(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074937
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】細胞免疫療法のための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20240524BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/12 20060101ALI20240524BHJP
C07K 14/725 20060101ALI20240524BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20240524BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240524BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240524BHJP
C12N 5/0783 20100101ALI20240524BHJP
C07K 16/00 20060101ALI20240524BHJP
A61K 35/17 20150101ALI20240524BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240524BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240524BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240524BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240524BHJP
C12N 15/63 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C12N15/12
C07K14/725
C07K14/705
C07K19/00
C12N5/10
C12N5/0783
C07K16/00
A61K35/17
A61P7/00
A61P31/12
A61P35/00
A61P35/02
A61P37/04
C12N15/63 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061338
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2021185540の分割
【原出願日】2013-08-20
(31)【優先権主張番号】61/691,117
(32)【優先日】2012-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】522176001
【氏名又は名称】フレッド ハッチンソン キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】515045617
【氏名又は名称】シアトル チルドレンズ ホスピタル (ディービーエイ シアトル チルドレンズ リサーチ インスティテュート)
【住所又は居所原語表記】1900 Ninth Ave. Seattle, WA 98101 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ジェンセン
(72)【発明者】
【氏名】スタンリー アール. リデル
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル フデチェク
(57)【要約】
【課題】キメラ受容体を発現させるように遺伝子改変された、CD8+セントラルメモリーT細胞またはセントラルメモリーT細胞とCD4+ T細胞の組合せを養子移入することなどにより、細胞免疫療法により媒介される免疫応答を付与し、そして/またはこれを増進させる核酸、ベクター、宿主細胞、方法、および組成物を提供すること。
【解決手段】実施形態では、遺伝子改変宿主細胞は、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチド、カスタマイズされたスペーサー領域を含むポリヌクレオチド、膜貫通ドメインを含むポリヌクレオチド、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むポリヌクレオチドを含む核酸を含む。驚くべきことに、スペーサー領域の長さが、in vitroで標的細胞を認識するキメラ受容体改変T細胞の能力に影響を及ぼし、キメラ受容体改変T細胞のin vivoにおける有効性に影響を及ぼしうることが見出された。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書および図面に記載の物、方法またはシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、国際特許出願として2013年8月20日に出願されており、2012年8月20日に出願された米国特許出願第61/691,117号の優先権の利益を請求し、本開示は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、生物医学の分野および具体的にはがん治療に有用な方法に関する。特に、本発明の実施形態は、腫瘍ターゲティング受容体により改変されたT細胞を含む細胞免疫療法を実施するための方法および組成物に関する。
【0003】
連邦政府による支援研究に関する言明
本発明は、米国保健福祉省およびLeukemia and Lymphoma Societyからの助成金の形態の政府援助により行った。米国政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0004】
遺伝子導入により、腫瘍細胞上の発現する表面分子に特異的なキメラ抗原受容体(キメラ受容体)を発現させるように操作されたヒトTリンパ球の養子移入は、進行した悪性腫瘍を有効に処置する潜在的可能性を有する。キメラ受容体とは、細胞外リガンド結合ドメインを含む合成受容体、最も一般には、細胞内シグナル伝達構成成分へと連結されたモノクローナル抗体の単鎖可変断片(scFv)、最も一般には、単独であるかまたは1つもしくは複数の共刺激ドメインと組み合わせたCD3ζである。キメラ受容体のデザインにおける研究の大半は、不可欠な正常組織に対する重篤な毒性を引き起こさずに、悪性細胞をターゲティングするscFvおよび他のリガンド結合エレメントを規定すること、ならびにT細胞エフェクター機能を活性化させる細胞内シグナル伝達モジュールの最適な組成を規定することに焦点を当てている。しかし、優れたin vitro機能を媒介するキメラ受容体のデザインの変異が、キメラ受容体により改変されたT細胞の臨床適用におけるin vivoの治療活性の改善へと再現可能に転換されるのかどうかは不確実である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
治療活性に重要なキメラ受容体のデザインのエレメント、ならびに遺伝子改変し、養子移入するための細胞集団であって、in vivoにおける生存の増強および有効性をもたらす細胞集団を決定するための方法を同定することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、本開示は、CD8+ T細胞またはCD4+ T細胞の腫瘍特異的な遺伝子改変サブセットを、単独または組合せで養子移入することなどにより、細胞免疫療法により媒介される免疫応答を付与し、かつ/またはこれを増進させる方法および組成物に関する。本開示は、キメラ受容体核酸、ならびにこのような核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提示する。キメラ受容体をコードする核酸配列は、T細胞を効率的に活性化させ、特異的標的分子または標的分子上のエピトープを認識するためのキメラ受容体をカスタマイズするために、切り出し、他の構成成分で置きかえうる多数のモジュラー構成成分を一体に連結する。
【0007】
実施形態では、キメラ受容体核酸は、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、リガンドが、悪性細胞上または感染細胞上で発現する分子であるポリヌクレオチドと、約200アミノ酸以下であるポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含む。実施形態では、ポリペプチドスペーサーは、Ig FcのCH2およびCH3の配列またはCH3だけの配列を含むがこれらに限定されない他のアミノ酸配列へと連結されうるアミノ酸配列X1PPX2Pを含有する改変IgG4ヒンジ領域を含む。驚くべきことに、シグナル伝達能を有さないと仮定されているスペーサー領域の長さは、キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞のin vivoにおける有効性に影響を及ぼし、最適な腫瘍細胞または標的細胞の認識のために、個別の標的分子に応じてカスタマイズする必要があることが見出された。
【0008】
本開示の別の態様は、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、またはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する、標的細胞集団上で発現する任意の他の分子であるポリヌクレオチドと、各ターゲティングされるリガンドに特異的な、カスタマイズされた長さのポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドであって、スペーサーが、基準キメラ受容体と比較したT細胞増殖および/またはサイトカイン産生の増強をもたらすポリヌクレオチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含む単離キメラ受容体核酸を提示する。実施形態では、標的リガンド上のエピトープが、膜近位にある場合は、長鎖スペーサーを援用し、標的リガンド上のエピトープが、膜遠位にある場合は、短鎖スペーサーを援用する。本開示は、本明細書で記載される単離キメラ受容体を含む発現ベクターおよび宿主細胞を含む。
【0009】
本開示の別の態様は、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、または標的細胞集団上で発現し、リンパ球による認識および除去を媒介するようにターゲティングされうる任意の他の分子である、リガンド結合ドメインと、約10~229アミノ酸であるポリペプチドスペーサーと、膜貫通ドメインと、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ受容体ポリペプチドを提示する。実施形態では、ポリペプチドスペーサーは、アミノ酸配列X1PPX2Pを含有する改変IgGヒンジ領域を含む。
【0010】
別の態様では、本開示は、腫瘍特異的でサブセット特異的な遺伝子改変CD4+ T細胞を養子移入することなどにより、細胞免疫療法により媒介される免疫応答を付与し、かつ/またはこれを増進させる組成物であって、CD4+ T細胞が、抗腫瘍反応性を維持し、腫瘍特異的増殖を増大させ、かつ/または最大化するCD8+ T細胞の能力を付与し、かつ/またはこれを増進させる組成物を提示する。実施形態では、CD4+細胞は、本明細書で記載されるキメラ受容体核酸および/またはキメラ受容体ポリペプチドを発現させるように遺伝子改変されている。
【0011】
別の態様では、本開示は、腫瘍特異的でサブセット特異的な遺伝子改変CD8+ T細胞を養子移入することなどにより、細胞免疫療法により媒介される免疫応答を付与し、かつ/またはこれを増進させる組成物を提示する。実施形態では、CD8+細胞は、本明細書で記載されるキメラ受容体核酸および/またはキメラ受容体ポリペプチドを発現させる。
【0012】
別の実施形態では、本発明は、免疫応答を付与し、かつ/もしくはこれを増進させる遺伝子改変CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物であって、疾患もしくは障害と関連するリガンドに対するリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサー領域、膜貫通ドメイン、および共刺激ドメインなど、T細胞もしくは他の受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を発現させるCD8+ T細胞を含む細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物、ならびに/または遺伝子改変ヘルパーTリンパ球細胞調製物であって、疾患もしくは障害と関連するリガンドに特異的な抗体可変ドメイン、カスタマイズされたスペーサー領域、膜貫通ドメイン、および1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を発現させるCD4+ T細胞を有するヘルパーTリンパ球細胞調製物を有する養子細胞免疫療法組成物を提供する。
【0013】
一実施形態では、本発明は、細胞性免疫応答をもたらす遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物を被験体へと投与することにより、疾患または障害を有する被験体において、細胞免疫療法を実施する方法であって、細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物が、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、またはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する標的細胞集団上で発現する任意の他の分子であるポリヌクレオチドと、各ターゲティングされるリガンドに特異的な、カスタマイズされた長さのポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドであって、スペーサーが、基準キメラ受容体と比較したT細胞増殖および/またはサイトカイン産生の増強をもたらすポリヌクレオチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含むキメラ受容体を有するCD8+ T細胞を含む方法を提供する。実施形態では、リガンド結合ドメインは、疾患または障害と関連するリガンドに特異的な細胞外抗体可変ドメインである。実施形態は、遺伝子改変ヘルパーTリンパ球細胞調製物を含み、ヘルパーTリンパ球細胞調製物が、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、またはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する、標的細胞集団上で発現する任意の他の分子であるポリヌクレオチドと、各ターゲティングされるリガンドに特異的な、カスタマイズされた長さのポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドであって、スペーサーが、基準キメラ受容体と比較したT細胞増殖および/またはサイトカイン産生の増強をもたらすポリヌクレオチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含むキメラ受容体を有するCD4+ T細胞を含む。実施形態では、遺伝子改変CD8+細胞集団および遺伝子改変CD4+細胞集団を、共投与する。実施形態では、T細胞は、自家T細胞または同種T細胞である。
【0014】
上記の方法の多様な改変が可能である。例えば、CD4+ T細胞およびCD8+ T細胞が発現させるキメラ受容体は、同じ場合もあり、異なる場合もある。
【0015】
別の態様では、本発明は、細胞性免疫応答を誘発し、抗原反応性キメラ受容体を発現させる、キメラ受容体により改変された腫瘍特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物であって、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、もしくはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する、標的細胞集団上で発現する任意の他の分子であるリガンド結合ドメインと、各ターゲティングされるリガンドに特異的な、カスタマイズされた長さのポリペプチドスペーサーであって、基準キメラ受容体と比較したT細胞増殖および/もしくはサイトカイン産生の増強をもたらすスペーサーと、膜貫通ドメインと、1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ受容体を有するCD8+ T細胞を含む、改変された細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物を得;かつ/または改変されたナイーブCD4+ヘルパーT細胞もしくはメモリーCD4+ヘルパーT細胞であって、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、もしくはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する、標的細胞集団上で発現する任意の他の分子であるリガンド結合ドメインと、各ターゲティングされるリガンドに特異的な、カスタマイズされた長さのポリペプチドスペーサーであって、基準キメラ受容体と比較したT細胞増殖および/もしくはサイトカイン産生の増強をもたらすスペーサーと、膜貫通ドメインと、1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインとを含むキメラ受容体を有するCD4+細胞を含む、改変されたヘルパーTリンパ球細胞調製物を得ることにより、養子免疫療法組成物を製造する方法を提供する。
本発明は、例えば、以下の項目も提供する。
(項目1)
a)リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、該リガンド結合ドメインがリガンドに結合し、該リガンドが、腫瘍特異的分子、ウイルス分子、またはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する、標的細胞集団上で発現する任意の他の分子である、ポリヌクレオチドと、
b)該リガンドに特異的な長さのポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドであって、該スペーサーが、該リガンドに応答して、基準キメラ受容体と比較したT細胞増殖および/またはサイトカイン産生の増大をもたらす、ポリヌクレオチドと、
c)膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、
d)細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドと
を含む、キメラ受容体核酸。
(項目2)
前記リガンド結合ドメインが、抗体断片である、項目1に記載のキメラ受容体核酸。
(項目3)
前記リガンド結合ドメインが、単鎖可変断片である、項目2に記載のキメラ受容体核酸。
(項目4)
前記腫瘍特異的分子が、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、メソテリン、c-Met、PSMA、Her2、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組合せからなる群から選択される、項目1から3のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目5)
前記スペーサーが、X1PPX2Pのアミノ酸配列を含む、項目1から4のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目6)
前記スペーサー領域が、ヒト抗体のヒンジ領域の一部分を含む、項目5に記載のキメラ受容体核酸。
(項目7)
前記スペーサー領域が、ヒンジ領域ならびにCH1、CH2、CH3、およびこれらの組合せからなる群から選択されるヒト抗体のFcドメインのうちの少なくとも1つの他の部分を含む、項目5に記載のキメラ受容体核酸。
(項目8)
前記スペーサー領域が、12アミノ酸以下、119アミノ酸以下、および229アミノ酸以下からなる群から選択される長さである、項目1から7のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目9)
前記リガンド結合ドメインが、ROR1上でリガンドに結合し、前記スペーサー領域が、配列番号4および配列番号49(ヒンジ-CH3)からなる群から選択される、項目5に記載のキメラ受容体核酸。
(項目10)
前記リンパ球活性化ドメインが、CD27、CD28、4-1BB、OX-40、CD30、CD40、PD-1、ICOS、LFA-1、CD2、CD7、NKG2C、B7-H3、およびこれらの組合せからなる群から選択される共刺激ドメインと組み合わせたCD3ゼータの全部または一部分を含む、項目1から9のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目11)
前記細胞内シグナル伝達ドメインが、CD3ゼータの一部分および4-1BBの一部分、CD28の一部分、または両方を含む、項目10に記載のキメラ受容体核酸。
(項目12)
前記リガンド結合ドメインが、ROR1に結合し、前記スペーサー領域が、12アミノ酸以下であり、配列番号4の配列を有する、項目4から11のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目13)
前記リガンド結合ドメインが、ROR1に結合し、前記スペーサー領域が、配列番号50の配列を有する、項目4から11のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目14)
前記リガンド結合ドメインが、CD19に結合し、前記スペーサー領域が、12アミノ酸以下であり、配列番号4の配列を有する、項目4から11のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目15)
前記リガンド結合ドメインが、Her2に結合し、前記スペーサー領域が、配列番号50の配列を有する、項目4から11のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目16)
マーカー配列をコードする核酸をさらに含む、項目1から15のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸。
(項目17)
項目1から16のいずれか一項に記載のキメラ受容体核酸によりコードされるキメラ受容体ポリペプチド。
(項目18)
項目1から16のいずれか一項に記載の単離キメラ受容体核酸を含む発現ベクター。
(項目19)
項目1から16のいずれか一項に記載の核酸または項目18に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
(項目20)
ナイーブCD8+ T細胞、セントラルメモリーCD8+ T細胞、エフェクターメモリーCD8+ T細胞、およびバルクCD8+ T細胞からなる群から選択されるCD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞である、項目19に記載の宿主細胞。
(項目21)
前記CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞が、セントラルメモリーT細胞であり、前記セントラルメモリーT細胞が、CD45RO+、CD62L+、およびCD8+について陽性である、項目20に記載の宿主細胞。
(項目22)
ナイーブCD4+ T細胞、セントラルメモリーCD4+ T細胞、エフェクターメモリーCD4+ T細胞、およびバルクCD4+ T細胞からなる群から選択されるCD4+ ヘルパーTリンパ球細胞である、項目19に記載の宿主細胞。
(項目23)
前記CD4+ ヘルパーリンパ球細胞が、ナイーブCD4+ T細胞であり、前記ナイーブCD4+ T細胞が、CD45RA+、CD62L+、およびCD4+について陽性であり、CD45ROについて陰性である、項目22に記載の宿主細胞。
(項目24)
薬学的に許容される賦形剤中に項目19から23のいずれか一項に記載の宿主細胞を含む組成物。
(項目25)
項目20または21に記載の宿主細胞および項目23または34に記載の宿主細胞を含む、項目24に記載の組成物。
(項目26)
項目19から23のいずれか一項に記載の宿主細胞を調製するためのin vitroの方法であって、
a)項目1から16または18のいずれか一項に記載のキメラ受容体をコードする核酸のライブラリーを提供するステップであって、該複数の核酸の各々が、長さが異なるキメラ受容体をコードする、ステップと、
b)該複数の核酸の各々を、別々の単離Tリンパ球集団へと導入し、各Tリンパ球集団をin vitroで増やすステップと、
c)各遺伝子改変Tリンパ球集団を、腫瘍を保有する動物モデルへと投与し、遺伝子改変Tリンパ球集団が、抗腫瘍有効性を有するのかどうかを決定するステップと、
d)in vitroおよび/または動物モデルにおいて抗腫瘍有効性をもたらす該キメラ受容体をコードする核酸を選択するステップと
を含む方法。
(項目27)
前記キメラ受容体をコードする選択された核酸を、宿主細胞へと導入するステップをさらに含む、項目26に記載の方法。
(項目28)
項目19から23のいずれか一項に記載の宿主細胞を調製するためのin vitroの方法であって、
a)項目1から16のいずれか一項に記載の核酸または項目18に記載の発現ベクターを、CD45RA-、CD45RO+、およびCD62L+の表現型を有するリンパ球集団へと導入するステップと、
b)抗CD3および/または抗CD28、ならびに少なくとも1つのホメオスタシスサイトカインの存在下で、該細胞が、細胞注入としての使用のために十分に増えるまで、該細胞を培養するステップと
を含む方法。
(項目29)
前記リンパ球が、CD8+またはCD4+である、項目26から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
がんまたはウイルス感染の処置における、項目19から23のいずれか一項に記載の宿主細胞または項目24から25に記載の組成物の使用。
(項目31)
前記がんが、固形腫瘍または血液悪性腫瘍である、項目30に記載の使用。
(項目32)
前記固形腫瘍が、乳がん、肺がん、結腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、および卵巣がんからなる群から選択される、項目31に記載の使用。
(項目33)
がんまたはウイルス感染を有する被験体において細胞免疫療法を実施する方法であって、項目24から25のいずれか一項に記載の組成物または項目19から23に記載の宿主細胞を前記被験体へと投与するステップを含む方法。
(項目34)
前記がんが、固形腫瘍または血液悪性腫瘍から選択される、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記固形腫瘍が、乳がん、肺がん、結腸がん、腎臓がん、膵臓がん、前立腺がん、および卵巣がんからなる群から選択される、項目34に記載の方法。
【0016】
本発明のこれらの実施形態および他の実施形態については、付属の明細書、図面、および特許請求の範囲においてさらに記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、スペーサー配列のライブラリーを示す図である。本発明者らは、IgG4ヒンジ単独、CH2ドメインおよびCH3ドメインへと連結されたIgG4ヒンジ、またはCH3ドメインへと連結されたIgG4ヒンジを含む細胞外の構成成分をコードする、コドンを最適化したDNA配列を含有するプラスミドライブラリーを構築した。任意のscFV配列(VHおよびVL)を、可変スペーサードメインのこのライブラリーをコードする配列に対して5’側にクローニングすることができる。スペーサードメインは、結果としてCD28膜貫通ドメインおよびCD28細胞内シグナル伝達ドメインならびにCD3ゼータへと連結される。ベクター内のT2A配列は、キメラ受容体を、切断型ヒト上皮成長因子受容体(tEGFR)をコードする選択マーカーから隔てる。
【0018】
【
図2】
図2は、スペーサー長を改変した2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞のin vitroにおける細胞傷害作用、これらによるサイトカイン産生、およびこれらの増殖を示す図である。(A)精製CD8
+T
CMに由来する細胞系であって、長鎖スペーサードメインを伴う2A2 ROR1キメラ受容体、中間鎖スペーサードメインを伴う2A2 ROR1キメラ受容体、および短鎖スペーサードメインを伴う2A2 ROR1キメラ受容体の各々により改変された細胞系の表現型を示す図である。2A2 scFV内のエピトープに結合する抗F(ab)抗体による染色は、全長スペーサーを伴うROR1キメラ受容体または切断型スペーサーを伴うROR1キメラ受容体の表面における発現を示す。(B)長鎖スペーサー(黒丸)、中間鎖スペーサー(黒上三角)、および短鎖スペーサー(黒菱形)を伴う多様な2A2 ROR1キメラ受容体、またはtEGFR対照レンチウイルスベクターを発現させるT細胞の、ROR1
+(×)標的細胞および対照標的細胞に対する細胞溶解活性を示す図である。棒グラフは、2A2 ROR1「長鎖」キメラ受容体による細胞溶解活性=1に照らして標準化され、スチューデントのt検定により解析された、3回にわたる個別の実験に由来する細胞傷害作用データ(E:T=30:1)についてまとめる。(C)CFSE色素の希釈を使用して、外因性サイトカインの添加を伴わない、Raji/ROR1細胞(左パネル)および初代CLL細胞(右パネル)による刺激の72時間後における、2A2 ROR1キメラ受容体T細胞およびtEGFR対照T細胞の増殖を測定したことを示す図である。解析のために3連のウェルをプールし、CD8
+生(PI
-)T細胞の増殖を解析した。各ヒストグラムの上方の数は、増殖するサブセットが経た細胞分裂の回数を指し示し、≧4/3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各プロットの隣に提示する。(D)多様な2A2 ROR1キメラ受容体を発現させる5×10
4個のT細胞の、Raji/ROR1細胞および初代CLL細胞を伴う3連の共培養から24時間後に得られる上清についての、マルチプレックスサイトカインアッセイを示す図である。3回にわたる個別の実験に由来するマルチプレックスサイトカインデータは、標準化し(2A2 ROR1「長鎖」キメラ受容体によるサイトカインの放出=1として)、スチューデントのt検定により解析した(右棒グラフ)。
【0019】
【
図3】
図3は、R11キメラ受容体が、ROR1
+腫瘍細胞を認識するために長鎖スペーサーを要求することを示す図である。チロシンキナーゼROR1のオーファン受容体の膜近位クリングルドメイン内のエピトープに特異的なR11モノクローナル抗体に由来するscFVをコードする配列を、4-1BB共刺激ドメインを含有する本発明者らのキメラ受容体ライブラリー内の、IgG4ヒンジだけの配列(短鎖)、IgG4ヒンジ/CH3配列(中間鎖)、およびIgG4ヒンジ/CH2/CH3配列の上流にクローニングし、レンチウイルスベクターとして調製した。A)ヒトCD8
+T細胞に形質導入し、短鎖キメラ受容体、中間鎖キメラ受容体、および長鎖キメラ受容体の各々による形質導入効率を、tEGFRマーカーについての染色により決定したことを示す図である。B)短鎖を発現させる形質導入T細胞(上)、中間鎖を発現させる形質導入T細胞(中)、および長鎖を発現させる形質導入T細胞(下)を、K562白血病細胞単独またはROR1を発現させるようにトランスフェクトされたK562白血病細胞の溶解についてアッセイしたことを示す図である。長鎖スペーサーキメラ受容体を発現させるT細胞だけが、ROR1+K562細胞を効率的に死滅させた。C)短鎖を発現させる形質導入T細胞(上)、中間鎖を発現させる形質導入T細胞(中)、および長鎖を発現させる形質導入T細胞(下)を、CFSEで標識し、ROR1またはCD19(対照)を発現させるK562細胞で刺激し、細胞増殖について、72時間にわたりアッセイしたことを示す図である。長鎖スペーサーキメラ受容体を発現させるT細胞は、ROR1+K562細胞に対して特異的に増殖した。D)短鎖を発現させる形質導入T細胞(上)、中間鎖を発現させる形質導入T細胞(中央)、および長鎖を発現させる形質導入T細胞(下)を、ROR1またはCD19(対照)を発現させるRajiリンパ腫細胞およびK562細胞で刺激し、インターフェロンガンマの上清への分泌について、24時間にわたりアッセイしたことを示す図である。長鎖スペーサーキメラ受容体を発現させるT細胞は、増殖し、ROR1陽性標的細胞に応答して、最高レベルのインターフェロンガンマを産生した。
