(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074940
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】フィルタ部材及び該フィルタ部材を含む浄水カートリッジ
(51)【国際特許分類】
C02F 1/28 20230101AFI20240524BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20240524BHJP
B01J 20/20 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
C02F1/28 D
B01D39/20 C
C02F1/28 G
B01J20/20 B
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061551
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2020084986の分割
【原出願日】2020-05-14
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】谷口 真二
(72)【発明者】
【氏名】内藤 宣博
(72)【発明者】
【氏名】藤木 博規
(57)【要約】
【課題】 フィルタ部材がケーシングにより軸方向に押圧する押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容される浄水カートリッジに用いられた場合に、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に遊離残留塩素除去性能を発揮することができ、クロロホルムのろ過能力を発揮し得るフィルタ部材を提供すること。
【解決手段】 繊維状活性炭を含む、空洞部を有する円筒状に形成されたフィルタ部材であって、前記フィルタ部材が、軸方向の両端に第1面と第2面を有し、前記第1面及び前記第2面の両方にシール剤が塗布されており、前記フィルタ部材は弾性を有しており、下記測定方法による前記フィルタ部材の軸方向の硬さが150N以上700N以下である、フィルタ部材
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維状活性炭を含む、空洞部を有する円筒状に形成されたフィルタ部材であって、
前記フィルタ部材が、軸方向の両端に第1面と第2面を有し、
前記第1面及び前記第2面の両方にシール剤が塗布されており、
前記フィルタ部材は弾性を有しており、下記測定方法による前記フィルタ部材の軸方向の硬さが150N以上700N以下である、フィルタ部材。
<測定方法>
測定器として株式会社島津製作所製オートグラフAG-1000を用い、前記フィルタ部材を軸方向に速度5mm/minで1mm圧縮したときにかかる力を前記硬さとする。
【請求項2】
原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、
前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するための、請求項1に記載のフィ
ルタ部材と、
を備え、
前記ケーシングは、
前記フィルタ部材の第1面をカバーする第1カバー部と、
前記フィルタ部材の第2面をカバーする第2カバー部と、
前記フィルタ部材の外周面を覆う側壁部と、
を備え、
前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記フィルタ部材の第1面に環状に接触し、前記フィルタ部材を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、
前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記フィルタ部材の第2面に環状に接触し、前記フィルタ部材を軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、
前記フィルタ部材は、前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容されている、
浄水カートリッジ。
【請求項3】
前記第1接触部及び前記第2接触部の少なくとも一方は、環状の突部である、
請求項2に記載の浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記ケーシングは、プラスチック材料からなり、
前記フィルタ部材は、硬度が86以下である、
請求項2又は3に記載の浄水カートリッジ。
【請求項5】
前記第1カバー部及び前記第2カバー部の少なくとも一方は、前記フィルタ部材の軸方向に延びるリブを備え、
前記フィルタ部材は、該リブによって前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間を備えるように位置決めされた状態で収容されている、
請求項2~4のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
【請求項6】
前記第1接触部と前記フィルタ部材の第1面との間、及び前記第2接触部と前記フィル
タ部材の第2面との間に、弾性部材又はキャップを有さない、
請求項2~5のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
【請求項7】
前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水が、前記第1カバー部を介して前記フィルタ部材の前記空洞部に流入し、当該フィルタ部材を径方向外方に通過して前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に前記浄水として流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成される、
請求項2~6のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
【請求項8】
前記ケーシングは、前記フィルタ部材の外周面と前記流出部との間において、前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出した前記浄水の流れに対して抵抗となる第1抵抗部をさらに有する、
請求項7に記載の浄水カートリッジ。
【請求項9】
前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水が、前記第1カバー部を介して前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流入し、当該フィルタ部材を径方向内方に通過して前記フィルタ部材の前記空洞部に前記浄水として流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成される、
請求項2~6のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
【請求項10】
前記ケーシングは、前記フィルタ部材の前記空洞部と前記流出部との間において、前記空洞部に流出した前記浄水の流れに対して抵抗となる第2抵抗部をさらに有する、
請求項9に記載の浄水カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ部材及び該フィルタ部材を含む浄水カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ポット型浄水器用の浄水カートリッジを開示する。この浄水器では、原水が流入する水流入部が形成される蓋体と、浄水が流出する水流出部が形成されるケーシング本体とを備える。蓋体がケーシング本体に装着されている状態において、水流入部と水流出部との間に中空円筒状の成型浄水材が充填される。このような成形浄水材としては、粒状活性炭からなる成形体が使用される。
【0003】
また、特許文献2は、浄水カートリッジとして、繊維状活性炭であり弾力を有する筒状の濾材の下方端を、円板状の端板に設けた環状ビードに圧着して、上方に出口孔、底部に入口孔を有するケーシング内に配設し、濾材の上方端を、ケーシング内壁の出口孔のまわりに設けた環状ビードに圧着し、端板の位置をケーシングに対し固定する固定手段を設けて、濾材を端板とケーシング内壁との環状ビードで挟持させてなる活性炭フィルタを開示する。
【0004】
また、特許文献3は、通水入口と通水出口とを有し、その途中に吸着材と中空糸膜を順に配置した浄水カートリッジにおいて、両端が開放された筒状の前記中空糸膜が充填された中空糸膜ケースと、筒状で内部に通水路を形成して水が外から内方向に向かって流れる前記吸着材が充填された吸着材ユニットを有し、前記吸着材ユニットは、前記吸着材の片端面が水密的に支持されるように穴付キャップが、もう一方の端面には水密的に支持されるようにキャップが、各々設けられ、かつ前記穴付キャップ側が前記中空糸膜ケース接続側となるように配されており、前記穴付キャップと前記キャップが前記吸着材の内部の通水路を通るスリット筒を介して連結されており、前記中空糸膜ケースと前記吸着材ユニットが各々略同一の断面積を有して直列かつ水密的に接続されて設けられていることを特徴とする浄水カートリッジを開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6204820号公報
【特許文献2】実公平7-37682号公報
【特許文献3】特開2002-346550号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の浄水カートリッジでは、成型浄水材の中空部分に中央流路が形成され、成型浄水材とケーシング本体との間に外部流路が形成される。水流入部は、中央流路と連通接続する。原水は、水流入部から中央流路へ流入し、成型浄水材を径方向外方に通過し、外部流路を通り、水流出口から浄水として流出する。中央流路と外部流路とは、成型浄水材の上方側端面と蓋体の下方側端面とに密着する第1弾性部材、及び成型浄水材の下方側端面とケーシング本体の底面とに密着する第2弾性部材により隔てられる。これにより、原水と浄水の混合が防止される。該浄水カートリッジは、成型浄水材の端面、及び成型浄水材とケーシング及び蓋体との間のシールのため、弾性部材を必要とする。しかしながら、より簡易な構造で原水と浄水とを分離することのできる浄水カートリッジの開発が望まれていた。
【0007】
この点、特許文献2によれば、活性炭濾材の端面を端板とカバー内面に設けたリブで挟んで保持し、接着剤を用いていないので、接着剤への埋入、あるいは接着剤の吸い上げによって活性炭が吸着能力を失う部分がないこと、従って活性炭全量が有効な吸着作用をするので夾雑物などの吸着除去効率が高く小型化が可能であること、またリブの活性炭濾材への食込量により濾材端面と端板あるいはケーシンング内壁との間の隙間が調整可能であるから、同一寸法の濾材およびケーシングのものに関し、吸着能力と圧力損失についての特性を調整することができること、また接着工程不要で、構造簡単であり製造コストの低減となること等、が開示されている。
【0008】
また、特許文献3によれば、吸着材を固定する際、固定前の吸着材の円筒長手方向の厚みを、穴付キャップとキャップの間の距離より1~2mm程度大きくしておくこと、そうすることによって吸着材が圧縮され、その際に弾性を発揮し、固定時の確かな水封性が得られること、吸着材とキャップ(特許文献1の第1弾性部材及び第2弾性部材に相当)との間の中心方向への水スルーパスを遮断し、かつ吸着材にめりこんで、ずれ等の発生しない確実な固定をおこなうべく、キャップには、高さ0.5~1mmの円状の三角突起を設けること等が開示されている。
【0009】
しかしながら、本発明者等の検討によれば、特許文献2及び3の場合、フィルタ部材(活性炭濾材又は吸着材)の種類、特許文献2におけるリブの食込量、及び特許文献3における吸着材を固定する際のフィルタ部材の圧縮率によっては、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に当該遊離残留塩素除去性能を十分発揮できない、又は、クロロホルムのろ過能力を十分発揮できない場合がある、という問題があることを知得した。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題を解決し、特許文献1のような弾性部材を備えず、原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するためのフィルタ部材とを備える浄水カートリッジであって、フィルタ部材がケーシングにより軸方向に押圧する押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容される浄水カートリッジに用いられた場合に、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に遊離残留塩素除去性能を発揮することができ、クロロホルムのろ過能力を発揮し得るフィルタ部材、及び該フィルタ部材を備える浄水カートリッジを提供することを主な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は上記問題を解決すべく鋭意検討をおこなった。
図14は、out-inタイプのカートリッジ内の水の流れを説明する断面図である。カートリッジ1内の水の主な流れは、
