(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074938
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】ガス消火設備
(51)【国際特許分類】
A62C 35/68 20060101AFI20240524BHJP
A62C 35/02 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
A62C35/68
A62C35/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061459
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020147352の分割
【原出願日】2020-09-02
(71)【出願人】
【識別番号】390010342
【氏名又は名称】エア・ウォーター防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 治男
(57)【要約】
【課題】低コスト化が可能なガス消火設備を提供する。
【解決手段】一階防護区画11と、一階防護区画11上の二階防護区画12とを有し、昇降機が設けられていない建物1のガス消火設備であって、二階防護区画12に消火剤ガスを送る配管はステンレス鋼管である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の階と、前記第一の階の上の第二の階とを有し、昇降機が設けられていない建物のガス消火設備であって、前記第二の階に設けられた防護区画に消火剤ガスを送る配管はステンレス鋼管である、ガス消火設備。
【請求項2】
前記ステンレス鋼管は前記第二の階の天井裏空間に設置される、請求項1に記載のガス消火設備。
【請求項3】
前記第一の階は前記建物の最も低い階であり、前記第一の階の防護区画に消火剤ガスを送る配管は炭素鋼管である、請求項1または2に記載のガス消火設備。
【請求項4】
前記第一の階の防護区画に消火剤ガスを送る配管はステンレス鋼管である、請求項1または2に記載のガス消火設備。
【請求項5】
第一の階と、前記第一の階の上の第二の階とを有し、昇降機が設けられていない建物のガス消火設備の施工方法であって、
前記第二の階に設けられた防護区画に消火剤ガスを送る配管はステンレス鋼管であり、前記ステンレス鋼管は前記第二の階の天井裏空間に設置される、ガス消火設備の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はステンレス製配管を有するガス消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス消火設備は、たとえば、特開2016-106763号公報に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のガス消火設備においては、さらなる低コスト化が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明に従ったガス消火設備は、第一の階と、前記第一の階の上の第二の階とを有し、昇降機が設けられていない建物のガス消火設備であって、前記第二の階に設けられた防護区画に消火剤ガスを送る配管はステンレス鋼管である。
【0006】
このように構成されたガス消火設備においては、ステンレス鋼管は炭素鋼管と比較して軽量であるため、昇降機が設けられていない建物においても作業者が容易に第二の階に運搬することができる。その結果、施工が容易となり、低コスト化を図ることができる。
【0007】
好ましくは、前記ステンレス配管は前記第二の階の天井裏空間に設置される。この場合、ステンレス鋼管は軽量であるため天井裏空間であっても容易にステンレス配管を設置することができる。
【0008】
前記第一の階は前記建物の最も低い階であり、前記第一の階の防護区画に消火剤ガスを送る配管は炭素鋼管である。この場合、最も低い階にある防護区画において炭素鋼管を用いても運搬が容易であるため施工が簡単である。さらに、炭素鋼管はステンレス鋼管と比較して安価であるため、低コスト化を図ることができる。
【0009】
前記第一の階の防護区画に消火剤ガスを送る配管はステンレス鋼管である。この場合、第一の階の防護区画においても施工が容易となる。
【0010】
第一の階と、前記第一の階の上の第二の階とを有し、昇降機が設けられていない建物のガス消火設備の施工方法においては、前記第二の階に設けられた防護区画に消火剤ガスを送る配管はステンレス鋼管であり、前記ステンレス配管は前記第二の階の天井裏空間に設置される。
【0011】
