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特開2024-74988下地金具、仕上げ材取付用パネル、仕上げ材取付構造物および建物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074988
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】下地金具、仕上げ材取付用パネル、仕上げ材取付構造物および建物
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20240524BHJP
   E04F 13/14 20060101ALI20240524BHJP
   E04F 13/12 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
E04F13/08 101F
E04F13/14 102E
E04F13/12 F
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064108
(22)【出願日】2024-04-11
(62)【分割の表示】P 2020097964の分割
【原出願日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】P 2019105373
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年6月12日に,発明に係る物の図面を配布した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年7月26日に,リーフレット((仮称)H(ヘーベル)M(メタル)P(パネル)工法)にて発明に係る物を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年7月26日に,HMP工法概要説明書にて発明に係る物を公開した。
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 平成30年7月24日に,三菱ふそう川崎製作所/技術センターにて,発明に係る物の取付けを行った。
(71)【出願人】
【識別番号】390018717
【氏名又は名称】旭化成建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(72)【発明者】
【氏名】山口 晃平
(72)【発明者】
【氏名】松下 健一
(72)【発明者】
【氏名】長田 茂樹
(57)【要約】
【課題】地震時にパネルおよび仕上げ材のロッキングを阻害(拘束)しない下地金具、仕上げ材取付用パネル、仕上げ材取付構造物および建物を提供すること。
【解決手段】パネルに仕上げ材を取り付けるための複数の金具からなる下地金具であって、パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、第1の下地金具は、第1の取付軸で前記パネルに取り付けられ、第2の下地金具は、第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で第1の下地金具に取り付けられるとともに、第1の下地金具上で面内に回動可能とされており、第1の取付軸と第2の取付軸とは、同軸上にある場合は面外方向に取付け位置が分かれており、略平行の場合は第1または第2の取付軸を中心とした所定の半径方向に所定の間隔でずれていることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに仕上げ材を取り付けるための複数の金具からなる下地金具であって、
前記下地金具は、前記パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、前記仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、
前記第1の下地金具は、第1の取付軸で前記パネルに取り付けられ、
前記第2の下地金具は、前記第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で前記第1の下地金具に取り付けられるとともに、該第1の下地金具上で面内に回動可能とされており、
前記第1の取付軸と前記第2の取付軸とは、同軸上にある場合は面外方向に取付け位置が分かれており、略平行の場合は該第1または第2の取付軸を中心とした所定の半径方向に所定の間隔でずれていることを特徴とする、下地金具。
【請求項2】
前記下地金具は、前記第1の下地金具に設けられた第2のボルトおよび該第2のボルトと螺合する第2のナットと、を有し、
前記第2の下地金具は、前記第2のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第2のボルトと前記第2のナットとが螺合することにより、該第2の下地金具は前記第1の下地金具に取り付けられる、請求項1に記載の下地金具。
【請求項3】
前記下地金具は、前記パネルに埋設された第1のナットおよび該第1のナットと螺合する第1のボルトを有し、
前記第1の下地金具は前記第1のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第1のナットと前記第1のボルトとが螺合することにより、該第1の下地金具は前記パネルに取り付けられる、請求項1または2に記載の下地金具。
【請求項4】
前記第2の下地金具を前記第1の下地金具に取り付ける締め付けトルクが、前記第1の下地金具を前記パネルに取り付ける締め付けトルクと同等もしくは小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項5】
前記第2のナットが、ゆるみ止め機構を有するナット、又はダブルナットである、請求項2~4のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項6】
前記第1の下地金具と前記第2の下地金具との間にすべり材が配されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項7】
前記第1の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、請求項1~6のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項8】
前記第2の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、請求項1~7のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の下地金具が取り付けられた、仕上げ材取付用パネル。
【請求項10】
仕上げ材を固定するための複数の金具からなる下地金具が取り付けられた仕上げ材取付用パネルであって、
前記パネルの長さ方向端部において、前記仕上げ材の固定位置が該パネルの長さ方向端部側に近くなるように、前記下地金具の前記パネルへの取付向きを変更した、仕上げ材取付用パネル。
【請求項11】