【0020】
【
図4】
図4は、スペーサー長が改変され、アフィニティーが異なる2A2 scFVおよびR12 scFVに由来する、ROR1キメラ受容体のデザインを示す図である。(A)2A2 scFV、「ヒンジ-CH2-CH3」(長鎖スペーサー;229アミノ酸)、「ヒンジ-CH3」(中間鎖;119アミノ酸)、または「ヒンジ」だけ(短鎖;12アミノ酸)のIgG4-Fcに由来するスペーサー、ならびにCD3ζおよびCD28を伴うシグナル伝達モジュールを含有するROR1キメラ受容体のパネルをコードするレンチウイルストランス遺伝子インサートのデザインを示す図である。各キメラ受容体カセットは、T2Aエレメントの下流においてコードされる切断型EGFRマーカーを含有する。(B)R12 scFVおよび2A2 scFVに由来するROR1特異的キメラ受容体であって、それぞれ、短鎖IgG4-Fc「ヒンジ」スペーサー(12アミノ酸)と、CD28または4-1BBおよびCD3ζを含有するシグナル伝達モジュールとを伴うROR1特異的キメラ受容体をコードするレンチウイルストランス遺伝子インサート(合計:4つの構築物)を示す図である。
【0021】
【
図5】
図5は、2A2よりアフィニティーが大きなmAbであるR12に由来するROR1キメラ受容体により改変されたT細胞の抗腫瘍反応性を示す図である。(A)短鎖IgG4-Fc「ヒンジ」スペーサー、およびCD28共刺激ドメインまたは4-1BB共刺激ドメインを伴うR12 ROR1キメラ受容体および2A2 ROR1キメラ受容体の各々により改変された、CD8
+T
CMに由来する精製されたポリクローナルT細胞系上におけるtEGFR発現を示す図である。(B)R12 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞(28-黒上三角;4-1BB-白上三角)および2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞(28-黒丸;4-1BB-白丸)、またはtEGFR対照ベクターを発現させるT細胞(×)による、ROR1
+標的細胞および対照標的細胞に対する細胞傷害作用を示す図である。(C)多様なROR1キメラ受容体を発現させる5×10
4個のT細胞の、Raji/ROR1腫瘍細胞との共培養から24時間後に得られる上清についてのマルチプレックスサイトカインアッセイを示す図である。中央/右の棒グラフは、3回にわたる個別の実験に由来する、標準化(ROR1キメラ受容体2A2によるサイトカインの放出=1とする)マルチプレックスデータであって、スチューデントのt検定により解析されたマルチプレックスデータを示す。(D)Raji/ROR1細胞を伴うが、外因性サイトカインの添加を伴わない刺激の72時間後における、ROR1キメラ受容体T細胞およびtEGFR対照T細胞の増殖を、CFSE色素の希釈により評価したことを示す図である。各ヒストグラムの上方の数は、増殖するサブセットが経た細胞分裂の回数を指し示し、≧4/3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各プロットの上方に提示する。
【0022】
【
図6】
図6は、2A2よりアフィニティーが大きなmAbであるR12に由来するROR1キメラ受容体により改変されたCD4
+T細胞系によるサイトカイン産生およびこれらの増殖についての解析を示す図である。(A~B)2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体が、短鎖スペーサーおよびCD28共刺激ドメインを有したことを示す図である。(A)2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体を発現させる5×10
4個のCD4
+T細胞を、Raji/ROR1腫瘍細胞で刺激した24時間後において得られる上清に由来するマルチプレックスサイトカイン解析を示す図である。(B)Raji/ROR1細胞を伴うが、外因性サイトカインの添加を伴わない刺激の72時間後における、CD4
+ R12 ROR1キメラ受容体および2A2 ROR1キメラ受容体T細胞およびtEGFR対照T細胞の増殖を、CFSE色素の希釈により評価したことを示す図である。各ヒストグラムの上方の数は、増殖するサブセットが経た細胞分裂の回数を指し示し、≧5/4/3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、ヒストグラムの上方に提示する。
【0023】
【
図7】
図7は、最適な短鎖スペーサーおよび4-1BB共刺激ドメインを伴う2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体またはCD19特異的キメラ受容体で改変されたT細胞による初代CLLの認識を示す図である。(A)キメラ受容体T細胞上のCD28(白色のヒストグラム)と関与しうる、初代CLL上のROR1/CD19の発現、ならびに初代CLL上およびRaji/ROR1腫瘍細胞上のCD80/86の発現(黒色ドットによるプロット)を示す図である。マッチさせたアイソタイプ対照mAbによる染色を、グレーのドットによるプロット/ヒストグラムとして示す。(B)2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞(黒丸)およびR12 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞(黒四角)、CD19特異的キメラ受容体を発現させるT細胞(黒上三角)、ならびにtEGFR対照ベクターにより改変されたT細胞(×)の、初代CLL細胞に対する細胞溶解活性(左グラフ)および正常B細胞に対する細胞溶解活性(右グラフ)であって、クロム放出アッセイにより解析された細胞溶解活性を示す図である。4回にわたる個別の実験(E:T=30:1)に由来する、初代CLLに対する細胞傷害作用データは、標準化し(ROR1キメラ受容体2A2による細胞溶解活性=1として)、スチューデントのt検定により解析した(棒グラフ)。(C)5×10
4個のキメラ受容体T細胞の、初代CLL細胞による、24時間にわたる刺激の後におけるマルチプレックスサイトカイン解析を示す図である。刺激されなかったキメラ受容体T細胞のサイトカイン放出は、3.6pg/mlを下回った(検出限界)(左棒グラフ)。初代CLLとの24時間にわたる共培養の後における、5×10
4個の2A2 ROR1キメラ受容体T細胞およびR12 ROR1キメラ受容体T細胞によるIFN-γ産生についてのELISAである。O.D.の1は、約250pg/mlに対応する(右棒グラフ)。(D)初代CLL細胞を伴う刺激の72時間後における、2A2 ROR1キメラ受容体、R12 ROR1キメラ受容体、およびCD19キメラ受容体により改変されたCD8
+T細胞の増殖を示す図である。各ヒストグラムの上方の数は、細胞分裂の回数を指し示し、≧3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各プロットの隣に提示する。
【0024】
【
図8】
図8は、ROR1キメラ受容体およびCD19キメラ受容体により改変されたCD8
+T細胞の、初代CLLに対する機能が、キメラ受容体により改変されたCD4
+ヘルパーT細胞を介して増進することを示す図である。(A)初代CLLと共に24時間にわたりインキュベートされた、それぞれ、R12 ROR1キメラ受容体およびCD19キメラ受容体を発現させる、5×10
4個のCD8
+T細胞およびCD4
+T細胞の3連の共培養からのIL-2産生についてのELISAを示す図である。O.D.の1は、およそ800pg/mlに対応する。(B)キメラ受容体により改変されたCD8
+T細胞の、初代CLLに応答する増殖が、キメラ受容体により改変されたCD4
+T細胞を添加することにより増強されることを示す図である。それぞれ、2A2 ROR1キメラ受容体、R12 ROR1キメラ受容体、およびCD19キメラ受容体を発現させる、CFSE標識CD8
+T細胞を、腫瘍細胞、ならびに2A2 ROR1キメラ受容体、R12 ROR1キメラ受容体、およびCD19キメラ受容体を形質導入されたCD4
+T細胞、または形質導入されていない対照CD4
+T細胞(CD8
+:CD4
+=1:1)と共培養した。CD8
+サブセットの増殖は、刺激の72時間後において解析した。各ヒストグラムの上方の数は、細胞分裂の回数を指し示し、≧3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各プロットの上方に提示する。
【0025】
【
図9】
図9は、2A2 ROR1キメラ受容体T細胞、R12 ROR1キメラ受容体T細胞、およびCD19キメラ受容体T細胞の、in vivoにおける抗腫瘍有効性を示す図である。マウスのコホートに、尾静脈注射を介して、0.5×10
6個のJeKo-1/ffluc MCLを接種し、腫瘍接種の7日後に、5×10
6個の2A2 ROR1キメラ受容体T細胞、R12 ROR1キメラ受容体T細胞、もしくはCD19キメラ受容体T細胞、またはtEGFR対照ベクターを発現させるT細胞を投与した。全てのキメラ受容体構築物は、短鎖IgG4「ヒンジだけ」のスペーサーおよび4-1BB共刺激ドメインを有した。(A、B)2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞(黒下三角)、高アフィニティーR12 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞(黒四角)、CD19特異的キメラ受容体を発現させるT細胞(黒上三角)、tEGFR単独を形質導入されたT細胞(黒丸)で処置されたマウスのコホート、および処置されなかったマウスコホートにおける腫瘍についての連続生物発光造影を示す図である。生物発光造影は、骨髄および胸部における腫瘍症状を示したので、各個別のマウスの全身および胸部を包摂する対象の領域内のシグナル強度を測定した。(C)個々の処置群および対照群における生存についてのカプラン-マイヤー解析を示す図である。統計学的解析は、ログランク検定を使用して実施した。A~Cにおいて示されるデータは、2回にわたる個別の実験において得られた結果を表す。(D)2A2 ROR1キメラ受容体T細胞、R12 ROR1キメラ受容体T細胞、およびCD19キメラ受容体T細胞のin vivoにおける増殖を示す図である。腫瘍接種後7日目において、腫瘍を保有するNSG/JeKo-1マウスに、5×10
6個のCFSE標識2A2 ROR1キメラ受容体T細胞、R12 ROR1キメラ受容体T細胞、またはCD19キメラ受容体T細胞の単回投与を施し、72時間後に、末梢血、骨髄、および脾臓を、各個別のマウスから回収した。CD45
+CD8
+tEGFR
+生(PI
-)T細胞の頻度および増殖を解析した。2A2 ROR1キメラ受容体T細胞、R12 ROR1キメラ受容体T細胞、およびCD19キメラ受容体T細胞それぞれの頻度は、各ヒストグラムの左方に、生細胞の百分率として提示され、≧4/3/2/1回の細胞分裂を経たT細胞画分は、各プロットの上方に提示する。
【0026】
【
図10】
図10は、上皮がん細胞系上のROR1リガンドおよびNKG2Dリガンドの発現を示す図である。(A)トリプルネガティブ乳がん細胞系であるMDA-MB-231上および468上、ならびに腎細胞がん細胞系であるFARP上、TREP上、およびRWL上(黒色ヒストグラム)のROR1の発現を示す図である。マッチさせたアイソタイプ対照抗体による染色を、グレーのヒストグラムとして示す。(B)CD80/86リガンドおよびNKG2DリガンドであるMICA/Bの、MDA-MB-231腫瘍細胞上およびRaji/ROR1腫瘍細胞上の発現、ならびにNKG2D(CD314)の、2A2 ROR1キメラ受容体T細胞上およびR12 ROR1キメラ受容体T細胞上の発現を示す図である。マッチさせたアイソタイプ対照mAbによる染色を、グレーのドットによるプロット/ヒストグラムとして示す。
【0027】
【
図11】
図11は、ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞が、ROR1
+上皮腫瘍細胞をin vitroにおいて認識することを示す図である。(A)R12 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞(短鎖スペーサー/4-1BB共刺激ドメイン;塗りつぶした記号)およびtEGFR対照T細胞(中抜きの記号)の、ROR1
+乳がん細胞系および腎細胞がん細胞系に対する細胞溶解活性を査定するクロム放出アッセイを示す図である。(A~D)2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体が、最適な短鎖スペーサーおよび4-1BB共刺激ドメインを有したことを示す図である。(B)2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞を、MDA-MB-231腫瘍細胞およびRaji/ROR1腫瘍細胞により刺激した後におけるマルチプレックスサイトカイン解析を示す図である。(C)MDA-MB-231腫瘍細胞を伴う刺激の72時間後における、2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体により改変されたCD8
+T細胞の増殖を示す図である。解析のために3連のウェルをプールし、CD8
+生(PI
-)T細胞の増殖を解析した。各ヒストグラムの上方の数は、増殖するサブセットが経た細胞分裂の回数を指し示し、≧4/3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各ヒストグラムの隣に提示する。(D)プレーン培地中のMDA-MB-231と共に24時間にわたり共培養した後で、NKG2D経路を遮断する抗体カクテル[抗NKG2D(クローン1D11)、抗MICA/B(クローン6D4)、および抗ULBP]またはマッチさせたアイソタイプ対照mAbを添加した後における、R12 ROR1キメラ受容体T細胞によるIL-2産生についてのELISAを示す図である。O.D.の0.6は、およそ1900pg/mlに対応する。
【0028】
【
図12】
図12は、細胞外スペーサー長の、HER2特異的キメラ受容体を発現させるCD8+ヒトT細胞による、腫瘍細胞の認識および腫瘍細胞の溶解の誘発に対する効果を示す図である。A)ヒトHER2上の腫瘍細胞膜近位エピトープ上のHerceptin Fabエピトープの位置を描示する図である。B)Herceptin scFv CARスペーサー長変異体の構造フォーマットをカルボキシル側のEGFRtマーカー膜貫通タンパク質を伴うT2Aを連結したポリペプチドとして示す図である。C)ヒトCD8+ CTL内の、Herceptin-CAR短鎖スペーサー変異体、Herceptin-CAR中鎖スペーサー変異体、およびHerceptin-CAR長鎖スペーサー変異体の発現の、ウェスタンブロットによる検出を示す図である。D)Herceptin CAR変異体を形質導入され、次いで、Herceptin-ビオチンマイクロビーズ、抗ビオチンマイクロビーズにより免疫磁気的に精製された、形質導入ヒトCD8+ CTLによるEGFRtのフローサイトメトリー検出を示す図である。E)Herceptin CAR変異体(短鎖:S;中鎖:M;および長鎖:L)を発現させるように形質導入されたT細胞による、HER2
+Med411FHおよびD283ヒト髄芽腫細胞系(D341は、HER2
-対照髄芽腫細胞系であり、挿入図のフロープロットは、抗HER2特異的mAbで染色された腫瘍標的系である)に対する異なる細胞溶解機能を示す図である。緑色=全長IgG4(長鎖スペーサー;黒下三角)、青色=IgG4ヒンジ:CH3(中鎖スペーサー;黒上三角)、赤色=IgG4ヒンジだけ(短鎖スペーサー;黒四角)。
【0029】
【
図13】
図13は、CD19キメラ受容体ベクターおよびCD19キメラ受容体T細胞の作製を示す図である。(A)細胞外スペーサー長および細胞内共刺激が異なるCD19特異的キメラ受容体のパネルをコードするレンチウイルストランス遺伝子インサートのデザインを示す図である。各キメラ受容体は、VL-VH配向のFMC63 mAbに由来するCD19特異的単鎖可変断片、ヒンジ-CH2-CH3(長鎖スペーサー;229アミノ酸)またはヒンジだけ(短鎖スペーサー;12アミノ酸)のIgG4に由来するスペーサードメイン、およびCD28または4-1BBを単独またはタンデムで伴うCD3ζを含有するシグナル伝達モジュールをコードした。各キメラ受容体カセットは、切断可能な2Aエレメントの下流においてコードされる切断型EGFRマーカーを含有する。(B、C)CD19キメラ受容体構築物の各々により改変されたポリクローナルT細胞系を、正常ドナーの精製CD8
+CD45RO
+CD62L
+セントラルメモリーT細胞(T
CM)から調製したことを示す図である。レンチウイルスにより形質導入した後、tEGFRマーカーを使用して各細胞系内のトランス遺伝子陽性T細胞を精製し、in vitro実験およびin vivo実験のために増やした。(D)tEGFRマーカーについて染色した後におけるMFIにより、CD19キメラ受容体の各々により改変されたT細胞内のトランス遺伝子の同等な発現が示される図である。
【0030】
【
図14】
図14は、異なるCD19キメラ受容体により改変されたT細胞のin vitroにおける細胞傷害作用、これらによるサイトカイン産生、およびこれらの増殖を示す図である。(A)多様なCD19キメラ受容体を発現させるT細胞の、CD19
+標的細胞および対照標的細胞に対する細胞溶解活性を示す図である。(B)多様なCD19キメラ受容体を発現させるT細胞と、CD19をトランスフェクトされたK562細胞およびCD19
+Raji細胞との3連の共培養から24時間後に得られる上清についてのマルチプレックスサイトカインアッセイを示す図である。(C)多様なCD19キメラ受容体を発現させるT細胞によるサイトカイン産生の比較を示す図である。6回にわたる個別の実験に由来するマルチプレックスサイトカインデータを、標準化し(CD19キメラ受容体「短鎖/CD28」CTLによるサイトカインの放出=1として)、スチューデントのt検定により解析した。(D)CFSE色素の希釈を使用して、外因性サイトカインの添加を伴わずに、K562/CD19(上パネル)およびCD19
+Raji腫瘍細胞(下パネル)による刺激の72時間後において、CD19キメラ受容体T細胞の増殖を測定したことを示す図である。解析のために3連のウェルをプールし、CD8
+生(PI
-)T細胞の増殖を解析した。各ヒストグラムの上方の数は、増殖するサブセットが経た細胞分裂の回数を指し示し、≧4/3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各プロットの左上に提示する。(E)多様なCD19キメラ受容体を発現させるT細胞の、Raji腫瘍細胞との72時間にわたる共培養の終了時において、PI染色を実施したことを示す図である。キメラ受容体T細胞系(CD3
+)中のPI
+細胞の百分率を、各ヒストグラムに提示する。
【0031】
【
図15】
図15は、短鎖細胞外スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体T細胞が、NOD/SCIDマウスにおけるRaji腫瘍を根絶することを示す図である。(A)マウスのコホートに、尾静脈注射を介してRaji-fflucを接種し、長鎖スペーサードメインおよび短鎖スペーサードメインを含有するCD19キメラ受容体を形質導入されたT細胞、またはtEGFR単独を形質導入されたT細胞を、腫瘍接種の2および9日後に、尾静脈注射により投与したことを示す図である。ルシフェリン基質を注射した後で、腫瘍の進行および分布を、連続生物発光造影により査定した。(B)短鎖スペーサー(「短鎖/CD28」および「短鎖/4-1BB」)ドメインおよび長鎖スペーサー(「長鎖/CD28」および「長鎖/4-1BB」)ドメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞により処置されたマウスのコホート、tEGFR対照ベクターを形質導入されたT細胞により処置されたマウスのコホート、または処置されなかったマウスのコホートにおける腫瘍についての連続生物発光造影を示す図である。CD19キメラ受容体を形質導入されたT細胞で処置されたマウスのコホートまたはtEGFRを形質導入されたT細胞で処置されたマウスのコホートを表す各グラフはまた、処置されなかったマウスにおける腫瘍の進行についての平均も比較のために示す(赤色の三角)。(C)処置されなかったマウス、ならびに短鎖スペーサー(「短鎖/CD28」および「短鎖/4-1BB」)ドメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞により処置されたマウス、長鎖スペーサー(「長鎖/CD28」および「長鎖/4-1BB」)ドメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞により処置されたマウス、および対照tEGFRを発現させるT細胞により処置されたマウスの生存についてのカプラン-マイヤー解析を示す図である。統計学的解析は、ログランク検定を使用して実施した。BおよびCにおいて示されるデータは、3回にわたる個別の実験において得られた結果を表す。
【0032】
【
図16】
図16は、短鎖スペーサー(短鎖/4-1BB)を伴うCD19キメラ受容体T細胞が、NSGマウスにおいて確立されたRaji腫瘍を、用量依存的な様式で根絶することを示す図である。(A)マウスに、尾静脈注射を介してRaji-fflucを接種し、6日目に、腫瘍の生着を、生物発光造影により確認した。7日目において、マウスに、多様な用量の、CD19キメラ受容体「短鎖/4-1BB」を形質導入されたT細胞、またはtEGFR対照レンチウイルスを形質導入されたT細胞の単回のi.v.注射を施した。(B、C)CD19キメラ受容体「短鎖/4-1BB」を発現させるT細胞の用量依存的な抗腫瘍有効性を示す図である。対照マウスのコホートには、高用量のtEGFR単独により改変されたT細胞の単回投与を施した。(D)NSG/Rajiマウスへの養子移入後における、CD19キメラ受容体T細胞の存続を示す図である。2.5×10
6個の、CD19キメラ受容体「短鎖/4-1BB」T細胞で処置されたマウスのコホートにおける、フローサイトメトリーによる末梢血(眼採血)についての解析である。CD8
+tEGFR
+T細胞の頻度を、末梢血生細胞の百分率として示す。
【0033】
【
図17】
図17は、短鎖スペーサーおよびCD28または4-1BBを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞が、確立されたリンパ腫に対して、長鎖スペーサーを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞より有効であることを示す図である。(A)0日目において、NSGマウスに、Raji-fflucを接種し、7日目において、1回投与の、2.5×10
6個の、短鎖または長鎖スペーサーおよびCD28共刺激ドメインまたは4-1BB共刺激ドメインを発現させるCD19キメラ受容体T細胞で処置したことを示す図である。(B)処置群の各々におけるマウスの生存についてのカプラン-マイヤー解析を示す図である。統計学的解析は、ログランク検定を使用して実施した。(C)短鎖スペーサー(「短鎖/CD28」および「短鎖/4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞、および長鎖スペーサー(「長鎖/CD28」および「長鎖/4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞により処置されたマウスのコホートについての生体発光造影を示す図である。各時点の処置されなかったマウスにおいて観察される平均腫瘍負荷を、比較のために各グラフに示す(三角)。(D)短鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞のin vivoにおける存続が、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞と比較して増強されることを示す図である。移入後の3および10日目において得られる末梢血中のCD8
+tEGFR
+T細胞の頻度は、フローサイトメトリーにより決定したが、これを末梢血生(PI
-)細胞の百分率として示す。統計学的解析は、スチューデントのt検定により実施した。B~Dにおいて示されるデータは、3回にわたる個別の実験において得られた結果を表す。
【0034】
【
図18】
図18は、キメラ受容体T細胞の用量を増大させても、共刺激シグナル伝達を増進させても、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体の、確立されたリンパ腫に対する抗腫瘍有効性は改善されないことを示す図である。(A)「長鎖/CD28」CD19キメラ受容体、「長鎖/4-1BB」CD19キメラ受容体、および「長鎖/CD28_4-1BB」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞の、CD19
+標的細胞および対照標的細胞に対する細胞溶解活性を示す図である。(B)K562/CD19腫瘍細胞およびRaji腫瘍細胞の、多様なCD19キメラ受容体を発現させるT細胞との3連の共培養から24時間後に得られる上清についてのマルチプレックスサイトカインアッセイを示す図である。(C)CD19
+腫瘍細胞(K562/CD19:左パネル;Raji:右パネル)による刺激の72時間後における、CD19キメラ受容体T細胞の増殖の、CFSE色素の希釈による査定を示す図である。解析のために3連のウェルをプールし、CD8
+生(PI
-)T細胞の増殖を解析した。各ヒストグラムの上方の数は、増殖するサブセットが経た細胞分裂の回数を指し示し、≧4/3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各プロットの左上に提示する。(D)短鎖スペーサードメイン(「短鎖/CD28」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞、および長鎖スペーサードメイン(「長鎖/CD28」および「長鎖/CD28_4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞、またはtEGFRをコードする対照レンチウイルスベクターにより改変されたT細胞により処置されたマウスの生存についてのカプラン-マイヤー解析を示す図である。統計学的解析は、ログランク検定を使用して実施した。(E)短鎖スペーサー(「短鎖/CD28」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞、および長鎖スペーサー(「長鎖/CD28」および「長鎖/CD28_4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞により処置されたマウスのコホートについての生体発光造影を示す図である。グラフは、処置されなかったマウスにおける腫瘍の平均の進行を比較のために示す(赤色の三角)。(F)多様なCD19キメラ受容体を発現させるT細胞のin vivoにおける存続を示す図である。移入後の3および10日目において得られる末梢血中のCD8
+tEGFR
+T細胞の頻度は、フローサイトメトリーにより決定したが、これを末梢血生(PI
-)細胞の百分率として示す。統計学的解析は、スチューデントのt検定により実施した。
【0035】
【
図19】
図19は、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体T細胞が、in vivoにおいて腫瘍により活性化するが、細胞数は増大しないことを示す図である。(A)NSG/Rajiマウスへの移入の前における、各CD19キメラ受容体により改変されたT細胞上のCD69およびCD25の発現を示す図である。(B)マウスのコホートに、Raji-ffluc腫瘍細胞を接種し、7日後に、CFSE標識CD19キメラ受容体を形質導入されたT細胞または対照T細胞を施したことを示す図である。骨髄および脾臓を、マウスの部分群から、T細胞投与の24および72時間後に採取した。(C、D)T細胞移入の24時間後(C)および72時間後(D)に得られる骨髄単核細胞についての、多重パラメータのフローサイトメトリーによる解析を示す図である。ドットプロットは、ヒト生存T細胞を検出するPI
-細胞についてゲートをかけた後における、抗CD3染色および抗CD45染色を示す。CD3
-CD45
+ゲートは、Raji腫瘍細胞を含有する。CD3
+CD45
+生(PI
-)T細胞上のCD25およびCD69の発現を、ヒストグラムに示す。(E)T細胞移入の24および72時間後に得られる、脾臓中のCD3
+CD45
+T細胞の頻度を示す図である。ドットプロットは、PI
-生脾臓細胞についてゲートをかけ、CD3
+CD45
+T細胞の百分率を、各プロットに示す。(F)骨髄および脾臓細胞の、NSG/RajiマウスへのT細胞の移入の数時間後におけるPI染色を示す図である。ヒストグラム内の数は、CD3
+集団内のPI
+細胞の百分率を指し示す。(G)短鎖スペーサー(「短鎖/CD28」および「短鎖/4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞、長鎖スペーサー(「長鎖/CD28」および「長鎖/4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞、または対照T細胞により処置されたマウスのコホートについての生体発光造影を示す図である。
【0036】
【
図20】
図20は、4-1BBおよびCD3ゼータならびに改変されたIgG4-Fcヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞が、4-1BBおよびCD3ゼータならびにCD8アルファヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞と比較して、優れたin vitro機能およびin vivo機能を呈示することを示す図である。A:IgG4 Fcヒンジ、CD8アルファヒンジを伴うCD19キメラ受容体により改変されたT細胞、および対照T細胞の、Cr
51標識され、CD19をトランスフェクトされたK562細胞、CD19を発現させるRajiリンパ腫細胞、およびK562対照細胞に対する細胞溶解活性を示す図である。4時間にわたるCr
51放出アッセイにおける溶解を、異なるE/T比で示す。B:24時間にわたるRaji腫瘍細胞との共培養の後における、5×10
4個の、IgG4 FcヒンジまたはCD8アルファヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞によるインターフェロンガンマ産生を示す図である。O.D.の1は、約500pg/mlのインターフェロンガンマに対応する。C:72時間にわたるCD19陽性Rajiリンパ腫細胞との共培養の後における、IgG4 FcヒンジまたはCD8アルファヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞、およびtEGFRを発現させるT細胞単独(対照)の増殖を測定するCFSE色素希釈アッセイを示す図である。各ヒストグラムの上方の数は、増殖するサブセットが経た細胞分裂の回数を指し示す。≧3/2/1回の細胞分裂を経た各ゲート内のT細胞画分は、各プロットの隣に提示する。D:IgG4 Fcヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞(群1)またはCD8アルファヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞(群2)、およびtEGFR単独を発現させるT細胞(群3)の、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)を発現させるRaji腫瘍細胞を接種されたNSGマウスにおけるin vivoの抗腫瘍活性を示す図である。マウスは、腫瘍接種の17日後およびT細胞接種の10日後に造影した。データは、対照tEGFR T細胞で処置されたマウス(群3)、またはCD8アルファヒンジCD19キメラ受容体T細胞で処置されたマウス(群2)における腫瘍負荷が、IgG4 FcヒンジCD19キメラ受容体T細胞で処置されたマウス(群1)と比較して大きいことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が関する技術分野の当業者により一般に理解される意味と同じ意味を有する。
