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特開2024-74994高純度を有する{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメートを製造するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074994
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】高純度を有する{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメートを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 271/28 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
C07C271/28
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024064832
(22)【出願日】2024-04-12
(62)【分割の表示】P 2021552958の分割
【原出願日】2020-03-05
(31)【優先権主張番号】102019000003281
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】591279294
【氏名又は名称】イタルファルマコ ソシエタ ペル アチオニ
【氏名又は名称原語表記】ITALFARMACO SOCIETA PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ステファーノ トゥルケッタ
(72)【発明者】
【氏名】マウリツィオ ゼノーニ
(72)【発明者】
【氏名】エリオ ウルッチ
(72)【発明者】
【氏名】ステファニア コッチョロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョルジオ ベラルディ
(72)【発明者】
【氏名】ナキア マウルッチ
(57)【要約】
【課題】任意の不純物の存在を同定できるような、現在の品質基準に従ったギビノスタットの新たな製造方法の開発、及びギビノスタットの純度を決定するための新たな分析技術の同定が、基本的に重要である。
【解決手段】高純度を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を得るための方法が記載される。この方法は、0.10%以下の任意の単一の未知不純物、並びに99.5%超、好ましくは99.6%以上の純度を有する生成物の量を有する生成物を得ることを可能にする。生成物の純度及びその可能な不純物を決定するHPLC法も記載される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.10%以下の量の任意の未知の単一不純物を有するか、又は0.15%以下の量の中間体(I)
【化1】
又はアミド(Ia)
【化2】
以外の任意の単一不純物を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を含む組成物。
【請求項2】
前記薬学的に許容しうる塩が塩酸であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記薬学的に許容しうる塩が塩酸塩一水和物であることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記中間体(I)又はアミド(Ia)以外の前記任意の単一不純物の量が0.10%以下であることを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の組成物。
【請求項5】
99.6%以上の純度を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項6】
前記薬学的に許容しうる塩が塩酸であることを特徴とする、請求項5に記載の{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項7】
前記薬学的に許容しうる塩が塩酸塩一水和物であることを特徴とする、請求項5に記載の{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート又はその薬学的に許容しうる塩。
【請求項8】
99.6%以上の純度を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及びその薬学的に許容しうる塩を含む組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容しうる塩が塩酸であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記薬学的に許容しうる塩が塩酸塩一水和物であることを特徴とする、請求項8に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の目的は、高純度を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を得るための方法である。このような方法は、0.10%以下の任意の単一の未知不純物の量を有する生成物、並びに99.5%超、好ましくは99.6%以上の純度を有する生成物を得ることを可能にする。本発明の更なる目的は、生成物の純度及びその可能な不純物を決定するHPLC法である。
【背景技術】
【0002】