請求項9または10に記載の仕上げ材取付用パネルの前記下地金具に、直接または連結部材を介して仕上げ材が取り付けられた、仕上げ材取付構造物。
【請求項12】
前記連結部材は、複数枚の前記仕上げ材取付用パネルに亘って取り付けられる金具である、請求項11に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項13】
請求項11または12に記載の仕上げ材取付構造物を備えた、建物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、下地金具、仕上げ材取付用パネル、仕上げ材取付構造物および建物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パネルに仕上げ材(化粧板)による仕上げ(金属貼り、石貼り、陶板貼り等)をするために、図14に示すような仕上げ材取付用パネルが使用されている(例えば特許文献1)。
この仕上げ材取付用パネルでは、パネル110に係止用金具109によってプレート形の第2の下地金具113(受け金具)が取り付けられ、第2の下地金具113に連結部材130を介して仕上げ材131が取り付けられている。連結部材130は第2の下地金具113に溶接等で取り付けられた断面略L形の金具126と、ボルト123およびナット124により該金具126に結合されたプレート形の金具122から構成されている。
【0003】
金具122はボルト挿通孔を有するプレートの先端部に上下方向に突出する棒状の突起部を設けてなり、上側の仕上げ材131と下側の仕上げ材131のそれぞれの小口面に設けた孔に該突起部が嵌合されている。なお上側の仕上げ材131の自重はプレートにより支持されている。
【0004】
仕上げ材取付用パネルとしてALCパネルを想定した場合、図15(a)に示すように、建築用の躯体にパネル取付金具140を用いてパネル上下を2点で取付けている。この構造により、地震が起きた場合に、建物躯体の層間変位を、パネル自身がロッキングすることにより受け流している(図15(b)参照)。
【0005】
このパネルに上述の各種の金具を用いて第2の下地金具113を取付けた上に仕上げ材131が取付けられる。第2の下地金具113の場合、パネル1枚に数カ所の金具で固定された上に、金具126などの、仕上げ材131を取り付ける為の金具(連結部材)が必要となる。また、金具126は、直接に仕上げ材131を取り付ける為の定規金具(水平レベルガイド)となる。この金具126(連結部材)はそのレベルを一定にするため、パネル数枚に連続して取り付ける必要がある(図16参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-185159号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、RC(鉄筋コンクリート)造の壁パネルに仕上げ材を設ける場合には壁がロッキングしないが、鉄骨造でロッキング機構を有する壁パネルに仕上げ材を設ける場合には、仕上げ材が壁パネルのロッキングを拘束し、壁パネルおよび仕上げ材に地震力の負荷がかかってしまう。
【0008】
図16に示すように、仕上げ材を固定する連結部材(金具126)が、地震時にロッキング挙動が異なる隣接するパネル110を跨いで、直接もしくは金具を介してパネルに取付けられる場合、地震時に隣接するそれぞれのパネル110のロッキングを拘束することに加え、仕上げ材のロッキングも拘束してしまう。特に、パネルと仕上げ材間での回動に対し拘束力や摩擦力が高くスベリが悪いことにより、パネル、仕上げ材およびそれらを取り付ける各金具等に地震力による過剰な負荷がかかってしまう。
また、従来の取付構造では、下地金具の形状が限定的であるため、コストおよび施工性の面から汎用性がない。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、本発明の目的は、地震時にパネルおよび仕上げ材のロッキングを阻害(拘束)しない下地金具、仕上げ材取付用パネル、仕上げ材取付構造物および建物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
[1]
パネルに仕上げ材を取り付けるための複数の金具からなる下地金具であって、
前記下地金具は、前記パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、前記仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、
前記第1の下地金具は、第1の取付軸で前記パネルに取り付けられ、
前記第2の下地金具は、前記第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で前記第1の下地金具に取り付けられるとともに、該第1の下地金具に対し面内に回動可能とされており、
前記第1の取付軸と前記第2の取付軸とは、同軸上にある場合は面外方向に取付け位置が分かれており、略平行の場合は該第1または第2の取付軸を中心とした所定の半径方向に所定の間隔でずれていることを特徴とする、下地金具。
[2]
前記下地金具は、前記第1の下地金具に設けられた第2のボルトおよび該第2のボルトと螺合する第2のナット、を有し、
前記第2の下地金具は、前記第2のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第2のボルトと前記第2のナットとが螺合することにより、該第2の下地金具は前記第1の下地金具に取り付けられる、[1]に記載の下地金具。
[3]
前記下地金具は、前記パネルに埋設された第1のナットおよび該第1のナットと螺合する第1のボルトを有し、
前記第1の下地金具は前記第1のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第1のナットと前記第1のボルトとが螺合することにより、該第1の下地金具は前記パネルに取り付けられる、[1]または[2]に記載の下地金具。
[4]
前記第2の下地金具を前記第1の下地金具に取り付ける締め付けトルクが、前記第1の下地金具を前記パネルに取り付ける締め付けトルクと同等もしくは小さい、[1]~[3]のいずれかに記載の下地金具。
[5]
前記下地金具は、前記第1の下地金具に設けられた第2のボルトおよび該第2のボルトと螺合する第2のナット、を有し、
前記第2のナットが、ゆるみ止め機構を有するナット、又はダブルナットである、[2]~[4]のいずれかに記載の下地金具。
[6]
前記第1の下地金具と前記第2の下地金具との間にすべり材が配されている、[1]~[5]のいずれかに記載の下地金具。
[7]
前記第1の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、[1]~[6]のいずれかに記載の下地金具。
[8]
前記第2の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状である、[1]~[7]のいずれかに記載の下地金具。
[9]
[1]~[8]のいずれかに記載の下地金具が取り付けられた、仕上げ材取付用パネル。
[10]
パネルに仕上げ材を固定するための複数の金具からなる下地金具が取り付けられた仕上げ材取付用パネルであって、