【0038】
測定可能な値に言及する場合に本明細書で使用される「約」とは、指定された値からの±20%または±10%、より好ましくは±5%、なおより好ましくは±1%の変異を包摂し、さらにより好ましくは±0.1%の変異を包摂することを意図する。
【0039】
本明細書で使用される「活性化」とは、検出可能な細胞性増殖、サイトカイン産生、もしくはCD69およびCD25などの細胞表面マーカーの発現、または検出可能なエフェクター機能を誘導するために十分に刺激したT細胞の状態を指す。
【0040】
本明細書で使用される「活性化誘導型細胞死」とは、活性化するが、2世代超にわたり増殖することは可能でなく、アポトーシスのマーカーを呈示するT細胞の状態を指す。
【0041】
本明細書で使用される「抗原」または「Ag」とは、免疫応答を引き起こす分子を指す。この免疫応答は、抗体産生もしくは特異的な免疫学的コンピテント細胞の活性化または両方を伴いうる。抗原は、合成により生成する場合もあり、組換えにより作製する場合もあり、生物学的試料に由来する場合もあることは容易に明らかである。このような生物学的試料は、組織試料、腫瘍試料、細胞、または生物学的流体を含みうるがこれらに限定されない。
【0042】
本明細書で使用される「抗腫瘍効果」とは、腫瘍容量の減少、腫瘍細胞数の減少、転移数の減少、平均余命の延長、またはがん性状態と関連する多様な生理学的症状の減少により顕示されうる生物学的効果を指す。「抗腫瘍効果」はまた、再発の減少または再発前時間の延長によっても顕示されうる。
【0043】
本明細書で使用される「キメラ受容体」とは、合成によりデザインされた受容体であって、抗体のリガンド結合ドメイン、または疾患もしくは障害と関連する分子に結合し、スペーサードメインを介して、共刺激ドメインなど、T細胞受容体もしくは他の受容体の、1つもしくは複数の細胞内シグナル伝達ドメインへと連結された、他のタンパク質配列を含む受容体を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合の「共刺激ドメイン」という用語は、例えば、TCR/CD3複合体のCD3ゼータ鎖によりもたらされる一次シグナルに加えて、活性化、増殖、分化、サイトカイン分泌などを含むがこれらに限定されないT細胞応答を媒介するシグナルをT細胞へともたらすシグナル伝達部分を指す。共刺激ドメインは、CD27、CD28、4-1BB、OX40、CD30、CD40、ICOS、リンパ球機能関連抗原1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83と特異的に結合するリガンドの全部または一部分を含みうるがこれらに限定されない。実施形態では、共刺激ドメインとは、活性化、増殖、分化、およびサイトカイン分泌などを含む細胞応答を媒介する他の細胞内メディエーターと相互作用する細胞内シグナル伝達ドメインである。
【0045】
本明細書で使用される「~をコードする」とは、アミノ酸の規定された配列など、他の高分子を合成するための鋳型として用いられる遺伝子、cDNA、またはmRNAなどのポリヌクレオチド内のヌクレオチドの特異的配列の特性を指す。したがって、細胞または他の生物学的系において、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳により、タンパク質が産生される場合、遺伝子は、タンパク質をコードする。「ポリペプチドをコードする核酸配列」は、互いの縮重バージョンであり、同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。
【0046】
本明細書で使用される「細胞傷害性Tリンパ球」(CTL)とは、その表面上にCD8を発現させるTリンパ球(すなわち、CD8+T細胞)を指す。いくつかの実施形態では、このような細胞は、抗原経験細胞である「メモリー」T細胞(TM細胞)であることが好ましい。
【0047】
本明細書で使用される「セントラルメモリー」T細胞(または「TCM」)とは、その表面上にCD62LまたはCCR-7およびCD45ROを発現するが、CD45RAを発現しないか、またはその発現がナイーブ細胞と比較して減少した抗原経験CTLを指す。実施形態では、セントラルメモリー細胞は、CD62L、CCR7、CD28、CD127、CD45RO、およびCD95の発現について陽性であり、CD54RAの発現がナイーブ細胞と比較して減少している。
【0048】
本明細書で使用される「エフェクターメモリー」T細胞(または「TEM」)とは、CD62Lをその表面上に発現しないか、またはその発現がセントラルメモリー細胞と比較して減少しており、CD45RAを発現しないか、またはその発現がナイーブ細胞と比較して減少した抗原経験T細胞を指す。実施形態では、エフェクターメモリー細胞は、ナイーブ細胞またはセントラルメモリー細胞と比較して、CD62LおよびCCR7の発現について陰性であり、CD28およびCD45RAの発現が可変的である。
【0049】
本明細書で使用される「ナイーブ」T細胞とは、セントラルメモリー細胞またはエフェクターメモリー細胞と比較して、CD62LおよびCD45RAを発現するが、CD45ROを発現しない非抗原経験Tリンパ球を指す。いくつかの実施形態では、ナイーブCD8+ Tリンパ球は、CD62L、CCR7、CD28、CD127、およびCD45RAを含むナイーブT細胞の表現型マーカーの発現によって特徴付けられる。
【0050】
本明細書で使用される「エフェクター」「TE」T細胞とは、セントラルメモリーT細胞またはナイーブT細胞と比較して、CD62L、CCR7、CD28を発現しないか、またはその発現が減少しており、グランザイムBおよびパーフォリンについて陽性である抗原経験細胞傷害性Tリンパ球細胞を指す。
【0051】
混合物中の細胞型の量について記載するのに本明細書で使用される「濃縮した」および「枯渇させた」とは、細胞の混合物を、「濃縮した」型の数の増大および「枯渇させた」細胞数の減少を結果としてもたらす工程またはステップにかけることを指す。したがって、濃縮工程にかけられる元の細胞集団の供給源に応じて、混合物または組成物は、「濃縮した」細胞のうちの約60、70、80、90、95、または99パーセント以上(数またはカウントで)、および「枯渇させた」細胞のうちの約40、30、20、10、5、または1パーセント以下(数またはカウントで)を含有しうる。
【0052】
本明細書で使用される「エピトープ」とは、抗体、T細胞、および/またはB細胞を含む免疫系により認識される抗原または分子の一部を指す。エピトープは通常、少なくとも7アミノ酸を有し、直鎖状の場合もあり、コンフォメーショナルな場合もある。
【0053】
本明細書で開示される多様なポリペプチドについて記載するのに使用される場合の「単離」とは、同定され、その自然環境の構成成分から分離および/または回収されたポリペプチドまたは核酸を意味する。好ましくは、単離ポリペプチドまたは単離核酸は、それが天然で会合している全ての構成成分との会合を含まない。その自然環境の夾雑的構成成分は、ポリペプチドまたは核酸についての診断的使用および治療的使用に干渉することが典型的な素材であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク質性溶質または非タンパク質性溶質を含みうる。
【0054】
本明細書で使用される「細胞内シグナル伝達ドメイン」とは、リンパ球の活性化をもたらす分子(本明細書では、キメラ受容体分子)の1つまたは複数のドメインの全部または一部分を指す。このような分子の細胞内ドメインは、細胞性メディエーターと相互作用して、増殖、分化、活性化、および他のエフェクター機能を結果としてもたらすことにより、シグナルを媒介する。実施形態では、このような分子は、CD28、CD3、4-1BB、およびこれらの組合せの全部または部分を含む。
【0055】
本明細書で使用される「リガンド」とは、別の物質に特異的に結合して、複合体を形成する物質を指す。リガンドの例は、受容体、基質、阻害剤、ホルモン、および活性化剤に結合する分子である、抗原上のエピトープを含む。本明細書で使用される「リガンド結合ドメイン」とは、リガンドに結合する物質または物質の部分を指す。リガンド結合ドメインの例は、抗体の抗原結合部分、受容体の細胞外ドメイン、および酵素の活性部位を含む。
【0056】
本明細書で使用される「作動可能に連結した」とは、調節的配列と異種核酸配列との機能的な連結であって、後者の発現を結果としてもたらす連結を指す。例えば、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と機能的な関係に置かれているとき、第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターは、コード配列の転写または発現に影響を及ぼすとき、コード配列に作動可能に連結されている。一般に、作動可能に連結したDNA配列は隣接し、2つのタンパク質コード領域を接合することが必要な場合、同じリーディングフレーム内にある。
【0057】
本明細書で同定されるキメラ受容体ポリペプチド配列に照らした「アミノ酸配列の同一性パーセント(%)」は、配列を配列決定し、ギャップを導入して、必要な場合、最大の配列同一性パーセントを達成した後の、リガンド結合ドメイン、スペーサー、膜貫通ドメイン、および/またはリンパ球活性化ドメインの各々について、基準配列内のアミノ酸残基と同一な候補配列内のアミノ酸残基の百分率として規定され、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮しない。アミノ酸配列の同一性パーセントを決定することを目的とするアライメントは、当技術分野の技術の範囲内にある多様な方途により、例えば、BLASTソフトウェア、BLAST-2ソフトウェア、ALIGNソフトウェア、ALIGN-2ソフトウェア、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなど、一般に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、アライメントを測定するのに適切なパラメータであって、比較される配列の全長にわたり最大のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズムを含むパラメータを決定することができる。例えば、WU-BLAST-2コンピュータプログラム[Altschulら、Methods in Enzymology、266巻:460~480頁(1996年)]を使用して求められるアミノ酸配列の同一性%の値では、それらの大半がデフォルト値に設定された、いくつかの検索パラメータを使用する。デフォルト値に設定されていない検索パラメータ(すなわち、調整可能なパラメータ)は、以下の値:重複区間=1、重複率=0.125、ワード閾値(T)=11および、スコアリングマトリックス=BLOSUM62により設定される。アミノ酸配列の同一性%の値は、(a)表2に提示される基準キメラ受容体配列のポリペプチドアミノ酸配列の各々または全てと、WU-BLAST-2により決定される対象の比較アミノ酸配列との間で同一なアミノ酸残基のマッチング数を、(b)対象のポリペプチドのアミノ酸残基の合計数で除することにより決定する。
【0058】
本明細書で使用される「キメラ受容体変異体ポリヌクレオチド」または「キメラ受容体変異体核酸配列」とは、下記で規定される、ポリペプチドをコードする核酸分子であって、抗原結合ドメインをコードするポリヌクレオチド、スペーサードメインをコードするポリヌクレオチド、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド、および/またはリンパ球刺激ドメインをコードするポリヌクレオチドなど、表1において示されるポリヌクレオチド配列またはそれに具体的に由来する断片との少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する核酸分子を指す。通常、ポリヌクレオチドまたはその断片のキメラ受容体変異体は、表1に示される核酸配列またはそれに由来する断片との、少なくとも約80%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約81%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約82%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約83%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約84%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約85%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約86%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約87%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約88%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約89%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約90%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約91%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約92%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約93%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約94%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約95%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約96%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約97%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約98%の核酸配列同一性を有し、なおより好ましくは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有するであろう。変異体は、天然のヌクレオチド配列を包摂しない。この点で、遺伝子コードの縮重性に起因して、当業者は、表1のヌクレオチド配列に対して少なくとも約80%の核酸配列同一性を有する多数のキメラ受容体変異体ポリヌクレオチドは、表2のアミノ酸配列と同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードすることを即座に認識するであろう。
【0059】
「実質的に精製された」とは、他の分子種類を本質的に含まない分子、または他の細胞型を本質的に含まない細胞を指す。実質的に精製された細胞はまた、その自然発生の状態において通常会合している他の細胞型から分離された細胞も指す。いくつかの場合において、実質的に精製された細胞集団とは、均質な細胞集団を指す。
【0060】
正常細胞上の腫瘍抗原または他の分子の存在について使用される場合の「実質的に見出されない」とは、抗原もしくは分子を有する正常細胞型の百分率、および/または細胞上の抗原の密度を指す。実施形態では、実質的に見出されないとは、抗原または分子が、正常細胞型のうちの50%未満の上で見出され、かつ/あるいは細胞の量または腫瘍細胞もしくは他の疾患細胞上で見出される抗原の量と比較して50%小さな密度であることを意味する。
【0061】
本明細書で使用される「T細胞」または「Tリンパ球」は、任意の哺乳動物、好ましくは霊長動物、サル、イヌ、およびヒトを含む種に由来しうる。いくつかの実施形態では、T細胞は、レシピエント被験体と同種であり(同じ種であるが異なるドナーに由来し)、いくつかの実施形態では、T細胞は、自家であり(ドナーとレシピエントとが同じであり)、いくつかの実施形態では、T細胞は、同系である(ドナーとレシピエントとが異なるが、一卵性双生児である)。
【0062】
本開示の様態
本開示は、キメラ受容体核酸、ならびにこのような核酸を含むベクターおよび宿主細胞を提示する。キメラ受容体核酸は、特異的標的分子に対するキメラ受容体をカスタマイズするために、切り出し、他の構成成分で置きかえうる多数のモジュラー構成成分を含む。本開示は、モジュラー構成成分のうちの1つを、スペーサー構成成分とすることを提示する。驚くべきことに、シグナル伝達能を有さないと仮定されているスペーサー領域の長さは、キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞のin vivoにおける有効性に影響を及ぼし、治療活性を増強するために、個別の標的分子に応じてカスタマイズする必要があることが見出された。
【0063】
一態様では、基準キメラ受容体と比較して腫瘍認識が改善し、リガンドに応答したT細胞増殖および/またはサイトカイン産生が増大したキメラ受容体をデザインするための方法および核酸構築物が提供される。実施形態では、各核酸が、配列および長さが他の核酸とは異なるスペーサー領域をコードする核酸ライブラリーが提供される。次いで、腫瘍認識の改善、リガンドに応答したT細胞増殖および/またはサイトカイン産生の増大をもたらすスペーサーを選択しうるように、核酸の各々を使用して、in vivoにおいて(動物モデルにおいて)、かつ/またはin vitroにおいて調べうるキメラ受容体核酸構築物を形成することができる。
【0064】
実施形態では、キメラ受容体核酸は、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、リガンドが、腫瘍特異的抗原もしくは腫瘍特異的分子またはウイルス特異的抗原もしくはウイルス特異的分子であるポリヌクレオチドと、カスタマイズされたポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドであって、スペーサーが、T細胞増殖の増強をもたらすポリヌクレオチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含む。実施形態では、標的分子のエピトープが標的細胞上の膜近位にある場合は、長鎖スペーサーを援用し、標的分子のエピトープが標的細胞上の膜遠位にある場合は、短鎖スペーサーを援用する。
【0065】
キメラ受容体のデザインは、腫瘍またはウイルスの種類、腫瘍上に存在する標的抗原または標的分子、抗体の標的分子に対するアフィニティー、抗原結合ドメインおよび/または細胞内シグナル伝達ドメインに必要とされる可撓性に応じてカスタマイズすることができる。実施形態では、多数のキメラ受容体構築物を、in vitroにおいて、かつ、in vivoモデルにおいて調べて、養子移入後において、受容体により改変されたT細胞が、免疫不全マウスにおいて腫瘍細胞を死滅させ、増殖および存続する能力を決定する。実施形態では、細胞のうちの少なくとも30%が、in vitroにおいて少なくとも2世代にわたり、かつ/またはin vivoにおける導入後の72時間以内において増殖する能力をもたらすキメラ受容体を選択する。実施形態では、in vivoの免疫不全マウスにおいて、細胞のうちの50%超が、72時間以内に活性化誘導型細胞死(AICD)を受け、腫瘍細胞の根絶に失敗することを結果としてもたらすキメラ受容体は選択しない。
【0066】
標的分子が、被験体の腫瘍細胞上に存在するのかどうかに応じて、キメラ受容体は、その標的分子に特異的に結合するリガンド結合ドメインを含む。実施形態では、被験体の腫瘍細胞を、細胞表面の腫瘍分子について特徴付ける。標的分子は、特定の被験体の腫瘍細胞上のその存在の決定に基づき選択することができる。実施形態では、主に腫瘍細胞上では見出されるが、正常組織上では実質的な程度では見出されない細胞表面分子である標的分子を選択する。実施形態では、ターゲティングされた細胞表面分子上のエピトープに結合する抗体を選択する。場合によっては、エピトープを、細胞膜に対するその近接性に照らして特徴付ける。エピトープが、構造解析により標的細胞膜から離れて存在することが予測されるかまたは公知である代替的エピトープより、構造解析により標的細胞膜の近傍に存在することが予測されるかまたは公知である場合は、膜に対して近位にあると特徴付ける。実施形態では、scFVがそれに由来して構築される抗体のアフィニティーを結合アッセイにより比較し、アフィニティーが異なる抗体を、T細胞内で発現するキメラ受容体フォーマットで検討して、標的細胞に対する優れた細胞傷害作用、ならびに/またはT細胞によるサイトカイン産生およびT細胞の増殖に基づき、どれほどのアフィニティーにより最適な腫瘍認識が付与されるのかを決定する。
【0067】
加えて、キメラ受容体のスペーサー領域を変化させて、T細胞による標的細胞上のリガンドの認識を最適化することもできる。実施形態では、抗体が、膜に対して極めて近位にある、標的細胞上のエピトープに結合する場合は、約15アミノ酸より長いスペーサーを選択する。例えば、実施形態では、標的抗原上のエピトープまたはその一部分が、膜貫通ドメインと隣接する細胞外ドメインの直鎖状配列の最初の100アミノ酸内にある場合は、長鎖スペーサー領域を選択することができる。実施形態では、抗体が、膜に対して遠位にある、標的細胞上のエピトープに結合する場合は、約119または15アミノ酸以下のスペーサーを選択する。例えば、実施形態では、エピトープまたはその一部分が、末端から150アミノ酸の直鎖状の細胞外ドメインの配列内に見出される場合は、短鎖または中間鎖スペーサーを活用することができる。実施形態では、スペーサーは、アミノ酸配列X1PPX2Pを含む。
【0068】
主要ドメインと共刺激性細胞内シグナル伝達ドメインとの様々な組合せを援用して、in vivoにおけるキメラ受容体の有効性を増強することができる。実施形態では、キメラ受容体の異なる構築物を、in vivoの動物モデルにおいて調べて、腫瘍を死滅させるための有効性を決定することができる。実施形態では、共刺激性細胞内シグナル伝達ドメインは、CD28およびその改変バージョン、4-1BBおよびその改変バージョン、ならびにこれらの組合せからなる群から選択される。OX40など、他の共刺激ドメインも組み込むことができる。
【0069】
CD8+セントラルメモリーT細胞は、それらが投与後長時間にわたり存続することを可能とする内因性プログラミングを有し、それにより、この細胞が免疫療法に好ましいCD8+ T細胞のサブセットとなる。実施形態では、分取精製CD8+セントラルメモリーT細胞から調製されるCD19特異的キメラ受容体により改変された細胞傷害性T細胞を、CD4+ CD19特異的キメラ受容体により改変されたT細胞の存在下または非存在下で投与する。実施形態では、腫瘍特異的CD4+ T細胞は、in vitroおよびin vivoにおいて抗腫瘍反応性を及ぼし、腫瘍特異的CD8+ T細胞を支援する。具体的な実施形態では、ナイーブサブセットまたはセントラルメモリーサブセットから選択した腫瘍特異的CD4+ T細胞を、単独で、またはCD8+TCMと組み合わせて活用する。
【0070】
核酸、ベクター、およびポリペプチド 本開示は、リンパ球を形質転換するかまたはリンパ球に形質導入するのに有用なキメラ受容体核酸であって、養子免疫療法における使用のためのキメラ受容体核酸を提示する。実施形態では、核酸は、核酸のエレメントの容易な置換をもたらす多数のモジュラー構成成分を含有する。本開示の範囲を限定する意図はないが、in vivoにおける有効性および哺乳動物細胞内の効率的な発現をもたらすために、各腫瘍抗原に対するキメラ受容体は、構成成分との関係でカスタマイズすることが所望であると考えられている。例えば、具体的な実施形態では、膜遠位のIg/Frizzledドメインに位置するROR1エピトープに結合するscFVを含むキメラ受容体が有効であるためには、約15アミノ酸以下のスペーサーを援用する。別の具体的な実施形態では、膜近位のクリングルドメインに位置するROR1エピトープに結合するscFVを含むキメラ受容体が有効であるためには、15アミノ酸より長いスペーサーを援用する。別の実施形態では、CD19に結合するscFVを含むキメラ受容体が有効であるためには、15アミノ酸以下のスペーサーを援用する。
【0071】
実施形態では、単離キメラ受容体核酸は、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、標的分子が腫瘍特異的抗原であるポリヌクレオチドと、ポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドであって、ポリペプチドスペーサーが約229アミノ酸以下であるポリペプチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含む。実施形態では、発現ベクターは、本明細書で記載されるキメラ核酸を含む。また、キメラ受容体核酸の全部または一部分によりコードされるポリペプチドも、本明細書に含まれる。
【0072】
リガンド結合ドメイン
実施形態では、キメラ受容体核酸は、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。実施形態では、リガンド結合ドメインは、腫瘍特異的抗原またはウイルス特異的抗原に特異的に結合する。実施形態では、リガンド結合ドメインは、抗体またはその断片である。抗体または抗体断片をコードする核酸配列は、容易に決定することができる。具体的な実施形態では、ポリヌクレオチドは、CD19に特異的に結合する単鎖Fvをコードする。他の具体的な実施形態では、ポリヌクレオチドは、ROR1に特異的に結合する単鎖Fvをコードする。これらの抗体の配列は、当業者により容易に決定されることが公知であるか、または当業者が容易に決定することができる。
【0073】
腫瘍抗原とは、免疫応答を誘発する腫瘍細胞により産生されるタンパク質である。本発明のリガンド結合ドメインの選択は、処置されるがんの種類に依存し、これにより、腫瘍抗原または他の腫瘍細胞表面分子をターゲティングすることができる。被験体に由来する腫瘍試料は、ある種のバイオマーカーまたは細胞表面マーカーの存在について特徴付けることができる。例えば、被験体に由来する乳がん細胞は、Her2Neu、エストロゲン受容体、および/またはプロゲステロン受容体の各々について陽性の場合もあり、陰性の場合もある。個別の被験体の腫瘍細胞上に見出される腫瘍抗原または細胞表面分子を選択する。当技術分野では、腫瘍抗原および細胞表面分子が周知であり、例えば、がん胎児性抗原(CEA:carcinoembryonic antigen)、前立腺特異的抗原、PSMA、Her2/neu、エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体、エフリンB2、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、メソテリン、c-Met、GD-2、およびMAGE A3 TCRを含む。実施形態では、標的分子は、腫瘍細胞上では見出されるが、正常組織では実質的に見出されないか、またはその発現が正常生組織以外に限定される細胞表面分子である。
【0074】
他の標的分子は、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HBV(B型肝炎ウイルス)、HPV(ヒトパピローマウイルス)およびC型肝炎ウイルスなどの感染性病原体に由来する抗原を含むがこれらに限定されない。
【0075】
一実施形態では、腫瘍上の標的分子は、悪性腫瘍と関連する1つまたは複数のエピトープを含む。悪性腫瘍は、T細胞受容体またはキメラ受容体を媒介する認識のための標的抗原として用いられうる多数のタンパク質を発現させる。他の標的分子は、がん遺伝子であるHER-2/Neu/ErbB2など、細胞の形質転換に関連する分子の群に属する。実施形態では、腫瘍抗原を、腫瘍細胞上の、同じ組織型の対照細胞と比較して選択的に発現させるか、または過剰発現させる。他の実施形態では、腫瘍抗原は、細胞表面ポリペプチドである。
【0076】
キメラ受容体によりターゲティングされうる腫瘍細胞表面分子を同定したら、標的分子のエピトープを選択し、特徴付ける。実施形態では、腫瘍細胞膜に対して近位のエピトープを選択する。他の実施形態では、腫瘍細胞膜に対して遠位のエピトープを選択する。エピトープが、構造解析により標的細胞膜から離れて存在することが予測されるかまたは公知である代替的エピトープより、構造解析により標的細胞膜の近傍に存在することが予測されるかまたは公知である場合は、膜に対して近位にあると特徴付ける。
【0077】
腫瘍細胞表面分子に特異的に結合する抗体は、モノクローナル抗体を得る方法、ファージディスプレイ法、ヒト抗体もしくはヒト化抗体を生成する方法、またはヒト抗体を産生するように操作されたトランスジェニック動物またはトランスジェニック植物を使用する方法を使用して調製することができる。部分的または完全に合成された抗体のファージディスプレイライブラリーが利用可能であり、標的分子に結合しうる抗体またはその断片についてスクリーニングすることができる。また、ヒト抗体のファージディスプレイライブラリーも利用可能である。実施形態では、抗体は、腫瘍細胞表面分子に特異的に結合し、ウシ血清アルブミンまたは他の非類縁抗原などの非特異的構成成分とは交差反応しない。同定されると、抗体をコードするアミノ酸配列またはポリヌクレオチド配列は、単離および/または決定することができる。
【0078】
抗体または抗原結合断片は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、合成抗体、キメラ抗体、二特異性抗体、ミニボディー、および直鎖状抗体の全部または一部分を含む。抗体断片は、無傷抗体の一部分、好ましくは無傷抗体の抗原結合領域または可変領域を含み、容易に調製することができる。抗体断片の例は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、およびFv断片;ダイアボディー;直鎖状抗体;単鎖抗体分子;ならびに抗体断片から形成される多特異性抗体を含む。
【0079】
実施形態では、特定の腫瘍細胞表面分子に結合する多数の異なる抗体を単離し、特徴付けることができる。実施形態では、ターゲティングされる分子のエピトープ特異性に基づき抗体を特徴付ける。加えて、場合によっては、同じエピトープに結合する抗体を、そのエピトープに対する抗体のアフィニティーに基づき選択することもできる。実施形態では、抗体は、少なくとも1mMのアフィニティーを有し、好ましくは<50nMのアフィニティーを有する。実施形態では、エピトープに対するアフィニティーが他の抗体と比較して大きな抗体を選択する。例えば、アフィニティーが、同じエピトープに結合する基準抗体の少なくとも2倍、少なくとも5倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、または少なくとも50倍である抗体を選択する。
【0080】
実施形態では、標的分子は、CD19、CD20、CD22、CD23、CD123、CS-1、ROR1、メソテリン、Her2、c-Met、PSMA、GD-2、MAGE A3 TCR、およびこれらの組合せからなる群から選択される。
【0081】
