(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074941
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】CD47の腫瘍選択的結合のための抗体の操作
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20240524BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240524BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240524BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20240524BHJP
C12P 21/08 20060101ALN20240524BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240524BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240524BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C07K16/28
A61K39/395 T
A61P35/02
C12P21/08
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】37
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061717
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2021558656の分割
【原出願日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】62/830,335
(32)【優先日】2019-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】509307635
【氏名又は名称】セルジーン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ハラランボス・ハドジバッシリオウ
(72)【発明者】
【氏名】タン・チュー
(72)【発明者】
【氏名】ジョンフン・スン
(72)【発明者】
【氏名】シャーミスタ・アチャラ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジョンソン
(72)【発明者】
【氏名】カンダサミ・ハリハラン
(72)【発明者】
【氏名】ホー・チョウ
(57)【要約】
【課題】血液腫瘍状態、血液悪性腫瘍、リンパ増殖性障害、B細胞障害、B細胞悪性腫瘍、およびB細胞リンパ腫を含む、異常増殖を起こす細胞によってもたらされる病理学的状態の治療のための、腫瘍選択抗体および医薬組成物の提供。
【解決手段】CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分と、を含む二重特異性抗体であって、前記CD47に結合するFab部分が、CD47に対して低い親和性を示し、前記CD20に結合するFab部分が、CD20に対して高い親和性を示し、前記二重特異性抗体が、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合しない、二重特異性抗体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分と、を含む二重特異性抗体であって、前記CD47に結合するFab部分が、CD47に対して低い親和性を示し、前記CD20に結合するFab部分が、CD20に対して高い親和性を示し、前記二重特異性抗体が、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合しない、二重特異性抗体。
【請求項2】
B細胞に選択的に結合する、請求項1に記載の二重特異性抗体。
【請求項3】
アイソタイプIgG1である、請求項2に記載の二重特異性抗体。
【請求項4】
前記CD47に結合するFab部分が、配列番号340を含む軽鎖(LC)領域を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項5】
前記CD47に結合するFab部分が、配列番号342を含む重鎖(HC)領域を含む、請求項4に記載の二重特異性抗体。
【請求項6】
悪性B細胞に選択的に結合する、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項7】
悪性B細胞に選択的に結合する、請求項5に記載の二重特異性抗体。
【請求項8】
前記CD20に結合するFab部分が、配列番号344を含む軽鎖(LC)領域を含む、請求項7に記載の二重特異性抗体。
【請求項9】
前記CD20に結合するFab部分が、配列番号346を含む重鎖(HC)領域を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
【請求項10】
前記CD47に結合するFab部分が、軽鎖可変領域(VL)領域と、重鎖可変領域(VH)領域と、を含み、それぞれ、VL CDR(配列番号347、配列番号348、および配列番号349)、ならびにVH CDR(配列番号350、配列番号351、および配列番号352)を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項11】
前記抗CD47 VLが、配列番号325に由来し、配列番号325に対して1~7個のアミノ酸置換を示し、前記抗CD47 VHが、配列番号326に由来し、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示す、請求項10に記載の二重特異性抗体。
【請求項12】
前記CD47に結合するFab部分が、
(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号149、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159、配列番号161、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号169、配列番号171、配列番号173、配列番号175、配列番号177、配列番号179、配列番号181、配列番号183、配列番号185、配列番号187、配列番号189、配列番号191、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199、配列番号201、配列番号203、配列番号205、配列番号207、配列番号209、配列番号211、配列番号213、配列番号215、配列番号217、配列番号219、配列番号221、配列番号223、配列番号225、配列番号227、配列番号229、配列番号231、配列番号233、配列番号235、配列番号237、配列番号239、配列番号241、配列番号243、配列番号245、配列番号247、配列番号249、配列番号251、配列番号253、配列番号255、配列番号257、配列番号259、配列番号261、配列番号263、配列番号265、配列番号267、配列番号269、配列番号271、配列番号273、配列番号275、配列番号277、配列番号279、配列番号281、配列番号283、配列番号285、配列番号287、配列番号289、配列番号291、配列番号293、配列番号295、配列番号297、配列番号299、配列番号301、配列番号303、配列番号305、配列番号307、配列番号309、配列番号311、配列番号313、配列番号315、配列番号317、配列番号319、および配列番号321からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)領域と、
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号150、配列番号152、配列番号154、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号164、配列番号166、配列番号168、配列番号170、配列番号172、配列番号174、配列番号176、配列番号178、配列番号180、配列番号182、配列番号184、配列番号186、配列番号188、配列番号190、配列番号192、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号206、配列番号208、配列番号210、配列番号212、配列番号214、配列番号216、配列番号218、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号228、配列番号230、配列番号232、配列番号234、配列番号236、配列番号238、配列番号240、配列番号242、配列番号244、配列番号246、配列番号248、配列番号250、配列番号252、配列番号254、配列番号255、配列番号258、配列番号260、配列番号262、配列番号264、配列番号266、配列番号268、配列番号270、配列番号272、配列番号274、配列番号276、配列番号278、配列番号280、配列番号282、配列番号284、配列番号286、配列番号288、配列番号290、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号298、配列番号300、配列番号302、配列番号304、配列番号306、配列番号308、配列番号310、配列番号312、配列番号314、配列番号316、配列番号318、配列番号320、および配列番号322からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項13】
前記CD47に結合するFab部分が、
(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号149、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159、配列番号161、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号169、配列番号171、配列番号173、配列番号175、配列番号177、配列番号179、配列番号181、配列番号183、配列番号185、配列番号187、配列番号189、配列番号191、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199、配列番号201、配列番号203、配列番号205、配列番号207、配列番号209、配列番号211、配列番号213、配列番号215、配列番号217、配列番号219、配列番号221、配列番号223、配列番号225、配列番号227、配列番号229、配列番号231、配列番号233、配列番号235、配列番号237、配列番号239、配列番号241、配列番号243、配列番号245、配列番号247、配列番号249、配列番号251、配列番号253、配列番号255、配列番号257、配列番号259、配列番号261、配列番号263、配列番号265、配列番号267、配列番号269、配列番号271、配列番号273、配列番号275、配列番号277、配列番号279、配列番号281、配列番号283、配列番号285、配列番号287、配列番号289、配列番号291、配列番号293、配列番号295、配列番号297、配列番号299、配列番号301、配列番号303、配列番号305、配列番号307、配列番号309、配列番号311、配列番号313、配列番号315、配列番号317、配列番号319、および配列番号321からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)領域と、
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号150、配列番号152、配列番号154、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号164、配列番号166、配列番号168、配列番号170、配列番号172、配列番号174、配列番号176、配列番号178、配列番号180、配列番号182、配列番号184、配列番号186、配列番号188、配列番号190、配列番号192、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号206、配列番号208、配列番号210、配列番号212、配列番号214、配列番号216、配列番号218、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号228、配列番号230、配列番号232、配列番号234、配列番号236、配列番号238、配列番号240、配列番号242、配列番号244、配列番号246、配列番号248、配列番号250、配列番号252、配列番号254、配列番号255、配列番号258、配列番号260、配列番号262、配列番号264、配列番号266、配列番号268、配列番号270、配列番号272、配列番号274、配列番号276、配列番号278、配列番号280、配列番号282、配列番号284、配列番号286、配列番号288、配列番号290、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号298、配列番号300、配列番号302、配列番号304、配列番号306、配列番号308、配列番号310、配列番号312、配列番号314、配列番号316、配列番号318、配列番号320、および配列番号322からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項14】
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるQASQDIHRYLS(配列番号359)、RESRFVD(配列番号360)、およびLQYDEFPYT(配列番号361)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号362)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号363)、AYGESSYPMDY(配列番号364)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項15】
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号365)、RESRFVD(配列番号366)、LQYDEFPYT(配列番号367)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号368)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号369)、AYGESSYPMDY(配列番号370)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項16】
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号371)、RANRLVS(配列番号372)、LQYDEFPYT(配列番号373)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号374)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号375)、AYGESSYPMDY(配列番号376)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項3に記載の二重特異性抗体。
【請求項17】
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるQASQDIHRYLS(配列番号359)、RESRFVD(配列番号360)、およびLQYDEFPYT(配列番号361)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号362)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号363)、AYGESSYPMDY(配列番号364)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項18】
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号365)、RESRFVD(配列番号366)、LQYDEFPYT(配列番号367)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号368)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号369)、AYGESSYPMDY(配列番号370)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項19】
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号371)、RANRLVS(配列番号372)、LQYDEFPYT(配列番号373)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号374)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号375)、AYGESSYPMDY(配列番号376)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項20】
配列番号317を含むVL領域と、配列番号318を含むVH領域と、を含む、請求項14に記載の二重特異性抗体。
【請求項21】
配列番号319を含むVL領域と、配列番号320を含むVH領域と、を含む、請求項15に記載の二重特異性抗体。
【請求項22】
配列番号321を含むVL領域と、配列番号322を含むVH領域と、を含む、請求項16に記載の二重特異性抗体。
【請求項23】
配列番号317を含むVL領域と、配列番号318を含むVH領域と、を含む、請求項17に記載の二重特異性抗体。
【請求項24】
配列番号319を含むVL領域と、配列番号320を含むVH領域と、を含む、請求項18に記載の二重特異性抗体。
【請求項25】
配列番号321を含むVL領域と、配列番号322を含むVH領域と、を含む、請求項19に記載の二重特異性抗体。
【請求項26】
A10S、M11L、K24R、A51E、N52S、L54F、およびS56Dからなる群から選択される、抗CD47 VL(配列番号325)における少なくとも1つ(1)のアミノ酸置換を含む、請求項11に記載の二重特異性抗体。
【請求項27】
T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115Lからなる群から選択される、抗CD47 VH(配列番号326)における少なくとも2つ(2)のアミノ酸置換を含む、請求項26に記載の二重特異性抗体。
【請求項28】
T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115Lからなる群から選択される、抗CD47 VH(配列番号326)における少なくとも3つ(3)のアミノ酸置換を含む、請求項27に記載の二重特異性抗体。
【請求項29】
配列番号319を含む抗CD47 VL領域と、配列番号320を含む抗CD47 VH領域と、を含む、請求項28に記載の二重特異性抗体。