前記下地金具は、前記パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、
前記仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、
前記第1の下地金具は、第1の取付軸で前記パネルに取り付けられ、
前記第2の下地金具は、前記第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で前記第1の下地金具に取り付けられるとともに、該第1の下地金具に対し面内に回動可能とされており、
前記パネルの長さ方向端部において、前記仕上げ材の固定位置が該パネルの長さ方向端部側に近くなるように、前記下地金具は、前記パネルへの取付け向きを上端側と下端側とで変えて取り付けられている、仕上げ材取付用パネル。
[11]
[9]または[10]に記載の仕上げ材取付用パネルの前記下地金具に、直接または連結部材を介して仕上げ材が取り付けられた、仕上げ材取付構造物。
[12]
前記連結部材は、複数枚の前記仕上げ材取付用パネルに亘って取り付けられる金具である、[11]に記載の仕上げ材取付構造物。
[13]
[11]または[12]に記載の仕上げ材取付構造物を備えた、建物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地震時にパネルおよび仕上げ材のロッキングを阻害(拘束)しない仕上げ材取付用パネル、仕上げ材構造物および建物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の仕上げ材取付用パネルの一実施形態を示す分解斜視図である。
図2】本発明の仕上げ材取付用パネルの一実施形態を示す断面図である。
図3】本発明の仕上げ材取付用パネルの一実施形態を示す部分断面図である。
図4】本発明の仕上げ材取付用パネルに使用する係止用金具の斜視図である。
図5】本発明の下地金具の斜視図である。
図6】本発明の仕上げ材取付用パネルに仕上げ材が取り付けられた状態を示す断面図である。
図7】本発明の化粧板取付用パネルがロッキングする様子を模式的に示す図である。
図8】本発明の仕上げ材取付用パネルの一実施形態を示す側面図である。
図9】本発明の仕上げ材取付用パネルの一実施形態を示す断面図である。
図10】本発明の仕上げ材取付用パネルの一実施形態を示す断面図である。
図11】本発明の仕上げ材取付用パネルの他の実施形態を示す図である。
図12】本発明の仕上げ材取付用パネルの他の実施形態を示す図である。
図13】本発明の仕上げ材取付用パネルの他の実施形態を示す図である。
図14】従来の仕上げ材取付用パネルを示す断面図である。
図15】従来のパネルがロッキングする様子を模式的に示す図である。
図16】従来のパネルがロッキングする様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の下地金具、仕上げ材取付用パネルの一実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。図1図5は本発明の下地金具および仕上げ材取付用パネルの一実施形態を示す図である。
【0014】
<第1実施形態>
図1および図2において、仕上げ材取付用パネル1は、パネル10に、仕上げ材取付用の下地金具20が取り付けられた仕上げ材取付用パネルであって、パネル10の小口面から小口面に略垂直方向に長孔11が穿設され、パネル10の仕上げ材30側表面と長孔11とを連通するように、表面から略垂直に座掘孔12が穿設されている(図3参照)。
パネル10は、建築用の躯体に取付られている。パネル10は特に限定されるものではなく、ここでは軽量気泡コンクリートパネルを例として示すが、一般に建築用パネルとして使用されている無機質系パネル、例えばセメント系の押出成形パネル等にも適用できる。またパネル表面は素地でも塗装を施してあってもよい。
【0015】
パネル10の小口面から長孔11に棒状あるいは管状の鋼材13が挿入され、パネル10の仕上げ材30側から座掘孔12に係止用金具14が挿入されている。パネル10内部において、鋼材13と係止用金具14が係合している。
この係止用金具14は、図4に示すように係合孔15aを有するOナット15(第1のナット)、ボルト16(第1のボルト)及び座金17から構成されている。鋼材13はOナット15の係合孔15aに、パネル10の内部で係合されている。
【0016】
図3は、図1の部分断面斜視図である。図1のような構成とするためには、パネル10の小口面にその面に略垂直方向に長孔11をあけ、パネル10外側表面からこの面と直角に達する座掘孔12をあけて連通する。長孔11と座掘孔12は、施工現場で汎用されている手持ちの電気ドリルで容易に穿設することができるが、パネル製造工程で予め穿設しておくことも可能である。次いで座掘孔12より係止用金具14のOナット15の係合孔15aを先にして長孔11に挿入し、鋼材13を長孔11から挿入して係合孔15aを貫通するように取り付ける。Oナット15は座掘孔12の外側に到達しない長さとする。
【0017】
このOナット15の係合孔15aの径は鋼材13の外径とほぼ等しく、鋼材13が係合孔15aを貫通することにより、Oナット15と鋼材13は係合し、一体化される。鋼材13は1つのパネル10に、例えば上下複数の位置でそれぞれ水平に通し、係止用金具14を縦方向(パネル長手方向)に並べて取り付けて第1の下地金具21を固定することができ、必要に応じて増やすことができる。
またOナット15は、パネル10内部の補強筋に溶接する等の方法で配置・固定してもよい。その場合、鋼材13や係合孔15aは省略することもできる。
なお、Oナット15の取付位置(ひいては下地金具20の取付位置)はパネル10の幅方向の略中央部に、長手方向に並べて配される。Oナット15の取付位置をほぼパネル10の幅中央に並べた場合、パネル10および仕上げ材30ともロッキングしやすくなるため更なる耐震効果が期待できる。Oナット15の縦方向(パネル長手方向)の間隔は例えば600mmピッチ以下とすることが好ましい。また、横方向(パネル10の幅方向)において隣接する下地金具20のピッチは、パネル10の幅寸法と略等しい、あるいは、パネル10幅寸法の略整数倍とする。
【0018】
そして本実施形態では、パネル10に下地金具20を取り付ける。
本実施形態において、下地金具20は、パネル10表面に配される第1の下地金具21と、仕上げ材30を固定する第2の下地金具22とを少なくとも有し、第1の下地金具21と第2の下地金具22との間でロッキングする機構を有する。
【0019】
パネル10表面に露出したOナット15上に平板状の第1の下地金具21およびL字形状の第2の下地金具22がこの順に配される。このとき、パネル10の内部、座掘孔12の長孔11手前にバックアップ材24を配することが好ましい。
【0020】
図5は、下地金具20(第1の下地金具21および第2の下地金具22)を抜き出して示す斜視図である。
下地金具20は、パネル10に埋設されたOナット15(第1のナット:図5では略)およびOナット15と螺合するボルト16(第1のボルト)、並びに、第1の下地金具21と一体に設けられたボルト部21b(第2のボルト)およびボルト部21bと螺合するナット23(第2のナット)と、を有する。ボルト部21bは、側面視において、ボルト16と略平行に配される。
