(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007496
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、および、二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/449 20210101AFI20240111BHJP
H01M 50/414 20210101ALI20240111BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20240111BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20240111BHJP
H01M 50/403 20210101ALI20240111BHJP
【FI】
H01M50/449
H01M50/414
H01M50/42
H01M50/443 B
H01M50/403 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108031
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2022108598
(32)【優先日】2022-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003812
【氏名又は名称】弁理士法人いくみ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】富田 嘉彦
(72)【発明者】
【氏名】香川 靖之
【テーマコード(参考)】
5H021
【Fターム(参考)】
5H021BB12
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE02
5H021EE06
5H021HH01
5H021HH07
(57)【要約】
【課題】優れた耐熱性、低吸水性、透気度および密着性を発現することのできる二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、および、その二次電池セパレータを備える二次電池を提供すること。
【解決手段】二次電池セパレータ用コート材原料は、酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂と、アクリル樹脂粒子を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂と、
アクリル樹脂粒子と、
を含む、二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項2】
前記アクリル樹脂粒子の配合割合が、前記変性メチロールメラミン縮合樹脂100質量部に対して、25質量部以上200質量部未満である、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項3】
水分散液として調製されており、pHが8.5以上である、請求項1に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項4】
水分散液として調製されており、pHが8.5以上である、請求項2に記載の二次電池セパレータ用コート材原料。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料と、
無機粒子と、
を含む、二次電池セパレータ用コート材。
【請求項6】
多孔膜と、
前記多孔膜の少なくとも片面に配置される請求項5に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜と、
を備える、二次電池セパレータ。
【請求項7】
正極と、
負極と、
前記正極および前記負極の間に配置される請求項6に記載される二次電池セパレータと、
を備える、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材、二次電池セパレータ、および、二次電池に関する。詳しくは、本発明は、二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、および、その二次電池セパレータを備える二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次電池内には、正極と負極とを隔離し、電解液中のイオンを通過させるためのセパレータが備えられている。
【0003】
このようなセパレータとしては、例えば、ポリオレフィン多孔膜が知られている。
【0004】
一方、セパレータの表面には、各種物性を付与するために、コート層を設ける場合がある。このようなコート層は、例えば、セパレータの表面に、二次電池セパレータ用コート材を塗布して、乾燥させることにより形成される。
【0005】
このような二次電池セパレータ用コート材として、例えば、無機粒子と、重合体粒子水分散液とを含む多孔膜用スラリーが、提案されている(例えば、特許文献1参照。)。詳しくは、特許文献1の重合体粒子水分散液は、n-ブチルアクリレート、エチルアクリレート、アクリロニトリル、グリシジルメタクリレート、および、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸を重合してなる重合体粒子を含む水分散液(アクリルエマルション)である(例えば、特許文献1の実施例1参照。)。
【0006】
また、二次電池セパレータ用コート材として、例えば、非導電性粒子および水溶性重合体を含む二次電池多孔膜用組成物が、提案されている(例えば、特許文献2参照。)。詳しくは、特許文献2の水溶性重合体は、アクリルアミド、メタクリル酸、および、ジメチルアクリルアミドを重合してなる水溶性重合体の水溶液(アクリル水溶液)である(例えば、特許文献2の実施例1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2010/074202号パンフレット
【特許文献2】国際公開2015/122322号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、セパレータが、熱による収縮で形状が変化すると、正極と負極との間でショートする可能性がある。そのため、セパレータに設けられるコート層には、耐熱性が要求される。また、二次電池内に、水が侵入すると、その水と反応してガスが発生する場合がある。そのため、セパレータに設けられるコート層には、低吸水性が要求される。
【0009】
特許文献1のアクリルエマルションは、低吸水性に優れる一方、耐熱性が低くなる不具合がある。また、特許文献2のアクリル水溶性重合体は、耐熱性に優れる一方、低吸水性が低くなる不具合がある。このことから、耐熱性および低吸水性の両立を図ることができないという不具合がある。
【0010】
さらに、電解液中のイオンがセパレータを通過して移動することで、電池が機能するため、セパレータの透過性を担保する必要がある。そのため、セパレータに設けられるコート層には、透気度に優れることが要求される。また、セパレータが、熱による収縮で形状が変化した場合に、コート層がはがれる可能性がある。そのため、セパレータに設けられるコート層には、密着性(柔軟性)が要求される。
【0011】
本発明は、優れた耐熱性、低吸水性、透気度および密着性を発現することのできる二次電池セパレータ用コート材原料、その二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材、その二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える二次電池セパレータ、および、その二次電池セパレータを備える二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明[1]は、酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂と、アクリル樹脂粒子とを含む、二次電池セパレータ用コート材原料である。
【0013】
本発明[2]は、前記アクリル樹脂粒子の配合割合が、前記変性メチロールメラミン縮合樹脂100質量部に対して、25質量部以上200質量部未満である、上記[1]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0014】
本発明[3]は、水分散液として調製されており、pHが8.5以上である、上記[1]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0015】
本発明[4]は、水分散液として調製されており、pHが8.5以上である、上記[2]に記載の二次電池セパレータ用コート材原料を含んでいる。
【0016】
本発明[5]は、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の二次電池セパレータ用コート材原料と、無機粒子とを含む、二次電池セパレータ用コート材を含んでいる。