【請求項30】
配列番号335を含む抗CD47のLC領域と、配列番号336を含む抗CD47のHC領域と、を含む、請求項29に記載の二重特異性抗体。
【請求項31】
抗CD20のVL CDRであるRASSSVSYIH(配列番号353)、ATSNLAS(配列番号354)、QQWTSNPPT(配列番号355)と、VH CDRであるSYNMH(配列番号356)、AIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号357)、STYYGGDWYFNV(配列番号358)と、を含む、請求項9に記載の二重特異性抗体。
【請求項32】
配列番号323を含む抗CD20 VL領域と、配列番号324を含むVH領域と、を含む、請求項31に記載の二重特異性抗体。
【請求項33】
(配列番号331)を含む抗CD20 LC領域と、配列番号332を含む抗CD20 HC領域と、を含む、請求項32に記載の二重特異性抗体。
【請求項34】
抗CD20のVL CDRであるRASSSVSYIH(配列番号353)、ATSNLAS(配列番号354)、QQWTSNPPT(配列番号355)と、VH CDRであるSYNMH(配列番号356)、AIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号357)、STYYGGDWYFNV(配列番号358)と、を含む、請求項13に記載の二重特異性抗体。
【請求項35】
配列番号323を含む抗CD20のVL領域と、配列番号324を含むVH領域と、を含む、請求項34に記載の二重特異性抗体。
【請求項36】
配列番号331を含む抗CD20のLC領域と、配列番号332を含む抗CD20のHC領域と、を含む、請求項35に記載の二重特異性抗体。
【請求項37】
配列番号333を含む抗CD47のLC領域と、配列番号334を含む抗CD47のHC領域と、を含む、請求項36に記載の二重特異性抗体。
【請求項38】
配列番号335を含む抗CD47のLC領域と、配列番号336を含む抗CD47のHC領域と、を含む、請求項36に記載の二重特異性抗体。
【請求項39】
配列番号337を含む抗CD47のLC領域と、配列番号338を含む抗CD47のHC領域と、を含む、請求項36に記載の二重特異性抗体。
【請求項40】
医薬組成物を必要とする患者に投与するための医薬組成物であって、
i)CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分と、を含む二重特異性抗体であって、前記CD47に結合するFab部分が、CD47に対して低い親和性を示し、前記CD20に結合するFab部分が、CD20に対して高い親和性を示し、前記二重特異性抗体が、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合しない、二重特異性抗体と、
ii)少なくとも1つの薬学的に許容される担体と、を含む、医薬組成物。
【請求項41】
患者の腫瘍細胞を抑制する方法であって、有効量の二重特異性抗体を投与することを含み、前記二重特異性抗体が、CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分と、を含み、前記CD47に結合するFab部分が、CD47に対して低い親和性を示し、前記CD20に結合するFab部分が、CD20に対して高い親和性を示し、前記二重特異性抗体が、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合しない、方法。
【請求項42】
患者の血液悪性腫瘍またはB細胞障害を抑制する、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
患者のB細胞悪性腫瘍を抑制する、請求項41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
血液腫瘍状態、血液悪性腫瘍、リンパ増殖性障害、B細胞障害、B細胞悪性腫瘍、およびB細胞リンパ腫を含む、異常増殖を起こす細胞によってもたらされる病理学的状態の治療のための、腫瘍選択抗体、医薬組成物、および使用方法が本明細書に提供される。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は、2019年4月5日に出願された米国仮出願第62/830,335号に対する35 U.S.C.§119(e)に基づく優先権を有し、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0003】
配列表
本出願は、EFS-Webを介してASCII形式で提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に援用される。2020年3月26日に作成されたASCII複製物は、298068-314_Sequence_Listing.txtという名前であり、407キロバイトのサイズである。
【背景技術】
【0004】
過去10年間にわたって、抑制性免疫チェックポイントに対する遮断剤の使用は、抗がん治療における最も重要な進歩の1つである(Sharpe AH.Introduction to checkpoint inhibitors and cancer immunotherapy.Immunol Rev.2017 Mar;276(1):5-8)。CTLA-4およびPD-1の遮断で得られた素晴らしい結果は、抗がん治療において標的化され得るいくつかの自然免疫チェックポイント、特にマクロファージ機能を調節する経路の評価につながった。マクロファージは、SIRPαを発現し、これは、貪食を阻害するように機能する「私を食べないで(don’t eat me)」シグナルを媒介する普遍的に発現されるタンパク質であるCD47と相互作用する。CD47の発現は、マクロファージによる抗体結合腫瘍細胞の貪食に対する耐性を付与する。SIRPαへのCD47結合の不在下では、マクロファージ上のFc受容体に結合することができる抗体は、これらの細胞の貪食を増強することができる。がん細胞は、その細胞表面上のCD47の発現を上方制御することによって、この相互作用をハイジャックするように進化しており、したがって、貪食促進シグナルと均衡し、自然免疫監視を回避する機会を増加させる(Matlung HL,Szilagyi K,Barclay NA,van den Berg TK.The CD47-SIRPα signaling axis as an innate immune checkpoint in cancer.Immunol Rev.2017 Mar;276(1):145-164)。したがって、CD47-SIRPα相互作用の遮断は、身体からの腫瘍細胞の貪食クリアランスを活性化するための有望な治療戦略を表す。ヒト化および完全ヒト抗CD47抗体、抗SIRPα抗体、ヒトIgGのFc部分に融合された可溶性SIRPα二量体、Fc部分を欠く高親和性単量体SIRPα、ならびに抗CD47抗体(ナノボディ)のラクダ由来単量体断片を含むいくつかのSIRPα-CD47遮断剤は、様々な種類のヒト腫瘍に対するインビトロ研究および前臨床研究において有効性を示している(Veillette A,Chen A.,SIRPα-CD47 Immune Checkpoint Blockade in Anticancer Therapy.Trends in Immunology,2018,39(3):173-184)。CC-90002(抗CD47)、Forty Sevenの抗CD47(Hu5F9-G4)、およびTrilliumのSIRPα融合Fcを含むいくつかのSIRPα-CD47遮断剤は、第I相および第II相臨床試験でそれぞれ試験されている(Veillette A,Tang Z.Signaling Regulatory Protein(SIRP)α-CD47 Blockade Joins the Ranks of Immune Checkpoint Inhibition.J Clin Oncol.2019 Feb 27:JCO190012)。臨床におけるこれらのアプローチは、併用療法(例えば、リツキシマブ)、高親和性結合剤によるCD47を標的とする組織シンク(すなわち、治療用抗体が結合する非腫瘍細胞が存在することによって、腫瘍細胞に対する抗体の生物学的利用能が低下する)の必要性、およびいくつかの臨床分子(貧血、好中球減少症、および/または血小板減少症)による観察された血液学的毒性によって制限される。重要なことに、タンパク質治療薬は、いくつかの疾患を治療するのに実際に探索されているが、バイオ医薬品実体(biopharmaceutical entities)は、低下した有効性および/または毒性がもたらされる対象に投与された場合、抗実体(anti-entity)抗体の産生を伴う免疫応答を促すことができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、低親和性でCD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、高親和性でCD20に結合する少なくとも1つのFab部分とを含む抗体を対象とし、二重特異性抗体は、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合しない。
【0006】
低親和性でCD47に結合する本明細書に記載のFab部分は、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によってKd(解離定数)として測定した場合、概して、約0.1μM~約25μMの間のCD47に対する親和性を示す。低親和性でCD47に結合する本明細書に記載のFab部分は、約0.25μM~約20μMのCD47に対する親和性を示す。特定の好ましい実施形態は、約0.4μM~約4.0μMのCD47に対する親和性を示す。特定の実施形態は、約1μM~約3.0μMのCD47に対する親和性を示す。一部の実施形態では、例えば、CD47に結合するFab部分は、約0.1μM~約5.0μMであるCD47に対する親和性を示す。一部の実施形態では、CD47に結合するFab部分は、約0.1μM~約0.2μM、0.3μM、0.4μM、0.5μM、0.6μM、0.7μM、0.8μM、0.9μM、1.0μM、1.1μM、1.2μM、1.3μM、1.4μM、1.5μM、1.6μM、1.7μM、1.8μM、1.9μM、2.0μM、2.1μM、2.2μM、2.3μM、2.4μM、2.5μM、2.6μM、2.7μM、2.8μM、2.9μM、3.0μM、3.1μM、3.2μM、3.3μM、3.4μM、3.5μM、3.6μM、3.7μM、3.8μM、3.9μM、4.0μM、4.1μM、4.2μM、4.3μM、4.4μM、4.5μM、4.6μM、4.7μM、4.8μM、4.9μM、または約5.0μMであるCD47に対する親和性を示す。
【0007】
一部の実施形態では、CD47に結合するFab部分は、約0.2μM~約4.0μMであるCD47に対する親和性を示す。さらなる実施形態では、CD47に結合するFab部分は、約0.5μM~約3.5μMであるCD47に対する親和性を示す。さらなる実施形態では、CD47に結合するFab部分は、約1.0μM~約3.0μMであるCD47に対する親和性を示す。
【0008】
本発明はさらに、CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分とを含む抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分は、CD47に対して低い親和性を示し、CD20に結合するFab部分は、CD20に対して高い親和性を示し、二重特異性抗体は、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合せず、抗体は、CD20を発現する腫瘍細胞の抗体依存性細胞貪食を活性化する。
【0009】
本発明はさらに、CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分とを含む抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分は、CD47に対して低い親和性を示し、CD20に結合するFab部分は、CD20に対して高い親和性を示し、二重特異性抗体は、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合せず、抗体は、CD20を発現する腫瘍細胞の補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する。
【0010】
本発明はさらに、CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分とを含む抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分は、CD47に対して低い親和性を示し、CD20に結合するFab部分は、CD20に対して高い親和性を示し、二重特異性抗体は、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合せず、抗体は、CD20を発現する腫瘍細胞の抗体依存性細胞傷害(ADCC)を媒介する。
【0011】
本発明は、本明細書に記載のIgG1 1+1ヘテロ二量体の単量体要素をさらに対象とし、特定の軽鎖(LC)および重鎖(HC)の定常領域を含み、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生を駆動する。一実施形態では、産生中のLC不対形成を低減する抗CD47 LC定常領域は、配列番号340を含む。別の実施形態では、産生中のFcのヘテロ二量体形成を確実にする抗CD47 HC定常領域は、配列番号342を含む。別の実施形態では、産生中のLC不対形成を低減する抗CD20 LC定常領域は、配列番号344を含む。別の実施形態では、産生中のFcのヘテロ二量体形成を確実にする抗CD20 HC定常領域は、配列番号346を含む。
【0012】
本発明はさらに、抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、抗CD47種CC-90002のVL(配列番号325)およびVH(配列番号326)領域に由来し、CD47に対する結合親和性が、実質的に減弱し、免疫原性が、実質的に低減される。
【0013】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、抗CD47 VLは、配列番号325に由来し、配列番号325に対して1~7個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VHは、配列番号326に由来し、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示し、CD47に対する結合親和性は、実質的に減弱し、免疫原性は実質的に低減される。
【0014】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、抗CD47 VLは、配列番号325に由来し、配列番号325に対して1~7個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VL(配列番号325)における少なくとも1つ(1)のアミノ酸置換は、A10S、M11L、K24R、A51E、N52S、L54F、およびS56Dからなる群から選択され(抗CD47 VLにおける置換は、VLの最初のアミノ酸に対して番号付けられる)、抗CD47 VHは、配列番号326に由来し、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VH(配列番号326)における少なくとも1つ(1)のアミノ酸置換は、T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115L(抗CD47 VHにおける置換は、VHの最初のアミノ酸に対して番号付けられる)からなる群から選択される。
【0015】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分は、(i)配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号149、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159、配列番号161、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号169、配列番号171、配列番号173、配列番号175、配列番号177、配列番号179、配列番号181、配列番号183、配列番号185、配列番号187、配列番号189、配列番号191、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199、配列番号201、配列番号203、配列番号205、配列番号207、配列番号209、配列番号211、配列番号213、配列番号215、配列番号217、配列番号219、配列番号221、配列番号223、配列番号225、配列番号227、配列番号229、配列番号231、配列番号233、配列番号235、配列番号237、配列番号239、配列番号241、配列番号243、配列番号245、配列番号247、配列番号249、配列番号251、配列番号253、配列番号255、配列番号257、配列番号259、配列番号261、配列番号263、配列番号265、配列番号267、配列番号269、配列番号271、配列番号273、配列番号275、配列番号277、配列番号279、配列番号281、配列番号283、配列番号285、配列番号287、配列番号289、配列番号291、配列番号293、配列番号295、配列番号297、配列番号299、配列番号301、配列番号303、配列番号305、配列番号307、配列番号309、配列番号311、配列番号313、配列番号315、配列番号317、配列番号319、および配列番号321からなる群から選択される軽鎖可変領域(VL)領域と、
(ii)配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号150、配列番号152、配列番号154、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号164、配列番号166、配列番号168、配列番号170、配列番号172、配列番号174、配列番号176、配列番号178、配列番号180、配列番号182、配列番号184、配列番号186、配列番号188、配列番号190、配列番号192、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号206、配列番号208、配列番号210、配列番号212、配列番号214、配列番号216、配列番号218、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号228、配列番号230、配列番号232、配列番号234、配列番号236、配列番号238、配列番号240、配列番号242、配列番号244、配列番号246、配列番号248、配列番号250、配列番号252、配列番号254、配列番号255、配列番号258、配列番号260、配列番号262、配列番号264、配列番号266、配列番号268、配列番号270、配列番号272、配列番号274、配列番号276、配列番号278、配列番号280、配列番号282、配列番号284、配列番号286、配列番号288、配列番号290、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号298、配列番号300、配列番号302、配列番号304、配列番号306、配列番号308、配列番号310、配列番号312、配列番号314、配列番号316、配列番号318、配列番号320、および配列番号322からなる群から選択される重鎖可変領域(VH)領域と、を含む。