図14中に示す矢印で表される。まず、原水が流入部207を通してカートリッジ1内に流入する。流入部207から流入した原水は、貫通孔234aを通過し、空間230内に一旦貯留される。空間230内に貯留された原水は、フィルタ部材3の側周部32を径方向外側から内側へと通過し、浄水として空洞部34へと流入する。空洞部34に流入した浄水は、流出部223からカートリッジ1の外部へ排出される。
【0012】
ここで、
図14の拡大図に示すように、本発明者等は、特許文献2及び3の場合に遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に当該遊離残留塩素除去性能を十分発揮できない原因として、ケーシング又はキャップのフィルタ部材に接する面と、フィルタ部材のケーシング又はキャップに接する面と、の間にわずかな空間ができ、原水がフィルタ部材を径方向に平行に通過せず、上記わずかな空間に迂回して通過してしまうことで、この部分を通過する原水が十分に濾過されず結果遊離残留塩素を十分に除去することができないこと、そして、当該現象はフィルタ部材が十分に水になじんでいない通水初期に生じやすいことを知得した。また、通常径方向に原水の流路が形成されるべきところ原水が迂回しショートパスする結果、原水が集中して通過する部分(ショートパスする流路の部分)のクロロホルムろ過性能が早期に低下し、本来フィルタ部材が有するクロロホルムろ過能力を発揮できないことを知得した。
【0013】
また、特許文献3では、前述のように、フィルタ部材(吸着材)を固定する際、固定前のフィルタ部材の円筒長手方向の厚みを、穴付キャップとキャップの間の距離より1~2mm程度大きくしておくこと、そうすることによってフィルタ部材が圧縮され、その際に弾性を発揮し、固定時の確かな水封性が得られることが記載されている。しかし、本発明者等は、当該フィルタ部材の硬さが低すぎると圧縮した場合に吸着材が座屈等変形しやすくなり、これに起因してキャップのフィルタ部材に接する面と、フィルタ部材のキャップに接する面と、の間にわずかな空間ができ、当該わずかな空間に迂回して通過しやすくなる場合があることを知得した。また、本発明者等は、当該フィルタ部材の圧縮応力が高すぎると十分に圧縮できず、フィルタ部材の圧縮による弾性が十分得られず、水封性が劣りやすくなり、結果遊離残留塩素を十分に除去することができない場合があることを知得した。
【0014】
そこで、本発明者等は、さらに検討を重ね、該フィルタ部材が、軸方向の両端に第1面と第2面を有し、当該第1面及び当該第2面の両方にシール剤を塗布することにより、特許文献2及び3の場合のように、原水がケーシング又はキャップのフィルタ部材に接する面とフィルタ部材のケーシング又はキャップに接する面との間のわずかな空間に迂回して通過してしまうことを防ぐことができることを突き止めた。また、本発明者等は、フィルタ部材がケーシングにより軸方向に押圧する押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容される浄水カートリッジに用いられた場合に、吸着材の圧縮による弾性を十分なものとするために、フィルタ部材の軸方向の硬さを特定の範囲のものとすることが重要であることを知得した。本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねることにより完成された発明である。
【0015】
すなわち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.繊維状活性炭を含む、空洞部を有する円筒状に形成されたフィルタ部材であって、前記フィルタ部材が、軸方向の両端に第1面と第2面を有し、前記第1面及び前記第2面の両方にシール剤が塗布されており、前記フィルタ部材は弾性を有しており、下記測定方法による前記フィルタ部材の軸方向の硬さが150N以上700N以下である、フィルタ部材。
<測定方法>
測定器として株式会社島津製作所製オートグラフAG-1000を用い、前記フィルタ部材を軸方向に速度5mm/minで1mm圧縮したときにかかる力を前記硬さとする。項2.原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するための、項1に記載のフィルタ部材と、を備え、前記ケーシングは、前記フィルタ部材の第1面をカバーする第1カバー部と、前記フィルタ部材の第2面をカバーする第2カバー部と、前記フィルタ部材の外周面を覆う側壁部と、を備え、前記第1カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記フィルタ部材の第1面に環状に接触し、前記フィルタ部材を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部が形成され、前記第2カバー部には、前記空洞部の外周を囲むように前記フィルタ部材の第2面に環状に接触し、前記フィルタ部材を軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部が形成され、前記フィルタ部材は、前記第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容されている、浄水カートリッジ。
項3.前記第1接触部及び前記第2接触部の少なくとも一方は、環状の突部である、
項2に記載の浄水カートリッジ。
項4.前記ケーシングは、プラスチック材料からなり、前記フィルタ部材は、硬度が86以下である、項2又は3に記載の浄水カートリッジ。
項5.前記第1カバー部及び前記第2カバー部の少なくとも一方は、前記フィルタ部材の軸方向に延びるリブを備え、前記フィルタ部材は、該リブによって前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間を備えるように位置決めされた状態で収容されている、項2~4のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
項6.前記第1接触部と前記フィルタ部材の第1面との間、及び前記第2接触部と前記フィルタ部材の第2面との間に、弾性部材又はキャップを有さない、項2~5のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
項7.前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水が、前記第1カバー部を介して前記フィルタ部材の前記空洞部に流入し、当該フィルタ部材を径方向外方に通過して前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に前記浄水として流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成される、項2~6のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
項8.前記ケーシングは、前記フィルタ部材の外周面と前記流出部との間において、前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流出した前記浄水の流れに対して抵抗となる第1抵抗部をさらに有する、項7に記載の浄水カートリッジ。
項9.前記ケーシングの前記流入部から流入した前記原水が、前記第1カバー部を介して前記フィルタ部材の外周面と前記ケーシングの側壁部との間の空間に流入し、当該フィルタ部材を径方向内方に通過して前記フィルタ部材の前記空洞部に前記浄水として流出し、前記流出部から外部に排出されるように構成される、項2~6のいずれか1項に記載の浄水カートリッジ。
項10.前記ケーシングは、前記フィルタ部材の前記空洞部と前記流出部との間において、前記空洞部に流出した前記浄水の流れに対して抵抗となる第2抵抗部をさらに有する、項9に記載の浄水カートリッジ。
【発明の効果】
【0016】
本発明のフィルタ部材によれば、繊維状活性炭を含む、空洞部を有する円筒状に形成されたフィルタ部材であって、該フィルタ部材が、軸方向の両端に第1面と第2面を有し、前記第1面及び前記第2面の両方にシール剤が塗布されており、前記フィルタ部材は弾性を有しており、下記測定方法による前記フィルタ部材の軸方向の硬さが150N以上700N以下であることから、特許文献1のような弾性部材を備えずとも、原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するためのフィルタ部材とを備える浄水カートリッジであって、フィルタ部材がケーシングにより軸方向に押圧する押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容される浄水カートリッジに用いられた場合に、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に遊離残留塩素除去性能を発揮することができ、クロロホルムのろ過能力を発揮し得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】in-outタイプカートリッジの外観斜視図。
【
図6】in-outタイプカートリッジ内の水の流れを説明する断面図。
【
図8】
図7の第1抵抗部周辺の構成を説明する断面図。
【
図9】out-inタイプのカートリッジの外観斜視図。
【
図10】out-inタイプのカートリッジの断面図。
【
図11】out-inタイプのカートリッジ内の水の流れを説明する断面図。
【
図13A】in-outタイプカートリッジが使用されたポット型浄水器の断面模式図。
【
図13B】out-inタイプカートリッジが使用されたポット型浄水器の断面模式図。
【
図14】out-inタイプのカートリッジ内における、従来技術の水の流れを説明する断面図。
【
図15】繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されている、フィルタ部材3の一例を示す模式的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<浄水カートリッジ>
以下、本発明に係る浄水カートリッジの第1実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は本実施形態に係る浄水カートリッジ(以下、単にカートリッジと称することがある)1の外観斜視図、
図3Aは
図1の正面図である。以下では、説明の便宜のため、
図3Aの上下方向を「上下」、
図3Aの左右方向を「左右」または「水平」、
図3Aの紙面方向を「前後」と称し、これを基準に説明を行う。
【0019】
<1.浄水カートリッジの概要>
カートリッジ1は、原水が自重によりカートリッジ1を通過するポット型(サーバー型)の浄水器に主として用いられる。
図13Aに浄水器の一例を示す。同図に示すように、この浄水器100は、上部に開口S1を有する筐体101を備える。筐体101は、内側に、上部が開口したタンク102を有する。タンク102は、原水を貯留するための部分であり、上部の開口S2からタンク102に原水を注ぐことができる。タンク102の底部には開口S4が形成されており、カートリッジ1は、パッキン104とともに開口S4の周縁部をシールするように取り付けられる。タンク102内の原水は、カートリッジ1内部に流入する。なお、開口S2は、開口S1よりも小さく形成されるため、開口S1は、開口S2と開口S3とに区切られる。
【0020】
原水は、カートリッジ1内部を通過した後、カートリッジ1の下方から浄水として流出し、タンク102の下方のサーバー空間103に貯められる。開口S3は、サーバー空間103から浄水を取り出すための取り出し口として機能する。
【0021】
本実施形態に係るカートリッジ1は、
図1~4に示すように、全体として筒状であり、典型的には略円筒形状の外観を有する。カートリッジ1は、ケーシング2と、このケーシング2の内部に収容される略円筒状のフィルタ部材3とを備える。本実施形態のカートリッジ1は、フィルタ部材3の空洞部に流入した原水が、径方向外方にフィルタ部材3を通過し、フィルタ部材3の外周面320とケーシング2の側壁部との間の空間に流出する、in-outタイプのカートリッジである。
【0022】
フィルタ部材3は、原水をろ過して浄水とするための部材である。
図2に示すように、フィルタ部材3は中央に上面視略円形の空洞部34を有し、軸方向の両端に第1面31と第2面33とをそれぞれ有する。フィルタ部材3は、第1面31及び第2面33に連続し、軸方向に延びる側周部32をさらに有する。フィルタ部材3は、第1面31が上方に、第2面33が下方に向くような向きでケーシング2に収容される。この状態を収容状態と称する。フィルタ部材3の外径は、ケーシング2の側壁部21の内径よりも小さくなるように構成される。これにより、
図4に示すように、収容状態において、フィルタ部材3の外周面320とケーシング2の側壁部21との間に環状の空間230が形成される。
【0023】
<2.ケーシング>
ケーシング2は、フィルタ部材3の第1面31をカバーする第1カバー部と、フィルタ部材3の第2面33をカバーする第2カバー部と、フィルタ部材3の外周面320を覆う側壁部とを備える。
図2に示すように、本実施形態のケーシング2は、フィルタ部材3の第1面31をカバーする第1カバー部20と、フィルタ部材3の第2面33をカバーする第2カバー部22とからなり、第1カバー部20と第2カバー部22とは、後述するように、着脱可能又は着脱不能に連結される。側壁部21は、後述する第1カバー部20の側壁部200と第2カバー部22の側壁部220とから構成される。以下、第1カバー部20と第2カバー部22とが連結された状態を連結状態と称する。連結状態において、ケーシング2内部にはフィルタ部材3を収容するための空間が形成される。