このようなガス消火設備の施工方法によれば、軽量なステンレス鋼管を用いるため、低コストで施工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、実施の形態1に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
【
図2】
図2は、実施の形態2に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
【
図3】
図3は、実施の形態3に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
【
図4】
図4は、実施の形態4に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
(実施の形態1)
近年の少子高齢化に伴って、労働力が減少している。そのため、建設作業において、建設作業員への負荷が小さい工法が望まれている。エレベーターが無く複数階を有する建物においてはガス消火設備を2階以上に設置する場合にガス消火設備の配管を作業員が2階以上に運ぶ必要があり作業員への負担が大きかった。
【0015】
図1は、実施の形態1に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
図1で示すように、実施の形態1に従った建物1は、一階防護区画11と、一階防護区画11上に設けられた二階防護区画12とを有する。
【0016】
一階防護区画11は、一階天井21により一階室内22と一階天井裏空間23とに分けられている。一階室内22にはダクト123が取り付けられている。ダクト123は通常はダンパー121により閉じられている。ダンパー121がダクト123を封止することでダクト123を経由して消火剤ガスが一階室内22からダクト123へ流れることを防止できる。ダンパー121が点線で示す位置まで動くとダンパー121がダクト123の開口を開放する。そのため一階室内22の消火剤ガスがダクト123へ流れる。
【0017】
二階防護区画12は、二階天井26により二階室内27と二階天井裏空間28とに分けられている。二階室内27にはダクト124が取り付けられている。ダクト124は通常はダンパー122により閉じられている。ダンパー122がダクト124を封止することでダクト124を経由して消火剤ガスが二階室内27からダクト124へ流れることを防止できる。ダンパー122が点線で示す位置まで動くとダンパー122がダクト124の開口を開放する。そのため二階室内27の消火剤ガスがダクト124へ流れる。
【0018】
複数のガスボンベ5がマニホルド(集合管)6に接続されている。集合管6は一次配管36に接続されている。一次配管36の端部が分岐点であり、分岐点35から下流側は一階二次配管33および二階二次配管34となる。
【0019】
一階二次配管33には開閉弁61が設けられている。開閉弁61の下流には一階天井裏空間23を通過するように一階天井裏配管31が接続されている。一階天井裏配管31の端部にはノズル41が取り付けられている。一階室内22に設けられた火災報知器(図示せず)が煙または炎を検知すると、開閉弁61が開く。これにより、一時配管36内の消火剤ガスが一階二次配管33、開閉弁61、一階天井裏配管31およびノズル41を経由して一階室内22に導入される。
【0020】
二階二次配管34には開閉弁62が設けられている。開閉弁62の下流には二階天井裏空間28を通過するように二階天井裏配管32が接続されている。二階天井裏配管32の端部にはノズル42が取り付けられている。二階室内27に設けられた火災報知器(図示せず)が煙または炎を検知すると、開閉弁62が開く。これにより、一時配管36内の消火剤ガスが二階二次配管34、開閉弁62、二階天井裏配管32およびノズル42を経由
して二階室内27に導入される。
【0021】
建物1にはエレベータが設けられていない。そのため、施工時には作業者が二階天井裏配管32を二階天井裏空間28へ運び、二階天井裏空間28内において二階天井裏配管32を設置する必要がある。これは大変困難な作業である。二階天井裏配管32をステンレス製とすることで、二階天井裏配管32が鋼管(炭素鋼管)で構成される場合と比較して二階天井裏配管32のスケジュールを小さくできる。その結果、二階天井裏配管32が軽量となる。二階天井裏配管32が軽量となればそれを持って上がる作業および設置する作業が格段に楽になる。
【0022】
二階天井裏配管32はステンレス鋼管である。ステンレス鋼管は、クロムを含む合金鋼、またはクロムとニッケルを含む合金鋼からなる。ステンレス鋼管の全質量に占めるクロムの含有率は10%以上であり、好ましくは16%以上である。二階天井裏配管32は狭い場所において設置されるものであり、その施工が困難になる場合がある。このような場所に薄肉軽量のステンレス鋼管である二階天井裏配管32を設置することで、施工の負担を軽減することができる。
