(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074913
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】高電力電気モータを制御するための制御装置及び方法
(51)【国際特許分類】
H02P 27/04 20160101AFI20240524BHJP
【FI】
H02P27/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060246
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2022554380の分割
【原出願日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】102020000005371
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】514165990
【氏名又は名称】ダニエリ オートメーション ソシエタ ペル アチオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アルデシ、アレッサンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ムスカルネラ、ジュゼッペ
(57)【要約】
【課題】改良された高電力電気モータを制御するための制御装置及び関連の方法を提供する。
【解決手段】制御装置(10)が、プログラマブル電子制御ユニット(22)によって制御される選択手段(21)を備える制御回路(20)と、を備える。プログラマブル制御ユニット(22)は、トルク、回転速度、吸収電流、又はモータ温度の1つ又は複数を検出するのに適したセンサを備える1つ又は複数の検出デバイス(25)によってフィードバック信号を受信するように構成される。選択手段(21)が、好ましくは複数のサイリスタ(24)を備える反転回路又はインバータ(23)を備え、制御回路(20)は、インバータ(23)及びプログラマブル電子制御ユニット(22)によって、電気モータ(12)の電力、トルク及び回転速度の制御パラメータを能動的に管理するように構成される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
破砕プラント(11)の、又は前記破砕プラント(11)に関連付けられた高電力(P)電気モータ(12)を制御するための制御装置(10)であって、
前記破砕プラント(11)が、電気モータ(12)のロータに接続された回転破砕手段(13)を備え、
前記破砕手段(13)が、破砕予定の物体又は材料を導入するためのデバイス(14)と上流で関連付けられ、破砕片を集めるためのデバイス(15)と下流で関連付けられ、
前記制御装置(10)が、
前記電気モータ(12)に関連付けられた中電圧(MV)電力供給手段(16)と、
前記電力供給手段(16)と前記電気モータ(12)との間に挿入され、中電圧(MV)から低電圧(LV)へと電圧を変換するように構成された(MV/LV)電気変圧器(17)と、
プログラマブル電子制御ユニット(22)によって制御され、前記電気モータ(12)への電圧(V)及び電流(I)の供給を選択するように構成された選択手段(21)を備える制御回路(20)と、を備えるものにおいて、
前記プログラマブル制御ユニット(22)が、前記電気モータ(12)に関連付けられ、トルク、回転速度、吸収電流、又はモータ温度の1つ又は複数を検出するのに適したセンサを備える1つ又は複数の検出デバイス(25)によるフィードバック信号を受信するように構成されることを特徴とし、並びに
前記選択手段(21)が、好ましくは複数のサイリスタ(24)を備える反転回路又はインバータ(23)を備え、前記制御回路(20)が、前記インバータ(23)及び前記プログラマブル電子制御ユニット(22)によって、前記電気モータ(12)の電力(P)、トルク(T)及び回転速度(ω)の制御パラメータを能動的に管理するように構成されることを特徴とする、制御装置(10)。
【請求項2】
前記プログラマブル電子制御ユニット(22)が、電力(P)に関する限界値を有する一定の回転速度(ω)での制御を提供する第1の動作モード(A)と、トルク(T)に関する限界値を有する一定の電力(P)での制御を提供する第2の動作モード(B)と、前記電気モータ(12)の温度(t°)に関する限界値を有する一定のトルク(T)での制御を提供する第3の動作モード(C)との間で選択された1つの動作モードにあるように前記電気モータ(12)に命令するように構成され、
前記動作モード(A、B、C)は、粉砕予定のスクラップのタイプ及び量と、電力供給ネットワークにおいて利用可能な電気エネルギーの限界値との少なくとも一方の関数として選択されることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置(10)。
【請求項3】
前記制御回路(20)が、前記電気モータ(12)を一定の電力で前記第2の動作モード(B)で動作するように戻すため、又は前記電気モータ(12)を一定の電力で前記第2の動作モード(B)で動作することを維持するために、前記破砕手段の負荷のタイプに関連して前記電圧(V)及び電流(I)の供給を選択するように構成されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の制御装置(10)。
【請求項4】
電気モータ(12)であって、前記電気モータ(12)のロータは、破砕予定の物体又は材料を導入するためのデバイス(14)と上流で関連付けられ、破砕片を集めるためのデバイス(15)と下流で関連付けられた破砕手段(13)に接続される、電気モータ(12)と、
請求項1~3の何れか一項に記載の制御装置(10)と、を備える、破砕プラント(11)。
【請求項5】
制御装置(10)を用いて、破砕プラント(11)の、又は前記破砕プラント(11)に関連付けられた高電力(P)電気モータ(12)を制御するための制御方法であって、
前記破砕プラント(11)が、前記電気モータ(12)のロータに接続された回転破砕手段(13)を備え、
前記制御装置(10)が、
