(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074916
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/90 20180101AFI20240524BHJP
B60N 2/58 20060101ALI20240524BHJP
B60N 2/68 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
B60N2/90
B60N2/58
B60N2/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024060292
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2023031147の分割
【原出願日】2017-04-04
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩片 創
(72)【発明者】
【氏名】白井 瑛
(72)【発明者】
【氏名】卜部 洋平
(57)【要約】
【課題】 表皮に開口が形成され、その開口にガーニッシュが取り付けられたシートであって、表皮が破損し難く、且つ、ガーニッシュと表皮とに隙間が生じ難いシートを提供する。
【解決手段】 フレームF3と、フレームに支持されたパッド36と、パッドの表面を覆う第1開口38を有する表皮37と、表皮の裏面において第1開口の縁部に結合し、第1開口と対向する第2開口47が形成された板状のプレート46と、第1開口と第2開口とを通過する胴部41、胴部から第1開口の縁部表面に環状に延出する延出部42、及び胴部に設けられたプレートを係止する係止部43とを備えるガーニッシュ40とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームと、
前記フレームに支持されたパッドと、
前記パッドの表面を覆う第1開口を有する表皮と、
前記表皮の裏面に結合し、前記第1開口と対向する第2開口が形成された板状のプレートと、
本体、前記本体から延出し、前記表皮の前記第1開口の縁部を表面側から覆う外端部、及び、前記本体から突出する係止部を備えたガーニッシュと、を有し、
前記係止部は前記プレートの裏側にて前記外端部に対峙し、前記外端部と協働して前記プレートを挟持し、
前記係止部の前記外端部と離反する側の面には、前記外端部から離れる方向に向かって、前記本体に近接する方向に傾斜する斜面が設けられているシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はシートであって、特に、表皮に開口が形成されたシートに関する。
【背景技術】
【0002】
乗物用シートにおいて、シートバックやヘッドレストにシートベルト引出口や通気口等の開口が形成されたものがある。これらの開口の形状を保つため、表皮に形成された開口に保形部材が装着されたものがある(例えば、特許文献1及び2)。特許文献1では、シートバックにシートベルト引出口を形成するため、表皮に形成された開口に保形部材となるベルトガイドが装着されている。ベルトガイドは、表皮の開口に取り付けられた枠状フレームを介して表皮に結合している。表皮における開口の周縁に掛止孔が設けられ、その孔を枠状フレームに設けられた突起に掛止することで、枠状フレームは表皮に取り付けられている。
【0003】
特許文献2では、ヘッドレストに前後に貫通する通気口が形成され、表皮の開口には保形部材となるガーニッシュが装着されている。表皮における開口の周縁には掛止孔が設けられ、その掛止孔がガーニッシュの側面に設けられた突起に掛止されることで、ガーニッシュは表皮に結合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10-181524号公報
【特許文献2】特開2006-43000号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