【0017】
本発明[6]は、多孔膜と、前記多孔膜の少なくとも片面に配置される上記[5]に記載の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備える、二次電池セパレータを含んでいる。
【0018】
本発明[7]は、正極と、負極と、前記正極および前記負極の間に配置される上記[6]に記載される二次電池セパレータとを備える、二次電池を含んでいる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂とアクリル樹脂粒子とを含む。そのため、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材の塗布膜は密着性(柔軟性)に優れ、また、この塗布膜を備える二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0020】
本発明の二次電池セパレータ用コート材は、本発明の二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、密着性(柔軟性)に優れ、また、この塗布膜を備える二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0021】
本発明の二次電池セパレータは、本発明の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える。そのため、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0022】
本発明の二次電池は、本発明の二次電池セパレータを備える。そのため、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
二次電池セパレータ用コート材原料は、酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂とアクリル樹脂粒子とを含む。
【0024】
<変性メチロールメラミン縮合樹脂>
酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂は、変性メチロールメラミンの縮合重合体である。
【0025】
変性メチロールメラミンは、メチロールメラミンと、酸成分との反応生成物である。
【0026】
[メチロールメラミン]
メチロールメラミンは、メラミンと、ホルムアルデヒドまたは水中でホルムアルデヒドに分解しうるパラホルムアルデヒドとの反応生成物である。
【0027】
メラミンとホルムアルデヒドとを反応させるには、水とメラミンとホルムアルデヒドとを混合し、加熱する。
【0028】
メラミン1モルに対するホルムアルデヒドの配合量は、例えば、2.4モル以上、また、例えば、5.0モル以下、好ましくは、4.0モル以下、より好ましくは、3.3モル以下、さらに好ましくは、3.1モル以下である。
【0029】
メラミン1モルに対するホルムアルデヒドの配合量が、上記下限以上および上記上限以下であれば、メラミンにおける3個のアミノ基のほぼすべてを、メチロール基に変性することができる。
【0030】
加熱条件として、加熱温度は、例えば、40℃以上、好ましくは、50℃以上、また、例えば、90℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、加熱時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、2時間以上、また、例えば、6時間以下である。
【0031】
また、上記反応において、pHは、3.0以上、好ましくは、4.0以上、より好ましくは、8.0以上、さらに好ましくは、9.0以上、とりわけ好ましくは、10.0以上、また、例えば、13.0以下、好ましくは、12.0以下、より好ましくは、11.8以下である。pHは、アルカリ(例えば、水酸化ナトリウム)を添加して調整することができる。
【0032】
これにより、メラミン(下記一般式(1-1))とホルムアルデヒド(下記一般式(1-2))とが反応し、メチロールメラミン(下記一般式(1-3))が得られる。
【化1】
【0033】
好ましくは、メチロールメラミン(上記一般式(1-3))は、メラミンにおける3個のアミノ基のすべてが、メチロール基に変性されたトリメチロールメラミンである。
【0034】
[変性メチロールメラミン]
上記したように、変性メチロールメラミンは、メチロールメラミンと、酸成分との反応生成物である。
【0035】
{酸成分}
酸成分は、メチロールメラミンのメチロール基と反応可能な成分である。そして、酸成分は、メチロールメラミンのメチロール基と反応することによって、メチロールメラミンに、酸性基を導入するための成分である。
【0036】
酸成分としては、例えば、カルボン酸、リン酸および亜硫酸が挙げられる。
【0037】
カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、コハク酸、フタル酸、ホルミル安息香酸、アミノ安息香酸、アクリル酸、および、メタクリル酸が挙げられる。また、カルボン酸には、その塩および無水物が含まれる。カルボン酸の塩としては、例えば、マレイン酸ナトリウム、および、コハク酸ナトリウムが挙げられる。カルボン酸の無水物としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、および、無水フタル酸が挙げられる。カルボン酸として、好ましくは、カルボン酸の無水物が挙げられる。カルボン酸として、より好ましくは、無水マレイン酸が挙げられる。
【0038】
リン酸としては、例えば、ホスホノ安息香酸、および、アミノフェニルホスホン酸が挙げられる。また、リン酸には、その塩が含まれる。リン酸の塩としては、ホスホノ安息香酸ナトリウムが挙げられる。
【0039】
亜硫酸としては、例えば、スルホ安息香酸、ホルミルベンゼンスルホン酸、スルファニル酸、ピロ亜硫酸、および、亜硫酸が挙げられる。亜硫酸には、その塩が含まれる。亜硫酸の塩としては、例えば、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、および、ピロ亜硫酸ナトリウムが挙げられる。亜硫酸として、好ましくは、亜硫酸水素ナトリウム、スルファニル酸、ピロ亜硫酸ナトリウムが挙げられる。亜硫酸として、より好ましくは、亜硫酸水素ナトリウムが挙げられる。
【0040】
酸成分として、好ましくは、カルボン酸および亜硫酸が挙げられる。酸成分として、より好ましくは、亜硫酸が挙げられる。
【0041】
酸成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0042】
そして、変性メチロールメラミンは、メチロールメラミンと酸成分とを反応させることにより得られる。
【0043】
メチロールメラミンと酸成分とを反応させるには、水とメチロールメラミンと酸成分とを混合し、加熱する。
【0044】
酸成分の配合量は、メチロールメラミン1モルに対して、例えば、0.10モル以上、好ましくは、0.15モル以上、より好ましくは、0.30モル以上、さらに好ましくは、0.40モル以上、また、例えば、0.70モル未満、好ましくは、0.65モル以下、より好ましくは、0.60モル以下、さらに好ましくは、0.50モル以下である。
【0045】
酸成分の配合量が、上記範囲内であれば、二次電池セパレータ用コート材として用いられた際、優れた耐熱性を示すことができる。
【0046】
加熱条件として、加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、70℃以上、また、例えば、100℃以下、好ましくは、90℃以下である。また、加熱時間は、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1時間以上、また、例えば、6時間以下である。
【0047】
これにより、メチロールメラミンと酸成分とが反応し、変性メチロールメラミンが得られる。詳しくは、メチロールメラミンのうちの一部を、酸成分に由来する酸性基に変性した変性メチロールメラミンとすることができる。
【0048】
つまり、変性メチロールメラミンは、酸成分に由来する酸性基を有する。詳しくは、酸成分がカルボン酸である場合には、変性メチロールメラミンは、酸性基として、カルボキシル基を有する。また、酸成分がリン酸である場合には、変性メチロールメラミンは、酸性基として、リン酸基を有する。また、酸成分が亜硫酸である場合には、変性メチロールメラミンは、酸性基として、スルホン酸基を有する。酸性基として、好ましくは、カルボキシル基およびスルホン酸基が挙げられる。酸性基として、より好ましくは、スルホン酸基が挙げられる。
【0049】
より詳しくは、酸成分が、亜硫酸水素ナトリウムである場合には、メチロールメラミン(下記一般式(1-3))と亜硫酸水素ナトリウム(下記一般式(2-1))とが反応し、変性メチロールメラミン(下記一般式(2-2))が得られる。下記一般式(2-2)で示される変性メチロールメラミンは、酸性基として、スルホン酸基を有する。