【0024】
第1カバー部20は、略円筒形状の側壁部200と、側壁部200に囲まれた流入部207とを有する。流入部207は、カートリッジ1の内外を連通させる部分である。すなわち、
図13Aに示す状態においては、タンク102内の原水は、流入部207を介してカートリッジ1の内部に流入する。
図4に示すように、流入部207は、側壁部200から連続し、下方へ窪んだ平底容器状に形成され、ケーシング2の内部空間に対向する面203を有する。面203の中央には、原水がカートリッジ1内へ流入するための円形の貫通孔207aが形成される。収容状態において、フィルタ部材3の空洞部34は、貫通孔207aの概ね直下に位置し、原水は、貫通孔207aからフィルタ部材3の空洞部34に流入する。収容状態における第1カバー部20は、面203において、フィルタ部材3の第1面31に密着することができる。特に、本発明に係る浄水カートリッジは、後述するようにフィルタ部材3が第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング2内部に収容される。この構成により、特許文献1に記載の浄水カートリッジのように、成型浄水材とケーシング及び蓋体との間に弾性部材やキャップを介さずともフィルタ部材3の空洞部34に流入した原水が、第1面31と第1カバー部20との隙間、及び第2面33と第2カバー部22との隙間を通過するのを防止することができ、原水がフィルタ部材3を通過するのを促進することができる。
【0025】
側壁部200は、面203の形成される位置から上下方向に延びるよう形成される。側壁部200の外側であって、貫通孔207aよりも上の位置には、カートリッジ1が開口S4の周縁部に取り付けられるためのフランジ204が形成される。また、フランジ204の上下方向の中心には、周方向に延びる溝210が形成される。溝210は、カートリッジ1が開口S4の周縁部に取り付けられる際に、カートリッジ1と開口S4の周縁部との隙間をシールするパッキン104が嵌められるための部分である。
【0026】
側壁部200のフランジ204よりも下で、かつ面203よりも上の位置には、通気口205が形成される。通気口205は、ケーシング2の内外を連通させる。原水がカートリッジ1内に流入すると、カートリッジ1(ケーシング2)内部の空気が通気口205を介して排出されるため、カートリッジ1を通過する水の動きがよりスムーズになる。通気口205は、カートリッジ1が開口S4の周縁部に取り付けられた状態においてサーバー空間103内に位置し、かつフィルタ部材3の第1面31よりも上方に位置するように配置される。
【0027】
図2に示すように、側壁部200の外側であって通気口205よりも下の位置には、側壁部200の厚みが他の部分より薄い薄肉領域Rが形成される。薄肉領域R上には、径方向外側に突出する略四角形の爪部206が、周方向に間隔を空けて複数形成される。爪部206は、後述する第2カバー部22の窓部222と係合することにより、第1カバー部20と第2カバー部22とを連結可能にする。なお、爪部206と窓部222とによる連結手段は、あくまでも第1カバー部20と第2カバー部との連結手段の一例として挙げたものであり、連結手段は特にこれに限定されず、他の例として、例えば、溶着若しくは接着による連結、又はネジ嵌合による連結等が挙げられる。
【0028】
図4に示すように、第1カバー部20の面203には、面203からケーシング2の内部空間に向かって突出する環状の第1突部208が形成される。第1突部208は、収容状態では、フィルタ部材3の空洞部34を囲むように環状にフィルタ部材3の第1面31に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる。この場合、第1突部208が、空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第1面31に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となる。本発明の浄水カートリッジにおいて、面203は突部を有さないものでもあり得る。例えば、面203は、平面状であり得る。この場合、面203が、空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第1面31に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となる。第1突部208の断面形状は特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略半円形状、略半楕円形状等が挙げられる。略三角形状、略四角形状の角については、丸みを帯びたものであってもよい。
【0029】
第2カバー部22は、底部227と、底部227から連続して立ち上がる側壁部220とを有し、全体として略円筒形の外観を有する。
図3Dに示すように、底部227の周縁部には、浄水がカートリッジ1外に排出されるための貫通孔223aが周方向に間隔を空けて複数形成される。複数の貫通孔223aをまとめて流出部223と称する。
図4に示すように、収容状態において、貫通孔223aは、フィルタ部材3の外周面320とケーシング2の側壁部21との間の空間230の概ね直下にそれぞれ位置するように形成される。
【0030】
図4に示すように、収容状態における第2カバー部22は、面221においてフィルタ部材3の第2面33に接触することができる。特に、本発明に係る浄水カートリッジは、後述するようにフィルタ部材3が第1接触部及び前記第2接触部の押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング2内部に収容されることから、特許文献1のように成型浄水材とケーシング及び蓋体との間に弾性部材を介さずともフィルタ部材3の空洞部34に流入した原水が、第1面31と第1カバー部20との隙間、及び第2面33と第2カバー部22との隙間を通過するのを防止することができ、原水がフィルタ部材3を通過するのを促進することができる。ここで、面221は、ケーシング2の内部空間に対向する底部227の面である。面221には、面221からケーシング2の内部空間に向かって突出する環状の第2突部224が形成される。第2突部224は、収容状態では、フィルタ部材3の空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第2面33に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる。この場合、第2突部224が、空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第2面33に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部となる。第2突部224の断面形状は特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略半円形状、略半楕円形状等が挙げられる。略三角形状、略四角形状の角については、丸みを帯びたものであってもよい。
【0031】
側壁部220は、第1カバー部20の側壁部200と概ね同じ径の略円筒状に形成される。側壁部220の上部には、爪部206と対応する周方向の位置に、略四角形の開口である窓部222が爪部206と同数だけ形成される。これにより、薄肉領域Rを第2カバー部22の上側から第2カバー部22の内部に差し込み、爪部206と窓部222とを1対1に対応させて係合させると、第1カバー部20と第2カバー部22とが連結した連結状態とすることができる。連結状態において、側壁部200及び側壁部220とは概ね面一となり、共にケーシング2の側壁部21を形成する。なお、窓部222と爪部206との係合を外すことで、第1カバー部20から第2カバー部22を取り外すこともできる。つまり、第1カバー部20と第2カバー部22とは、着脱可能に連結することができるし、着脱不能に連結することもできる。
【0032】
第1カバー部20の材料としては、プラスチックが挙げられる。当該プラスチックとしては、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PLA(ポリ乳酸)樹脂がある。より具体的には、PP(ポリプロピレン)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)からなる群から選択される。第1カバー部20の硬度は、95~100であり、後述するフィルタ部材3の硬度よりも高い。なお、ABS樹脂の硬度は95、PPの硬度は100、PETの硬度は97である。
【0033】
第2カバー部22の材料としては、プラスチックが挙げられる。当該プラスチックとしては、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、AS樹脂(アクリロニトリルスチレン)、PS(ポリスチレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PLA(ポリ乳酸)樹脂がある。より具体的には、PP(ポリプロピレン)、ABS樹脂(アクリロニトリルブタジエンスチレン)からなる群から選択される。第2カバー部22の硬度は、95~100であり、後述するフィルタ部材3の硬度よりも高い。なお、ABS樹脂の硬度は95、PPの硬度は100、PETの硬度は97である。
【0034】
第1カバー部20の硬度がフィルタ部材3の硬度よりも高く、かつ第2カバー部22の硬度がフィルタ部材3の硬度よりも高いのであれば、第1カバー部20と第2カバー部22とは同じ材料から形成されてもよいし、異なる材料から形成されてもよい。なお、本明細書中の硬度の測定は、測定機器はTECLOCK製硬度計GS701Gにて、JIS S 6050「プラスチック字消し」にて規定されている方法にて実施し、N=5での平均値を硬度とする。
【0035】
図5Aはケーシング2の右側面図であり、
図5Bは
図5AのB-B断面図である。また、
図5Cはケーシング2の右側面図であり、
図5Dは
図5CのD-D断面図である。
図5で説明するように、第1カバー部20及び第2カバー部22のうち少なくとも一方は、内壁面にフィルタ部材3の位置決めのためのリブ240又は241を備えていてもよい。
図5Bに示すように、第1カバー部20の内壁面には、ケーシング2の内部空間に向かって突出し、上下方向(フィルタ部材3の軸方向)に延びるリブ240が形成される。
図5Dに示すように、リブ240は、第1カバー部20の内壁面に4つ形成され、周方向に概ね等間隔に配置される。なお、
図5B及び
図5Dに示すリブ240はあくまでも一例である。リブ240が形成される位置、リブ240の形状及びリブ240の数等は、
図5B及び
図5Dに示す態様に限定されず、適宜変更することができる。
【0036】
図5Eはケーシング2の右側面図であり、
図5Fは
図5EのF-F断面図である。
図5Eに示すように、第2カバー部22の内壁面には、ケーシング2の内部空間に向かって突出し、上下方向(フィルタ部材3の軸方向)に延びるリブ241が形成される。
図5Fに示すように、リブ241は、第2カバー部22の内壁面に4つ形成され、周方向に概ね等間隔に配置される。
図5Gは、収容状態における
図5EのF-F断面図である。
図5Gに示すように、リブ241は、収容状態において、フィルタ部材3の中心がケーシング2の中心と概ね揃うようにフィルタ部材3を位置決めする。なお、
図5E及び
図5Fに示すリブ241はあくまでも一例である。リブ241が形成される位置、リブ241の形状及びリブ241の数等は、
図5B及び
図5Fに示す態様に限定されず、適宜変更することができる。
【0037】
リブ240、241は、収容状態において、フィルタ部材3の外周面320とケーシング2の側壁部との間に空間230が生じ、フィルタ部材3の中心軸がケーシング2の中心軸と概ね揃うようにフィルタ部材3を位置決めする。このようにフィルタ部材3がケーシング2に対して適切な位置に位置決めされることで、空洞部34、流入部207及び流出部223との相対位置が適切に維持されるとともに、浄水のための空間230が適切に確保される。これにより、水がカートリッジ1内を均一に移動するので、水浄化の効率が維持される。
【0038】
ケーシング2は、フィルタ部材3の外周面320と流出部223との間において、空間230に流出した浄水の流れに対して抵抗となる第1抵抗部をさらに有してもよい。第1抵抗部は、フィルタ部材3から流出する浄水の圧力がある程度に弱まると、フィルタ部材3から流出した浄水の流れをせき止める。その結果、浄水が液滴となって流出部223から滴下することが妨げられる。
【0039】
図7に、第1抵抗部の一例を示す。
図7に示す例では、第2カバー部22の下部において、流出部223を構成する複数の開口223bが周方向に間隔を空けて形成されている。開口223bは、第2カバー部22の側方及び下方に向かって開口している。底部227の周縁部には、面221から上方に向かって突出するリブ250が、開口223bの周方向の位置に合わせてそれぞれ形成されている。
【0040】
図8に、リブ250周辺の拡大断面図を示す。
図8に示すように、リブ250は、フィルタ部材3の外周面320よりも径方向外方に位置するとともに、開口223bの下部分を径方向内方から塞ぐように構成されている。これにより、リブ250は、第1抵抗部として機能する。
【0041】