保形部材は、パッドや表皮よりも硬い樹脂によって形成されることがある。この場合、開口の周縁に押圧荷重が加わると、パッドや表皮が保形部材よりも大きく変形する。そのため、保形部材と表皮とに隙間が生じることがあり、生じた隙間に異物が挟まれ易くなるという問題がある。また、特許文献1及び2では、表皮に設けられた掛止孔がガーニッシュや枠状フレームに設けられた突起に掛止されている。そのため、表皮に引張力が加わると孔から亀裂が生じ、表皮が破損してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、以上の背景を鑑み、表皮に開口が形成され、その開口にガーニッシュが取り付けられたシートであって、表皮が破損し難いシートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、フレーム(F3)と、前記フレームに支持されたパッド(36)と、前記パッドの表面を覆う第1開口(38)を有する表皮(37)と、前記表皮の裏面において前記第1開口の縁部に結合し、前記第1開口と対向する第2開口(47)が形成された板状のプレート(46)と、前記第1開口と前記第2開口とを通過する胴部(41)、前記胴部から前記第1開口の縁部表面に環状に延出する延出部(42)、及び前記胴部に設けられた前記プレートを係止する係止部を備えるガーニッシュ(40)とを有するシート(S)が提供される。
【0008】
この構成によれば、表皮に結合したプレートがガーニッシュに係止されているため、第1開口の周縁に押圧荷重が加わった場合でも、ガーニッシュに対するプレートの相対位置が変化せず、表皮とガーニッシュとに隙間が発生しにくい。
【0009】
また、上記の構成において、前記プレート及び前記表皮が前記延出部と前記係止部との間に挟持されるとよい。
【0010】
この構成によれば、プレートを第1開口に係止する構成を簡素にすることができる。
【0011】
また、上記の構成において、前記フレームの前側に前記パッドが結合し、前記パッドの前面は前記表皮によって覆われ、前記パッドには前記第1開口から後方に延び、前後に貫通する第3開口(39)が形成され、前記フレームの後側において、前記フレームの背面を覆うバックカバーが結合し、前記胴部が前記第3開口を通って、前記バックカバーに結合しているとよい。
【0012】
この構成によれば、パッドがフレームに結合し、ガーニッシュがバックカバーを介してフレームに結合するため、ガーニッシュがパッドから外れ難くなる。
【0013】
また、上記の構成において、前記バックカバーの前面に前方に延びる接続部(63)を有し、前記胴部が前記接続部に結合し、前記接続部の前端に壁面を貫通する係合孔(66)が設けられ、前記胴部の後端には前記胴部から突出し、前記係合孔に係合する係止爪(44A、44C)が設けられているとよい。
【0014】
この構成によれば、接続部と胴部とが結合することによって、シートの剛性が高められる。
【0015】
また、上記の構成において、前記胴部には前記胴部の外周壁面から突出する突出部(45)が形成され、前記突出部が前記第3開口の壁面に当接すると共に、前記突出部が前記接続部の移動を規制しているとよい。
【0016】
この構成によれば、接続部が突出部と胴部とに挟まれるため、接続部の歪みを修正することができる。
【0017】
また、上記の構成において、前記プレートの前記第2開口の外周の前記突出部に対応する位置に、外方に向かう切欠(47C)が形成されているとよい。
【0018】
この構成によれば、突出部が切欠を通過するため、プレートを胴部に沿って延出部と係止部との間まで移動させ易くなると共に、プレートとガーニッシュとが互いに適正な位置となるように配置し易くなる。
【0019】
また、上記の構成において、前記ガーニッシュは両端が開口する筒状に形成され、前記接続部に後端が前記バックカバーにおいて開口し、前端が開口する筒状に形成されているとよい。
【0020】
この構成によれば、シートに前後に貫通する通気口が形成される。
【0021】
また、上記の構成において、前記プレートは前記第1開口に縫合されているとよい。
【0022】
この構成によれば、プレートと表皮とを強く、且つ容易に結合させることができる。
【0023】
また、上記の構成において、前記プレートは前記第1開口の周方向に沿って縫合されているとよい。
【0024】
この構成によれば、プレートと表皮とが縫合糸を介して複数の箇所で結合するため、表皮に引張荷重が加わっても荷重が分散し、表皮が破損しにくくなる。また、プレートと表皮とをより強く結合させることができる。
【0025】
また、上記の構成において、前記プレートには外周と前記第2開口とを接続する切断部(48)が形成されているとよい。
【0026】
この構成によれば、切断部を広げることによってプレートを変形させることができ、プレートをガーニッシュに組付やすくなる。更に、切断部によって縫い始める場所にミシン針を移動させ易くなる。
【0027】
また、上記の構成において、前記第1開口の外周に目印(37C)が形成され、前記プレートの外周であって前記目印に対応する位置に、内方に凹む切欠(46C)が形成されているとよい。