具体的な実施形態では、標的抗原は、CD19である。当業者には、CD19に特異的な多数の抗体が公知であり、配列、エピトープへの結合、およびアフィニティーについて容易に特徴付けることができる。具体的な実施形態では、キメラ受容体構築物は、FMC63抗体に由来するscFV配列を含む。他の実施形態では、scFVは、RASQDISKYLNのCDRL1配列、SRLHSGVのCDRL2配列、およびGNTLPYTFGのCDRL3配列を含む可変軽鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。他の実施形態では、scFVは、DYGVSのCDRH1配列、VIWGSETTYYNSALKSのCDRH2配列、およびYAMDYWGのCDRH3配列を含む可変重鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。本開示はまた、FMC63のscFvのアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、CD19に対して少なくとも同じアフィニティーを有する可変領域も想定する。実施形態では、キメラ受容体は、119アミノ酸以下または12アミノ酸以下の短鎖スペーサーまたは中間鎖スペーサーを有する。具体的な実施形態では、スペーサーは、12アミノ酸以下であり、配列番号4の配列を有する。
【0082】
実施形態では、CDR領域は、Kabatにより以下:軽鎖では、アミノ酸24~34におけるCDRL1;アミノ酸50~56におけるCDRL2;アミノ酸89~97におけるCDRL3;重鎖では、アミノ酸31~35におけるCDRH1;アミノ酸50~65におけるCDRH2;およびアミノ酸95~102におけるCDRH3の通りに番号付けされる抗体領域内に見出される。抗体内のCDR領域は、容易に決定することができる。
【0083】
具体的な実施形態では、標的抗原は、ROR1である。当業者には、ROR1に特異的な多数の抗体が公知であり、配列、エピトープへの結合、およびアフィニティーについて容易に特徴付けることができる。具体的な実施形態では、キメラ受容体構築物は、R12抗体に由来するscFV配列を含む。他の実施形態では、scFVは、ASGFDFSAYYMのCDRL1配列、TIYPSSGのCDRL2配列、およびADRATYFCAのCDRL3配列を含む可変軽鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。他の実施形態では、scFVは、DTIDWYのCDRH1配列、VQSDGSYTKRPGVPDRのCDRH2配列、およびYIGGYVFGのCDRH3配列を含む可変重鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。本開示はまた、R12のscFvのアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、ROR1に対して少なくとも同じアフィニティーを有する可変領域も想定する。実施形態では、キメラ受容体は、119アミノ酸以下または12アミノ酸以下の短鎖スペーサーまたは中間鎖スペーサーを有する。具体的な実施形態では、スペーサーは、12アミノ酸以下であり、配列番号4の配列を有する。
【0084】
具体的な実施形態では、標的抗原は、ROR1である。当業者には、ROR1に特異的な多数の抗体が公知であり、配列、エピトープへの結合、およびアフィニティーについて容易に特徴付けることができる。具体的な実施形態では、キメラ受容体構築物は、R11抗体に由来するscFV配列を含む。他の実施形態では、scFVは、SGSDINDYPISのCDRL1配列、INSGGSTのCDRL2配列、およびYFCARGYSのCDRL3配列を含む可変軽鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。他の実施形態では、scFVは、SNLAWのCDRH1配列、RASNLASGVPSRFSGSのCDRH2配列、およびNVSYRTSFのCDRH3配列を含む可変重鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。本開示はまた、R11のscFvのアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、ROR1に対して少なくとも同じアフィニティーを有する可変領域も想定する。実施形態では、キメラ受容体は、229アミノ酸以下の長鎖スペーサーを有する。具体的な実施形態では、スペーサーは、229アミノ酸であり、配列番号50の配列を有する。
【0085】
具体的な実施形態では、標的抗原は、Her2である。当業者には、Her2に特異的な多数の抗体が公知であり、配列、エピトープへの結合、およびアフィニティーについて容易に特徴付けることができる。具体的な実施形態では、キメラ受容体構築物は、Herceptin抗体に由来するscFV配列を含む。他の実施形態では、scFVは、Herceptin抗体のCDRL1配列、CDRL2配列およびCDRL3配列を含む可変軽鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。他の実施形態では、scFVは、HerceptinのCDRH1配列、CDRH2、およびCDRH3配列を含む可変重鎖を含むヒトscFvまたはヒト化scFvである。CDR配列は、Herceptinのアミノ酸配列から容易に決定することができる。本開示はまた、HerceptinのscFvのアミノ酸配列と少なくとも90%のアミノ酸配列同一性を有し、Her2に対して少なくとも同じアフィニティーを有する可変領域も想定する。実施形態では、キメラ受容体は、229アミノ酸以下の長鎖スペーサーを有する。具体的な実施形態では、スペーサーは、229アミノ酸であり、配列番号50の配列を有する。
【0086】
実施形態では、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結する。実施形態では、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドはまた、ポリヌクレオチドの、異なる抗原をコードするかまたは異なる結合特徴を有するリガンド結合ドメインをコードする別のポリヌクレオチドによる容易な切出しおよび置きかえをもたらすために、コード配列の5’末端および/または3’末端において、1つまたは複数の制限酵素部位も有しうる。例えば、制限部位であるNheIは、リーダー配列の上流にコードされ、3’側RsrIIは、任意の所望のscFvの、キメラ受容体ベクターへのサブクローニングを可能とするヒンジ領域内に配置される。実施形態では、ポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞内の発現のためにコドンを最適化する。
【0087】
実施形態では、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを、シグナルペプチドに作動可能に連結する。実施形態では、シグナルペプチドは、顆粒球コロニー刺激因子のシグナルペプチドである。CD8アルファなど、他のシグナルペプチドをコードするポリヌクレオチドも活用することができる。
【0088】
実施形態では、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを、プロモーターに作動可能に連結する。哺乳動物細胞内のキメラ抗原受容体の発現をもたらすプロモーターを選択する。具体的な実施形態では、プロモーターは、伸長因子(EF-1)プロモーターである。適切なプロモーターの別の例は、サイトメガロウイルス即初期(CMV)プロモーター配列である。しかし、サルウイルス40(SV40)初期プロモーター、マウス乳がんウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルスウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモーター、MuMoLVプロモーター、トリ白血病ウイルスプロモーター、エプスタイン-バーウイルス即初期プロモーター、ラウス肉腫ウイルスプロモーターのほか、アクチンプロモーター、ミオシンプロモーター、ヘモグロビンプロモーター、およびクレアチンキナーゼプロモーターなどであるがこれらに限定されない、ヒト遺伝子プロモーターを含むがこれらに限定されない他の構成的プロモーター配列もまた使用することができる。また、誘導的プロモーターも想定される。誘導的プロモーターの例は、メタロチオネイン(metallothionine)プロモーター、グルココルチコイドプロモーター、プロゲステロンプロモーター、およびテトラサイクリンプロモーターを含むがこれらに限定されない。
【0089】
リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドの具体的実施形態を、FMC63など、CD19に特異的に結合する抗体に由来するscFvとして、表1に示す。アミノ酸GSTSGSGKPGSGEGSTKG(配列番号36)を含む可撓性のリンカーをコードするポリヌクレオチドは、scFV内のVH鎖とVL鎖とを隔てる。リンカーを含むscFvのアミノ酸配列を、表2(配列番号11)に示す。SJ25C1およびHD37など、他のCD19ターゲティング抗体も公知である(SJ25C1:Bejcekら、Cancer Res、2005年、PMID7538901;HD37:Pezuttoら、JI、1987年、PMID2437199)。
【0090】
スペーサー
実施形態では、キメラ受容体核酸は、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドを含む。驚くべきことに、シグナル伝達能を有さないと仮定されているスペーサー領域の長さは、キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞のin vivoにおける有効性に影響を及ぼし、最適な腫瘍細胞または標的細胞の認識のために、個別の標的分子に応じてカスタマイズする必要があることが見出された。実施形態では、キメラ受容体核酸は、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドのライブラリーから選択したカスタマイズ可能なスペーサー領域をコードするポリヌクレオチドを含む。実施形態では、エピトープの位置、エピトープに対する抗体のアフィニティー、ならびに/またはキメラ受容体を発現させるT細胞が、抗原認識に応答してin vitroおよび/もしくはin vivoにおいて増殖する能力に基づき、スペーサー長を選択する。
【0091】
典型的に、スペーサー領域は、キメラ受容体のリガンド結合ドメインと膜貫通ドメインとの間で見出される。実施形態では、スペーサー領域は、リンパ球内の高い発現レベルを可能とするリガンド結合ドメインの可撓性をもたらす。約229アミノ酸のスペーサードメインを有するCD19特異的キメラ受容体の抗腫瘍活性は、改変IgG4ヒンジだけを含む短鎖スペーサー領域を伴うCD19特異的キメラ受容体より小さかった。また、R12 scFvまたは2A2 scFvから構築されるキメラ受容体など、他のキメラ受容体も、T細胞エフェクター機能の最適な誘発のために、短鎖スペーサーを要求するが、R11 ROR1 scFvにより構築されるキメラ受容体は、腫瘍認識のために約229アミノ酸の長鎖スペーサードメインを要求する。
【0092】
実施形態では、スペーサー領域は、少なくとも約10~229アミノ酸、約10~200アミノ酸、約10~175アミノ酸、約10~150アミノ酸、約10~125アミノ酸、約10~100アミノ酸、約10~75アミノ酸、約10~50アミノ酸、約10~40アミノ酸、約10~30アミノ酸、約10~20アミノ酸、または約10~15アミノ酸を有し、列挙された範囲のうちのいずれかの端点間の任意の整数を含む。実施形態では、スペーサー領域は、約12アミノ酸以下、約119アミノ酸以下、または約229アミノ酸以下を有する。
【0093】
いくつかの実施形態では、スペーサー領域は、免疫グロブリン様分子のヒンジ領域に由来する。実施形態では、スペーサー領域は、ヒトIgG1、ヒトIgG2、ヒトIgG3、またはヒトIgG4に由来するヒンジ領域の全部または一部分を含み、1カ所または複数カ所のアミノ酸置換を含有しうる。ヒンジ領域の例示的な配列を表8に提示する。実施形態では、ヒンジ領域の一部分は、可変重鎖とコアとの間で見出される上側ヒンジアミノ酸と、ポリプロリン領域を含むコアヒンジアミノ酸とを含む。典型的に、上側ヒンジ領域は、約3~10アミノ酸を有する。場合によっては、スペーサー領域は、X1PPX2Pのアミノ酸配列(配列番号1)を含む。実施形態では、X1は、システイン、グリシン、またはアルギニンであり、X2は、システインまたはトレオニンである。
【0094】
実施形態では、二量体化など、所望されない構造的相互作用を回避するために、ヒンジ領域の配列を、1つまたは複数のアミノ酸において改変することができる。具体的な実施形態では、スペーサー領域は、例えば、表2または表8(配列番号21)に示される、IgG4に由来する改変ヒトヒンジ領域の一部分を含む。改変IgG4ヒンジ領域の一部分をコードするポリヌクレオチドの代表例を、表1(配列番号4)に提示する。実施形態では、ヒンジ領域は、表2または表8で同定されるヒンジ領域のアミノ酸配列との、少なくとも約90%、92%、95%、または100%の配列同一性を有しうる。具体的な実施形態では、IgG4に由来するヒトヒンジ領域の一部分は、コアアミノ酸内の、CPSPからCPPCへのアミノ酸置換を有する。
【0095】
いくつかの実施形態では、ヒンジ領域の全部または一部分を、免疫グロブリンの定常領域の1つまたは複数のドメインと組み合わせる。例えば、ヒンジ領域の一部分は、CH2ドメインもしくはCH3ドメインまたはこれらの変異体の全部または一部分と組み合わせることができる。実施形態では、スペーサー領域は、CD8アルファに由来する47~48アミノ酸のヒンジ領域の配列またはCD28分子の細胞外部分からなるスペーサー領域を含まない。
【0096】
実施形態では、短鎖スペーサー領域は、約12アミノ酸以下を有し、IgG4ヒンジ領域配列またはこれらの変異体の全部または一部分を含み、中間鎖スペーサー領域は、約119アミノ酸以下を有し、IgG4ヒンジ領域配列およびCH3領域またはこれらの変異体の全部または一部分を含み、長鎖スペーサーは、約229アミノ酸以下を有し、IgG4ヒンジ領域配列、CH2領域、およびCH3領域またはこれらの変異体の全部または一部分を含む。
【0097】
スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドは、合成法または組換え法により、アミノ酸配列から容易に調製することができる。実施形態では、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドは、膜貫通領域をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。実施形態では、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドはまた、ポリヌクレオチドの、異なるスペーサー領域をコードする別のポリヌクレオチドによる容易な切出しおよび置きかえをもたらすために、コード配列の5’末端および/または3’末端において、1つまたは複数の制限酵素部位も有しうる。実施形態では、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞内の発現のためにコドンを最適化する。
【0098】
実施形態では、各々が異なるスペーサー領域をコードするポリヌクレオチドのライブラリーが提供される。実施形態では、スペーサー領域は、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、またはその部分に由来するヒンジ領域配列、CH2領域またはその変異体の全部または一部分と組み合わせた、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するヒンジ領域配列、CH3領域またはその変異体の全部または一部分と組み合わせた、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するヒンジ領域配列、CH2領域またはその変異体およびCH3領域またはその変異体の全部または一部分と組み合わせた、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するヒンジ領域配列からなる群から選択される。実施形態では、短鎖スペーサー領域は、12アミノ酸以下を有する、改変IgG4ヒンジ配列(配列番号4)であり、中間鎖配列は、CH3配列を伴い、119アミノ酸以下を有する、IgG4ヒンジ配列(配列番号49)、またはCH2領域およびCH3領域を伴い、229アミノ酸以下を有する、IgG4ヒンジ配列(配列番号50)である。
【0099】
本明細書において、実施形態では、キメラ受容体のためのスペーサー領域を選択する方法が提示される。驚くべきことに、いくつかのキメラ受容体構築物は、in vitroでは、T細胞を活性化させ、それらによる腫瘍細胞の殺滅を方向付けるのに有効であったが、in vivoでは有効でなかった。加えて、キメラ受容体改変T細胞の副作用プロファイルは、多くの細胞が活性化誘導型細胞死を受けるか、またはin vivoにおけるサイトカインの増大を引き起こすことを結果としてもたらすような副作用プロファイルでありうる。実施形態では、方法は、複数のキメラ受容体核酸を提供するステップであって、キメラ受容体核酸がスペーサー領域内でだけ異なるステップと、キメラ受容体核酸の各々を、別々のTリンパ球集団へと導入するステップと、各別々のリンパ球集団をin vitroにおいて増やすステップと、各リンパ球集団を、腫瘍を保有する動物へと導入して、キメラ受容体の各々の、T細胞内で発現させる場合の抗腫瘍有効性を決定するステップと、他のキメラ受容体の各々により改変された他の別々のリンパ球集団の各々と比較して抗腫瘍有効性をもたらすキメラ受容体を選択するステップとを含む。
【0100】
異なる腫瘍の動物モデルが公知である。抗腫瘍有効性は、腫瘍容量の減少を同定することにより測定することもでき、動物の死、in vivoにおける遺伝子改変T細胞の存続、遺伝子改変T細胞の活性化(例えば、CD25および/CD69の発現の増大を検出することによる)、および/またはin vivoにおける遺伝子改変T細胞の増殖を決定することにより測定することもできる。実施形態では、これらのパラメータのうちの1つまたは複数により決定される、in vivoにおける最良の抗腫瘍有効性をもたらすキメラ受容体を選択する。抗腫瘍有効性の欠如は、in vivoにおける遺伝子改変リンパ球の存続の欠如、動物の死、カスパーゼ3の誘導の増大により測定されるアポトーシスの増大、および/または遺伝子改変リンパ球の増殖の低下により決定することができる。
【0101】
他の実施形態では、スペーサーを選択するための方法は、標的分子のエピトープを選択するステップと、エピトープの位置を、細胞膜に照らして特徴付けるステップと、細胞膜に照らしたエピトープの位置に応じて長鎖または短鎖であるスペーサー領域を選択するステップと、エピトープに対するアフィニティーが基準抗体と比較して大きいかまたは小さい抗体またはその断片を選択するステップと、キメラ受容体構築物が、in vitroおよび/またはin vivoにおいて、T細胞増殖またはサイトカイン産生の増強をもたらすのかどうかを決定するステップとを含む。
【0102】
いくつかの実施形態では、標的エピトープまたはその一部分は、それが膜に対して近位に位置する場合、膜貫通ドメインと隣接する細胞外ドメインの直鎖状配列の最初の100アミノ酸に位置する。エピトープが膜に対して近位に位置する場合は、長鎖スペーサー(例えば、229アミノ酸以下であり、かつ、119アミノ酸を超える)を選択する。いくつかの実施形態では、標的エピトープは、それが膜に対して遠位に位置する場合、細胞外ドメイン末端の直鎖状配列の最初の150アミノ酸に位置する。エピトープが膜に対して遠位に位置する場合は、中間鎖スペーサーまたは短鎖スペーサー(例えば、119アミノ酸以下、または12~15アミノ酸以下)を選択する。代替的に、エピトープが膜に対して近位であるのか遠位であるのかは、三次元構造をモデル化することにより決定することもでき、結晶構造解析に基づき決定することもできる。
【0103】
いくつかの実施形態では、細胞のうちの少なくとも30%が、in vitroおよび/またはin vivoにおいて2世代にわたり増殖しているキメラ受容体を選択する。他の実施形態では、細胞のうちの少なくとも50%が、72時間以内に活性化誘導型細胞死を受ける結果をもたらす場合は、キメラ受容体を選択しない。実施形態では、エピトープが、膜に対して遠位に位置する場合、短鎖スペーサー(例えば、15アミノ酸以下)を選択する。実施形態では、エピトープが、膜に対して近位に位置する場合、長鎖スペーサー(例えば、229アミノ酸以下であり、かつ、119アミノ酸を超える)を選択する。
【0104】
実施形態では、複数のキメラ受容体核酸を提供するステップであって、キメラ受容体核酸がスペーサー領域内でだけ異なるステップは、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、またはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する、標的細胞集団上で発現する任意の他の分子であるポリヌクレオチドと、第1のポリペプチドスペーサーのコード配列の5’末端および3’末端において、規定された制限部位を有する第1のポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含むキメラ受容体構築物を提供することを含む。
【0105】
実施形態では、方法は、各々が異なるスペーサー領域をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを提供するステップをさらに含む。実施形態では、異なるスペーサー領域は、IgG1、IgG2、IgG3、もしくはIgG4、またはこれらの変異体もしくはその部分に由来するヒンジ領域配列、CH2領域またはその変異体の全部または一部分と組み合わせた、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するヒンジ領域配列、CH3領域またはその変異体の全部または一部分と組み合わせた、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するヒンジ領域配列、CH2領域またはその変異体およびCH3領域またはその変異体の全部または一部分と組み合わせた、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するヒンジ領域配列からなる群から選択される。実施形態では、リンパ球内の発現をもたらすために、かつ/または他の分子との相互作用を最小化するために、CH2領域またはCH3領域を、1カ所または複数カ所の欠失またはアミノ酸置換により改変することができる。実施形態では、ヒンジ領域の一部分は、少なくとも上方のアミノ酸配列およびコア配列を含む。実施形態では、ヒンジ領域は、配列X1PPX2Pを含む。
【0106】
実施形態では、方法は、スペーサー領域をコードするポリヌクレオチドを、異なるスペーサー領域をコードするポリヌクレオチドで置きかえて、異なるスペーサー領域を伴うキメラ受容体核酸を形成するステップをさらに含む。方法を繰り返して、各々のスペーサー領域が異なる任意の数のキメラ受容体核酸を形成することができる。実施形態では、キメラ受容体核酸は、スペーサー領域だけにおいて互いと異なる。
【0107】
膜貫通ドメイン
実施形態では、キメラ受容体核酸は、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。膜貫通ドメインは、キメラ受容体の膜内のアンカリングをもたらす。
【0108】
実施形態では、キメラ受容体内のドメインのうちの1つと天然で会合する膜貫通ドメインを使用する。場合によっては、このようなドメインの、同じ表面膜タンパク質または異なる表面膜タンパク質の膜貫通ドメインに対する結合を回避するアミノ酸置換により、膜貫通ドメインを選択または改変して、受容体複合体の他のメンバーとの相互作用を最小化することもできる。
【0109】
膜貫通ドメインは、天然の供給源に由来する場合もあり、合成の供給源に由来する場合もある。供給源が天然である場合、ドメインは、任意の膜結合タンパク質または膜貫通タンパク質に由来しうる。膜貫通領域は、T細胞受容体のアルファ鎖、ベータ鎖、またはゼータ鎖、CD28、CD3、CD45、CD4、CD8、CD9、CD16、CD22;CD33、CD37、CD64、CD80、CD86、CD134、CD137、およびCD154の少なくとも膜貫通領域(複数可)を含む。具体的な実施形態では、膜貫通ドメインは、表2に示されるCD28の膜貫通ドメインのアミノ酸配列を含む。CD28の膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチド配列の代表例を、表1(配列番号5)に示す。
【0110】
膜貫通ドメインは、合成の場合もあり、自然発生の膜貫通ドメインの変異体の場合もある。実施形態では、合成または変異体の膜貫通ドメインは主に、ロイシンおよびバリンなどの疎水性残基を含む。実施形態では、膜貫通ドメインは、表2または表6に示される膜貫通ドメインとの、少なくとも約80%、85%、90%、95%、または100%のアミノ酸配列の同一性を有しうる。変異体の膜貫通ドメインは、Kyte Doolittleにより計算される疎水性スコアが、少なくとも50であることが好ましい。
【0111】
膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドは、合成法または組換え法により容易に調製することができる。実施形態では、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドは、細胞内シグナル伝達領域をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結されている。実施形態では、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドはまた、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドの、異なる膜貫通ドメインをコードする別のポリヌクレオチドによる容易な切出しおよび置きかえをもたらすために、コード配列の5’末端および/または3’末端において、1つまたは複数の制限酵素部位も有しうる。実施形態では、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞内の発現のためにコドンを最適化する。
【0112】
細胞内シグナル伝達ドメイン
実施形態では、キメラ受容体核酸は、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドを含む。細胞内シグナル伝達ドメインは、腫瘍細胞上の発現するリガンドに結合すると、キメラ受容体を発現させる形質導入細胞の1つの機能の活性化をもたらす。実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、1つまたは複数の細胞内シグナル伝達ドメインを含有する。実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、形質導入細胞の少なくとも1つの機能の活性化をもたらす、細胞内シグナル伝達ドメインの一部分および/または変異体である。
【0113】
本開示のキメラ受容体における使用のための細胞内シグナル伝達ドメインの例は、CD3ゼータ鎖の細胞質配列および/またはキメラ受容体との係合の後でシグナル伝達を誘発するように協同的に作用する共受容体のほか、これらの配列の任意の誘導体または変異体、および同じ機能的能力を有する任意の合成配列も含む。T細胞の活性化は、2つの異なるクラスの細胞質シグナル伝達配列:抗原依存的な一次活性化を誘発し、T細胞受容体様シグナル(一次細胞質シグナル伝達配列)をもたらす細胞質シグナル伝達配列、および抗原非依存的な様式で作用して、二次シグナルまたは共刺激シグナル(二次細胞質シグナル伝達配列)をもたらす細胞質シグナル伝達配列により媒介されるということができる。刺激性の様式で作用する一次細胞質シグナル伝達配列は、受容体チロシンベースの活性化モチーフまたはITAMとして公知のシグナル伝達モチーフを含有しうる。ITAMを含有する一次細胞質シグナル伝達配列の例は、CD3ゼータ、FcRガンマ、CD3ガンマ、CD3デルタ、CD3イプシロン、CD5、CD22、CD79a、CD79b、およびCD66dに由来する一次細胞質シグナル伝達配列を含む。実施形態では、一次細胞内シグナル伝達ドメインは、表2に提示される配列を有するCD3ゼータに対する、少なくとも約80%、85%、90%、または95%の配列同一性を有しうる。実施形態では、CD3ゼータの変異体は、表7に示される、少なくとも1つ、2つ、3つ、または全てのITAM領域を保持する。
【0114】
好ましい実施形態では、キメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータシグナル伝達ドメイン自体または任意の他の所望の細胞質ドメイン(複数可)と組み合わせたCD3-ゼータシグナル伝達ドメインを含むようにデザインすることができる。例えば、キメラ受容体の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ鎖および共刺激シグナル伝達領域を含みうる。
【0115】
共刺激シグナル伝達領域とは、共刺激性分子の細胞内ドメインを含むキメラ受容体の一部分を指す。共刺激性分子とは、リンパ球の抗原に対する応答に要求される、抗原受容体またはそれらのリガンド以外の細胞表面分子である。このような分子の例は、CD27、CD28、4-1BB(CD137)、OX40、CD30、CD40、リンパ球機能関連抗原-1(LFA-1)、CD2、CD7、LIGHT、NKG2C、B7-H3、およびCD83に特異的に結合するリガンドを含む。実施形態では、共刺激シグナル伝達ドメインは、表5に示されるCD28の細胞内ドメインまたは表2に提示される配列を有する4-1BBに対する、少なくとも約80%、85%、90%、または95%のアミノ酸配列の同一性を有しうる。実施形態では、CD28細胞内ドメインの変異体は、LLをGGで置換する、186~187位におけるアミノ酸置換を含む。
【0116】
キメラ受容体の細胞内シグナル伝達配列は、ランダムな順序で互いと連結することもでき、指定された順序で互いと連結することもできる。任意選択で、短鎖のオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカー、好ましくは長さが2~10アミノ酸の間のオリゴペプチドリンカーまたはポリペプチドリンカーは、連結を形成しうる。一実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータまたはその変異体のシグナル伝達ドメインの全部または一部分、およびCD28またはその変異体のシグナル伝達ドメインの全部または一部分を含む。別の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータまたはその変異体のシグナル伝達ドメインの全部または一部分、および4-1BBまたはその変異体のシグナル伝達ドメインの全部または一部分を含む。さらに別の実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3-ゼータまたはその変異体のシグナル伝達ドメインの全部または一部分、CD28またはその変異体のシグナル伝達ドメインの全部または一部分、および4-1BBまたはその変異体のシグナル伝達ドメインの全部または一部分を含む。具体的な実施形態では、CD3ゼータの変異体を含む細胞内シグナル伝達ドメイン、および4-1BB細胞内シグナル伝達ドメインの一部分のアミノ酸配列を、表2に提示する。核酸配列の代表例を、表1(配列番号6;配列番号7)に提示する。
【0117】
実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドは、CD3ゼータドメインの一部分へと連結された4-1BB細胞内ドメインを含む。他の実施形態では、4-1BB細胞内ドメインおよびCD28細胞内ドメインを、CD3ゼータドメインの一部分へと連結する。
【0118】
