(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074891
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】回転翼機
(51)【国際特許分類】
B64U 50/23 20230101AFI20240524BHJP
B64U 10/16 20230101ALI20240524BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20240524BHJP
B64C 17/02 20060101ALI20240524BHJP
B64U 30/40 20230101ALI20240524BHJP
【FI】
B64U50/23
B64U10/16
B64U50/19
B64C17/02
B64U30/40
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059516
(22)【出願日】2024-04-02
(62)【分割の表示】P 2022527352の分割
【原出願日】2020-05-27
(71)【出願人】
【識別番号】517331376
【氏名又は名称】株式会社エアロネクスト
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 陽一
(57)【要約】
【課題】回転翼機の巡航における運用の効率性を向上させること
【解決手段】本開示による回転翼機1は、本体2と、本体2に備えられ、ロータ4の各々を回転させるための複数のモータ3と、を備え、基準面に対して略平行である一の進行方向に対して本体2が傾斜して進行方向に飛行する際に、複数のモータ3の各々の回転速度が略同一である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に備えられ、ロータの各々を回転させるための複数のモータと、
を備える回転翼機であって、
基準面に対して略平行である一の進行方向に対して前記本体が傾斜して前記進行方向に飛行する際に、前記複数のモータの各々の回転速度が略同一である、回転翼機。
【請求項2】
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて、
前記回転翼機への揚力を発生させる揚力発生領域よりも下側であり、
前記本体の中央位置より前記進行方向側である、請求項1に記載の回転翼機。
【請求項3】
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて、
前記回転翼機への揚力を発生させる揚力発生領域に含まれ、
前記本体の中央位置に位置する、請求項1に記載の回転翼機。
【請求項4】
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて、
前記回転翼機への揚力を発生させる揚力発生領域よりも上側であり、
前記本体の中央位置より前記進行方向とは反対側である、請求項1に記載の回転翼機。
【請求項5】
前記本体は、
少なくとも前記進行方向に沿って並行して設けられるフレームにより形成される、
請求項1~4のいずれか1項に記載の回転翼機。
【請求項6】
前記本体に搭載される搭載部をさらに備え、
前記フレームは、中央に被囲空間を形成し、
前記搭載部は、前記被囲空間に設けられる、
請求項5に記載の回転翼機。
【請求項7】
前記複数のモータは、前記進行方向に沿って、前方のモータと後方のモータとを含み、
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて前記本体の中央位置より前記進行方向側である場合に、
前記被囲空間を形成するフレームの部分の、前記進行方向に対して側方からみた中心位置を基準位置として、前記進行方向に対して側方からみた場合の、前記前方のモータと前記基準位置との距離は、前記後方のモータと前記基準位置との距離よりも長い、
請求項6に記載の回転翼機。
【請求項8】
前記本体に取り付けられ、前記飛行時において、前記ロータとは異なる揚力を発生させる空力部材をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の回転翼機。
【請求項9】
前記空力部材は、前記進行方向および上下方向からなる面において翼断面を有する翼を含む、請求項8に記載の回転翼機。
【請求項10】
前記翼は、前記進行方向に対して側方からみて、前記本体の中央位置より前記進行方向に沿って後方側に設けられる、請求項9に記載の回転翼機。
【請求項11】
前記翼は、前記進行方向に対して側方からみて、前記いずれのモータよりも前記進行方向に沿って後方側に設けられる、請求項10に記載の回転翼機。
【請求項12】
前記複数のモータのいずれかは、少なくともピッチ軸まわりに回転可能に設けられる、請求項1~11のいずれか1項に記載の回転翼機。
【請求項13】