【化2】
【0050】
また、酸成分が、スルファニル酸である場合には、メチロールメラミン(下記一般式(1-3))とスルファニル酸(下記一般式(2-3))とが反応し、変性メチロールメラミン(下記一般式(2-4))が得られる。下記一般式(2-4)で示される変性メチロールメラミンは、酸性基として、スルホン酸基を有する。
【化3】
【0051】
また、酸成分が、ピロ亜硫酸ナトリウムである場合には、メチロールメラミン(下記一般式(1-3))とピロ亜硫酸ナトリウム(下記一般式(2-5))とが反応し、変性メチロールメラミン(下記一般式(2-6))が得られる。下記一般式(2-6)で示される変性メチロールメラミンは、酸性基として、スルホン酸基を有する。
【化4】
【0052】
また、酸成分が、無水マレイン酸である場合には、メチロールメラミン(下記一般式(1-3))と無水マレイン酸(下記一般式(2-7))とが反応し、変性メチロールメラミン(下記一般式(2-8))が得られる。下記一般式(2-8)で示される変性メチロールメラミンは、酸性基として、カルボキシル基を有する。
【化5】
【0053】
変性メチロールメラミンとして、好ましくは、上記一般式(2-2)で示される変性メチロールメラミン、上記一般式(2-4)で示される変性メチロールメラミン、上記一般式(2-6)で示される変性メチロールメラミン、および、上記一般式(2-8)で示される変性メチロールメラミンが挙げられる。変性メチロールメラミンとして、より好ましくは、上記一般式(2-2)で示される変性メチロールメラミンが挙げられる。
【0054】
[酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂]
上記したように、酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂は、変性メチロールメラミン(酸性基を有する変性メチロールメラミン)の縮合重合体である。
【0055】
変性メチロールメラミンを縮合重合するには、例えば、酸(例えば、硫酸)を添加して、pHを5以上8未満に調整して、水中において、変性メチロールメラミンを加熱する。
【0056】
加熱条件として、加熱温度は、例えば、50℃以上、好ましくは、60℃以上、また、例えば、90℃以下、好ましくは、80℃以下である。また、加熱時間は、例えば、1時間以上、好ましくは、2時間以上、また、例えば、6時間以下である。
【0057】
その後、アルカリ(例えば、水酸化ナトリウム)を添加して、pHを、例えば、11以上13以下に調整して、縮合重合反応を停止する。
【0058】
以上により、変性メチロールメラミンにおける2個のメチロール基が、脱水縮合して、変性メチロールメラミン縮合樹脂(変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液)が得られる。
【0059】
なお、上記したメラミンから変性メチロールメラミン縮合樹脂までの反応は、連続または分割して実施できる。
【0060】
変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液において、変性メチロールメラミン縮合樹脂の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、15質量%以上、また、例えば、40質量%以下である。
【0061】
このような変性メチロールメラミン縮合樹脂は、変性メチロールメラミンと同一の酸性基を有する。
【0062】
<アクリル樹脂粒子>
アクリル樹脂粒子は、アクリル樹脂粒子原料を重合してなる重合体であり、水分散液(アクリルエマルション)として調製される。
【0063】
アクリル樹脂粒子原料は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有ビニルモノマーを含む。つまり、アクリル樹脂粒子は、好ましくは、(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位と、官能基含有ビニルモノマーに由来する構成単位とを含む。なお、(メタ)アクリルは、メタクリルおよび/アクリルである。
【0064】
{(メタ)アクリル酸アルキルエステル}
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、炭素数1~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、炭素数1~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレート、および、炭素数9~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、および、オクチル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数9~12のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、および、オクタデシル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、好ましくは、炭素数1~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、より好ましくは、炭素数1、および/または、炭素数2~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとして、さらに好ましくは、メチル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数2~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとして、さらに好ましくは、n-ブチル(メタ)アクリレート、および/または、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとして、とりわけ好ましくは、メチルメタクリレートが挙げられる。炭素数2~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートとして、とりわけ好ましくは、n-ブチルアクリレート、および/または、2-エチルヘキシルアクリレートが挙げられる。
【0066】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0067】
炭素数2~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートは、好ましくは、メチルメタクリレート、および/または、後述する芳香族ビニルモノマーと併用する。炭素数2~8のアルキル部分を有するアルキル(メタ)アクリレートは、より好ましくは、メチルメタクリレート、または、後述する芳香族ビニルモノマーと併用する。
【0068】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、アクリル樹脂粒子原料100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上である。
【0069】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、メチルメタクリレートを含む場合の、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、アクリル樹脂粒子原料100質量部に対して、例えば、70質量部以上、好ましくは、80質量部以上、より好ましくは、90質量部以上である。
【0070】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、メチルメタクリレートを含まない場合の、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの含有割合は、アクリル樹脂粒子原料100質量部に対して、例えば、30質量部以上、好ましくは、40質量部以上、また、例えば、70質量部以下、好ましくは、60質量部以下である。
【0071】
{官能基含有ビニルモノマー}
官能基含有ビニルモノマーとしては、例えば、カルボキシ基含有ビニルモノマー、スルホン酸基含有ビニルモノマー、リン酸基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、アミノ基含有ビニルモノマー、アミド基含有ビニルモノマー、グリシジル基含有ビニルモノマー、シアノ基含有ビニルモノマー、および、アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーが挙げられる。
【0072】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸、または、これらの塩が挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水イタコン酸、無水マレイン酸、および、無水フマル酸が挙げられる。