前記電気モータ(12)が選択された温度(t°)で動作し、前記電力(P)を供給し、選択された回転速度(ω)で回転し、及び前記物体を破砕するために必要な既知数のトルク(T)を前記回転破砕手段(13)に加えるように、電圧(V)及び電流(I)を用いて前記電気モータ(12)に選択的に動力を供給するために前記電気モータ(12)に関連付けられた中電圧(MV)電力供給手段(16)と、
前記電力供給手段(16)と前記電気モータ(12)との間に挿入され、中電圧(MV)から低電圧(LV)へと電圧を変換するように構成された(MV/LV)電気変圧器(17)と、
プログラマブル電子制御ユニット(22)によって制御される選択手段(21)を備える制御回路(20)と、を備える、制御方法において、
前記電気モータ(12)に関連付けられ、トルク、回転速度、吸収電流、又はモータ温度の1つ又は複数を検出するのに適したセンサを備える1つ又は複数の検出デバイス(25)によるフィードバック信号を制御ユニット(22)で受信することと、
反転回路又は前記選択手段(21)のインバータ(23)によって、常に最大利用可能エネルギーを前記物体に転送するように、電力(P)、トルク(T)及び回転速度(ω)に関する前記電気モータ(12)の機能パラメータを変更するために、電力供給ネットワークにおいて利用可能な電気エネルギーの限界値の関数として、前記電気モータ(12)の制御を能動的に管理することと、を前記制御方法が提供することを特徴とする、制御方法。
【請求項6】
前記電圧及び前記電流を適切に調整して、前記電気モータ(12)の正しい機能を損なうことなく、前記電気モータ(12)の熱容量の限界値で、前記電気モータ(12)の潜在能力を最大限に活用するために、前記モータ(12)の温度を実質的に継続して検出すること、及びその都度、検出された値を前記制御回路(20)に送ることを前記制御方法が提供することを特徴とする、請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記制御回路(20)及び前記インバータ(23)によって、エンジンの出力を固定値で一定に維持し、及び最大可能エネルギーをスクラップに転送するように、前記スクラップを前記プラント(11)に供給するフィーダローラのオン及びオフの切り換え、並びに前記フィーダローラの速度を制御することを前記制御方法が提供することを特徴とする、請求項5又は6に記載の制御方法。
【請求項8】
前記電気モータ(12)が、一定の回転速度(ω)及び設定された最大電力値(Pmax)によって制限された電力(P)を有する第1の動作モード(A)で少なくとも動作するように、前記制御回路(20)が前記電気モータ(12)を制御する第1のステップを前記制御方法が少なくとも含むことを特徴とし、並びに
前記最大電力値(Pmax)に到達すると、前記電気モータ(12)が、一定の電力(P)での制御、及び公称トルク値以上の選択された値に制限されたトルク(T)を有する第2の動作モード(B)、又は一定のトルク(T)での制御、及び選択された値に制限された前記電気モータ(12)の温度(t°)を有する第3の動作モード(C)の少なくとも一方で選択的に動作できるように、前記電圧(V)及び前記電流(I)の供給を選択することを前記制御方法が提供することを特徴とする、請求項5~7の何れか一項に記載の制御方法。
【請求項9】
前記一定の電力(P)を公称電力の80%に等しい値に制限する必要がある場合、前記方法は、前記第2の動作モード(B)において、前記電力にかかわらず、前記公称トルク値の100%~150%の間で可変のトルク(T)を用いて前記電気モータ(12)を稼動させることを提供することを特徴とする、請求項8に記載の制御方法。
【請求項10】
前記動作モード(A、B、C)のそれぞれにおいて、実質的に公称束値に等しい一定の磁場束値で前記電気モータ(12)を稼働させることを前記制御方法が提供することを特徴とする、請求項8又は9に記載の制御方法。
【請求項11】
前記第1の動作モード(A)では、前記回転速度(ω)は、自動化により数値的に固定され、前記破砕プラント(11)の最大生産性を達成するために選択的に設定される値で一定に維持されることを特徴とする、請求項8~10の何れか一項に記載の制御方法。
【請求項12】
トルク(T)の限界値が到達され、前記制御が温度(t°)の関数として行われると、前記制御方法は、前記電気モータ(12)に対する電力供給を制限することを提供することを特徴とする、請求項8~11の何れか一項に記載の制御方法。
【請求項13】
前記第2の動作モード(B)において、電力(P)を一定に維持するために回転速度(ω)が減少する間に前記電気モータ(12)に加えられるトルク(T)を増加させることと、前記電気モータ(12)のトルク(T)が予め定義された到達可能最大温度(t°max)に対応する最大伝達可能トルク(T)値に到達するまで前記第2の動作モード(B)を維持することを前記制御方法が提供することを特徴とする、請求項8~12の何れか一項に記載の制御方法。
【請求項14】
前記電気モータ(12)によって吸収される電力(P)が、前記電気モータ(12)の公称電力(P)の105%~115%の間に含まれる設定された最大電力レベル(Pmax)に到達するまで、前記第1の動作モード(A)を用いて前記電気モータ(12)を制御することを前記制御方法が提供し、並びに前記最大電力値(Pmax)に到達すると、自動的及びプログラムされたやり方で、前記第2の動作モード(B)に移ることを前記方法が提供することを特徴とする、請求項8~13の何れか一項に記載の制御方法。
【請求項15】