底部227の面221を基準としたリブ250の最大高さは、例えばフィルタ部材3のろ過容量に応じて、適宜設定することができる。リブ250の最大高さは、浄水の圧力が一定以上である場合に全体的な水の流れに全くか殆ど影響を与えず、浄水の圧力が流出部223から滴下する程度である場合に、浄水の流出をせき止めることが可能な高さであることが好ましい。
【0042】
さらに、リブ250は、ケーシング2の周方向に複数形成されることにより、フィルタ部材3の位置決め用のリブを兼ねてもよい。つまり、フィルタ部材3の位置決めのためのリブ240及びリブ241のうち少なくとも一方は、リブ250と兼ねられ、省略されてもよい。
【0043】
<3.フィルタ部材>
上述したように、フィルタ部材3は、空洞部34に流入した原水を、側周部32を径方向外方に通過させることによってろ過し、浄水とするための部材である。フィルタ部材3は、繊維状活性炭を含む、空洞部34を有する円筒状に形成されたフィルタ部材であって、該フィルタ部材が、軸方向の両端に第1面31と第2面33を有し、前記第1面31及び前記第2面33の両方にシール剤が塗布されており、前記フィルタ部材は弾性を有しており、下記測定方法による前記フィルタ部材の軸方向の硬さが150N以上700N以下である。
【0044】
また、フィルタ部材3をケーシングに収容する前の状態(すなわち、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる前の状態)の第1面31と第2面33との距離L1(
図2参照)は、連結状態における第1突部208の先端部209と、第2突部224の先端部225との間の距離L3(すなわち、第1接触部と第2接触部との間の距離L3、
図4参照)よりも長くなる。これにより収容状態のフィルタ部材3の第1面31においては、空洞部34の径方向外方の領域に第1突部208が食い込んで係合し、フィルタ部材3を軸方向に圧縮する力がフィルタ部材3に加わり、第1面31と第1カバー部20の面203との間を遮断する。同様に、収容状態のフィルタ部材3の第2面33においては、空洞部34の径方向外方の領域に第2突部224が食い込んで係合し、フィルタ部材3を軸方向に圧縮する力がフィルタ部材3に加わり、第2面33と第2カバー部22の面221との間を遮断する。これらによって、フィルタ部材3の両端の面を介して水が通過することが抑制され、空洞部34の原水と、空間230の浄水とが分離される。
【0045】
すなわち、第1接触部である第1突部208が、空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第1面31に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させ、第2接触部である第2突部224が、空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第2面33に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる。これにより、特許文献1に記載の浄水カートリッジのように成型浄水材とケーシング及び蓋体との間に弾性部材やキャップを介さずとも、フィルタ部材の空洞部に流入した原水が、第1面31と第1カバー部との隙間、及び第2面33と第2カバー部との隙間を通過するのを防止することができ、原水がフィルタ部材3を通過するのを促進することができる。
【0046】
フィルタ部材3の長さL1の、収容状態における接触部間における圧縮率(L3/L1×100(%))は、98%以下であることが好ましく、96~98%がより好ましく、97~98%がより好ましく挙げられる。また、収容状態におけるフィルタ部材3の圧縮率(L3/L1×100(%))が上記範囲であるとき、フィルタ部材3の長さL1に対する距離L2(連結状態における第1カバー部20の面203と第2カバー部22の面221との距離)の比率(L2/L1×100(%))は、収容状態において、接触部の面積を減少させ、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる圧力を増加しやすくする観点から、例えば、98%以上が挙げられ、98~101%が好ましく挙げられ、99~101%がより好ましく挙げられる。
【0047】
カートリッジ1の内部を通過する水の主な流れは、
図6中に示す矢印で表される。まず原水が第1カバー部20、すなわち流入部207を介してカートリッジ1内に流入する。カートリッジ1内に流入した原水は、空洞部34内に流入し、一旦貯留される。ここで、空洞部34の上側周縁及び下側周縁には、それぞれ第1突部208及び第2突部224が係合して、フィルタ部材3を軸方向に押圧し、弾性変形させている。このため、原水は第1面31及び第2面33を介して空間230へと流出しない。空洞部34内に貯留された原水は、側周部32を径方向外方に通過し、浄水として空間230へ流出する。続いて、浄水は空間230から流出部223を介してカートリッジ1の外部へ排出される。
【0048】
<3-1.繊維状活性炭>
フィルタ部材3は、繊維状活性炭を含む。繊維状活性炭の比表面積としては、遊離残留塩素の除去性能及びクロロホルムろ過能力と、フィルタ部材としたときの、浄水カートリッジ1の第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形されたときの弾性と、をより両立する観点から、500~1800m2/gが好ましく、1000~1800m2/gがより好ましい。なお、本発明において、比表面積は、77.4Kにおいて窒素吸着等温線に基づいて算出される値である。具体的には、次のようにして窒素吸着等温線が作成される。測定するサンプルを77.4K(窒素の沸点)に冷却し、窒素ガスを導入して容量法により窒素ガスの吸着量V[cc/g]を測定する。このとき、導入する窒素ガスの圧力P[hPa]を徐々に上げ、窒素ガスの飽和蒸気圧P0[hPa]で除した値を相対圧力P/P0として、各相対圧力に対する吸着量をプロットすることにより窒素吸着等温線を作成する。窒素ガスの吸着量は、市販の自動ガス吸着量測定装置(例えば、商品名「AUTOSORB-1-MP」(QUANTCHROME製)など)を用いて実施できる。本発明では、窒素吸着等温線に基づき、BET法に従って比表面積を求める。この解析は、上記装置に付属する解析プログラム等の公知の手段を用いることができる。
【0049】
繊維状活性炭の平均繊維径は5~30μmであることが好ましく、10~25μmであることがより好ましい。このような平均繊維径とすることにより、遊離残留塩素の除去性能及びクロロホルムろ過能力と、フィルタ部材としたときの、浄水カートリッジ1の第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形されたときの弾性と、の両立を一層図りやすくなる。本発明において、繊維状活性炭の平均繊維径は、JIS K 1477:2007 7.3.1に準じ、反射顕微鏡によって測定して算出される。また、繊維状活性炭のアスペクト比としては、50以上が挙げられる。
【0050】
本発明のフィルタ部材3における、繊維状活性炭の含有割合としては、遊離残留塩素の除去性能及びクロロホルムろ過能力と、フィルタ部材としたときの、浄水カートリッジ1の第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形されたときの弾性と、を向上させつつ、上記フィルタ部材3を押圧したときの繊維状活性炭の脱落をしにくくする観点から、60~85質量%が好ましく、72~85質量%がより好ましい。
【0051】
<3-2.熱融着性繊維>
本発明のフィルタ部材3は、フィルタ部材3を押圧したときの繊維状活性炭の脱落をしにくくする観点から、熱融着性繊維を含有することが好ましい。熱融着性繊維とは、加熱によって融着特性を示す繊維である。
【0052】
本発明で使用される熱融着性繊維の種類としては、特に制限されないが、例えば、融点又は軟化点の異なる2成分以上のポリマーで形成された熱融着性繊維が挙げられる。熱融着性繊維の好適な例として、高融点ポリマーを芯成分、熱融着性成分となる低融点ポリマーを鞘成分とする芯鞘構造を有する複合繊維が挙げられる。芯鞘構造を有する複合繊維としては、例えば、芯部がポリプロピレン且つ鞘部が変性ポリエチレンからなる複合繊維、芯部がポリエチレンテレフタレート且つ鞘部がポリオレフィンからなる複合繊維、芯部がポリエチレンテレフタレート且つ鞘部が低融点ポリエステルからなる複合繊維等が挙げられる。これらの熱融着性繊維は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。ここで、「低融点」とは、示差操作熱量計(DSC)にて測定される融点(Tm)が160℃程度以下、好ましくは140℃程度以下、である特性を示し、「高融点」とは、DSCにて測定される融点(Tm)が200℃程度以上、好ましくは220℃程度以上である特性を示す。また、熱融着性繊維における熱融着性成分の融点又は軟化点としては、例えば、80~130℃が挙げられ、100~120℃が好ましく挙げられ、110~120℃がより好ましく挙げられる。
【0053】
また、熱融着性繊維にポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、低融点ポリエステル等)が含まれる場合、該ポリエステル樹脂は、Sb含有量が30mg/kg以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂は、通常Sbが重合触媒として用いて製造されるところ、例えば、重合触媒を非Sb、例えばTi、Ge、Al系触媒等を用いて製造されたものは、Sb含有量を前記範囲内とすることができる。このようなSb含有量のポリエステル樹脂を含む熱融着性繊維を使用することにより、浄水カートリッジとして使用した際の鉛流出をより一層防ぐことができ、フィルタ部材としてより好ましいものとすることができる。なお、本発明において、ポリエステル樹脂中のSb含有量は、湿式酸化後に誘導結合プラズマ質量分析計(ICP-MS)にて定量分析される値である。
【0054】
熱融着性繊維の繊度については、特に制限されないが、例えば、0.5~5.0dtex、好ましくは0.8~2.5dtexが挙げられる。
【0055】
熱融着性繊維の平均繊維長については、特に制限されないが、例えば、1~10mm、好ましくは4~7mmが挙げられる。
【0056】
フィルタ部材3における熱融着性繊維の含有割合については、特に制限されないが、例えば、5~40質量%、好ましくは5~20質量%、更に好ましくは5~15重量%が挙げられる。
【0057】
<3-3.その他の成分>
本発明のフィルタ部材3は、前記繊維状活性炭及び熱融着性繊維以外に、必要に応じて他の成分が含まれていてもよい。該他の成分として、例えば、鉛を除去し得る成分、フィルタ部材の、浄水カートリッジ1の第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形されたときの弾性を向上させる成分等が挙げられる。
【0058】
鉛を除去し得る成分としては、イオン交換繊維、イオン交換樹脂、キレート繊維、キレート樹脂、ケイ酸チタニウム、ゼオライト等が挙げられる。これらの成分は1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明のフィルタ部材3において鉛を除去し得る成分を含有させる場合、その含有割合としては、例えば、1~20質量%、好ましくは5~15質量%が挙げられる。
【0059】
フィルタ部材の、浄水カートリッジ1の第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形されたときの弾性を向上させる成分としては、例えば、パルプが挙げられる。パルプとしては、木材パルプや、合成繊維がフィブリル化された合成パルプ等が挙げられる。具体的には、セルロース系パルプ、アクリル系パルプ、ポリエチレン系パルプ等が挙げられる。これらのパルプの濾水度としては、JIS P 8121-2:2012に準じて測定する濾水度が10~200mLが好ましく挙げられる。これらのフィルタ部材3の上記弾性を向上させる成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明のフィルタ部材3において上記弾性を向上させる成分を含有させる場合、その含有割合としては、例えば、1~8質量%が挙げられる。
【0060】
<3-4.フィルタ部材>
フィルタ部材3の形態としては、特に制限されないが、例えば、以下のものが挙げられる。
(1)繊維状活性炭を含むスラリーを調製し、該スラリーを、吸引用小孔を有する成型用の型枠に流し込み、吸引用小孔を通じて吸引しながら濾過して予備成型体とし、該予備成型体を乾燥する方法(湿式成型法又はスラリー吸引法)により製造されるフィルタ部材(以下、「スラリー吸引フィルタ部材」と略することがある。)。この場合、得られるフィルタ部材は、繊維状活性炭と、前述したパルプによって絡み合って形状保持されるものが挙げられる。
(2)繊維状活性炭を含み、フィルタ部材3が、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されており、前記活性炭成型体は、前記シートの長手方向がフィルタ部材3の軸方向に対して垂直な方向となるように備えられている。
【0061】
図15は、繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されている、フィルタ部材3の一例を示す模式的斜視図である。