【0073】
カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、モノカルボン酸が挙げられる。カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、より好ましくは、(メタ)アクリル酸が挙げられる。カルボキシ基含有ビニルモノマーとして、さらに好ましくは、メタクリル酸が挙げられる。
【0074】
スルホン酸基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、および、アクリルアミドt-ブチルスルホン酸が挙げられる。また、スルホン酸基含有ビニルモノマーには、その塩が含まれる。スルホン酸基含有ビニルモノマーの塩としては、例えば、アルカリ金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩)、および、アンモニウム塩が挙げられる。具体的には、例えば、アリルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、および、メタリルスルホン酸アンモニウムが挙げられる。
【0075】
リン酸基含有ビニルモノマーとして、例えば、2-メタクロイロキシエチルアシッドフォスフェートが挙げられる。
【0076】
水酸基含有ビニルモノマーとして、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、および、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが挙げられる。水酸基含有ビニルモノマーとして、より好ましくは、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0077】
アミノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-アミノエチル、(メタ)アクリル酸2-(N-メチルアミノ)エチル、および、(メタ)アクリル酸2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルが挙げられる。
【0078】
アミド基含有ビニルモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、および、メタクリルアミドが挙げられる。
【0079】
グリシジル基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸グリシジルが挙げられる。
【0080】
シアノ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。シアノ基含有ビニルモノマーとして、好ましくは、アクリロニトリルが挙げられる。
【0081】
アセトアセトキシ基含有ビニルモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アセトアセトキシエチルが挙げられる。
【0082】
官能基含有ビニルモノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0083】
官能基含有ビニルモノマーとしては、好ましくは、カルボキシ基含有ビニルモノマー、水酸基含有ビニルモノマー、および/または、アミド基含有ビニルモノマーが挙げられる。官能基含有ビニルモノマーとしては、より好ましくは、それらの併用が挙げられる。
【0084】
官能基含有ビニルモノマーの含有割合は、アクリル樹脂粒子原料100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、より好ましくは、5質量部以上、また、例えば、30質量部以下、好ましくは、20質量部以下、より好ましくは、10質量部以下である。
【0085】
また、アクリル樹脂粒子原料は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有ビニルモノマーと共重合可能な共重合性モノマー(以下、共重合性モノマーと称する。)を含有することができる。
【0086】
{共重合性モノマー}
共重合性モノマーとしては、例えば、ビニルエステル類、芳香族ビニルモノマー、N-置換不飽和カルボン酸アミド、複素環式ビニル化合物、ハロゲン化ビニリデン化合物、α-オレフィン類、ジエン類、および、架橋性ビニルモノマーが挙げられる。
【0087】
ビニルエステル類としては、例えば、酢酸ビニル、および、プロピオン酸ビニルが挙げられる。
【0088】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ビニルトルエン、および、クロロスチレンが挙げられる。芳香族ビニルモノマーとしては、好ましくは、スチレンが挙げられる。
【0089】
N-置換不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、N-メチロール(メタ)アクリルアミドが挙げられる。N-置換不飽和カルボン酸アミドとして、好ましくは、N-メチロールアクリルアミドが挙げられる。
【0090】
複素環式ビニル化合物としては、例えば、ビニルピロリドンが挙げられる。
【0091】
ハロゲン化ビニリデン化合物としては、例えば、塩化ビニリデン、および、フッ化ビニリデンが挙げられる。
【0092】
α-オレフィン類としては、例えば、エチレン、および、プロピレンが挙げられる。
【0093】
ジエン類としては、例えば、ブタジエンが挙げられる。
【0094】
架橋性ビニルモノマーとしては、例えば、2つ以上のビニル基を含有するビニルモノマーが挙げられる。2つ以上のビニル基を含有するビニルモノマーとしては、例えば、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ジビニルベンゼン、ポリエチレングリコール鎖含有ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリストールトリアクリレート、および、ペンタエリストールテトラアクリレートが挙げられる。
【0095】
共重合性モノマーは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0096】
共重合性モノマーとしては、好ましくは、芳香族ビニルモノマーが挙げられる。
【0097】
共重合性モノマーの含有割合は、アクリル樹脂粒子原料100質量部に対して、例えば、60質量部以下、好ましくは、55質量部以下、より好ましくは、50質量部以下である。
【0098】
そして、アクリル樹脂粒子は、アクリル樹脂粒子原料を、後述する方法で、重合することにより得られる。
【0099】
このようなアクリル樹脂粒子は、疎水性を有する。
【0100】
[アクリル樹脂粒子]
アクリル樹脂粒子は、アクリル樹脂粒子原料を重合させることによって得られる。
【0101】
具体的には、まず、重合開始剤の水溶液を調製する。
【0102】
重合開始剤としては、特に制限されないが、例えば、水溶性開始剤、油溶性開始剤、および、レドックス系開始剤が挙げられる。水溶性開始剤としては、例えば、過硫酸塩(例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム)、過酸化水素、および、有機ハイドロパーオキサイド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)酸が挙げられる。油溶性開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、および、アゾビスイソブチロニトリルが挙げられる。
【0103】
重合開始剤として、好ましくは、水溶性開始剤が挙げられる。重合開始剤として、より好ましくは、過硫酸塩が挙げられる。重合開始剤として、さらに好ましくは、過硫酸カリウムが挙げられる。
【0104】
重合開始剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0105】
重合開始剤の配合割合は、アクリル樹脂粒子原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、好ましくは、0.1質量部以上、より好ましくは、0.2質量部以上、さらに好ましくは、0.4質量部以上、また、例えば、3質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0106】
また、アクリル樹脂粒子原料の重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、必要に応じて、乳化剤(界面活性剤)を配合することができる。
【0107】
乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が挙げられる。アニオン性界面活性剤として、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩(ドデシルベンゼンスルホン酸塩など)、脂肪族スルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、および、ラウリル硫酸アンモニウムが挙げられる。ノニオン性界面活性剤として、例えば、ポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルフェニルエーテル型、および、アルキルエーテル型が挙げられる。乳化剤としては、好ましくは、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0108】
これにより、重合開始剤の水溶液を調製する。
【0109】
別途、アクリル樹脂粒子原料の乳化液を調製する。
【0110】
アクリル樹脂粒子原料の乳化液を調製するには、乳化剤(界面活性剤)に、アクリル樹脂粒子原料を、攪拌しながら、配合する。
【0111】
乳化剤としては、上記したアニオン性界面活性剤およびノニオン性界面活性剤が挙げられる。乳化剤としては、好ましくは、アニオン性界面活性剤が挙げられる。
【0112】
また、乳化剤(界面活性剤)は、水で希釈することもできる。
【0113】
乳化剤(界面活性剤)は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0114】
乳化剤の配合割合は、目的および用途に応じて、適宜設定されるが、アクリル樹脂粒子原料100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上、また、例えば、5質量部以下、好ましくは、1質量部以下である。
【0115】
また、アクリル樹脂粒子原料の重合においては、製造安定性の向上を図る観点から、公知の添加剤を適宜の割合で配合することができる。
【0116】
添加剤として、例えば、pH調整剤、金属イオン封止剤、および、分子量調節剤(連鎖移動剤)が挙げられる。金属イオン封止剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸およびその塩が挙げられる。分子量調節剤(連鎖移動剤)として、例えば、メルカプタン類および低分子ハロゲン化合物が挙げられる。
【0117】
これにより、アクリル樹脂粒子原料の乳化液を調製する。
【0118】
次いで、重合開始剤の水溶液に、アクリル樹脂粒子原料の乳化液を配合し、アクリル樹脂粒子原料を重合させる。
【0119】
アクリル樹脂粒子原料の乳化液は、分割して配合することもでき、または、一括して配合することもできる。
【0120】
重合温度は、常圧下において、例えば、30℃以上、好ましくは、50℃以上、例えば、95℃以下、好ましくは、85℃以下である。また、重合時間が、例えば、0.5時間以上、好ましくは、1.5時間以上、また、例えば、20時間以下、好ましくは、10時間以下である。
【0121】
これにより、アクリル樹脂粒子原料が重合され、アクリル樹脂粒子が得られる。
【0122】
また、このようなアクリル樹脂粒子は、疎水性であるため、水に分散された水分散液(アクリルエマルション)として得られる。
【0123】
また、アクリル樹脂粒子の重合前またはアクリル樹脂粒子の重合後には、中和剤(例えば、アンモニア)を配合し、pHを7以上11以下の範囲に調整することもできる。
【0124】
アクリル樹脂粒子の水分散液(アクリルエマルション)において、アクリル樹脂粒子の固形分濃度は、例えば、5質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0125】
得られるアクリル樹脂粒子の粒子径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上、また、例えば、1.0μm以下、好ましくは、0.8μm以下である。
【0126】
<二次電池セパレータ用コート材原料>
二次電池セパレータ用コート材原料は、上記酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂と、上記アクリル樹脂粒子とを混合することにより調製される。
【0127】
具体的には、まず、変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液に、アクリル樹脂粒子の水分散液を添加し、二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液を調製する。
【0128】
酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂100質量部に対する、アクリル樹脂粒子の配合割合としては、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、25質量部以上、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、250質量部以下、より好ましくは、200質量部以下、さらに好ましくは、200質量部未満、とりわけ好ましくは、150質量部以下、最も好ましくは、100質量部以下である。
【0129】
上記酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂100質量部に対する、アクリル樹脂粒子の配合割合が、上記下限以上であれば、密着性に優れる。
【0130】
上記酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂100質量部に対する、アクリル樹脂粒子の配合割合が、上記上限以下であれば、透気度に優れる。
【0131】
酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂の含有割合は、二次電池セパレータ用コート材原料(固形分)に対して、例えば、30質量%以上、好ましくは、35質量%以上、また、例えば、85質量%以下、好ましくは、80質量%以下である。
【0132】
また、アクリル樹脂粒子の含有割合は、二次電池セパレータ用コート材原料(固形分)に対して、例えば、15質量%以上、好ましくは、20質量%以上、また、例えば、75質量%以下、好ましくは、70質量%以下である。
【0133】
二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液は、公知の塩基(例えば、アンモニア)を添加することにより、二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液のpH値を所定の値に調整する。
【0134】
二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液のpH値は、貯蔵安定性を向上させる観点から、例えば、8.0以上、好ましくは、9.0以上、より好ましくは、10.0以上、また、例えば、14.0以下、好ましくは、13.0以下である。
【0135】
上記pH値が、上記下限以上であれば、貯蔵安定性が向上する。
【0136】
そして、このような二次電池セパレータ用コート材原料(具体的には、二次電池セパレータ用コート剤の水分散液)は、とりわけ、二次電池セパレータ用コート材の原料として、好適に用いることができる。
【0137】
そして、二次電池セパレータ用コート材原料は、上記変性メチロールメラミン縮合樹脂と上記アクリル樹脂粒子とを含む。そのため、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材の塗布膜は密着性(柔軟性)に優れ、また、この塗布膜を備える二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0138】
以下、この二次電池セパレータ用コート材原料を用いて得られる二次電池セパレータ用コート材について、詳述する。
【0139】
<二次電池セパレータ用コート材>
二次電池セパレータ用コート材は、上記二次電池セパレータ用コート材原料と、無機粒子と含む。
【0140】
無機粒子としては、例えば、酸化物、窒化物、炭化物、硫酸物、水酸化物、および、チタン酸カリウムが挙げられる。酸化物としては、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、および、酸化鉄が挙げられる。窒化物としては、例えば、窒化ケイ素、窒化チタン、および、窒化ホウ素が挙げられる。炭化物としては、例えば、シリコンカーバイド、および、炭酸カルシウムが挙げられる。硫酸物としては、例えば、硫酸マグネシウム、および、硫酸アルミニウムが挙げられる。水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、および、水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。ケイ酸物としては、例えば、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂、および、ガラスが挙げられる。
【0141】
無機粒子として、好ましくは、水酸化物、より好ましくは、水酸化酸化アルミニウムが挙げられる。