【0028】
この構成によれば、プレートと表皮とを適正な位置となるように結合させ、プレートとガーニッシュとを適正な位置となるように結合させることが容易になる。
【発明の効果】
【0029】
以上の構成によれば、表皮に開口が形成され、その開口にガーニッシュが取り付けられたシートであって、表皮が破損し難いシートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図3】
図1の乗物用シートのパッドユニット及びバックカバーを外したときの背面図
【
図5】
図1の乗物用シートに設けられるガーニッシュの(A)前方及び(B)後上方からの斜視図
【
図9】別実施形態の乗物用シートに設けられる枠部材の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下に本発明によるシートを自動車に搭載される乗物用シートに適用した実施形態を、
図1~
図9を参照して説明する。以下の説明では、乗物用シートに着座した乗員を基準にして左右、及び内外を定める。左右一対設けられる構成については、共通の番号を付し、左右を特定するときは構成の名称に左又は右の文字を付す。
【0032】
図1に示すように、乗物用シートSは、いわゆるフルバケットシートであって、シートクッションS1と、背もたれS3及びヘッドレスト部S4が一体として形成されたシートバックS2とを有する。シートクッションS1は、シートクッションフレームと、シートクッションフレームの上側に被せられたパッド及び表皮とを有し、乗員の臀部及び大腿部を支持する。シートクッションフレームは、前後に延びる左右一対のクッションサイドフレームF2と、両クッションサイドフレームF2の内側の側面を連結する複数のフレームとによって枠形に形成されている。シートバックS2には、乗員の概ね肩に対応する位置に前後に貫通する左右1対の通気口S5が形成されている。
【0033】
図2に示されるように、シートバックS2は、シートバックフレームF3と、シートバックフレームF3の前側に被されるパッドユニットC1と、シートバックフレームF3の後方に設けられたバックカバーC2とを有する。
図2、及び
図3に示されるように、シートバックフレームF3は、対向する一対の左バックサイドフレーム1L及び右バックサイドフレーム1Rと、両バックサイドフレーム1L、1Rを接続するバックアッパフレーム3及びバックロアフレーム5と、バックアッパフレーム3に結合するヘッドレストフレーム7とを有する。
【0034】
各バックサイドフレーム1L、1Rは金属製の板材によって略上下に延びるように形成され、それぞれ水平方向の断面視で内側に向くコの字状をなす。各バックサイドフレーム1L、1Rは下端部において、リクライニング機構Rを介して各クッションサイドフレームF2の後端部にそれぞれ回動可能に結合している。リクライニング機構RはクッションサイドフレームF2に対する各バックサイドフレーム1L、1Rの傾倒角度を任意の角度に選択的に保持する。左バックサイドフレーム1L、及び右バックサイドフレーム1Rは左右方向に離間して配設され、シートバックS2の幅を形成している。左右のバックサイドフレーム1L、1Rの間には板状の架設部材8が設けられている。左右のバックサイドフレーム1L、1Rにはそれらを接続する所定の弾性部材9が掛け渡され、架設部材8は左右のバックサイドフレーム1L、1Rに弾性部材9を介して結合している。架設部材8は弾性部材9によってバックサイドフレーム1L、1Rに対して前後に変位することができ、弾性力を以て乗員の背部を支持する。本実施形態では架設部材8は板状部材を用いて形成されているが、板状部材には限定されず、ランバーサポート機能をもたらす構成(例えば、ばね等)によって形成される公知の構成であってよい。
【0035】
バックアッパフレーム3は正面視で逆U字状の金属製のパイプ状部材によって形成されている。バックアッパフレーム3の両端部はそれぞれ対応するバックサイドフレーム1L、1Rの内側面の上部に一部が重なり溶接等によって結合され、バックアッパフレーム3は両バックサイドフレーム1L、1Rの上端部を接続している。バックロアフレーム5もまた金属製のパイプ状部材によって形成され、両バックサイドフレーム1L、1Rの下部間に左右方向に延在し、バックロアフレーム5の左右両端はバックサイドフレーム1L,1Rの内側面に溶接等により結合されている。
【0036】
