舷バラストタンク901L、及び右舷バラストタンク901Rを備える船舶V9に適用される。船舶用制御システムは、左舷バラストタンク901L内の水量を調整する左舷バラスト調整部903Lと、右舷バラストタンク901R内の水量を調整する右舷バラスト調整部903Rとを備える。バラスト制御装置900は、舵角指令を取得する舵角指令取得部905と、左右のバラスト水量を決定するバラスト決定部907とを備える。舵角指令は、手動により操作者が入力した値であってもよいし、オートパイロット制御に基づき決定された値でもよい。
【0097】
バラスト決定部907は、舵角指令に基づき旋回内側にある方の水量を、旋回外側にある方の水量よりも多くするようにバラスト水量を決定する。バラスト水量を決定するにあたりバラスト決定部907は、現在のバラスト水量に基づいて一方のバラスト水量だけを調整して増減させたり、一方のバラスト水量を減らして他方のバラスト水量を増やしたりする。バラスト決定部907は、結果を左舷バラスト調整部903L及び右舷バラスト調整部903Rに出力する。
【0098】
図13図15は、船舶の正面図である。図13は、左舷バラストタンク901L、及び右舷バラストタンク901Rのバラスト水量が同一の状態を示す。図14は、右舷バラストタンク901Rのバラスト水量を増加させ、左舷バラストタンク901Lのバラスト水量を減少させた状態を示す。この状態では、右舷側に向けて船体が傾き右舷側に向けた旋回性能が高まる。図15は、左舷バラストタンク901Lのバラスト水量を増加させ、右舷バラストタンク901Rのバラスト水量を減少させた状態を示す。この状態では、左舷側に向けて船体が傾き船舶の左舷側に向けた旋回性能が高まる。
【0099】
バラスト決定部907は、オートパイロット制御時に指定航路を航行する場合、指定航路上の旋回地点に到達する前からバラスト量の調整を開始してもよい。
【0100】
なお、左舷バラストタンク901L、及び右舷バラストタンク901Rの調整量は、予定されている船速と旋回半径から算出できる。対地船速が速い場合、及び旋回半径が小さい場合、左舷バラストタンク901L、及び右舷バラストタンク901Rの水量の差を大きくする。
【0101】
〔第10実施形態〕
オートパイロット制御時に指定航路からの乖離量を減らす技術を提供する。
【0102】
このような課題を解決するために、一態様における進行方向制御装置は、
舵機を備える船舶の進行方向制御装置であって、
複数の通過点を結んで形成される指定航路を管理する指定航路管理部と、
指定航路上の進行方向に最も近くにあるn番目の通過点と、n+1番目の通過点との位置関係を加味してn番目の通過点を通過するときの船体の向きを決定する方向決定部と、
方向決定部で決定された向きに基づいて舵機を制御する舵角制御部とを備える。
【0103】
図16は、船舶のブロック図である。進行方向制御装置1000は、指定航路管理部1001と、姿勢決定部1003と、舵角制御部1005とを備える。指定航路管理部1001は、オートパイロット制御時に従うべき指定航路を記憶し、必要に応じて姿勢決定部1003が読み出せるようになっている。進行方向制御装置1000は、船舶V10の舵機1007を制御する。
【0104】
姿勢決定部1003は、指定航路に基づき船体の姿勢を決定する。本実施形態における船体の姿勢とは船首の向きをいう。図17は、指定航路の一例を示す。姿勢決定部1003は、進行方向上で最も近くにあるn番目の通過点と、n+1番目の通過点との位置関係に基づいてn番目の通過点を通過するときに船首がn+1番目の通過点を向くような舵角を決定する(破線で示す船S1)。n番目の通過点上で船首が完全にn+1番目の通過点を向いおらず、ある程度の誤差があってもよい。即ち、図17において一点鎖線で示すように、n番目の通過点に到達する前に、n+1番目に船首を向けるように舵角制御を開始していればよい(船S2)。
【0105】
〔第11実施形態〕
出港前に最適な船舶の姿勢を算出して、船舶の燃費を向上させるシステムを提供する。
【0106】
このような課題を解決するために、一態様において船舶姿勢算出システムは、
船舶が航海する航路中の所定の地点における海象情報及び気象情報の少なくともいずれか一方を取得する情報取得部と、