前記複数のモータは、前記進行方向に沿って、前方のモータと後方のモータとを含み、
前記前方のモータは、ピッチ軸まわりに回転可能に設けられる、請求項12に記載の回転翼機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、回転翼機に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な用途に利用されるドローン(Drone)や無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)などの飛行体(以下、単に「飛行体」と総称する)を利用したサービスの利用の場が広がっている。このうち、ロータにより揚力を得る回転翼機に注目が集まっている。様々な産業における回転翼機等の飛行体の活用に際し、運用効率のよい機体が求められている。
【0003】
このような無人飛行体として、例えば、特許文献1には、揚力の中心と接続部の中心、および無人飛行体の重心を所定の位置とする無人飛行体について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転翼機のさらなる応用においては、回転翼機の長時間の巡航や、運用コストの低減が求められる。すなわち、このような回転翼機の運用効率をさらに改善することが求められている。
【0006】
そこで、本開示は上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、回転翼機の巡航における運用の効率性を向上させることが可能である回転翼機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示によれば、本体と、前記本体に備えられ、ロータの各々を回転させるための複数のモータと、を備える回転翼機であって、基準面に対して略平行である一の進行方向に対して前記本体が傾斜して前記進行方向に飛行する際に、前記複数のモータの各々の回転速度が略同一である、回転翼機が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転翼機の巡航における運用の効率性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る回転翼機1の構成の一例を示す斜視図である
【
図2】同実施形態に係る回転翼機1の構成の一例を示す平面図である。
【
図3】同実施形態に係る回転翼機1の構成の一例を示す側面図である。
【
図4】同実施形態に係る回転翼機1の巡航時における飛行態様の一例を示す図である。
【
図5】同実施形態の第1の変形例に係る回転翼機10の構成の一例を示す側面図である。
【
図6】同変形例に係る回転翼機10の巡航時における飛行態様の一例を示す図である。
【
図7】同実施形態の第2の変形例に係る回転翼機11の構成の一例を示す側面図である。
【
図8】同変形例に係る回転翼機11の巡航時における飛行態様の一例を示す図である。
【
図9】本開示の第2の実施形態に係る回転翼機12の構成の一例を示す側面図である。
【
図10】本開示の第3の実施形態に係る回転翼機13の構成の一例を示す側面図である。
【
図11】本開示の第4の実施形態に係る回転翼機14の構成の一例を示す側面図である。
【
図12】本開示の第5の実施形態に係る回転翼機15の構成の一例を示す側面図である。
【
図13】本開示の一実施形態に係る回転翼機の機能構成の一例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0011】
まず、本開示の第1の実施形態について、図面を参照しながら説明する。ここでは、説明を容易にするため小型の無人回転翼機を用いるが、かかる無人回転翼機はあくまで例示に過ぎず、飛行体の形態を限定するものではない。例えば、回転翼機は、有人機または無人機であり得る。
【0012】
図1は、本開示の第1の実施形態に係る回転翼機1の構成の一例を示す斜視図である。また、
図2は、本実施形態に係る回転翼機1の構成の一例を示す平面図である。また、
図3は、本実施形態に係る回転翼機1の構成の一例を示す側面図である。なお、本明細書において、方向Fは回転翼機1の前後方向(+方向は前方、-方向は後方)、方向Wは回転翼機1の幅方向、方向Hは回転翼機1の高さ方向を意味する。なお、方向Fの+方向は、回転翼機1の巡航時における進行方向を意味する。巡航とは、回転翼機1が空中において少なくとも水平方向を含む成分方向に沿って飛行している状態を意味する。進行方向はこのうち、水平方向の成分における方向を意味する。また、基準面とは、例えば地面や水面などの水平方向に延在する面を意味する。つまり、進行方向は、この基準面に略平行である方向である。
【0013】
図1~
図3に示すように、本実施形態に係る回転翼機1は、本体2と、モータ3(3A、3B、3C)と、ロータ4(4A、4B、4C)と、搭載部5と、を備える。