ギビノスタット(登録商標)は、ITF2357の名称でも知られており(IUPAC名{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート)、ヒドロキサム酸であり、その塩酸塩、特に塩酸塩一水和物の形態で使用され、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害剤として作用し、同名のクラスI及びII酵素にその作用を発揮する。
【0003】
ギビノスタットは、in vitro及びin vivoの両方で、多発性骨髄腫及び急性骨髄性白血病において非常に見込みのある活性プロファイルを示し、抗炎症剤として、及び腫瘍ネクローシス因子アルファ(TNF-α)、IL-1、及びIL-6分泌の阻害剤としても作用する。
【0004】
ギビノスタットは、現在、炎症性疾患(デュセーヌ型及びベッカー型筋ジストロフィー、若年性関節炎、及び真性赤血球増加症)に対する複数の第III相試験、及び血液癌(骨髄腫及びリンパ腫)に対する臨床試験に使用される。
【0005】
米国特許第6,034,096号明細書(US6,034,096、特許文献1)はギビノスタットの調製を報告し、一方、米国特許第7,329,689号明細書(US7,329,689、特許文献2)及び国際公開第2004/065355号(WO2004/065355、特許文献3)は、その1つの多形一水和物の調製及び特徴付けを詳述する。
【0006】
米国特許第8,518,988号明細書(US8,518,988、特許文献4)は、ギビノスタットの無水多形態の調製及び特徴付けを記載する。
【0007】
引用した文献に記載されたギビノスタットを調製する方法は、以下のスキーム1に従って、第1に、中間体(I)からアシルクロライド(II)の合成を規定し(ステップ1)、このアシルクロライドは、次に、ヒドロキシルアミンの水及びTHF溶液にTHFで湿潤させた固体として添加され、最終生成物を生じる(ステップ2)。
【0008】
【化1】
【0009】
上で引用した文献は、合成由来のいずれの不純物も記載していない。
【0010】
論文(A. Furlan, V. Monzani, L.L. Reznikov, F. Leoni, G. Fossati. D. Modena, P. Mascagni, C. A. Dinarello, Mol. Med. 2011, 17 (5-6) 353-362(非特許文献1))は、中間体(I)(ITF2375)及び対応するアミド(ITF2374)が、ギビノスタット(ITF2357)のin vivoでの主要な2種類の代謝物であり、これらが、それぞれ、ヒドロキサム基のカルボン酸及びアミドへの生体内変換に由来するものであることを解明している。
【0011】
アミド(ITF2374)は、以下の式(Ia)を有する。
【0012】
【化2】
【0013】
従って、0.15%を超える量で、ギビノスタットにおける中間体(I)又はアミド(Ia)の存在が妥当とされており、これらは不純物とみなされる。
【0014】
ヒトへの使用が意図される活性成分の不純物プロファイルの詳細な説明を提供する薬学分野の現在のガイドラインに基づけば、任意の不純物の存在を同定できるような、現在の品質基準に従ったギビノスタットの新たな製造方法の開発、及びギビノスタットの純度を決定するための新たな分析技術の同定が、基本的に重要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第6,034,096号明細書
【特許文献2】米国特許第7,329,689号明細書
【特許文献3】国際公開第2004/065355号
【特許文献4】米国特許第8,518,988号明細書
【非特許文献】
【0016】
【非特許文献1】A. Furlan, V. Monzani, L.L. Reznikov, F. Leoni, G. Fossati. D. Modena, P. Mascagni, C. A. Dinarello, Mol. Med. 2011, 17 (5-6) 353-362
【非特許文献2】the Handbook of Pharmaceutical Excipients, sixth edition 2009
【非特許文献3】Handbook of pharmaceutical salts, P. Stahl, C. Wermuth, WILEY-VCH, 127-133, 2008
【発明の概要】
【0017】
(定義)
特に定義しない限り、本明細書で使用する、当技術の全ての用語、表記及び他の科学的専門用語は、この開示が属する当業者によって一般に理解される意味を有すると意図される。幾つかの場合では、一般に理解されている意味を有する用語が、明確性のため及び/又は参照を容易にするために、本明細書で定義される。従って、本明細書でこのような定義を含むことが、当技術で一般に理解されている事項を越えて実質的な差を表すと理解されるべきではない。
【0018】
本明細書において、用語「生理学的に許容しうる賦形剤」は、それ自身の任意の薬学的効果がなく、哺乳動物、好ましくはヒトに投与したときに有害な反応をもたらさない物質をいう。生理学的に許容しうる賦形剤は、当技術で周知であり、例えば、the Handbook of Pharmaceutical Excipients, sixth edition 2009(非特許文献2)に開示されており、当該文献は参照により本明細書に取り込まれる。
【0019】