【0021】
第1の下地金具21は、パネル10の表面に配される。第1の下地金具21はボルト16が挿通される挿通孔21aを有し、挿通孔21aを通じてOナット15とボルト16とが螺合することにより、第1の下地金具21はパネル10に取り付けられる。
第1の下地金具21の断面形状は、例えば、L字、I字、コの字またはロの字形状である。
なお、第1の下地金具21はパネル10に固定さえされれば、その固定方法は限定されない。例えば第1の下地金具21は、Oナット15を使用せず、パネル10に固定されたボルト等の係止用金具を挿通孔21aに通すことにより、パネル10に固定してもよい。また、ビスや後施工アンカー等により、第1の下地金具21をパネル10に直接固定してもよい。
【0022】
第2の下地金具22は、直接または間接的に仕上げ材30が固定される。第2の下地金具22は、ボルト部21bが挿通される挿通孔22aを有し、挿通孔22aを通じてボルト部21bとナット23とが螺合することにより、第2の下地金具22は第1の下地金具21に取り付けられる。第2の下地金具22は、第1の下地金具21への取付軸(図中点線Tで示す、第2の取付軸)すなわちボルト部21bを回動軸として、第1の下地金具21上で面内に回動可能となされている。
【0023】
パネル10表面で第1の下地金具21を回動させると、パネル10と第1の下地金具21との摩擦力が大きいためスベリが悪い。よって、第1の下地金具21の表面で第2の下地金具22を優先的に回動させる。第1の下地金具21と第2の下地金具22とが金属同士の接触であることで摩擦力が小さくなり(良く滑るようになり)、第2の下地金具22を良好に回動させることができロッキング性能が向上する。
第1の下地金具21および第2の下地金具22は金属製であることが好ましい。具体的には例えばSS材(一般構造用圧延鋼材)やステンレス鋼板等からなる。
【0024】
そして、特に本実施形態の仕上げ材取付用パネル1では、第1の下地金具21のパネル10へのボルト16による取付軸S(図中点線Sで示す、第1の取付軸)と、第2の下地金具22のボルト部21bによる取付軸T(第2の取付軸)とが、側面視で略平行であることを特徴とする。また、第1または第2の取付軸を中心とした所定の半径方向(上下方向および/または左右方向)に、所定の間隔でずれた位置にある。これにより、固定する軸と回転させる軸を分けることが可能であり、回転の促進と取付部の緩み防止(安全性)に寄与する。図では上下方向にずれている場合を例に挙げて示している。前記所定の間隔とは、第2の下地金具22の回動を阻害しない程度とする。
【0025】
第1の下地金具21の取付位置(例えば、取付軸S)と、第2の下地金具22の取付位置(例えば、取付軸T)とがずれていることで、その固定度を個別に設定・管理することができる。すなわち、取付位置(例えば、取付軸)をずらすことで締め付けトルクを使い分けることができ、後述するように第1の下地金具21は強固に固定し、第2の下地金具22は回動させるためゆるく固定することが可能である(なお、同一回同軸である場合、少なからず同一のボルトを介してパネル固定側のナットにも回動力が生じる)。そのため、地震の際に、第1の下地金具21の回動と第2の下地金具22の回動に差が生まれる。例えば、回動半径や回動位相が異なるものとなる。そして、例えば、第1の下地金具21の回動と第2の下地金具22の回動とが互いに打ち消しあうことで、変位を効率よく受け流すことができ、パネル10および仕上げ材30が損傷を受けることをより確実に回避することができる。
また、取付位置をずらすことにより、固定箇所の確認が簡便となる。施工完了検査やメンテナンス時に、第1の下地金具21のナット23が緩んでいないかを目視で確認することができる。
【0026】
なお、特開2018-188850号公報に示されるように、第1の金具(パネルに固定する金具)と第2の金具(回動させる金具)を同一軸に固定すると、固定力が強い場合は第2の金具の回動を拘束する、固定力が弱い場合は固定すべき第1の金具が回動してしまう恐れがあり、その固定力の設定・管理が難しい。
【0027】
第2の下地金具22を第1の下地金具21に取り付けるための、ボルト部21bと螺合するナット23の締め付けトルクが、第1の下地金具21をパネル10に取り付けるための、Oナット15と螺合するボルト16の締め付けトルクと同等もしくは小さくなされていることが好ましい。
本実施形態の仕上げ材取付用パネル1において、第1の下地金具21の締め付けトルクと第2の下地金具22の締め付けトルクに差を設けている。具体的には、第2の下地金具22を第1の下地金具21に固定するナット23の締め付けトルクを、第1の下地金具21をパネル10に固定するボルト16の締め付けトルクよりも小さくすることにより、地震時に、パネル10と第1の下地金具21との間ではなく、第1の下地金具21と第2の下地金具22との間で優先的に回動させる回動機構が形成される。これにより、地震による変位をより効率よく受け流すことができる。
第1の下地金具21上で第2の下地金具22を優先的に回動させることで、第1の下地金具21のパネル10表面での回動が小さく抑えられ、パネル表面の摩耗、例えば、パネル表面の塗装の剥げ、パネル素地表面の削れや損傷を防止することができる。
【0028】
第1の下地金具21を固定するボルト16の締め付けトルクは、例えば、20~25N・mであることが好ましい。また、第2の下地金具22を固定するナット23の締め付けトルクは、例えば、15~18N・mであることが好ましい。締め付けトルクが小さ過ぎると締め付けがゆるみ、締め付けトルクが大きすぎるとボルト・ナットが破損するおそれがある。
【0029】
第2の下地金具22を第1の下地金具21に取り付けるナット23が、ゆるみ止め機構を有している、又はダブルナットであることが好ましい。
第2の下地金具22の第1の下地金具21への取り付けは、通常、ボルト・ナットを用いる。このとき、ゆるみ止め機構を有するナットを用いる、あるいは、ダブルナットを用いることが好ましい。これにより、第1の下地金具21の取り付けにおいて、ナット23の締め付けトルクが比較的小さくても、ナット23のゆるみを防止することができる。
ナット23のゆるみ止め機構としては、ゆるみ止めの目的を達成できるものであれば特に限定されない。
【0030】
このように、パネル10上に直接第2の下地金具22を取り付けるのではなく、パネル10に対し第1の下地金具21を介して第2の下地金具22を取り付け、第2の下地金具22の締め付けトルクを第1の下地金具21の締め付けトルクと同等もしくは小さくすることで、地震の際に、パネル10のロッキングに応じて第2の下地金具22が第1の下地金具21の面内で優先的に回動する。これにより、第2の下地金具22に取り付けられた連結部材31および仕上げ材30もロッキングすることができ、変位を受け流すことが可能となる(図7参照)。その結果、無理な力が加わることによってパネル10および仕上げ材30が損傷を受けることを回避することができる。
【0031】