細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドは、合成法または組換え法により、アミノ酸配列から容易に調製することができる。実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドはまた、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドの、異なる細胞内シグナル伝達ドメインをコードする別のポリヌクレオチドによる容易な切出しおよび置きかえをもたらすために、コード配列の5’末端および/または3’末端において、1つまたは複数の制限酵素部位も有しうる。実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞内の発現のためにコドンを最適化する。
【0119】
マーカー配列
実施形態では、キメラ受容体核酸は、マーカー配列をコードするポリヌクレオチド配列を任意選択でさらに含む。マーカー配列は、形質導入細胞の選択および形質導入細胞の同定をもたらしうる。実施形態では、マーカー配列を、リンカー配列をコードするポリヌクレオチド配列に作動可能に連結する。実施形態では、リンカー配列は、切断可能なリンカー配列である。
【0120】
多数の異なるマーカー配列を援用することができる。典型的に、マーカー配列は、形質導入細胞の選択および/または形質導入細胞の検出を可能とする機能的な特徴を有する。実施形態では、マーカー配列は、ヒトリンパ球の形質導入と適合的である。
【0121】
陽性選択マーカーは、宿主細胞へと導入されると、遺伝子を保有する細胞の陽性選択を可能とする優性表現型を発現させる遺伝子でありうる。当技術分野では、この種類の遺伝子が公知であり、とりわけ、ハイグロマイシンBに対する耐性を付与するハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生剤であるG418に対する耐性をコードするTn5に由来するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および多剤耐性(MDR)遺伝子を含む。
【0122】
実施形態では、キメラ受容体核酸は、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。実施形態では、マーカー配列は、表2に示される切断型上皮成長因子受容体である。切断型上皮成長因子受容体の例示的なポリヌクレオチドを、表1(配列番号9)に示す。実施形態では、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドを、リンカー配列をコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結する。具体的な実施形態では、リンカー配列は、表2に示される切断可能なリンカー配列であるT2Aである。T2Aリンカーをコードする例示的なポリヌクレオチド配列を、表1(配列番号8)に提示する。
【0123】
マーカー配列をコードするポリヌクレオチドは、合成法または組換え法により、アミノ酸配列から容易に調製することができる。実施形態では、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドを、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドに作動可能に連結する。実施形態では、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドはまた、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドの、異なるマーカー配列をコードする別のポリヌクレオチドによる容易な切出しおよび置きかえをもたらすために、コード配列の5’末端および/または3’末端において、1つまたは複数の制限酵素部位も有しうる。実施形態では、マーカー配列をコードするポリヌクレオチドは、哺乳動物細胞内の発現のためにコドンを最適化する。
【0124】
ベクター、細胞、および細胞に形質導入する方法
Tリンパ球集団の選択および分取
本明細書で記載される組成物は、CD4+ Tリンパ球および/またはCD8+ Tリンパ球をもたらす。Tリンパ球は、公知の技法に従い回収し、フローサイトメトリー選択および/または免疫磁気選択など、抗体へのアフィニティー結合など、公知の技法により濃縮するかまたは枯渇させることができる。濃縮ステップおよび/または枯渇ステップの後、公知の技法(Riddellらによる米国特許第6,040,177号において記載されている技法を含むがこれらに限定されない)または当業者に明らかなその変法に従い、所望のTリンパ球を、in vitroにおいて増やすことができる。実施形態では、T細胞は、患者から得られる自家T細胞である。
【0125】
例えば、所望のT細胞集団または部分集団は、in vitroにおいて、初期Tリンパ球集団を培養培地へと添加し、次いで、非分裂末梢血単核細胞(PBMC)、(例えば、結果として得られる細胞集団が、増やされる初期集団内の各Tリンパ球につき、少なくとも約5、10、20、または40以上のPBMCフィーダー細胞を含有するように)などの培養培地フィーダー細胞へと添加し、培養物をインキュベートする(例えば、T細胞の数を増やすのに十分な時間にわたり)ことにより増やすことができる。非分裂フィーダー細胞は、ガンマ線照射PBMCフィーダー細胞を含みうる。いくつかの実施形態では、PBMCを、約3000~3600ラドの範囲のガンマ線で照射して、細胞分裂を防止する。所望の場合、T細胞およびフィーダー細胞の培養培地への添加の順序は、逆転することができる。培養物は、Tリンパ球を成長させるのに適する温度などの条件下でインキュベートしうることが典型的である。ヒトTリンパ球を成長させるには、例えば、温度は一般に、少なくとも摂氏約25度、好ましくは少なくとも約30度、より好ましくは約37度となろう。
【0126】
増やされたTリンパ球は、ヒト腫瘍または病原体上に存在する抗原に特異的でありうるCD8+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)およびCD4+ヘルパーTリンパ球を含む。
【0127】
任意選択で、増殖法は、非分裂EBV形質転換リンパ芽球様細胞(LCL)を、フィーダー細胞として添加するステップをさらに含みうる。LCLは、約6000~10,000ラドの範囲のガンマ線で照射することができる。LCLフィーダー細胞は、LCLフィーダー細胞の初期Tリンパ球に対する比を少なくとも約10:1とするなど、任意の適切な量で提供することができる。
【0128】
任意選択で、増殖法は、抗CD3および/または抗CD28抗体を、培養培地へと添加する(例えば、少なくとも約0.5ng/mlの濃度で)ステップをさらに含みうる。任意選択で、増殖法は、IL-2および/またはIL-15を、培養培地へと添加する(例えば、ここで、IL-2の濃度は、1ml当たり少なくとも約10単位である)ステップをさらに含みうる。
【0129】
Tリンパ球を単離した後で、細胞傷害性Tリンパ球およびヘルパーTリンパ球のいずれも、増やす前に、または増やした後で、ナイーブT細胞、メモリーT細胞、およびエフェクターT細胞の部分集団へと分取することができる。
【0130】
CD8+細胞は、標準的な方法を使用することにより得ることができる。いくつかの実施形態では、CD8+細胞を、これらのCD8+細胞型の各々と関連する細胞表面抗原を同定することにより、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクターメモリー細胞へとさらに分取する。実施形態では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+サブセットおよびCD62L-サブセットのいずれにおいても存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体による染色の後で、CD62L- CD8+画分およびCD62L+ CD8+画分へと分取する。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーTCMの表現型マーカーの発現は、CD45RO、CD62L、CCR7、CD28、CD3、およびCD127を含み、グランザイムBについては陰性または低度である。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD8+ T細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクターTEは、CD62L、CCR7、CD28、およびCD127について陰性であり、グランザイムBおよびパーフォリンについて陽性である。いくつかの実施形態では、ナイーブCD8+ Tリンパ球は、CD62L、CCR7、CD28、CD3、CD127、およびCD45RAを含むナイーブT細胞の表現型マーカーの発現によって特徴付けられる。
【0131】
細胞または細胞集団が、特定の細胞表面マーカーについて陽性であるのかどうかは、表面マーカーおよびアイソタイプをマッチさせた対照抗体について特異的な抗体による染色を使用して、フローサイトメトリーにより決定することができる。マーカーについて陰性の細胞集団とは、特異的な抗体による細胞集団の、アイソタイプ対照を上回る著明な染色の非存在を指し、陽性とは、細胞集団の、アイソタイプ対照を上回る均一な染色を指す。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のマーカーの発現の低下とは、平均蛍光強度の1log10の減少および/またはマーカーを呈示する細胞の百分率の低下であって、基準細胞集団と比較した場合の、細胞のうちの少なくとも約20%、細胞のうちの25%、細胞のうちの30%、細胞のうちの35%、細胞のうちの40%、細胞のうちの45%、細胞のうちの50%、細胞のうちの55%、細胞のうちの60%、細胞のうちの65%、細胞のうちの70%、細胞のうちの75%、細胞のうちの80%、細胞のうちの85%、細胞のうちの90%、細胞のうちの95%、細胞のうちの100%、および20~100%の間の任意の%の低下を指す。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のマーカーについて陽性の細胞集団とは、マーカーを呈示する細胞の百分率であって、基準細胞集団と比較した場合の、細胞のうちの少なくとも約50%、細胞のうちの55%、細胞のうちの60%、細胞のうちの65%、細胞のうちの70%、細胞のうちの75%、細胞のうちの80%、細胞のうちの85%、細胞のうちの90%、細胞のうちの95%、細胞のうちの100%、および50~100%の間の任意の%である百分率を指す。
【0132】
CD4+ヘルパーT細胞は、細胞表面抗原を有する細胞集団を同定することにより、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞へと分取する。CD4+リンパ球は、標準的な方法により得ることができる。いくつかの実施形態では、ナイーブCD4+ Tリンパ球は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞である。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L+およびCD45RO+である。いくつかの実施形態では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L-およびCD45RO-である。
【0133】
実施形態では、抗原特異的なCD4+およびCD8+の集団は、ナイーブTリンパ球または抗原特異的Tリンパ球を抗原で刺激することにより得ることができる。例えば、T細胞を感染被験体から単離し、in vitroにおいて、細胞を同じ抗原で刺激することにより、サイトメガロウイルス抗原に対する抗原特異的T細胞系またはクローンを生成することができる。ナイーブT細胞もまた使用することができる。腫瘍細胞に由来する任意の数の抗原を標的として活用して、T細胞応答を誘発することができる。いくつかの実施形態では、養子細胞免疫療法組成物は、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、乳がん、または黒色腫を含む疾患または障害の処置において有用である。
【0134】
Tリンパ球集団の改変
いくつかの実施形態では、機能的な遺伝子を、本開示に従う免疫療法において使用されるT細胞へと導入することが所望でありうる。例えば、導入される1つまたは複数の遺伝子は、移入T細胞の生存可能性および/または機能を促進することにより、治療の有効性を改善する場合もあり、in vivoにおける生存または遊走の選択および/または査定を可能とする遺伝子マーカーを提供する場合もあり、例えば、Lupton S. D.ら、Mol. and Cell Biol.、11巻:6頁(1991年);およびRiddellら、Human Gene Therapy、3巻:319~338頁(1992年)(また、優性の陽性選択マーカーを、陰性選択マーカーと融合させることから導出される二官能性選択用の融合遺伝子の使用について記載する、LuptonらによるPCT/US91/08442およびPCT/US94/05601の公報も参照されたい)により記載されている通り、in vivoにおける陰性選択に対して感受性の細胞を作製することにより、免疫療法の安全性を改善する機能を組み込む場合もある。これは、公知の技法(例えば、Riddellらによる米国特許第6,040,177号の第14~17欄を参照されたい)、または本開示に基づく、当業者に明らかなその変法に従い実行することができる。
【0135】
実施形態では、T細胞を、本明細書で記載されるキメラ受容体により改変する。いくつかの実施形態では、T細胞は、処置される被験体から得、他の実施形態では、リンパ球は、同種ヒトドナー、好ましくは健常ヒトドナーから得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、キメラ受容体は、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的に結合するリガンド結合ドメイン、ポリペプチドスペーサー領域、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含む。実施形態では、リガンド結合ドメインは、モノクローナル抗体(mAb)の可変重鎖(VH)および可変軽鎖(VL)に由来する単鎖抗体断片(scFv)である。また、共刺激シグナルも、CD28および/または4-1BBの共刺激ドメインをCD3ζ鎖へと融合させることを介するキメラ受容体により提供することができる。キメラ受容体は、HLAから独立している細胞表面分子に特異的であり、これにより、腫瘍細胞上のHLA拘束および低レベルのHLA発現を含む、TCR認識の限界を克服する。
【0137】
例えば、抗体分子の抗原結合断片または抗体可変ドメインを活用することにより、任意の細胞表面マーカーに特異的なキメラ受容体を構築することができる。抗原結合分子は、1つまたは複数の細胞シグナル伝達モジュールへと連結することができる。実施形態では、細胞シグナル伝達モジュールは、CD3膜貫通ドメイン、CD3細胞内シグナル伝達ドメイン、およびCD28膜貫通ドメインを含む。実施形態では、細胞内シグナル伝達ドメインは、CD3ゼータ細胞内ドメインへと連結されたCD28膜貫通およびシグナル伝達ドメインを含む。いくつかの実施形態では、キメラ受容体はまた、tEGFRなどの形質導入マーカーも含みうる。
【0138】
実施形態では、CD4+ Tリンパ球およびCD8+ Tリンパ球の集団の各々へと、同じキメラ受容体を導入することもでき、異なるキメラ受容体を導入することもできる。実施形態では、これらの集団の各々におけるキメラ受容体は、腫瘍または感染細胞上の同じリガンドに特異的に結合するリガンド結合ドメインを有する。細胞性シグナル伝達モジュールは異なりうる。実施形態では、CD8+細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4+ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと同じである。他の実施形態では、CD8+細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4+ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと異なる。
【0139】
実施形態では、CD4 Tリンパ球またはCD8 Tリンパ球の各々は、本明細書で記載される形質導入の前に、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞、またはエフェクター細胞へと分取することができる。代替的な実施形態では、CD4 Tリンパ球またはCD8 Tリンパ球の各々は、形質導入の後で、ナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、エフェクターメモリー細胞、またはエフェクター細胞へと分取することもできる。
【0140】
遺伝子送達のために組換え感染性ウイルス粒子を活用する、多様な形質導入法が開発されている。これは現在のところ、本発明のTリンパ球の形質導入のための好ましい手法を表す。このようにして使用されているウイルスベクターは、サルウイルス40、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルスベクター、およびレトロウイルスに由来するウイルスベクターを含む。したがって、遺伝子導入法および遺伝子発現法は数多いが、本質的に、遺伝子素材を哺乳動物細胞内に導入し、発現させるように機能する。リン酸カルシウムトランスフェクション、プロトプラスト融合、電気穿孔、ならびに組換えアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、およびレトロウイルスベクターの感染を含む、上記の技法のうちのいくつかは、造血細胞またはリンパ球様細胞を形質導入するのに使用されている。初代Tリンパ球は、電気穿孔およびレトロウイルス感染またはレンチウイルス感染により形質導入することに成功している。
【0141】
レトロウイルスベクターおよびレンチウイルスベクターは、遺伝子を真核細胞へと導入するための極めて効率的な方法を提供する。さらに、レトロウイルスまたはレンチウイルスの組込みは、制御された様式で行い、細胞1個当たり1つまたは数コピーの新たな遺伝子情報の安定的な組込みを結果としてもたらす。
【0142】
刺激因子(例えば、リンホカインまたはサイトカイン)の過剰発現は、処置する個体に毒性でありうることが想定されている。したがって、本発明のT細胞をin vivoにおける陰性選択に対して感受性とする遺伝子セグメントを含むことは、本発明の範囲内にある。「陰性選択」とは、注入された細胞が、in vivoにおける個体の状態の変化の結果として除去されうることを意味する。陰性選択用の表現型は、投与される薬剤、例えば、化合物に対する感受性を付与する遺伝子の挿入から生じうる。当技術分野では、陰性選択用の遺伝子が公知であり、とりわけ、以下:ガンシクロビル感受性を付与するI型単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ(HSV-I TK)遺伝子;細胞内ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、細胞内アデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(APRT)遺伝子、および細菌性シトシンデアミナーゼを含む。
【0143】
いくつかの実施形態では、in vitroにおける、陰性選択用の表現型を有する細胞の選択を可能とする陽性マーカーをT細胞内に含むことは有用でありうる。陽性選択マーカーは、宿主細胞へと導入されると、遺伝子を保有する細胞の陽性選択を可能とする優性表現型を発現させる遺伝子でありうる。当技術分野では、この種類の遺伝子が公知であり、とりわけ、ハイグロマイシンBに対する耐性を付与するハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ遺伝子(hph)、抗生剤であるG418に対する耐性をコードするTn5に由来するアミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoまたはaph)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子、アデノシンデアミナーゼ遺伝子(ADA)、および多剤耐性(MDR)遺伝子を含む。
【0144】
当技術分野で周知の通り、Tリンパ球に形質導入するために、様々な方法を援用することができる。実施形態では、形質導入は、レンチウイルスベクターを使用して実行する。
【0145】
実施形態では、CD4+細胞およびCD8+細胞は各々、規定された集団を形成するキメラ受容体をコードする発現ベクターにより個別に改変することができる。実施形態では、次いで、これらの細胞を、これらの細胞集団の各々に固有な細胞表面抗原について分取することにより、上記で記載したナイーブ細胞、セントラルメモリー細胞、およびエフェクター細胞の部分集団へとさらに分取する。加えて、CD4+細胞集団またはCD8+細胞集団は、それらのサイトカインプロファイルまたは増殖活性により選択することもできる。例えば、抗原で刺激したときに、IL-2、IL-4、IL-10、TNFα、およびIFNγなどのサイトカインの産生の、偽形質導入細胞または形質導入CD8+細胞と比較した増強を示すCD4+ Tリンパ球を選択することができる。他の実施形態では、IL-2および/またはTNFαの産生の増強を示す、ナイーブCD4+ T細胞またはセントラルメモリーCD4+ T細胞を選択する。同様に、IFNγ産生の増強を示すCD8+細胞も、偽形質導入CD8+細胞と比較して選択する。
【0146】
実施形態では、抗原または腫瘍標的に応答して増殖するCD4+細胞およびCD8+細胞を選択する。例えば、抗原または腫瘍標的で刺激したときに、偽形質導入細胞またはCD8+形質導入細胞と比較して活発に増殖するCD4+細胞を選択する。いくつかの実施形態では、抗原保有細胞に対して細胞傷害性であるCD4+細胞およびCD8+細胞を選択する。実施形態では、CD4+は、CD8+細胞と比較して細胞傷害性が弱いことが予測されている。
【0147】
好ましい実施形態では、特定の種類のがんについて確立された動物モデルを使用して、in vivoにおいて腫瘍細胞の殺滅をもたらすCD8+セントラルメモリー細胞などの形質導入リンパ球を選択する。当業者には、このような動物モデルが公知であり、ヒトを除外する。本明細書で記載される通り、in vitroにおいて活性化し、腫瘍細胞を死滅させる能力にもかかわらず、リンパ球へと形質導入された全てのキメラ受容体構築物が、in vivoにおいて腫瘍細胞を死滅させる能力を付与するわけではない。特に、ある標的分子では、長鎖スペーサー領域を伴うキメラ受容体構築物を有するT細胞は、in vivoにおける腫瘍細胞の殺滅が、短鎖スペーサー領域を伴うキメラ受容体を有するT細胞と比較してそれほど有効でなかった。他の標的分子では、短鎖スペーサー領域を伴うキメラ受容体構築物を有するT細胞は、in vivoにおける腫瘍細胞の殺滅が、長鎖スペーサー領域を伴うキメラ受容体を有するT細胞と比較してそれほど有効でなかった。
【0148】
さらに他の実施形態では、特定の種類のがんについて確立された動物モデルを使用して、形質導入されたキメラ受容体を発現させるT細胞であって、in vivoにおいて存続しうるT細胞を選択する。実施形態では、短鎖スペーサー領域を伴う、キメラ受容体を形質導入されたCD8+セントラルメモリー細胞は、動物へと導入した後、in vivoにおいて、約3日間以上、10日間以上、20日間以上、30日間以上、40日間以上、または50日間以上にわたり存続することが示されている。
【0149】
本開示は、CD4+ T細胞とCD8+ T細胞との組合せを、組成物中で活用することを想定する。一実施形態では、キメラ受容体を形質導入されたCD4+細胞は、同じリガンド特異性を有するキメラ受容体を形質導入されたCD8+細胞と組み合わせることもでき、異なる腫瘍リガンドに特異的なCD8+T細胞と組み合わせることもできる。他の実施形態では、キメラ受容体を形質導入されたCD8+細胞を、腫瘍上で発現する異なるリガンドに特異的なキメラ受容体を形質導入されたCD4+細胞と組み合わせる。さらに別の実施形態では、キメラ受容体により改変されたCD4+細胞とCD8+細胞とを組み合わせる。実施形態では、CD8+細胞とCD4+細胞とは、異なる比、例えば、CD8+細胞とCD4+細胞との1:1の比、CD8+細胞のCD4+細胞に対する10:1の比、またはCD8+細胞のCD4+細胞に対する100:1の比で組み合わせることができる。実施形態では、組み合わされた集団を、in vitroおよび/またはin vivoにおける細胞増殖について調べ、細胞の増殖をもたらす細胞の比を選択する。
【0150】
本明細書で記載される通り、本開示は、CD4+細胞およびCD8+細胞は、ナイーブ細胞集団、セントラルメモリー細胞集団、およびエフェクターメモリー細胞集団などの部分集団へとさらに分離しうることを想定する。本明細書で記載される通り、いくつかの実施形態では、ナイーブCD4+細胞は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+陽性T細胞である。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーCD4+細胞は、CD62L陽性およびCD45RO陽性である。いくつかの実施形態では、エフェクターCD4+細胞は、CD62L陰性およびCD45RO陽性である。これらの集団の各々は、キメラ受容体により独立に改変することができる。
【0151】
本明細書で記載される通り、実施形態では、メモリーT細胞は、CD8+末梢血リンパ球のCD62L+サブセットおよびCD62L-サブセットのいずれにおいても存在する。PBMCは、抗CD8抗体および抗CD62L抗体による染色の後で、CD62L- CD8+画分およびCD62L+ CD8+画分へと分取する。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞(TCM)の表現型マーカーの発現は、CD62L、CCR7、CD28、CD3、およびCD127を含み、グランザイムBについては陰性または低度である。いくつかの実施形態では、セントラルメモリーT細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD8+ T細胞である。いくつかの実施形態では、エフェクターT細胞(TE)は、CD62L、CCR7、CD28、およびCD127について陰性であり、グランザイムBおよびパーフォリンについて陽性である。いくつかの実施形態では、ナイーブCD8+ Tリンパ球は、CD8+、CD62L+、CD45RO+、CCR7+、CD28+、CD127+、およびCD45RO+によって特徴付けられる。これらの集団の各々は、キメラ受容体により独立に改変することができる。
【0152】
キメラ受容体を保有する細胞の形質導入および/または選択の後で、ヒト被験体への少なくとも1回の注入を行うのに十分な数、典型的に、1kg当たりの細胞104個~1kg当たりの細胞109個程度の細胞が得られるまで、in vitroで細胞集団を増やすことが好ましい。実施形態では、形質導入細胞を、抗原保有細胞、抗CD3、抗CD28、およびIL2、IL-7、IL15、IL-21、ならびにこれらの組合せの存在下で培養する。
【0153】
CD4+細胞およびCD8+細胞の部分集団の各々は、互いと組み合わせることができる。具体的な実施形態では、改変されたナイーブCD4+細胞またはセントラルメモリーCD4+細胞を、改変されたセントラルメモリーCD8+ T細胞と組み合わせて、腫瘍細胞など、抗原を保有する細胞上の相乗作用的な細胞傷害性効果をもたらす。
【0154】
組成物
本開示は、本明細書で記載される遺伝子改変Tリンパ球細胞調製物を含む養子細胞免疫療法組成物を提示する。
【0155】
実施形態では、Tリンパ球細胞調製物は、疾患または障害と関連するリガンドに特異的な細胞外抗体可変ドメイン、カスタマイズ可能なスペーサー領域、膜貫通ドメイン、および本明細書で記載されるT細胞受容体または他の受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD4+ T細胞を含む。他の実施形態では、養子細胞免疫療法組成物は、細胞性免疫応答をもたらす、キメラ受容体により改変された腫瘍特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物であって、疾患または障害と関連するリガンドに特異的な細胞外単鎖抗体、カスタマイズ可能なスペーサー領域、膜貫通ドメイン、および本明細書で記載されるT細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD8+ T細胞を含む細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物をさらに含む。実施形態では、本開示のキメラ受容体改変T細胞集団は、in vivoにおいて少なくとも約3日間以上にわたり存続しうる。
【0156】
いくつかの実施形態では、養子細胞免疫療法組成物は、細胞性免疫応答をもたらす、キメラ受容体により改変された腫瘍特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物を含み、細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物は、CD45RO- CD62L+ CD4+ T細胞に由来する、抗原反応性キメラ受容体により改変されたナイーブCD4+ヘルパーT細胞と組み合わせた、疾患または障害と関連するリガンドに特異的な細胞外単鎖抗体、カスタマイズ可能なスペーサー領域、膜貫通ドメイン、およびT細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD8+ T細胞、ならびに薬学的に許容される担体を含む。
【0157】
他の実施形態では、養子細胞免疫療法組成物は、CD8+免疫応答を増進させる、抗原反応性キメラ受容体により改変されたナイーブCD4+ヘルパーT細胞と組み合わせた、患者に由来する、細胞性免疫応答をもたらす抗原特異的CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物を含み、ヘルパーTリンパ球細胞調製物は、疾患または障害と関連する抗原に特異的な細胞外抗体可変ドメイン、カスタマイズ可能なスペーサー領域、膜貫通ドメイン、およびT細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD4+
T細胞を含む。
【0158】
さらなる実施形態では、養子細胞免疫療法組成物は、CD8+免疫応答を増進させる、抗原反応性キメラ受容体により改変されたナイーブCD4+ヘルパーT細胞を含み、ヘルパーTリンパ球細胞調製物は、疾患または障害と関連するリガンドに特異的な細胞外抗体可変ドメイン、カスタマイズ可能なスペーサー領域、膜貫通ドメイン、およびT細胞受容体の細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD4+ T細胞を含む。
【0159】
実施形態では、CD4+ヘルパーTリンパ球は、ナイーブCD4+ T細胞、セントラルメモリーCD4+ T細胞、エフェクターメモリーCD4+ T細胞、またはバルクCD4+ T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD4+ヘルパーリンパ球細胞は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞を含む、ナイーブCD4+ T細胞である。実施形態では、CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞は、ナイーブCD8+ T細胞、セントラルメモリーCD8+ T細胞、エフェクターメモリーCD8+ T細胞、またはバルクCD8+ T細胞からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD8+ T細胞を含む、セントラルメモリーT細胞である。さらに他の実施形態では、CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞は、セントラルメモリーT細胞であり、CD4+ヘルパーTリンパ球細胞は、ナイーブCD4+ T細胞またはセントラルメモリーCD4+ T細胞である。