用語「薬学的に許容しうる塩」は、それらの塩であって、塩化された化合物の生物学的効力及び特性を有するものであり、哺乳動物、好ましくはヒトに投与したときに有害な反応をもたらさないものをいう。薬学的に許容しうる塩は、無機又は有機塩であり得、薬学的に許容しうる塩の例には、炭酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、トリフルオロ酢酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、及びパラ-トルエンスルホン酸塩が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容しうる塩のより多くの情報は、Handbook of pharmaceutical salts, P. Stahl, C. Wermuth, WILEY-VCH, 127-133, 2008(非特許文献3)に見出すことができ、当該文献は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0020】
用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、制約のない(オープンエンド型(open ended)の)用語(即ち、「含む(including)」(これに限定されない)を意味する)と解釈されるべきであり、「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」、「からなる(consist of)」又は「からなる(consisting of)」などの用語に対してもサポートを提供すると考えるべきである。
【0021】
用語「から本質的になる(consist essentially of)」、「から本質的になる(consisting essentially of)」は、半閉鎖式(semi-closed)の用語と解釈されるべきであり、本発明の基本的及び新規な特徴に著しく影響する他の成分が全く含まれない(従って、任意選択的な賦形剤は含まれうる)ことを意味する。
【0022】
用語「からなる(consist of)」又は「からなる(consisting of)」は、閉鎖式(closed)の用語と解釈されるべきである。
【0023】
用語「高い純度を有する」は、99.5%超、好ましくは99.6%以上の純度をいう。
【0024】
本記載の範囲内において、用語ギビノスタット又はITF2357は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメートの塩酸塩、特に塩酸塩一水和物(CAS番号732302-99-7)を指すことを意図する。塩酸塩は、代わって、199657-29-9のCAS番号を有し、遊離塩基は497833-27-9のCAS番号を有する。
【0025】
用語「ハロゲン」はフッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、又はヨウ素(I)をいう。
【0026】
用語「酸性に鋭敏でない双極性非プロトン性溶媒」は、酸に鋭敏な成分を含まない溶媒をいう。THFは酸に鋭敏な溶媒の例である。DMSO、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、又はジメチルホルムアミドは、酸に鋭敏ではない溶媒の例と理解される。
【0027】
用語「未知の不純物」は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩に存在する任意の未知の不純物をいう。
【0028】
(本発明の簡単な説明)
当技術の状態で使用されるギビノスタットの調製の方法を参照すると、本発明者等は、これらの方法が0.10%を越える単一の未知不純物含量を有するギビノスタットをもたらすことを観測した。
【0029】
従って、本出願人は、0.10%以下(HPLCクロマトグラムの面積%)の任意の単一の未知不純物を有するギビノスタットを調製する新たな方法を開発するという問題に直面した。ここで、この含有量は、ギビノスタットの場合として、活性物質の1日投与量が2g未満であるときの未知不純物に対するICHによって予期されるレベルである。
【0030】
意外なことに、ステップ1(スキーム1)において、酸に鋭敏な成分を含まない溶媒中での中間体(I)のハロゲン化反応を実施し、所望の反応を完結するのに必要なハロン化剤の当量を減少すると同時に、公知の技術を適用することによって得られるよりも低い不純物量を有する中間体(II)を得ることが、重要であることが見出された。
【0031】
同様に、意外なことに、本発明者等は、ステップ2(スキーム1)において、中間体(II)とヒドロキシルアミンの添加の順序が、相対的純度分析のクロマトグラムの面積によって、0.10%以下の単一未知不純物を有する最終生成物を得るのに重要であることを見出した。
【0032】
従って、第1の態様では、本発明は、0.10%以下の量の任意の未知の単一不純物及び/又は高い純度を有する{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を調製する方法に関する。
【0033】
好ましい実施形態では、本発明の方法は、99.5%越、好ましくは99.6%以上の純度を有する{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を得ることを可能にする。
【0034】
その第2の態様によれば、本発明は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは塩酸塩一水和物であって、0.10%以下の量の任意の未知の単一不純物を有するか、又は0.15%以下、好ましくは0.10%以下の量の中間体(I)又はアミド(Ia)以外の任意の単一不純物を有するものに関する。
【0035】
その第3の態様によれば、本発明は、99.5%越、好ましくは99.6%以上の純度を有する{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは塩酸塩一水和物に関する。
【0036】
その第4の態様によれば、本発明は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩の純度を決定しその不純物を検出するための新たなHPLC分析方法に関する。