【0016】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD20に結合するFab部分が、抗CD20のVL CDRであるRASSSVSYIH(CDRL1:配列番号353)、ATSNLAS(CDRL2:配列番号354)、QQWTSNPPT(CDRL3:配列番号355)、およびVH CDRであるSYNMH(CDRH1:配列番号356)、AIYPGNGDTSYNQKFKG(CDRH2:配列番号357)、STYYGGDWYFNV(CDRH3:配列番号358)を含む。
【0017】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD20に結合するFab部分は、抗CD20 LC(配列番号331)および抗CD20 HC(配列番号332)を含む。
【0018】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるQASQDIHRYLS(CDRL1:配列番号359)、RESRFVD(CDRL2:配列番号360)、およびLQYDEFPYT(CDRL3:配列番号361)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(CDRH1:配列番号362)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(CDRH2:配列番号363)、AYGESSYPMDY(CDRH3:配列番号364)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む。
【0019】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(CDRL1:配列番号365)、RESRFVD(CDRL2:配列番号366)、LQYDEFPYT(CDRL3;配列番号367)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(CDRH1:配列番号368)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(CDRH2:配列番号369)、AYGESSYPMDY(CDRH3:配列番号370)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む。
【0020】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(CDRL1:配列番号371)、RANRLVS(CDRL2:配列番号372)、LQYDEFPYT(CDRL3:配列番号373)を含む軽鎖可変領域(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(CDRH1:配列番号374)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(CDRH2、配列番号375)、AYGESSYPMDY(CDRH3、配列番号376)を含む重鎖可変領域(VH)領域と、を含む。
【0021】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、VL(配列番号317)およびVH(配列番号318)を含む。
【0022】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、VL(配列番号319)およびVH(配列番号320)を含む。
【0023】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、VL(配列番号321)およびVH(配列番号322)を含む。
【0024】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、LC(配列番号333)およびHC(配列番号334)を含む。
【0025】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、LC(配列番号335)およびHC(配列番号336)を含む。
【0026】
本発明はさらに、二重特異性抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分が、LC(配列番号337)およびHC1367(配列番号338)を含む。
【0027】
加えて、本発明は、腫瘍細胞を抑制するための医薬組成物であって、それを必要とする患者に投与するための医薬組成物を対象とし、本明細書に記載の二重特異性実体を含む。
【0028】
加えて、本発明は、B細胞障害またはB細胞悪性腫瘍を治療するための医薬組成物であって、それを必要とする患者に投与するための医薬組成物を対象とし、本明細書に記載の二重特異性実体を含む。
【0029】
本発明はさらに、腫瘍細胞を抑制する方法を対象とし、有効量の本明細書に記載の二重特異性実体を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【0030】
さらに、本発明は、B細胞障害またはB細胞悪性腫瘍の治療方法を対象とし、有効量の本明細書に記載の二重特異性実体を、それを必要とする患者に投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本明細書に記載の二重特異性実体の特定の属性の概略図である。二重特異性実体は、CD47へのアビディティなしの低親和性結合、正常細胞への最小限の結合(すなわち、組織シンクがない)、腫瘍細胞への選択的結合をもたらすCD20への高親和性選択的アビディティ結合を含む、遍在的なCD47発現の課題を克服するように操作される。TAA:腫瘍関連抗原
【
図2】二重特異性実体のアーキテクチャ、タンパク質工学的特徴、およびいくつかの生物薬理学的属性の例を示す。
【
図3A】本明細書に記載の例示的な種類の二重特異性実体が、CD20+ CD47+ OCI-Ly3 NHL細胞のマクロファージ媒介性貪食を誘導することを示す。(
図3A~
図3B)抗体濃度を鑑みた貪食マクロファージの割合を示すグラフである。(
図3C)本明細書に記載の二重特異性種のKDおよびEC50値を示す表である。
【
図3B】本明細書に記載の例示的な種類の二重特異性実体が、CD20+ CD47+ OCI-Ly3 NHL細胞のマクロファージ媒介性貪食を誘導することを示す。(
図3A~
図3B)抗体濃度を鑑みた貪食マクロファージの割合を示すグラフである。(
図3C)本明細書に記載の二重特異性種のKDおよびEC50値を示す表である。
【
図3C】本明細書に記載の例示的な種類の二重特異性実体が、CD20+ CD47+ OCI-Ly3 NHL細胞のマクロファージ媒介性貪食を誘導することを示す。(
図3A~
図3B)抗体濃度を鑑みた貪食マクロファージの割合を示すグラフである。(
図3C)本明細書に記載の二重特異性種のKDおよびEC50値を示す表である。
【
図4A】本明細書に記載の例示的な二重特異性実体を示し、CD47×CD20 IgG1種が、CDC機能を示す。(
図4A~
図4B)抗体濃度を鑑みたCDCを示すグラフである。(
図4C)TPP-1360、TPP-1362、およびリツキシマブの平均EC50値を示す表である。
【
図4B】本明細書に記載の例示的な二重特異性実体を示し、CD47×CD20 IgG1種が、CDC機能を示す。(
図4A~
図4B)抗体濃度を鑑みたCDCを示すグラフである。(
図4C)TPP-1360、TPP-1362、およびリツキシマブの平均EC50値を示す表である。
【
図4C】本明細書に記載の例示的な二重特異性実体を示し、CD47×CD20 IgG1種が、CDC機能を示す。(
図4A~
図4B)抗体濃度を鑑みたCDCを示すグラフである。(
図4C)TPP-1360、TPP-1362、およびリツキシマブの平均EC50値を示す表である。
【
図5A】本明細書に記載の例示的な二重特異性実体であるCD47×CD20 IgG1種が、高CD20のNHL細胞において、強力なADCC機能を示す(すなわち、リツキシマブよりも有意に高い)ことを示す。(
図5A~
図5B)抗体濃度を鑑みた細胞傷害性を示すグラフである。(
図5C)CD20/CD47比を示す表である。
【
図5B】本明細書に記載の例示的な二重特異性実体であるCD47×CD20 IgG1種が、高CD20のNHL細胞において、強力なADCC機能を示す(すなわち、リツキシマブよりも有意に高い)ことを示す。(
図5A~
図5B)抗体濃度を鑑みた細胞傷害性を示すグラフである。(
図5C)CD20/CD47比を示す表である。
【
図5C】本明細書に記載の例示的な二重特異性実体であるCD47×CD20 IgG1種が、高CD20のNHL細胞において、強力なADCC機能を示す(すなわち、リツキシマブよりも有意に高い)ことを示す。(
図5A~
図5B)抗体濃度を鑑みた細胞傷害性を示すグラフである。(
図5C)CD20/CD47比を示す表である。
【
図6】本明細書に記載の二重特異性実体の例示的なアーキテクチャ、ならびに特定の例の特徴を示す。
【
図7】本明細書に記載の二重特異性実体種の例であるTPP-1360を示し、TPP-23(408_437 Fab(VL:配列番号899、VH:配列番号900)IgG1を有する)の結合と比較して、結合シグナルをB細胞に実質的にシフトさせ、むしろT細胞、単球、およびNK細胞に弱くシフトさせ、血小板または赤血球に対して結合が最小限であるかもしくは結合せず、それによって、ヒト全血におけるB細胞への選択的結合が示される。
【
図8】本明細書に記載の種類の二重特異性実体の例であるTPP-1360を示し、CD47
+/CD20
+Raji細胞に選択的に結合するが、CD47
+/CD20
-ヒト赤血球(RBC)には結合しないことが実証される。
【
図9】Raji細胞およびヒトRBCの共培養において、本明細書に記載の例示的な種類の二重特異性実体であるTPP-1360が、CD47
+/CD20
+Raji細胞に対して用量依存的な結合を示したが、ヒトRBCに対しては、1mg/mLの高い濃度でさえも結合を示さないことを示す。
【
図10】TPP-1360が、例えば、CD20
+/CD47
+リンパ腫細胞株OCI-Ly3の表面に発現されるヒトCD47に対する組換えヒトSIRPα-Fcの結合を、強力かつ完全に遮断したことを示す。
【
図11】TPP-1360が、例えば、CD20
+/CD47
+リンパ腫細胞株Rajiの表面で発現されるヒトCD47に対する組換えヒトSIRPα-Fc結合を、強力かつ完全に遮断したことを示す。
【
図12】TPP-1360による処理が、例えば、CD20
+悪性B細胞株Rajiのマクロファージ媒介性貪食を誘導したことを示す。
【
図13】TPP-1360による処理が、例えば、CD20
+悪性B細胞株OCI-Ly3のマクロファージ媒介性貪食を誘導したことを示す。
【
図14】TPP-1360による処置が、例えば、CD20
+悪性B細胞株REC-1のマクロファージ媒介性貪食を誘導したことを示す。
【
図15】TPP-1360による処理が、例えば、CD20
+悪性B細胞株RIVAのマクロファージ媒介性貪食を誘導したことを示す。
【
図16】例えば、TPP-1360での処理が、Raji細胞およびOCI-Ly3細胞において、リツキシマブよりも有意に効率的な貪食を引き起こし、TPP-1360によるSIRPα-CD47相互作用の同時遮断およびFcγRなどの活性化受容体の関与に起因する可能性が高いことを示す。
【
図17】例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)によって測定した場合の、Raji細胞(CD20
+/CD47
+)に対するリツキサンおよびTPP-1360などの二重特異性抗体の結合を示す。
【
図18】EpiMatrix抗体免疫原性スケールを示す。
【
図19】Raji異種移植モデルにおけるTPP-1362およびリツキサンによる処置を示す。
【
図20】Raji異種移植モデルにおけるTPP-1360およびリツキサンによる処置を示す。
【
図21】TPP-1360およびTPP-1362が、例えば、CD20
+/CD47
+リンパ腫細胞株OCI-Ly3の表面で発現されるヒトCD47に対する組換えヒトSIRPαの結合を、強力かつ完全に遮断したことを示す。リツキサンは、SIRPαの結合に対して影響がないことが分かった。
【発明を実施するための形態】
【0032】
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の技術者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書において参照されるすべての刊行物および特許は、参照により援用される。
【0033】
本明細書で使用される場合、冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは1つ以上(例えば、少なくとも1つ)を指し得る。
【0034】
本明細書で使用される場合、「約」は、一般に、測定値の性質または精度を考慮して測定された量に対する許容される程度の誤差を指し得る。誤差の程度の例としては、所与の値または値の範囲の5%以内である。
【0035】
1つ以上の特徴を「含む」として本明細書に記載される実施形態は、かかる特徴の「からなる」および/または「本質的にからなる」対応する実施形態の開示とみなされてもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「CD47に対する低い親和性」は、SPRによってKdとしてインビトロで測定した場合、CD47に対する親和性が、約25μM未満(例えば、約0.05μM~約25μM)であることを指す。
【0037】
本明細書で使用される場合、「CD20に対する高い親和性」は、CD20に対する親和性が、約0.4nM以上(例えば、約0.4nM~約12nM)であることを指す。一部の実施形態では、「CD20に対する高い親和性」は、CD20に対する親和性が、約0.4nM~約5nMであることを指す。
【0038】
本明細書に記載の二重特異性実体(bispecific entities)は、腫瘍細胞上のCD47に選択的に結合し、正常細胞では実質的にCD47に結合しない。本明細書で使用される場合、「CD47に実質的に結合しない」とは、概して、(CD20-/CD47+)正常細胞上のCD47の5%未満の結合を指す。本明細書に記載の二重特異性実体は、(CD20-/CD47+)正常細胞上のCD47の2%未満に結合する。実施例5を参照されたい。換言すれば、本明細書に記載の実体は、概して、(CD20+/CD47+)細胞への95%以上の結合を示す。本明細書に記載される実体は、(CD20+/CD47+)細胞への98%以上の結合を示す。
【0039】
本明細書で使用される「薬学的に許容される」という用語は、連邦政府または州政府の規制当局によって承認されているか、または動物(より具体的にはヒト)で使用するために米国薬局方、欧州薬局方、または他の一般的に認められた薬局方に記載されていることを指す。
【0040】
濃度、量、体積、パーセンテージおよび他の数値は、本明細書において範囲形式で提示され得る。このような範囲形式は、単に利便性および簡潔性のために使用され、範囲の限界として明示的に列挙された数値だけでなく、各数値およびサブ範囲が明示的に列挙されているかのように、その範囲内に包含されるすべての個々の数値またはサブ範囲を含むように柔軟に解釈されるべきであることも理解されたい。
【0041】
本発明の抗体のアミノ酸配列におけるわずかなバリエーションは、本明細書の任意の場所で提供される抗体またはその抗原結合断片の配列に対して、アミノ酸配列における変動が少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも98%もしくは99%の配列相同性もしくは配列同一性を維持することを条件として、本発明に包含されるものとして企図される。
【0042】
本発明の抗体は、保存位置または非保存位置のいずれかで、1つの種に由来するアミノ酸残基が、別の種における対応する残基に置換されたバリアントを含み得る。一実施形態では、非保存位置のアミノ酸残基は、保存的残基または非保存的残基で置換される。特に、保存的アミノ酸置換が企図される。
【0043】
本明細書で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置き換えられたものを指す。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で定義されており、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、またはヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、またはグルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、またはシステイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、またはトリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)、および芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、またはヒスチジン)が含まれる。したがって、ポリペプチドのアミノ酸が同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸で置き換えられている場合、アミノ酸置換は保存的であると考えられる。本発明の抗体における保存的修飾バリアントの包含は、他の形態のバリアント、例えば、多型バリアント、種間ホモログ、およびアレルを除外しない。
【0044】
本明細書で使用される場合、「非保存的アミノ酸置換」は、(i)電気陽性側鎖(例えば、アルギニン、ヒスチジン、またはリジン)を有する残基が、電気陰性残基(例えば、グルタミン酸またはアスパラギン酸)に置換されているか、もしくはそれによって置換されている、(ii)親水性残基(例えば、セリンまたはスレオニン)が、疎水性残基(例えば、アラニン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、またはバリン)に置換されているか、もしくはそれによって置換されている、(iii)システインまたはプロリンが、任意の他の残基に置換されているか、もしくはそれによって置換されている、あるいは(iv)かさばった疎水性側鎖または芳香族側鎖(例えば、バリン、ヒスチジン、イソロイシン、またはトリプトファン)を有する残基が、より小さい側鎖(例えば、アラニン、またはセリン)を有する残基または側鎖を有しない残基(例えば、グリシン)に置換されているか、もしくはそれによって置換されているものを含む。
【0045】
「抗体(antibody)」および「抗体(antibodies)」という用語は、本明細書で使用される場合、従来のアイソタイプおよび単一特異性形式ならびに多価抗体を指し、これらに限定されないが、当技術分野で既知の現在の二重特異性実体形式ならびに二重特異性抗体(本明細書に別途記載される形式を含むが、これらに限定されない)が含まれる。
【0046】