さらに、第1の下地金具21と第2の下地金具22との間にすべり材が配されていることが好ましい。なお、すべり材の枚数は複数でも構わない。これにより、第1の下地金具21と第2の下地金具22との摩擦力を小さくして、回動を促進することができる。これにより、地震時にパネル10および仕上げ材30のロッキングを阻害(拘束)しない。
すべり材としては、第1の下地金具21と第2の下地金具22との摩擦力を小さくすることができるものであれば特に限定されないが、例えばステンレスワッシャー25が挙げられる。第1の下地金具21、第2の下地金具22に摩擦係数の低い表面処理を施してもよい。
【0032】
次にパネル10に仕上げ材30を取り付けた構造を図6および図7により説明する。図6および図7において、パネル10の第2の下地金具22に、連結部材31(下地レール)を介して仕上げ材30が取り付けられている。
第2の下地金具22の断面形状は、例えば、L字、I字、コの字またはロの字形状である。第2の下地金具22が上記の断面形状であることにより、パネル10に固着される第1の下地金具21および第1の下地金具21をパネル10に取り付けるボルトなどに干渉することなく、連結部材31或いは仕上げ材30を第2の下地金具22に固着可能となる。
【0033】
連結部材31は、例えば、第2の下地金具22に溶接、ボルト・ナット等により取り付けられた断面L字形状の金具から構成されている。連結部材31は、直接に仕上げ材30を取り付ける為の定規金具(水平レベルガイド)となる。この連結部材31は、そのレベルを一定にするため、パネル10の数枚に亘って連続して取り付ける必要がある(図7参照)。
この連結部材31に、仕上げ材30が取り付けられる。
仕上げ材30(化粧板)としては、例えばセメント系、石膏系、金属系など種々のものを使用することができる。また仕上げ材30のサイズは、例えば0.6m×0.6mから1.2m×2.4mあるいは0.6m×5m程度が適当である。
【0034】
上述したように、従来、連結部材(金具126)をパネル110の数枚に連続して取り付けた場合、地震が起きた場合の層間変位でパネル自身はロッキングできても、下地金具および連結部材はロッキングすることができなかった(図16参照)。そのため、無理な力が加わることによりパネル110および仕上げ材が損傷を受けるおそれがあった。
【0035】
これに対し、本実施形態の仕上げ材取付構造体では、第1の下地金具21を介して第2の下地金具22が取り付けられているので、図7に示すように、連結部材31を数枚のパネル10に連続して取り付けた場合であっても、地震の際にパネル10のロッキングに応じて第2の下地金具22が優先的に第1の下地金具21の上で面内に回動することで、第2の下地金具22および連結部材31も水平を保ってロッキングすることが可能となる。連結部材31がロッキングすることで、パネル10がロッキングした場合の変位を、第2の下地金具22、ひいては第2の下地金具22に取り付けられた連結部材31および仕上げ材30が受け流すことが出来るようになり、パネル10および仕上げ材30に無理な力が加わることなく損傷を受けにくくなる。
【0036】
なお、本実施形態の仕上げ材取付構造体において、開口補強材を跨ぐ箇所および出隅部といった、壁の勝ち負けが発生する箇所においては、連結部材31の縁を切る、すなわち連結部材を分割することが好ましい。
【0037】
例えば、図8の円Aに示すように、一般壁部と開口部との境(開口補強材のタテ材を跨ぐ箇所)で連結部材31の縁を切ることで、地震時にパネル10のロッキングを仕上げ材30が阻害(拘束)しない。
【0038】
また、図8の円Bに示すように、面内方向と面外方向でロッキング挙動が異なる、出隅部の勝ち負け壁においても、連結部材31の縁を切ることで、地震時にパネル10のロッキングを仕上げ材30が阻害(拘束)しない。
【0039】
なお、上述した実施形態では、連結部材31を数枚のパネル10に亘って取り付けた場合を例に挙げて説明したが、連結部材31を、複数のパネル10ではなく1枚のパネル10内において取り付ける場合には、1枚のパネル10内に、パネル10の一辺に対して略平行、もしくは略水平方向に二か所以上、第1の下地金具21を取り付けてもよい。
【0040】
ところで、上述したような構成の場合、仕上げ材30が1次の防水機能を備えているため、下地であるパネル10には防水処理は不要であり、耐火性能が要求された場合のみ、横目地にロックウールまたはグラスウールを挿入することで法的には満足する。
2次の防水機能が要求された場合、パネル10の縦目地、横目地にシーリング材を打設するとともに、第2の下地金具22やナット23部分からの漏水を防止するために、外部側からも金具やナット廻りをシーリングする必要があった。金具廻りの止水はシーリング長さが長く、また上下とも忘れずにシーリング処理をしなければならない。またボルト廻りはカ所数が多く、共に煩雑な作業である。一方、金具廻りは金具の厚み分しかシーリング代が確保しづらく、その品質の確保も難しかった。更に、外部側からの施工となるため、長期の耐久性の確保の観点や美観が損なわれる問題を持っていた。
【0041】
このため、例えばパネル10において座掘孔12の表面、すなわちバックアップ材24と第1の下地金具21との間に不定形のシーリング材26が圧入されている(図1参照)。
【0042】
しかしながら、シーリングの劣化や充填不良により止水が切れた場合に、Oナット15の座掘孔12とつながる鋼材13用の長孔11が水路となって室内側へ漏水するリスクがあった。
【0043】
そこで本実施形態では、パネル10小口の長孔11にシーリング材27(またはパテ材)が充填されている(図1参照)。
座掘孔12に加えて、鋼材13用の長孔11にもシーリング材27を充填することで、座掘孔12のシーリングが施工不良などで止水が機能しなくなった場合に、鋼材13用の長孔11(水の出口側)からも止水性を確保できる。長孔11のシーリングは、例えば、工場で行う。
このように二重止水とすることで、仕上げ材固定部の止水性をより確実なものとすることができる。
【0044】
不定形のシーリング材26,27としては、特に限定されるものではなく、建築材のシーリングに通常用いられている湿式シーリング材を適宜使用可能であるが、例えば、柔軟性に富み、地震等の外力により変形した際に母材の破壊を生じさせにくい、変成シリコン系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系等のシーリング材が好ましい。具体例としては、JIS A 5758:1997に規定されるシリコン系、変性シリコン系、ポリサルファイド系、アクリルウレタン系、ポリウレタン系、変性ポリサルファイド系、アクリル系、SBR系、ブチルゴム系、ポリイソブチレン系のもの等を挙げることができる。
【0045】
シーリング材26,27の柔らかさとしては、特に限定されるものではないが、ボルト16と第1の下地金具21で圧入することにより、孔の中やナット内部まで十分に行き渡らせて、隙間を埋めることができる程度の柔らかさは必要である。硬いと孔の内部に圧入することが難しく、逆に柔らかすぎてサラサラした状態であると、圧入時に重力により下がり偏ってしまい、シーリング材を均一に充填することができない。