【0037】
その第5の態様によれば、本発明は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは塩酸塩一水和物であって、0.10%以下の量の、0.93±0.02のRRTにおける未知不純物及び/又は1.21±0.02のRRTにおける未知不純物及び/又は1.51±0.02のRRTにおける未知不純物及び/又は1.75±0.02のRRTにおける未知不純物を有するものに関し、ここで、RRTは本発明に従ったHPLC法を用いて測定される。
【0038】
その第6の態様によれば、本発明は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を調製する方法であって、本発明に従って純度を決定するためのHPLC法を含む方法に関する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1図1は、典型的なギビノスタットの不純物の全てを含有する、特別に(ad hoc)調製した混合物についての、本発明に従ったHPLC法により得られたクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
(発明の詳細な説明)
本発明の目的は、0.10%以下の量の任意の未知の単一不純物を有する{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を調製する方法であって、前記方法が、
i)有機溶媒中の式(II)の化合物の溶液又は懸濁液を調製する工程と、
【0041】
【化3】
【0042】
(式中Xはハロゲン、好ましくは塩素である。)
ii)工程i)で得られた溶液又は懸濁液にヒドロキルアミンを添加する工程と
を含む、方法である。
【0043】
本記載の範囲内で、工程i)及びii)は、本発明の方法に従って、ステップ2と名付ける。
【0044】
好ましい実施形態では、ステップ2の工程i)の有機溶媒は、THF、メチル-THF、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、及びビス(2-メトキシエチル)エーテルを含む群から選択される。
【0045】
好ましくは、前記有機溶媒は、式(II)の化合物の重量部当たり1~100容積部(parts by volume)を含む量で使用される。
【0046】
好ましくは、前記有機溶媒は、0.5%未満の水含有量を有する。
【0047】
好ましくは、本発明に従った方法のステップ2の工程ii)は、室温で実施される。
【0048】
好ましい実施形態では、本発明の方法(ステップ2)は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメートを、遊離の塩として又は薬学的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは塩酸塩一水和物として単離する工程iii)を更に含むことを特徴とする。
【0049】
更に好ましい実施形態では、式(II)の化合物は、酸性に鋭敏でない非プロトン性双極性溶媒中、ハロゲン化剤、好ましくは塩素化剤(工程a)との反応によって式(I)の対応する酸から得られる。
【0050】
好ましくは、式(II)の化合物は、有機溶媒による沈澱、好ましくは引き続きの濾過(工程b)によって反応混合物から単離される。
【0051】
本記載の範囲内で、工程a)及びb)は、本発明の方法に従ったステップ1と名付ける。
【0052】
酸に鋭敏でない溶媒は、酸に鋭敏な成分の含まない(従って、例えばTHFを含まない)溶媒である。溶媒のこの特徴は、従来技術と比較してハロゲン化剤の量を減少して使用することを可能にする。
【0053】
例として、THFは酸に鋭敏な溶媒の代表である。これは、酸性条件下で、THFが分解し、ハロゲン化反応で未知の副生成物を形成しうる反応性の種を生成しうるからである。
【0054】
好ましくは、ステップ1の工程a)では、酸性に鋭敏でない前記非プロトン性双極性溶媒は、DMSO、アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、又はジメチルホルムアミド、より好ましくはジメチルホルムアミドから選択される。
【0055】
本発明の方法で使用されうる塩素化剤の例は、塩化チオニル(SOCl2)、三塩化リン(PCl3)、オキシ塩化リン(POCl3)、又は五塩化リン(PCl5)である。その他には、対応する臭素化剤、SOBr2、PBr3、POBr3又はPBr5が使用できる。
【0056】
ステップ1の工程b)の好ましい実施形態では、化合物(II)を沈澱するのに使用される有機溶媒は、脂肪族若しくは芳香族炭化水素、エーテル、エステル又はアルコール、より好ましくはトルエン又はTHFから選択される。
【0057】
本発明の更なる目的は、先に定義したステップ2のみを公知の技術に関して適用することで得られる0.10%以下の量の任意の単一の未知不純物を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート又はその薬学的に許容しうる塩である。
【0058】
更に好ましい実施形態では、本発明は、先に定義したステップ1及びステップ2の両方を公知の技術に関して適用することによる、99.5%超、好ましくは95.6%以上の純度を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩に関する。
【0059】
本発明の更なる目的は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは塩酸塩一水和物であって、0.10%以下の量の任意の未知の単一不純物を有するか、又は0.15%以下、好ましくは0.10%以下の量の中間体(I)又はアミド(Ia)以外の任意の単一不純物を有するものである。