前記第3の動作モード(C)において前記選択された温度(t°)値と相関があるトルク(T)限界値に到達すると、又は前記第3の動作モード(C)が予め定義された期間の間、動作可能な状態を維持した場合、前記電気モータ(12)が前記第2の動作モード(B)で機能することに戻るように、前記電気モータ(12)に供給される電力を減少させることを前記制御方法が提供することを特徴とする、請求項8~14の何れか一項に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは破砕(shredding)若しくは粉砕(crushing)プラント(ただし、これに限らない)の、又はそれに関連付けることができる、好ましくはメガワット(MW)のオーダの高電力電気モータを制御するための制御装置及び方法に関する。例えば、電気モータは、例えば、場合によっては既に圧縮された車体、モータ、機械部材、家電、又は他のものなどの非常にかさ高くて重い物体を破砕するために使用でき、したがって、例えば溶解炉に供給するために後にリサイクル又は回収されるのに適したスクラップ(例えば、金属(鉄及び非鉄))を得るために、非常に高い粉砕力を必要とするシュレッダーデバイスに関連付けることができる。本発明は、例えば、他の材料(例えば、紙、プラスチック、不活性物質、木、鉱物、又は他のものなど)を異なるプロセスで粉砕及び破砕するための他のプラント又は設備に関連付けられた電気モータの管理に適用することもできる。
【背景技術】
【0002】
特に、新しい製品の製造のために原材料を調達するという深刻化する問題、及びそれに関連した、例えば溶解炉による鋼鉄の製造のために、もはや使われていない物体に由来する材料(例えば、廃棄された物体から鉄材料)を最大限に回収する必要性がある鉄鋼業界(ただし、これに限らない)において、例えば、場合によっては特殊プレス機の圧縮によって既に体積が減少した、車体、家電、機械部材、モータなどの、鉄を含む大きくて非常に重い物体さえも破砕又は粉砕するための破砕又は粉砕デバイス(シュレッダーとしても知られる)を備えた破砕プラントを使用することが知られている。
【0003】
破砕プラントは、まず、スクラップされた物体を小片に粉砕及び縮小させること、及びその後、具体的には、後に新しい用途に向けられ得るように、金属スクラップ(鉄及び非鉄の両方)をその他のスクラップから分離することによって、加工廃棄物から様々なスクラップを分離することを提供する。
【0004】
処理される材料は、通常、まず体積減少を経て、次に、適切なコンベヤーベルトによって、シュレッダーデバイスの粉砕チャンバ内に直接入る。
最も一般的なシュレッダーデバイスは、通常、ミルと呼ばれる回転部材を含み、この回転部材は、ハンマーと呼ばれ、及び粉砕予定の物体に対して激しく衝突するように構成された複数の粉砕部材が関連付けられた回転ドラムから本質的になる。
【0005】
通常、ドラムの回転は、周知の公式P=T・ωに基づいて、粉砕予定の様々な物体を粉砕するために得られるトルク(T)に応じて異なる速度(ω)で回転させられる、例えば最大で10MW(約13,400hp)を超える高い公称電力(P)の単一電気モータによって有利に命令される。モータの運転温度(t)は、正比例的に、与えられるトルクに直接的な影響も有する。
【0006】
さらに、シュレッダーデバイスの生産性は、回転ドラムに接続された電気モータの回転速度(ω)に正比例するため、高い生産性を得るためには、回転ドラム、ひいては電気モータを可能な限り高い回転速度で動作させる傾向があることは明らかである。
【0007】
回転ドラムは、質量が大きく、したがって、一旦電気モータによって回転させられると、回転ドラムは、はずみ車効果により、慣性によって回転し、その後、モータ自体は、粉砕予定の物体又は材料を衝突によって粉砕するために必要とされる運動エネルギーを発生させるために必要な回転速度を維持するために必要な電力入力を回転ドラムに供給するだけである。
【0008】
シュレッダーデバイスから出た粉砕された材料は、例えば空気流によって軽い破片の分離が行われる第2のコンベヤーベルト上に集められ、続いて、非鉄材料から、並びに不活性及び/又は無菌物質から鉄金属を分離するための磁気デバイスを備えたセクションに入る。次に、各破片は、他のプロセス又は保管場所に送られる特定の容器内に集められる。
【0009】
電気モータの電力供給は、通常、プラントの生産性を最適化するために、制御回路によって自動で管理される。
しかしながら、前記管理は、関与するかなりの力を特に考慮して(これらの力は、処理される材料のタイプが、それらの密度と同様に、大きく変化し得るため、破砕プロセス中に非常に変わりやすい)、かなり複雑である。これは、供給される物体の異なる硬度及びサイズを伴い、異なる硬度及びサイズは、粉砕ハンマーに対して異なる抵抗を生じさせ、その結果、電気モータが受ける可変負荷(すなわち、回転に対する抵抗)を生じさせ、結果として、プロセスによって必要とされる電力の変動がもたらされる。
【0010】
供給される材料の可変性にリンクした負荷の可変性は、運転サイクルの観点から、ひいては、プロセスによって必要とされる電力(これは、モータ自体の公称性能を超える場合さえある)に関して、シュレッダーデバイスを実質的に予測不能にする。
【0011】
したがって、これらの高電力過渡事象中に、モータは、公共又は私的電気ネットワークから電流吸収ピークを生じさせ、結果として、ネットワーク自体に外乱又はダメージ(かなりのものにさえなる)がもたらされる。
【0012】
図1は、どのように、電気モータによって回転ドラムに伝達される運転電力を最大でPmaxで示される値(電気モータの特性に関連した固有の限界値に対応し、この値を超えると、電気モータは壊れる)に至るまで増加させることができるかを模式的に示す。
図1では、回転ドラムに関連付けられた電気モータの回転速度(ω)が、公称中央値に対して増加(ω+)又は減少(ω-)し得ることに留意されたい。
【0013】
粉砕ハンマーが、よりボリュームのある材料に当たると、粉砕ハンマーが直面する、より大きな抵抗に続いて、回転ドラムの回転数が減少する。
トルクが増加しなければ、利用可能な電力は減少する。このことは、粉砕ハンマーが、材料を粉砕するために必要とされるエネルギーを有さず、シュレッダーデバイスの生産性の低下をもたらし得るため、不利である。
【0014】
したがって、生産性の低下を回避するために、粉砕ハンマーが、より硬い材料又はよりボリュームのある材料に直面したときに、伝達されるトルクも増加させ、それによって、過渡事象において公共ネットワークから上記のような電流吸収ピークを生じさせるように試みられる。
【0015】
しかしながら、生産性を高く保つために電気モータによって供給される最大電力を伝達しようとするためには、モータ自体及びキネティックチェーンが共に大きくストレスを受け、据付者がこれらのコンポーネントをオーバーサイズにすることを余儀なくさせ、結果として、コストの増加がもたらされる。