【0142】
無機粒子の平均メジアン径D50は、例えば、0.1μm以上、好ましくは、0.5μm以上、また、例えば、5μm以下、好ましくは、1μm以下である。
【0143】
無機粒子は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0144】
無機粒子の配合割合については後述する。
【0145】
そして、二次電池セパレータ用コート材を製造するには、まず、水に、無機粒子、および、必要により、分散剤を配合し、無機粒子の水分散液を調製する。分散剤を配合する場合には、二次電池セパレータ用コート材は、分散剤を含む。
【0146】
分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸アンモニウム、ポリカルボン酸ナトリウムが挙げられる。分散剤として、好ましくは、ポリカルボン酸アンモニウムが挙げられる。
【0147】
分散剤(固形分)の配合割合は、無機粒子100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、2質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、5質量部以下である。
【0148】
分散剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0149】
次いで、無機粒子の水分散液に、二次電池セパレータ用コート材原料(具体的には、二次電池セパレータ用コート剤原料の水分散液)を配合し、撹拌する。
【0150】
撹拌方法は、特に限定されず、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、スターラー、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、および、撹拌羽根が挙げられる。
【0151】
また、二次電池セパレータ用コート材には、必要により、親水性樹脂、湿潤剤、消泡剤、pH調製剤などの添加剤を、適宜の割合で配合することができる。つまり、二次電池セパレータ用コート材は、必要により、添加剤を含む。
【0152】
これら添加剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0153】
これにより、二次電池セパレータ用コート材が得られる。また、このような二次電池セパレータ用コート材は、水に分散された水分散液として得られる。
【0154】
二次電池セパレータ用コート材の水分散液の固形分濃度は、例えば、10質量%以上、好ましくは、20質量%以上、より好ましくは、30質量%以上、また、例えば、50質量%以下である。
【0155】
また、二次電池セパレータ用コート材(固形分)において、二次電池セパレータ用コート材原料(固形分)の含有量は、二次電池セパレータ用コート材原料(固形分)および無機粒子の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下、より好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、4質量部以下である。また、無機粒子の含有量は、二次電池セパレータ用コート材原料(固形分)および無機粒子の総量100質量部に対して、例えば、90質量部以上、好ましくは、92質量部以上、より好ましくは、95質量部以上、さらに好ましくは、96質量部以上、また、例えば、99質量部以下、好ましくは、97質量部以下である。
【0156】
また、二次電池セパレータ用コート材(固形分)において、二次電池セパレータ用コート材原料(固形分)の含有量は、無機粒子の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下、より好ましくは、5質量部以下、さらに好ましくは、4質量部以下である。
【0157】
また、二次電池セパレータ用コート材(固形分)において、変性メチロールメラミン縮合樹脂の含有量は、無機粒子の総量100質量部に対して、例えば、1質量部以上、好ましくは、3質量部以上、また、例えば、10質量部以下、好ましくは、8質量部以下、より好ましくは、5質量部以下である。
【0158】
また、二次電池セパレータ用コート材(固形分)において、アクリル樹脂粒子の含有量は、無機粒子の総量100質量部に対して、例えば、0.5質量部以上、好ましくは、0.7質量部以上、また、例えば、7質量部以下、好ましくは、5質量部以下、より好ましくは、2質量部以下、さらに好ましくは、1質量部以下である。
【0159】
二次電池セパレータ用コート材は、二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜は密着性に優れ、また、この塗布膜を備える二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0160】
以下、この二次電池セパレータ用コート材を用いて得られる二次電池セパレータについて、詳述する。
【0161】
<二次電池セパレータ>
二次電池セパレータは、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備える。
【0162】
[多孔膜]
多孔膜としては、例えば、ポリオレフィン多孔膜、および、芳香族ポリアミド多孔膜が挙げられる。ポリオレフィン多孔膜としては、例えば、ポリエチレン多孔膜およびポリプロピレン多孔膜が挙げられる。多孔膜として、好ましくは、ポリオレフィン多孔膜が挙げられる。多孔膜は、必要に応じて、表面処理されていてもよい。表面処理としては、例えば、コロナ処理およびプラズマ処理が挙げられる。
【0163】
多孔膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上、また、例えば、40μm以下、好ましくは、20μm以下である。
【0164】
[塗布膜]
塗布膜は、多孔膜に耐熱性を付与する。塗布膜は、二次電池セパレータ用コート材からなる。
【0165】
塗布膜の厚みは、例えば、1μm以上、好ましくは、3μm以上、また、例えば、10μm以下、好ましくは、8μm以下である。
【0166】
[二次電池セパレータの製造方法]
二次電池セパレータの製造方法は、多孔膜を準備する第1工程、および、多孔膜の少なくとも片面に、セパレータ用コート材を塗布する第2工程を備える。
【0167】
(第1工程)
第1工程では、多孔膜を準備する。
【0168】
(第2工程)
第2工程では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材を塗布し、その後、必要により、乾燥させ、これにより塗布膜を得る。
【0169】
塗布方法としては、特に制限がなく、例えば、ワイヤーバー法、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、マイクログラビアコート法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、および、スプレー塗布法が挙げられる。
【0170】
乾燥温度は、例えば、40℃以上、また、例えば、80℃以下である。
【0171】
これにより、多孔膜と、多孔膜の少なくとも片面に配置される上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜とを備えた二次電池セパレータが製造される。
【0172】
なお、上記した説明では、多孔膜の少なくとも片面に、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を配置したが、多孔膜の両面に、上記の塗布膜を配置することもできる。
【0173】
この二次電池セパレータは、上記した二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える。そのため、二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。そのため、この二次電池セパレータは、二次電池の製造に好適に用いることができる。
【0174】
<二次電池>
二次電池は、正極と、負極と、正極および負極の間に配置される上記の二次電池セパレータと、正極、負極および上記の二次電池セパレータに含浸される電解質とを備える。
【0175】
正極としては、例えば、正極用集電体と、正極用集電体に積層される正極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0176】
正極用集電体としては、例えば、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼、ニッケル、焼成炭素、導電性高分子、導電性ガラスなどの導電材料が挙げられる。
【0177】
正極活物質としては、特に制限されないが、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物、リチウム含有リン酸塩、リチウム含有硫酸塩などの公知の正極活物質が挙げられる。
【0178】