【0060】
本発明の更なる目的は、99.5%越、好ましくは99.6%以上の純度を有する、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは塩酸塩一水和物である。
【0061】
本発明の更なる目的は、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩、好ましくは塩酸塩、より好ましくは塩酸塩一水和物であって、0.10%以下の量の、0.93±0.02のRRTにおける未知不純物及び/又は1.21±0.02のRRTにおける未知不純物及び/又は1.51±0.02のRRTにおける未知不純物及び/又は1.75±0.02のRRTにおける未知不純物を有するものであり、RRTは本発明に従ったHPLC法を用いて測定されるものである。
【0062】
好ましい嫉視形態では、RRTは以下のHPLC法を用いて測定される。
- 定常相:C18アルキル鎖を含有し、9重量%未満の炭素負荷(carbon load)を有するシリカ粒子に基づく支持体;
移動相A:pH3.7~3.8に緩衝された水
移動相B:pH3.7~3.8に緩衝されたメタノール
以下の勾配溶出法を用いる
【0063】
【表1】
【0064】
好ましくは、pH3.7~3.8のギ酸アンモニウム-ギ酸緩衝液を使用した。
好ましくは、263nmのUV検出器を使用した。
好ましくは、カラム温度は25±1℃である。
好ましくは、注入容量は5μLである。
好ましくは、流量は0.25mL/分である。
好ましくは、生成物サンプルはDMSOで希釈される。
【0065】
本発明の更なる目的は、先に定義した{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩、及び少なくとも1種の薬学的に許容しうる賦形剤を含有する医薬組成物である。
【0066】
医薬組成物の好ましい実施形態では、活性素は、200μm未満、好ましくは100μm~1μm、より好ましくは50μm~5μmの平均サイズを有する微粉化された粒子の形態である。
【0067】
本発明の更なる目的はまた、生成物{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩の純度を決定するための方法であって、無機支持体、例えばシリカに結合されたアルキル鎖を含有する定常相を有するHPLCカラムを通して当該生成物を溶出し、引き続いて当該カラムから溶出する分析物の量を測定するのに適した検出器、例えばUV、MS又はRIDタイプの検出器を用いて同じ生成物とその不純物を検出することを含む方法である。
【0068】
本発明による方法の好ましい実施形態では、前記アルキル鎖はオクタデシル、オクチル又はブチル(C18、C8又はC4)タイプ、好ましくはC18である。よりいっそう好ましい一実施形態では、定常相は、9重量%未満の炭素負荷を有するC18アルキル鎖で誘導体化されたシリカ支持体からなる。
【0069】
炭素負荷(carbon load)は、シリカに結合された定常相の、重量%での炭素含有量を意味する。高い炭素負荷(15~25%)は、より疎水性の定常相の表面をもたらし、最も疎水性の不純物を保持して、その正しい定量的な評価を不可能にしうる。
【0070】
このタイプの幾つかのカラムは商業的に入手可能であり、例えばACE5 C18-300、Halo C18(固体コア)、YMC-Pack OSD-A、BioBasic-18 PEEKがある。好ましい実施形態では、カラムHalo C18-90Å(アドバンスドマテリアルズテクノロジー(Advanced Materials Technology)により製造されたコード95812-902)が使用される。
【0071】
水、極性有機溶媒、又はこれらの混合物から選択される異なる溶出液が、先に記載した定常相及び検出器の組み合わせで使用されうる。前記極性有機溶媒はC1-C4アルコール、好ましくはメタノール、又はアセトニトリルである。
【0072】
好ましくは、本発明のHPLC法では、任意選択的に溶出の勾配を用いて若しくは用いずに、任意選択的に緩衝液を用いて若しくは用いずに、水及びメタノール、水及びアセトニトリルの混合物が使用されうる。好ましくは、上記の混合物は緩衝液を添加して使用されうる。より好ましくは、pH3.7~3.8のギ酸アンモニウム-ギ酸緩衝液が使用される。
【0073】
好ましい実施形態では、以下のスキームに従ったクロマトグラフの実行は、以下の溶出法を使用する。
【0074】
【表2】
【0075】
この溶出方法において、溶出液Aは水及びpH3.7~3.8のギ酸アンモニウム-ギ酸緩衝液を意味し、溶出液Bはメタノール及びpH3.7~3.8のギ酸アンモニウム-ギ酸緩衝液を意味する。
【0076】
本発明の更なる目的はまた、{6-[(ジエチルアミノ)メチル]ナフタレン-2-イル}メチル[4-(ヒドロキシカルバモイル)フェニル]カルバメート及び/又はその薬学的に許容しうる塩を調製するための方法であって、本発明に従った純度を決定するための方法を含むものである。
【0077】
以下の実施例の欄で報告する実施例は、本発明の目的の方法の例として考えるべきであり、本発明自身の有効性の範囲を限定するとみなされるべきではない。
【実施例0078】
(実施例の部)
実施例1(比較例)
従来技術に従った中間体(II)の合成