ヘッドレストフレーム7はバックアッパフレーム3の上部背面に結合する第1支持部50と、第1支持部50の上部前側に結合する第2支持部52及び第3支持部54とを有する。第1支持部50は正面視で逆U字状のパイプ部材によって形成され、その下端部がバックアッパフレーム3の上部前面に結合している。第1支持部50は、ヘッドレスト部S4の形状を形作ると共にヘッドレストピラーとしても機能する。第2支持部52は正面視で概ね逆U字状をなし側面視で略L字状に形成され、その下端が第1支持部50に結合している。第3支持部54もまた正面視で概ね逆U字状をなし、側面視で前方且つ上方へ延びるように形成され、その下端が第1支持部50に結合している。第1支持部50と、第2支持部52、及び第3支持部54によって、ヘッドレスト部S4の骨格が形成されている。
【0037】
更に、バックアッパフレーム3の上部の左右両端部にはそれぞれ、シートバックS2の乗員の肩部に当接する部分を構成するための金属のパイプ状部材であるショルダーフレーム6が設けられている。ショルダーフレーム6は一端がバックアッパフレーム3の上部外端に溶接によって結合されている。ショルダーフレーム6は、その一端から上方に延び、内方に屈曲し、他端において第1支持部50に溶接によって固定されている。
【0038】
図3に示されるように、左右のバックサイドフレーム1L、1Rの下端部後壁には、それぞれ、連結部材10が溶接等によって結合されている。連結部材10にはバックサイドフレーム1L、1RとバックカバーC2とを連結するため螺子孔が設けられている。
【0039】
左右のバックサイドフレーム1L、1Rの内側であり架設部材8の左右方向外側には、バックアッパフレーム3と左右のバックサイドフレーム1L、1Rとを接続するサブサイドフレーム30LU、30RUが設けられている。サブサイドフレーム30LU、30RUは共に屈曲した金属製の線状部材によって形成され、その上下方向の所定の位置には左右に対をなすフレーム側係止部32が設けられている。本実施形態では、フレーム側係止部32は、サブサイドフレーム30LU、30RUのうち、下方向に直線状に延びる部分として形成されている。更に、左右のサブサイドフレーム30LU、30RUの下方には、環状に屈曲した金属製の線状部材によって形成され、両端が左バックサイドフレーム1L、1Rに結合されたサブサイドフレーム30LD、30RDが設けられている。サブサイドフレーム30LD、30RDにも同様に、フレーム側係止部32が形成されている。フレーム側係止部32は全て、連結部材10より上方に配置されている。
【0040】
パッドユニットC1は、
図2及び
図4に示されるように、シートバックフレームF3を前方から結合する緩衝材であるパッド36とパッド36の前側を被覆する表皮37とを有する。表皮37はパッド36の前面を覆う形状をなす布状の部材であり、通気口S5に対応する位置に略四角形状に開口する表皮開口38(第1開口)が形成されている。パッド36はシートバックフレームF3の前側を覆う形状に形成され、その通気口S5に対応する位置に、概ね表皮開口38と同じ断面形状を有し、前後に貫通するパッド開口39(第3開口)が形成されている。
図8に示されるように、表皮37の表皮開口38の縁には組付時に位置決めをするための目印37Cが複数設けられている。本実施形態では、目印37Cは表皮37の裏面に印刷されることによって形成されている。
【0041】
図4に示されるように、通気口S5にはガーニッシュ40が装着されている。
図5に示されるように、ガーニッシュ40は前後に貫通し、両端が開口する穴であるガーニッシュ開口40Hを有し、略四角筒状に形成された胴部41と、胴部41の前端縁から径外方向に環状に延出する延出部42とを有する。胴部41の外周壁面は、上方且つ外方に向く第1面41A、外方を向く第2面41B、下方を向く第3面41C、及び内方を向く第4面41Dによって画定されている。ガーニッシュ40は更に、胴部41の外周壁面(41A~41D)において、それぞれの壁面から突出する複数の係止部43を有する。係止部43は延出部42から後方に離間し、延出部42に沿って並んで配置されている。本実施形態では、第1面41Aには左右方向に概ね等間隔に3つの係止部43が並んで設けられ、第3面41Cには左右方向に2つの係止部43が並んで設けられている。更に、第1面41Aには、係止部43それぞれの後方において、胴部41の径外方向(上方)に突出した第1面係止爪44Aが3つ設けられている。第3面41Cにも、第1面41Aと同様に、係止部43それぞれの後方において、胴部41の径外方向(上方)に突出した第3面係止爪44Cが2つ設けられている。第4面41Dには、第4面41Dから後方へ延びる支柱と、その支柱後端から外周壁面から外方に向けて突出する突起とを有する第4面係止爪44Dが1つ設けられている。