【0014】
本実施形態に係る本体2は、複数のフレーム2A、2B、2Cと、脚部2Dと、回転翼機1の飛行を制御するための不図示のフライトコントローラを搭載するための基台2Eと、により構成される。フレーム2A、2Aは、回転翼機1の前後方向(進行方向)Fに伸びて設けられる。フレーム2A、2Aは、並行して設けられる。フレーム2A、2Aの前端部および後端部には、モータ3A、3Aおよびモータ3B、3Bがそれぞれ設けられる。フレーム2B、2Bは、フレーム2A、2Aの中央付近において、フレーム2A、2Aを架け渡すように、幅方向Wに沿って設けられる。フレーム2A、2Aとフレーム2B、2Bとは、複数の接続点6において接続される。フレーム2A、2A、2B、2Bおよび複数の接続点6により囲まれる空間は、被囲空間SSである。被囲空間SSは、フレームにより形成される。被囲空間SSには、例えば搭載部5の少なくとも一部が設けられることもある。
【0015】
フレーム2C、2Cは、フレーム2A、2Aと接続され、幅方向外側に伸びて設けられる。フレーム2C、2Cのフレーム2A、2Aとは反対側の端部には、それぞれモータ3C、3Cがそれぞれ設けられる。脚部2D、2Dは、フレーム2A、2Aに接続して設けられる。かかる脚部2Dは、フレーム2B、2Bまたはフレーム2C、2Cのいずれかであってもよい。また、脚部2Dは設けられなくてもよい。基台2Eは、例えば、フレーム2B、2Bを架け渡すように設けられる。かかる基台2Eは、例えば、搭載部5を支持するために設けられ得る。なお、搭載部5は、基台2E以外の本体2の部分において支持されてもよい。例えば、搭載部5の一部または全部は、フレーム2Aと一体となって設けられていてもよい。
【0016】
モータ3は、ロータ4を回転させるための駆動力を供給する。モータ3は、バッテリ5Bから不図示のフライトコントローラの制御によりエネルギを取得する。設けられるモータ3の数および位置は特に限定されない。本実施形態においては、前方のモータ3A、3A、後方のモータ3B、3Bおよび側方のモータ3C、3Cが設けられる。なお、モータ3の構造や種類は特に限定されない。また、モータ3は、不図示のモータマウントにより本体2に接続され得る。
【0017】
ロータ4は、モータ3に設けられ、回転翼機1の揚力および推力を得るための機構である。ロータ4は、例えばプロペラ形状の回転翼である。設けられるロータ4の数および位置は、特に限定されず、例えば、設けられるモータ3の数および位置に応じて決定され得る。また、ロータ4の各々に設けられる羽根の数は特に限定されない。例えば、ロータ4は、二重反転プロペラ等であってもよい。本実施形態においては、前方のロータ4A、4A、後方のロータ4B、4Bおよび側方のロータ4C、4Cが設けられる。
【0018】
搭載部5は、本体2に搭載するパーツである。搭載部5は、例えば、筐体5Aおよびバッテリ5Bを含みうる。なお、本実施形態において筐体5Aは、荷物等を配送するためのケースの一例として説明されるが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、搭載部5は、カメラ、構造物の点検等を行うためのセンサおよびアクチュエータ、その他本体2に搭載可能である物体を含んでよい。また、搭載部5を構成する物体は単数または複数であってもよい。バッテリ5Bは、エネルギ源の一例であり、モータ3等に電力を供給し得る。バッテリ5Bの種類は特に限定されない。また、このようなエネルギ源としては、バッテリのような電池以外の態様であってもよい。また、これらの搭載部5は、本体2と変位可能に接続されて設けられてもよいし、本体2に固定されて設けられてもよい。
【0019】
次に
図3を参照すると、本実施形態に係る回転翼機1の重心G1は、進行方向(前後方向)Fに対して側方(つまり幅方向W)からみて、本体2の揚力発生領域L1よりも下方であり、かつ、本体2の中央位置C1より前方側である。ここで、本実施形態に係る回転翼機1の重心G1とは、本体2と搭載部5(バッテリ5Bを含む)との重心G1を意味する。また、揚力発生領域L1は、本実施形態に係る回転翼機1においては、各ロータ4の羽根の幅(
図3における高さ方向Hに沿った長さ)に含まれる領域である。この揚力発生領域L1において、ロータ4の各々の平面視における位置に基づいて揚力発生中心点(揚力中心)L2が存在し得る。揚力中心L2は、ロータ4の各々の出力が略同一である場合に、ロータ4の各々の平面視における幾何的な中心位置に存在する。
【0020】
なお、例えば、ロータ4の各々がプッシュ型およびプル型の混合形式により設けられていたり、段違いに設けられている場合は、揚力発生領域L1は、以下のように定義できる。まず、モータ3の各々の回転軸における、ロータ4の羽根の幅方向(回転翼機1における高さ方向H)の上端および下端の位置を得る。各回転軸における上端の位置のそれぞれに対応する点群により得られる最小二乗平面と、各回転軸における下端の位置のそれぞれに対応する点群により得られる最小二乗平面とに挟まれる空間が、揚力発生領域L1として定義できる。この場合における揚力中心L2の位置は、上述したケースと同様である。