73g(0.1796モル)の中間体(I)及び1.12Lの乾燥THFを、予め乾燥させ、不活性雰囲気下の2Lの反応容器に充填する。得られた懸濁液を室温で30分攪拌する。内部温度を3~5℃に低下させ、64gの塩化チオニル(0.538モル)を5分以上かけて添加し、次いで反応混合物を還流温度まで加熱し、約1時間攪拌下で保持する。2gの乾燥DMFを添加し、混合物を同じ温度で更に4時間攪拌する。次に、反応混合物を、約0.3Lの残留容積になるまで減圧下で濃縮する。次いで、0.35Lのトルエンを充填し、混合物を再度濃縮した。この操作をもう一度繰り返す。室温まで混合物を冷却した後、乾燥THF(0.7L)を添加し、混合物を約30分攪拌する。次に、中間体(II)の白色沈殿を濾過し、乾燥THFで洗浄する。湿った生成物(107g)を5℃で保存し、そのまま使用する。
【0079】
実施例2(比較例)
従来技術の方法によるギビノスタットの合成(実験TT180)
125mLの乾燥THF及び60mLの水を、予め乾燥させ、不活性雰囲気下の1Lの反応容器に充填する。水性ヒドロキシルアミン(21g、50%w/w)をこの溶液に加え、得られた混合物を5℃に冷却する。実施例1からの19gの湿った中間体(II)(出発材料の中間体(I)の13gに対応する)を、一回で充填し、内部温度を20±3℃に徐々に上昇させる。漸進的な溶解が観測され、得られた混合物を30~40分攪拌下に維持する。次いで、水(55mL)を添加し、次いで、内部温度を20±3℃に維持しながら、6N HCl水溶(約60g)をpH<2に到達するまでゆっくり加える。次いで、THFを、全容積がほぼ半減するまで減圧下で除去し、白色沈殿が観測される。混合物を10℃に冷却し、この温度で攪拌下に30分間維持する。生成物を真空濾過によって単離し、水で洗浄する。16.4gの湿った粗製ギビノスタットを得る。
【0080】
粗製ギビノスタットを、285mLのNaHCO3(6.5g)水溶液に20±3℃で懸濁し、次いで、THF(265mL)を添加し、漸進的な溶解が観測される。得られた溶液を30分攪拌し、次いで酢酸エチル(132mL)を添加する。15分後、攪拌を停止し、2つの相を分離させる。水相を廃棄し、有機相を、pH<2に達するまで、激しく攪拌しながら37%HClで処理する。得られた懸濁液を30分攪拌し、次いで、沈殿を真空濾過によって単離し、THFで洗浄する。17gの湿った純粋なギビノスタットを得る。
【0081】
生成物を30℃のオーブン中減圧下で16時間乾燥する。7.2gの乾燥した純粋なギビノスタットを得る。このギビノスタットの純度は98.8%であり、0.23%の未知不純物の存在を示す。
【0082】
実施例3
ステップ1について従来の方法に従い、ステップ2について本発明の方法(実験TT177)に従うギビノスタットの合成
予め乾燥し、不活性雰囲気下の1Lの反応容器に、実施例1からの29.3gの湿った中間体(II)(出発材料の中間体(I)の20gに対応する)を、192mLの乾燥THFに懸濁し、内部温度を20±3℃にする。水性ヒドロキシルアミン(32g、50%w/w)を一回で添加し、混合物を30~40分攪拌下で維持する。次いで、水(176mL)を添加し、沈殿の漸進的な溶解が観測される。6N HCl水溶液(約93g)を、内部温度を20±3℃に維持しながら、pH<2に達するまでゆっくり加える。次いで、THFを、全容量がほぼ半減するまで減圧下で除去し、白色の沈殿が観測される。混合物を10℃まで冷却し、攪拌下で30分この温度に維持する。生成物を真空濾過により単離し、水で洗浄する。29gの湿った粗製ギビノスタットが得られる。
【0083】
湿った粗製ギビノスタットを、408mLのNaHCO3(10g)水溶液に20±3℃で懸濁し、次いで、THF(408mL)を添加し、漸進的な溶解が観測される。得られた溶液を30分攪拌し、次いで酢酸エチル(204mL)を添加する。15分後、攪拌を停止し、2つの相を分離させる。水相を廃棄し、有機相を、pH<2に達するまで、激しく攪拌しながら37%HClで処理する。得られた懸濁液を30分攪拌し、次いで、沈殿を真空濾過によって単離し、THFで洗浄する。31gの湿った純粋なギビノスタットを得る。
【0084】
生成物を30℃のオーブン中減圧下で16時間乾燥する。15.6gの乾燥した純粋なギビノスタットを得る。HPLC純度分析は、生成物が0.10%を超える量で、いずれの未知の不純物も含有しないことを示す。
【0085】
実施例4
ステップ1について従来の方法に従い、ステップ2について本発明の方法(実験TT183)に従うギビノスタットの合成
予め乾燥し、不活性雰囲気下の1Lの反応容器に、実施例1からの29.3gの湿った中間体(II)(出発材料の中間体(I)の20gに対応する)を、192mLの乾燥THFに懸濁し、内部温度を20±3℃にする。水性ヒドロキシルアミン(32g、50%w/w)を15分以上かけて注ぐことによって添加し、混合物を30~40分攪拌下で維持する。次いで、水(176mL)を添加し、沈殿の漸進的な溶解が観測される。6N HCl水溶液(約91g)を、内部温度を20±3℃に維持しながら、pH<2に達するまでゆっくり加える。次いで、THFを、全容量がほぼ半減するまで減圧下で除去し、白色の沈殿が観測される。混合物を10℃まで冷却し、攪拌下で30分この温度に維持する。生成物を真空濾過により単離し、水で洗浄する。36gの湿った粗製ギビノスタットが得られる。
【0086】
湿った粗製ギビノスタットを、408mLのNaHCO3(10g)水溶液に20±3℃で懸濁し、次いで、THF(408mL)を添加し、漸進的な溶解が観測される。得られた溶液を30分攪拌し、次いで、酢酸エチル(204mL)を添加する。15分後、攪拌を停止し、2つの相を分離させる。水相を廃棄し、有機相を、pH<2に達するまで、激しく攪拌しながら37%HClで処理する。得られた懸濁液を30分攪拌し、次いで、沈殿を真空濾過によって単離し、THFで洗浄する。27gの湿った純粋なギビノスタットを得る。
【0087】
生成物を30℃のオーブン中減圧下で16時間乾燥する。15.4gの乾燥した純粋なギビノスタットを得る。HPLC純度分析は、生成物が0.10%を超える量で、いずれの未知の不純物も含有しないことを示す。
【0088】
実施例5