【0016】
これらの影響を制限することを試みるために、公知のタイプのシュレッダーデバイスは、保護システムを採用しているが、これらの保護システムは、あまり満足のいく結果をもたらさない。
【0017】
ある公知の解決策は、電気モータとミルとの間で電力を転送するために、ドライブを過負荷から守り、及びねじり振動を弱めるように作られた、オイルジョイント(oil joint)を使用することを提供する。
【0018】
中に電極が配置される食塩水(したがって、導電性)によって電気モータのロータが取り囲まれる電気モータ用の電力供給システムから成るLRS(液体抵抗スタータ(Liquid Resistance Starter))として知られるタイプの液体加減抵抗器ドライブを提供する、無制御の過負荷によるダメージを減少させることを試みる別の解決策も公知であり、電極の液体浸漬レベルは、電気モータからミルが必要とする電力を変化させることができるように、ステータとロータとの間の導電率を増加又は減少させるように選択的に調整することができる。調整は、より大きな吸収の必要性を検出し、その結果、導電性食塩水内の電極の高さの変動を可能にする電流測定変圧器(amperometric transformer)を使用することによって可能である。
【0019】
この公知のシステムは、無制御の吸収ピークを部分的に弱め、それによって、(熱による8~9%の電力損失を有する)電気モータを保護することを可能にする。しかしながら、この介入能力は、経時的な(2~3秒)反応速度の観点から限られており、いずれにせよ、エネルギーの無駄を防止せず、これは、「液体スタータ」における電力の損失を生じさせる。
【0020】
いずれにせよ、この公知の解決策を用いた場合、電力ピークの現象は、完全には除去されず、したがって、電気モータをオーバーサイズにする必要が依然としてあり、例えば、高電力ピークによって破壊される過度のリスクを有することなく、適切に稼働するために、3,700kW(約5,000hp)の公称電力を有する電気モータは、上記のような公称電力の65~70%を超えないことを余儀なくされ、したがって、それは、平均で約2,500kW(約3,350hp)で稼働し得る。
【0021】
この解決策は、エンジンの出力を十分に活用することもできず、その結果として、材料を粉砕するためにハンマーが利用可能なエネルギーのすべてを伝達することもできず、その結果、プラントの性能及び全体的な生産性が大幅に制限されるため、あまり効率的ではない。
【0022】
特許文献1は、モータ速度、遷移速度、モータの電力に基づいてインバータによってモータに供給される電流を制御するために複数の動作モードの中から選択することができるスイッチドリラクタンスモータ(動作モードは、電流調整モード、単一パルスモード、及び連続導通モードを含む)のための制御システムを記載する。具体的には、特許文献1に記載される解決策は、電流調整動作モードでモータを制御するか、それとも単一パルス動作モードでモータを制御するかを決定するために、モータ速度を第1の閾値と比較することを提供し、モータ速度が公称閾値を超える場合は、モータをデフラックスゾーン(de-fluxing zone)で機能させることによって、すなわち、モータの磁束を減少させることによって、電力を一定に保つことを提供する。この動作モードは、速度を大幅に増加させることを可能にするが、束の減少を補償するために電流の増加を必要とし、これが、不要な電力ピークをもたらし得る。この解決策は、モータの使用及び効率を最大化することを可能にしない。
【0023】
公知の解決策は、利用可能なネットワーク及び電流に厳密に依存するという欠点も有し、したがって、電流が制限された地域又は国では、モータの公称電力を減少させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本発明の目的の1つは、あらゆる状況において、電気モータが、モータが入手できる最大エネルギーを転送することを可能にできる、好ましくは破砕若しくは粉砕プラント(ただし、これに限らない)の、又はそれに関連付けることができる、好ましくはメガワット(MW)のオーダの高電力電気モータを制御するための制御装置及び関連の方法を提供することである。
【0026】
具体的には、目的の1つは、電流をモータに供給するネットワークに深刻な問題及び/又はダメージを生じさせる可能性のある、負荷の変動に関連した電力ピークを有するリスクなしに、モータが公称電力で使用されることを可能にする制御装置及び方法を提供することである。
【0027】
本発明の別の目的は、電気モータのロータ、ひいては、それに関連付けられた回転部材の高速の回転を得ることを可能にする(これは、与えられる電力及び回転部材自体に加えられるトルクとの関連で、破砕プラントの高生産性を提供する)、高電力電気モータを制御するための制御装置及び関連の方法を提供することである。
【0028】
本発明のさらに別の目的は、加えられるトルクを最大化することを可能にする制御方法及び装置を提供することである。
別の目的は、モータの公称電力を十分に活用することによって、性能を向上させ、及び全体的な効率を向上させるために、既存の破砕プラントにおいて、及び新たに建設されるプラントにおいても適用することができる(利用可能な電気エネルギーにも相関した、要件に応じたモータ自体の正しいサイジングを可能にする)、制御方法及び装置を提供することである。
【0029】
出願人は、先端技術の欠点を克服するため、並びに上記及び他の目的及び利点を達成するために、本発明を考案し、テストし、及び具現化した。
【課題を解決するための手段】
【0030】
本発明は、独立クレームにおいて規定され、特徴付けられる。従属クレームは、本発明の他の特徴又は主要な発明的アイデアに対する変形形態を記載する。