【0160】
方法
本開示は、疾患または障害を有する被験体において、細胞免疫療法を実施するための、養子免疫療法組成物を作製する方法、またはこれらの組成物を使用する方法を提示する。実施形態では、本明細書で記載されるキメラ受容体改変T細胞は、in vivoで少なくとも3日間、または少なくとも10日間にわたり存続することが可能である。実施形態では、本明細書で記載されるキメラ受容体改変T細胞は、CFSE色素の希釈により決定される通り、in vivoで少なくとも2世代、または少なくとも3世代にわたり増殖しうる。キメラ受容体改変T細胞の増殖および存続は、疾患または障害の動物モデルを使用し、細胞を投与し、移入される細胞の存続能および/または増殖能を決定することにより決定することができる。他の実施形態では、抗原を保有する細胞による複数サイクルにわたる活性化を経ることにより、in vitroにおける増殖および活性化を調べることができる。
【0161】
実施形態では、組成物を製造する方法は、改変ナイーブCD4+ヘルパーT細胞を得るステップであって、改変ヘルパーTリンパ球細胞調製物が、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD4+ T細胞を含むステップを含む。
【0162】
別の実施形態では、方法は、改変CD8+細胞傷害性T細胞を得るステップであって、改変細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物が、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD8+細胞を含むステップをさらに含む。
【0163】
別の実施形態では、方法は、改変CD8+細胞傷害性T細胞を得るステップであって、改変細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物が、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD8+ T細胞を含むステップを含み、改変CD8+細胞傷害性T細胞を、CD4+ヘルパー細胞リンパ球細胞調製物と組み合わせるステップをさらに含む。
【0164】
キメラ受容体により改変されたCD4+細胞およびCD8+細胞の調製については、上記でも記載しており、実施例でも記載する。抗原特異的Tリンパ球は、疾患または障害を有する患者から得ることもでき、抗原存在下のin vitroでTリンパ球を刺激することにより調製することもできる。また、抗原特異性について選択されていないCD4+
Tリンパ球およびCD8+ Tリンパ球の部分集団も、本明細書で記載される通りに単離し、製造法において組み合わせることができる。実施形態では、細胞集団の組合せを、細胞表面マーカーの均一性、少なくとも2世代にわたり増殖する能力、均一な細胞分化状態を有する能力について査定することができる。標的リガンドを発現させる細胞系を、キメラ受容体改変T細胞と共に共培養することにより、品質管理を実施して、当分野で公知の細胞傷害作用アッセイ、増殖アッセイ、またはサイトカイン産生アッセイを使用して、キメラ受容体改変T細胞が細胞系を認識するのかどうかを決定することができる。細胞分化状態およびキメラ受容体改変T細胞上の細胞表面マーカーは、フローサイトメトリーにより決定することができる。実施形態では、CD8+細胞上のマーカーおよび細胞分化状態は、CD3、CD8、CD62L、CD28、CD27、CD69、CD25、PD-1、CTLA-4、CD45RO、およびCD45RAを含む。実施形態では、CD4+細胞上のマーカーおよび細胞分化状態は、CD3、CD4、CD62L、CD28、CD27、CD69、CD25、PD-1、CTLA-4、CD45RO、およびCD45RAを含む。
【0165】
本明細書において、実施形態では、キメラ受容体のためのスペーサー領域を選択する方法が提示される。驚くべきことに、いくつかのキメラ受容体構築物は、in vitroでは、T細胞を活性化させるのに有効であったが、in vivoでは有効でなかった。実施形態では、方法は、複数のキメラ受容体核酸を提供するステップであって、キメラ受容体核酸がスペーサー領域内でだけ異なるステップと、キメラ受容体核酸の各々を、別々のTリンパ球集団へと導入するステップと、各別々のリンパ球集団をin vitroにおいて増やすステップと、各リンパ球集団を、腫瘍を保有する動物へと導入して、キメラ受容体改変T細胞の各々の抗腫瘍有効性を決定するステップと、他のキメラ受容体改変T細胞の各々により改変された他の別々のリンパ球集団の各々と比較して抗腫瘍有効性をもたらすキメラ受容体を選択するステップとを含む。
【0166】
異なる腫瘍の動物モデルが公知である。抗腫瘍有効性は、腫瘍容量の減少を同定することにより測定することもでき、動物の死、in vivoにおける遺伝子改変T細胞の存続、遺伝子改変T細胞の活性化(例えば、CD25および/CD69の発現の増大を検出することによる)、および/またはin vivoにおける遺伝子改変T細胞の増殖を決定することにより測定することもできる。実施形態では、これらのパラメータのうちの1つまたは複数により決定される、in vivoにおける最良の抗腫瘍有効性をもたらすキメラ受容体を選択する。抗腫瘍有効性の欠如は、in vivoにおける遺伝子改変リンパ球の存続の欠如、動物の死、カスパーゼ3の誘導の増大により測定されるアポトーシスの増大、および/または遺伝子改変リンパ球の増殖の低下により決定することができる。
【0167】
実施形態では、複数のキメラ受容体核酸を提供するステップであって、キメラ受容体核酸がスペーサー領域内でだけ異なるステップは、リガンド結合ドメインをコードするポリヌクレオチドであって、リガンドが、腫瘍特異的抗原、ウイルス抗原、またはリンパ球による認識および除去を媒介するのに適する、標的細胞集団上で発現する任意の他の分子であるポリヌクレオチドと、第1のポリペプチドスペーサーのコード配列の5’末端および3’末端において、規定された制限部位を有する第1のポリペプチドスペーサーをコードするポリヌクレオチドと、膜貫通ドメインをコードするポリヌクレオチドと、細胞内シグナル伝達ドメインをコードするポリヌクレオチドとを含むキメラ受容体構築物を提供することを含む。
【0168】
本開示はまた、疾患または障害を有する被験体において、細胞免疫療法を実施する方法であって、本明細書で記載されるキメラ受容体を発現させるリンパ球の組成物を投与するステップを含む方法も提示する。他の実施形態では、方法は、細胞性免疫応答をもたらす遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物であって、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD8+
T細胞を含む細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物と、直接的な腫瘍認識を誘発し、細胞性免疫応答を媒介する遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物の能力を増進させる遺伝子改変ヘルパーTリンパ球細胞調製物であって、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD4+ T細胞を含むヘルパーTリンパ球細胞調製物とを被験体へと投与するステップを含む。
【0169】
本開示の範囲を限定するわけではないが、投与の前に、in vivoにおいて存続および増殖しうるキメラ受容体改変T細胞集団を選択することにより、低用量のT細胞を使用し、より均一な治療活性をもたらす能力を結果としてもたらしうると考えられる。実施形態では、T細胞の用量は、少なくとも10%、20%、または30%以上低減することができる。T細胞の用量の低減は、腫瘍溶解症候群およびサイトカインストームの危険性を低減するのに有益でありうる。
【0170】
別の実施形態では、疾患または障害を有する被験体において、細胞免疫療法を実施する方法は、遺伝子改変ヘルパーTリンパ球細胞調製物であって、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD4+ T細胞を含む改変ヘルパーTリンパ球細胞調製物を被験体へと投与するステップを含む。実施形態では、方法は、遺伝子改変細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物であって、本明細書で記載される、腫瘍細胞表面分子に特異的なリガンド結合ドメイン、カスタマイズされたスペーサードメイン、膜貫通ドメイン、および細胞内シグナル伝達ドメインを含むキメラ受容体を有するCD8+細胞を含む改変細胞傷害性Tリンパ球細胞調製物を被験体へと投与するステップをさらに含む。
【0171】
別の実施形態は、疾患または障害を有する被験体において、細胞免疫療法を実施する方法であって、被験体の生物学的試料を、疾患または障害と関連する標的分子の存在について解析するステップと、本明細書で記載される養子免疫療法組成物を投与するステップであって、キメラ受容体が、標的分子に特異的に結合するステップとを含む方法について記載する。
【0172】
いくつかの実施形態では、ナイーブCD4+ T細胞、セントラルメモリーCD4+ T細胞、エフェクターメモリーCD4+ T細胞、またはバルクCD4+ T細胞からなる群に由来するキメラ受容体を導入する前に、CD4+ ヘルパーTリンパ球細胞を選択する。具体的な実施形態では、CD4+ヘルパーリンパ球細胞は、CD45RO-、CD45RA+、CD62L+、CD4+ T細胞を含む、ナイーブCD4+ T細胞である。さらに他の実施形態では、ナイーブCD8+ T細胞、セントラルメモリーCD8+ T細胞、エフェクターメモリーCD8+ T細胞、またはバルクCD8+ T細胞からなる群に由来するキメラ受容体を導入する前に、CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞を選択する。具体的な実施形態では、CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞は、CD45RO+、CD62L+、CD8+ T細胞を含む、セントラルメモリーT細胞である。具体的な実施形態では、CD8+細胞傷害性Tリンパ球細胞は、セントラルメモリーT細胞であり、CD4+ヘルパーTリンパ球細胞は、ナイーブCD4+ T細胞である。
【0173】
実施形態では、CD8+ T細胞およびCD4+ T細胞はいずれも、腫瘍特異的細胞表面分子に特異的に結合する抗体重鎖ドメインを含むキメラ受容体により遺伝子改変されている。他の実施形態では、CD8細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと同じである。さらに他の実施形態では、CD8細胞傷害性T細胞の細胞内シグナル伝達ドメインは、CD4ヘルパーT細胞の細胞内シグナル伝達ドメインと異なる。
【0174】
本発明により処置されうる被験体は一般に、ヒト被験体、ならびに獣医学的医療を目的とする、サルおよび類人猿など、他の霊長動物被験体である。被験体は、雄の場合もあり、雌の場合もあり、幼児被験体、小児被験体、青年被験体、成人被験体、および高齢者被験体を含む任意の適切な年齢でありうる。
【0175】
方法は、例えば、血液悪性腫瘍、黒色腫、乳がん、および他の上皮悪性腫瘍、または固形腫瘍の処置において有用である。いくつかの実施形態では、疾患または障害と関連する分子は、チロシンキナーゼオーファン受容体であるROR1、Her2、CD19、CD20、CD22、メソテリン、CEA、およびB型肝炎表面抗原からなる群から選択される。
【0176】
処置されうる被験体は、結腸がん、肺がん、肝臓がん、乳がん、腎臓がん、前立腺がん、卵巣がん、皮膚がん(黒色腫を含む)、骨がん、および脳腫瘍などを含むがこれらに限定されないがんに罹患する被験体を含む。いくつかの実施形態では、黒色腫、乳がん、扁平細胞癌、結腸がん、白血病、骨髄腫、および前立腺がんなど、腫瘍関連抗原または腫瘍関連分子が公知である。他の実施形態では、腫瘍関連分子を、操作されたキメラ受容体を発現させる遺伝子改変T細胞によりターゲティングすることができる。例は、B細胞リンパ腫、乳がん、前立腺がん、および白血病を含むがこれらに限定されない。
【0177】
上記で記載した通りに調製される細胞は、公知の技法に従う養子免疫療法のための方法および組成物、または本開示に基づく、当業者に明らかなその変法において活用することができる。
【0178】
いくつかの実施形態では、細胞は、まずそれらの培養培地からそれらを採取し、次いで、細胞を洗浄し、投与に適する培地中および容器系内(「薬学的に許容される」担体中)に処置有効量で濃縮することにより製剤化する。適切な注入培地は、任意の等張性培地製剤、典型的に、生理食塩液、Normosol R(Abbott)またはPlasma-Lyte A(Baxter)でありうるが、また、水中または乳酸加リンゲル液中に5%のデキストロースも活用することができる。注入培地には、ヒト血清アルブミン、ウシ胎仔血清または、他のヒト血清成分を補充することができる。
【0179】
組成物中の処置有効量の細胞は、少なくとも2つの細胞サブセット(例えば、1つのCD8+セントラルメモリーT細胞サブセットおよび1つのCD4+ヘルパーT細胞サブセット)であり、またはより典型的に、細胞102個を超え、最大で106個、最大で細胞108または109個であり、かつ、これを含み、細胞1010個を超える場合もある。細胞の数は、その中に含まれる細胞の種類に依存するように、組成物が意図される最終的な使用にも依存するであろう。例えば、特定の抗原に特異的な細胞が所望される場合、集団は、このような細胞のうちの70%超、一般に、80%超、85%、および90~95%を含有するであろう。本明細書で提示される使用では、細胞は一般に、1リットル以下の容量であり、500ml以下、なおまた250mlまたは100ml以下でありうる。よって、所望の細胞の密度は典型的に、1ml当たりの細胞104個を超え、一般に1ml当たりの細胞107個を超え、一般に1ml当たりの細胞108個以上である。臨床的に関与性の免疫細胞の数は、のべの細胞個数を106、107、108、108、109、1010、または1011個以上とする、複数回の注入へと分配することができる。
【0180】
いくつかの実施形態では、本発明のリンパ球を使用して、個体に免疫を付与することができる。「免疫」とは、リンパ球応答が方向付けられる、病原体による感染または腫瘍に対する応答と関連する1つまたは複数の身体症状の軽減を意味する。投与される細胞の量は通常、病原体に対する免疫を伴う正常個体において存在する範囲内にある。したがって、細胞は通常、各注入が、細胞2個~最大で少なくとも細胞106~3×1010個の範囲内、好ましくは少なくとも細胞107~109個の範囲内にある注入により投与する。T細胞は、ある期間にわたり、単回の注入により投与することもでき、複数回の注入により投与することもできる。しかし、異なる個体は、応答性においてばらつくことが予測されているので、注入された細胞の種類および量のほか、注入の回数および複数回の注入が施される時間の範囲は、主治医により決定され、日常的な検査により決定することができる。十分なレベルのTリンパ球(細胞傷害性Tリンパ球および/またはヘルパーTリンパ球を含む)の作製は、本明細書で例示される、本発明の急速増殖法を使用して容易に達成可能である。例えば、Riddellらによる米国特許第6,040,177号の第17欄を参照されたい。
【0181】
実施形態では、本明細書で記載される組成物を、静脈内投与、腹腔内投与、腫瘍内投与、骨髄内投与、リンパ節内投与、および/または脳脊髄液内投与する。実施形態では、キメラ受容体操作組成物を、腫瘍部位へと送達する。代替的に、本明細書で記載される組成物は、細胞を腫瘍または免疫系区画へとターゲティングする化合物と組み合わせ、肺などの部位を回避することができる。
【0182】
実施形態では、本明細書で記載される組成物を、化学療法剤および/または免疫抑制剤と共に投与する。実施形態ではまず、患者を、他の免疫細胞を阻害または破壊する化学療法剤により処置した後で、本明細書で記載される組成物により処置する。場合によっては、化学療法を完全に回避することができる。
【0183】
下記で示される実施例において、本発明をさらに例示する。
【実施例0184】
(実施例1)
スペーサードメインの長さおよびscFvのアフィニティーの、キメラ受容体により改変されたT細胞によるROR1の最適な認識のためのカスタマイズ
本発明者らは、慢性リンパ球性白血病、マントル細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病、ならびに乳がん、肺がん、前立腺がん、膵臓がん、および卵巣がんを含む多数のヒト悪性腫瘍上で発現するROR1分子に特異的なキメラ受容体を構築した。ROR1キメラ受容体は、アフィニティーが異なり、異なる長さの細胞外IgG4-Fcスペーサードメインを含有する、ROR1特異的scFvからデザインした。in vitroにおいて、ROR1+造血系腫瘍およびROR1+上皮腫瘍を認識し、免疫不全マウスへと生着させたヒトマントル細胞リンパ腫を除去する、各ROR-1特異的キメラ受容体を発現させるT細胞の能力を解析した。
【0185】
材料および方法
ヒト被験体
末梢血単核細胞(PBMC)は、Fred Hutchinson Cancer Research Center(FHCRC)の治験審査委員会により承認された研究プロトコールについての書面による説明同意の後で、健常ドナーおよび患者から得た。
【0186】
細胞系
K562 T細胞系、Raji T細胞系、JeKo-1 T細胞系、MDA-MB-231 T細胞系、MDA-MB-468 T細胞系、および293T細胞系は、American Type Culture Collectionから得た。腎細胞がん系であるFARP、TREP、およびRWLは、Edus H.Warren博士(FHCRC)から恵与された。K562/ROR1およびRaji/ROR1は、レンチウイルスによる全長ROR1遺伝子の形質導入を介して生成した。JeKo-1/fflucを導出するため、天然のJeKo-1細胞に、T2A配列およびeGFPの上流でホタルルシフェラーゼ(ffluc)遺伝子をコードするレンチウイルスベクターを形質導入した。形質導入JeKo-1細胞を、eGFP発現について分取し、in vivo実験のために増やした。
【0187】
免疫表現型解析
PBMCおよび細胞系を、以下のコンジュゲートmAb:CD3、CD4、CD5、CD8、CD19、CD28、CD45RO、CD62L、CD314(NKG2D)、MICA/B、およびマッチさせたアイソタイプ対照(BD Biosciences)で染色した。生細胞/死細胞を弁別するために、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を実施した。細胞の表面におけるROR1の発現は、ポリクローナルヤギ抗ヒトROR1抗体(R&D Systems)を使用して解析した。
【0188】
2A2 ROR1キメラ受容体の表面における発現は、ポリクローナルヤギ抗マウスIgG抗体(Fab特異的)(Jackson ImmunoResearch)を使用して解析した。フロー解析は、FACSCanto(登録商標)上で行い、分取精製は、FACSAriaII(登録商標)(Becton Dickinson)上で行い、データは、FlowJo(登録商標)ソフトウェア(Treestar)を使用して解析した。
【0189】
ベクターの構築およびキメラ受容体をコードするレンチウイルスの調製
2A2 mAb、R12 mAb、およびR11 mAb(ROR1)、ならびにFMC63 mAb(CD19)のVL鎖セグメントおよびVH鎖セグメントを使用してROR1特異的およびCD19特異的キメラ受容体を構築した(R11およびR12の可変領域配列は、Yangら、Plos One、6巻(6号):e21018頁、2011年6月15日において提示されている)。各scFvは、(G
4S)
3(配列番号12)ペプチドにより、「ヒンジ-CH2-CH3」配列(229アミノ酸;配列番号)、「ヒンジ-CH3」配列(119アミノ酸;配列番号)、または「ヒンジ」だけの配列(12アミノ酸;配列番号4)(
図1)を含む、IgG4-Fcに由来するスペーサードメイン(Uniprotデータベース:P01861、配列番号13)へと連結した。全てのスペーサーは、天然のIgG4-Fcタンパク質の108位に位置する「ヒンジ」ドメイン内のS→P置換を含有したが、これらを、ヒトCD28の27アミノ酸の膜貫通ドメイン(Uniprot:P10747、配列番号14);およびそれらの各々が、ヒトCD3ζのアイソフォーム3の112アミノ酸の細胞質ドメイン(Uniprot:P20963、配列番号16)へと連結された、(i)天然のCD28タンパク質の186~187位に位置するLL→GG置換を伴う、ヒトCD28の41アミノ酸の細胞質ドメイン(配列番号14);または(ii)ヒト4-1BBの42アミノ酸の細胞質ドメイン(Uniprot:Q07011、配列番号15)を含むシグナル伝達モジュールへと連結した。構築物は、キメラ受容体の下流において、T2Aリボソームスキップエレメント(配列番号8)およびtEGFR配列(配列番号9)をコードした。各トランス遺伝子をコードする、コドンを最適化したヌクレオチド配列を合成し(Life Technologies)、epHIV7レンチウイルスベクターへとクローニングした。
【0190】
パッケージングベクターであるpCHGP-2、pCMV-Rev2、およびpCMV-G、ならびにCalphos(登録商標)トランスフェクション試薬(Clontech)を使用して、ROR1キメラ受容体、CD19キメラ受容体、またはtEGFRをコードするレンチウイルスを、293T細胞内で産生させた。
【0191】
ROR1キメラ受容体およびCD19キメラ受容体を発現させるT細胞系の作製
CD8+CD45RO+CD62L+セントラルメモリーT細胞(TCM)またはバルクCD4+T細胞を、正常ドナーのPBMCから分取し、抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies)で活性化し、活性化後の3日目において、1μg/mLのポリブレン(Millipore)を補充したレンチウイルス上清(MOI=3)を伴う800g、32℃で45分間にわたる遠心分離により形質導入した。T細胞は、組換えヒトIL-2を50U/mLの最終濃度まで補充した、10%のヒト血清、2mMのL-グルタミン、および1%のペニシリン-ストレプトマイシンを伴うRPMI(CTL培地)中で増やした。各T細胞系のtEGFR+サブセットは、ビオチンとコンジュゲートさせた抗EGFR mAb(ImClone Systems)およびストレプトアビジンビーズ(Miltenyi)を伴う免疫磁気選択により濃縮した。ROR1キメラ受容体およびtEGFR対照T細胞は、急速増殖プロトコール(Riddell SR、Greenberg PD、The use of anti-CD3 and anti-CD28 monoclonal antibodies to clone and
expand human antigen-specific T cells、J
Immunol Methods.、1990年、128巻(2号):189~201頁、Epub 1990/04/17)を使用して増やした。CD19キメラ受容体により改変されたT細胞は、T細胞:LCL比を1:7とする、照射された(8,000ラド)B-LCLによる刺激を介して増やした。T細胞は、50U/mLのIL-2を伴うCTL培地中で培養した。
【0192】
細胞傷害作用アッセイ、サイトカイン分泌アッセイ、および増殖アッセイ
標的細胞を、51Cr(PerkinElmer)で標識し、洗浄し、3連、ウェル1つ当たりの細胞1~2×103個で、エフェクターキメラ受容体により改変された多様なエフェクター対標的(E:T)比のT細胞と共にインキュベートした。4時間にわたるインキュベーションの後、γカウンティングのために上清を採取し、標準的な式を使用して、特異的溶解を計算した。サイトカイン分泌についての解析のため、5×104個のT細胞を、標的細胞と共に、3連、1:1(初代CLL)、2:1(Raji/ROR1;JeKo-1)、4:1(K562/ROR1、K562/CD19およびK562)、または10:1(MDA-MB-231)のE:T比で播種し、IFN-γ、TNF-α、およびIL-2を、24時間にわたるインキュベーションの後で除去される上清中のELISAまたはマルチプレックスサイトカインイムノアッセイ(Luminex)により測定した。NKG2Dシグナル伝達を遮断する実験では、抗NKG2D(クローン1D11)、抗MICA/B(クローン6D4;全てBDより)、および抗ULBP(FHCRCのVeronika Groh博士による恵与)を、飽和濃度で使用した。増殖についての解析では、T細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE、Invitrogen)で標識し、洗浄し、外因性サイトカインを伴わずに、培地中の刺激細胞と共に3連で播種した。72時間にわたるインキュベーションの後、細胞を抗CD8 mAbおよびPIで標識し、フローサイトメトリーにより解析して、CD8+生T細胞の細胞分裂を評価した。
【0193】
NOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスにおける実験
全てのマウス実験は、Institutional Animal Care and
Use Committeeにより承認された。6~8週齢の雌NOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtm1Wjl/SzJ(NSG)マウスは、Jackson Laboratoryから得るか、施設内で飼育した。マウスに、尾静脈を介して、0.5×106個のJeKo-1/ffluc腫瘍細胞を注射し、その後もキメラ受容体により改変されたT細胞または対照T細胞の尾静脈注射を施した。
【0194】
腫瘍成長についての生物発光造影のため、マウスに、PBS中に再懸濁させたルシフェリン基質(Caliper Life Sciences)の腹腔内注射(体重1g当たり15μg)を施した。マウスにイソフルランで麻酔をかけ、ルシフェリンを注射した10、12、および14分後に、Xenogen IVIS Imaging System(Caliper)を使用して、収集時間を1秒間~1分間とする小ビニングモードで造影して、不飽和画像を得た。ルシフェラーゼ活性は、Living Image Software(Caliper)を使用して解析し、各個別のマウスの全身または胸部を包摂する対象の領域内で光子束解析した。
【0195】
統計学的解析
統計学的解析は、Prism Software(GraphPad(登録商標))を使用して実施した。スチューデントのt検定を、信頼区間を95%とする、対応のある両側検定として実施し、p値をp<0.05とする結果を有意と考えた。生存についての統計学的解析は、ログランク検定により行い、p値をp<0.05とする結果を有意と考えた。
【0196】
結果
2A2 ROR1キメラ受容体のスペーサードメインを切断することにより、ROR1+腫瘍の優れた認識が付与される
本発明者らは、ROR1-1のNH2末端の膜遠位Ig様/Frizzled部分におけるエピトープに結合する、2A2 scFvを使用するROR1特異的キメラ受容体のデザインについてかつて報告した。初期2A2 ROR1キメラ受容体は、IgG4-Fcの「ヒンジ-CH2-CH3」領域を含む229アミノ酸の長鎖スペーサーを有し、これには、CD28共刺激ドメインおよびCD3ζシグナル伝達ドメインが組み込まれた(Hudecek Mら、Blood、2010年)。このキメラ受容体は、ROR1+腫瘍の特異的認識を付与したが、本発明者らは、ROR1エピトープが膜遠位の位置にあるために、スペーサードメインを切断すれば、腫瘍認識およびT細胞シグナル伝達を増強しうるであろうと仮定した。したがって、本発明者らは、2つのさらなるキメラ受容体であって、IgG4-Fcスペーサードメインを逐次欠失させて、「ヒンジ-CH3」変異体(119アミノ酸、中間鎖)および「ヒンジだけ」の変異体(12アミノ酸、短鎖)を導出するキメラ受容体を構築した。新たな受容体の各々は、同一な2A2 scFvならびにCD28シグナル伝達モジュールおよびCD3ζシグナル伝達モジュールを含有した。トランス遺伝子カセットは、キメラ受容体により改変されたT細胞のための形質導入マーカー、選択マーカー、およびin vivoにおけるトラッキングマーカーとして用いられる切断型EGFR(tEGFR)を含んだ。
【0197】
本発明者らは、精製CD8
+T
CMに、全長IgG4-Fcスペーサーまたは切断型IgG4-Fcスペーサーを含有する2A2 ROR1キメラ受容体およびtEGFR対照ベクターを形質導入した。平均形質導入効率は、15%(範囲:9~22%)であり、10日目において、tEGFR発現について選択することにより、トランス遺伝子陽性T細胞を、均一な純度(>90%)まで濃縮し、増やした(
図2A)。キメラ受容体の各々の表面における発現は、F(ab)特異的抗体による染色を介して確認した(
図2A)。
【0198】
2A2 ROR1キメラ受容体の各々を発現させるように改変されたCD8
+T細胞のin vitro機能について解析することにより、各受容体は、ROR1を天然で発現させるJeKo-1 MCLおよび初代CLL細胞、ならびにROR1を形質導入されたK562細胞の特異的溶解を付与するが、対照ROR1
-標的の認識は付与しないことが裏付けられた(
図2B)。「ヒンジだけ」の短鎖2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞は、最大の細胞溶解活性を有し、腫瘍溶解についての階層(短鎖>中間鎖>>長鎖)は、全てのROR1
+腫瘍標的に対して明確であった(
図2B)ことから、スペーサードメインの長さが、ROR1
+腫瘍細胞の認識において重要であることが例示される。
【0199】
養子T細胞療法の抗腫瘍有効性は、キメラ受容体を介するシグナル伝達により変化させうる移入T細胞の増殖および生存と相関する。本発明者らは、CFSE希釈アッセイを使用して、2A2 ROR1キメラ受容体の各々により改変されたT細胞の、Raji/ROR1またはCLLが係合した後における増殖について解析し、短鎖スペーサー構築物が、刺激後における最大のT細胞増殖を促進することを見出した(
図2C)。増殖の増強が、活性化誘導型細胞死(AICD)の増大と関連しなかったことを確認するために、本発明者らはまた、Raji/ROR1腫瘍細胞およびJeKo-1腫瘍細胞による刺激の後において、2A2 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞であって、ヨウ化プロピジウム(PI)で染色されたT細胞の比率についても解析した。本発明者らは、短鎖(Raji/ROR1:17.2%/JeKo-1:20.2%)スペーサーにより改変されたT細胞系におけるPI
+CD8
+T細胞の頻度が、中間鎖(41.6%/42.4%)および長鎖(44.5%/48.5%)スペーサーにより改変されたT細胞系におけるPI
+CD8
+T細胞の頻度と比較して、はるかに低いことを検出した。
【0200】
Raji/ROR1細胞および初代CLL細胞による刺激に応答したサイトカイン産生についての定量的解析は、2A2 ROR1キメラ受容体の各々を発現させるT細胞による、IFN-γ、TNF-α、およびIL-2の産生を示した。細胞傷害作用アッセイにおいて観察される通り、短鎖スペーサー構築物は、腫瘍認識の後におけるサイトカイン分泌の媒介において優れていた(
図2D)。したがって、この解析は、2A2 ROR1キメラ受容体の細胞外IgG4-Fcスペーサードメインを切断することにより、腫瘍認識の後における細胞傷害作用、増殖、およびin vitroエフェクター機能の著明な増大がもたらされることを示す。
【0201】
ROR1クリングルドメイン内の膜近位エピトープに特異的なR11 scFvは、長鎖細胞外スペーサードメインを要求する
本発明者らは、精製CD8