図15において、フィルタ部材3は、上記シートが渦巻状に捲回された状態で成型されており、フィルタ部材3は、該シートの長手方向がフィルタ部材3の軸方向(紙面の上下方向)に対して垂直な方向となるように配置される。
図15において、フィルタ部材3は、該シートの表面又は裏面がフィルタ部材の外周面320を形成し、該シートの長手方向端部(耳)が渦巻状に並んでフィルタ部材3の第1面31及び第2面33を形成している。
図15においては、フィルタ部材3の中心部に軸方向に連通する空洞部34を備える、円筒状のフィルタ部材の例を示している。浄化する水は、フィルタ部材3の径方向に通水される。このように、不織布シートの長手方向端部が複数層並んでフィルタ部材3の第1面31及び第2面33を形成することにより、フィルタ部材3の密度を過度に高くせずとも、浄水カートリッジ1の第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形されたときの弾性を優れたものとしやすくなる。また、不織布シートとしては、湿式抄紙不織布、乾式不織布とすることが挙げられるが、後述するフィルタ部材3の好ましい密度とよりしやすくなる観点から湿式抄紙不織布とすることが好ましい。
【0062】
また、本発明のフィルタ部材3は、軸方向の両端に第1面31と第2面33とを有し、第1面31及び第2面33の両方にシール剤が塗布されている。
図15に示す例において、斜線で示す部分は、シール剤がフィルタ部材3に含浸、塗布された状態で含まれる部分である。すなわち、
図15に示す例では、シール剤は、フィルタ部材3の第1面31と第2面33に塗布され、さらに、側周部32の一方の端部32a及び他方の端部32bにおける空隙、に含浸された状態で含まれ、フィルタ部材3を構成する材料間の隙間、例えば複数の繊維状活性炭同士の隙間を埋めている。また、
図15において、シール剤は、端部32aにおける外周面及び内周面、並びに端部32bにおける外周面及び内周面に塗布された状態で含まれる。
【0063】
本発明のフィルタ部材3においては、第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布することにより、特許文献2及び3の場合のように、ケーシング又はキャップのフィルタ部材に接する面と、フィルタ部材のケーシング又はキャップに接する面と、わずかな空間に迂回して通過してしまうことを防ぐことができる。さらに、
図15に示すように、シール剤が、側周部32の一方の端部32a及び他方の端部32bにおける空隙、に含浸された状態で含まれ、端部32aにおける外周面及び内周面、並びに端部32bにおける外周面及び内周面に塗布された状態で含まれることにより、フィルタ両端部とシール剤の接着を強固にすることができ、両端からの水のショートパスをより低下させることができる。
【0064】
図15において、フィルタ部材3の端部32aの長さLa、及び端部32bの軸方向の長さLbとしては、例えば、0.1~2.0mmが挙げられ、0.4~1.2mmが好ましく挙げられる。また、フィルタ部材3の軸方向長さL1に対する、上述した長さLaと長さLbの和の割合(=(La+Lb)/L1)としては、0.003~0.06が挙げられ、0.01~0.04が好ましく挙げられる。また、フィルタ部材3の端部32aにおける第1面の単位面積あたりのシール剤の含有量、及び端部32bにおける第2面の単位面積あたりのシール剤の含有量としては、0.03~0.10g/cm
2が好ましく挙げられる。
【0065】
本発明のフィルタ部材3において、第1面31及び第2面33の両方に塗布されるシール剤としては、熱可塑性樹脂を含むものが挙げられ、熱可塑性樹脂からなるホットメルト接着剤が挙げられる。当該熱可塑性樹脂の融点又は軟化点としては特に制限されないが、フィルタ部材3が前述した熱融着性繊維を含有する場合は、当該熱融着性繊維の熱融着性成分(高融点ポリマーを芯成分、低融点ポリマーを鞘成分とする芯鞘構造を有する複合繊維の場合は低融点ポリマー)の融点又は軟化点よりも低いことが好ましく、シール剤の融点又は軟化点が熱融着性繊維の熱融着性成分の融点又は軟化点よりも5℃以上低いことがより好ましい。具体的な融点又は軟化点としては、例えば、110℃以下が挙げられ、70~105℃が好ましく挙げられる。
【0066】
本発明のフィルタ部材3において、シール剤に含まれる熱可塑性樹脂の種類としては、弾性に優れるものが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、線状超低密度ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸エステル共重合体、エチレン-メタクリル酸エステル共重合体等のオレフィン系重合体、熱可塑性ポリウレタン系樹脂、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-エチレンブチレン-スチレンブロック共重合体等、ハードセグメント(硬質相)にポリスチレン樹脂を用い、ソフトセグメント(軟質相)にポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリオレフィンゴムを用いたスチレン系熱可塑性エラストマーが挙げられる。中でも、より熱安定性に優れるという観点からオレフィン系重合体が好ましく、エチレン-酢酸ビニル共重合体がより好ましい。
【0067】
本発明のフィルタ部材3は、下記測定方法によるフィルタ部材3の軸方向の硬さが150N以上700N以下である。
<測定方法>
測定器として株式会社島津製作所製オートグラフAG-1000を用い、前記フィルタ部材を軸方向に速度5mm/minで1mm圧縮したときにかかる力を前記硬さとする。
【0068】
本発明のフィルタ部材3は、上記硬さとすることにより、フィルタ部材がケーシングにより軸方向に押圧する押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容される浄水カートリッジに用いられた場合に、フィルタ部材の圧縮による弾性を十分なものとすることができ、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に遊離残留塩素除去性能を発揮することができ、クロロホルムろ過能力を発揮し得る。上記硬さは、より低圧力で軸方向に押圧することでケーシングにより押圧するときの作業性をより向上させる観点から、150N以上400N以下が好ましい。
【0069】
また、本発明のフィルタ部材3は、座屈強度又は破壊強度が前述した硬さより30N以上高いことが好ましい。これにより、フィルタ部材がケーシングにより軸方向に押圧する押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容される際に、フィルタ部材3のシワより等の変形や破壊を防ぎ易くなり、安定した通水性や遊離残留塩素除去性能、及び優れたクロロホルムろ過能力を発揮しやすくすることができる。
<測定方法>
測定器として株式会社島津製作所製オートグラフAG-1000を用い、前記フィルタ部材を軸方向に速度5mm/minで圧縮したときの座屈強度(最初の降伏点)を前記座屈強度とする。
【0070】
本発明のフィルタ部材は、下記測定方法による当該フィルタ部材の軸方向のリブ押し時の硬さが180N以上630N以下であることが好ましく、180N以上400N以下がより好ましい。
<測定方法>
測定に用いるリブ部材として、直径が、測定するフィルタ部材の第1面の外径と同一であり、厚さが1.5mmである円板であって、円板の一方の面上に、環状のリブを設けた円板を準備する。なお、当該リブは、材料として東レ社製ABSを用い、高さが1mmであり、断面形状は三角形状であって、該三角形の頂点(すなわち、リブの先端部)の位置が、フィルタ部材の第1面外径と第1面内径の平均値(=(第1面外径+第1面内径)/2)となるようにし、該三角形の底辺の長さが1.0mmとなるようにする。そして、当該リブ部材を測定するフィルタ部材の第1面上に、それぞれの外径が合わさるようにセットし、測定器として株式会社島津製作所製オートグラフAG-1000を用い、前記フィルタ部材を前記リブ部材を介して軸方向に速度5mm/minで1mm圧縮したときにかかる力をリブ押し時の硬さとする。
【0071】
本発明のフィルタ部材3の密度としては、特に制限されないが、遊離残留塩素の除去性能及びクロロホルムろ過能力と、フィルタ部材としたときの、浄水カートリッジ1の第1カバー部20の第1接触部及び第2カバー部22の第2接触部の押圧力により弾性変形されたときの弾性と、フィルタ部材3をポット型浄水器の浄水カートリッジ用として用いたときの通水性と、をより一層並立させる観点から、0.15~0.40g/cm3が好ましく、0.20~0.30g/cm3がより好ましい。本発明において、フィルタ部材の密度は、フィルタ部材を熱風乾燥機にて80℃で3時間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した後、質量を秤量し、その質量(g)をフィルタ部材の体積(cm3)で除することにより求められる値である。
【0072】
フィルタ部材3の硬度は、ケーシング2の硬度、つまり第1カバー部20の硬度及び第2カバー部22の硬度よりも低いことが好ましい。フィルタ部材3の硬度は、94以下であることが好ましく、85~94程度あることがより好ましい。なお、同硬度測定は、JIS S 6050「プラスチック字消し」にて規定されている方法にて実施し、フィルタ部材の第1面31が上向きとなるようにフィルタ部材を中空の台座の真ん中に置き動かないように固定し、第1面31の3箇所を測定し、その中央値を読み取る。
【0073】
<3-5.フィルタ部材3の製造方法>
本発明のフィルタ部材3の製造方法としては、特に制限されない。繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されているフィルタ部材の製造方法の一例を以下に説明する。
【0074】
繊維状活性炭を含むシートが捲回された状態で成型されているフィルタ部材の製造方法としては、繊維状活性炭を含むシートを準備する工程、当該シートを捲回し、成型して中間成型体を得る工程、得られた中間成型体の第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布する工程、を含む。
【0075】
繊維状活性炭を含むシートを準備する工程において、例えば該シートが湿式不織布の場合は、繊維状活性炭、並びに、必要に応じて熱融着性繊維及びその他の成分等の原材料を準備する。次いで、当該準備した原材料を用いてスラリーを調製する。スラリーの調整においては、パルパーによる原材料の離解、リファイナーやビーターによる原材料の叩解をおこなうことができる。当該叩解を行うことにより、例えば乾式不織布に比して原材料の繊維長が短くなり、得られる湿式抄紙不織布の密度を前述した範囲にしやすくなる。そして、得られたスラリーを用いて、湿式抄紙をおこなう。湿式抄紙工程は、常法によりおこなえばよい。例えば、湿式抄紙工程は、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートを含むものとすることができ、ワイヤーパート、プレスパート、ドライヤーパート及びカレンダーパートをこの順で含むものとすることがより好ましい。また、得られたシートは、密度を高める目的で熱プレスすることができる。
【0076】
上記得られたシートを準備する工程において、
図12に示すように、シート300を芯301に所定の厚さになるまで巻き付ける。シート300が巻かれた芯301は、炉に入れられ熱処理されることで、積層したシート層が互いに一体化し、芯301に巻き付いた円筒状の中間成型体302となる。この中間成型体302を芯301から取り外し、所定の長さにカットされた中間成型体を得る。ここで、得られる中間成型体302の密度は、上記巻き付けるときの張力を調整することにより調整可能である。
【0077】
得られた中間成型体の第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布する工程において、シール剤が熱可塑性樹脂を含むものである場合は、シール剤を底部が平面状である容器中で当該熱可塑性樹脂の融点又は軟化点以上の温度で加熱し溶融する。溶融したシール剤の上から、前記中間成型体を、第1面31又は第2面33のいずれか一方をシール剤側としてシール剤に浸漬させ、中間成型体に含浸させる。そして、第1面又31又は第2面33のいずれか一方をシール剤に浸漬させた中間成型体をシール剤の入った容器から引き上げ、指定の含有量となる様、余分なシール剤を除去する。
【0078】
<4.特徴>
カートリッジ1の製造時において、フィルタ部材3の第1面31と第2面33との距離(フィルタ部材3の長さ)L1は、連結状態における第1カバー部20の面203と第2カバー部22の面221との距離L2に対して上述の範囲となる。また、フィルタ部材3の長さL1は、連結状態における第1突部208の先端部209と、第2突部224の先端部225との間の距離L3よりも長くなる。これにより、収容状態のフィルタ部材3の第1面31においては、空洞部34の径方向外方の領域に第1突部208が食い込んで係合し、フィルタ部材3を軸方向に圧縮する力がフィルタ部材3に加わり、第1面31と第1カバー部20の面203との間を遮断する。同様に、収容状態のフィルタ部材3の第2面33においては、空洞部34の径方向外方の領域に第2突部224が食い込んで係合し、フィルタ部材3を軸方向に圧縮する力がフィルタ部材3に加わり、第2面33と第2カバー部22の面221との間を遮断する。これらによって、フィルタ部材3の両端の面を介して水が通過することが抑制され、空洞部34の原水と、空間230の浄水とが分離される。