【0023】
二階二次配管34をステンレス鋼管としてもよい。この場合にも、軽量のステンレス鋼管を二階へ持って上がることとなり作業者の負担が軽減される。通常の鋼管(炭素鋼管)とステンレス鋼管との接続箇所において通常の鋼管の錆を防ぐためにステンレス鋼と炭素鋼との間に絶縁パッキンを設けることが好ましい。
【0024】
二階天井裏空間28に軽量のステンレス鋼管である二階天井裏配管32を設置することで、仮に二階天井裏配管32が落下したとしても、二階天井26の被害を軽減できる。
【0025】
一階天井裏配管31、一階二次配管33および一次配管36をステンレス鋼管としてもよい。さらに、この実施の形態では一階防護区画11および二階防護区画12を有する建物を示したが、これ以上、たとえば、一から五階の防護区画を有する建物であってもよい。その場合に、二階以上のいずれかの防護区画の天井裏空間にステンレス鋼管の天井裏配管が設けられる。
【0026】
消火剤ガスとして、たとえば、窒素、二酸化炭素、フッ素化合物などを用いることができる。
【0027】
ガスボンベ5は、たとえば、CE(コールドエバポレーター)タンク装置、PSA(Pressure Swing Adsorption)装置、高純度窒素ガス発生装置に置き換えられてもよい。C
Eタンク装置は、液体窒素が溜められるタンクと、タンクから液体窒素の供給を受けて液体窒素を気化させる調整器とを有する。
【0028】
PSA装置は、圧力変動吸着装置である。吸着剤のガスに対する吸着特性の違いを利用して、加圧と減圧の操作を交互に繰り返しながら、目的とするガス(窒素)を連続的に分離する。吸着剤として、たとえばエア・ウォーター株式会社製の高性能MSC(モレキュラー・シーブス・カーボン)である「ベルファイン活性炭」を用いることができる。
【0029】
窒素ガスを送る装置として、エア・ウォーター株式会社製の高純度窒素ガス発生装置「V1」(商品名)が用いられてもよい。この装置は、液化窒素の冷熱を利用した熱交換により高純度窒素ガスを安定的に発生させる。すなわち、液体窒素が気化するときに大量の熱が奪われる。この熱を利用して空気を冷却することで空気中の酸素、二酸化炭素等を液化し、気体として残った窒素を所定の目的に利用するものである。これにより、低コストで窒素ガスを安定供給できる。
【0030】
第一の階としての一階防護区画11と、第一の階の上の第二の階としての二階防護区画12とを有し、昇降機が設けられていない建物1のガス消火設備であって、二階防護区画12に消火剤ガスを送る配管である二階天井裏配管32はステンレス鋼管である。
【0031】
ステンレス配管は二階天井裏空間28に設置される。
【0032】
一階防護区画11は前記建物1の最も低い階であり、一階防護区画11に消火剤ガスを送る一階天井裏配管31は炭素鋼管であってもよい。
【0033】
第一防護区画に消火剤ガスを送る一階天井裏配管31はステンレス鋼管であってもよい。
【0034】
(実施の形態2)
図2は、実施の形態2に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
図2で示すように、建物1は、中心部にヘビーデューティーゾーン1bを有し、周辺部に通常ゾーン1aを有する。通常ゾーン1aと比較してヘビーデューティーゾーン1bは床の耐荷重が大きく、重量物を設置できる。エレベーターが設けられるコアゾーンに近い部分にヘビーデューティーゾーン1bが設けられる。
【0035】
建物1は、第一の領域としての通常ゾーン1aと、通常ゾーンよりも高強度の第二の領域としてのヘビーデューティーゾーン1bとを備え、ヘビーデューティーゾーン1bに炭素鋼管である二階天井裏配管32bおよび一階天井裏配管31bを設け、通常ゾーン1aにステンレス鋼管である二階天井裏配管32aおよび一階天井裏配管31aを設ける。床強度だけでなく壁強度も考慮して上記のステンレス配管および炭素鋼管を設置する。
【0036】
通常ゾーン1aおよびヘビーデューティーゾーン1bの間に仕切りがあってもよく、仕切りがなくてもよい。この実施例では仕切りがない構造を記載している。二階天井裏配管32a,32bおよび一階天井裏配管31a,31bは、ともに実施の形態1と同様に一次配管、集合管、容器弁およびガスボンベに接続される。さらに、ダクトおよびダンパも設けられる。
【0037】
ステンレス鋼管は軽量であるが炭素鋼管と比較してコストが高い。消火設備のコストを低下させるためにはステンレス鋼管の使用量を削減することが効果的である。そのため、床、および、壁の強度が大きいヘビーデューティーゾーン1bには、ステンレス鋼管よりも重い炭素鋼管を用いる。これにより消火設備のコストを低減できる。
【0038】