+T細胞に、ROR1のクリングルドメインに特異的なR11 scFvを含有し、全長IgG4-Fcスペーサーまたは切断型IgG4-Fcスペーサーを含有するROR1キメラ受容体(CH3およびヒンジだけ)を形質導入した。EGFR発現により測定される通り、短鎖(IgG4ヒンジだけ)ベクター、中間鎖(IgG4ヒンジ/CH3)ベクター、および長鎖(IgG4ヒンジ/CH2/CH3)ベクターの各々による形質導入効率は、同等(45~51%)であった(
図3A)。ベクターの各々を形質導入されたT細胞を、ROR1を発現させるかまたは発現させない白血病細胞またはリンパ腫細胞に応答する、細胞溶解(
図3B)、増殖(
図3C)、およびサイトカイン産生(
図3D)についてアッセイした。示される通り、長鎖スペーサー配列を含有するR11キメラ受容体を形質導入されたT細胞だけが、ROR1+腫瘍を効率的に認識し、エフェクター機能を媒介することが可能であった。
【0202】
2A2よりアフィニティーが大きなmAbであるR12に由来するROR1キメラ受容体は、優れた抗腫瘍反応性を媒介する
本発明者らは次に、ROR1キメラ受容体を構築するのに使用されるscFvのアフィニティーを増大させることにより、腫瘍認識およびT細胞機能に影響を及ぼしうるのかどうかについて検討した。本発明者らは、ROR1特異的キメラ受容体を、2A2と同様に、ROR1のNH2末端のIg/Frizzledドメインにおいてエピトープに結合するが、>50倍の一価結合アフィニティーで結合するmAbであるR12から生成した。
【0203】
R12 ROR1キメラ受容体を、長鎖IgG4-Fcスペーサーおよび短鎖IgG4-Fcスペーサーの両方により構築して、この高アフィニティーのscFvに最適なスペーサーデザインが、低アフィニティーのscFvのためのスペーサーデザインと異なるのかどうかを決定した。本発明者らは、2A2と同様に、短鎖スペーサーのR12 ROR1キメラ受容体により、細胞溶解活性、サイトカイン分泌、および増殖の改善(データは示さない)が付与されることから、短いスペーサー長により、T細胞とROR1+標的細胞との、T細胞の活性化に優れた空間的係合がもたらされると示唆されることを見出した。
【0204】
本発明者らは、次いで、比較のために、最適の(短鎖)細胞外スペーサー、およびCD3ζを伴うタンデムのCD28共刺激ドメインまたは4-1BB共刺激ドメインを含有するR12 ROR1キメラ受容体および2A2 ROR1キメラ受容体(4つの構築物)をデザインした(
図4A、B)。これらのROR1キメラ受容体構築物を、健常ドナーの精製CD8
+T
CM内で発現させ、本発明者らは、tEGFR染色により、同等なトランス遺伝子の発現を確認した(
図5A)。2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体の各々により改変されたT細胞は、K562/ROR1腫瘍細胞およびRaji/ROR1腫瘍細胞を、大体同等な効率で特異的に溶解させた(
図5B)。しかし、サイトカイン産生についての解析は、CD28または4-1BBを含有する高アフィニティーR12 ROR1キメラ受容体により、対応する2A2構築物と比較して著明に高度なIFN-γ、TNF-α、およびIL-2の産生が付与されることを示した(
図5C)。本発明者らは、CD28共刺激ドメインを伴うキメラ受容体を発現させるT細胞が、4-1BB共刺激ドメインを伴うキメラ受容体を発現させるT細胞と比較して多くのIFN-γ、TNF-α、およびIL-2を産生することを見出した。
【0205】
ROR1キメラ受容体T細胞の増殖について解析するための実験は、CD28ドメインおよび4-1BBドメインを伴う高アフィニティーR12 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞における、増殖T細胞の百分率および細胞分裂回数の、それぞれの2A2対応物を発現させるT細胞と比較した増大を示した(
図4D)。CD28ドメインを伴うキメラ受容体を発現させるT細胞内では、より活発な増殖が見られたことは、これらの受容体により誘導される高度なIL-2産生と符合した。Raji/ROR1腫瘍細胞およびJeKo-1腫瘍細胞のそれぞれによる刺激の後におけるPI染色により測定される通り、R12により改変されたT細胞系では、AICDの頻度が、2A2 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞系と比較して低下した(R12:5.6%/6.9%対2A2:10%/9.65%)。また、CD28ドメインを伴うキメラ受容体を発現させるT細胞系は、Raji/ROR1腫瘍細胞およびJeKo-1腫瘍細胞それぞれに応答する4-1BBと比較しても、AICDを低下させた(R12:16.4%/18.4%対2A2:38.1%/39.6%)。
【0206】
CD8
+T細胞内のR12 ROR1キメラ受容体について観察される機能の増強が、CD4
+T細胞へも拡張されるのかどうかを決定するため、本発明者らは、バルクCD4
+T細胞に、短鎖スペーサーおよびCD28共刺激ドメインを含有する2A2 ROR1キメラ受容体およびR12 ROR1キメラ受容体を形質導入した。Raji/ROR1
+腫瘍細胞に応答して、高アフィニティーR12 scFvを発現させたCD4
+T細胞は、高レベルのIFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、およびIL-10を産生し、2A2を発現させたCD4
+T細胞を超える増殖の増大を示した(
図5A、B)。CD4
+T細胞では、サイトカイン産生および増殖のいずれも、同じROR1キメラ受容体により改変されたCD8
+T細胞と比較して優れていた。まとめると、本発明者らのデータは、非シグナル伝達細胞外キメラ受容体スペーサードメインの長さおよびscFvのアフィニティーのいずれの調整も、ROR1キメラ受容体T細胞の機能に影響を及ぼす独立のパラメータであることを裏付ける。
【0207】
in vitroにおける高アフィニティーROR1キメラ受容体により改変されたCD8
+T細胞の初代CLLに対する活性は、CD19キメラ受容体と同等である
ROR1およびCD19はいずれも、全ての初代CLL上で均一に発現するが(
図6A)、腫瘍細胞1個当たりのROR1分子の絶対数は、CD19キメラ受容体T細胞を伴う臨床試験においてターゲティングに成功しているCD19の10分の1であると推定されている。本発明者らは、最適化されたR12 ROR1キメラ受容体を発現させるCD8
+T細胞および最適化された2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるCD8
+T細胞による初代CLLの認識と、FMC63 scFvに由来するCD19キメラ受容体を発現させるCD8
+T細胞による初代CLLの認識とを比較した。
【0208】
本発明者らは、キメラ受容体改変のために精製CD8
+T
CMを使用して、均一な細胞生成物をもたらし、各キメラ受容体は、IgG4-Fc「ヒンジだけ」の短鎖スペーサーおよび4-1BB共刺激ドメインを含有した。本発明者らは、本発明者らのCD19キメラ受容体(IgG4ヒンジ)が、CD19
+腫瘍の認識において、進行中の臨床試験において使用されている、CD8aヒンジスペーサーおよび4-1BB共刺激ドメインを伴うCD19キメラ受容体と少なくとも同等以上に有効であることを確認した(
図20)。4-1BBおよびCD3ゼータならびに改変されたIgG4-Fcヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞は、4-1BBおよびCD3ゼータならびにCD8アルファヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞と比較して、優れたin vitro機能およびin vivo機能を呈示する。
図20Dでは、IgG4 Fcヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞(群1)またはCD8アルファヒンジを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞(群2)、およびtEGFR単独を発現させるT細胞(群3)の、ホタルルシフェラーゼ(ffluc)を発現させるRaji腫瘍細胞を接種されたNSGマウスにおけるin vivoの抗腫瘍活性を比較した。マウスは、腫瘍接種の17日後およびT細胞接種の10日後に造影した。データは、対照tEGFR T細胞で処置されたマウス(群3)、またはCD8アルファヒンジCD19キメラ受容体T細胞で処置されたマウス(群2)における腫瘍負荷が、IgG4 FcヒンジCD19キメラ受容体T細胞で処置されたマウス(群1)と比較して大きいことを示す。
【0209】
R12 ROR1キメラ受容体T細胞の、複数のCLL患者(n=4)に由来する初代腫瘍細胞に対する細胞溶解活性は、低アフィニティー2A2 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞と比較して大きく、CD19キメラ受容体T細胞について観察される溶解と同等であった(
図6B)。マルチプレックスサイトカイン解析は、IFN-γおよびTNF-αのほぼ同等な産生を示したが、初代CLLとの共培養後における、R12 ROR1を発現させるCD8
+T細胞によるIL-2産生は、CD19キメラ受容体を発現させるCD8
+T細胞によるIL-2産生と比較して少なかった(
図6C)。かつて注目した通り、2A2 ROR1キメラ受容体T細胞によるいずれのサイトカインの産生も、R12 ROR1キメラ受容体T細胞より低量であった。CLLにより刺激した後における、いずれのキメラ受容体を形質導入されたT細胞によるサイトカイン産生も、CLLと異なり、キメラ受容体T細胞上に発現したCD28と係合しうるCD80およびCD86の両方を発現させるRaji/ROR1により刺激した後より実質的に少なかった(
図6A、C)。
【0210】
本発明者らは、CLLにより刺激した後における、R12 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞および2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞の増殖が、CD19キメラ受容体を発現させるT細胞と比較して少ないことを観察した(CD19>R12>2A2)(
図6D)。本発明者らは、キメラ受容体により改変されたCD4
+T細胞の存在下では、それらによるIL-2の分泌がCD8
+T
CMと比較して高度であるために、CLLに応答するROR1キメラ受容体CD8
+T細胞の増殖が増進されうると仮定した(
図4A;
図8A)。この可能性について調べるため、本発明者らは、in vitro共培養実験を実施し、そこで、CD4
+およびCD8T
CMを、R12 ROR1キメラ受容体、2A2 ROR1キメラ受容体、およびCD19キメラ受容体のそれぞれにより個別に改変し、キメラ受容体の発現を強化し、1:1の比で組み合わせて、同等な比率のCD8
+T細胞およびCD4
+T細胞が、ベクターの各々により改変されたことを確認した。これらの細胞をCFSE標識し、初代CLLで刺激した。本発明者らは、R12
ROR1キメラ受容体CD8
+T細胞の増殖が、キメラ受容体を形質導入されたCD4
+T細胞を添加した後では劇的に増大するが、形質導入されていないCD4
+T細胞を添加した後では劇的に増大しないことを観察した(
図8B)。とりわけ、CD4の支援を施された場合、本発明者らは、CLLに応答する、R12 ROR1キメラ受容体CD8
+T細胞とCD19キメラ受容体CD8
+T細胞との同等な増殖を観察したのに対し、低アフィニティー2A2 ROR1キメラ受容体を発現させるCD8
+T細胞の増殖は低度にとどまった。まとめると、本発明者らのデータは、in vitroにおいて、高アフィニティーR12 ROR1キメラ受容体が、初代CLL細胞に対する、2A2 ROR1キメラ受容体と比較して優れた反応性を付与することを示す。
【0211】
ROR1キメラ受容体T細胞は、全身性マントル細胞リンパ腫のマウスモデルにおいて、in vivoの抗腫瘍活性を媒介する
高アフィニティーR12キメラ受容体により改変されたT細胞の優れたin vitro活性が、in vivoにおける抗腫瘍活性の改善へと転換されるのかどうか、そして、ROR1のターゲティングは、CD19のターゲティングといかにして比較されるのかは、依然として不確定であった。これらの問題に取り組むため、本発明者らは、免疫不全NSGマウスのコホートに、ヒトMCL細胞系であるJeKo-1/fflucを、尾静脈注射により接種し、腫瘍が播種された7日後に、マウスを、R12 ROR1キメラ受容体CD8
+T細胞、2A2 ROR1キメラ受容体CD8
+T細胞、またはCD19キメラ受容体CD8
+T細胞の単回の静脈内投与で処置した。対照マウスは、tEGFR T細胞で処置するかまたは処置しなかった。全てのキメラ受容体は、最適な短鎖スペーサーおよび4-1BB共刺激ドメインを有した。処置されなかったNSG/JeKo-1マウスは、進行性全身性リンパ腫を急速に発症し、腫瘍接種のおよそ4週間後における安楽死を必要とした(
図9A~C)。
【0212】
本発明者らは、R12 ROR1キメラ受容体T細胞、2A2 ROR1キメラ受容体T細胞、およびCD19キメラ受容体T細胞で処置された全てのマウスにおける腫瘍の退縮および生存の改善を観察した。R12 ROR1キメラ受容体T細胞で処置されたマウスは、2A2 ROR1キメラ受容体T細胞で処置されたマウスと比較して優れた抗腫瘍応答および生存(p<0.01)を示し、CD19キメラ受容体T細胞で処置されたマウスと同等の抗腫瘍活性を示した(
図9A~C)。
【0213】
本発明者らは、養子移入後における末梢血中のキメラ受容体T細胞の頻度について解析し、R12 ROR1キメラ受容体で処置されたマウスにおけるtEGFR
+T細胞の数が、2A2 ROR1キメラ受容体で処置されたマウスにおけるtEGFR
+T細胞の数と比較して大きいことを検出したが、これは、in vivoにおけるより活発な増殖により、腫瘍管理が改善されることを示唆する。これを確認するため、本発明者らは、CFSE標識されたCD19キメラ受容体T細胞、R12 ROR1キメラ受容体T細胞、および2A2 ROR1キメラ受容体T細胞を、JeKo-1/fflucを保有するNSGマウスのコホートへと投与し、移入の72時間後における、末梢血中の、骨髄中、および脾臓内のT細胞増殖について解析した。高い百分率のR12およびCD19キメラ受容体T細胞が、2A2 ROR1キメラ受容体T細胞と比較して増殖し、細胞分裂の回数の増大を示した(
図9D)。最終的に、JeKo-1腫瘍は、ROR1キメラ受容体T細胞またはCD19キメラ受容体T細胞で処置された全てのマウスにおいて再発した(
図9A~C)。再発した腫瘍は、いずれの分子についても陽性であったので、腫瘍の再発は、ROR1またはCD19を喪失させた変異体を選択した結果ではなかった。
【0214】
比較のために、本発明者らは、Raji腫瘍を生着させたNSGマウスにおいて、CD19キメラ受容体T細胞の抗腫瘍有効性について解析し、完全な腫瘍の根絶を観察したことから、JeKo-1の再発は、この腫瘍を根絶することの困難を反映することが指し示される(データは示さない)。まとめると、このデータはまず、ROR1キメラ受容体T細胞が、in vivoにおける抗腫瘍有効性を有することを示し、B細胞悪性腫瘍では、R12などの最適化されたROR1キメラ受容体が有効であり、ROR1の発現を欠く正常CD19+B細胞を死滅させないことを示唆するものである。
【0215】
R12 ROR1キメラ受容体を発現させるT細胞は、ROR1
+上皮腫瘍細胞に対する、2A2と比較して優れた反応性を示す
ROR1は、多くの上皮腫瘍上で検出されているが、ROR1の発現が、ROR1キメラ受容体T細胞による認識に十分であるのかどうかは未知である。フローサイトメトリーを使用して、本発明者らは、乳がん系であるMDA-MB-231上およびMDA-MB-468上のROR1、ならびに腎細胞癌細胞系であるFARP上、TREP上、およびRWL上の発現を確認した(
図10A)。次いで、本発明者らは、最適な短鎖スペーサーおよび4-1BBドメインを伴うR12 ROR1キメラ受容体を形質導入されたCD8
+T細胞による腫瘍認識について解析し、MDA-MB-231、MDA-MB-468、FARP、TREP、およびRWLの効率的な認識について観察した(
図11A)。本発明者らは、MDA-MB-231との共培養の後における、R12 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞および2A2 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞によるサイトカイン分泌およびこれらの増殖について解析し、R12 ROR1キメラ受容体によるサイトカイン産生および増殖の増大について観察した(
図11B、C)。本発明者らが、ROR1
+B細胞悪性腫瘍について観察したことと同様に、MDA-MB-231による刺激の後におけるR12 ROR1キメラ受容体T細胞の優れた活性化は、AICDの増大と関連しなかった(R12:9.8%対2A2:10.9%)。
【0216】
考察
ROR1は、多くのBリンパ球様がんならびに肺がん、結腸直腸がん、および腎細胞がんのサブセットを含む上皮がんの表面におけるその発現に起因して、がん免疫療法の潜在的標的としての関心を惹きつけてきた。本発明者らはかつて、CLLおよびMCLが、ROR1特異的キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞により特異的に認識されることを示した(Hudecek Mら、Blood、2010年、116巻(22号):4532~41頁、Epub 2010/08/13)。ROR1キメラ受容体のデザインおよび機能は、細胞外スペーサードメインを改変し、キメラ受容体を高アフィニティーのscFvから導出することにより改善されており、デザインされたROR1キメラ受容体により改変されたT細胞は、ROR1+B細胞リンパ腫に対するin vivo活性、および広範囲にわたる上皮腫瘍に対するin vitro活性を有することを裏付けている。
【0217】
本発明者らは、本発明者らが高レベルの細胞表面発現を可能とすることを示した、元のIgG4-Fc「ヒンジ-CH2-CH3」長鎖スペーサーを含有する2A2 mAbに由来するROR1キメラ受容体、または「ヒンジ-CH3」切断型中間鎖スペーサー変異体を含有する2A2 mAbに由来するROR1キメラ受容体、および「ヒンジだけ」の短鎖スペーサー変異体を含有する2A2 mAbに由来するROR1キメラ受容体により改変されたT細胞の機能を比較した。本発明者らは、可撓性のスペーサーが、scFvをT細胞膜から隔て、腫瘍細胞上の抗原認識を可能とするのに要求されるというかつてのデータに基づき、本発明者らの短鎖スペーサー構築物内の12アミノ酸のヒンジドメインを保存した(Fitzer-Attas CJら、Harnessing Syk family tyrosine kinases as signaling domains for chimeric single chain of the variable domain receptors: optimal design for
T cell activation、J Immunol.、1998年、160巻(1号):145~54頁、Epub 1998/04/29)。
【0218】
本発明者らの2A2 ROR1キメラ受容体による研究は、腫瘍細胞を認識した後におけるT細胞によるサイトカイン分泌およびT細胞の増殖が、中間鎖スペーサー構築物および短鎖スペーサー構築物では、長鎖スペーサー構築物と比較して優れていることを示す。抗F(ab)Abによる染色は、キメラ受容体による3つの受容体全ての同等な発現を示したことから、短鎖スペーサーキメラ受容体によるT細胞機能の改善は、キメラ受容体内の密度の差違に起因しないことが裏付けられる。このデータは、細胞外スペーサーのデザインは、各標的分子およびエピトープについて調整すべきであるという原理を裏付ける。
【0219】
キメラ受容体をデザインするために選択されるscFvのアフィニティーは、T細胞の認識に影響を及ぼしうるさらなるパラメータである。本発明者らは、アフィニティーの異なるROR1特異的mAbのパネルを生成し、特徴付け、2A2と同様にIg様/Frizzled領域内のエピトープを認識するR12 mAbを選択した。R12は、解離がはるかに緩徐であることに起因して、ROR1タンパク質に対するアフィニティーが大きい。R12キメラ受容体は、2A2キメラ受容体と同様、短鎖細胞外スペーサーと共にデザインされる場合、最適なT細胞の認識および機能を付与した。2A2キメラ受容体により改変されたT細胞およびR12キメラ受容体により改変されたT細胞が腫瘍に係合した後における、増殖およびサイトカイン産生の直接的な比較により、高アフィニティーのmAbに由来するR12キメラ受容体が優れていることが裏付けられた。本発明者らは、R12のROR1からの解離が緩徐であれば、T細胞の活性化が延長され、AICDに対する感受性の増大が付与されうることを憂慮した。しかし、本発明者らは、R12 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞では、2A2 ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞と比較してAICD率が低いことを検出したことから、R12のアフィニティーの増大は、本発明者らの前臨床モデルにおけるT細胞の生存に対して有害作用を及ぼさないことを裏付ける。
【0220】
ROR1は、正常成熟ナイーブB細胞上および正常成熟メモリーB細胞上で発現しないので、CLLおよびMCLに対する標的として、CD19を凌ぐ潜在的利点を有する。しかし、B細胞腫瘍上のROR1分子の数は、CD19と比較して少数であり、最適化されたROR1キメラ受容体が、デザインが類似するCD19キメラ受容体と同様に、臨床において使用するのに有効であるのかどうかは不確実である。残念ながら、かつてNSGマウスにおいてCD19キメラ受容体T細胞の機能を査定するのに使用されたB細胞腫瘍異種移植モデルであって、Raji、Daudi、およびNalm-6を含むB細胞腫瘍異種移植モデルは、CLLまたはMCLに由来せず、ROR1を構成的に発現させない。したがって、in vivoにおけるCD19のターゲティングとROR1のターゲティングとを比較するため、本発明者らは、天然でCD19およびROR1の両方を発現させ、NSGマウスに生着するJeKo-1 MCL細胞系を使用した。本発明者らのモデルを臨床的に関与性とするため、本発明者らは、JeKo-1リンパ腫細胞を静脈内接種して、全身性腫瘍を生成し、腫瘍が確立されたら、マウスを、稠度が均一なT細胞生成物で処置した。本発明者らは、高アフィニティーR12キメラ受容体を発現させるT細胞が、in vivoにおいて、CD19キメラ受容体T細胞と同等な抗腫瘍活性を付与することを見出した。R12 ROR1キメラ受容体はまた、in vivoにおいても、最適な2A2 ROR1キメラ受容体と比較して優れた活性を媒介することは、本発明者らのin vitro解析と符合する。これらの結果は、マウス腫瘍モデルは、臨床状況における養子療法の有効性を予測しない可能性があるので、慎重に解釈すべきである。しかし、結果は、ROR1が、CD19に対する代替物としての検討を正当化するか、またはCD19を喪失させた変異体が出現する潜在的可能性を最小化するさらなる標的をもたらすことを示唆する。
【0221】
ROR1は、いくつかの上皮腫瘍の生存において決定的な役割を果たすと考えられる。したがって、ROR1をターゲティングする利点は、単一のキメラ受容体が、多数の造血系腫瘍および非造血系腫瘍を伴う患者を処置するのに有用でありうることである。
【0222】
本発明者らのデータは初めて、デザインされたROR1キメラ受容体を発現させるT細胞が、in vitroにおいて、上皮がんを効率的に認識することを示す。CD80/86共刺激性リガンドの非存在にもかかわらず、ROR1+乳がん細胞により誘導されるサイトカイン分泌およびT細胞増殖は、白血病細胞により誘導されるサイトカイン分泌およびT細胞増殖より高度であった。本明細書で報告した研究は、細胞外スペーサードメインのデザインおよびキメラ受容体のアフィニティーが、ROR1キメラ受容体により改変されたT細胞による、in vitroおよびin vivoにおける、ROR1+造血系腫瘍およびROR1+上皮腫瘍の認識を増強するようにモジュレートしうるパラメータであることを裏付けている。腫瘍反応性を増強したROR1キメラ受容体を開発することにより、様々なヒトがんにおける臨床適用のための機会がもたらされる。
【0223】
(実施例2)
細胞外スペーサードメインの長さの、腫瘍細胞膜に対して近位に位置するエピトープを認識するHer2特異的キメラ受容体による腫瘍細胞の溶解の誘発に対する効果
【0224】
ROR1について上記で記載した方法と同様の方法を使用して、CARスペーサー長の、HER2特異的キメラ受容体を発現させるCD8+ヒトTリンパ球による腫瘍細胞の認識および腫瘍細胞の認識の誘発に対する効果を検討した。HER2上の膜近位エピトープを認識するHER2特異的mAbのVL鎖セグメントおよびVH鎖セグメントを使用して、HER2特異的キメラ受容体を構築し(
図12A)、scFvを、IgG4ヒンジ/CH2/CH3細胞外スペーサードメイン、IgG4ヒンジ/CH3細胞外スペーサードメイン、およびIgG4ヒンジだけの細胞外スペーサードメイン、ならびにCD28膜貫通ドメイン、4-1BBシグナル伝達ドメインおよびCD3ゼータシグナル伝達ドメインへと連結した(
図12B)。初代CD8+ T細胞に、HER2キメラ受容体の各々を形質導入し、EGFR形質導入マーカーの発現について選択した(
図12D)。HER2キメラ受容体の発現および各受容体のサイズは、ウェスタンブロットにより確認した(
図12C)。次いで、T細胞を、抗CD3 mAbおよびフィーダー細胞と共に増やし、HER2+腫瘍細胞を認識するそれらの能力について検討した。R11 ROR1特異的キメラ受容体について観察される通り、長鎖細胞外スペーサードメインを含有するHER2キメラ受容体は、T細胞によるHER2+腫瘍細胞の優れた認識を付与した(
図12E)。
【0225】
考察
細胞外スペーサー長の、キメラ受容体改変T細胞による腫瘍細胞の認識に対する効果についての本実施例では、HerceptinキメラmAbのV
H+L配列から構築されたscFvを含むキメラ受容体を使用した。Choら(Nature、421巻:756頁、2003年)による研究により、Herceptinのエピトープの位置が、HER2(ERRB2)細胞外ドメイン上の膜近位位置へと位置特定された(
図12A)。ヒトIgG4ヒンジ:Fc変異体の構造(
図12B)についての本発明者らの理解に基づき、本発明者らは、細胞外腫瘍細胞抗原上のターゲティングエピトープの膜近位位置であれば、長鎖スペーサーをコードするキメラ受容体を発現させるエフェクターT細胞により最もよく認識されることを仮定する。本発明者らのデータは、短鎖スペーサーHerceptinキメラ受容体を発現させるT細胞によるバックグラウンドに近い活性から、中位の長さのスペーサーキメラ受容体を発現させるT細胞による中間の活性、および長鎖スペーサーキメラ受容体を発現させるT細胞による最大の溶解に至る細胞溶解活性の勾配を裏付ける。したがって、細胞外スペーサーは、T細胞による腫瘍の認識に対して決定的な効果を及ぼし、このデータは、標的分子を発現させた腫瘍のエピトープの位置に基づき、キメラ受容体のデザインを調整する必要についてのさらなる裏付けをもたらす。
【0226】
(実施例3)
キメラ受容体により改変されたT細胞によるCD19の最適な認識およびCD19に対するin vivo有効性のためのスペーサー長および配列のカスタマイズ
【0227】
材料および方法
ヒト被験体
血液試料は、Fred Hutchinson Cancer Research Center(FHCRC)の治験審査委員会により承認された研究プロトコールに参加する説明同意文書を提出した健常ドナーから得た。末梢血単核細胞(PBMC)は、Ficoll-Hypaque(Sigma、St.Louis、MO)上の遠心分離により単離し、RPMI、20%のヒト血清、および10%のジメチルスルホキシド中で極低温保存した。
【0228】
細胞系
K562、Raji、JeKo-1、および293T細胞系は、American Type Culture Collection(Manassas、VA)から得、指示の通りに培養した。T2A配列およびeGFPの上流でffluc遺伝子をコードするレンチウイルスを293T細胞内で産生させ、Raji腫瘍細胞およびJeKo-1腫瘍細胞に形質導入するのに使用した。Raji細胞およびJeKo-1細胞は、レンチウイルスによる形質導入の後で増やし、eGFP陽性サブセットを分取精製した。
【0229】
免疫表現型解析
PBMCおよびT細胞系を、以下のコンジュゲートモノクローナル抗体:CD3、CD4、CD8、CD25、CD45RA、CD45RO、CD62L、CD69、およびマッチさせたアイソタイプ対照(BD Biosciences)のうちの1つまたは複数で染色した。生細胞/死細胞を弁別するために、製造元により指示される通りに、ヨウ化プロピジウム(PI、BD Biosciences)による染色を実施した。フロー解析は、FACSCanto上で行い、分取精製は、FACSAriaII(Becton
Dickinson)上で行い、データは、FlowJoソフトウェア(Treestar)を使用して解析した。
【0230】
CD19キメラ受容体をコードするレンチウイルスによるベクターの構築および調製
CD19特異的キメラ受容体は、以下を使用して構築した:(1)(G4S)3リンカー(配列番号12)ペプチド(VL-リンカー-VH)により連結された、CD19特異的mAbであるFMC63(配列番号3)のVL鎖セグメントおよびVH鎖セグメント;(2)ヒンジ-CH2-CH3部分(229アミノ酸(配列番号))またはヒンジだけ(12アミノ酸(配列番号4))を含むIgG4-Fc(Uniprotデータベース:P01861(配列番号13))に由来するスペーサードメイン。スペーサーのいずれも、天然のIgG4-Fcタンパク質の108位に位置するヒンジドメイン内のS→P置換を含有した;ヒトCD28の27アミノ酸の膜貫通ドメイン(Uniprotデータベース:P10747(配列番号14));(4)(iii)ヒトCD3ζのアイソフォーム3の112アミノ酸の細胞質ドメイン(Uniprotデータベース:P20963(配列番号16))へと連結された、(i)天然のCD28タンパク質(配列番号14)の186~187位に位置するLL→GG置換を伴う、ヒトCD28の41アミノ酸の細胞質ドメイン;および/または(ii)ヒト4-1BBの42アミノ酸の細胞質ドメイン(Uniprotデータベース:Q07011(配列番号15))を含むシグナル伝達モジュール;自己切断型T2A配列(配列番号8);ならびに(6)切断型上皮成長因子受容体(EGFR)配列(配列番号9)。
【0231】
NheI制限部位およびNotI制限部位を使用して、各トランス遺伝子をコードする、コドンを最適化したヌクレオチド配列を合成し(Life Technologies、Carlsbad、CA)、epHIV7レンチウイルスベクターへとクローニングした。epHIV7レンチウイルスベクターは、pHIV7のサイトメガロウイルスプロモーターを、EF-1プロモーターで置きかえることにより、pHIV7ベクターから導出した。
【0232】
CD19キメラ受容体またはtEGFRをコードするレンチウイルスは、Calphosトランスフェクション試薬(Clontech)を使用して、レンチウイルスベクターならびにパッケージングベクターであるpCHGP-2、pCMV-Rev2、およびpCMV-Gを共トランスフェクトされた、293T細胞内で産生させた。トランスフェクションの16時間後において培地を交換し、24、48、および72時間後にレンチウイルスを回収した。
【0233】
CD19キメラ受容体を発現させるT細胞系の作製
正常ドナーの分取精製CD8+CD45RA-CD45RO+CD62L+セントラルメモリーT細胞(TCM)を、製造元の指示書に従い抗CD3/CD28ビーズ(Life Technologies)で活性化し、活性化後の3日目において、2,100rpm、32℃で45分間にわたる遠心分離により、これに、1μg/mLのポリブレン(Millipore)を補充したレンチウイルス上清(MOI=3)を形質導入した。T細胞は、組換えヒト(rh)IL-2を50U/mLの最終濃度まで補充した、RPMI、10%のヒト血清、2mMのL-グルタミン、および1%のペニシリン-ストレプトマイシン(CTL培地)中で、48時間ごとに増やした。増殖の後、各形質導入されたT細胞系のアリコートを、ビオチンとコンジュゲートした抗EGFR(上皮成長因子受容体)抗体およびストレプトアビジンビーズ(Miltenyi)で染色し、免疫磁気選択によりtEGFR+ T細胞を単離した。