【0042】
隣り合う2つの第1面係止爪44Aの間には、それぞれ、第1面41Aから上方且つ後方に突出する突出部45が設けられている。第3面係止爪44Cの第4面41Dの側にも、第1面41Aと同様に、第3面41Cから下方且つ後方に突出する突出部45が設けられている。
図4に示されるように、第1面41Aに設けられた突出部45は第1面係止爪44Aよりも径外方向に突出し、第3面41Cに設けられた突出部45は第3面係止爪44Cよりも径外方向に突出している。そのため、ガーニッシュ40が装着されているときには、突出部45はそれぞれ、径外方向の突端において、パッド開口39の壁面に当接する。
【0043】
図4に示されるように、ガーニッシュ40の延出部42と係止部43との間には、プレート46が挟持されている。プレート46は略四角形の板状に形成され、
図6に示されるようにその略中心に貫通孔であるプレート開口47(第2開口)が形成されている。そのため、プレート46は略環状をなしている。プレート開口47はガーニッシュ40の側面である第1面41A、第2面41B、第3面41C、及び第4面41Dに対応する辺によって略四角形状に画定され、その外周は胴部41の外周と概ね同じ形状をなす。プレート46は、ガーニッシュ40に比べて可撓性が大きく、パッド36より可撓性の小さい樹脂によって形成されている。プレート46には、更に、その外周とプレート開口47とを繋ぐ切断部48が形成されている。更に、プレート開口47の外周には、突出部45、及び第4面係止爪44Dに対応する位置に、外方へ略方形に凹む切欠47Cが形成されている。また、プレート46の外周には、表皮37に形成された目印37Cに対応する位置に内周方向へ楔状に凹む切欠46Cが形成されている。
【0044】
図4、及び
図8に示されるように、プレート46は、その前側面が表皮37の裏面に当接し、表皮開口38とプレート開口47とが重なるように配置され、表皮37の表皮開口38に縫合されている。そのため、
図4に示されるように、プレート46が延出部42と係止部43との間に挟持されたときには、表皮37もまた、ガーニッシュ40の延出部42と係止部43の間に挟み込まれる。また、延出部42は表皮37の表皮開口38の縁部表面に沿って延出し、表皮開口38の縁部を表面から覆っている。したがって、通気口S5の周縁では、ガーニッシュ40の延出部42、表皮37、プレート46、及びパッド36が前方より記載の順に配置されている。
【0045】
図2に示されるように、バックカバーC2はシートバックS2の背面に沿って配設される樹脂製の板状部材であり、左右対称に形成されている。バックカバーC2は略方形をなす基部60と、基部60の上縁部から上方に延びる頭部61とを有する。
【0046】
基部60の上部には、通気口S5と対応する位置から前方に突出する左右1対の接続部63が形成されている。
図7に示されるように、接続部63にはその前端において開口し、その前端から後方に延びてバックカバーC2の背面に達する接続部貫通孔64が形成されている。そのため、接続部63は筒状をなしている。接続部貫通孔64の後端はバックカバーC2の背面に形成された開口部62にて開口している。
図4に示されるように、ガーニッシュ40の胴部41が接続部貫通孔64に挿入されることによって、ガーニッシュ40と接続部63とが結合する。このとき、接続部63は胴部41と突出部45との間に配置されている。
【0047】
ガーニッシュ40が接続部63から外れることを防止するため、接続部63にはその前縁に沿って、筒状の壁を貫通する複数の係合孔66が形成されている。
図8に示されるように、ガーニッシュ40と接続部63とが結合するとき、ガーニッシュ40の第1面係止爪44A、及び、第3面係止爪44Cがそれぞれ係合孔66に嵌め合う。第1面係止爪44A、及び、第3面係止爪44Cと係合孔66との嵌合によって、ガーニッシュ40が接続部63から外れ難くなる。
【0048】
更に、接続部63の外周面であって、ガーニッシュ40の胴部41が接続部貫通孔64に挿入されたときの第4面係止爪44Dに対応する位置には、その外周面から突出する係合部67が形成されている。