典型的な抗体は、少なくとも2つの「軽鎖」(LC)および2つの「重鎖」(HC)を含む。かかる抗体の軽鎖および重鎖は、いくつかのドメインからなるポリペプチドである。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書において「VH」と略記される)および重鎖定常領域(本明細書において「CH」と略記される)を含む。重鎖定常領域は、重鎖定常ドメインCH1、CH2、およびCH3(抗体クラスIgA、IgD、およびIgG)、および任意選択的に、重鎖定常ドメインCH4(抗体クラスIgEおよびIgM)を含む。各軽鎖は、軽鎖可変ドメイン(本明細書において「VL」と略記される)および軽鎖定常ドメイン(本明細書において「CL」と略記される)を含む。可変領域VHおよびVLは、相補性決定領域(CDR)と称される超可変領域にさらに細分化することができ、フレームワーク領域(FR)と称されるより保存された領域とともに散在する。各VHおよびVLは、アミノ末端からカルボキシ末端へ、以下の順序で配置された3つのCDRおよび4つのFRで構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。重鎖および軽鎖の「定常ドメイン」は、抗体の標的への結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能を示す。
【0047】
抗体とその標的抗原またはエピトープとの間の結合は、相補性決定領域(CDR)によって媒介される。CDRは、配列可変性が高い領域であり、抗原結合部位を形成する抗体の重鎖および軽鎖の可変領域内に位置する。CDRは、抗原特異性の主な決定因子である。典型的には、抗体の重鎖および軽鎖は、各々、非連続的に配置された3つのCDRを含む。抗体の重鎖および軽鎖のCDR3領域は、本発明による抗体の結合特異性/親和性において特に重要な役割を果たし、したがって、本発明のさらなる態様を提供する。
【0048】
したがって、本明細書で使用される「抗原結合断片」という用語は、1つ、2つ、もしくは3つの軽鎖CDR、および/または1つ、2つ、もしくは3つの重鎖CDRを含む抗原結合ポリペプチドの任意の天然に存在する構成もしくは人工的に構築された構成を含み、ポリペプチドは、抗原に結合することが可能である。
【0049】
CDRの配列は、当該技術分野で既知の任意の番号システム、例えば、カバットシステム(Kabat,E.A.,et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th ed.,Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991))、コチアシステム(Chothia &,Lesk,“Canonical Structures for the Hypervariable Regions of Immunoglobulins,”J.Mol.Biol.196,901-917(1987))、またはIMGTシステム(Lefranc et al.,“IMGT Unique Numbering for Immunoglobulin and Cell Receptor Variable Domains and Ig superfamily V-like domains,”Dev.Comp.Immunol.27,55-77(2003))を参照することによって特定することができる。本明細書で示されるCDRは、カバットによる境界(すなわち、サイズ)を用いる。本明細書において記載および言及される抗体の定常領域の位置の番号付けは、概してカバットによるものである。しかしながら、本明細書に記載の抗CD47のVL領域およびVH領域(すなわち、抗体の残基位置および置換位置)の番号付けは、各可変領域(すなわち、VLまたはVH、それぞれ、特に配列番号325および配列番号326を参照して)のN末端残基から始まる。
【0050】
「本明細書に記載の二重特異性実体」とは、概して、機能的に定義された抗体、二重特異性要素形式、要素配列、抗体、および本明細書に記載の抗体種を指す。
【0051】
本明細書で使用される「Fab部分」または「アーム」という用語は、抗体の抗原結合断片(すなわち、抗原に結合する抗体の領域)を指す。本明細書で使用される場合、それは、軽鎖および重鎖(VL/VH)の各々の1つの可変ドメインを含む。
【0052】
「Fab’断片」は、単一の軽鎖および単一の重鎖を含むが、「Fab’断片」は、CH1およびVHに加えて、鎖間ジスルフィド結合の形成に必要とされるCH1およびCH2ドメイン間の重鎖の領域を含む。したがって、2つの「Fab’断片」は、ジスルフィド結合の形成を介して会合して、F(ab’)2分子を形成し得る。
【0053】
「F(ab’)2断片」は、2つの軽鎖および2つの重鎖を含む。各鎖は、2つの重鎖間の鎖間ジスルフィド結合の形成に必要な定常領域の一部を含む。
【0054】
「Fv断片」は、重鎖および軽鎖の可変領域のみを含む。定常領域は含まれない。
【0055】
「単一ドメイン抗体」は、単一の抗体ドメイン単位(例えば、VHまたはVL)を含む抗体断片である。
【0056】
「一本鎖Fv」(「scFv」)は、抗体のVHドメインおよびVLドメインを含む抗体断片であり、ともに連結されて一本鎖を形成する。ポリペプチドリンカーは、一般に、scFvのVHドメインとVLドメインを接続するために使用される。
【0057】
「タンデムscFv」、別名TandAb(登録商標)は、可撓性ペプチドリンカーとのタンデム方向の2つのscFvの共有結合によって形成される一本鎖Fv分子である。
【0058】
「二重特異性T細胞エンゲージャー」(BiTE(登録商標))は、単一ペプチド鎖上の2つの単鎖可変断片(scFv)からなる融合タンパク質である。一方のscFvは、CD3受容体を介してT細胞に結合し、他方は、腫瘍細胞の抗原に結合する。
【0059】
「ダイアボディ」は、二価で二重特異性の小さな抗体断片であり、同じポリペプチド鎖(VH-VL)上で軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含み、同じ鎖上で2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるペプチドリンカーによって接続されている(Kipriyanov,Int.J.Cancer 77(1998),763-772)。これは、別の鎖の相補的ドメインとの対形成を強制し、2つの機能的な抗原結合部位を有する二量体分子のアセンブリを促進する。
【0060】
「DARPin」は、二重特異性アンキリンリピート分子である。DARPinは、天然のアンキリンタンパク質に由来し、これはヒトゲノムに見出すことができ、最も豊富な種類の結合タンパク質の1つである。DARPinライブラリモジュールは、天然のアンキリンリピートのタンパク質配列によって定義され、初期設計に229個のアンキリンリピート、およびその後の精密化にさらに2200個のアンキリンリピートを使用する。モジュールは、DARPinライブラリのビルディングブロックとしての役割を果たす。ライブラリモジュールは、ヒトゲノム配列に類似している。DARPinは、4~6個のモジュールで構成されている。各モジュールは約3.5kDaであるため、DARPinの平均サイズは16~21kDaである。結合剤の選択は、リボソームディスプレイによって行われ、完全に無細胞であり、He M.and Taussig MJ.,Biochem Soc Trans.2007,Nov;35(Pt 5):962-5.に記載されている。
【0061】
本明細書で使用される「腫瘍」および「腫瘍細胞」という用語は、広義には、がん細胞を指し、異常増殖を起こしている細胞、血液腫瘍状態、血液悪性腫瘍、リンパ増殖性障害、B細胞障害、B細胞悪性腫瘍、およびB細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0062】
本明細書で使用される、IgG1またはIgG1 1+1ヘテロ二量体形式は、基本的には、IgG1抗体全体を指し、(i)一方は、1つの供給源(すなわち、抗CD47)由来の1つの重鎖(HC)および1つの軽鎖(LC)からなり、他方は、別の供給源(例えば、抗CD20)由来の1つの重鎖(HC)および1つの軽鎖(LC)からなる。例えば、
図2および
図6を参照されたい。
【0063】
CD47
CD47/SIRPα軸を標的とするがん免疫療法の価値は、十分に確立されている。例えば、Weiskopf,K.,et al.,Eur J Cancer.2017 May;76:100、Feng,M.,et al.,Nat Rev Cancer.2019 Oct;19(10):568-586を参照されたい。臨床における抗CD47のアプローチは、併用療法の必要性、高親和性結合剤によるCD47を標的とする組織シンク、免疫原性、ならびに観察される一部の臨床分子による血液学的毒性(貧血、好中球減少症、および/または血小板減少症)によって制限されてきた。
【0064】
CD47は、腫瘍細胞上で上方制御されているが、比較的高いレベルで、NK細胞、RBC、および血小板を含むすべての細胞でも遍在的に発現されている。したがって、CD47を標的とする単一特異性剤は、貧血および血小板減少症を含む標的媒介性薬物消失(TMDD)および副作用により、不良な薬物動態特性を示す傾向がある。標的媒介性薬物消失(TMDD)とは、薬物がその薬理学的標的部位(受容体など)に高い親和性で結合することにより、その薬物動態特性に影響を及ぼす現象である。抗CD47 IgG4 mAbは、一般に、毒性を低減するために必要とされる。したがって、単一の抗CD47(例えば、IgG1)の薬剤活性が制限される傾向がある。
【0065】
Russ,A.,et al.,Blood Rev.2018 Nov;32(6):480は、特異的な、十分特徴付けられたIgG4抗CD47抗体(CC-90002)を記載した。特に、WO2013/119714(米国特許第9045541号)を参照されたい。この抗体における様々なアミノ酸置換が記載されており、無細胞産生を増加させ、免疫原性を低下させるように設計されている。WO2016/109415(US2017/0369572)、WO2018/009499(US2019/0241654)、およびWO2018/183182を参照されたい。CC-90002は、高親和性IgG4 P/E抗CD47分子であり、患部組織および正常組織で発現されるCD47に結合する。
【0066】
しかしながら、CD47は、正常組織および腫瘍細胞で広く発現しているため、高親和性抗CD47抗体は、望ましくない毒性をもたらし得る。したがって、毒性および有効性に関して、CC-90002を改善するCD47結合ドメインを含む二重特異性抗体が、本明細書に提供される。特に、本明細書に記載の二重特異性実体は、末梢組織におけるCD47への結合がほとんどまたは全くない腫瘍細胞を選択的かつ安全に標的とする。本発明は、CD47に結合する少なくとも1つのFab部分と、CD20に結合する少なくとも1つのFab部分とを含む抗体を対象とし、CD47に結合するFab部分は、CD47に対して低い親和性(例えば、100nM超のKd)を示し、CD20に結合するFab部分は、CD20に対して高い親和性(例えば、5nM未満のKd)を示し、二重特異性抗体は、腫瘍細胞のCD47に選択的に結合し、正常細胞のCD47に実質的に結合しない。
【0067】
CC-90002は、参照親配列として、および本明細書に記載の二重特異性実体のいくつかの構築のための抗CD47要素の供給源として提供される。CC-90002 VL CDRは、配列番号347(CDRL1)、配列番号348(CDRL2)、および配列番号349(CDRL3)である。CC-90002 VH CDRは、配列番号350(CDRH1)、配列番号351(CDRH2)、および配列番号352(CDRH3)である。参考のために、CC-90002のVL(配列番号325)およびVH(配列番号326)も提供されている。参考のために、LC全体を形成するように天然のIgG1 LC定常領域に融合されたCC-90002 VLは、CC-90002 LC全体/IgG1(配列番号327)として提供されている。参考のために、HC全体を形成するように天然のIgG1 HC定常領域に融合されたCC-90002 VHは、CC-90002 HC全体/IgG1(配列番号328)として提供されている。
【0068】
CC-90002のVH領域およびVL領域の両方は、本明細書に記載の二重特異性実体における使用のために機能性を保持しながら、免疫原性を低減するように操作された。
【0069】
本明細書に記載および例示される二重特異性実体は、例えば、単剤抗CD47mAb療法の課題を克服するために実証される。CD47に対する脱調整(detuned)親和性のため、本明細書に記載および提供されるCD47×CD20二重特異性実体は、CD20+腫瘍関連抗原(TAA)細胞に優先的に結合する。それによって、CD47+細胞によって媒介されるシンク効果および標的外腫瘍毒性が低減される。まとめると、細胞効力、インビボ有効性、および安全性データは、本明細書に記載および例示されるCD47×CD20二重特異体(bispecifics)が、例えば、CD20陽性B細胞悪性腫瘍用の単剤として、独自の選択肢を提供することを示す。
【0070】
図1は、本明細書に記載の二重特異性実体の特定の属性の概略図であり、CD47へのアビディティなしの低親和性結合、正常細胞への最小限の結合(すなわち、組織シンクがない)、腫瘍関連抗原(TAA)CD20への高親和性選択的アビディティ結合、を含む遍在的なCD47発現の課題を克服するように操作され、腫瘍細胞への選択的結合をもたらす。
【0071】
本明細書で提供されるCD47×CD20二重特異体は、任意の高親和性CD20結合剤由来のCD20結合ドメインを含み得る。リツキシマブのLC(配列番号329)およびHC(配列番号330)は、本明細書に記載の二重特異性実体の構築のための抗CD20要素の好ましい供給源である。特定の実施形態では、本発明で提供される二重特異性抗体は、リツキシマブのVL(配列番号323)およびVH(配列番号324)の一方もしくは両方を含むか、またはリツキシマブのVL CDR:配列番号353(CDRL1)、配列番号354(CDRL2)、および配列番号355(CDRL3)、ならびにリツキシマブのVH CDR:配列番号356(CDRH1)、配列番号357(CDRH2)、および配列番号358(CDRH3)をそれぞれ含む。本明細書に別途記載される抗CD20 IgG1のLCおよびHCの定常領域は、それぞれ、リツキシマブVL(配列番号323)およびリツキシマブVH(配列番号324)のカルボキシ末端に融合される。抗CD20のLC(配列番号331)は、本発明の二重特異性実体の構築に使用するために好ましい。抗CD20のHC(配列番号332)は、本発明の二重特異性実体の構築に使用するために好ましい。
【0072】
本明細書に記載の例示的な二重特異性実体は、末梢組織、RBC、および血小板においてCD47に実質的に結合せず、選択的かつ安全にCD20+腫瘍細胞を標的とし、より低い毒性を有する長時間の半減期を提供し、本抗体は、腫瘍細胞の補体依存性細胞傷害(CDC)を媒介する。
【0073】
二重特異性実体は、好ましくはIgG1 1+1ヘテロ二量体形式である。
特定の実施形態では、本明細書に提供される二重特異性抗体は、共有結合して単一の実体を形成する2つの抗原結合アームを含む。2つのFabドメインを用いるIgG二重特異性抗体は、所望の生成物の適切なアセンブリを確実にするために、発現および精製の戦略に関して慎重に考慮する必要がある。所望の二重特異性抗体の発現にバイアスを与えるように遺伝子レベルで尽力され得る。例えば、Fcのヘテロ二量体化を駆動するために、IgG FcのCH3ドメインにおける置換が記載されている。さらに、ノブ・イン・ホール(knob-in hole)戦略は、立体障害を利用して、2つの異なるFc CH3ドメイン間に相補的な非対称分子面を生成する。当該技術分野で既知の他の戦略は、特異性を駆動するために静電相補性を用いる。あるいは、野生型IgGの足場(scaffold)を使用することができ、得られた生成物の組み合わせをタンパク質精製中に分離して、所望の生成物を単離することができる。
【0074】
本発明の好ましい二重特異性抗体は、基本的に、天然のヒトIgG1抗体であり、(A)1つの軽鎖(LC)全体および1つの重鎖(HC)全体を含む1つの抗CD47 IgG1(モノマー)部分と、(B)1つの軽鎖(LC)全体および1つの重鎖(HC)全体を含む1つの抗CD20 IgG1(モノマー)部分と、からなる。2つのモノマーは、従来の二量体IgG1抗体を形成し、一方のアーム(Fab
1)は、CD47の減弱した結合を提供し、他方のアーム(Fab
2)は、CD20に対する親和性結合およびアビディティを提供する。
図2および
図6は、本明細書に記載のCD47×CD20の例示的なアーキテクチャおよび例示的なタンパク質工学的特徴を示す。
【0075】
本明細書に記載のIgG1 1+1ヘテロ二量体の好ましい単量体要素は、各々、LCおよびHCの定常領域内に特定の配列を含み、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中にホモ二量体の形成を低減する。一実施形態では、産生中の適切なLC/HC対形成を確実にする抗CD47 LC定常領域は、配列番号340を含む。別の実施形態では、産生中にFcヘテロ二量体形成を確実にする抗CD47 HC定常領域は、配列番号342を含む。産生中の適切なLC/HC対形成を確実にするための好ましい抗CD20 LC定常領域は、配列番号344を含む。産生中のFcヘテロ二量体形成を確実にするための好ましい抗CD20 HC定常領域は、配列番号346を含むことを。産生中に適切なLC/HC対形成を確実にするための例示的な抗CD47 LC定常領域は、配列番号339である。産生中のFcヘテロ二量体形成を確実にするための例示的な抗CD47 HC定常領域は、配列番号341である。産生中の適切なLC/HC対形成を確実にするための例示的な抗CD20 LC定常領域は、配列番号343である。産生中のFcヘテロ二量体形成を確実にするための例示的な抗CD20 HC定常領域は、配列番号345である。
【0076】
本明細書に記載の161種類のFabを用いるための好ましいIgG1定常領域は、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式であり、CD47の減弱された結合を提供するFabは、LC定常領域が配列番号339およびHC定常領域が配列番号341である。
置換Q124E、L135W、Q160E、およびT180Eを含む抗CD47 IgG1 LC定常領域は、CC-90002と比較して、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中に適切なLC/HC対形成を確実にする。
【0077】
本明細書では、好ましい抗CD47 IgG1 LC定常領域(配列番号339)がさらに提供される。特定の実施形態(例えば、本明細書に提供される二重特異性抗体の特定の実施形態)では、本明細書に提供される抗CD47 VL領域は、配列番号339のアミノ末端に融合される。配列番号340は、配列番号339の内部にある。配列番号339および配列番号440は、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中に適切なLC/HC対形成を確実にする置換Q124E、L135W、Q160E、およびT180Eを含む。
【0078】
IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中に適切なLC/HC対形成およびFcヘテロ二量体形成を確実にするための置換Q179K、T371V、T389L、K420L、およびT422Wを含む抗CD47 IgG1 HC定常領域が提供される。
【0079】