これら正極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0179】
負極としては、例えば、負極用集電体と、負極用集電体に積層される負極活物質とを備える公知の電極が用いられる。
【0180】
負極用集電体としては、例えば、銅およびニッケルなどの導電材料が挙げられる。
【0181】
負極活物質としては、特に制限されないが、炭素活物質が挙げられる。炭素活物質としては、例えば、グラファイト、ソフトカーボン、ハードカーボンが挙げられる。
【0182】
これら負極活物質は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0183】
電解質として、二次電池として、リチウムイオン電池が採用される場合には、例えば、リチウム塩が、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、エチルメチルカーボネート(EMC)などのカーボネート化合物に溶解された溶液が挙げられる。
【0184】
そして、二次電池を製造するには、例えば、二次電池のセパレータを、正極と、負極との間に挟み込み、これらを電池筐体(セル)に収容して、電解質を電池筐体に注入する。これにより、二次電池を得ることができる。
【0185】
上記の二次電池は、上記の二次電池セパレータを備えているため、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0186】
<作用効果>
本発明の二次電池セパレータ用コート材原料は、酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂とアクリル樹脂粒子とを含む。そのため、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材の塗布膜は密着性に優れ、また、この塗布膜を備える二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0187】
詳しくは、従来、二次電池セパレータ用コート材原料(二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材)としては、アクリル樹脂が知られている。
【0188】
具体的には、特許文献1に記載されるように、アクリルエステルモノマーを重合してなる疎水性重合体を含む水分散液(アクリルエマルション)、および、特許文献2に記載されるように、アクリルアミドモノマーを重合してなる水溶性重合体を含む水溶液(アクリル水溶液)が知られている。
【0189】
しかし、特許文献1のアクリルエマルションは、疎水性のアクリル樹脂粒子であることから、低吸水性に優れる一方、アクリルエマルション中のアクリル樹脂粒子のみが無機粒子を接着していることから耐熱性が低くなる不具合がある。また、特許文献2のアクリル水溶液は、水溶性アクリル樹脂が分子レベルで水中に分散しているため、無機粒子を効率よく吸着できることから、耐熱性に優れる一方、水溶性アクリル樹脂であることから低吸水性が低くなる不具合がある。
【0190】
これに対して、アクリル樹脂に代えて、変性メチロールメラミン縮合樹脂を用いると、変性メチロールメラミン縮合樹脂は、熱硬化性樹脂であるとともに、酸性基を有するため、耐熱性を向上させることができる。また、メラミン骨格が低吸水性であることから、低吸水性に優れる。
【0191】
つまり、変性メチロールメラミン縮合樹脂を用いることによって、耐熱性および低吸水性の両立を図ることができる。
【0192】
一方、変性メチロールメラミン縮合樹脂は、熱硬化性樹脂であるため、柔軟性や弾力性に劣る。そのため、セパレータが、熱による収縮で形状が変化した場合に、コート層がはがれる可能性がある。
【0193】
そこで、この二次電池セパレータ用コート材原料では、変性メチロールメラミン縮合樹脂とアクリル樹脂粒子とを含んでいる。
【0194】
変性メチロールメラミン縮合樹脂とアクリル樹脂粒子を組み合わせることで、変性メチロールメラミン縮合樹脂の、耐熱性、低吸水性および透気度に優れるという特徴を維持しつつ、アクリル樹脂粒子により、密着性を向上させることができる。
【0195】
つまり、この二次電池セパレータ用コート材原料は、変性メチロールメラミン縮合樹脂とアクリル樹脂粒子とを含むことによって、この二次電池セパレータ用コート材原料を含む二次電池セパレータ用コート材の塗布膜は密着性に優れ、また、この塗布膜を備える二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0196】
二次電池セパレータ用コート材は、上記の二次電池セパレータ用コート材原料を含む。そのため、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜は密着性に優れ、また、この塗布膜を備える二次電池セパレータは、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0197】
二次電池セパレータは、上記の二次電池セパレータ用コート材の塗布膜を備える。そのため、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0198】
二次電池は、上記の二次電池セパレータを備える。そのため、耐熱性、低吸水性および透気度に優れる。
【0199】
<二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材および二次電池セパレータの製造>
製造例1
[酸性基を有する変性メチロールメラミン縮合樹脂の製造]
水65質量部、および、37%ホルムアルデヒド277.8質量部(3.43モル)を撹拌機、温度計、および還流管を装備した4つ口フラスコに仕込み、撹拌混合した。さらに、メラミン144.0部(1.14モル)を撹拌下で添加した。60℃まで昇温し、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH11.0とした後、さらに75℃で3時間反応させ、60℃まで冷却した。これにより、メチロールメラミンを得た。
【0200】
次いで、酸成分として、亜硫酸水素ナトリウム50.9質量部(0.489モル)を添加し、80℃で2時間反応させた。これにより、変性メチロールメラミンを得た。
【0201】
次いで、40℃以下に冷却後、水を加えて固形分濃度を26質量%に調整した。さらに40%硫酸でpH6.8に調整し、70℃で3時間縮合させた後、25%水酸化ナトリウム水溶液でpH12.0に調整して反応を停止させた。これにより、変性メチロールメラミン縮合樹脂(変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液)を得た。変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液の固形分濃度は、25質量%であった。
【0202】
製造例2
製造例1において、37%ホルムアルデヒドを231.5質量部(2.86モル)配合した以外は、製造例1と同様にして、製造例2の変性メチロールメラミン縮合樹脂(変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液)を得た。
【0203】
製造例3
製造例1において、亜硫酸水素ナトリウムを48.0質量部(0.461モル)配合した以外は、製造例1と同様にして製造例3の変性メチロールメラミン縮合樹脂(変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液)を得た。
【0204】
製造例4
[アクリル樹脂粒子の製造]
撹拌機を装備したセパラブルフラスコに、界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸0.2質量部、水300質量部を仕込み、攪拌しながら窒素パージ下70℃まで昇温した。次いで、重合開始剤として過硫酸カリウム2質量部を添加してから、下記の乳化液を3時間かけて連続的に添加し、さらに、80℃で5時間攪拌して反応させた。冷却後、25%アンモニア水でpH9に調整して反応を停止させた。その後、水を適量加え、アクリル樹脂粒子の水分散液を得た。アクリル樹脂粒子の水分散液の固形分濃度は、30質量%であり、アクリル樹脂粒子の粒子径は、0.2μmであった。
【0205】
<乳化液の調製>
水170質量部、ドデシルベンゼンスルホン酸1.0質量部の水溶液に、2-エチルヘキシルアクリレート200質量部、スチレン225質量部、アクリルアミド10質量部、メタクリル酸10質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート8質量部を攪拌しながら連続的に添加し、乳化液を得た。
【0206】
製造例5
製造例4において、乳化液のモノマー組成を、n-ブチルアクリレート300質量部、メチルメタクリレート125質量部、メタクリルアミド5質量部、メタクリル酸10質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート8質量部とした以外は、製造例4と同様にして、製造例5のアクリル樹脂粒子の水分散液を得た。アクリル樹脂粒子の粒子径は、0.3μmであった。