【0021】
また、本体2の中央位置C1とは、本体2の前後方向Fにおける前端と後端との間における中央にあたる位置を意味する。
【0022】
図4は、本実施形態に係る回転翼機1の巡航時における飛行態様の一例を示す図である。
図4に示す回転翼機1は、進行方向Fに対して傾斜して、進行方向Fに飛行している状態である。回転翼機1の進行方向Fは、本体2の前後方向Fである。このとき、回転翼機1の重心G1が、揚力発生領域L1より下方であり、かつ中央位置C1よりも進行方向側(前方側)である。
【0023】
かかる姿勢で巡航する場合、高さ方向Hへの揚力を発生させる中心である揚力中心L2と重心G1との位置関係から、回転翼機1に対して発生し得るピッチモーメントによるモータ3への負荷のばらつきが低減される。そのため、前方のロータ4Aにより発生させる揚力F1と、後方のロータ4Bにより発生させる揚力F2とが、回転翼機1が進行方向Fに対して傾斜した状態において、一致する状態を得ることができる。そうすると、モータ3Aとモータ3Bの回転数は略一致する。
【0024】
なお、かかる重心G1の位置を考慮しない従来の回転翼機においては、回転翼機の巡航のために回転翼機を傾斜させる必要があることから、回転翼機の後方を持ち上げ、前方を下げる必要がある。この場合は、後方のロータの揚力は前方のロータの揚力は大きくする必要がある。そうすると、後方のモータの回転数は大きくなり、前方のロータの回転数は小さくなる。このように、モータの回転数のばらつきが生じ得る。
【0025】
本実施形態に係る回転翼機1においては、巡航時において進行方向Fに回転翼機1を傾斜させた場合に、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bの回転数とをほぼ等しくさせることができる。これにより、巡航時におけるモータの回転数の差によるバッテリの消費量(つまりエネルギ消費量)のばらつきを抑えることができる。これにより、例えば、巡航時間をさらに伸ばすことができる。また、モータへの負荷も均質化することができ、モータの運用をより効率よく行うことができる。したがって、回転翼機の巡航における運用の効率性を向上させることが可能となる。
【0026】
なお、搭載部5の筐体5Aやバッテリ5Bが、本体2に対して設けられる位置は、特に限定されない。上述した重心G1の位置を設定することができれば、搭載部5の設置位置、大きさ、重量および態様は特に限定されない。
【0027】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
図5は、本実施形態の第1の変形例に係る回転翼機10の構成の一例を示す側面図である。本変形例においては、進行方向F(前後方向)に対して側方からみて、回転翼機10の重心G2の位置が、揚力発生領域L1に含まれ、かつ、本体2の中央位置C1に位置する。重心G2の位置は、揚力中心L2とほぼほぼ一致し得る。かかる重心G2の位置は、例えば、本体2の構成や、搭載部50の内容物や設置位置等を調整することで変更され得る。回転翼機10のその他の構成については、上記実施形態と同様である。なお、「本体2の中央位置C1に位置する」は、中央位置C1と略一致していることを意味する。略一致するとは、前後方向Fにおいて、中央位置C1から前後3cm以内に重心G2が位置することを意味する。
【0028】
図6は、本変形例に係る回転翼機10の巡航時における飛行態様の一例を示す図である。回転翼機10の進行方向Fに対する傾斜が一定となった状態で飛行している場合、重心G2まわりのモーメントが生じにくいため、前方のロータ4Aと後方のロータ4Aとが発生させる揚力F1、F2は略同一である。そのため、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bの回転数とをほぼ等しくさせることができる。これにより、巡航時におけるモータの回転数の差によるバッテリの消費量のばらつきを抑えることができる。
【0029】
図7は、本実施形態の第2の変形例に係る回転翼機11の構成の一例を示す側面図である。本変形例においては、進行方向F(前後方向)に対して側方からみて、回転翼機11の重心G3の位置が、揚力発生領域L1よりも上側であり、かつ、本体2の中央位置C1より進行方向Fとは反対側(すなわち後側)である。回転翼機11のその他の構成については、上記実施形態と同様である。なお、搭載部51は、本体2の上部に設けられているが、搭載部51の設置位置は特に限定されない。
【0030】