本明細書では、好ましい抗CD47 IgG1 HC定常領域(配列番号341)がさらに提供される。特定の実施形態(例えば、本明細書に提供される二重特異性抗体の特定の実施形態)では、本明細書に提供される抗CD47 VH領域は、配列番号341のアミノ末端に融合される。配列番号342は、配列番号341の内部にある。配列番号341および配列番号342は、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中にFcヘテロ二量体形成を確実にするための置換Q179K、T371V、T389L、K420L、およびT422Wを含む。
【0080】
抗CD20 IgG1 LC定常領域が提供され、リツキシマブと比較して、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中に適切なLC/HC対形成を確実にする置換F116A、Q124R、L135V、T178Rを含む。
【0081】
本明細書では、好ましい抗CD20 IgG1 LC定常領域(配列番号343)がさらに提供される。特定の実施形態(例えば、本明細書に提供される二重特異性抗体の特定の実施形態)では、本明細書に提供される抗CD20 VL領域は、配列番号343のアミノ末端に融合される。配列番号344は、配列番号343の内部にある。配列番号343および配列番号344は、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中にホモ二量体形成を低減する置換F116A、Q124R、L135V、およびT178Rを含む。
【0082】
抗CD20 IgG1 HC定常領域が提供され、リツキシマブと比較して、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中にFcヘテロ二量体形成を確実にする置換A139W、L143E、K145T、Q179E、T371V、L372Y、F436A、およびY438Vを含む。
【0083】
本明細書では、好ましい抗CD20 IgG1 HC定常領域(配列番号345)がさらに提供される。特定の実施形態(例えば、本明細書に提供される二重特異性抗体の特定の実施形態)では、本明細書に提供される抗CD20 VH領域は、配列番号345のアミノ末端に融合される。配列番号346は、配列番号345の内部にある。配列番号345および配列番号346は、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中にホモ二量体形成を低減する置換A139W、L143E、K145T、Q179E、T371V、L372Y、F436A、およびY438Vを含む。
【0084】
CD47×CD20二重特異体
CD47×CD20二重特異性プログラムを開始して、CD20発現細胞上でのみSIRPαへのヒトCD47の結合を遮断することができる治療抗体を同定した。そのプロジェクトから得られ、本明細書に提供される実施例は、CD47に対して脱調整された(detuned)親和性を示す一方で、CD20に対して高い親和性で結合する。腫瘍細胞上のCD20に結合すると、抗体は、IgG1 Fcを介して、エフェクター細胞上のCD47-SIRPα相互作用および共エンゲージ活性化受容体FcγRを強力に遮断し、腫瘍細胞に対するマクロファージ媒介性貪食およびナチュラルキラー(NK)細胞媒介性細胞傷害の活性化をもたらす。
【0085】
CC-90002に由来する抗CD47を含む二重特異性抗体
CD47エピトープマッピングおよびCC-90002
抗CD47エピトープは、ヒトCD47細胞外ドメインとの複合体で、非脱調整親バージョンのCC-90002(408_437)Fab(VL:配列番号387、VH:配列番号388)の結晶構造を、2.4Åの分解能で解析することによって決定された。3つの軽鎖(LC)CDR(配列番号347、配列番号348、配列番号349)、ならびに重鎖(HC)CDR2(配列番号351)およびHC CDR3(配列番号352)はすべて、CD47 ECDの大きな表面積への結合に関与する。HC CDRは、CD47のKGRDループとの複数の接触を行い、LC CDRは、SIRPα結合部位と重複し、これは、CC-90002および本明細書に記載の二重特異性実体がSIRPα結合を遮断する能力を説明する。
【0086】
本明細書に記載されるCD47×CD20二重特異性実体は、CD47+/CD20-正常細胞を温存しながら、CD20およびCD47の両方を発現するがん細胞上のCD47-SIRPα「私を食べないで(don’t eat me)」シグナルのCD20制限の遮断を促進するように設計されている。複数のステップのタンパク質工学により、本明細書に記載の二重特異性実体の抗CD47 Fabがもたらされた。(1)タンパク質工学をCC-90002のVH鎖およびVL鎖の両方に用いて、免疫原性を低減しながら、機能性を保持し、また(2)タンパク質工学をCC-90002を脱調整するためにも用いた。本明細書に記載および例示される、CD47に対する親和性が低下したCD47およびCD20を標的とするIgG1二重特異性抗体は、1)CD47-SIRPα相互作用を標的とし、活性化受容体FcγRを関与させることによって、抗腫瘍機能を媒介する有効性を保持し、2)標的媒介性のシンク効果および抗CD47治療薬で観察される毒性を最小限に抑え、3)CD47およびCD20の関与を単一分子に組み込み、2つのモノクローナル抗体による併用療法の必要性を回避する。
【0087】
タンパク質設計
エフェクター抗原であるCD47の結晶構造は、高親和性抗CD47 Fab(CC-90002(408_437VL:配列番号899、408_437VH:配列番号900))に結合して、より低い親和性、良好な安定性、および低い免疫原性の範囲を有することが予測されるFabバリアントのインシリコ(in silico)ライブラリの構築を導いた。このライブラリからのバリアントは、高親和性抗CD20 Fab(リツキシマブ(VL:配列番号323、VH:配列番号324))を有するIgG1二重特異体として発現された。
【0088】
得られた143種類の物理構築物を、CD47結合およびSIRPα遮断のための細胞ベースのアッセイを使用して選択性および効力についてスクリーニングして、選択性抗原CD20を共発現する標的細胞上でエフェクター抗原CD47に効果的に結合するが、エフェクター抗原CD47のみを発現する非標的細胞株には最小限に結合するバリアントを特定した。
【0089】
IgG1アイソタイプを含むがこれらに限定されないCC-90002と比較して、CD47に対する結合親和性が実質的に低減され、免疫原性が低減された抗CD47のLCおよびHC全体、LCおよびHC定常領域、VLおよびVH領域、ならびにCDR配列の例が本明細書に提供され、別途記載される。IgG1 1+1ヘテロ二量体形式は、以下に記載されるように、(A)1つの軽鎖(LC)全体および1つの重鎖(HC)全体を含む1つの抗CD47 IgG1(単量体)部分と、(B)1つの軽鎖(LC)全体および1つの重鎖(HC)全体を含む1つの抗CD20 IgG1(単量体)部分と、を含むことが好ましい。
【0090】
本発明の抗体は、それぞれ、CC-90002に由来するVLおよびVHアミノ酸配列(すなわち、配列番号325および配列番号326)を含み、CD47に対する結合親和性が、実質的に減弱され、すなわち、CD47に結合するFab部分が低親和性を示す。本明細書に記載の脱調整抗CD47結合剤のスクリーニングからのCD47に対する様々な親和性により、非標的細胞への結合が劇的に減少したが、それでもなお、CD20に結合した後に標的細胞の表面に動員されると、貪欲にもCD47に効果的に結合できることが見出された。初期の脱調整CD47×CD20二重特異性リードは、この選択性を、約0.5μM~約2.5μMの範囲の親和性で達成した(
図3A~
図3C)。TPP-1360は、例えば、ヒトCD47 ECDに対して、Kdが1.7μMの親和性を有することが測定され、親抗CD47結合剤と比較して、約350倍の親和性の低下を反映した。TPP-1362は、ヒトCD47 ECDに対して、Kdが0.796μMの親和性を有することが測定され、親抗CD47結合剤と比較して、約150倍の親和性の低下を反映した。本明細書に記載の脱調整CD47×CD20二重特異性実体は、約0.2μM~約4μMの範囲の親和性を有する選択性を示す。
【0091】
本明細書に記載の二重特異性実体は、CD20を発現する腫瘍細胞上でCD47に選択的に結合し、正常細胞では実質的にCD47に結合しない。本明細書に記載の二重特異性実体についての共培養結合アッセイにおける、Raji(CD47+CD20+)対ヒトRBCへの結合の比率は、例えば、約6000倍である。本明細書に記載の二重特異性実体についてのヒトB細胞(CD47+CD20+)対ヒトRBCへの結合の比率は、例えば、約700倍である。本明細書に記載される二重特異性実体の選択性のレベルは、腫瘍細胞および正常細胞におけるCD20およびCD47の発現レベルに応じて、約400~約8,000倍の範囲の選択性を示す。したがって、固定レベルのCD47発現を仮定すると、CD20レベルが増加するにつれて、本明細書に記載の二重特異性実体は、増加した選択性および効力を示す。
【0092】
本発明の例示的な抗体はまた、それぞれCC-90002に由来するVL領域およびVH領域(すなわち、配列番号325および配列番号326)を含み、VL、VH、またはその両方は、1つ以上のアミノ酸置換を含み、得られた抗体の免疫原性を実質的に低減する。本発明の例示的な抗体は、それぞれCC-90002に由来するVL領域およびVH領域(すなわち、配列番号325および配列番号326)を含み、VL、VH、または両方の配列は、1つ以上のアミノ酸置換を含み、得られた抗体のCD47に対する結合親和性を低減させ、得られた抗体の免疫原性を実質的に低減する。
【0093】
したがって、本明細書に記載のCC-90002に由来する好ましい抗体は、VL配列番号325に対して1~7個のアミノ酸置換を示し、VH配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示す。
【0094】
さらに、CC-90002に由来する抗体が、本明細書で企図され、別途機能的に記載され、VL配列番号325に対して8個のアミノ酸置換を示す。さらに、CC-90002に由来する抗体が、本明細書で企図され、別途機能的に記載され、VL配列番号325に対して9個のアミノ酸置換を示す。さらに、CC-90002に由来する抗体が、本明細書で企図され、別途機能的に記載され、VL配列番号325に対して10個のアミノ酸置換を示す。
【0095】
さらに、CC-90002に由来する抗体が、本明細書で企図され、別途機能的に記載され、VH配列番号326に対して12個のアミノ酸置換を示す。さらに、CC-90002に由来する抗体が、本明細書で企図され、別途機能的に記載され、VH配列番号326に対して13個のアミノ酸置換を示す。さらに、CC-90002に由来する抗体が、本明細書で企図され、別途機能的に記載され、VH配列番号326に対して14個のアミノ酸置換を示す。
【0096】
本明細書において、CD47抗体が提供され、抗CD47 VLは、配列番号325に対して1~7個のアミノ酸置換を示し、当該アミノ酸置換のうちの少なくとも1個は、A10S、M11L、K24R、A51E、N52S、L54F、およびS56Dからなる群から選択され、抗CD47 VHは、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示し、当該アミノ酸置換のうちの少なくとも1個は、T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115Lからなる群から選択される。
【0097】
また、本明細書において、CD47抗体が提供され、抗CD47 VLは、配列番号325に対して少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、または少なくとも7個のアミノ酸置換を示し、アミノ酸置換は、A10S、M11L、K24R、A51E、N52S、L54F、およびS56Dからなる群から選択される。
【0098】
本発明は、本明細書に記載の抗体を対象とし、抗CD47 VLは、配列番号325に対して少なくとも7個のアミノ酸置換を示し、アミノ酸置換のうちの7個は、A10S、M11L、K24R、A51E、N52S、L54F、およびS56Dである。
【0099】
本発明は、本明細書に記載の抗体を対象とし、抗CD47 VHは、配列番号326に対して、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、または11個のアミノ酸置換を示し、アミノ酸置換は、T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115Lからなる群から選択される。
【0100】
本発明は、本明細書に記載の抗体を対象とし、抗CD47 VHは、配列番号326に対して少なくとも11個のアミノ酸置換を示し、アミノ酸置換のうちの11個は、T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115Lである。
【0101】
抗CD47のLC(配列番号335)およびHC(配列番号336)は、本明細書に記載の二重特異性実体を構築するための抗CD47要素の好ましい供給源であり、特に、VL(配列番号319)およびVH(配列番号320)は、それぞれ、VL CDR:配列番号365(CDRL1)、配列番号366(CDRL2)、および配列番号367(CDRL3)、ならびにVH CDR:配列番号368(CDRH1)、配列番号369(CDRH2)、および配列番号370(CDRH3)を含む。置換A10S、M11L、K24R、A51E、N52S、L54F、およびS56Dは、CC-90002に関して重要なVL(配列番号319)置換であり、低CD47結合親和性をもたらし、免疫原性を低下させる。T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115Lは、CC-90002に関して重要なVH(配列番号320)であり、低CD47結合親和性(特に、E59YおよびS102E)をもたらし、免疫原性を低下させる。本明細書に別途記載される抗CD47 IgG1のLCおよびHCの定常領域(例えば、それぞれ、配列番号339および配列番号341)は、特定の実施形態では、VL(配列番号319)およびVH(配列番号320)のカルボキシ末端に融合される。抗CD47 LC(配列番号335)は、本発明の二重特異性実体の構築に用いることが好ましい。抗CD47 HC(配列番号336)は、本発明の二重特異性実体の構築に用いることが好ましい。置換Q124E、L135W、Q160E、およびT180Eは、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中に適切なLC/HC対形成を確実にするために重要な配列番号335の位置である。置換Q179K、T371V、T389L、K420L、およびT422Wは、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中のホモ二量体形成の傾向を低減するために重要な配列番号336の位置である。
【0102】
本発明はさらに、本明細書に別途記載される抗体を対象とし、抗CD47 VLは、配列番号325に対して1~3個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VL(配列番号325)における少なくとも1個、少なくとも2個、または少なくとも3個のアミノ酸置換は、A10S、M11L、およびK24R(例えば、配列番号321)からなる群から選択され、抗CD47 VHは、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VH(配列番号326)における少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、または少なくとも11個のアミノ酸置換は、T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115L(例えば、配列番号322)からなる群から選択される。
【0103】
本発明は、本明細書に別途記載される抗体を特に対象とし、抗CD47 VHは、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VH(配列番号326)における少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、または少なくとも11個のアミノ酸置換は、T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115L(例えば、配列番号322)からなる群から選択される。
【0104】
抗CD47のLC(配列番号337)およびHC(配列番号338)は、本明細書に記載の二重特異性実体を構築するための抗CD47要素の好ましい供給源であり、特に、VL(配列番号321)およびVH(配列番号322)は、それぞれ、VL CDR:配列番号371、配列番号372、および配列番号373、ならびにVH CDR:配列番号374、配列番号375、および配列番号376を含む。A10S、M11L、およびK24Rは、低CD47結合親和性をもたらし、免疫原性を低下させるための重要なVL(配列番号321)位置である。置換T14P、Q43K、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84R、S88A、M93V、S102E、およびT115Lは、低CD47結合親和性(特に、E59YおよびS102E)をもたらし、免疫原性を低下させる重要なVH(配列番号322)位置である。抗CD47 IgG1のLCおよびHCの定常領域(例えば、それぞれ、配列番号339および配列番号341)は、VL(配列番号321)およびVH(配列番号322)のカルボキシ末端に融合される。抗CD47 LC(配列番号337)は、本発明の二重特異性実体の構築に用いることが好ましい。抗CD47HC(配列番号338)は、本発明の二重特異性実体の構築に用いることが好ましい。置換Q124E、L135W、Q160E、およびT180Eは、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中にホモ二量体形成の傾向を低減するための重要な配列番号337の位置である。置換Q179K、T371V、T389L、K420L、およびT422Wは、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中のホモ二量体形成の傾向を低減するための重要な配列番号338の位置である。
【0105】
本発明は、本明細書に別途記載される抗体を特に対象とし、抗CD47 VLは、配列番号325に対して1~10個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VL(配列番号325)における少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、または少なくとも10個のアミノ酸置換は、A10S、M11L、K24Q、K39D、K42T、K45Q、A51E、N52S、L54F、およびS56D(例えば、配列番号317)からなる群から選択され、抗CD47 VHは、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VH(配列番号326)における少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、または少なくとも11個のアミノ酸置換は、T14P、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84A、R87T、S88A、M93V、S102E、およびT115L(例えば、配列番号318)からなる群から選択される。