これに対してステンレス鋼管は軽量であり、建物1の強度が低い通常ゾーン1aに設けることで、建物1への負荷を軽減できる。これにより、消火設備のコストを低下させつつ、建物への負荷を減少させることができる。なお、実施の形態2の建物1にはエレベータなどの昇降機が設けられてもよい。
【0039】
(実施の形態3)
図3は、実施の形態3に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
図3で示すように、建物1は、医療施設である。医療施設とは、病院及び診療所のみならず、老人ホームおよびグループホームなどを含む概念である。病院である。建物1にエレベータなどの昇降機が設けられていてもよく、設けられていなくてもよい。実施の形態2のようなヘビーデューティーゾーンが設けられていてもよく、設けられていなくてもよい。
【0040】
一階天井裏配管31および二階天井裏配管32の少なくともいずれかはステンレス鋼管である。好ましくは、二階天井裏配管32および一階天井裏配管31の両方がステンレス鋼管である。
【0041】
医療施設の配管には、医療廃液が流れることがである。医療廃液には、酸、塩基など配管を腐食させる成分が含まれる。医療廃液が一階天井裏配管31および二階天井裏配管32に付着する場合がある。しかしながら、一階天井裏配管31および二階天井裏配管32の少なくともいずれかがステンレス鋼管であるため、腐食を防止できる。
【0042】
医療施設では様々なガスが用いられる。これらのガスがステンレス鋼管と接触してもステンレス鋼管がさびにくいため、ガス消火設備の管路の長寿命化を図ることができる。
【0043】
(実施の形態4)
図4は、実施の形態4に従った、ステンレス配管を有するガス消火設備が設けられた建物の模式図である。
図4で示すように、建物1は、原子力発電所である。原子力発電において、第一原子炉建屋511および第二原子炉建屋512が設けられている。
【0044】
第一原子炉建屋511は第一格納容器521を有する。第一格納容器521内が第一防護区画522である。第一格納容器521内には原子炉の炉心、蒸気発生器、蒸気ライン、給水ラインなどが設けられている。炉心によって加熱された水が蒸気となり、蒸気ラインを経由して第一格納容器521外のタービンを回転させる。タービンを回転させた後の凝集した水が給水ラインを経て再度炉心で加熱される。
【0045】
第二原子炉建屋512は第二格納容器526を有する。第二格納容器526内が第二防護区画527である。第二格納容器526内には原子炉の炉心、蒸気発生器、蒸気ライン、給水ラインなどが設けられている。炉心によって加熱された水が蒸気となり、蒸気ラインを経由して第二格納容器526外のタービンを回転させる。タービンを回転させた後の凝集した水が給水ラインを経て再度炉心で加熱される。
【0046】
このように第一原子炉建屋511および第二原子炉建屋512が設けられる原子力発電所はSMR(Small Modular Reactor)と呼ばれる。小さな原子炉建屋を製造し、出力規
模に応じて複数の原子炉建屋を接続する。複数の原子炉建屋を接続すれば大型の原子力発電所として機能する。小さな出力のみが必要であれば1つの原子炉建屋のみを発電機に接続する。
【0047】
複数の原子炉建屋が存在する場合には、複数の原子炉建屋の各々にガス消火装置を設ける必要がある。
【0048】
この実施の形態においては第一原子炉建屋511にボンベ5a、ボンベ5aに接続される集合管6a、集合管6aに接続される一次配管36a、一次配管36aに接続される開閉弁561、開閉弁561に接続されるガス配管531およびガス配管531に接続されるノズル41を設ける。第一原子炉建屋511および第一格納容器521内の火災に関する情報を信号線553により制御装置551へ送る。信号線553は無線とされていてもよい。
【0049】
第二原子炉建屋512にボンベ5b、ボンベ5bに接続される集合管6b、集合管6aに接続される一次配管36b、一次配管36bに接続される開閉弁562、開閉弁562に接続されるガス配管532およびガス配管532に接続されるノズル42を設ける。第二格納容器512内の火災に関する情報を信号線554により制御装置551へ送る。信号線554は無線とされていてもよい。
【0050】
第一格納容器521において火災が発生するとボンベ5aのガスがノズル41から放出されて第一格納容器521内に消火剤ガスが充満する。これにより第一格納容器521内の火災を鎮火する。このとき火災の情報が制御装置551に伝達される。第二原子炉建屋512においても火災が発生する可能性を考慮して制御装置551は信号線554により第二原子炉建屋512の容器弁を開弁してボンベ5bの消火剤ガスをノズル42から第二格納容器526に放出してもよい。第一格納容器521において火災が発生して場合には第二格納容器526に延焼する可能性があり、その可能性を小さくするために火災が発生していない第二格納容器526において火災が発生しにくい状態としていることが好ましい。