図8は、本変形例に係る回転翼機11の巡航時における飛行態様の一例を示す図である。回転翼機11の進行方向Fに対する傾斜が一定となった状態で飛行している場合、高さ方向Hへの揚力を発生させる中心である揚力中心L2と重心G3ととの位置関係から、回転翼機1に対して発生し得るピッチモーメントによるモータ3への負荷のばらつきが低減される。そのため、前方のロータ4Aにより発生させる揚力F1と、後方のロータ4Bにより発生させる揚力F2とが、回転翼機1が進行方向Fに対して傾斜した状態において、一致する状態を得ることができる。そうすると、モータ3Aとモータ3Bの回転数は略一致する。
【0031】
このように、回転翼機1の重心の位置を上述したような位置とすることで、回転翼機1の巡航において、モータ3の各々の回転数を平均化することができる。これにより、モータ3による出力やそれに伴う影響のばらつきを抑えることができる。よって、回転翼機1の長距離の飛行等における運用をより効率化することが可能となる。
【0032】
次に、本開示の第2の実施形態について説明する。
図9は、本開示の第2の実施形態に係る回転翼機12の構成の一例を示す側面図である。本実施形態に係る回転翼機12は、第1の実施形態に係る回転翼機1とは異なり、搭載部52としてバッテリ5Bが本体2に搭載されている。その余の部分については、第1の実施形態に係る回転翼機1と同様である。回転翼機12の重心G4は、本体2とバッテリ5Bとの重心である。
【0033】
図9に示すように、重心G4の位置が、揚力発生領域L1に含まれ、かつ、本体2の中央位置C1に位置する。重心G4の位置は、揚力中心L2とほぼほぼ一致し得る。この場合、第1の実施形態の第1の変形例と同様に、回転翼機12の進行方向Fに対する傾斜が一定となった状態で飛行している場合、重心G4まわりのモーメントが生じにくいため、前方のロータ4Aと後方のロータ4Aとが発生させる揚力F1、F2は略同一である。そのため、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bの回転数とをほぼ等しくさせることができる。
【0034】
かかる回転翼機12には、別途荷物等を搭載する筐体や、カメラ、センサまたはアクチュエータ等が適宜搭載されてもよい。この場合、これらの搭載物は、本体2と接続して設けられ得る。また、搭載物は、本体2と変位可能に接続されて設けられてもよいし、本体2に固定されて設けられてもよい。例えば、搭載物が本体2と変位可能に接続されている場合、搭載物の重心の位置を制御することができる。そのため、本体2とバッテリ5Bの重心G4(すなわち回転翼機12の重心)の位置と搭載物の重心の位置とは別々に制御することができる。よって、搭載物の種類や形状等に関わらず、モータ3の各々の回転数の平均化を達成することができる。
【0035】
次に、本開示の第3の実施形態について説明する。
図10は、本開示の第3の実施形態に係る回転翼機13の構成の一例を示す側面図である。本実施形態に係る回転翼機13は、第1の実施形態に係る回転翼機1とは異なり、フレーム2Aの後側のアームの長さが、前側のアームの長さより短い。
【0036】
詳細に説明すると、まず、本実施形態に係る回転翼機13の重心(すなわち、本体2と搭載部5の一例であるバッテリ5Bの重心)G5は、本体2の中央位置C2よりも進行方向Fに対して側方からみて進行方向側にある。また、重心G5は、揚力発生領域L1よりも下方また、被囲空間SSを形成するフレーム2Aの部分(接続点6、6の間の部分)の、進行方向Fに対して側方からみた中心位置を基準位置C3として、前方のモータ3Aと基準位置C3との距離D1は、後方のモータ3Aと基準位置C3との距離D2よりも長い。
【0037】
このような非対称な本体2の構成においても、同様に、回転翼機13の巡航時における傾斜姿勢において、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bとの回転数を平均化することができる。
【0038】
次に、本開示の第4の実施形態について説明する。
図11は、本開示の第4の実施形態に係る回転翼機14の構成の一例を示す側面図である。本実施形態に係る回転翼機14は、第1の実施形態に係る回転翼機1の本体2から後方にかけてフレーム2Fが設けられ、フレーム2Fには空力パーツの一例である翼7が設けられる。フレーム2Fは、例えば後側のフレーム2Bに接続され、進行方向Fに沿って後方に伸び得る。翼7は、固定翼または動翼であり得る。
【0039】
翼7は、回転翼機14の巡航時において進行方向Fに対して傾斜するときに、前方からの気流を受けて揚力を生じ得るように設けられる。回転翼機14に対する揚力を翼7により生じさせることで、回転翼機14の後方に揚力を追加することができる。そうすると、後方のモータ3Bによる負荷を低減させることができる。これにより、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bとの回転数を平均化することができる。なお翼7が動翼であれば、揚力の大きさを調整することができる。そうすると、任意のピッチ角の傾斜の状態であっても、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bとの回転数を平均化することができる。