取得した情報に基づいて、所定の地点で発生する外乱による船体姿勢の変化を予測する予測部と、
予測された船体姿勢の変化を打ち消すための船舶の姿勢を推定する姿勢推定部と、
所定の地点で推定された船舶の姿勢となるように、船舶の荷室内の積み荷の配置を決定する配置決定部と、
決定された配置を操船者に報知する報知部と、を備える。
【0107】
この場合において、 情報取得部は、航路中の複数の地点における海象情報及び気象情報の少なくともいずれか一方を取得し、
予測部は、複数の地点の各地点での外乱による船体姿勢の変化を予測し、
推定部は、各地点での船体姿勢の変化を打ち消す姿勢を推定し、
推定部の推定結果に基づいて算出された外乱が無い状態での姿勢で航路を航海した場合の燃費を算出する算出部を更に備え、
配置決定部は、算出部の算出結果に基づき最も燃費が良い姿勢となるように積み荷の配置を決定するのがよい。
【0108】
図18は、船舶姿勢算出システムのブロック図である。船舶姿勢算出部システム1100は、情報取得部1101と、予測部1103と、姿勢推定部1105と、配置決定部1107と、報知部1109とを備える。船舶姿勢算出部システム1100は、船舶に荷を積み込む前に、船舶の最適な姿勢を算出し最適な荷の配置を出力する。
【0109】
情報取得部1101は、システム外部から予定航路上の所定の地点における海象情報及び気象情報を取得する。予測部1103は、海象情報及び気象情報に基づいて取得した情報に基づいて、所定の地点で発生する外乱による船体姿勢の変化を予測する。姿勢推定部1105は、予測した船体姿勢の変化を打ち消す船舶の姿勢を推定する。例えば、横風や潮流の影響により右舷側から左舷側に向けた外乱が強いと予測される場合には、姿勢推定部1105は、船舶の重心を右舷側に移動させる姿勢を算出する。また、外乱の影響がほとんどないと予測される場合には船舶の重心を維持する姿勢を算出する。配置決定部1107は、姿勢推定部1105の推定結果に基づいて船舶の荷室内の積み荷の配置を決定する。荷の総量や形状によっては、姿勢推定部1105で推定された姿勢を得られる配置が存在しない場合がある。このような場合、配置決定部1107は、無負荷状態での船舶の姿勢を姿勢推定部1105で推定された姿勢に近付ける配置を決定する。
【0110】
配置決定部1107の決定結果は、報知部1109に出力され、荷を積み込む際の指示として使用できる。
【0111】
〔第12実施形態〕
従来、船首の向きを変えるために舵を用いることが一般的であった。微小な角度で船首の向きを変える場合には、所望の向きが得られるまで繰り返し舵制御を行っており、燃費の低下を招いていた。
【0112】
第12実施形態は、燃費の悪化を抑制しながら微小な角度制御を行える舵制御装置を提供する。
【0113】
この課題を解決するために、一態様において旋回制御装置は、
船舶の両舷に独立して設けられ船舶の推進抵抗を低減させるための2つの推進抵抗低減部と、船舶の旋回方向及び旋回量を指令する旋回指令部と、を備える船舶の旋回を制御する旋回制御装置であって、
旋回指令部からの指令を取得する旋回指令取得部と、
旋回指令部から指令を受けたとき、旋回方向内側の推進抵抗の低減量を旋回方向外側の推進抵抗の低減量よりも小さくなるように2つの推進抵抗低減部を制御する抵抗制御部と、を備える。
【0114】
この場合において、
抵抗制御部は、船舶の舵機を制御する指令を出力する舵機指令出力部を備えてもよい。
【0115】
この構成により、抵抗制御装置と舵機を併用して舵角指令による舵角を実現しながら燃費の悪化を抑制できる。
【0116】
この場合において、
舵角指令が所定角度以上の場合、舵角制御部にのみ制御値を供給してもよい。
【0117】
この構成により、舵角指令が大きい場合に舵機のみで舵角を制御し、舵が切りきれなくなるのを抑制できる。
【0118】
この場合において、
船体抵抗情報を取得する抵抗情報取得部を備え、
旋回制御装置は、船体抵抗情報に基づいて第1抵抗制御装置及び第2抵抗制御装置に制御値を供給してもよい。
【0119】
この場合において、
2つの抵抗制御装置は、船底に泡を発生させる泡発生装置であってもよい。
【0120】
この場合において、