【0051】
一次配管36a,36b、ガス配管531,532は、それぞれステンレス鋼管により構成される。このように構成された建物1においては原子炉建屋が増加したとしても共通のサイズの一次配管36a,36b、ガス配管531,532を用いることで消火設備のコストを低減できる。
【0052】
原子力発電所は、第一原子炉建屋511と、第一原子炉建屋511から離隔した第二原子炉建屋512とを備える。第一原子炉建屋511は、炉心を有する第一格納容器521と、第一格納容器521に消火剤ガスを注入するためのノズル41と、ノズル41に消火剤ガスを供給するためのステンレス鋼管であるガス配管531および一次配管36aとを有する。第二原子炉建屋512は、炉心を有する第二格納容器526と、第二格納容器526に消火剤ガスを注入するためのノズル42と、ノズル42に消火剤ガスを供給するためのステンレス鋼管であるガス配管532および一次配管36bとを有する。消火剤ガス供給源であるガスボンベ5a,5bから一次配管36a,36bに消火剤ガスが供給される。
【0053】
消火剤ガス供給源であるガスボンベは、電力により消火剤ガスを産出する装置により置き換えられることも可能である。たとえば、PSA装置であれば、電力を用いて大気中の窒素を抽出することができるため、原子力発電所で発生させた電力により消火剤ガスを抽出し、蓄えておくことができる。
【0054】
ステンレス鋼管であるガス配管531,532および一次配管36a,36bを用いることで第一格納容器521および第二格納容器526内が金属を腐食させやすい環境(高温多湿)であってもガス配管531,532および一次配管36a,36bの腐食を防止することができる。
【0055】
モジュール化された第一格納容器521および第二格納容器526は同じ寸法を有する。そのため、第一格納容器521および第二格納容器526に設けるノズル41,42、ガス配管531,532、一次配管36a,36bなどの部品をモジュールかできる。すなわちガス配管531とガス配管532とが同じ寸法および材質である。一次配管36aと一次配管36bとが同じ寸法および材質である。その結果、ステンレス鋼管を用いたとしてもコストを低下させることができる。
【0056】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、ここで示した実施の形態は様々に変形することが可能である。
【0057】
まず、ステンレス配管は腐食しにくいという点を考慮して、ガス消火設備において、メンテナンスしにくい部分をステンレス配管とし、メンテナンスしやすい部分を通常の炭素鋼管とすることができる。これにより、炭素鋼管が腐食しても交換しやすい。
【0058】
さらに、ビルの築年数に応じてガス消火設備のステンレス配管を設置することができる。ガス消火設備が設けられていないビルにガス消火設備を後施工する場合、建物が古い場合には通常の炭素鋼管、建物が新しい場合にはステンレス配管とする。古い建物はすぐに取り壊す可能性があるため、ステンレス配管は無駄になる可能性がある。
【0059】
また、化学工場等の酸化ガスが浮遊するプラント施設内においてもガス消火設備の配管をステンレス鋼管とすることで、腐食を抑制できる。
【0060】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0061】
1 建物、1a 通常ゾーン、1b ヘビーデューティーゾーン、5 ガスボンベ、6
集合管、11 一階防護区画、12 二階防護区画、21 一階天井、22 一階室内、23 一階天井裏空間、26 二階天井、27 二階室内、28 二階天井裏空間、31,31a,31b 一階天井裏配管、32,32a,32b 二階天井裏配管、33 一階二次配管、34 二階二次配管、35 分岐点、36 一次配管、41,42 ノズル、61,62,561,562 開閉弁、121,122 ダンパー、123,124
ダクト、511 第一原子炉建屋、512 第二原子炉建屋、521 第一格納容器、522 第一防護区画、526 第二格納容器、527 第二防護区画、531,532
ガス配管、551 制御装置、553,554 信号線。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に設けられるガス消火設備であって、
前記建物は、中心部にヘビーデューティーゾーンを有し、周辺部に通常ゾーンを有し、前記通常ゾーンと比較して前記ヘビーデューティーゾーンは床の耐荷重が大きく、重量物を設置でき、
エレベーターが設けられるコアゾーンに近い部分に前記ヘビーデューティーゾーンが設けられ、前記通常ゾーンにステンレス製の配管を設け、
前記配管は、一次配管、集合管、容器弁およびガスボンベに接続される、ガス消火設備。