上記の目的に従って、好ましくは破砕プラントの、又は破砕プラントに関連付けられた、好ましくはメガワット(MW)のオーダの高電力電気モータを制御するための制御装置であって、破砕プラントが、好ましくは非常にかさ高くて重い物体を破砕するために使用でき、及び電気モータのロータに接続された回転破砕手段を備えた、制御装置が、電気モータが選択された温度で動作し、上記のような電力を供給し、適切な回転速度で回転し、及び物体を破砕するために必要な既知数のトルクを回転破砕手段に加えることができるように、電圧及び電流を用いて電気モータに選択的に動力を供給するために電気モータに関連付けられた電力供給手段と、上記のような電力供給手段に接続され、並びに電気モータが選択的に上記のような温度で動作し、上記のような電力を供給し、上記のような回転速度で回転し、及び上記のようにトルクを回転破砕手段に加えるように、電気モータを制御するように構成された制御回路と、を含む。
【0031】
本発明の特徴的態様によれば、上記のような制御回路は、電気モータが、以下の3つの動作モード:一定の回転速度及び選択された値に制限された電力を有する第1の動作モード;一定の電力、及び公称トルク値以上の選択された値に制限されたトルクを有する第2の動作モード;一定のトルクを有し、及び選択された値に制限された電気モータの温度にある第3の動作モードの何れか1つで選択的に動作できるように、上記のような電圧及び電流の供給を選択するように構成された選択手段を含む。
【0032】
幾つかの実施形態によれば、制御回路は、電気モータを一定電力で第2の動作モードで動作するように戻すため、又は電気モータが一定電力で第2の動作モードで動作することを維持するために、破砕手段の負荷のタイプに関連して上記のような電圧及び電流の供給を選択するように構成される。
【0033】
幾つかの実施形態によれば、第2の動作モードでは、モータは、モータが第1の動作モードにあるときに有する公称束値(nominal flux value)に実質的に等しい公称磁場束値(nominal magnetic field flux value)で動作する。つまり、モータの磁束は、常に公称値付近にとどまり、速度の増加に伴って減少しない。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態に従って、選択手段は、反転回路又はインバータを含む。
本発明の他の実施形態に従って、インバータは、複数のサイリスタを含んでもよい。
選択手段を用いてモータの機能を適応させる可能性は、スクラップに対する最大利用可能エネルギーの転送を保証するために、動作要件の関数としてハンマーの速度及び/又はトルクを増加及び減少させるために、電流を増加及び減少させることを可能にする。実際、インバータデバイスのおかげで、粉砕予定の負荷のタイプ/量、及び電力網の要件にリアルタイムで適応することができる動的機能プロセスを得ることが可能である。
【0035】
本発明の幾つかの実施形態に従って、電気モータは、中電圧(MV)電力供給手段によって電気的に動力を供給され、電力供給手段と電気モータとの間に、中電圧(MV)から中低電圧(LV)へと電圧を変換するように構成され、及び制御回路に接続された電気変圧器が挿入される。
【0036】
幾つかの実施形態によれば、電気モータは、回転速度、トルク、吸収電流、温度から選択された1つ又は複数の機能パラメータを検出するのに適した1つ又は複数の検出デバイスを備える。
【0037】
本発明の他の実施形態に従って、制御回路はまた、電気モータの検出デバイスからプログラマブル電子制御ユニットに到達したフィードバック信号にも基づいて、3つの動作モードの1つにあるように電気モータに命令するように構成されたプログラマブル電子制御ユニットを含む。
【0038】
本発明の幾つかの実施形態に従って、第1の動作モードにおいて、電気モータによって吸収される電力は、好ましくは電気モータの公称電力の105%~115%の間に含まれる(例えば、110%)、設定された最大電力レベルに到達する。
【0039】
本発明の幾つかの実施形態に従って、第3の動作モードにおいて、電気モータの最大運転温度に対応する最大トルクは、好ましくは公称値の140%~160%の間に含まれる値(例えば、150%)に設定される。
【0040】
本発明は、制御装置を用いて、好ましくは破砕プラントの、又は破砕プラントに関連付けられた、好ましくはメガワット(MW)のオーダの高電力電気モータを制御するための制御方法であって、破砕プラントが、好ましくは非常にかさ高くて重い物体を破砕するために使用でき、及び電気モータのロータに接続された回転破砕手段を備え、制御装置が、電気モータが選択された温度で動作し、上記電力を供給し、適切な回転速度で回転し、及び物体を破砕するために必要な既知数のトルクを回転破砕手段に加えることができるように、電圧及び電流を用いて電気モータに選択的に動力を供給するために電気モータに関連付けられた電力供給手段と、電力供給手段に接続され、並びに電気モータが選択的に上記のような温度で動作し、上記のような電力を供給し、上記のような回転速度で回転し、及び上記のようにトルクを回転破砕手段に加えるように、電気モータを制御するように構成された制御回路と、を含む、制御方法にも関する。
【0041】
本発明によるこの方法は、電気モータが、一定の回転速度及び設定された最大電力値によって制限された電力を有する第1の動作モードで少なくとも動作するように、制御回路が電気モータを制御する第1のステップを少なくとも含む。
【0042】
幾つかの実施形態によれば、最大電力値に到達すると、制御方法は、電気モータが、一定の電力での制御、及び公称トルク値以上の選択された値に制限されたトルクを有する第2の動作モード、又は一定のトルクでの制御、及び選択された値に制限された電気モータの温度を有する第3の動作モードの少なくとも一方で選択的に動作できるように、電圧及び電流の供給を選択することを提供する。
【0043】
常に最大利用可能エネルギーをスクラップに転送するように、電力、速度、及びトルクに関するモータの機能パラメータを変更するために、3つの動作モードは、粉砕予定のスクラップのタイプ及び量、及び/又は電力供給ネットワークにおいて利用可能な電気エネルギーの限界値の関数として、その都度選択することができる。
【0044】
具体的には、エンジンの利用可能な電力全体が活用されるという事実によるプラントの効率の向上及び最大利用可能エネルギーの転送の両方を得るために、公称電力を一定パラメータとして設定し、それに応じて速度及びトルクを調整することによって、ほとんどの場合公称電力で、或いは公称電力よりも高い値でモータを機能させることが可能である。