【0207】
製造例6
製造例4において、セパラブルフラスコに仕込む界面活性剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸0.05質量部、乳化液のモノマー組成を、n-ブチルアクリレート200質量部、スチレン125質量部、メタクリルアミド15質量部、メタクリル酸10質量部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート5質量部とした以外は、製造例4と同様にして、製造例6のアクリル樹脂粒子の水分散液を得た。アクリル樹脂粒子の粒子径は、0.6μmであった。
【0208】
製造例7
[水溶性アクリル樹脂]
攪拌機、還流冷却を装備したセパラブルフラスコに、水392.0質量部仕込み、窒素ガスで置換した後、80℃に昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム0.6質量部添加した。
【0209】
次いで、メタクリルアミド95.0質量部、メタクリル酸5.0質量部、25%アンモニア水5.0質量部、水300.0質量部より調製したモノマー組成物を3時間かけて連続的に添加し、さらに3時間保持して、アンモニア水にてpH9.0に調整して反応を停止させた。その後、水を適量加え、固形分が15.0質量%である水溶性ポリマーの水溶液を得た。
【0210】
実施例1
(二次電池セパレータ用コート材原料の製造)
変性メチロールメラミン縮合樹脂100質量部に対して、アクリル樹脂粒子30質量部となるように、上記製造例1の変性メチロールメラミン縮合樹脂の水分散液と、上記製造例4のアクリル樹脂粒子の水分散液とを混合し、水を適量加え、スターラーで撹拌し、二次電池セパレータ用コート剤原料の水分散液(固形分濃度20質量%)を得た。
【0211】
(二次電池セパレータ用コート材の製造)
ポリカルボン酸アンモニウム水溶液(分散剤、サンノプコ社製、商品名SN5468)に、水を適量加え、ディスパー(1000rpm)で撹拌した。次いで、ベーマイト(無機フィラー、水酸化酸化アルミニウム、ナバルテック製、商品名「アピラールAOH60」、平均メジアン径D50:0.9μm)を添加し、撹拌後、さらにホモジナイザー(5000rpm)で撹拌した。これにより、無機粒子分散液(無機粒子濃度45質量%)を得た。
【0212】
次いで、無機粒子100質量部に対して、二次電池セパレータ用コート剤原料(固形分)が3.9質量部となるように、上記二次電池セパレータ用コート剤原料の水分散液(固形分濃度20質量%)と、上記無機粒子分散液(無機粒子濃度45質量%)とを混合し、撹拌した。
【0213】
その後、これを300メッシュ(濾過粒度48μm)のフィルターで濾過した。これにより、二次電池セパレータ用コート材(二次電池セパレータ用コート材の分散液)を製造した。二次電池セパレータ用コート材の分散液の固形分濃度は、40質量%であった。
【0214】
(二次電池セパレータの製造)
[第1工程]
多孔膜として、ポリオレフィン多孔膜を準備した。
【0215】
[第2工程]
ワイヤーバーを用いて、ポリオレフィン多孔膜の一方面に、上記二次電池セパレータ用コート材(二次電池セパレータ用コート材の分散液)を塗布して、その後、50℃で乾燥した。これにより、ポリオレフィン多孔膜の一方面に、二次電池セパレータ用コート材の塗布膜(厚み5μm)を形成した。これにより、二次電池セパレータを製造した。
【0216】
実施例2~実施例10、および、比較例1~比較例4
実施例1と同様の手順に基づいて、二次電池セパレータ用コート材原料、二次電池セパレータ用コート材および二次電池セパレータを製造した。但し、表1の記載に基づいて、二次電池セパレータ用コート材原料の処方を変更した。
【0217】
なお、実施例1~10および比較例1~4は、無機粒子100質量部に対して、変性メチロールメラミン縮合樹脂が3質量部となるように配合した。
【0218】
<評価>
[耐熱性]
各実施例および各比較例の二次電池セパレータを5cm×5cmに切り出し、これを試験片とした。この試験片を150℃×1時間オーブン内に放置した。放置前後において、試験片の各辺の長さを測定した。収縮前の各辺の長さと、収縮後の各辺の長さより、下記式に基づいて、熱収縮率を算出した。耐熱性に関して次の基準で評価した。その結果を表1に示す。
熱収縮率(%)={収縮前の1辺の平均長さ(cm)-収縮後の1辺の平均長さ(cm)}/収縮前の1辺の平均長さ(cm)×100
{基準}
◎ :熱収縮率が15%未満であった。
○ :熱収縮率が15%以上25%未満であった。
△ :熱収縮率が25%以上65%未満であった。
× :熱収縮率が65%以上80%未満であった。
××:熱収縮率が80%以上であった。
【0219】
[透気度]
各実施例および各比較例の二次電池セパレータについて、旭精工社製の王研式透気度平滑度試験機により、JIS-P-8117に準じて測定した透気抵抗度を求めた。透気抵抗度が小さいほど、イオン透過性に優れると評価した。また、イオン透過性に関して次の基準で評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
◎ :透気抵抗度が200s/100mL未満であった。
○ :透気抵抗度が200s/100mL以上220s/100mL未満であった。
△ :透気抵抗度が220s/100mL以上270s/100mL未満であった。
× :透気抵抗度が270s/100mL以上であった。
【0220】
[密着性]
各実施例および各比較例の二次電池セパレータについて、二次電池セパレータを5cm×10cmに切り出し、これを試験片とした。JIS Z1522に準ずる方法で二次電池セパレータ用コート材の塗布膜に、セロハン粘着テープを貼り付け、180°ピール試験を実施した。その際、セロハン粘着テープの引っ張り速度は10mm/分とした。測定は3回実施し、その平均値を算出した。また、密着性に関して次の基準で評価した。その結果を表1に示す。
{基準}
◎ :接着強度の平均値が70N/m以上であった。
○ :接着強度の平均値が50N/m以上70N/m未満であった。
△ :接着強度の平均値が20N/m以上50N/m未満であった。
× :接着強度の平均値が1/m以上20N/m未満であった。
××:接着強度の平均値が1N/m未満であった。
【0221】
[貯蔵安定性]
各実施例および各比較例において、二次電池セパレータ用コート材原料の貯蔵安定性を、以下の方法で評価した。すなわち、二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液1Lを、40℃の恒温槽に保管した。保管前および保管半年後に、二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液の粘度およびpHを測定した。保管前の粘度およびpHと、保管後の粘度およびpHとにより、下記式に基づいて、粘度の変化率およびpHの変化量を算出した。さらに、二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液の保管前後における外観変化(層分離および色相)を、目視で観察した。そして、粘度の変化率、pHの変化量および外観変化をそれぞれ1~4点で評価し、最も低い点数によって、貯蔵安定性を次の基準で評価した。その結果を表1に示す。
粘度の変化率(%)=(|保管前の粘度-保管後の粘度|)/保管前の粘度×100
pHの変化量=|保管前のpH-保管後のpH|
{基準}
・粘度の変化率
4点:0%以上5%以下
3点:5%超過10%以下
2点:10%超過30%以下
1点:30%超過
・pHの変化量
4点:0以上0.5以下
3点:0.5超過1.0以下
2点:1.0超過2.0以下
1点:2.0超過
・外観変化
4点:外観変化なし。
3点:僅かな外観変化あり。
2点:外観変化あり。
1点:顕著な外観変化あり。
・総合評価(貯蔵安定性)
◎:粘度の変化率、pHの変化量および外観変化の評価における最低点が、4点。
○:粘度の変化率、pHの変化量および外観変化の評価における最低点が、3点。
△:粘度の変化率、pHの変化量および外観変化の評価における最低点が、2点。
×:粘度の変化率、pHの変化量および外観変化の評価における最低点が、1点。
【0222】
[低吸水性]
各実施例および各比較例において、二次電池セパレータ用コート材原料の水分散液5gを真空乾燥機にて常温で24時間以上乾燥した。乾燥後の二次電池セパレータ用コート材原料を、さらに、24℃湿度55%の恒温室で24時間調湿した。その後、二次電池セパレータ用コート材原料0.5gを脱水エタノール15gに浸漬し、24℃で24時間静置した。エタノール溶液中の水分量を、京都電子工業株式会社製:カールフィッシャー滴定装置(Automatic Potentiometric TitratorAT-510)を用いて測定した。その結果を表1に示す。水分量が少ない方が、低吸水率に優れると評価できる。
【0223】