【0079】
さらに、第1面31及び第2面33自体にシール剤が塗布されることにより、カートリッジ1内部に流入した原水がフィルタ部材3の第1面31や第2面33を介して空間230にショートパスすることがさらに確実に阻止され、上述の効果をより高めることができる。
【0080】
フィルタ部材3は繊維状活性炭を含むことにより弾性を有する。これにより、第1カバー部20及び第2カバー部22を介して上下方向に圧縮される力が加わったとしても崩れにくく、破片を生じる可能性が低い。つまり、カートリッジ1内の水を汚染する可能性が低く、浄水の品質が維持される。また、フィルタ部材3が弾性を有することにより、第1カバー部20及び第2カバー部22の各突部208、224が、フィルタ部材3に係合したとき、フィルタ部材3を各突部208、224の形状に応じて変形させることができる。すなわち、各突部208、224とフィルタ部材3とを密着させることができる。これによって、上述した原水の遮断効果をより向上することができる。
【0081】
一方、例えば、繊維状活性炭を含まず、粒状活性炭のみからなるフィルタ部材は、第1接触部及び第2接触部の押圧力により弾性変形しない。このようなフィルタ部材に無理に押圧力を加えると、粒状活性炭の一部が崩れ落ち、フィルタ部材として機能しなくなる可能性がある。また、押圧力を加えても反発力が生じず、フィルタ部材の両端面が第1、第2カバー部に密着しない。このため、フィルタ部材の空洞部に流入した原水が、第1面と第1カバー部との隙間、及び第2面と第2カバー部との隙間を通過するのを防止するためには、前述の隙間をシールするための弾性部材が別途必要となる
【0082】
in-outタイプのカートリッジ1は、同じ構成のフィルタ部材3を有するout-inタイプのカートリッジと比較すると、水のろ過速度が速いという特徴を有する。また、ケーシング2の外周面の液密性を確保する必要がないため、第1カバー部20と第2カバー部22とを着脱可能に構成することができ、フィルタ部材3の交換作業が容易となる。
【0083】
カートリッジ1がリブ250のような第1抵抗部を有する場合は、フィルタ部材3から流出する浄水の圧力がある程度に弱まると、空間230内へ流出した浄水が第1抵抗部によってせき止められる。せき止められた浄水は、ケーシング2の内側に留まるため、液滴となって流出部223から滴下しにくくなる。これにより、カートリッジ1は水切れが良く、ろ過時間が短いとの印象をユーザに与えることができる。
【0084】
(B.第2実施形態)
以下、本発明に係る浄水カートリッジの第2実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図9は本実施形態に係る浄水カートリッジ(以下、単にカートリッジと称することがある)1の外観斜視図、
図10は断面図である。以下では、説明の便宜のため、
図10の上下方向を「上下」、
図10の左右方向を「左右」または「水平」、
図10の紙面方向を「前後」と称し、これを基準に説明を行う。
【0085】
第2実施形態に係る浄水カートリッジが第1実施形態と相違するのは、ケーシング2の構成である。より具体的には、本実施形態のカートリッジ1は、ケーシング2の側壁部と、フィルタ部材3の外周面320との隙間に流入した原水が、径方向外側から内側に向かってフィルタ部材3を通過し、フィルタ部材3の空洞部から浄水として流出する、out-inタイプのカートリッジである。以下では、同一構成については同一の符号を付して、説明を省略する。
【0086】
<1.ケーシング>
ケーシング2は、フィルタ部材3の第1面31をカバーする第1カバー部と、フィルタ部材3の第2面33をカバーする第2カバー部と、フィルタ部材3の外周面320を覆う側壁部とを備える。本実施形態では、
図9に示すように、ケーシング2は、フィルタ部材3の第1面31をカバーする第1カバー部20と、フィルタ部材3の第2面33をカバーする第2カバー部22とが連結されてなり、側壁部21は、後述する第1カバー部20の側壁部と第2カバー部22の側壁部とから構成される。以下、第2カバー部22が第1カバー部20に連結された状態を連結状態と称する。連結状態において、ケーシング2内部にはフィルタ部材3を収容するための空間が形成される。
【0087】
第1カバー部20は、上カバー部20aと、上カバー部20aの下端に一体的に連結される下カバー部20bとのパーツからなる。
図10に示すように、上カバー部20aは、略円筒形状の側壁部231と、側壁部231に連続する略円形の上面部232とを有する。上面部232の周縁部には、原水がカートリッジ1内に流入するための貫通孔207aが周方向に間隔を空けて複数形成され、全体として複数の貫通孔207aが環状に配置された流入部207が形成される。側壁部231の外側上部には、カートリッジ1が浄水器の開口S4の周縁部に取り付けられるためのフランジ204が形成される。また、フランジ204の上下方向の中心にはパッキン104が嵌められるための溝210が形成される。浄水器の一例を
図13Bに示す。
図11Bに示す浄水器100は、カートリッジ1の構成以外は
図13Aに示すものと共通であるため、説明は省略する。
【0088】
下カバー部20bは、略円筒形状の側壁部233と、側壁部233の内側に形成された略円形の面部203′とを有する。
図10に示すように、面部203′の周縁部には、流入部207を形成する貫通孔207aと対応する位置に貫通孔234aが周方向に間隔を空けて複数形成され、ケーシング2の内外を連通させる。面部203′のケーシング2の内部空間に対向する面を、面203と称する。面203には、複数の貫通孔234aに囲まれるように、環状の第1突部208が形成される。つまり、第1突部208は、貫通孔207aよりも径方向内側に形成される。第1突部208は、収容状態では、フィルタ部材3の第1面31において、フィルタ部材3の空洞部34を囲むように環状に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる。この場合、第1突部208が、空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第1面31に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となる。本発明の浄水カートリッジにおいて、面203は突部を有さないものでもあり得る。例えば、面203は、平面状であり得る。この場合、面203が、空洞部34の外周を囲むように環状にフィルタ部材3の第1面31に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部となる。第1突部208の断面形状は特に限定されないが、略三角形状、略四角形状、略半円形状、略半楕円形状等が挙げられる。略三角形状、略四角形状の角については、丸みを帯びたものであってもよい。
【0089】
面部203′の上面部232に対向する側には、前後方向に延びる断面四角形の通気通路235が形成される。通気通路235は、側壁部233に形成された断面四角形の通気口205と通じている。通気通路235は、面部203′から立ち上がる略平行な2つの側面と、2つの側面とに連続する上面で規定されるため、カートリッジ1内部を通過する水の流路とは隔離されている。
【0090】
第2カバー部22は、底部227と、底部227から連続して立ち上がる側壁部220とを有し、全体として略円筒形の外観を有する。側壁部220は、側壁部231及び側壁部233と概ね同じ径の略円筒形状に形成される。底部227の中央部には、浄水がカートリッジ1外に流出するための流出部223が形成される。本実施形態の流出部223は、円形の貫通孔223aにより構成される。底部227のケーシング2の内部空間に対向する面を面221と称する。面221において、流出部223の径方向外側の位置には、流出部223を囲むように環状の第2突部224が形成される。
【0091】
ケーシング2は、フィルタ部材3の空洞部34と流出部223との間において、浄水の流れに対して抵抗となる第2抵抗部を有していてもよい。本実施形態における第2抵抗部は、面221から上方に向かって立ち上がる、リブ251(
図11参照)である。本実施形態のリブ251は、上面視環状であり、空洞部34の径方向内方において、貫通孔223aを規定している。リブ251は、空洞部34に流出する浄水の圧力がある程度に弱まると、浄水が貫通孔223aから流出しないように浄水をせき止める。その結果、浄水が液滴となって流出部223から滴下することが妨げられる。
【0092】
面221を基準としたリブ251の最大高さは、例えばフィルタ部材3のろ過容量に応じて、適宜設定することができる。リブ251の最大高さは、浄水の圧力が一定以上である場合に全体的な水の流れに全くか殆ど影響を与えず、浄水の圧力が流出部223から滴下する程度である場合には、浄水の流出をせき止めることが可能な高さであることが好ましい。
【0093】
本実施形態では、上カバー部20aと下カバー部20b、及び第1カバー部20と第2カバー部22とは、互いの連結部分が液密を保つように連結される。
図9に示すように、第1カバー部20と第2カバー部22とが連結した連結状態において、側壁部231、側壁部233及び側壁部220とは概ね面一となり、共にケーシング2の側壁部21を形成する。上カバー部20aと下カバー部20b、及び第1カバー部20と第2カバー部22とは、例えば、超音波接合により連結される。
【0094】
収容状態において、フィルタ部材3の外径は、ケーシング2の側壁部21の内径よりもわずかに小さい。これにより、第1実施形態と同様、収容状態では側周部32とケーシング2の側壁との隙間に環状の空間230が形成される。
【0095】
以下では、カートリッジ1を通過する水の流路について、より具体的に説明する。カートリッジ1内の水の主な流れは、
図11中に示す矢印で表される。まず、タンク102から原水が流入部207、すなわち第1カバー部20を介してカートリッジ1内に流入する。流入部207から流入した原水は、貫通孔234aを通過し、空間230内に一旦貯留される。空間230内に貯留された原水は、フィルタ部材3の側周部32を径方向外側から内側へと通過し、浄水として空洞部34へと流入する。空洞部34に流入した浄水は、流出部223からカートリッジ1の外部へ排出される。
【0096】
<2.特徴>
第2実施形態のフィルタ部材3、面203、面221、第1突部208、及び第2突部224の構成は第1実施形態と共通である。従って、これらの構成による特徴は第1実施形態の説明で記載した通りである。以下では、第2実施形態に特有の特徴を記載する。
【0097】
第2実施形態のカートリッジ1では、フィルタ部材3の側周部32の径方向外側から内側へと水がろ過される。このため、浄水が存在するエリアである空洞部34に、中空糸膜等の別の種類のフィルタをさらに配置することができる。別の種類のフィルタを空洞部34に配置することで、カートリッジ1の容積を増加させることなく、コンパクトでろ過性能のより高い浄水カートリッジを提供することができる。
【0098】
カートリッジ1がリブ251のような第2抵抗部を有する場合は、フィルタ部材3から流出する浄水の圧力がある程度に弱まると、空洞部34内へ流出した浄水が第2抵抗部によってせき止められる。せき止められた浄水は、ケーシング2の内側に留まるため、液滴となって流出部223から滴下しにくくなる。これにより、カートリッジ1は水切れが良く、ろ過時間が短いとの印象をユーザに与えることができる。
【0099】
(C.変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0100】
<1>
上記実施形態のカートリッジ1は、主としてポット型の浄水器に取り付けられて使用されたが、これに限定されず、水道の蛇口部分に取り付けられて使用されるタイプの浄水器にも適用可能である。
【0101】
<2>
上記実施形態では、繊維状活性炭と熱融着繊維との混合物からなるシートからフィルタ部材3が製造されたが、フィルタ部材3の製造方法はこれに限定されない。例えば、湿式成型法により弾性を有するフィルタ部材3を製造することも可能である。湿式成型法では、例えば、粒状活性炭と予め叩解した繊維状バインダー(パルプ)とを水中で混合する。このようにしてできたスラリーを、略円筒形状のキャビティを有する金型に吸引し、フィルタ部材3の形状に成型する。続いて、金型から取り出した成型物を乾燥させることにより、成型体のフィルタ部材3を製造することができる。湿式成型法においては、バインダーとして使用するパルプの配合比により、フィルタ部材3の硬度を調節することが可能である。この方法では、例えば硬度77前後のフィルタ部材を形成することができる。
【0102】
<3>
上記実施形態では、ケーシング2の側面に通気口205が形成されたが、通気口205の形成を省略することも可能である。
【0103】
<4>
流入部207及び流出部223の形態は、上記実施形態で説明した形態に限られない。例えば、貫通孔207a及び貫通孔223aの数や形状は、適宜変更することができる。例えば第1実施形態における流入部207は、下方へ窪んだ平底容器状に形成されていなくてもよく、全体として平坦な形状であったり、上方へ突出する筒状に形成されてもよい。また、第1実施形態における貫通孔223aは、底部227ではなく、側壁部220の下方に形成されてもよい。また、例えば第2実施形態における流入部207は、上面部232に形成され、全体として平坦であるが、上面部232から下方へ窪んだ平底容器状に形成されていてもよく、又これとは反対に上方へ突出して形成されてもよい。さらに、第2実施形態における流出部223は、例えば底部227から下方へ突出する筒状に形成されてもよい。