【0045】
この解決策は、破砕予定のスクラップに転送されるエネルギーを絶えず最大限にし、それによって、電気モータの正しい機能を損なうことなく、電気モータの熱容量の限界値で、電気モータの潜在能力を効率的に活用することを可能にする。
【0046】
本発明の幾つかの実施形態によれば、この方法は、各動作モードにおいて、実質的に常に公称束値に実質的に等しい一定の磁場束値でモータを稼働させることを提供する。
幾つかの実施形態によれば、この方法は、少なくとも第2の動作モードにおいて、及び場合によっては第3の動作モードにおいて、可変負荷及び一定の電力であるが、トルク過負荷で、すなわち、好ましくは公称値の140%~160%の間に含まれる(例えば150%)公称トルク値を超える設定された最大トルク値でモータを機能させることを提供する。
【0047】
他の実施形態によれば、本発明によるこの方法は、モータを第2の動作モードに保つように、又はモータを第2の動作モードに戻すように、モータの供給電圧及び電流を調整することを提供する。
【0048】
最大トルク値は、モータが到達できる最大温度の関数として設定することができる。
本発明によるこの方法は、モータに供給される電圧値及び電流値を適切に調整するために、モータの温度値を継続的に監視し続けることを提供することができる。さらに、この解決策は、それがモータの機能、具体的にはトルク及び速度をリアルタイムで制御することを可能にするため、スクラップ自体間のエネルギー転送も活用するように、スクラップを収容したチャンバの過負荷状態においても稼働することを可能にする。
【0049】
この制御装置及び方法は、既存のプラントに適用された場合、プラントの全体的な効率を大幅に向上させることを可能にするが、新しく建設されたプラントの場合、これらは、実際のニーズに基づいてモータの大きさを決めることを可能にし、もはや電力ピークを補償する必要がない。
【0050】
本発明の上記及び他の態様、特徴、及び利点は、添付の図面を参照して、保護の分野及び範囲を限定しない、例として提供される一実施形態の以下の説明から明らかとなるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】上記の通り、電気モータのロータの回転速度(ω)と、ロータの電力(P)、トルク(T)、及び温度(t)パラメータとの間の関係を模式的に示す既知のグラフである。
【
図2】破砕プラントに関連付けられた、本発明による制御回路のブロック図である。
【
図3】それぞれ一定の回転速度(ω)、一定の電力(P)、及び一定のトルク(T)にある、本発明による電気モータを制御するための3つのモードA、B、及びCに従ったロータの対応する電力(P)、トルク(T)、及び温度(t°)パラメータに関連して、
図2の破砕プラントで使用される電気モータのロータの回転速度(ω)の傾向を簡潔に示すグラフである。
【
図4】
図3の電気モータを制御するための3つの動作モード(第1の動作モードA、第2の動作モードB、及び第3の動作モードC)における以下の3つのパラメータ:毎分回転数(rpm)単位の回転速度(ω)(上側破線曲線);電気モータの公称電力のパーセンテージとしての電力(P)(下側一点鎖線曲線);同様に電気モータの公称トルクのパーセンテージとしてのトルク(T)(中央の実線曲線)の経時(t)的な傾向の一例を簡潔に示すグラフである。
【
図6】従来の先端技術に従って制御されたもの(上側グレー曲線)と比較された、本発明の制御回路によって制御された電気モータによって供給された電力(P)の経時(t)的な傾向(黒い実線の下側曲線)を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0052】
これより、添付の図面に示される、本発明の可能な実施形態を詳細に参照する。これらの例は、本発明の実例として提供され、本発明の限定と解釈されるものではない。
これらの実施形態を説明する前に、本明細書が、その適用例において、添付の図面を用いて以下の説明に記載されるようなコンポーネントの構造及び配置の詳細に限定されないことも明確にする必要がある。本明細書は、他の実施形態を提供することができ、様々な他のやり方で取得又は実行することができる。ここで使用される表現及び用語は、単に説明目的のものであり、制限的なものと見なされるものではないことも明確にする必要がある。
【0053】
図2を参照して、本発明による制御装置10は、公知のタイプの破砕プラント11に関連付けて示されており、破砕プラント11は、電気モータ12を有し、電気モータ12のロータは、公知のタイプのものであり、及び図面に示されない粉砕ハンマーを備えた回転ドラム又はミル13に対して、例えば延長部を介して接続される。
【0054】
回転ドラム13は、破砕予定の物体又は材料を導入するためのデバイス14と上流で関連付けられ、破砕片を集めるためのデバイス15と下流で関連付けられる。
破砕プラント11は、公知のタイプの電力供給手段16に接続され、電力供給手段16は、例えば、中電圧(MV)電力網から成り、直説法で(indicatively)、約10~15MWに至るまでの電力(P)で、11~20KVの電圧を供給することができる。
【0055】
電力供給手段16と、電気モータ12との間には、MV/LV電気変圧器17が挿入され、MV/LV電気変圧器17は、中電圧(MV)から低電圧(LV)へと(直説法で、ここに提供される例では、約3~3.5MWの電力で、約300~700Vの間に含まれる値へ)電圧を変換するように構成される。
【0056】
制御装置10は、制御回路20を含み、制御回路20は、電気変圧器17に接続され、電気モータ12に由来し、並びにトルクT、電力P、及び回転速度ωを少なくとも示す適切なフィードバック信号にも基づいて、プログラマブル電子制御ユニット22(例えば、PLC)によって制御される選択手段21を備える。
【0057】
幾つかの実施形態によれば、プログラマブル制御ユニット22は、電気モータ12に関連付けられた1つ又は複数の検出デバイス25によってリアルタイムで検出及び/又は監視されたフィードバック信号を受信することができる。幾つかの実施形態によれば、検出デバイス25は、トルク、回転速度、吸収電流、又はモータ温度の1つ又は複数を検出するのに適したセンサを含み得る。