シーリング材26,27の充填量としては、特に限定されるものではないが、少なすぎると十分に隙間を埋められず防水性を確保できないおそれがあり、多すぎても余剰のシーリング材が外側に溢れて無駄になってしまう。
【0046】
さらに3次の防水機能として、パネル10間の接続部位である目地にシーリング材28を充填してもよい(図6参照)。目地の構成としては、さらに図10に示すように、屋外側からシーリング材50、バックアップ材51、シーリング材50、バックアップ材52を順に備える二重シーリングの構成が挙げられる。また、屋外側からシーリング材50、バックアップ材51を順に備える一重シーリングの構成も挙げられるが、二重シーリングの方が止水性は高い。これにより止水機能をより完璧なものとすることができる。なお、図10に示す例では、バックアップ材52よりも屋内側に耐火目地材53が充填されている。
【0047】
バックアップ材は、弾性変形可能な材料からなり、発泡ポリエチレン、発泡ポリスチレン系のものが多く使用される。また、外力が加えられていない状態において、バックアップ材の断面形状は、限定されないが、例えば、長方形、台形、円形、半円、半楕円形、三角形等の形状が挙げられる。図10に示す例では、バックアップ材51は断面形状が長方形状であり、バックアップ材52は断面形状が円形状である。
【0048】
また、バックアップ材51の代わりに、ボンドブレーカーを使用してもよい。これにより、シーリング材の寿命を延ばすことができる。
ボンドブレーカーとしては、シーリング材と接着しないものとし、紙系、布系、プラスチック系の粘着テープが使用できる。
【0049】
従来の構造体では、パネル10を建物躯体に固定するための金具用ファスナー(パネル用ファスナー40)と、パネル10に仕上げ材30を取り付けるための下地金具用ファスナー(係止用金具14)との干渉を避けるために、両者をある程度離間させて取付ける必要がある。そのため、複数の下地金具をパネル10の長さ方向に同じ向きで取り付ける場合、パネル10の長手方向端部においては、パネル10の長さ方向端部(横目地)からある程度離間した位置に仕上げ材30の固定位置を設けることになり、パネル10の横目地からの仕上げ材30の固定位置までの距離が遠くなってしまう(図6中のx)。このため、仕上げ材30の長さ方向端部において、風荷重等の外力によるあばれが生じやすい。
【0050】
そこで、本実施形態では、図9に示すように、下地金具20(第1の下地金具21および第2の下地金具22)のパネル10への取付向きを、すべて同じ方向ではなく、パネル10の長さ方向端部において、仕上げ材30の固定位置がパネル10の長さ方向端部側に近くなるように、下地金具20のパネル10への取付向きを変更している。
パネル10の長手方向端部(横目地)において、第1の下地金具21および第2の下地金具22の取付け向きを、従来とは反転させて、下地金具20の連結部材31への取付け位置が、パネル10の上端側(図9(a)参照)および下端側(図9(b)参照)にそれぞれ向くように固定する。これによりパネル10の横目地からの仕上げ材30の固定位置までの距離を小さくすることができる(図9中のx1、x2)。
【0051】
例えば、パネル10の長さ方向端部から100mm以上離間した範囲に、下地金具用ファスナーを設け、第2の下地金具22の仕上げ材30を固定する側(水平部)を、従来とは反転させて、パネル10の長さ方向端部側に向けて(近づけて)固定する。
これにより、仕上げ材30の端部の固定位置を限りなくパネル10の横目地に近づけることを可能とする。そして、仕上げ材30の長さ方向端部の風荷重等の外力によるあばれを抑制して、仕上げ材30の端部を安定的に固定することができる。
【0052】
そして、仕上げ材取付用パネル1に仕上げ材30(化粧板)が取り付けられてなる仕上げ材取付構造体、および該仕上げ材取付構造体を備えた建物も、本発明に含まれる。本発明の仕上げ材取付構造物及び建物では、地震時にパネルおよび仕上げ材のロッキングを阻害(拘束)しない。これにより地震が起きた場合の層間変位を受け流して損傷を受けにくいものとなる。
【0053】
<第2実施形態>
以下、本発明の下地金具、仕上げ材取付用パネルの第2実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。図11図13は、本実施形態の下地金具を示す図であり、(a)は断面図、(b)は上面図である。
なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と異なる部分について主に説明し、同様の部分については、その説明を省略する。
【0054】
本実施形態の下地金具は、パネルに仕上げ材を取り付けるための複数の金具からなる下地金具であって、パネル10の表面に取り付けられる第1の下地金具21と、仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具22と、を有する。
そして、本実施形態の下地金具20では、第1の下地金具21は、取付軸S(第1の取付軸)でパネル10に取り付けられ、第2の下地金具22は、取付軸Sと同軸上の取付軸T(第2の取付軸)で第1の下地金具21に取り付けられるとともに、第1の下地金具21上で面内に回動可能とされており、そして、取付軸Sと取付軸Tとは、面外方向に取付け位置が分かれている。
【0055】
図11は、本実施形態の下地金具について、第1の下地金具21の断面形状がロの字形状である場合を示しており、図12は、第1の下地金具21の断面形状がコの字形状(タテ向き)である場合を示しており、図13は、第1の下地金具21の断面形状がコの字形状(ヨコ向き)である場合を示している。
【0056】
上述した第1実施形態では、第1の下地金具21が略平面状であったが、このように第1の下地金具21を断面ロの字またはコの字形状とすることで、第2の下地金具22を、取付軸Sと同軸上の取付軸Tで、第1の下地金具21に取りつけることができる。そして、取付軸Sと取付軸Tとは、面外方向に取付け位置が分かれている。
このように、本実施形態においても、取付軸Sと取付軸Tを、面外方向で取付け位置をずらすことで、固定する軸と回転させる軸を分けることが可能であり、回転の促進と取付部の緩み防止(安全性)に寄与する。
【0057】
さらに、第1の下地金具21の取付位置(例えば、取付軸S)と、第2の下地金具22の取付位置(例えば、取付軸T)とが面外方向にずれていることで、その固定度を個別に設定・管理することができる。そのため、例えば、第1の下地金具21は強固に固定し、第2の下地金具22は回動させるためゆるく固定することで、地震の際に、第1の下地金具21の回動と第2の下地金具22の回動に差が生まれる。例えば、回動半径や回動位相が異なるものとなる。そして、例えば、第1の下地金具21の回動と第2の下地金具22の回動とが互いに打ち消しあうことで、変位を効率よく受け流すことができ、パネル10および仕上げ材30が損傷を受けることをより確実に回避することができる。
【0058】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