ステップ1について従来の方法に従い、ステップ2について本発明の方法に従うギビノスタットの合成 工業スケール
予め乾燥し、不活性雰囲気下の2000Lの反応容器に、50.0kgの湿った中間体(II)(出発材料の中間体(I)の40kgに対応する)を、400Lの乾燥THFに懸濁し、内部温度を20±3℃にする。水性ヒドロキシルアミン(67.2kg、50%w/w)を15分以上かけて注ぐことによって添加し、混合物を30~40分攪拌下で維持する。次いで、水(447L)を添加し、沈殿の漸進的な溶解が観測される。6N HCl水溶液(約170kg)を、内部温度を20±3℃に維持しながら、pH<2に達するまでゆっくり加える。次いで、THFを、全容量がほぼ半減するまで減圧下で除去し、白色の沈殿が観測される。混合物を10℃まで冷却し、攪拌下で30分この温度に維持する。生成物を真空濾過により単離し、水で洗浄する。60kgの湿った粗製ギビノスタットが得られる。
【0089】
湿った粗製ギビノスタットを、20±3℃で、860LのNaHCO3(21kg)水溶液及び860LのTHFからなる溶液に懸濁し、漸進的な溶解を観測する。得られた溶液を30分攪拌し、次いで酢酸エチル(440L)を添加する。15分後、攪拌を停止し、2つの相を分離させる。水相を廃棄し、有機相を、pH<2に達するまで、激しく攪拌しながら37%HClで処理する。得られた懸濁液を30分攪拌し、次いで、沈殿を真空濾過によって単離し、THFで洗浄する。58kgの湿った純粋なギビノスタットを得る。
【0090】
生成物を30℃のオーブン中減圧下で16時間乾燥する。35kgの乾燥した純粋なギビノスタットを得る。HPLC純度分析は、生成物が0.10%を超える量で、いずれの未知の不純物も含有せず、99.5%を超える全体の純度を有することを示す。
【0091】
実施例6(実験TT259)
本発明の方法(ステップ1+ステップ2)によるギビノスタットの合成
ステップ1:中間体(II)の合成
100g(0.2460モル)の中間体(I)及び300mLのジメチルホルムアミドを、予め乾燥し、不活性雰囲気下の3Lの反応容器に充填する。このようにして得られた懸濁液を20~25℃で30分攪拌する。40g(0.3362モル)の塩化チオニルを加え、わずかな発熱を観測し、20~25℃に反応混合物を維持するためにこれを保持する。得られた懸濁液を20~25℃で更に2時間保持し、次いで2回の真空サイクルを実施し、圧力を窒素で元に戻し、反応によって生成したガスを除去する。次に、2000mLのTHFを加え、1時間20~25℃に混合物を維持する。次に懸濁液をブフナー上で濾過し、300mLのTHFで洗浄する。湿った生成物(133g)を5℃で保存し、そのまま使用する。
【0092】
ステップ2:ギビノスタットの合成
133gのステップ1からの中間体(II)及び960mLのTHFを、予め乾燥し、不活性雰囲気下の3Lの反応容器に充填する。得られた懸濁液を攪拌し、12~18℃にサーモスタットで調温する。160g(2.424モル)の50%w/wヒドロキシルアミン水溶液をこの懸濁液に加える(反応は発熱的であり、混合物の温度は15℃から28℃に達する。)。次に、これを17~23℃にサーモスタットで調温し、40分(40’)間これらの条件に保持する。
【0093】
次に、同じ温度に保存しながら、1100mLの脱イオン化水を加え、沈殿の漸進的な溶解を観測する。終点で、220gの15%w/w HCl水溶液を、混合物のpHが1.2~1.8に達するまで加える。混合物を17~23℃で30分間攪拌下に保持し、次いで、内部温度を25℃に維持しながら、約1400mLの残留容積まで減圧下で濃縮する。次いで、圧力を戻し、1000mLの脱イオン化水を充填する。次に、混合物を7~13℃に冷却し、1時間攪拌下に保持する。懸濁液を、1.2gの37%HClで酸性化した脱イオン化水400mLで洗浄することによって濾過する。
【0094】
湿った濾過物を、5kgの重炭酸ナトリウム、1000mLの脱イオン化水及び1000mLのTHFを加えた反応容器に戻す。混合物を攪拌し、47~53℃に加熱し、3時間これらの条件下に混合物を保持する。次に、混合物を17~23℃に冷却し、相を落ち着かせる。分離した水相を500mLの酢酸エチルで再抽出する。次に、有機抽出物を合わせ、200mLの37%HClを激しい攪拌下で添加し、生成物の沈殿を観測する。混合物を30分攪拌下に保持し、次いで、これを濾過し、パネルを400mLのTHFで洗浄する。
【0095】
湿った濾過物を、5kgの重炭酸ナトリウム、1000mLの脱イオン化水及び1000mLのTHFを加えた反応容器に戻す。混合物を17~23℃で攪拌し、30分これらの条件下に保持する。次に、500mLの酢酸エチルを17~23℃で混合物に加え、15分攪拌する。相を落ち着かせ、分離した有機相を10ミクロンのミクロフィルター上で濾過する。次いで、反応容器及びラインを120mLのTHF及び60mLの酢酸エチルの混合物で洗浄し、合せた有機相に200mLの37%HClを添加し、生成物の沈殿を観測する。混合物を30分間攪拌下に保持し、次いで、これを濾過し、パネルを400mLのTHFで洗浄する。生成物を取り出し(157g)、真空下(<50mbar)25~35℃で15時間乾燥する。107gの最終生成物を得る。
【0096】
実施例7(実験TT267)
本発明の方法(ステップ1+ステップ2)によるギビノスタットの合成
中間体(II)の調製、次いで、これのギビノスタットへの変換を実施例6に記載したとおりに繰り返した。この方法の終点で105gの生成物を得る。
【0097】
実施例8(実験TT287)
本発明の方法(ステップ1+ステップ2)によるギビノスタットの合成