【0058】
検出デバイス25は、具体的には、電気モータ12の温度を検出すること、並びに検出値を制御回路20及び/又はプログラマブル電子制御ユニット22に送ることに適した温度センサを少なくとも含む。
【0059】
選択手段21は、例えば、反転回路又はインバータ23を含み、インバータ23は、好ましくは、複数のサイリスタ24(
図2及び
図5)を含む。
制御回路20は、インバータ23及びプログラマブル電子制御ユニット22のおかげで、電気モータ12の制御パラメータ(電力P、トルクT、回転速度ω)を能動的に管理するように構成される。これはすべて動的なやり方で、永続的な熱レジームで供給され得る最大トルクのパーセンテージで表した電気モータ12の潜在能力を最大限に活用する。
【0060】
具体的には、制御回路20は、インバータ23の出口における電流を制御し、及び制御されたやり方で電気モータ12に動力を供給することができるように、電気モータ12を電力供給手段16から(すなわち電力網から)分離することができ、それによって、キネティックチェーンに対するストレス及び電力網自体に対する外乱が防止される。
【0061】
具体的には、制御装置10は、3つの異なる制御動作モードで動作することを可能にする。
第1の動作モードAは、基本的に、電力Pに関する限界値を有する、一定回転速度ωでの制御を提供する。
【0062】
この第1の動作モードAでは、回転速度ωは、制御パラメータであり、一定に維持される。したがって、その値は、自動化により、数値的に固定され、回転速度ωが破砕プラント11の生産性に正比例するため、最大生産性を達成することを目的として選択的に設定することができる。
【0063】
公式P=T・ωに基づいた高回転速度ωの設定値のために、トルクT及び電力Pも、設定された電力限界値Pmaxに至るまで増加し、この設定された電力限界値Pmaxは、電気モータ12にダメージを与えないために、超えてはならない限界値である。
【0064】
電気モータ12によって吸収される電力Pは、好ましくは、電気モータ12の公称電力Pの105%~115%の間に含まれる(例えば、110%)設定された最大電力レベルPmaxに到達し、この設定された最大電力レベルPmaxは、
図3の点Aに対応する。この限界値を超えると、電気モータ12は、ダメージを受ける。実際には、先行技術において行われるように、電気モータのオーバーサイジング(oversizing)を用いた場合のみ、この限界値を超えることが可能である。しかしながら、本発明は、このオーバーサイジングを提供しないが、自動的及びプログラムされたやり方で、次の第2の動作モードBに移ることを提供する。
【0065】
第2の動作モードBは、基本的に、トルクTに関する限界値を有する、一定電力Pでの制御を提供する。
この第2の動作モードBでは、電力Pは、制御パラメータであり、電力Pを一定に維持するために増加するトルクT及び減少する回転速度ωが可変となるように、一定に維持される。
【0066】
具体的には、第2の動作モードBでは、電力Pは、設定された最大電力値Pmaxにおいて、又はどのような場合でも、これよりも低い値において、実質的に一定に維持される。
【0067】
トルクTは、電流吸収を増加させることによって、増加する。より高い電流は、公式I2t(式中、「I」は、短絡電流のアンペア単位の実効値であり、「t」は、電流の持続時間である)に従って、電気モータ12を通る比エネルギーの増加をもたらし、結果として、電気モータ12の温度t°の増加がもたらされる。
【0068】
したがって、電気モータ12の正しい機能を損なわないように、その熱容量の限界値で電気モータ12の潜在能力を最大限に活用するために、電気モータ12の温度t°が有利に測定され、その値が制御回路20に送られる。
【0069】
したがって、設定された最大値Pmaxを下回る、又は最大でも設定された最大値Pmaxに等しい電力Pを維持することによって、電気モータ12の造りの特性に従って、電気モータ12がダメージを受けることなく電気モータ12が到達可能な最大温度t°maxに対応するように設定された最大トルクレベルTに至るまで、電気モータ12の温度t°の関数として、電気モータ12によって回転ドラム13に伝達されるトルクを増加させることが可能である。
【0070】
一定電力にあるこの第2の動作モードB(
図3の中央ゾーン)では、以下の利点が得られる。
-生産性が25%~30%増加する。
【0071】
-電力供給手段16側で電流吸収ピークが生じない。
-回転ドラム13側で、最大エネルギーが転送される。
-電気モータ12が熱的にストレスを受けない。
【0072】
また、制御回路20及びインバータ23を用いて、エンジンの出力を固定値で一定に維持し、及び最大可能エネルギーをスクラップに転送するように、スクラップを粉砕プラントに供給するフィーダローラのオン及びオフの切り換え、並びにそれらの速度を制御することも可能である。
【0073】
幾つかの実施形態によれば、一定の電力限界値を有する第2の動作モードBは、利用可能な電気エネルギーの関数としても電気モータ12の機能を適応させることを可能にする。実際、公称電力の120%に等しい限界値を設定することはできないが、それを80%に制限することが必要な場合には、第2の動作モードBでは、電力にかかわらず、公称トルクの100%~150%の間で可変のトルクTを用いてモータ12を稼働させることが依然として可能になる。
【0074】
第3の動作モードCは、電気モータ12の温度t°に関する限界値を有する、実質的に一定のトルクTでの制御を提供する。
電気モータ12が安全に到達できる最大温度t°maxに対応する最大伝達可能トルクTが到達されると、トルクTは、一定に維持される制御パラメータとなり、回転速度ω及び電力Pが変化する(具体的には、減少する)可能性が許容される。
【0075】
電気モータ12がこの状態で稼働できる時間は、公称値に対するトルクTの使用パーセンテージ、及び電気モータ12自体の以前の機能履歴に依存し、これは、電気モータ12の温度状態に影響を与える。
【0076】
トルクTの限界値が到達され、制御が温度t°の関数として行われると、次に、制御方法は、電気モータ12に対する電力供給を制限することを提供する。