【0106】
本発明は、本明細書に別途記載される抗体を特に対象とし、抗CD47 VHは、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示し、抗CD47 VH(配列番号326)における少なくとも1個、少なくとも2個、少なくとも3個、少なくとも4個、少なくとも5個、少なくとも6個、少なくとも7個、少なくとも8個、少なくとも9個、少なくとも10個、または少なくとも11個のアミノ酸置換は、T14P、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84A、R87T、S88A、M93V、S102E、およびT115L(例えば、配列番号318)からなる群から選択される。
【0107】
抗CD47のLC(配列番号333)およびHC(配列番号334)は、本明細書に記載の二重特異性実体の構築のための抗CD47要素の好ましい供給源であり、特に、VL(配列番号317)およびVH(配列番号318)は、それぞれ、VL CDR:配列番号359、配列番号360、および配列番号361、ならびにVH CDR:配列番号362、配列番号363、および配列番号364を含む。置換A10S、M11L、K24Q、K39D、K42T、K45Q、A51E、N52S、L54F、およびS56Dは、低CD47結合親和性をもたらし、免疫原性を低下させるための重要なVL位置(配列番号317)である。置換T14P、A44G、E59Y、D66G、M76T、S84A、R87T、S88A、M93V、S102E、およびT115Lは、低CD47結合親和性(特にE59YおよびS102E)をもたらし、免疫原性を低下させる重要なVH(配列番号318)位置である。抗CD47 IgG1のLCおよびHCの定常領域(例えば、それぞれ、配列番号339および配列番号341)は、VL(配列番号317)およびVH(配列番号318)のカルボキシ末端に融合される。抗CD47のLC(配列番号333)は、本発明の二重特異性実体の構築に使用するために好ましい。抗CD47HC(配列番号334)は、本発明の二重特異性実体の構築に用いることが好ましい。置換Q124E、L135W、Q160E、およびT180Eは、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中のホモ二量体形成の傾向を低減するために重要な配列番号333の位置である。置換Q179K、T371V、T389L、K420L、およびT422Wは、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中のホモ二量体形成の傾向を低減するための重要な配列番号334の位置である。
【0108】
本明細書に記載および企図される例示的な抗体は、抗CD20のVL CDRであるRASSSVSYIH(配列番号353)、ATSNLAS(配列番号354)、およびQQWTSNPPT(配列番号355)、ならびにVH CDRであるSYNMH(配列番号356)、AIYPGNGDTSYNQKFKG(配列番号357)、およびSTYYGGDWYFNV(配列番号358)を含む。本明細書に別途記載される例示的な二重特異性抗体は、抗CD20 VL(配列番号323)およびVH(配列番号324)を含む。本明細書に機能的に記載される好ましい種類の二重特異性抗体の例は、抗CD20 LC(配列番号331)および抗CD20 HC(配列番号332)を含む。
【0109】
CC-90002に由来する脱調整抗CD47 VL/VH Fabの161例
本明細書において、親抗体CC-90002に由来する161個のVLおよびVH Fabが、さらに提供される。161個のFabの各々について、VLアミノ酸配列は、奇数の配列番号1~321として提供され、VHアミノ酸誘導配列は、偶数の配列番号2~322として提供されている。特定されたFab(VL/VH対)は、各々、隣接する配列番号の対として番号付けされる(すなわち、以下のパターンに従って本明細書に開示される):配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4などから、配列番号321/配列番号322まで。
【0110】
配列番号1/配列番号2、配列番号3/配列番号4、配列番号5/配列番号6、配列番号7/配列番号8、配列番号9/配列番号10、配列番号11/配列番号12、配列番号13/配列番号14、配列番号15/配列番号16、配列番号17/配列番号18、配列番号19/配列番号20、配列番号21/配列番号22、配列番号23/配列番号24、配列番号25/配列番号26、配列番号27/配列番号28、配列番号29/配列番号30、配列番号31/配列番号32、配列番号33/配列番号34、配列番号35/配列番号36、配列番号37/配列番号38、配列番号39/配列番号40、配列番号41/配列番号42、配列番号43/配列番号44、配列番号45/配列番号46、配列番号47/配列番号48、配列番号49/配列番号50、配列番号51/配列番号52、配列番号53/配列番号54、配列番号55/配列番号56、配列番号57/配列番号58、配列番号59/配列番号60、配列番号61/配列番号62、配列番号63/配列番号64、配列番号65/配列番号66、配列番号67/配列番号68、配列番号69/配列番号70、配列番号71/配列番号72、配列番号73/配列番号74、配列番号75/配列番号76、配列番号77/配列番号78、配列番号79/配列番号80、配列番号81/配列番号82、配列番号83/配列番号84、配列番号85/配列番号86、配列番号87/配列番号88、配列番号89/配列番号90、配列番号91/配列番号92、配列番号93/配列番号94、配列番号95/配列番号96、配列番号97/配列番号98、配列番号99/配列番号100、配列番号101/配列番号102、配列番号103/配列番号104、配列番号105/配列番号106、配列番号107/配列番号108、配列番号109/配列番号110、配列番号111/配列番号112、配列番号113/配列番号114、配列番号115/配列番号116、配列番号117/配列番号118、配列番号119/配列番号120、配列番号121/配列番号122、配列番号123/配列番号124、配列番号125/配列番号126、配列番号127/配列番号128、配列番号129/配列番号130、配列番号131/配列番号132、配列番号133/配列番号134、配列番号135/配列番号136、配列番号137/配列番号138、配列番号139/配列番号140、配列番号141/配列番号142、配列番号143/配列番号144、配列番号145/配列番号146、配列番号147/配列番号148、配列番号149/配列番号150、配列番号151/配列番号152、配列番号153/配列番号154、配列番号155/配列番号156、配列番号157/配列番号158、配列番号159/配列番号160、配列番号161/配列番号162、配列番号163/配列番号164、配列番号165/配列番号166、配列番号167/配列番号168、配列番号169/配列番号170、配列番号171/配列番号172、配列番号173/配列番号174、配列番号175/配列番号176、配列番号177/配列番号178、配列番号179/配列番号180、配列番号181/配列番号182、配列番号183/配列番号184、配列番号185/配列番号186、配列番号187/配列番号188、配列番号189/配列番号190、配列番号191/配列番号192、配列番号193/配列番号194、配列番号195/配列番号196、配列番号197/配列番号198、配列番号199/配列番号200、配列番号201/配列番号202、配列番号203/配列番号204、配列番号205/配列番号206、配列番号207/配列番号208、配列番号209/配列番号210、配列番号211/配列番号212、配列番号213/配列番号214、配列番号215/配列番号216、配列番号217/配列番号218、配列番号219/配列番号220、配列番号221/配列番号222、配列番号223/配列番号224、配列番号225/配列番号226、配列番号227/配列番号228、配列番号229/配列番号230、配列番号231/配列番号232、配列番号233/配列番号234、配列番号235/配列番号236、配列番号237/配列番号238、配列番号239/配列番号240、配列番号241/配列番号242;配列番号243/配列番号244、配列番号245/配列番号246、配列番号247/配列番号248、配列番号249/配列番号250、配列番号251/配列番号252、配列番号253/配列番号254、配列番号255/配列番号256、配列番号257/配列番号258、配列番号259/配列番号260、配列番号261/配列番号262、配列番号263/配列番号264、配列番号265/配列番号266、配列番号267/配列番号268、配列番号269/配列番号270、配列番号271/配列番号272、配列番号273/配列番号274、配列番号275/配列番号276、配列番号277/配列番号278、配列番号279/配列番号280、配列番号281/配列番号282、配列番号283/配列番号284、配列番号285/配列番号286、配列番号287/配列番号288、配列番号289/配列番号290、配列番号291/配列番号292、配列番号293/配列番号294、配列番号295/配列番号296、配列番号297/配列番号298、配列番号299/配列番号300、配列番号301/配列番号302、配列番号303/配列番号304、配列番号305/配列番号306、配列番号307/配列番号308、配列番号309/配列番号310、配列番号311/配列番号312、配列番号315/配列番号316、配列番号317/配列番号318、配列番号319/配列番号320、および配列番号321/配列番号322。
【0111】
示された各対は、それ自体が好ましいものの、本開示はそれらに限定されない。本明細書に開示されるVLおよびVHの領域種の集団は、別個の対、すなわち、提供されるVLおよびVHの領域種の集団から選択される多様なFabを形成するために用いることができる。
【0112】
本明細書に別途機能的に記載される例示的な抗体が提供され、抗CD47 VLは、配列番号1、配列番号3、配列番号5、配列番号7、配列番号9、配列番号11、配列番号13、配列番号15、配列番号17、配列番号19、配列番号21、配列番号23、配列番号25、配列番号27、配列番号29、配列番号31、配列番号33、配列番号35、配列番号37、配列番号39、配列番号41、配列番号43、配列番号45、配列番号47、配列番号49、配列番号51、配列番号53、配列番号55、配列番号57、配列番号59、配列番号61、配列番号63、配列番号65、配列番号67、配列番号69、配列番号71、配列番号73、配列番号75、配列番号77、配列番号79、配列番号81、配列番号83、配列番号85、配列番号87、配列番号89、配列番号91、配列番号93、配列番号95、配列番号97、配列番号99、配列番号101、配列番号103、配列番号105、配列番号107、配列番号109、配列番号111、配列番号113、配列番号115、配列番号117、配列番号119、配列番号121、配列番号123、配列番号125、配列番号127、配列番号129、配列番号131、配列番号133、配列番号135、配列番号137、配列番号139、配列番号141、配列番号143、配列番号145、配列番号147、配列番号149、配列番号151、配列番号153、配列番号155、配列番号157、配列番号159、配列番号161、配列番号163、配列番号165、配列番号167、配列番号169、配列番号171、配列番号173、配列番号175、配列番号177、配列番号179、配列番号181、配列番号183、配列番号185、配列番号187、配列番号189、配列番号191、配列番号193、配列番号195、配列番号197、配列番号199、配列番号201、配列番号203、配列番号205、配列番号207、配列番号209、配列番号211、配列番号213、配列番号215、配列番号217、配列番号219、配列番号221、配列番号223、配列番号225、配列番号227、配列番号229、配列番号231、配列番号233、配列番号235、配列番号237、配列番号239、配列番号241、配列番号243、配列番号245、配列番号247、配列番号249、配列番号251、配列番号253、配列番号255、配列番号257、配列番号259、配列番号261、配列番号263、配列番号265、配列番号267、配列番号269、配列番号271、配列番号273、配列番号275、配列番号277、配列番号279、配列番号281、配列番号283、配列番号285、配列番号287、配列番号289、配列番号291、配列番号293、配列番号295、配列番号297、配列番号299、配列番号301、配列番号303、配列番号305、配列番号307、配列番号309、配列番号311、配列番号313、配列番号315、配列番号317、配列番号319、および配列番号321からなる群から選択され、ならびに抗CD47 VHは、配列番号2、配列番号4、配列番号6、配列番号8、配列番号10、配列番号12、配列番号14、配列番号16、配列番号18、配列番号20、配列番号22、配列番号24、配列番号26、配列番号28、配列番号30、配列番号32、配列番号34、配列番号36、配列番号38、配列番号40、配列番号42、配列番号44、配列番号46、配列番号48、配列番号50、配列番号52、配列番号54、配列番号56、配列番号58、配列番号60、配列番号62、配列番号64、配列番号66、配列番号68、配列番号70、配列番号72、配列番号74、配列番号76、配列番号78、配列番号80、配列番号82、配列番号84、配列番号86、配列番号88、配列番号90、配列番号92、配列番号94、配列番号96、配列番号98、配列番号100、配列番号102、配列番号104、配列番号106、配列番号108、配列番号110、配列番号112、配列番号114、配列番号116、配列番号118、配列番号120、配列番号122、配列番号124、配列番号126、配列番号128、配列番号130、配列番号132、配列番号134、配列番号136、配列番号138、配列番号140、配列番号142、配列番号144、配列番号146、配列番号148、配列番号150、配列番号152、配列番号154、配列番号156、配列番号158、配列番号160、配列番号162、配列番号164、配列番号166、配列番号168、配列番号170、配列番号172、配列番号174、配列番号176、配列番号178、配列番号180、配列番号182、配列番号184、配列番号186、配列番号188、配列番号190、配列番号192、配列番号194、配列番号196、配列番号198、配列番号200、配列番号202、配列番号204、配列番号206、配列番号208、配列番号210、配列番号212、配列番号214、配列番号216、配列番号218、配列番号220、配列番号222、配列番号224、配列番号226、配列番号228、配列番号230、配列番号232、配列番号234、配列番号236、配列番号238、配列番号240、配列番号242、配列番号244、配列番号246、配列番号248、配列番号250、配列番号252、配列番号254、配列番号255、配列番号258、配列番号260、配列番号262、配列番号264、配列番号266、配列番号268、配列番号270、配列番号272、配列番号274、配列番号276、配列番号278、配列番号280、配列番号282、配列番号284、配列番号286、配列番号288、配列番号290、配列番号292、配列番号294、配列番号296、配列番号298、配列番号300、配列番号302、配列番号304、配列番号306、配列番号308、配列番号310、配列番号312、配列番号314、配列番号316、配列番号318、配列番号320、および配列番号322からなる群から選択される。
【0113】
本発明のCD47×CD20二重特異性実体の特性
エフェクター抗原CD47の細胞外ドメインを用いたインビトロ親和性測定により、最初に、これらのバリアントに対する親和性が100~200倍低下したことが明らかになった。CD47の細胞外ドメインを用いたインビトロ親和性測定により、バリアントの親和性が100~500倍減少することが明らかになった。これらの脱調整IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の二重特異体を用いたインビボおよびインビトロの細胞ベースの研究から、単一特異性抗体と比較して、エフェクターベースの細胞死滅および非標的細胞型への結合の減少を確認した。抗CD20 VL:配列番号323、抗CD20 VH:配列番号324。抗CD20 LC定常領域は、配列番号343である。抗CD20 HC定常領域は、配列番号345である。
【0114】
本明細書に記載され、例示され、特許請求される二重特異性実体は、CD20発現細胞への選択的結合を示し、例えば、CD47とマクロファージチェックポイント阻害剤であるシグナル制御タンパク質α(SIRPα)との相互作用が阻害される。単一特異性抗CD47のアプローチよりも増加したこの選択性は、IgG1 Fcの使用を可能にし、活性化断片である結晶化可能なγ受容体(FcγR)に関与して、マクロファージを完全に増強させて、CD20陽性細胞を貪食させ、破壊する。例えば、抗CD20抗体であるリツキシマブと比較して、本明細書に記載および例示される抗CD47/抗CD20二重特異性抗体は、インビトロでの貪食およびADCCの誘導においてより強力である。
【0115】
インビトロの細胞ベースの研究は、本明細書に記載の脱調整CD47二重特異性実体が、抗体依存性細胞貪食、補体依存性細胞傷害(CDC)、および抗体依存性細胞傷害(ADCC)を活性化することを実証する。
図4A~
図4Cおよび
図5A~
図5Cを参照されたい。さらに、カニクイザル(cyno)の薬物動態(PK)および探索的毒性(E-tox)試験の実験は、脱調整CD47二重特異体が、親の単一特異性抗CD47抗体と比較して、B細胞を効果的に枯渇させ、カニクイザル赤血球(RBC)への結合を低減させた。それによって、本明細書に記載および特許請求される標的細胞の選択性戦略の成功および医学的価値が、実質的に確認された。本明細書に例示される種は、非ヒト霊長類への複数回の投与後、血液学的パラメータに見られる最小限の有害な作用を伴うCD20
+B細胞の好ましい薬物動態および枯渇を示す。
【0116】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるCD47×CD20二重特異体は、TPP-1360、TPP-1361、TPP-1367、およびTPP-1362と称され、以下のような重鎖配列および軽鎖配列を含む:TPP-1360は、(CD47 LC配列番号335、HC配列番号336)×(CD20 LC配列番号331、HC配列番号332)を含む。TPP-1361は、(CD47 LC配列番号333、HC配列番号334)×(CD20 LC配列番号331、HC配列番号332)を含む。TPP-1367は、(CD47 LC配列番号337、HC配列番号338)×(CD20 LC配列番号331、HC配列番号332)を含む。TPP-1362は、(CD47 LC配列番号385、HC配列番号386)×(CD20 LC配列番号331、HC配列番号332)を含む。
【0117】
TPP-1362に関して、CD47 VLは、配列番号383を含む。TPP-1362のCD47 VHは、配列番号384を含む。TPP-1362のCD47 VL CDRは、配列番号377(CDRL1)、配列番号378(CDRL2)、および配列番号379(CDRL3)を含む。TPP-1362のCD47 VH CDRは、配列番号380(CDRH1)、配列番号381(CDRH2)、および配列番号382(CDRH3)を含む。
【0118】