【0040】
なお、翼7が取り付けられる位置は特に限定されないが、翼7は、進行方向Fに対して側方からみて、本体2の中央位置C1(フレーム2Aの前端と後端との間の中央)より進行方向Fに沿って後方側に設けられることが好ましい。後方側において揚力を得ることにより回転数の平均化の効果が得られやすい。さらに、翼7は、いずれのモータ3よりも進行方向Fに沿って後方側に設けられることが好ましい。これにより、回転翼機14にかかるピッチモーメントの影響をより抑えることができる。
【0041】
次に、本開示の第5の実施形態について説明する。
図12は、本開示の第5の実施形態に係る回転翼機15の構成の一例を示す側面図である。本実施形態に係る回転翼機15においては、前方のモータ3Aがピッチ軸回りP1に回転可能に設けられる。ピッチ軸回りP1の回転可能な範囲は特に限定されない。
【0042】
かかる構成によれば、回転翼機15の巡航時において、前方のモータ3Aがピッチ軸回りに前方に傾けることができる。そうすると、前方のロータ4Aと後方のロータ4Bとにより発生する揚力のベクトルのうち、進行方向Fの成分と高さ方向Hの成分を異ならせることができる。そうすると、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bの回転数が一致している(つまり得られる揚力の大きさが一致している)場合であっても、回転翼機15が進行方向Fに対して傾斜した状態を維持することができる。すなわち、前方のモータ3Aと後方のモータ3Bの回転数を平均化しながら、進行方向Fに飛行することができる。
【0043】
なお、
図12に示す例では、前方のモータ3Aがピッチ軸回りに回転可能に設けられるとしたが、本技術はかかる例に限定されない。例えば、後方のモータ3Bや、側方のモータ3Cなど、他のモータもピッチ軸回りに回転可能に設けられてもよい。また、各モータ3は、ピッチ軸回りに加えて、ロール軸回りまたはヨー軸回りにも回転可能に設けられてもよい。
【0044】
以上、本開示の複数の実施形態に係る回転翼機について説明した。なお、上記の実施形態はあくまでも本開示の一例であり、各実施形態に開示された回転翼機の構造に本技術は限定されない。また、上記の複数の実施形態に開示した構成は適宜組み合わせ可能である。例えば、重心位置の制御に加えて、上述した翼やモータのピッチ軸回りの回転機構等を適用して、モータの回転数の平均化を図ることも可能である。
【0045】
図13は、本開示の一実施形態に係る回転翼機の機能構成の一例を示すブロック図である。
図13に示すように、一実施形態に係る回転翼機1は、本体2において、モータ3,プロペラ(ロータ)4、バッテリ5Bに加えて、フライトコントローラ21、カメラ/センサ類22、ジンバル23、ESC24および送受信部25を備え得る。
【0046】
フライトコントローラ21は、プログラマブルプロセッサ(例えば、中央演算処理装置(CPU))などの1つ以上のプロセッサを有することができる。
【0047】
フライトコントローラ21は、図示しないメモリを有しており、当該メモリにアクセス可能である。メモリは、1つ以上のステップを行うためにフライトコントローラが実行可能であるロジック、コード、および/またはプログラム命令を記憶している。
【0048】
メモリは、例えば、SDカードやランダムアクセスメモリ(RAM)などの分離可能な媒体または外部の記憶装置を含んでいてもよい。カメラ/センサ類22から取得したデータは、メモリに直接に伝達されかつ記憶されてもよい。例えば、カメラ等で撮影した静止画・動画データが内蔵メモリ又は外部メモリに記録される。
【0049】
フライトコントローラ21は、飛行体の状態を制御するように構成された制御モジュールを含んでいる。例えば、制御モジュールは、6自由度(並進運動x、y及びz、並びに回転運動θx、θy及びθz)を有する飛行体の空間的配置、速度、および/または加速度を調整するために飛行体の推進機構(モータ3等)をESC(Electric Speed Controller)24を介して制御する。制御モジュールは、搭載部、センサ類の状態のうちの1つ以上を制御することができる。
【0050】
フライトコントローラ21は、1つ以上の外部のデバイス(例えば、端末、表示装置、または他の遠隔の制御器)からのデータを送信および/または受け取るように構成された送受信部25と通信可能である。送受信機(プロポ)26は、有線通信または無線通信などの任意の適当な通信手段を使用することができる。
【0051】
例えば、送受信部25は、ローカルエリアネットワーク(LAN)、ワイドエリアネットワーク(WAN)、赤外線、無線、WiFi、ポイントツーポイント(P2P)ネットワーク、電気通信ネットワーク、クラウド通信などのうちの1つ以上を利用することができる。