幾つかの実施形態によれば、第3の動作モードで動作が実行される特定の時間間隔後に、電気モータ12に供給される供給電流が、トルクT、回転速度ω、及び電力Pの動作パラメータを第2の動作モードBで提供された値の範囲内に戻すように減らされる(
図3のグラフを参照)。
【0077】
具体的には、公知の解決策で通常生じることとは異なり、本発明による方法は、最初に、速度制御を用いて、最大値Pmaxに至るまで電力を増加させるように稼働し、次に、トルクTを設定された限界値に至るまで徐々に増加させることによって、値Pmaxに設定された一定電力での制御に移ることを提供する。
【0078】
幾つかの実施形態によれば、モータに供給される電圧値及び電流値は、電気モータ12が第2の動作モードにあることを維持するように調整され得る。
図4のグラフは、機能している破砕プラント11に関する、3つの動作モードA、B、及びCを有する破砕プロセス中の3つの制御パラメータ(つまり、電力P、トルクT、及び回転速度ω)の実際の記録を示す。
【0079】
具体的には、
図4のグラフは、一番上に(上側破線曲線)、毎分回転数(rpm)単位の回転速度ωの傾向を示し、中央部分に、実線を用いてパーセンテージでトルクTを示し、一番下に(一点鎖線)、同様に電気モータ12の公称電力に対するパーセンテージで電力Pを示す。
【0080】
前述の制御装置10の機能(これは、本発明による制御方法にも対応する)は、制御回路20が第1の動作モードAに従って電気モータ12を制御し、したがって、最大電力閾値(
図3のPmax)が到達されるまで、回転速度ωが増加するように設定される第1のステップを提供する。
【0081】
この閾値に到達すると、制御回路20は、第2の動作モードBが採用され、したがって、電力Pが、固定値、例えば、好ましくは公称電力Pの105%~115%の間に含まれる(例えば、110%)最大電力値Pmaxに保たれる第2のステップに移る。
【0082】
第2の動作モードBは、
図4に見られるように、下側一点鎖線が、この110%の閾値を決して超えず、実質的に一定に保たれるように、電気モータ12の電力を最大限に活用することを可能にし、それによって、公知の解決策と比較して、使用される電力の平均値をそれが公称値にほぼ到達するまで大幅に上げる。
【0083】
先述の通り、第2の動作モードBでは、伝達されるトルクTが増加するにつれて、電気モータ12の温度t°も、同じ電気モータ12の最大運転温度(
図3のt°max)で伝達可能な最大トルクTが到達されるまで増加する。
【0084】
幾つかの実施形態によれば、第2の動作モードBでは、電気モータ12は、常に、実質的に公称束値に等しい一定の磁束値で稼働する。
最大運転温度に到達すると、制御回路20は、第3の動作モードCが採用される第3のステップに移る。
【0085】
幾つかの実施形態によれば、第2のB及び第3の動作モードCにおけるトルク値Tは、公称トルク値以上である。
図4のグラフでは、電気モータ12の最大運転温度(t°max)に対応する最大トルクTは、好ましくは公称値の140%~160%の間に含まれる値(例えば、150%)に設定される。
【0086】
導入デバイス14を用いて回転ドラム13(
図2)内に投入された破砕予定の材料のタイプが、制御回路20によって設定されたトルクTの限界値よりも下がることを許容するようなものである場合、機械が稼働させられるべき理想のモードである第2の動作モードBの稼働範囲に戻る(なぜなら、それは、電気モータ12が努力することなく最大電力Pを提供するだけでなく、最も高い生産性を得ることも可能であるエリアだからである)。この動作モードは、電気モータ12、ひいては回転ドラム13の最大回転速度ω及び低いトルクTに対応する点Aと、最大トルクT及び等しい電力Pにおける最小回転速度ωに対応する点Cとの間で変化する。
【0087】
第3の動作モードCから第2の動作モードBに切り換えるために、インバータ23によって、供給される電流を減少させるように働くことが可能である。
幾つかの実施形態によれば、本発明による方法は、動作モードA、B、Cのそれぞれにおいて、実質的に公称束値に等しい一定の磁場束値で電気モータ12を稼働させることを提供する。
【0088】
図6のグラフは、4MWの最大値に制限され、及び制御回路20によって制御された電気モータ12によって時間(t)において供給された電力Pの傾向(下側実線曲線)(ここでは、特異な電力ピークは存在しない)と、先端技術による電気モータによって、時間(t)において供給された電力Pの傾向(上側破線)との比較研究の結果を示し、このグラフでは、後者のケースにおいて、2つの無制御の電力ピークが存在し、これらのピークのうちの最も高いピークは、7.2MWの値を有していたことが分かる。
【0089】
図6のグラフから明らかなように、先行技術の場合、7.2MWを超える公称電力を有するオーバーサイズの電気モータを提供する必要があるが、本発明のおかげで、同じ性能を有して、4MWに等しい、又は4MWよりも低い公称電力を有する電気モータを使用することが可能であり、結果として、製造及び消費のコスト削減がもたらされる。
【0090】
さらに、本発明による制御装置10を用いた場合、電気モータ12が受ける負荷の変動に対する制御回路20の反応は、例えば、公知のLRSを用いた先行技術の数秒(2~3)の時間と比較して、実質的に即時(数ミリ秒のオーダ)である。
【0091】
特許請求の範囲に規定される本発明の分野及び範囲から逸脱することなく、上記のような制御装置10及び方法に対して、部品又はステップの変更及び/又は追加を行い得ることが明らかである。
【0092】
幾つかの具体的な例を参照して本発明を説明したが、特許請求の範囲に規定されるような特徴を有し、したがってすべて特許請求の範囲によって規定される保護範囲内に入る、好ましくは破砕又は粉砕プラントの、好ましくはメガワット(MW)のオーダの高電力電気モータを制御するための装置10及び方法の多数の他の均等形態を当業者が確実に得ることができるであろうことも明らかである。
【0093】
以下の特許請求の範囲では、括弧内の参照符号の唯一の目的は、読解を容易にすることであり、それらは、特定のクレームにおいて請求される保護範囲に関して制限的因子と見なされてはならない。