本明細書に別途記載される属内の一連の二重特異性実体の例は、一般に、属の治療価値を示す薬理学的特徴を示すことが実証される。
これらの高く評価された種は、例えば、CD20に対する高い親和性およびCD47に対する脱調整親和性を示し、有効なCD47遮断、カニクイザル(cyno)-交差反応性、良好な物理化学的特性(溶解性、安定性、発現)、および低免疫原性予測(EpiVax)を示す。実施例13、
図18を参照されたい。IgG1ヘテロ二量体形式およびFcは、標準的なCHOプロセスを使用して、十分な量および純度で信頼性の高い産生を付与し、相適切な力価、収率、製品品質および液体組成を有する。これらの高く評価された例示的な種は、CC-90002よりも優れたCD20
+腫瘍細胞のインビトロ貪食能を示し、リツキシマブよりも強力なADCCを示す。これらの高く評価された例示的な種はまた、末梢血およびリンパ組織におけるカニクイザルB細胞の顕著な減少を示す。これらの高く評価された例示的な種はまた、CD20
-CD47
+健常な細胞(RBCおよび血小板)への結合を伴わない最小限のシンク効果を示す。これらの高く評価された例示的な種はまた、例えば、毎週の投薬を支持する許容されるPKパラメータを示す。
【0119】
例えば、TPP-1360のRBC結合能を、精製されたヒトRBCにおいて、およびヒトRBCの腫瘍細胞との共培養において、広範に評価された。
図8に示されるように、TPP-1360は、CD47
+/CD20
+のRaji細胞に選択的に結合するが、CD47
+/CD20
-のヒトRBCには結合しないことが実証される。さらに、Raji細胞とヒトRBCの共培養では、TPP-1360は、CD47
+/CD20
+Raji細胞に対して用量依存的な結合を示したが、ヒトRBCに対しては1mg/mLの高い濃度でさえも結合を示さなかった。
図9を参照されたい。むしろ、CD47野生型/CD20二重特異性TPP-2は、Raji細胞およびヒトRBCの両方に有意に結合した。さらに、TPP-1360は、複数のドナーから精製されたカニクイザルRBCへの結合を示さない。
【0120】
本開示の例示的な種類の二重特異性実体であるTPP-1360は、CD47およびCD20を共標的とするファースト・イン・クラス抗体であり、CD20には高親和性で結合し、CD47には最適に脱調整された親和性で結合するように設計されている。CD20発現細胞に結合した場合、例えば、TPP-1360は、マクロファージチェックポイント阻害剤のSIRPαとCD47との相互作用を遮断するだけでなく、FcγRの活性化に関与して、マクロファージを完全に増強させて、CD20陽性細胞を貪食させ、破壊する。潜在的なインビトロ活性は、TPP-1360によって、例えば、貪食、ADCC、およびCDCを含む複数の作用様式を介してがん細胞を排除するように誘導される。本明細書に記載の二重特異性実体の例であるTPP-1360は、リツキシマブおよびCC-90002を上回る増強された薬理学的活性を提供する。
【0121】
本明細書に記載され、特許請求されるCD47×CD20二重特異性実体は、単剤としてのリツキシマブまたはCC-90002と比較して、強化された貪食を示す。本明細書に記載のCD47×CD20二重特異性実体の貪食活性は、概して、それらのCD47結合親和性と相関する。本明細書に記載のCD47×CD20二重特異性実体は、貪食を誘導する際、単剤活性が、CC-90002とリツキシマブの組み合わせと同等である。
【0122】
本明細書に記載のCD47×CD20二重特異性実体は、単剤抗CD47活性と比較して、リツキシマブ感受性および耐性の腫瘍細胞において改善されたADCCを示す。
【0123】
本明細書に記載のCD47×CD20二重特異性実体は、Raji NOD-SCIDモデルにおいて、インビボでリツキシマブよりも優れた有効性を示す。実施例15を参照されたい。
【0124】
TPP-1360は、リツキシマブを上回る貪食およびADCC活性の両方を増強する。加えて、TPP-1360および本明細書に記載され、例示され、および特許請求される関連する二重特異性実体は、Regeneron製のREGN1979またはRoche製のモスネツズマブ(現在、臨床使用)などのCD20×CD3二重特異性T細胞エンゲージャーとは差別化される。それは、T細胞活性化と比較して、貪食、ADCC、およびCDCを含む異なる作用様式を有するためである。さらに、毒性プロファイルも、CD20×CD3とは異なる(潜在的な血液毒性、対してサイトカイン放出症候群)。特に、T細胞エンゲージャーは、強力な免疫エンゲージャーであり、非常に低いレベルの標的抗原を発現する非標的細胞のアポトーシスを引き起こす可能性があり、したがって、標的抗原は、極めて特異的であるか、または二重特異性の抗標的アームは、マスキング技術を用いるか、または正常組織および疾患組織上の標的抗原の発現レベル間を区別するように調整する必要がある。さらに、二重特異性の抗CD3部分は、T細胞の全身活性化によるサイトカイン放出を防止するために正確に調整される必要がある。重要なことに、TPP-1360は、本明細書の代表例として、非ヒト霊長類への複数回の投与後の血液学的パラメータに見られる最小限の有害な作用を伴う有利な除去動態を示す。本発明のCD47×CD20二重特異性抗体は、とりわけ、Bリンパ腫患者、例えば、難治性および/または現在の療法に耐性の患者の静脈内(IV)注射治療として開発される。
【0125】
本明細書に記載の二重特異性実体は、これらに限定されないが、異常増殖を起こしている細胞、血液腫瘍状態、血液悪性腫瘍、リンパ増殖性障害、B細胞障害、B細胞悪性腫瘍、および/またはB細胞リンパ腫を含む腫瘍、腫瘍細胞、がんの治療方法および/または抑制方法を提供する。本発明の二重特異性実体は、抗体の最新技術に従って、治療実体として製剤化され、投与される。例えば、IgG1抗体の製剤化および投与の標準は、当該技術分野で周知である。本明細書に記載の抗体は、例えば、CD20陽性B細胞リンパ腫の患者の静脈内(IV)注射治療として投与される。本発明は、腫瘍細胞を抑制する方法を対象とし、それを必要とする患者に、有効量の本明細書に記載の二重特異性実体を投与することを含む。腫瘍細胞は、がん細胞を指し、異常増殖を起こしている細胞、血液腫瘍状態、血液悪性腫瘍、リンパ増殖性障害、B細胞障害、B細胞悪性腫瘍、およびB細胞リンパ腫を含むが、これらに限定されない。
【0126】
本明細書に記載のCD47×CD20二重特異性実体は、特に、B細胞障害またはB細胞悪性腫瘍の治療方法で用いられるように提供され、それを必要とする患者に、有効量の本明細書に記載の二重特異性実体を投与することを含む。
【0127】
アロメトリーおよびヒト薬物動態は、本明細書に記載の二重特異性実体について評価される。本発明の実体は、脱調整CD47結合アームと、規則的なCD20(リツキシマブ)結合アームとを含む。CD47アームの脱調整された結合親和性を考慮すると、二重特異性実体に対する標的媒介性薬物消失(TMDD)は、潜在的に主にCD20結合によって駆動される。したがって、特定の実施形態では、臨床用量は、現在リツキシマブに使用されている用量の範囲内である。カニクイザルにおける10、20、および100mg/kgの用量に基づいて、終末相半減期は約7日である。CD20媒介性TMDDは、リツキシマブの追加の前臨床データおよび臨床データに基づく。ファースト・イン・ヒューマン臨床試験は、非盲検多施設第1/1b相試験であり、リツキシマブおよび/または他のCD20標的療法で進行した再発性または難治性のCD20+ NHLを有する対象の安全性と耐容性を評価する。用量漸増は、1mg/kg未満で開始し、次いで、リツキシマブの現在の臨床用量である10mg/kgに漸増する。カニクイザルに、20mg/kgを2回、1日目および15日目に投薬した。本明細書に記載の二重特異性実体は、用量に比例した曝露を伴うNHP eTOX試験において、単剤として良好な耐容性を示すことが見出されている。本明細書に記載の二重特異性実体の哺乳動物またはヒトの用量は、約3mg/kg~約20mg/kgの範囲内である。本明細書に記載の二重特異性実体のさらなる哺乳動物またはヒトの用量は、特に、約5mg/kg~約15mg/kgの範囲内である。また、本明細書に記載の二重特異性実体の哺乳動物またはヒトの用量は、約7mg/kg~約13mg/kgである。本明細書に記載の二重特異性実体の投薬レジメンは、約5日に1回、または約1週間(7日)に1回、または約10日に1回、または約2週間に1回である。
【0128】
本明細書に記載の二重特異性抗体の製造プロセスは、典型的なチャイニーズハムスター卵巣(CHO)製造プラットフォームに従ってもよい。これらの二重特異性抗体の精製において観察される一般的な混入物質は、半抗体であり、除去するために特定の精製プロトコルを必要とする。チャイニーズハムスター卵巣細胞における4本鎖二重特異性の発現後、プロテインAを、IgGベースの二重特異性を精製するための最初のステップとして使用する。この第1のステップに続いて、概して、所望の4本鎖二重特異性抗体および半抗体という2つの種類が存在する。ほとんどの場合、イオン交換クロマトグラフィーはこれら2種類を分離するのに十分であるが、他の場合は、疎水性相互作用クロマトグラフィーが必要とされ得る。LCの正しいペアリングは、質量分析によって評価され、イオン交換クロマトグラフィーまたは疎水性相互作用クロマトグラフィーなどの追加のタンパク質精製方法によってミスアセンブリの不純物を除去する必要がある。二次精製アプローチのいずれかに従い、調製サイズの排除クロマトグラフィー(SEC)を使用して、4本鎖二重特異体を緩衝液交換しながら、立体構造の均一性を研磨し、確保することができる。最終的な品質管理は、二重特異体の立体構造および化学的完全性を確実にするために、分析SEC、質量分析、および異なる抗原とのインビト結合評価を含むべきである。例えば、J.B.Ridgway et al.,Protein Eng.9(1996)617-621、K.Gunasekaran et al.,J.Biol.Chem.285(2010)19637-19646を参照されたい。本明細書に記載のIgG1 1+1ヘテロ二量体の好ましい単量体要素は、各々、上で論じた特定のLCおよびHCの定常領域配列を含み、IgG1 1+1ヘテロ二量体形式の産生中にホモ二量体形成の傾向を低減するために本明細書で特定される。
【実施例0129】
実施例1:CC-90002の脱調整
非脱調整親バージョンCC-90002(408_437)の抗CD47アームの親和性を低減するための合理的な設計は、CD47の細胞外ドメインに結合した抗CD47 Fabの結晶構造により可能になった。CC-90002が結合したエピトープは、ヒトCD47に結合した元のマウス抗CD47 2A1のエピトープと同一である。米国特許第9,045,541号を参照されたい。
【0130】
2A1の可変ドメインをヒト化し、HC_2.3QとLC_Nからなる最終抗体を「QN」と命名し、最終的に、IgG4P/E形式(CC-90002)として開発した。無細胞発現を改善するために、可変重ドメインに残基を導入することによって、QNをさらに修飾した。このHCバリアントは、「HC_Q_5_MUT」と命名された。HC_Q_5_MUT HCおよびLC_Nを、インシリコモデリングおよび免疫原性のインシリコ予測を使用して、それらの免疫原性を低減するためにさらに修飾した。これらは、「CD47 2.0」と総称される。CD47 2.0 LC_1147_2およびCD47 2.0 HC_434の可変重ドメインおよび可変軽ドメインにおけるさらなるバリアントを、薬物動態を改善するために設計した。これらは、「CD473.0」と称される。WO2016/109415(US2017/0369572)、WO2018/009499(US2019/0241654)、およびWO2018/183182を参照されたい(それらの各々は、参照により本明細書に援用される)。
【0131】
抗CD47エピトープは大きな表面積を覆い、軽鎖(LC)および重鎖(HC)の両方からの残基が相互作用に関与する。
【0132】
CD47に対する抗CD47アームの親和性を低減するために、LCおよびHCの両方からのCD47相互作用残基を、Molecular Operating Environment(MOE)モデリングプログラムからの「残基スキャン」モジュールを使用して、インシリコ変異誘発に供した。このプロセスで、広範囲の予測される親和性を有する数千のバリアントのライブラリが作成された。インシリコFabバリアントの各々をモデル化して、安定性(dStability)の予測される変化またはCD47 ECD(dAffinity)に対する親和性の変化を計算した。正のdAffinityスコア(親Fabと比較して低い親和性を有すると予測される)および負のdStability(親Fabよりも高い安定性を有すると予測される)を有する5,000を超えるバリアントを、免疫原性評価ソフトウェアを使用して分析し、低い免疫原性を有すると予測されるバリアントを特定した。これらのうち、10nM~1mMの範囲のCD47についての予測Kdを有する143個の免疫原性のリスクが低いFabバリアントを、細胞ベースの試験用に選択した。
【0133】
標的細胞選択性の抗CD47 Fabをスクリーニングするために、選択された抗CD47 Fabバリアントを、IgG1融合物として構築し、セツキシマブ由来の抗EGFRアームと対形成させた。4本鎖二重特異体の適切なアセンブリは、本明細書に記載のFab置換およびFc置換がすべての4本鎖に存在することによって可能になった。143個の選択されたバリアントを含む4本鎖二重特異体をExpi-CHO細胞で一過的に発現させ、磁気プロテインAビーズを使用して単一ステップで二重特異体を精製した。標的細胞選択性の二重特異体を特定するために、バリアントを2つの実験で試験した。第1の実験は、脱調整抗CD47×抗EGFR二重特異体が、CD47抗原を発現するがEGFR抗原を発現しない非標的Raji細胞株に結合する能力を測定した。第2の実験は、脱調整抗CD47×抗EGFR二重特異体が、CD47抗原およびEGFR抗原を発現する標的Fadu細胞株へのSIRPαの結合を遮断する能力を測定した。これらの実験から、非標的CD47+/EGFR-Raji細胞株に対する親和性が、非脱調整抗CD47×抗EGFR親抗体と比較して10倍~20倍低下したが、それでもCD47+/+EGFRFadu標的細胞株へのSIRPαの結合を75~90%遮断することができた8個のバリアントのセットが得られた。
【0134】
同様に、リツキシマブの抗CD20アームを、IgG1 Fcを使用して、8つの脱調整抗CD47バリアントと対形成させた。脱調整CD47×CD20二重特異体は、非脱調整CD47×CD20親抗体と比較して、CD47+/CD20-非標的Fadu細胞株への結合を低下させたが、それでもCD47およびCD20陽性である標的Raji細胞株へのSIRPαの結合を75~90%遮断し得たことが観察された。
【0135】
バリアントのさらなる開発可能性の評価は、カニクイザルにおける薬物動態試験用の、3つのCC-90002由来のフレームワークにクローニングされた単一の抗CD47 FabバリアントVH E59Y/S102Eの選択につながった:TPP-1367、TPP-1360、およびTPP-1361。
【0136】
実施例2:本明細書に記載の二重特異性実体のSPR結合の結果の概要
表面プラズモン共鳴(SPR)実験を使用して、TPP-1360およびTPP-1362のCD47に対する親和性を測定した。これらの2つの抗体を、ヒトCD47およびカニクイザルCD47への結合について試験し、マウスCD47には結合しないことが見出された。TPP-1360は、Kdが1.7μMのヒトCD47 ECDに対する親和性を有することが測定され、これは、親抗CD47結合剤と比較して、約350倍の親和性の低下を反映する。カニクイザルCD47 ECDに対するTPP-1360の親和性は、Kdが4.51μMであることが見出された。TPP-1362を測定すると、Kdが0.796μMのヒトCD47 ECDに対する親和性を有することが測定され、これは、親抗CD47結合剤と比較して、約150倍の親和性の低下を反映する。カニクイザルCD47 ECDに対するTPP-1362の親和性は、Kdが2.06μMであることを見出した。最後に、測定された親和性に加えて、サンドイッチSPRアッセイにより、CD47およびCD20の両方に同時に結合したことが実証された。
【0137】
実施例3:例示的な二重特異性実体の結合およびSIRPα遮断の用量反応
様々なCD20を発現する非ホジキンリンパ腫の腫瘍細胞株に対するヒトSIRPαの結合のTPP-1360およびTPP-1362遮断に関する用量反応曲線を生成した。細胞株を、いずれかの二重特異体の濃度を増加させながらインキュベートし、次いでヒトSIRPαを飽和濃度で添加した。二重特異性に加えて、リツキシマブおよび親抗CD47結合剤(IgG1を有する408_437であるTPP-23)を参考のために含めた。細胞を洗浄し、次いで二次抗体とインキュベートして、腫瘍細胞に結合したSIRPαの量を測定した。細胞株OCI-Ly3(DLBCL細胞株)の場合、TPP-1360は、EC50=1.30nMを有することが見出され、TPP-1362は、EC50=0.70nMを有することが見出された。Raji細胞株(Bリンパ球バーキットリンパ腫細胞株)の場合、TPP-1360は、EC50=1.64nMを有することが見出され、TPP-1362は、EC50=1.10nMを有することが見出された。
図21に示されるように、親抗CD47、TPP-23は、OCI-Ly3細胞へのヒトSIRPαの結合を遮断するのに0.11nMのIC
50を有することが見出された。リツキシマブは、SIRPαの結合に対して効果がなかった。
【0138】
実施例4:貪食に対する用量反応
種々のCD20発現非ホジキンリンパ腫腫瘍細胞株に対する貪食のTPP-1360およびTPP-1362活性化の用量反応曲線を生成した。ヒト単球をマクロファージに分化させ、次いで、腫瘍細胞株に添加し、いずれかの二重特異体の濃度を増加させながらインキュベートした。二重特異性実体に加えて、リツキシマブおよび親抗CD47結合剤(TPP-23)を参考のために含めた。マクロファージおよび腫瘍細胞の蛍光標識を使用して、画像ベースの定量法を使用して貪食事象の数を測定した。OCI-Ly3細胞株の場合、TPP-1360は、IC50=1.4nMを有することが見出され、TPP-1362は、IC50=0.43nMを有することが見出された。Raji細胞株の場合、TPP-1360は、IC50=1.8nMを有することが見出され、TPP-1362は、IC50=0.37nMを有することが見出された。
【0139】
実施例5:ヒトおよびカニクイザルのRBCとの結合試験および血球凝集
ヒトおよびカニクイザルのRBCに対する特定の二重特異性実体例の結合を決定し、それらの非標的細胞に結合する可能性を評価した。RBCを全血から単離し、例示的な二重特異体の濃度を増加させながらインキュベートした。結合は、2μg/mlの親抗CD47結合剤(TPP-23)で観察される結合量のパーセンテージとして表された。200μg/mlでは、TPP-1360およびTPP-1361は、親抗CD47結合について見られた結合の1%未満で、ヒトRBCに結合した。同様に、200μg/mlでは、TPP-1360は、親抗CD47結合について見られた結合の1%未満で、カニクイザルRBCに結合した。200μg/mlでのカニクイザルRBCに対するTPP-1362の結合の場合、より高度の結合が観察され、親抗CD47結合剤の2~3%の結合が示された。最後に、両方のリードの親抗CD47結合剤は、200μg/mlでは、ヒトRBCの血球凝集を示さなかった。同様に、TPP-1360およびTPP-1361の両方とも、200μg/mlでは、血球凝集を示さなかった。既知の血液凝集性の抗体であるBRIC6を、陽性対照として使用した。
【0140】