【0104】
<5>
第1実施形態では、第1カバー部20と第2カバー部22とは着脱可能であったが、第1カバー部20と第2カバー部22とを着脱不能に構成することもできる。また、第1カバー部20と第2カバー部22との連結機構は爪部206と窓部222との係合によらず、種々の連結機構を採用することができる。さらに、第1カバー部20及び第2カバー部22の形状は上述の形状に限定されない。第1カバー部20がフィルタ部材3の第1面31に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる第1接触部を備え、第2カバー部22がフィルタ部材3の第2面33に接触し、フィルタ部材3を軸方向に押圧し弾性変形させる第2接触部を備える限りにおいて、適宜変更することができる。例えば、第2カバー部22は、側壁部220を有さず、底部227のみを有していてもよい。
【0105】
<6>
第2実施形態では、第1カバー部20は、上カバー部20aと、下カバー部20bとから構成されたが、第1カバー部20を構成する方法はこれに限定されない。例えば、上カバー部20aと下カバー部20bとが一体的に形成されて第1カバー部20を構成してもよい。第1カバー部20及び第2カバー部22の形状は上述の形状に限定されず、第1カバー部20がフィルタ部材3の第1面31に密着し、第2カバー部22がフィルタ部材3の第2面33に密着する限りにおいて、適宜変更することができる。例えば、第2カバー部22は、側壁部220を有さず、底部227のみを有していてもよい。
【0106】
<7>
第1突部208及び第2突部224の数は、上記実施形態のように1つに限られない。例えば、第1突部208及び第2突部224を同心円状に2つ以上形成してもよい。この場合、形成される第1突部208の数と、第2突部224の数とは、それぞれ異なっていてもよい。
【0107】
<8>
リブ250及び開口223bの形態は、
図7及び8に示す例に限定されない。つまり、リブ250の形態と開口223bの形態とは、任意の組合せで変更することが可能である。例えば、リブ250は
図7及び8に示すように周方向の両端において、側壁部21と連続するように形成されてもよいし、側壁部21とは独立して底部227から立ち上がる壁状に形成されてもよい。リブ250の強度を維持する観点からは、リブ250の少なくとも一部が側壁部21と連続して形成されることが好ましい。さらに、リブ251の断面形状は、
図7及び8に示す形状に限られず、適宜変更されてよい。
図7及び8に示す例では、開口223bは第2カバー部22の側方及び下方に向かって開口しているが、開口223bの形態はこれに限られない。例えば、開口223bは、
図3Dに示す貫通孔223aのように、第2カバー部22の下方にのみ向かって開口してもよい。また別の例では、開口223bは第2カバー部22の側方にのみ向かって開口してもよい。この場合、開口223bを底部227の面221よりも上方に形成し、側壁部21における、面221と開口223bの下端とで挟まれる部分を第1抵抗部としてもよい。
【0108】
<9>
リブ251及び貫通孔223aの形態は、
図11に示す例に限定されない。つまり、リブ251の形態と貫通孔223aの形態とは、任意の組合せで変更することが可能である。例えば、
図11の例ではリブ251が貫通孔223aを規定していたが、貫通孔223aを規定する周縁部とは独立して面221から立ち上がるリブ251が形成されてもよい。また、貫通孔223aが複数形成されるような場合は、各々の貫通孔223aの周縁にリブ251が設けられてもよいし、複数の貫通孔223aを囲むようにリブ251が設けられてもよい。さらに、リブ251の断面形状は、
図11に示す形状に限られず、適宜変更されてよい。
【0109】
<10>
なお、本発明の遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に遊離残留塩素除去性能を発揮することができ、クロロホルムのろ過能力を発揮し得るところ、本発明の効果を奏する除去対象物質は上記遊離在留塩素及びクロロホルムに限られず、例えば、ブロモジクロロメタン、ジブロモクロロメタン、ブロモホルム、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、2-メチルイソボルネオール、シマジン等、活性炭で除去しうる物質にも効果を奏することは言うまでも無い。
【実施例0110】
以下に、実施例及び比較例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は、実施例に限定されない。
【0111】
<実施例1>
1.フィルタ部材の製造
1-1.繊維状活性炭を含むシートを準備する工程
1-1-1.フィルタ部材の原材料の準備
フィルタ部材の原材料として、以下のものを準備した。
(1)繊維状活性炭;株式会社アドール製繊維状活性炭W-10(比表面積1100m2/g、平均繊維径17.0μm):74質量部
(2)繊維状活性炭;株式会社アドール製繊維状活性炭J-15(銀を担持した繊維状活性炭、比表面積1710m2/g、平均繊維径15.0μm):3質量部
(3)イオン交換繊維;ユニチカ株式会社製商品名A-02CA:9質量部
(4)熱融着性繊維;芯部が融点255℃のポリエチレンテレフタレート、鞘部が融点110℃の共重合ポリエステルであって、Sb含有量が30mg/kg以下のポリエステル系熱融着性繊維(ポリエステルの重合触媒としてTi系触媒を使用、繊維長5mm、平均繊維径1.7dtex):11質量部
(5)アクリル系パルプ;日本エクスラン工業株式会社製商品名Bi-PUL:3質量部
(6)合計100質量部
【0112】
1-1-2.スラリー調整工程
上記準備した各原材料を、パルパーを用いて離解、混合し、均一に分散したスラリーを調製した。そして、スラリーをリファイナーに通し、原材料を叩解した。
【0113】
1-1-3.湿式抄紙工程
リファイナーに通したスラリーをワイヤー上に流し、脱水することで坪量を調整した。その後、プレスパートを経てドライヤーパートでシートを乾燥し、カレンダーパートでシート表面を平滑にしてからリールで巻き取り、湿式抄紙法により湿式不織布を製造した。得られた湿式不織布の目付は90g/m2、厚さは0.9mm、密度は0.10g/cm3であった。
【0114】
1-2.シートを捲回し、成型して中間成型体を得る工程
上記得られたシートを、鉄製の円筒状パイプ(外径33mm、長さ1200mm)に捲回した。なお、捲回する際の張力は、最終的に密度が0.18g/cm3になるように調整した。捲回したシートを雰囲気温度150℃で2時間熱処理した。その後、前記円筒状パイプを除去した後に、カット機で69mmの長さにカットし、中間成型体を得た。
【0115】
1-3.得られた中間成型体の第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布する工程
シール剤として、熱可塑性樹脂である、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト接着剤(軟化点105℃)を準備した。溶融したシール剤の上から、前記中間成型体を、第1面31又は第2面33のいずれか一方をシール剤側としてシール剤に浸漬させ、中間成型体に含浸させた。そして、第1面又31又は第2面33のいずれか一方をシール剤に浸漬させた中間成型体をシール剤の入った容器から引き上げ、指定の含有量となる様、余分なシール剤を除去した。
【0116】
得られたフィルタ部材は、端部32aの長さLa及び端部32bの長さLbがともに1.0mm、フィルタ部材の軸方向長さL1が69mm、第1面の外径及び第2面の外径が50mm、第1面の内径及び第2面の内径が33mm、フィルタ部材3の軸方向長さL1に対する、上述した長さLaと長さLbの和の割合(=(La+Lb)/L1)としては0.03であった。また、フィルタ部材の端部32aにおける第1面の単位面積あたりのシール剤の含有量、及び端部32bにおける第2面の単位面積あたりのシール剤の含有量としては、0.06g/cm2であった。また、フィルタ部材の軸方向の硬さは177.8N、座屈強度は258.7N、リブ押し時の硬さは190.0Nであった。また、フィルタ部材の密度は0.21g/cm3、フィルタ部材の硬度は89であった。
【0117】
上記得られたフィルタ部材を、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容した。ケーシングのL2は69mm、L3は67mmとした。当該ケーシングを、
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期における遊離残留塩素除去性能を測定した。結果を表1に示す。なお、通水後にフィルタ部材をケーシングから取り出し、ケーシングの第1接触部(第1突部)と接触していた部分と、第2接触部(第2突部)と接触していた部分との距離L4を測定し、距離L4の長さL1に対する割合W(%)から、フィルタ部材の弾性回復の程度を評価したところ、Wは、約99.9%であり、実質的に通水前と同等程度に弾性回復していた。
【0118】
<実施例2>
1.フィルタ部材の製造
1-1.繊維状活性炭を含むシートを準備する工程
実施例1で得た湿式不織布を準備した。当該湿式不織布を、温度110℃、クリアランス0.10mm、毎分4.5mの速度で熱プレスし、湿式不織布を準備した。得られた湿式不織布の目付は90g/m2、厚さは0.5mm、密度は0.18g/cm3であった。
【0119】
1-2.シートを捲回し、成型して中間成型体を得る工程
上記得られたシートを、鉄製の円筒状パイプ(外径33mm、長さ1200mm)に捲回した。なお、捲回する際の張力は、最終的に密度が0.25g/cm3になるように調整した。捲回したシートを雰囲気温度150℃で2時間熱処理した。その後、前記円筒状パイプを除去した後に、カット機で69mmの長さにカットし、中間成型体を得た。
【0120】
1-3.得られた中間成型体の第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布する工程
シール剤として、熱可塑性樹脂である、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト接着剤(軟化点105℃)を準備した。溶融したシール剤の上から、前記中間成型体を、第1面31又は第2面33のいずれか一方をシール剤側としてシール剤に浸漬させ、中間成型体に含浸させた。そして、第1面又31又は第2面33のいずれか一方をシール剤に浸漬させた中間成型体をシール剤の入った容器から引き上げ、指定の含有量となる様、余分なシール剤を除去した。
【0121】
得られたフィルタ部材は、端部32aの長さLa及び端部32bの長さLbがともに1.0mm、フィルタ部材の軸方向長さL1が69mm、第1面の外径及び第2面の外径が50mm、第1面の内径及び第2面の内径が33mm、フィルタ部材3の軸方向長さL1に対する、上述した長さLaと長さLbの和の割合(=(La+Lb)/L1)としては0.03であった。また、フィルタ部材の端部32aにおける第1面の単位面積あたりのシール剤の含有量、及び端部32bにおける第2面の単位面積あたりのシール剤の含有量としては、0.04g/cm2であった。また、フィルタ部材の軸方向の硬さは373.1N、座屈強度は518.6N、リブ押し時の硬さは367.0Nであった。また、フィルタ部材の密度は0.28g/cm3、フィルタ部材の硬度は90であった。
【0122】
上記得られたフィルタ部材を、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容した。ケーシングのL2は69mm、L3は67mmとした。当該ケーシングを、
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期における遊離残留塩素除去性能及びクロロホルムろ過能力を測定した。結果を表1に示す。なお、通水後にフィルタ部材をケーシングから取り出し、ケーシングの第1接触部(第1突部)と接触していた部分と、第2接触部(第2突部)と接触していた部分との距離L4を測定し、距離L4の長さL1に対する割合W(%)から、フィルタ部材の弾性回復の程度を評価したところ、Wは、約99.9%であり、実質的に通水前と同等程度に弾性回復していた。
【0123】
<実施例3>
1.フィルタ部材の製造
1-1.繊維状活性炭を含むシートを準備する工程
実施例2で得た湿式不織布(熱プレスした湿式不織布)を準備した。当該湿式不織布を、さらに、温度110℃、クリアランス0.08mm、毎分4.5mの速度で熱プレスし、湿式不織布を準備した。得られた湿式不織布の目付は90g/m2、厚さは0.4mm、密度は0.23g/cm3であった。
【0124】
1-2.シートを捲回し、成型して中間成型体を得る工程
上記得られたシートを、鉄製の円筒状パイプ(外径33mm、長さ1200mm)に捲回した。なお、捲回する際の張力は、最終的に密度が0.33g/cm3になるように調整した。捲回したシートを雰囲気温度150℃で2時間熱処理した。その後、前記円筒状パイプを除去した後に、カット機で69mmの長さにカットし、中間成型体を得た。
【0125】
1-3.得られた中間成型体の第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布する工程