泡発生装置は、右舷側と左舷側のそれぞれに泡を排出するための複数の排出口を備え、泡排出量を、旋回外側の排出口からの排出量よりも少なくしてもよい。
【0121】
図19は、船舶のブロック図である。船舶1200は、旋回制御装置1201と、舵機1203とを備える。旋回制御装置1201は、左舷側に設けられた第1抵抗制御装置1205と、右舷側に設けられた第2抵抗制御装置1207と、舵機1203を制御する舵機制御部1209とを備える。第1抵抗制御装置1205及び第2抵抗制御装置1207は、抵抗制御部を構成する。第1抵抗制御装置1205及び第2抵抗制御装置1207は、船体の側面に配置され船体抵抗を減らすマイクロバブル発生装置により構成される。旋回制御装置1201は、舵角指令を取得する旋回指令取得部1211と、舵角指令に基づいて第1抵抗制御装置1205、第2抵抗制御装置1207、及び舵機制御部1209に制御値を供給する制御値供給部1213とを備える。
【0122】
第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207は、船体の片側の抵抗を減らして船体を旋回させるため、実現できる舵角の限界(第1舵角閾値という)が舵機1203で実現できる舵角の限界よりも小さい。制御値供給部1213は、舵角指令が舵角閾値未満の場合、第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207だけに制御値を供給し燃費を抑制しながら船体を旋回させる。舵角指令が舵角閾値以上の場合、制御値供給部1213は、舵角閾値に相当する角度分の旋回を第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207により実行させる。制御値供給部1213は、第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207で不足する角度分の旋回を舵機1203により実行させる。また、制御値供給部1213は、舵角指令が予め決定した量(第2舵角閾値という)以上である場合、本来の舵角指令に従って舵機1203を動かす。
【0123】
旋回制御装置1201は、船体抵抗情報を取得する船体抵抗情報取得部1215を備える。船体抵抗情報は、予め決定された値であってもよいし、風や潮流等の気象条件、喫水レベルや船体の総重量に基づく船体抵抗係数K1、及び第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207の性能に基づく係数K2に基づいて算出された値であってもよい。この点については後述する。
【0124】
図20は、旋回制御装置による制御処理を示すフロー図である。旋回指令取得部1211が旋回指令を取得すると一連の処理を開始する。ステップS11において制御値供給部1213は、旋回指令が第1旋回閾値未満であるかを判断する。旋回指令が第1旋回閾値未満である場合(ステップS11のY)、ステップS12において制御値供給部1213は、第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207に旋回指令に基づく制御値を供給し、第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207だけで船体を旋回させる。旋回指令が第1舵角閾値以上の場合(ステップS11のN)、ステップS13において制御値供給部1213は、旋回指令が第2旋回閾値未満であるかを判断する。旋回指令が第2舵角閾値未満の場合(ステップS13のY)、ステップS14において制御値供給部1213は、第1抵抗制御装置1205、又は第2抵抗制御装置1207の何れか一方、及び舵機制御部1209に制御値を供給する。舵角指令が第2舵角閾値以上の場合(ステップS13のN)、ステップS15において制御値供給部1213は、第1抵抗制御装置1205、又は第2抵抗制御装置1207に制御値を供給する。
【0125】