100g(0.2460モル)の中間体(I)及び300mLのジメチルホルムアミドを、予め乾燥し、不活性雰囲気下の3Lの反応容器に充填する。得られた懸濁液を20~25℃で30分攪拌する。次いで、40g(0.3362モル)の塩化チオニルを加え、わずかな発熱を観測し、20~25℃に反応混合物を維持するためにこれを保持する。得られた懸濁液を20~25℃で更に2時間保持し、次いで、2回の真空サイクルを実施し、圧力を窒素で元に戻し、反応によって生成したガスを除去する。次に、2000mLのトルエンを加え、1時間20~25℃に混合物を維持した。次に懸濁液をブフナー上で濾過し、300mLのトルエンで洗浄する。湿った生成物(133g)を5℃で保存し、そのまま使用する。
【0098】
133gの記載した調製からの中間体(II)及び960mLのTHFを、予め乾燥し、不活性雰囲気下の3Lの反応容器に充填する。得られた懸濁液を攪拌し、12~18℃にサーモスタットで調温する。160g(2.424モル)の50%w/wヒドロキシルアミン水溶液をこの懸濁液に加える(反応は発熱的であり、混合物の温度は15℃から28℃に達する。)。次に、これを17~23℃にサーモスタットで調温し、40分(40’)間これらの条件に保持する。
【0099】
次に、同じ温度に保持し、17~23℃に温度を維持しながら1100mLの脱イオン化水を加え、沈殿の漸進的な溶解を観測する。終点で、220gの15%w/w HCl水溶液を、混合物のpHが1.2~1.8に達するまで加える。混合物を17~23℃で30分間攪拌下に保持し、次いで、混合物を、内部温度を25℃に維持しながら、約1400mLの残留容積に到達するまで減圧下で濃縮する。次いで、圧力を戻し、1000mLの脱イオン化水を充填する。次に、混合物を7~13℃に冷却し、1時間攪拌下に保持する。懸濁液を、1.2gの37%HClで酸性化した脱イオン化水400mLで洗浄することによって濾過する。
【0100】
湿った濾過物を、5kgの重炭酸ナトリウム、1000mLの脱イオン化水及び1000mLのTHFを加えた反応容器に戻す。混合物を攪拌し、47~53℃に加熱し、3時間これらの条件を維持する。次に、混合物を17~23℃に冷却し、相を落ち着かせる。分離した水相を500mLの酢酸エチルで再抽出する。次に、有機抽出物を合わせ、200mLの37%HClを激しい攪拌下で当該抽出物に添加し、生成物の沈殿を観測する。混合物を30分攪拌下に保持し、次いで、これを濾過し、パネルを400mLのTHFで洗浄する。
【0101】
湿った濾過物を、5kgの重炭酸ナトリウム、1000mLの脱イオン化水及び1000mLのTHFを加えた反応容器に戻す。混合物を17~23℃で攪拌し、30分これらの条件を保持する。次に、500mLの酢酸エチルを17~23℃で混合物に加え、15分攪拌する。相を落ち着かせ、分離した有機相を10ミクロンのミクロフィルター上で濾過する。次いで、反応容器及びラインを120mLのTHF及び60mLの酢酸エチルの混合物で洗浄し、合せた有機相に200mLの37%HClを添加し、生成物の沈殿を観測する。混合物を30分間攪拌下に保持し、次いで、パネルを濾過し、400mLのTHFで洗浄する。生成物を取り出し(157g)、真空下(<50mbar)25~35℃で15時間乾燥する。107gの最終生成物を得る。
【0102】
実施例9
ギビノスタットの純度及びその不純物を決定するためのHPLC法
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
試料調製
約20mgのITF2357試料を正確に秤量し、これを100mLフラスコに移し、DMSOで容積まで満たす(濃度0.20mg/mL)。
【0106】
生成物の典型的な全ての不純物を含有する特別に調製した混合物についての、本発明に従ったHPLC法によって得られる典型的なクロマトグラムを図1に示す。
【0107】
実施例11
当技術の状態の方法で得られたギビノスタット(実施例2)、ステップ1について従来知られた方法及びステップ2について本発明の方法で得られたギビノスタット(実施例3及び4)、並びにステップ1及びステップ2の両方について本発明の方法で得られたギビノスタットに対する純度分析
【0108】
【表5】
【0109】
表1は、特に、実施例9に記載されるHPLC分析によって評価された、ギビノスタット(RRT1)、アミド代謝物(1a)(RRT1.08)、中間体(I)(RRT1.27)及び未知不純物の相対的保持時間を示す。
【0110】
実験TT180(実施例2)は、当技術の状態で使用される方法の繰り返しに関し、一方、TT177(実施例3)及びTT183(実施例4)は本発明の方法がステップ2に関して適用された実験であって、50%ヒドロキシルアミン水溶液を、THFに溶解された公知の技術に従って製造された中間体(II)の溶液に添加する実験に関する。
【0111】
標準的な順序(ヒドロキシルアミンに中間体(II)を添加)に比較して、逆の添加順序(中間体(II)にヒドロキシアミンを添加)は、最終反応生成物を基準として0.10%未満の全ての未知不純物の減少を得ることを可能にする。反対に、標準的な方法を用いると、1つの不純物が0.10%の限界を十分に超える結果をもたらす。
【0112】
不純物の形成を制限する更に重要な側面は、ヒドロキシルアミンが添加される中間体(II)を含有する混合物に含有される水の量であり、これは混合物の重量に基づいて0.5%以内に制限されなければならない。一方、ヒドロキシルアミンの添加時間は制限にはならないが、当技術の状態の方法とは異なり、本発明の方法は5℃よりもむしろ室温で操作することができる。
【0113】
実施例6、7及び8では、本発明の新規な方法がステップ1及びステップ2の両方に適用されている。99.5%を超える純度、好ましくは99.6%以上の純度を有するギビノスタットが得られること、及び、未知不純物が全く検出可能でない(本方法の検出限界0.02%)ことが、表中に報告された値から明らかであろう。
図1