図7に示されるように、係合部67は接続部63の前端から突出し、概ね前後方向を向く主面を有する略方形な板状の係合壁67Aと、その係合壁67Aを前後に貫通する係合部貫通孔67Bとを有する。ガーニッシュ40の胴部41が接続部貫通孔64に挿入されるとき、第4面係止爪44Dはその後端において係合壁67Aに当接する。その後、ガーニッシュ40を後方へ移動させると、第4面係止爪44Dはその後端が接続部63の外周面から離れるように弾性変形し、第4面係止爪44Dの支柱が係合部貫通孔67Bに挿入される。挿入後、第4面係止爪44Dが復元し、第4面係止爪44Dの突起が係合部貫通孔67Bの開口縁に係止される。第4面係止爪44Dの突起が係合部貫通孔67Bに係止されることによって、ガーニッシュ40は接続部63に結合する。本実施形態では、ガーニッシュ40と接続部63との結合を強固にするため、係合壁67Aの上下縁は板状の支持部材67Cを介して接続部63の壁面に結合され、係合壁67Aの剛性が高められている。バックカバーC2の上部、及び上下方向の略中央部には、バックカバーC2の左右に対をなすカバー側係止部68が2対設けられている。頭部61の上端にはヘッドレストフレーム7に結合する所定の係止爪が設けられ、接続部63の下側にはショルダーフレーム6に結合する所定の係止爪が設けられている。
【0049】
バックカバーC2の基部60の下部であって、カバー側係止部68の下方であり、連結部材10に対応する位置に、バックカバーC2を前後に貫通する通し孔72が設けられている。
【0050】
次に、乗物用シートSのシートバックS2の組立方法について説明する。
図8に示されるように、プレート46を表面が表皮37の裏面に当接し、且つ、表皮開口38とプレート開口47が重なり整合する位置に配置する。このとき、プレート46の外周に形成された切欠46Cの位置を表皮開口38の縁部に設けられた目印37Cに合わせることによって、プレート46が表皮37に対して位置決めするとよい。位置決めした後、表皮開口38の少なくとも1周に渡って、プレート46と表皮37とを縫合する。縫合にはミシンを用い、縫合を開始するときに、ミシン針を切断部48に沿ってプレート開口47とプレート46の外周との概ね中間の位置に移動させるとよい。その後、プレート46の外周及び内周の概ね中間地点を辿る線(例えば、
図6の破線)に沿って、プレート46と表皮37とを縫合するとよい。
【0051】
その後、パッド開口39が予め形成されたパッド36を用意し、表皮開口38とパッド開口39とを対向させ、表皮37をパッド36の前面に張り合わせる。張り合わせが完了すると、プレート46は表皮37とパッド36の間に挟まれる。張り合わせる方法としては、接着剤による方法や表皮37の外周縁にフックを設けパッド36に設けられたワイヤに係止する方法等を用いるとよい。また、ポリウレタン等を発泡させることによってパッド36を形成すると同時に、パッド36を表皮37に結合させてもよい。
【0052】
パッド36の前面に表皮37を結合させた後、ガーニッシュ40の胴部41を表皮開口38、プレート開口47、及びパッド開口39に挿入する。挿入するときには、まず、ガーニッシュ40を突出部45、及び第4面係止爪44Dとプレート開口47の外周に形成された切欠47Cとが相対するように配置する。その後、ガーニッシュ40を表皮開口38から後方へ挿入し、胴部41を表皮開口38及びプレート開口47を通過させ、胴部41がパッド開口39に到達するまで押し込む。更にガーニッシュ40を延出部42と係止部43との間にプレート46が嵌めこまれるまで後方へ挿入すると、パッドユニットC1が完成する。このとき、
図4に示されるように、接続部63の前端が突出部45と第1面41Aとの間に挟み込まれ、突出部45は第1面41Aと協働して接続部63の上下方向の移動を規制している。
【0053】
次にバックカバーC2をシートバックフレームF3に結合させる。
図2に示されるように、基部60がサブサイドフレーム30L、30Rの後側であり、且つ、頭部61がヘッドレストフレーム7の後側に位置するようにバックカバーC2を配置する。その後、バックカバーC2をシートバックフレームF3の前方へ移動させ、接続部63をショルダーフレーム6及びバックアッパフレーム3の間に通す。更に、バックカバーC2をシートバックフレームF3に後方から押し付けると共に、カバー側係止部68とフレーム側係止部32とを係合させ、基部60、及び頭部61に設けられた係止爪をそれぞれヘッドレストフレーム7及びショルダーフレーム6に結合させる。カバー側係止部68とフレーム側係止部32とが係合し、バックカバーC2に設けられた係止爪がヘッドレストフレーム7及びショルダーフレーム6に結合することによって、バックカバーC2はシートバックフレームF3に係止される。その後、通し孔72に螺子を通し、バックカバーC2を連結部材10に螺子止めすることによって、バックカバーC2はシートバックフレームF3に固定される。