シール剤として、熱可塑性樹脂である、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト接着剤(軟化点105℃)を準備した。溶融したシール剤の上から、前記中間成型体を、第1面31又は第2面33のいずれか一方をシール剤側としてシール剤に浸漬させ、中間成型体に含浸させた。そして、第1面又31又は第2面33のいずれか一方をシール剤に浸漬させた中間成型体をシール剤の入った容器から引き上げ、指定の含有量となる様、余分なシール剤を除去した。
【0126】
得られたフィルタ部材は、端部32aの長さLa及び端部32bの長さLbがともに1.1mm、フィルタ部材の軸方向長さL1が69mm、第1面の外径及び第2面の外径が50mm、第1面の内径及び第2面の内径が33mm、フィルタ部材3の軸方向長さL1に対する、上述した長さLaと長さLbの和の割合(=(La+Lb)/L1)としては0.03であった。また、フィルタ部材の端部32aにおける第1面の単位面積あたりのシール剤の含有量、及び端部32bにおける第2面の単位面積あたりのシール剤の含有量としては、0.04g/cm2であった。また、フィルタ部材の軸方向の硬さは638.6N、座屈強度は773.6N、リブ押し時の硬さは598.9Nであった。また、フィルタ部材の密度は0.36g/cm3、フィルタ部材の硬度は92であった。
【0127】
上記得られたフィルタ部材を、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容した。ケーシングのL2は69mm、L3は67mmとした。当該ケーシングを、
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期における遊離残留塩素除去性能を測定した。結果を表1に示す。なお、通水後にフィルタ部材をケーシングから取り出し、ケーシングの第1接触部(第1突部)と接触していた部分と、第2接触部(第2突部)と接触していた部分との距離L4を測定し、距離L4の長さL1に対する割合W(%)から、フィルタ部材の弾性回復の程度を評価したところ、Wは、約99.9%であり、実質的に通水前と同等程度に弾性回復していた。
【0128】
<比較例1>
1.フィルタ部材の製造
1-1.繊維状活性炭を含むシートを準備する工程
1-1-1.フィルタ部材の原材料の準備
フィルタ部材の原材料として、以下のものを準備した。
(1)繊維状活性炭;株式会社アドール製繊維状活性炭A-15(比表面積1700m2/g、平均繊維径16.0μm):50質量部
(2)繊維状活性炭;株式会社アドール製繊維状活性炭J-15(銀を担持した繊維状活性炭、比表面積1710m2/g、平均繊維径15.0μm):15質量部
(3)熱融着性繊維;芯部が融点255℃のポリエチレンテレフタレート、鞘部が融点110℃の共重合ポリエステルであって、Sb含有量が30mg/kg以下のポリエステル系熱融着性繊維(ポリエステルの重合触媒としてTi系触媒を使用、繊維長5mm、平均繊維径1.7dtex):35質量部
【0129】
1-1-2.シート製造工程
上記準備した各原材料を、カーディングマシーンで開繊、混合し、次いでニードルパンチにより交絡させた後、熱ローラに通して上記芯鞘型繊維の鞘部の一部を溶融させ、目付65g/m2、厚さ0.7mm、密度0.09g/cm3の乾式不織布(ニードルパンチ不織布)を製造した。
【0130】
1-2.シートを捲回し、成型して中間成型体を得る工程
上記得られたシートを、鉄製の円筒状パイプ(外径33mm、長さ1200mm)に捲回した。なお、捲回する際の張力は、最終的に密度が0.10g/cm3になるように調整した。捲回したシートを雰囲気温度150℃で2時間熱処理した。その後、前記円筒状パイプを除去した後に、カット機で69mmの長さにカットし、中間成型体を得た。
【0131】
1-3.得られた中間成型体の第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布する工程
シール剤として、熱可塑性樹脂である、エチレン-酢酸ビニル共重合体を含むホットメルト接着剤(軟化点105℃)を準備した。溶融したシール剤の上から、前記中間成型体を、第1面31又は第2面33のいずれか一方をシール剤側としてシール剤に浸漬させ、中間成型体に含浸させた。そして、第1面又31又は第2面33のいずれか一方をシール剤に浸漬させた中間成型体をシール剤の入った容器から引き上げ、指定の含有量となる様、余分なシール剤を除去した。
【0132】
得られたフィルタ部材は、端部32aの長さLa及び端部32bの長さLbがともに1.0mm、フィルタ部材の軸方向長さL1が69mm、第1面の外径及び第2面の外径が50mm、第1面の内径及び第2面の内径が33mm、フィルタ部材3の軸方向長さL1に対する、上述した長さLaと長さLbの和の割合(=(La+Lb)/L1)としては0.03であった。また、フィルタ部材の端部32aにおける第1面の単位面積あたりのシール剤の含有量、及び端部32bにおける第2面の単位面積あたりのシール剤の含有量としては、0.08g/cm2であった。また、フィルタ部材の軸方向の硬さは119.0N、座屈強度は165.0N、リブ押し時の硬さ費は150.4Nであった。また、フィルタ部材の密度は0.10g/cm3、フィルタ部材の硬度は89であった。
【0133】
上記得られたフィルタ部材を、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容した。ケーシングのL2は69mm、L3は67mmとした。当該ケーシングを、
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期における遊離残留塩素除去性能を測定した。結果を表1に示す。なお、通水後にフィルタ部材をケーシングから取り出し、ケーシングの第1接触部(第1突部)と接触していた部分と、第2接触部(第2突部)と接触していた部分との距離L4を測定し、距離L4の長さL1に対する割合W(%)から、フィルタ部材の弾性回復の程度を評価したところ、Wは、約99.9%であり、実質的に通水前と同等程度に弾性回復していた。
【0134】
<比較例2>
1.フィルタ部材の準備
市販の浄水カートリッジに収容されているフィルタ部材(粒状活性炭を焼結させたブロック状のフィルタ部材)を準備した。当該フィルタ部材は、第1面及び前記第2面ともシール剤が塗布されていないものであり、フィルタ部材の軸方向の硬さは1029N、座屈に起因する降伏点は無く破壊強度が2378.8N、リブ押し時の硬さは724.8Nであった。また、フィルタ部材の密度は0.55g/cm3、フィルタ部材の硬度は92であった。また、フィルタ部材の軸方向長さL1が69mm、第1面の外径及び第2面の外径が50mm、第1面の内径及び第2面の内径が33mmであった。
【0135】
上記得られたフィルタ部材を、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容した。ケーシングのL2は69mm、L3は67mmとした。当該ケーシングを、
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期における遊離残留塩素除去性能を測定した。結果を表1に示す。
【0136】
<比較例3>
1.フィルタ部材の製造
1-1.繊維状活性炭を含むシートを準備する工程
実施例1で得た湿式不織布を準備した。
【0137】
1-2.シートを捲回し、成型してフィルタ部材を得る工程
上記得られたシートを、鉄製の円筒状パイプ(外径33mm、長さ1200mm)に捲回した。なお、捲回する際の張力は、最終的に密度が0.25g/cm3になるように調整した。捲回したシートを雰囲気温度150℃で2時間熱処理した。その後、前記円筒状パイプを除去した後に、カット機で69mmの長さにカットし、フィルタ部材を得た。すなわち、実施例1において、中間成型体の第1面31及び第2面33の両方にシール剤を塗布する工程を省略したものをフィルタ部材とした。
【0138】
得られたフィルタ部材は、端部32aの長さLa及び端部32bの長さLbがともに1.0mm、フィルタ部材の軸方向長さL1が69mm、第1面の外径及び第2面の外径が50mm、第1面の内径及び第2面の内径が33mm、フィルタ部材3の軸方向長さL1に対する、上述した長さLaと長さLbの和の割合(=(La+Lb)/L1)としては0.03であった。
【0139】
上記得られたフィルタ部材を、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容した。ケーシングのL2は69mm、L3は67mmとした。当該ケーシングを、
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期における遊離残留塩素除去性能及びクロロホルムろ過能力を測定した。結果を表1に示す。なお、通水後にフィルタ部材をケーシングから取り出し、ケーシングの第1接触部(第1突部)と接触していた部分と、第2接触部(第2突部)と接触していた部分との距離L4を測定し、距離L4の長さL1に対する割合W(%)から、フィルタ部材の弾性回復の程度を評価したところ、Wは、約99.9%であり、実質的に通水前と同等程度に弾性回復していた。
【0140】
<測定方法>
(1)繊維状活性炭の比表面積、平均繊維径
前述のように測定等をおこなった。
(2)融点
示差操作熱量計(DSC)にて測定等をおこなった。
(3)フィルタ部材の硬さ、座屈強度、及びリブ押し時の硬さ
前述のように測定等をおこなった。
(4)フィルタ部材の密度
前述のように測定等をおこなった。
(5)遊離残留塩素を含む原水を通水した初期における遊離残留塩素除去性能
フィルタ部材を熱風乾燥機にて80℃で3時間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した後、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容して浄水カートリッジとし、当該浄水カートリッジを
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、JIS S 3201:2019 6.4.2に準じ、遊離残留塩素除去性能について評価した。なお、遊離残留塩素除去性能試験において、上記JISに規定される初期通水はおこなわずにろ過水(浄水)を採取し、遊離残留塩素濃度を測定した。98%以上を合格とした。
(6)クロロホルムろ過能力
密度、及び繊維状活性炭の含有量が同じである、実施例2及び比較例3について、クロロホルムろ過能力を測定した。フィルタ部材を熱風乾燥機にて80℃で3時間乾燥させ、デシケーター内で室温まで冷却した後、前述した第1実施形態と同様のケーシングに収容して浄水カートリッジとし、当該浄水カートリッジを
図13Aに示すポット型浄水器に設置し、JIS S 3201:2019 付属書A-3に準じ、クロロホルム濃度が60±12ppbの試料水を調製し、水温20℃±3℃に管理し、ろ過流量を1.5L/minにて浄水カートリッジへ通水を行った。浄水カートリッジ通過前後でクロロホルムの濃度を非放射線源式電子捕獲型検出器(GC7000EN、株式会社ジェイ・サイエンス・ラボ製)を使用しヘッドスペース法で測定し、流入水に対する流出水のクロロホルムの水中濃度が初期20%以上になる点を破過点とし、該破過点までの総ろ過水量をクロロホルムろ過能力(L)とした。
【0141】
【0142】
実施例1~3のフィルタ部材は、繊維状活性炭を含む、空洞部を有する円筒状に形成されたフィルタ部材であって、前記フィルタ部材が、軸方向の両端に第1面と第2面を有し、前記第1面及び前記第2面の両方にシール剤が塗布されており、前記フィルタ部材は弾性を有しており、下記測定方法による前記フィルタ部材の軸方向の硬さが150N以上700N以下であることから、原水が流入する流入部、及び浄水が流出する流出部を有する筒状のケーシングと、前記ケーシングの内部に収容され、前記原水をろ過するためのフィルタ部材とを備える浄水カートリッジであって、フィルタ部材がケーシングにより軸方向に押圧する押圧力により弾性変形された状態で前記ケーシング内部に収容される浄水カートリッジに用いられた場合に、遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に遊離残留塩素除去性能を発揮することができ、クロロホルムのろ過能力を発揮し得るものであった。
【0143】
一方、比較例1のフィルタ部材は、フィルタ部材の軸方向の硬さが150N未満であったことから、ケーシング圧縮した場合に吸着材が座屈等変形しやすく、これに起因して第1カバー部の面203とフィルタ部材の第1面31との間、及び第2カバー部の面221とフィルタ部材の第2面33との間、にわずかな空間ができ、当該わずかな空間に迂回して通過しや遊離残留塩素を含む原水を通水した初期に遊離残留塩素を十分除去できなかった。
【0144】
比較例2のフィルタ部材は、フィルタ部材の軸方向の硬さが700Nを越えるものであったことから、フィルタ部材を十分に圧縮できず、フィルタ部材の圧縮による弾性が十分得られず、水封性が劣りやすくなり、結果遊離残留塩素を十分に除去することができなかった。
【0145】
比較例3のフィルタ部材は、前記第1面及び前記第2面の両方にシール剤が塗布されていなかったことから、原水が迂回しショートパスする結果原水が集中して通過する部分(ショートパスする流路の部分)のクロロホルムろ過性能が早期に低下し、実施例2と比較してクロロホルムろ過能力を発揮できないものであった。