本発明は、屋内、屋外に限定されず、パネルに仕上げ材を取り付ける場合に広く適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明による仕上げ材取付用パネルを用いることで、地震が起きた場合の層間変位を受け流して損傷を受けにくいものとなり、建物の仕上げ材取付構造体として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0060】
1 仕上げ材取付用パネル
10 パネル
11 長孔
12 座掘孔
13 鋼材
14 係止用金具
15 Oナット(第1のナット)
15a 係合孔
16 ボルト(第1のボルト)
17 :座金
20 下地金具
21 第1の下地金具
21a 挿通孔
21b ボルト部(第2のボルト)
22 第2の下地金具
22a 挿通孔
23 ナット(第2のナット)
24 バックアップ材
25 ステンレスワッシャー(すべり材)
26 シーリング材
27 シーリング材
30 仕上げ材
31 連結部材(定規金具)
40 パネル用ファスナー
50 シーリング材
51 バックアップ材
52 バックアップ材
53 耐火目地材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【手続補正書】
【提出日】2024-05-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
[1]
パネルに仕上げ材を取り付けるための複数の金具からなる下地金具であって、
前記下地金具は、前記パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、前記仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、
前記第1の下地金具は、第1の取付軸で前記パネルに取り付けられ、
前記第2の下地金具は、前記第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で、少なくとも前記第1の下地金具を介して前記パネルに対して取り付けられるとともに、該第1の下地金具に対し面内に回動可能とされており、
前記第1の取付軸と前記第2の取付軸とは、同軸上にある場合は面外方向に取付け位置が分かれており、略平行の場合は該第1または第2の取付軸を中心とした所定の半径方向に所定の間隔でずれていることを特徴とする、下地金具。
[2]
前記第2の下地金具は、前記第2の取付軸で前記第1の下地金具に取り付けられている、ことを特徴とする、請求項1に記載の下地金具。
[3]
前記下地金具は、前記第1の下地金具に設けられた第2のボルトおよび該第2のボルトと螺合する第2のナット、を有し、
前記第2の下地金具は、前記第2のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第2のボルトと前記第2のナットとが螺合することにより、該第2の下地金具は前記第1の下地金具に取り付けられる、[2]に記載の下地金具。
[4]
前記下地金具は、前記パネルに埋設された第1のナットおよび該第1のナットと螺合する第1のボルトを有し、
前記第1の下地金具は前記第1のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第1のナットと前記第1のボルトとが螺合することにより、該第1の下地金具は前記パネルに取り付けられる、[2]または[3]に記載の下地金具。
[5]
前記第2の下地金具の固定度が、前記第1の下地金具の前記パネルに対する固定度と同等もしくは小さい、[1]~[4]のいずれかに記載の下地金具。
[6]
前記第2のナットが、ゆるみ止め機構を有するナット、又はダブルナットである、[3]~[5]のいずれかに記載の下地金具。
[7]
前記第1の下地金具と前記第2の下地金具との間にすべり材が配されている、[1]~[6]のいずれかに記載の下地金具。
[8]
前記第1の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、[1]~[7]のいずれかに記載の下地金具。
[9]
前記第2の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状である、[1]~[8]のいずれかに記載の下地金具。
[10]
前記パネル1枚について、パネルの一辺に対して略平行、もしくは略水平方向に二か所以上、前記第1の下地金具が取り付けられている、[1]~[9]のいずれかに記載の下地金具。
[11]
[1]~[10]のいずれかに記載の下地金具を用いて、前記仕上げ材が取り付けられた、仕上げ材取付構造物。
[12]
ロッキング機構を有するパネルに下地金具を用いて仕上げ材を取り付ける仕上げ材取付構造物であって、
前記下地金具は、前記パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、前記仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、
前記仕上げ材は、
前記第1の下地金具を前記パネルの表面に取り付ける第1の取付軸とは異なる、同軸上にある場合は面外方向に取付け位置が分かれており、略平行の場合は該第1の取付軸を中心とした所定の半径方向に所定の間隔でずれている第2の取付軸を、前記第2の下地金具に設けられた挿通孔に通して回動可能に取り付けられる、仕上げ材取付構造物。
[13]
前記第2の下地金具は、前記第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で、少なくとも前記第1の下地金具を介して前記パネルに対して取り付けられる、[12]に記載の仕上げ材取付構造物。
[14]
前記第2の下地金具の固定度が、前記第1の下地金具の前記パネルに対する固定度と同等もしくは小さい、[12]または[13]に記載の仕上げ材取付構造物。
[15]
前記下地金具は、前記第1の下地金具に設けられた第2のボルトおよび該第2のボルトと螺合する第2のナットと、を有し、
前記第2の下地金具は、前記第2のボルトが挿通される前記挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第2のボルトと前記第2のナットとが螺合することにより、該第2の下地金具は前記第1の下地金具に取り付けられる、[12]~[14]のいずれかに記載の仕上げ材取付構造物。
[16]
前記下地金具は、前記パネルに埋設された第1のナットおよび該第1のナットと螺合する第1のボルトを有し、
前記第1の下地金具は前記第1のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第1のナットと前記第1のボルトとが螺合することにより、該第1の下地金具は前記パネルに取り付けられる、[12]~[15]のいずれかに記載の仕上げ材取付構造物。
[17]
前記第1の下地金具と前記第2の下地金具との間にすべり材が配されている、[12]~[16]のいずれかに記載の仕上げ材取付構造物。
[18]
前記第1の下地金具の断面形状およびまたは前記第2の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、請求項12~17のいずれか一項に記載の仕上げ材取付構造物。
[19]