【0054】
その後、パッドユニットC1をシートバックフレームF3に結合させる。まず、パッドユニットC1をシートバックフレームF3の前方に配置する。その後、パッドユニットC1を後方へ移動させ、ガーニッシュ40の胴部41を接続部63の接続部貫通孔64に挿入する。このとき、
図8の一点鎖線によって示されるように、ガーニッシュ40の第1面係止爪44A及び第3面係止爪44Cを、それぞれ対応する接続部63の係合孔66に嵌め合わせる。同時に、第4面係止爪44Dを係合部67の係合部貫通孔67Bに挿入し、第4面係止爪44Dの突起を係合部貫通孔67Bの縁部に引っ掛ける。これによって、パッドユニットC1はバックカバーC2に固定され、シートバックフレームF3に結合する。更に、パッドユニットC1の左右両縁部をシートバックフレームF3の左右両端を覆うように配置することによって、シートバックS2が完成する。このとき、
図4に示されるように、ガーニッシュ開口40Hは接続部63の接続部貫通孔64に連通し、バックカバーC2の開口部62において開口している。これにより、シートバックS2には前後に貫通する通気口S5が形成されている。
【0055】
次に、乗物用シートSの効果について説明する。プレート46がガーニッシュ40の延出部42と係止部43との間に挟持されている。そのため、表皮開口38の周縁に押圧荷重が加わった場合でも、ガーニッシュ40に対するプレート46の相対位置は変化しにくい。また、プレート46には表皮37が結合しているため、表皮37とガーニッシュ40とに隙間が発生しにくい。
【0056】
また、表皮開口38の周縁では、前方より、表皮37、プレート46、及びパッド36が記載の順に配置されている。プレート46は、ガーニッシュ40に比べて可撓性が大きく、パッド36より可撓性の小さい樹脂によって形成されている。表皮開口38の周縁に加えられた押圧荷重はプレート46の全体に分散される。そのため、パッド36に局所的な変形が発生しにくく、表皮37とガーニッシュ40とに局所的な隙間が発生しにくくなる。表皮37とガーニッシュ40とに隙間が生じにくいため、通気口S5の周縁の美観が保たれる。更に、延出部42と表皮37との隙間や表皮開口38及びパッド開口39の開口に物を挟み込みにくくなる。また、表皮開口38において、表皮37の端部が露出せず、表皮37が破損しにくくなる。
【0057】
表皮開口38の縁に沿って板状のプレート46が表皮37に縫合されている。そのため、表皮37に孔を設け、その孔をプレート46に掛止する場合に比べ、プレート46と表皮37を結合させるために孔を形成する必要がない。表皮37に引張力が加えられても、その孔から亀裂が発生する虞もない。
【0058】
また、延出部42と係止部43との間に表皮37、及びプレート46が挟持されている。そのため、表皮37に引張力が加えられても、プレート46が延出部42と係止部43との間から外れ難く、表皮開口38の端部が露出することがない。胴部41から突出する突起を設けることによって係止部43を形成することができるため、係止部43の構成が簡素である。
【0059】
プレート46には外周とプレート開口47とを接続する切断部48が形成されている。そのため、ミシン針を切断部48に沿ってプレート開口47とプレート46の外周との概ね中間の位置に移動させることができ、縫合を始めやすくなる。また、プレート46は表皮37に一周に渡って縫合されているため、プレート46は表皮37の複数の箇所に設けられた孔に縫合糸を介して結合している。そのため、表皮37に引張荷重が加わっても複数の箇所に荷重が分散するため、表皮が破損しにくい。また、縫合することによって、プレート46と表皮37とを強固に、且つ簡便に結合することができる。
【0060】
図4に示されるように、接続部63は前端及び後端において開口する筒状に形成されている。ガーニッシュ40の胴部41には前後に開口するガーニッシュ開口40Hが形成され、その胴部41が接続部63の前端から挿入されている。そのため、接続部63と胴部41とが結合し、乗物用シートSの剛性が高められている。更に、接続部63と胴部41とが結合することによって、ガーニッシュ開口40Hと接続部貫通孔64とが連通し、シートバックS2を前後に貫通する通気口S5を形成することができる。
【0061】
プレート46に切断部48が設けられているため、ガーニッシュ40を表皮開口38から後方へ挿入したときに、切断部48が開くため、ガーニッシュ40の胴部41をプレート開口47に通過させることが容易である。また、プレート46はガーニッシュ40よりも可撓性が高いため、プレート46が組付時に変形しやすく、プレート46の組付がより容易になる。