実施例6:ヒトPBMCおよび全血への結合試験
本明細書に記載の二重特異性実体種のヒト末梢血単核細胞(PBMC)への結合を評価した。親抗CD47結合剤であるTPP-23およびリツキシマブと比較して、TPP-1360二重特異体は、すべての細胞型に対してより少ない結合を示したが、例外として、B細胞は、抗CD20 Fab部分の存在により有意な結合を示した。
【0141】
実施例7:第1ラウンドのリードのカニクイザルPK
本明細書に記載の二重特異性実体種の例を用いて、カニクイザルPK実験を行った。カニクイザルに、20mg/kgを2回、1日目および15日目に投薬した。B細胞の枯渇が観察された。これらの研究から、TPP-1360およびTPP-1362を、実施例8に記載されるように、カニクイザル探索的毒性(E-tox)試験におけるさらなる研究のために選択した。
【0142】
実施例8:第2ラウンドのリードのカニクイザルE-tox
TPP-1360およびTPP-1362を用いて、カニクイザルE-tox実験を行った。TPP-1360の場合、カニクイザルに、100、20、および10mg/kgで、週1回、2週間投薬し、2週間の非投薬期間がそれに続いた。第2のTPP-1360アームは、10mg/kgを週2回、2週間にわたって試験し、2週間の非投薬期間もそれに続いた。TPP-1362の場合、カニクイザルに、60、20、および10mg/kgで、週1回、2週間投薬し、2週間の非投薬期間がそれに続いた。第2のTPP-1362アームは、10mg/kgを週2回、2週間試験し、2週間の非投薬期間、20mg/kgで1日目および15日目に2回もそれに続いた。これらの研究で、TPP-1360が良好な耐容性を示し、深いB細胞枯渇を示し、用量に比例した曝露を達成することが示された。したがって、シンクが回避され、標的細胞選択的であることが確認された。
【0143】
実施例9:インビトロ薬理学
A.ヒト全血結合
TPP-1360の特異性を評価するために、その結合プロファイルを、フローサイトメトリーを使用して、最初に全血で評価した。2つのドナーにわたって、200nMのTPP-1360は、結合シグナルをB細胞へとシフトさせ、むしろT細胞、単球、およびNK細胞には実質的に弱くシフトさせ、血小板または赤血球への結合は最小限であるかもしくは全くなかった。それによって、ヒト全血中のB細胞への選択的結合が示された。
図7を参照されたい。
【0144】
図7は、二重特異性TPP-1360が、例えば、主にB細胞に結合し、列挙された他の細胞型には非常に少量の結合を伴うことを示す(おそらく血液細胞上で見出されるものよりも高いレベルのCD47のためか、またはNK細胞および単球上で発現されるFc受容体を関与させ得るFcの寄与のためである)。逆に、高親和性CD47単一特異性抗体であるTPP-23は、CD47の遍在的な発現およびTPP-23に見出されるCD47に対する高親和性により、これらの細胞型のすべてに結合する。
【0145】
ヒト全血におけるTPP-1360の全体的な結合プロファイルは、リツキシマブと同様である。逆に、親CD47mAbであるTPP-23は、CD47発現用の対照として使用され、ヒト血液中のすべての細胞集団に有意に結合した。
【0146】
B.腫瘍細胞の結合
さらに、例えば、TPP-1360のRBC結合能を、精製ヒトRBCにおいて、およびヒトRBCと腫瘍細胞との共培養において広範に評価した。
図8に示されるように、TPP-1360は、CD47
+/CD20
+Raji細胞に選択的に結合したが、CD47
+/CD20
-ヒトRBCには結合しなかった。さらに、Raji細胞とヒトRBCの共培養では、TPP-1360は、CD47
+/CD20
+Raji細胞に対して用量依存的な結合を示したが、ヒトRBCに対しては1mg/mLの高い濃度でさえも結合を示さなかった。
図9を参照されたい。むしろ、親CD47型/CD20二重特異体であるTPP-2は、Raji細胞とヒトRBCの両方に有意に結合した。さらに、TPP-1360は、複数のドナーから精製されたカニクイザルRBCへの結合を示さない。
【0147】
C.SIRPαの競合
CD20
+/CD47
+細胞への選択的結合を実証した後、インビトロ競合アッセイを使用して、細胞表面CD47とのヒトSIRPαの相互作用を拮抗するTPP-1360の能力を評価した。TPP-1360は、CD20
+/CD47
+リンパ腫細胞株であるOCI-Ly3およびRajiの表面で発現されるヒトCD47に対する組換えヒトSIRPα-Fcの結合を強力に遮断し、平均EC50値は、それぞれ1.30nMおよび1.64nMであった。
図10および
図11を参照されたい。
図10は、TPP-1360が、例えば、CD20
+/CD47
+リンパ腫細胞株OCI-Ly3の表面に発現されるヒトCD47に対する組換えヒトSIRPα-Fcの結合を、強力かつ完全に遮断したことを示す。
図11は、TPP-1360が、例えば、CD20
+/CD47
+リンパ腫細胞株Rajiの表面で発現されるヒトCD47に対する組換えヒトSIRPα-Fc結合を、強力かつ完全に遮断したことを示す。対照的に、リツキシマブも、対照二重特異性抗体TPP-1480(抗CD20/ニワトリ卵リゾチーム)も、同じ細胞株に結合するヒトSIRPα-Fcと競合することはできなかった。本明細書に提示されるデータはまた、ヒトSIRPα-CD47相互作用を遮断するTPP-1360の効力が、TPP-23よりも低いことも実証し、ヒトCD47に対するTPP-1360の減弱した親和性と一致する。
【0148】
実施例10:機能活性:ヒトマクロファージ貪食
この実施例は、腫瘍貪食を誘発するTPP-1360の能力を実証し、標識されたマクロファージの中の「食べられた」CD20+CD47+腫瘍細胞を自動的にカウントすることによってインビトロで決定される。
【0149】
CD20およびCD47の発現は、最初に、フローサイトメトリーアッセイ(Denny TN et al.,Cytometry.1996 Dec;26(4):265-74)を使用して、抗体結合能(ABC)を定量することによって、各標的腫瘍細胞株(OCI-Ly3、Raji、REC-1、およびRIVA)で検証された。4つの細胞株はいずれも、高レベルのCD47およびCD20を発現する。
表1:リンパ腫細胞表面のCD47およびCD20の抗原発現
【表1】
ABC=抗体結合能。
【0150】
次に、滴定した抗体を、予め分化させたマクロファージに加え、続いてTPP-1360でオプソニン化されたカルボキシフルオレセインスクシンイミジルエステル(CSFE)で標識された腫瘍細胞と共培養した。貪食活性は、標識マクロファージ内の標識された腫瘍細胞の数によって定量的に決定された。緑色強度(CFSE)を、CD14アロフィコシアニン(APC)標識マクロファージの各々において測定し、閾値ゲートを使用して、CFSE陽性マクロファージを同定した。実験にわたって、数百MFI(平均蛍光強度)以下の分散を有する約1000MFIの閾値を観察した。各試料について、計算された貪食のパーセンテージは、[(CFSE陽性マクロファージの数)/(マクロファージの総数)]×100として決定された。少なくとも2つのドナーにわたって、TPP-1360による処理は、4つのCD20
+悪性B細胞株のマクロファージ媒介性貪食を誘導した。1つのドナーからの代表的なデータを、
図12(Raji細胞)、
図13(OCI-Ly3細胞)、
図14(REC-1細胞)、および
図15(RIVA細胞)に示す。曲線下面積を計算し、続いて対応のあるt検定を行い、リツキシマブと比較したTPP-1360の統計的有意性を決定した。
図16を参照されたい。データは、TPP-1360による処理が、RajiおよびOCI-Ly3細胞において、リツキシマブよりも顕著に効率的な貪食を引き起こしたことを実証し、TPP-1360によるSIRPα-CD47相互作用の同時の遮断およびFcγRなどの活性化受容体の関与に起因する可能性が高い。
【0151】
実施例11:薬物動態
二重特異性実体(本明細書に記載の抗体種、TPP-1360、TPP-1361、TPP-1362、およびTPP-1367)の薬物動態(PK)プロファイルを決定するために、マウスおよびカニクイザルにおいて非GLP試験を行った。単回用量のマウスPK試験を、ナイーブ雌NOD/SCIDマウスを使用して実施し、10mg/kgの抗体が腹腔内(IP)注射を介して投与された。まばらなPKサンプリング(n=4/時点)を72時間にわたって実施し、すべての動物は、試験期間全体を通して検出可能な抗体種濃度を示した。計算された半減期は3.4日であったが、サンプリング期間を考慮すると過小評価される可能性がある。カニクイザルにおけるPKプロファイルを評価するために、反復投与探索的毒性試験を行い、20mg/kgの抗体種を1日目および15日目に3匹のナイーブ雄ザルにIVボーラス注射を介して投与した。抗体種の反復投与後、全身曝露が達成され、抗体種は、試験期間全体を通して3匹のサルのうち2匹の血清中で検出可能であった(15日目の投与後336時間)。また、血液学的および免疫表現型評価のための反復投与試験の一部として、試料も採取した。観察されたBリンパ球の枯渇は、インビボにおける薬物機能を実証する。全体として、抗体種の曝露は、単回投与マウスおよび反復投与サルの試験の両方で試験期間全体を通して維持され、2つの試験間で3~3.5日の範囲の類似した半減期が報告された。
【0152】
実施例12:安全性プロファイル
この一連の高く評価された種の例は、許容可能な毒性プロファイル(例えば、試験された最高用量である100mg/kg QWまで、良好な耐容性を示した。毒物動態は、カニクイザルにおける28日間の探索的毒性試験の一部として評価された。TPP-1360を、1日目、4日目、8日目、11日目、および15日目に10mg/kg(BIW)の用量レベルで、または1日目、8日目、および15日目に20mg/kgおよび100mg/kg(QW)で、カニクイザル(4/群)にIV注射を介して、BIWまたはQWのいずれかで投与した。捕捉用に抗リツキシマブ抗体および検出用にヤギ抗ヒトIgG Fcを使用して、血清濃度をサンドイッチELISAで測定した。10、20、または100mg/kgの複数回のIV投与の後、TPP-1360の全身曝露がすべての用量レベルで達成され、試験期間全体を通してすべての動物で維持された。TPP-1360は、20mg/kg用量群および100mg/kg用量群にわたって、CmaxおよびAUC0-168でほぼ用量に比例した増加を有する直線状のTKを示した。初回の投与後、クリアランスは、10~100mg/kgの用量範囲にわたって同様であり、10mg/kgの用量で標的の飽和が示唆された。RAUC値は、10mg/kg(BIW)および100mg/kg(QW)用量群における5回目の投与および3回目の投与によって、ある程度のTPP-1360の蓄積を示す。平均計算半減期は、用量レベルおよび用量レジメンに応じて、2~4日の範囲であった。抗薬物抗体は、投与前の15日目に試験された8匹の動物のうちの5匹において、および試験29日目に試験された6匹の動物のうちの5匹において検出された。抗薬物抗体は、ADA陽性動物の曝露の観察された減少によって証明されるように、TPP-1360の曝露に影響を及ぼした。TPP-1360は、試験された最高用量である100mg/kg QWまで、良好な耐容性を示した。末梢血中および複数のリンパ組織中のB細胞の減少は、10mg/kg BIWで、および20mg/kg QW以上で見られ、頑強な薬力学的活性を示した。10mg/kg BIWの投薬は、20mg/kg QWを超える追加の恩恵をもたらさなかった。B細胞に対する効果に加えて、TPP-1360はまた、すべての用量レベルでT細胞およびNK細胞を減少させ、≧20mg/kg QWで好中球、および100mg/kg QWで赤血球を減少させた。しかし、被験試料に関連する血小板の減少は観察されなかった。T細胞、NK細胞、好中球、および赤血球の減少は、これらの細胞がCD20を発現しないため、TPP-1360のCD47アームによって媒介されると考えられる。
【0153】
実施例13:免疫原性
EpiVaxによって開発されたInteractive Screening and Protein Reengineering Interface(ISPRI)ソフトウェアは、ヒトにおける潜在的な抗体免疫原性を評価するために使用されるインシリコ計算方法であり、臨床的に十分に確立されたT細胞依存性分析ツールであることが知られている(
図18)。TPP-1360のVHおよびVLのアミノ酸配列を推定上のTエフェクターおよびT調節ホットスポットについて分析し、免疫原性のリスクが低いことが見出された。
【0154】
実施例14:Raji異種移植モデル
本明細書に記載のCD47×CD20二重特異性実体は、Raji NOD-SCIDモデルにおいて、インビボでリツキシマブよりも優れた有効性を示す。この研究の目的は、より低いレベルのCD20およびより高いレベルのCD47を発現するRaji異種移植モデルにおけるTPP-1360またはTPP-1362の単剤抗腫瘍活性を決定することであった。雌NOD-SCIDマウスに、右脇腹にRaji細胞を接種した。投与は、腫瘍のサイズが約270mm
3であるときに開始した。TPP-1360およびTPP-1362を、10mg/kgおよび30mg/kgで、週1回(QW)、2週間の投与で試験した。CD20に対して二価であるリツキシマブを、同じ投与パラダイムを有する対照薬として使用した。最終的な腫瘍体積の減少は、試験の終了時点の25日目、アイソタイプ対照(抗RSV IgG1)群の平均腫瘍体積が約2000mm
3に達したときに、決定した。腫瘍体積が52%減少したTPP-1360の有意な(p<0.0001)抗腫瘍活性は、10および30mg/kg QWの両方で観察された。また、TPP-1362の有意な抗腫瘍活性も観察され、10mg/kg QWでは62%の腫瘍減少、または30mg/kg QWでは64%の腫瘍減少が観察された。(
図19~
図20)同じ投薬レジメンにおいて、リツキシマブはそれぞれ30mg/kgおよび10mg/kgで33%および38%の腫瘍体積の減少(TVR)を示した。30mg/kg QWでのTPP-1360の抗腫瘍活性は、対応する用量レベルのリツキシマブよりも有意に良好であり(p<0.01)、TPP-1360の抗腫瘍活性におけるCD47アームの寄与を示唆した。30mg/kg QWでのTPP-1362の抗腫瘍活性も、対応する用量レベルのリツキシマブよりも有意に良好であり(p<0.0001)、TPP-1362の抗腫瘍活性におけるCD47アームの寄与を示唆した。アイソタイプ対照、TPP-1360、TPP-1362、またはリツキシマブで処置された動物において、有意な体重減少はなかった。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【表2-7】
【表2-8】
【表2-9】
【表2-10】
【表2-11】
【表2-12】
【表2-13】
【表2-14】
【表2-15】
【表2-16】
【表2-17】
【表2-18】
【表2-19】
【表2-20】
【表2-21】
【表2-22】
【表2-23】
【表2-24】
【表2-25】
【表2-26】
【表2-27】
【表2-28】
【表2-29】
【表2-30】
【表2-31】
【表2-32】
【表2-33】
【表2-34】
【表2-35】
【表2-36】
【0155】
本明細書において参照されるすべての刊行物および特許は、参照により援用される。本発明の範囲および趣旨から逸脱することなく、記載される対象の様々な修正および変形は、当業者には明らかであろう。本発明は、特定の実施形態に関連して説明されてきたが、特許請求される本発明は、これらの実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されるべきである。実際に、本発明を実施するための様々な修正は、当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲内であることが意図される。
前記抗CD47 VLが、配列番号325に由来し、配列番号325に対して1~7個のアミノ酸置換を示し、前記抗CD47 VHが、配列番号326に由来し、配列番号326に対して1~11個のアミノ酸置換を示す、請求項9に記載の二重特異性抗体。
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるQASQDIHRYLS(配列番号359)、RESRFVD(配列番号360)、およびLQYDEFPYT(配列番号361)を含む軽鎖可変(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号362)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号363)、AYGESSYPMDY(配列番号364)を含む重鎖可変(VH)領域と、を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号365)、RESRFVD(配列番号366)、LQYDEFPYT(配列番号367)を含む軽鎖可変(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号368)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号369)、AYGESSYPMDY(配列番号370)を含む重鎖可変(VH)領域と、を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号371)、RANRLVS(配列番号372)、LQYDEFPYT(配列番号373)を含む軽鎖可変(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号374)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号375)、AYGESSYPMDY(配列番号376)を含む重鎖可変(VH)領域と、を含む、請求項2に記載の二重特異性抗体。
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるQASQDIHRYLS(配列番号359)、RESRFVD(配列番号360)、およびLQYDEFPYT(配列番号361)を含む軽鎖可変(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号362)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号363)、AYGESSYPMDY(配列番号364)を含む重鎖可変(VH)領域と、を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号365)、RESRFVD(配列番号366)、LQYDEFPYT(配列番号367)を含む軽鎖可変(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号368)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号369)、AYGESSYPMDY(配列番号370)を含む重鎖可変(VH)領域と、を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。
前記CD47に結合するFab部分が、VL CDRであるRASQDIHRYLS(配列番号371)、RANRLVS(配列番号372)、LQYDEFPYT(配列番号373)を含む軽鎖可変(VL)領域と、VH CDRであるDYYLH(配列番号374)、WIDPDQGDTYYAQKFQG(配列番号375)、AYGESSYPMDY(配列番号376)を含む重鎖可変(VH)領域と、を含む、請求項8に記載の二重特異性抗体。