前記パネル1枚について、パネルの一辺に対して略平行、もしくは略水平方向に二か所以上、前記第1の下地金具が取り付けられている、[12]~[18]のいずれかに記載の仕上げ材取付構造物。
[20]
[11]~[19]のいずれかに記載の仕上げ材取付構造物を備えた、建物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パネルに仕上げ材を取り付けるための複数の金具からなる下地金具であって、
前記下地金具は、前記パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、前記仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、
前記第1の下地金具は、第1の取付軸で前記パネルに取り付けられ、
前記第2の下地金具は、前記第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で、少なくとも前記第1の下地金具を介して前記パネルに対して取り付けられるとともに、該第1の下地金具に対し面内に回動可能とされており、
前記第1の取付軸と前記第2の取付軸とは、同軸上にある場合は面外方向に取付け位置が分かれており、略平行の場合は該第1または第2の取付軸を中心とした所定の半径方向に所定の間隔でずれていることを特徴とする、下地金具。
【請求項2】
前記第2の下地金具は、前記第2の取付軸で前記第1の下地金具に取り付けられている、ことを特徴とする、請求項1に記載の下地金具。
【請求項3】
前記下地金具は、前記第1の下地金具に設けられた第2のボルトおよび該第2のボルトと螺合する第2のナット、を有し、
前記第2の下地金具は、前記第2のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第2のボルトと前記第2のナットとが螺合することにより、該第2の下地金具は前記第1の下地金具に取り付けられる、請求項2に記載の下地金具。
【請求項4】
前記下地金具は、前記パネルに埋設された第1のナットおよび該第1のナットと螺合する第1のボルトを有し、
前記第1の下地金具は前記第1のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第1のナットと前記第1のボルトとが螺合することにより、該第1の下地金具は前記パネルに取り付けられる、請求項2または3に記載の下地金具。
【請求項5】
前記第2の下地金具の固定度が、前記第1の下地金具の前記パネルに対する固定度と同等もしくは小さい、請求項1~3のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項6】
前記第2のナットが、ゆるみ止め機構を有するナット、又はダブルナットである、請求項3~5のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項7】
前記第1の下地金具と前記第2の下地金具との間にすべり材が配されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項8】
前記第1の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、請求項1~7のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項9】
前記第2の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、請求項1~8のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項10】
前記パネル1枚について、パネルの一辺に対して略平行、もしくは略水平方向に二か所以上、前記第1の下地金具が取り付けられている、請求項1~9のいずれか一項に記載の下地金具。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の下地金具を用いて、前記仕上げ材が取り付けられた、仕上げ材取付構造物。
【請求項12】
ロッキング機構を有するパネルに下地金具を用いて仕上げ材を取り付ける仕上げ材取付構造物であって、
前記下地金具は、前記パネルの表面に取り付けられる第1の下地金具と、前記仕上げ材が直接または間接的に取り付けられる第2の下地金具と、を有し、
前記仕上げ材は、前記第1の下地金具を前記パネルの表面に取り付ける第1の取付軸とは異なる、同軸上にある場合は面外方向に取付け位置が分かれており、略平行の場合は該第1の取付軸を中心とした所定の半径方向に所定の間隔でずれている第2の取付軸を、前記第2の下地金具に設けられた挿通孔に通して回動可能に取り付けられる、仕上げ材取付構造物。
【請求項13】
前記第2の下地金具は、前記第1の取付軸と同軸上または略平行な第2の取付軸で、少なくとも前記第1の下地金具を介して前記パネルに対して取り付けられる、請求項12に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項14】
前記第2の下地金具の固定度が、前記第1の下地金具の前記パネルに対する固定度と同等もしくは小さい、請求項12または13に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項15】
前記下地金具は、前記第1の下地金具に設けられた第2のボルトおよび該第2のボルトと螺合する第2のナットと、を有し、
前記第2の下地金具は、前記第2のボルトが挿通される前記挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第2のボルトと前記第2のナットとが螺合することにより、該第2の下地金具は前記第1の下地金具に取り付けられる、請求項12~14のいずれか一項に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項16】
前記下地金具は、前記パネルに埋設された第1のナットおよび該第1のナットと螺合する第1のボルトを有し、
前記第1の下地金具は前記第1のボルトが挿通される挿通孔を有し、該挿通孔を通じて前記第1のナットと前記第1のボルトとが螺合することにより、該第1の下地金具は前記パネルに取り付けられる、請求項12~15のいずれか一項に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項17】
前記第1の下地金具と前記第2の下地金具との間にすべり材が配されている、請求項12~16のいずれか一項に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項18】
前記第1の下地金具の断面形状およびまたは前記第2の下地金具の断面形状が、L字、I字、コの字またはロの字形状、である、請求項12~17のいずれか一項に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項19】
前記パネル1枚について、パネルの一辺に対して略平行、もしくは略水平方向に二か所以上、前記第1の下地金具が取り付けられている、請求項12~18のいずれか一項に記載の仕上げ材取付構造物。
【請求項20】
請求項11~19のいずれか一項に記載の仕上げ材取付構造物を備えた、建物。