【0062】
表皮開口38の縁部に形成された目印37Cと、プレート46の外周に形成された切欠46Cとによって、表皮37に対してプレート46を容易に適正な位置に配置することができる。また、ガーニッシュ40の外周壁面に形成された突出部45とプレート46の内周縁に形成された切欠47Cとによって、ガーニッシュ40に対してプレート46を容易に適正な位置に配置することができる。突出部45に切欠47Cを通過させることができるため、ガーニッシュ40にプレート46を容易に結合させることができる。
【0063】
図4に示されるように、ガーニッシュ40の後端がバックカバーC2の接続部63に結合し、バックカバーC2はシートバックフレームF3に結合している。そのため、ガーニッシュ40がパッド36から外れ難く、適正な位置からずれにくくなる。
【0064】
接続部63は胴部41と突出部45との間に配置されている。そのため、胴部41を接続部63に接続するときに、接続部63の外周壁面の外方への移動が突出部45によって規制され、外周壁面の内方への移動が胴部41によって規制される。温度変化や外部からの衝撃により、接続部63等にも歪みが生じた場合でも、接続部63の内方及び外方から押さえつけられることにより、組付時に接続部63の歪みが修正される。また、左右の接続部63の歪みを修正することによって、バックカバーC2全体の歪みも修正することができ、乗物用シートS全体の意匠性を向上させることができる。
【0065】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。本実施形態では、プレート46は表皮開口38に縫合されていたが縫合には限定されず、接着剤や両面テープ等で結合されていてもよい。ガーニッシュ40は樹脂によって形成されていたが、金属や木材等によって形成されていてもよい。
【0066】
本実施形態では、ガーニッシュ40はシートバックフレームF3に固定されたバックカバーC2に結合することによって適正な位置からずれにくくなるように構成されていたが、この態様には限定されない。例えば、ガーニッシュ40の後端を直接シートバックフレームF3に固定する態様であってもよい。また、ガーニッシュ40の後端がシートバックフレームF3に設けられた取付部材に結合されていてもよい。シートバックフレームF3の前面、背面の両面からガーニッシュ40が挿入され、それらの端部が互いに結合されている態様であってもよい。
【0067】
また、目印37Cは表皮37の裏面に印刷されることによって形成されていたが、この態様には限らず、表皮37に設けられた突起など、視認できるいかなる態様であってもよい。
【0068】
ガーニッシュ40はシートバックS2に形成された通気口S5を形成する部材として用いられていたが、これには限定されず、表皮37に設けられた表皮開口38の周縁に設けられる部材であればいかなるものであってもよい。本発明は、例えば、シートクッションS1に設けられるシートベルト用通し孔の周縁に設けられるベルトガイドに適用することができる。
【0069】
本実施形態では、パッド36に左右一対のパッド開口39が形成され、左右に対をなすガーニッシュ40がそれぞれパッド開口39に嵌め込まれていたが、
図9に示されるように、2つのパッド開口39に、上記実施形態の左右一対のガーニッシュ40の延出部42が互いに結合部100を介して結合して一体となった枠部材102が取り付けられていてもよい。このとき、2つのパッド開口39の間が前側から結合部100によって覆われるため、2つのパッド開口39の間を表皮37によって覆う必要がなく、表皮37の面積を減らすことができる。
【0070】
また、本実施形態では本発明が乗物用シートに適用されていたが、乗物用シートには限定されない。例えば、本発明は座椅子、ソファ等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0071】
36 :パッド
37 :表皮
37C :目印
38 :表皮開口(第1開口)
39 :パッド開口(第3開口)
40 :ガーニッシュ
41 :胴部
42 :延出部
43 :係止部
44A :第1面係止爪(係止爪)
44C :第3面係止爪(係止爪)
45 :突出部
46 :プレート
46C :切欠
47 :プレート開口(第2開口)
47C :切欠
48 :切断部
63 :接続部
66 :係合孔
F3 :シートバックフレーム(フレーム)
S :乗物用シート(シート)