制御値供給部1213が第1抵抗制御装置1205、又は第2抵抗制御装置1207に供給する制御値を算出する方法を説明する。制御値供給部1213は、船体抵抗情報及び舵角指令を取得し、式:舵角指令=K1×K2×Δμを満たすよう、Δμを算出する。値Δμは、左舷の船体抵抗から右舷の船体抵抗を減じた値である。左舷側に船体を旋回させる場合には、不等式:Δμ≧0を満たすように左舷側の抵抗を右舷側の抵抗よりも大きくする。このとき第1抵抗制御装置1205だけを制御してもよいし、第1抵抗制御装置1205及び第2抵抗制御装置1207の両方を制御してもよい。両者を制御する場合、式:左舷の抵抗値=右舷の抵抗値+Δμを満たすように制御値を算出する。
【0126】
第1抵抗制御装置1205又は第2抵抗制御装置1207としてマクロバブル発生装置を採用する場合、マイクロバブル発生装置内でバブルの排出量を調整してもよい。
【0127】
図21は、マイクロバブル発生装置の概略構成図である。マイクロバブル発生装置1221は、船体中心線Lを挟んで船体の左右に配置される。マイクロバブル発生装置1221は、複数のバブル孔1223を備える。それぞれのバブル孔1223からバブルが放出される。左右のマイクロバブル発生装置1221は、独立して制御されるコンプレッサから空気が供給される。制御値供給部1213は、旋回内側のバブル孔1223のバブル排出量を、旋回外側のバブル孔1223のバブル排出量よりも少なくする。これにより、旋回内側の抵抗が、旋回外側の抵抗よりも高くなり旋回性を向上させられる。
【0128】
〔第13実施形態〕
船舶が加速する際の加速時の燃費を算出できる技術を提供する。
【0129】
この課題を解決するために、一態様において燃費算出装置は、
プロペラに回転動力を伝達する主機を備える船舶の燃費を算出する燃費算出装置であって、
第1船速から、第2船速に加速するときの加速度を算出する加速度算出部と、
算出した加速度が所定の値以上であるか否かを判断する判断部と、
第1のタイミングから第2のタイミングまでの所要時間、及び第1のタイミングから第2のタイミングまでの間に主機に投入された燃料投入量に基づいて、加速時の燃費を算出する算出部とを備える。
【0130】
図22は、燃費算出装置を備える船舶のブロック図である。船舶1300は、推進力発生装置1301と、燃費算出装置1303とを備える。推進力発生装置1301は、エンジン1305とプロペラ1307とを備える。燃費算出装置1303は、加速度算出部1309と、判断部1311と、算出部1313とを備える。
【0131】
加速度算出部1309は、第1船速から、第2船速に加速するときの単位時間当たりの速度の変化量から加速度を算出する。判断部1311は、算出した加速度が所定の値以上であるか否かを判断する。算出部1313は、第1のタイミングから第2のタイミングまでの所要時間、及び第1のタイミングから第2のタイミングまでの間にエンジン1305に投入された燃料投入量に基づいて、加速時の燃費を算出する。
【0132】
このように加速時の燃費を算出することで、目的地に到着するまでの燃費の算出精度を向上させられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
【手続補正書】
【提出日】2024-03-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロペラに回転動力を伝達する主機を備える船舶の燃費を算出する燃費算出装置であって、
第1船速から、第2船速に加速するときの加速度を算出する加速度算出部と、
前記算出した加速度が所定の値以上であるか否かを判断する判断部と、
第1のタイミングから第2のタイミングまでの所要時間、及び前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの間に前記主機に投入された燃料投入量に基づいて、加速時の燃費を算出する算出部とを備える燃費算出装置。
【請求項2】
プロペラに回転動力を伝達する主機と、
燃費算出装置とを備え、
前記燃費算出装置は、
第1船速から、第2船速に加速するときの加速度を算出する加速度算出部と、
前記算出した加速度が所定の値以上であるか否かを判断する判断部と、
第1のタイミングから第2のタイミングまでの所要時間、及び前記第1のタイミングから前記第2のタイミングまでの間に前記主機に投入された燃料投入量に基づいて、加速時の燃費を算出する算出部とを備える、船舶。