【0052】
送受信部25は、カメラ/センサ類22で取得したデータ、フライトコントローラ21が生成した処理結果、所定の制御データ、端末または遠隔の制御器からのユーザコマンドなどのうちの1つ以上を送信および/または受け取ることができる。
【0053】
本実施の形態によるカメラ/センサ類22は、慣性センサ(加速度センサ、ジャイロセンサ)、GPSセンサ、近接センサ(例えば、ライダー)、またはビジョン/イメージセンサ(例えば、カメラ)を含み得る。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本開示の好適な実施形態について詳細に説明したが、本開示の技術的範囲はかかる例に限定されない。本開示の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
また、本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本開示に係る技術は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0056】
なお、以下のような構成も本開示の技術的範囲に属する。
(項目1)
本体と、
前記本体に備えられ、ロータの各々を回転させるための複数のモータと、
を備える回転翼機であって、
基準面に対して略平行である一の進行方向に対して前記本体が傾斜して前記進行方向に飛行する際に、前記複数のモータの各々の回転速度が略同一である、回転翼機。
(項目2)
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて、
前記回転翼機への揚力を発生させる揚力発生領域よりも下側であり、
前記本体の中央位置より前記進行方向側である、項目1に記載の回転翼機。
(項目3)
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて、
前記回転翼機への揚力を発生させる揚力発生領域に含まれ、
前記本体の中央位置に位置する、項目1に記載の回転翼機。
(項目4)
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて、
前記回転翼機への揚力を発生させる揚力発生領域よりも上側であり、
前記本体の中央位置より前記進行方向とは反対側である、項目1に記載の回転翼機。
(項目5)
前記本体は、
少なくとも前記進行方向に沿って並行して設けられるフレームにより形成される、
項目1~4のいずれか1項に記載の回転翼機。
(項目6)
前記本体に搭載される搭載部をさらに備え、
前記フレームは、中央に被囲空間を形成し、
前記搭載部は、前記被囲空間に設けられる、
項目5に記載の回転翼機。
(項目7)
前記複数のモータは、前記進行方向に沿って、前方のモータと後方のモータとを含み、
前記回転翼機の重心の位置は、前記進行方向に対して側方からみて前記本体の中央位置より前記進行方向側である場合に、
前記被囲空間を形成するフレームの部分の、前記進行方向に対して側方からみた中心位置を基準位置として、前記進行方向に対して側方からみた場合の、前記前方のモータと前記基準位置との距離は、前記後方のモータと前記基準位置との距離よりも長い、
項目6に記載の回転翼機。
(項目8)
前記本体に取り付けられ、前記飛行時において、前記ロータとは異なる揚力を発生させる空力部材をさらに備える、項目1~7のいずれか1項に記載の回転翼機。
(項目9)
前記空力部材は、前記進行方向および上下方向からなる面において翼断面を有する翼を含む、項目8に記載の回転翼機。
(項目10)
前記翼は、前記進行方向に対して側方からみて、前記本体の中央位置より前記進行方向に沿って後方側に設けられる、項目9に記載の回転翼機。
(項目11)
前記翼は、前記進行方向に対して側方からみて、前記いずれのモータよりも前記進行方向に沿って後方側に設けられる、項目10に記載の回転翼機。
(項目12)
前記複数のモータのいずれかは、少なくともピッチ軸まわりに回転可能に設けられる、項目1~11のいずれか1項に記載の回転翼機。
(項目13)
前記複数のモータは、前記進行方向に沿って、前方のモータと後方のモータとを含み、
前記前方のモータは、ピッチ軸まわりに回転可能に設けられる、項目12に記載の回転翼機。
【符号の説明】
【0057】
1 回転翼機
2 本体
2A、2B フレーム
3A 前方のモータ
3B 後方のモータ
4A 前方のロータ
4B 後方のロータ
5 搭載部
5A 筐体
5B バッテリ
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
前記本体に備えられ、ロータの各々を回転させるための複数のモータと、
を備える回転翼機であって、
基準面に対して略平行である一の進行方向に対して前記本体が傾斜して前記進行方向に飛行する際に、前記複数のモータの各々の回転速度が略同一である、回転翼機。