【0234】
次いで、tEGFR+ T細胞サブセットを、T細胞:LCL比を1:7とする、照射された(8,000ラド)TM EBV-LCLで刺激し、50U/mLのrh IL-2を添加したCTL培地中で、48時間ごとに8日間にわたり増やした。
【0235】
クロム放出アッセイ、サイトカイン分泌アッセイ、およびCFSE増殖アッセイ
標的細胞を、51Cr(PerkinElmer)で一晩にわたり標識し、洗浄し、3連、ウェル1つ当たりの細胞1~2×103個で、多様なエフェクター対標的(E:T)比のエフェクターT細胞と共にインキュベートした。4時間にわたるインキュベーションの後、γカウンティングのために上清を採取し、標準的な式を使用して、特異的溶解を計算した。サイトカイン分泌についての解析のため、標的細胞およびエフェクター細胞を、3連のウェル内、2:1(Raji)または4:1(K562/CD19およびK562)のE:T比で播種し、INF-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-6、およびIL-10を、24時間にわたるインキュベーションの後で除去される上清中のマルチプレックスサイトカインイムノアッセイ(Luminex)により測定した。
【0236】
増殖についての解析では、T細胞を、0.2μMのカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CFSE;Invitrogen)で標識し、洗浄し、3連のウェル内、外因性サイトカインを伴わずに、CTL培地中の比を2:1(Raji)または4:1(K562/CD19およびK562)とする刺激細胞と共に播種した。72時間のインキュベーションの後、細胞を抗CD3 mAbおよびヨウ化プロピジウム(PI)で標識して、死細胞を解析から除外した。試料は、フローサイトメトリーにより解析し、CFSE希釈によりCD3+生T細胞の細胞分裂を評価した。
【0237】
NOD/SCIDマウスおよびNOD/SCID/γc-/-(NSG)マウスによる実験
全てのマウス実験は、FRCRC Institutional Animal Care and Use Committeeにより承認された。6~8週齢の雌NOD.CBI7-Prkdcscid/J(NOD/SCID)およびNOD.Cg-PrkdcscidIl2rgtmlWjl/SzJ(NSG)マウスは、Jackson Laboratoryから得るか、施設(FRCRC)内で飼育した。マウスに、尾静脈注射を介して、0.5×106個のRaji-ffluc腫瘍細胞を静脈内(i.v.)注射し、かつ、尾静脈注射を介して、指し示される通り、キメラ受容体により改変されたT細胞、対照T細胞、またはPBSを注射した。
【0238】
生物発光造影のため、マウスに、PBS中に再懸濁させた、調製したてのルシフェリン基質(Caliper Life Sciences、MA)の腹腔内(i.p.)注射(体重1g当たり15μg)を施し、次いで、誘導チャンバー内でイソフルランにより麻酔をかけた。深麻酔の誘導後、ルシフェリンをi.p.注射した10、12、および14分後に、Xenogen IVIS In Vivo Imaging System(Caliper Life Sciences、MA)を使用して、収集時間を1秒間~1分間とする小ビニングモードでマウスを造影して、不飽和画像を得た。ルシフェラーゼ活性は、Living Image Software(Caliper Life Sciences、MA)を使用して解析し、各個別のマウスの全身を包摂する対象の領域内で光子束解析した。
【0239】
統計学的解析
統計学的解析は、Prism Software(GraphPad、CA)を使用して実施した。スチューデントのt検定を、信頼区間を95%とする両側検定として実施し、p値をp<0.05とする結果を有意と考えた。生存についての統計学的解析は、ログランク検定により行い、p値をp<0.05とする結果を有意と考えた。
【0240】
結果
長鎖細胞外スペーサーを伴うCD19キメラ受容体を発現させるポリクローナルCD8
+T
CMおよび短鎖細胞外スペーサーを伴うCD19キメラ受容体を発現させるポリクローナルCD8
+T
CMに由来する細胞系の調製
本発明者らは、コドンを最適化したCD19キメラ受容体遺伝子のパネルをコードする個別のレンチウイルスベクターを構築して、細胞外スペーサー長の、CD19キメラ受容体により改変されたT細胞のin vitroにおける機能およびin vivoにおける抗腫瘍活性に対する影響を検討した。各キメラ受容体は、CD19特異的mAbであるFMC63の配列に対応する単鎖可変断片(scFv:VL-VH)、「ヒンジ-CH2-CH3」ドメイン(229アミノ酸、長鎖スペーサー)または「ヒンジ」ドメインだけ(12アミノ酸、短鎖スペーサー)を含むIgG4-Fcに由来するスペーサー、および膜近位CD28共刺激ドメインまたは4-1BB共刺激ドメインを単独またはタンデムで伴う、CD3ζのシグナル伝達モジュールを含んだ(
図13A)。トランス遺伝子カセットは、キメラ受容体遺伝子から下流において切断型EGFR(tEGFR)を含み、切断可能なT2Aエレメントで隔てられて、キメラ受容体により改変されたT細胞のための形質導入マーカー、選択マーカー、およびin vivoにおけるトラッキングマーカーとして用いられた。
【0241】
本発明者らは、養子移入後においてもin vivoで存続するT
CMの優れた能力のために、CD8+ CD45RO+ CD62L+セントラルメモリーT細胞(T
CM)細胞集団を、正常ドナーの血液から細胞分取することにより、形質導入および増殖のために単離した。CD8+ T細胞を、抗CD3/28ビーズで刺激し、レンチウイルスベクターの各々を形質導入し、培養物中で18日間にわたり増やしてから、in vitro実験およびin vivo実験のために使用した(
図13B)。レンチウイルスベクターの各々について、同様の形質導入効率を達成し(平均:25%)、ビオチニル化抗EGFR mAbおよびストレプトアビジンビーズを使用して、トランス遺伝子陽性T細胞を、免疫磁気選択により均一な純度へと濃縮した。tEGFR濃縮の後、CD19キメラ受容体T細胞系の各々を、多様なCD19キメラ受容体構築物を発現させるT細胞系の間の、in vitroにおける成長動態の明らかな差違を伴わずに、CD19+B-LCLによる単回の刺激により増やした。増殖の後、tEGFRマーカーは、ベクターの各々を形質導入されたT細胞のうちの>90%において、同等なレベルで発現した(
図13C)。
【0242】
長鎖細胞外スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体および短鎖細胞外スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体は、in vitroにおいて、特異的抗腫瘍反応性を付与する
本発明者らは、CD28共刺激シグナル伝達部分および4-1BB共刺激シグナル伝達部分、ならびに短鎖(「短鎖/CD28」;「短鎖/4-1BB」)細胞外スペーサードメインまたは長鎖(「長鎖/CD28」;「長鎖/4-1BB」)細胞外スペーサードメインのそれぞれを伴うCD19キメラ受容体を発現させるように改変されたT
CMに由来するT細胞系のエフェクター機能を比較した。4つのCD19キメラ受容体構築物の各々を発現させるT細胞は、CD19
+Rajiリンパ腫細胞およびJeKo-1リンパ腫細胞、ならびにCD19を安定的にトランスフェクトされており、天然のCD19
-K562細胞ではないK562細胞に対する特異的細胞溶解活性を付与した(
図14A)。マルチプレックスサイトカインアッセイ(Luminex)による、K562/CD19腫瘍細胞またはRaji腫瘍細胞による刺激に応答するサイトカイン産生についての定量的解析は、CD19キメラ受容体の各々を発現させるT細胞による、IFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、IL-6、およびIL-10の産生を示した(
図14B)。CD28共刺激ドメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞は、4-1BB共刺激ドメインを伴う、対応する構築物と比較して、著明に高度なレベルのIFN-γ、TNF-α、IL-2、およびIL-10を産生した(
図14B、C)。CD19「長鎖/CD28」キメラ受容体を発現させるT細胞により、「短鎖/CD28」キメラ受容体を発現させるT細胞と比較して、著明に高度なIFN-γ産生および著明に低度のIL-4産生が認められた。4-1BB共刺激シグナル伝達モジュールを伴うCD19キメラ受容体のうち、本発明者らは、短鎖スペーサードメインを伴う構築物を発現させるT細胞内で、著明に高度なレベルのIFN-γ、TNF-α、IL-2、IL-4、およびIL-10の分泌を検出した(
図14B、C)。
【0243】
本発明者らは、CFSE色素の希釈を使用して、CD19+腫瘍細胞が係合した後における、CD19キメラ受容体の各々により改変されたT細胞の増殖を解析した。CD19キメラ受容体T細胞系の各々の特異的で活発な増殖を、K562/CD19またはRajiによる刺激の72時間後において観察した。CD28共刺激ドメインを伴うCD19キメラ受容体T細胞では、細胞分裂の平均回数が、4-1BB共刺激ドメインを伴うCD19キメラ受容体T細胞と比較して多く、CD28を含有するキメラ受容体を発現させるT細胞によるIL-2産生の増大と符合した(
図14B~D)。本発明者らはまた、72時間の終わりでのK562/CD19およびRaji腫瘍細胞による刺激の後に、培養物をCD3+およびPIで共染色することにより、活性化誘導型細胞死を経るキメラ受容体T細胞の比率も解析した。本発明者らは、CD19キメラ受容体「長鎖/4-1BB」細胞系内では、高頻度のCD3
+CD8+PI
+T細胞を検出したが、他のCD19キメラ受容体については、少数のPI+細胞を観察した(
図14E)。
【0244】
in vitroにおけるエフェクター機能についてのこの解析は、CD28共刺激ドメインと4-1BB共刺激ドメインとを比較したが、T細胞機能の差違が明らかにならなかったかつての研究と符合し、このことは、このパネルに由来する特定のCD19キメラ受容体構築物が、in vivoにおける抗腫瘍有効性を欠くことを示唆する。
【0245】
短鎖細胞外スペーサードメインを伴うが、長鎖細胞外スペーサードメインを伴わないCD19キメラ受容体を発現させるT細胞は、免疫不全マウスモデルにおいて、Raji腫瘍を根絶する
本発明者らは次に、生物発光造影を使用して、CD19キメラ受容体の各々により改変されたT細胞のin vivoにおける抗腫瘍有効性を、腫瘍の負荷および分布についての逐次的な定量的解析を可能とする、ホタルルシフェラーゼをトランスフェクトされたRaji細胞(Raji-ffluc)を移植された免疫不全(NOD/SCID)マウスにおいて査定した。尾静脈注射を介して、0.5×10
6個のRaji-ffluc細胞を接種されたNOD/SCIDマウスは、処置しなければおよそ3.5週間後に後肢の麻痺をもたらす、播種性リンパ腫を発症し、安楽死を必要とした。腫瘍を保有するマウスは、腫瘍接種後の2および9日目に投与される、CD19キメラ受容体の各々により改変されたT細胞に由来するCD8+ T
CMの2回にわたる投与、またはtEGFR対照ベクターで処置した(
図15A)。
【0246】
驚くべきことに、短鎖細胞外スペーサードメイン(「短鎖/CD28」および「短鎖/4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞だけが、このモデルにおけるRaji腫瘍を根絶したのに対し、長鎖スペーサー(「長鎖/CD28」および「長鎖/4-1BB」)を伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞により処置されたマウスは、処置されなかったマウスまたは対照tEGFR+ T細胞で処置されたマウスとほぼ同一な動態で、全身性リンパ腫および後肢の麻痺を発症した(
図15B、C)。短鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体と長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体との間の抗腫瘍活性の顕著な差違は、極めて著明であり、3例の異なる正常ドナーから生成されたキメラ受容体T細胞系による複数回の実験において再現可能であった。
【0247】
NOD/SCIDリンパ腫モデルは、腫瘍接種とT細胞投与との短い間隔およびヒト細胞の生着に対する耐性の増大のために、臨床状況における抗腫瘍活性を予測するのには、NOD/SCID/γc
-/-(NSG)など、さらなる免疫不全マウス株と比較して最適未満でありうる。したがって、本発明者らは、養子療法の抗腫瘍活性を、より臨床的に関与性のモデルであって、Raji-fflucリンパ腫をNSGマウスにおいて確立し、生物発光造影により骨髄中で腫瘍が容易に検出可能となる7日後にCD19キメラ受容体T細胞を投与するモデルにおいて査定した(
図16A)。本発明者らは、初期用量滴定実験を実施して、CD19「短鎖/4-1BB」キメラ受容体を形質導入されたT細胞の最低用量であって、確立されたRaji腫瘍の根絶に要求される最低用量を決定した。2.5×10
6個のCD19キメラ受容体「短鎖/4-1BB」を発現させるT細胞の単回投与は、確立されたRaji腫瘍の完全な退縮を促進し、100%のマウスにおいて、長期にわたる無腫瘍生存を結果としてもたらした(
図16B、C)。2.5×10
6個の用量レベルで、T細胞は、養子移入および腫瘍の根絶後少なくとも3週間にわたり、NSGマウスの末梢血中でたやすく検出された。したがって、このモデルは、本発明者らのパネル内のCD19キメラ受容体の各々により改変されたT細胞の抗腫瘍活性および存続の両方についての比較研究を可能とした(
図16D)。
【0248】
本発明者らは、次いで、Rajiリンパ腫を移植されたNSGマウスのコホートを、PBS単独、2.5×10
6個の、CD19キメラ受容体の各々を発現させるT細胞の単回投与、またはtEGFRをコードする対照ベクターにより改変されたT細胞で処置した(
図17A)。確立されたリンパ腫のこのモデルにおいて、短鎖細胞外スペーサードメインおよび4-1BB共刺激ドメインまたはCD28共刺激ドメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞(「短鎖/CD28」および「短鎖/4-1BB」)は、7~10日間にわたり、完全な腫瘍の退縮を媒介し、全てのマウスは、>56日間にわたり無腫瘍で生存した。これに対し、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞(「長鎖/CD28」および「長鎖/4-1BB」)で処置されたマウスは、腫瘍の進行を呈示し、対照tEGFR T細胞を施されたマウスと同様の時期に屠殺しなければならなかった(
図17B、C)。「長鎖/CD28」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞の係合の後における、4-1BB構築物と比較した、これらの構築物を発現させるT細胞の、in vitroにおいて腫瘍細胞を溶解させる能力、IL-2産生の増強、および増殖を踏まえると、長鎖スペーサーを伴うキメラ受容体構築物のin vivoにおける抗腫瘍活性の欠如は、予測されなかった。
【0249】
有効性の欠如の基盤に対する洞察をもたらすため、本発明者らは、T細胞注入の後、間隔をおいて、マウスの末梢血試料に対する逐次フローサイトメトリーを実施した。「短鎖/CD28」CD19キメラ受容体および「短鎖/4-1BB」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞で処置された全てのマウスが、養子移入後の全ての時点において、対応する長鎖細胞外スペーサーを伴うCD19キメラ受容体を発現させたT細胞で処置されたマウスと比較して、有意に高度なレベルの移入T細胞を血液中に有した(p<0.01)(
図17D)。本発明者らは、CD28共刺激ドメインまたは4-1BB共刺激ドメインおよび短鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞を施されたマウスの末梢血中のT細胞の存続に著明な差違を観察しなかった(
図17D)。
【0250】
長鎖スペーサーを伴うCD19キメラ受容体のin vivoにおける抗腫瘍有効性は、T細胞の用量を増大させるかまたはさらなる共刺激ドメインを施すことによっては改善されない
長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体により改変されたT細胞で処置されたマウスでは、in vivoにおける抗腫瘍有効性が欠如し、存続するキメラ受容体T細胞のレベルも低下することから、有効性は、キメラ受容体T細胞の用量を増大させるか、またはCD28ドメインおよび4-1BBドメインの両方を、キメラ受容体へと組み入れて、共刺激シグナル伝達を増進させることにより改善しうることが示唆された。この可能性を査定するために、本発明者らは、CD8+ T
CMを、「長鎖/CD28」CD19キメラ受容体ベクター、「短鎖CD28」CD19キメラ受容体ベクター、および「長鎖/CD28_4-1BB」CD19キメラ受容体ベクターで改変し、CD19+標的細胞を認識した後で、「長鎖/CD28_4-1BB」CD19キメラ受容体が、in vitroにおける特異的溶解およびサイトカイン産生を付与することを確認した(
図18A~C)。
【0251】
「CD28_4-1BB」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞における、in vitroのサイトカイン産生および増殖のレベルが、CD28単独を伴う同一な構築物と比較して劣り、「長鎖4-1BB」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞に優ることは、CD19キメラ受容体についてのかつての研究と符合する(
図18B、C)。
【0252】
次いで、確立されたRaji腫瘍を伴うNSGマウスの群を、「長鎖/CD28」CD19キメラ受容体、「長鎖/CD28_4-1BB」CD19キメラ受容体、「短鎖/CD28」CD19キメラ受容体、およびtEGFR単独を発現させる、高用量のT細胞(10×10
6個)で処置した。生物発光造影により腫瘍負荷を測定し、連続フローサイトメトリーによる末梢血試料の解析を実施して、移入T細胞の頻度を決定した。「短鎖/CD28」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞で処置されたマウスにおいてRaji腫瘍が完全に根絶されたことは、はるかに低用量のT細胞を使用した、本発明者らによるかつての実験の結果と符合する。しかし、4倍のT細胞の用量を伴ってもなお、「長鎖/CD28」CD19キメラ受容体または「長鎖/CD28_4-1BB」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞による処置は、識別可能な抗腫瘍効果をもたらさなかった(
図18D、E)。
【0253】
したがって、キメラ受容体T細胞の用量を増大させ、4-1BB共刺激ドメインをCD19キメラ受容体へと添加することは、in vivoにおける長いスペーサードメインの抗腫瘍活性に対する負の影響を克服することに失敗した。したがって、このモデルでは、CD19キメラ受容体の抗腫瘍反応性は、大きな程度で、細胞外スペーサードメインの長さにより決定付けられるものであり、細胞内共刺激シグナル伝達モジュールにより決定付けられるものではない。
【0254】
長鎖細胞外スペーサーを保有するCD19キメラ受容体により改変されたT細胞は、in
vivoにおける活性化誘導型細胞死を経る
本発明者らは、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞のin vivoにおける抗腫瘍活性の低さの根底をなす潜在的機構を決定しようと試みた。血液中に存在する、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるように改変された移入T細胞の数は少なかったため、本発明者らは、in vivoにおいて、T細胞が、腫瘍細胞により効率的に活性化されないか、または逆に、in vivoにおいて、T細胞が、活性化誘導型のT細胞死を受ける可能性について検討した。したがって、本発明者らは、CD19キメラ受容体により改変されたT細胞および対応する対照T細胞を、CFSEで標識し、これらのT細胞を、腫瘍を保有するNSG/Rajiマウスへと投与して、in vivoの腫瘍部位における、CD19キメラ受容体構築物の各々により改変されたT細胞の活性化、増殖および生存について検討した(
図19A)。それらのin vitroにおける増殖を終え、CFSEによる標識化および確立されたRaji腫瘍を保有するNSGマウスへと注入される直前において、CD19キメラ受容体の各々を形質導入されたT細胞は、低レベルの活性化マーカーであるCD69およびCD25を発現させた(
図19B)。
【0255】
T細胞注入の24および72時間後に、骨髄をマウスの部分群から得て、移入T細胞の頻度、活性化、および増殖について検討した。24時間後の全ての処置群において、腫瘍細胞(CD45+ CD3-)は、骨髄中に存在し、キメラ受容体T細胞の大部分は、CD69およびCD25を上方調節したが、対照T細胞は、CD69およびCD25を上方調節しなかった。移入されたキメラ受容体T細胞において、CFSEの測定可能な希釈は認められなかった(
図19C)。CD69およびCD25のいずれも、「長鎖スペーサー」CD19キメラ受容体により改変されたT細胞のうちの大部分において発現したことから、これらの細胞は、「短鎖スペーサー」CD19キメラ受容体を伴うT細胞と比較して、より強力な刺激を受けた可能性があることが示唆される(
図19C)。24時間後におけるT細胞の活性化の証拠にもかかわらず、CD28および4-1BB「長鎖スペーサー」構築物により改変されたT細胞で処置されたマウスの骨髄中のキメラ受容体T細胞の数は、CD28および4-1BB「短鎖スペーサー」構築物により改変されたT細胞、または対照tEGFRベクターで処置されたマウスの骨髄中のキメラ受容体T細胞の数と比較して著明に少なかった(
図19C、E)。
【0256】
T細胞移入の72時間後において、「短鎖/CD28」CD19キメラ受容体および「短鎖/4-1BB」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞は、骨髄中および脾臓内の頻度が3~>10倍に増大し、数回の細胞分裂を経た(
図19D、E)。対照のtEGFR+ T細胞は、72時間後において、骨髄中および脾臓に、24時間後に観察されるレベルと同様のレベルで存在したままであり、CFSE希釈により測定される通り、分裂しなかった。これに対し、「長鎖/CD28」CD19キメラ受容体および「長鎖/4-1BB」CD19キメラ受容体を発現させるT細胞の数は、骨髄中および脾臓内で増大しなかった(
図19D、E)。PI-「長鎖/CD28」CD19キメラ受容体生存T細胞およびPI-「長鎖/4-1BB」CD19キメラ受容体生存T細胞におけるCFSE染色についての解析により、これらの細胞が、「短鎖/CD28」CD19キメラ受容体および「短鎖/4-1BB」CD19キメラ受容体T細胞と比較してはるかに少ない回数の細胞分裂を経たと裏付けられたことは、低細胞数と符合する(
図19D)。PI+ T細胞を組み入れるようにフローデータを解析したところ、本発明者らは、はるかに高頻度のPI+ CD3+ T細胞を、「長鎖スペーサー」ドメインを伴うCD19キメラ受容体T細胞を施されたマウスの骨髄中および脾臓内で検出したことから、in vivoにおいて、著明な比率のT細胞が、腫瘍により活性化されたにもかかわらず、細胞死を受けたことが裏付けられる(
図19F)。長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞またはtEGFRだけを発現させるT細胞により処置されたマウスの骨髄中では、CD45+ CD3- Raji腫瘍細胞が、短鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体で処置されたマウスと比較してより大きな数で存在したことは、生物発光造影と符合する(
図19D、E、G)。
【0257】
まとめると、データは、長鎖細胞外スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体は、in vitroにおいて同等であるかまたは優れたエフェクター機能を媒介し、in
vivoにおいて腫瘍を認識するにもかかわらず、in vivoにおいて高レベルの活性化誘導型細胞死を誘導し、確立されたリンパ腫を根絶することに失敗することの証拠を提示する。
【0258】
考察
キメラ受容体とは、細胞外抗原結合scFv、scFvの細胞膜からの隔離をもたらすスペーサードメイン、およびT細胞の活性化を媒介する細胞内シグナル伝達モジュールを含む人工の受容体である。本明細書で研究したCD19特異的FMC63 mAbに由来するscFvを含有するキメラ受容体は、B細胞悪性腫瘍を伴う患者での臨床試験における検査へと進んでいる。抗腫瘍活性およびT細胞の存続は、異なる試験では、実質的に変化している。これらの臨床試験の各々は、異なる遺伝子導入ベクター、細胞培養法、およびCD19キメラ受容体T細胞を移入する前の馴致レジメンを含む、潜在的に極めて重要な変数が異なった。
【0259】
本発明者らは、CD19キメラ受容体の細胞外スペーサードメインが、キメラ受容体によりもたらされる共刺激シグナル伝達とは独立の、in vivoにおける抗腫瘍活性の重要な決定因子でありうる可能性について検討した。本発明者らは、スペーサードメインを、高レベルのキメラ受容体の細胞表面発現を可能とし、生得的免疫細胞による認識を引き起こす可能性が他のIgGアイソタイプと比較して低い、IgG4-Fcから導出した。本発明者らは、長鎖(229アミノ酸)スペーサー構築物のデザインでは、IgG4「ヒンジ-CH2-CH3」を使用し、本発明者らの短鎖(12アミノ酸)スペーサーキメラ受容体では、IgG4「ヒンジ」ドメインを使用した。個別のキメラ受容体構築物を比較するために、本発明者らは、精製された(>90%)キメラ受容体陽性CD8+TCMに由来するT細胞を使用して、in vitro機能およびin vivo機能についての解析におけるバイアスの潜在的発生源としての、細胞組成の差違および形質導入頻度を除去した。CD8+TCMは、血液中でより夥多な他のT細胞サブセットであって、存続が低度であり、腫瘍の治療において有効でないサブセットと比較して、養子免疫療法のための優れた形質を有することが示されている。CD19キメラ受容体T細胞を、臨床試験のためのキメラ受容体T細胞を導出するのに使用されるプロトコールと同様の、標準化された培養プロトコールを使用して生成した。本発明者らのデータは、短鎖IgG4「ヒンジ」スペーサーを伴うCD19キメラ受容体が、in vitroおよびin vivoにおいて強力な抗腫瘍反応性を付与したのに対し、IgG4「ヒンジ-CH2-CH3」による、対応する長鎖スペーサーを伴うCD19キメラ受容体は、in vitroにおける同等であるかまたは優れた反応性にもかかわらず、マウスリンパ腫モデルにおいて著明な抗腫瘍効果を付与するのに失敗したことを示す。驚くべきことに、スペーサードメインの長さが、in vivoにおける抗腫瘍活性のための決定的なエレメントであることがわかり、「長鎖スペーサー」キメラ受容体の有効性の欠如は、T細胞の用量を増大させることにより克服することができなかった。
【0260】
本発明者らはまた、CD28共刺激ドメインを含有するCD19キメラ受容体を発現させるT細胞と4-1BB共刺激ドメインを含有するCD19キメラ受容体を発現させるT細胞との間の、in vitroにおけるサイトカイン分泌および増殖の主要な差違も観察したが、CD28は、IFN-γ、IL-2、およびTNF-αの分泌を、4-1BBと比較して増進させた。また、タンデムのCD28_4-1BBを保有するCD19キメラ受容体も、これらのサイトカインを、4-1BBだけをコードするキメラ受容体と比較して高レベルで産生した。しかし、CD28共刺激ドメインおよび短鎖スペーサーを伴うCD19キメラ受容体、または4-1BB共刺激ドメインおよび短鎖スペーサーを伴うCD19キメラ受容体は、NSGマウスにおいて確立された進行したRaji腫瘍を根絶するのに同様に有効であるので、本発明者らのデータは、これらのin vitro機能の差違が、in vivoにおける抗腫瘍有効性を予測しなかったことを示す。これに対し、最適未満のスペーサー長およびCD28、4-1BB、または両方の共刺激ドメインを伴うCD19キメラ受容体は、短鎖スペーサードメインを伴う同一なキメラ受容体構築物と同様のin vitro機能を付与するにもかかわらず、in vivoにおける著明な抗腫瘍活性を欠いたことから、スペーサー長の、キメラ受容体T細胞のin vivo機能への寄与が裏付けられる。
【0261】
本発明者らの研究は、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体のin vivoにおける有効性の欠如の一因となる機構への洞察をもたらす。長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞および短鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞のいずれも、確立されたRajiリンパ腫を保有するNSGマウスへの養子移入の後において、骨髄中および脾臓内で検出することができ、CD25およびCD69の上方調節により裏付けられる通り、大半は活性化された。しかし、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるように改変されたT細胞は、短鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞のin vivoにおける顕著な増殖と対照的に、細胞数の急激な減少を呈示した。T細胞数の減少は、養子移入後の最初の72時間における、短鎖スペーサードメインを伴うT細胞およびCD19キメラ受容体を発現しない対照T細胞と比較した、はるかに高レベルの細胞死の帰結であった。まとめると、これらのデータは、in vivoにおける腫瘍細胞の認識が、長鎖スペーサードメインを伴うCD19キメラ受容体を発現させるT細胞の死を結果としてもたらしたことを指し示す。同様の機構により、長鎖スペーサーCD19キメラ受容体を援用した臨床試験における、T細胞存続の持続期間の短さおよびレベルの低さを説明することができる(14)。
【0262】
本明細書で報告した研究は、内因性シグナル伝達特性を欠くCD19キメラ受容体のスペーサードメインが、共刺激シグナル伝達とは独立に、in vivoにおける抗腫瘍活性に対して劇的な効果を及ぼすことを示し、キメラ受容体のデザインにおけるこの領域の最適な組成を解析することが臨床適用のために重要であることを同定する最初の研究である。
【0263】
前出は、本発明を例示するものであり、その限定としてみなされないものとする。本発明は、その中に含まれる特許請求の範囲の同等物と共に、以下の特許請求の範囲により規定される。本明細書で参照される全ての参考文献および文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9-1】
【表9-2】
【表9-3】
【表9-4】
【表9-5】
【表10】
【表11-1】
【表11-2】
【表11-3】
【表11-4】
【表11-5】
【表12】
【表13-1】
【表13-2】
【表13-3】
【表13-4】
【表14】
【表15-1】
【表15-2】
【表15-3】
【表15-4】
【表15-5】
【表16】
【表17-1】
【表17-2】
【表17-3】
【表17-4】
【表17-5】
【表18】
【表19-1】
【表19-2】
【表19-3】
【表19-4】
【表19-5】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24-1】
【表24-2】