(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024074997
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】原子炉格納容器
(51)【国際特許分類】
G21C 13/093 20060101AFI20240524BHJP
G21C 13/00 20060101ALI20240524BHJP
【FI】
G21C13/093
G21C13/00 200
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065128
(22)【出願日】2024-04-15
(62)【分割の表示】P 2020192133の分割
【原出願日】2020-11-19
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】本間 雅之
(72)【発明者】
【氏名】大坂 雅昭
(57)【要約】
【課題】
鉄筋コンクリート製原子炉格納容器において、鋼製ライナの剥離やライナアンカの引き抜け防止が可能であり、なおかつ、コンクリート打設枠を支持するセパレータ(型枠支持金物)を設ける必要がない信頼性及び施工性に優れた原子炉格納容器を提供する。
【解決手段】
鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器であって、鉄筋コンクリート製躯体と、複数のライナアンカを介して前記鉄筋コンクリート製躯体に内張りされたライナプレートと、を備え、前記鉄筋コンクリート製躯体は、前記原子炉格納容器の中央から外側に向かう方向に放射状に配筋された複数の異形鉄筋を有し、前記複数の異形鉄筋の各々の一端は、前記複数のライナアンカの各々と一体化されており、前記複数のライナアンカに作用する引抜荷重に応じて、前記複数の異形鉄筋の径及び配置ピッチが定められていることを特徴とする。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器であって、
鉄筋コンクリート製躯体と、
複数のライナアンカを介して前記鉄筋コンクリート製躯体に内張りされたライナプレートと、を備え、
前記鉄筋コンクリート製躯体は、前記原子炉格納容器の中央から外側に向かう方向に放射状に配筋された複数の異形鉄筋を有し、
前記複数の異形鉄筋の各々の一端は、前記複数のライナアンカの各々と一体化されており、
前記複数のライナアンカに作用する引抜荷重に応じて、前記複数の異形鉄筋の径及び配置ピッチが定められていることを特徴とする原子炉格納容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原子炉格納容器の構造に係り、特に、原子炉格納容器と原子炉建屋が一体構造で構成されるコンクリート製原子炉格納容器の壁構造に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の沸騰水型原子炉(BWR:Boiling Water Reactor)では、鋼製の原子炉格納容器を採用していたが、改良型沸騰水型軽水炉(ABWR:Advanced Boiling Water Reactor)では、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV:Reinforced Concrete Containment Vessel)が採用されている。また、他の型式のコンクリート製原子炉格納容器として、鋼板コンクリート製原子炉格納容器(SCCV:Steel plate Concrete Containment Vessel)の開発も進められてきた。
【0003】
BWRは、鋼製の原子炉格納容器の外側に放射線を遮蔽する目的でコンクリート壁を備えているが、RCCVを採用したABWRは、耐圧機能と放射線遮蔽機能を受け持つ鉄筋コンクリートと、耐漏洩機能を受け持つ鋼製ライナの内張りで構成される。
【0004】
RCCVの採用で、原子炉格納容器と原子炉建屋を一体の構造とすることにより、原子炉建屋の重心が低くなり耐震性が向上する他、建屋容積を削減することができる。
【0005】
本技術分野の背景技術として、例えば、特許文献1のような技術がある。特許文献1には「円筒形状をしたバウンダリを形成する内貼り鋼製ライナをコンクリート打設用型代りに用いる鉄筋コンクリート製格納容器において、地上でライナを円筒形状としたライナに貫通部を取り付け、ライナアンカより周方向鉄筋及び縦方向鉄筋を支持する補強材を固定し、これに周方向鉄筋及び縦方向を結合させ、ライナと貫通部及び周方向鉄筋、更に縦方向鉄筋を一体化して吊り込む円筒型鉄筋コンクリート製格納容器の建設方法」が開示されている。
【0006】
また、特許文献2には「内外面に所定間隔を置いて対向位置し、鉄板等の金属板で構成してある板体と、この内外面の板体を連結支持する連結部材と、内外面の両板体間に充填して形成したコンクリート部と、上記両板体の対向する面に配設したスタッドボルト等の定着手段と、この定着手段の配設範囲内に配筋した用心鉄筋とを具備する原子炉建屋等における壁構造」が開示されている。
【0007】
また、特許文献3には「内面にライナプレートを有し、このライナプレートにライナアンカを取り付け、このライナアンカに型枠支持金物を設け、内側鉄筋と外側鉄筋とを配筋しコンクリート打設してなる鉄筋コンクリート製原子炉格納容器の壁構造において、前記ライナアンカと前記鉄筋の相互位置関係を同一とするように前記ライナアンカの取付間隔を鉄筋間隔の整数倍としてなる原子炉格納容器の壁構造」が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4-285893号公報
【特許文献2】特開昭59-116090号公報
【特許文献3】特開平8-220273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したように、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)は、原子炉建屋と一体化した鉄筋コンクリート構造により耐圧機能、遮蔽機能、耐震機能を受け持ち、コンクリートに内張りされた鋼製ライナ(ライナプレート)が放射性物質の漏洩防止機能を持っている。
【0010】
鋼製ライナ(ライナプレート)は、CT鋼製のライナアンカによって鉄筋コンクリート製躯体に内張された構造となっているが、熱荷重によるライナひずみや、事故時に鋼製ライナ(ライナプレート)に作用する外圧により、ライナアンカの引き抜けが生じ、鋼製ライナ(ライナプレート)の剥離に至る可能性があるため、ライナアンカの引き抜け防止が可能な安全設計が求められる。
【0011】
上記特許文献1には、例えば、
図6及び段落[0006]-[0007]に、ライナアンカ(鉛直スチフナ)5に鉄筋サポート10(a),10(b)を溶接接合することが記載されているが、数本おきに設定されるとの記載からも分かるように、施工工数の削減及び工程短縮を前提とした構造であり、上述したようなライナアンカの引き抜けを考慮したものではない。
【0012】
また、上記引用文献2は、2枚の板体1,2を連結板4で結合し、板体1,2間にコンクリートを充填したSC構造(Steel plate Concrete)に関するものであるが、連結板4は、板体1,2の剥離防止を考慮したものではない。
【0013】
また、上記引用文献3には、例えば、
図2及び段落[0026]に、型枠取付金物19を直接ライナアンカ17に接続して型枠取付用金物取付用仮設材とすることが記載されているが、型枠取付金物19(セパレータ)はコンクリート打設枠を支持するためのものであり、ライナアンカ17の引き抜け防止を考慮したものではない。
【0014】
そこで、本発明の目的は、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器において、鋼製ライナの剥離やライナアンカの引き抜け防止が可能であり、なおかつ、コンクリート打設枠を支持するセパレータ(型枠支持金物)を設ける必要がない信頼性及び施工性に優れた原子炉格納容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するために、本発明は、鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器であって、鉄筋コンクリート製躯体と、複数のライナアンカを介して前記鉄筋コンクリート製躯体に内張りされたライナプレートと、を備え、前記鉄筋コンクリート製躯体は、前記原子炉格納容器の中央から外側に向かう方向に放射状に配筋された複数の異形鉄筋を有し、前記複数の異形鉄筋の各々の一端は、前記複数のライナアンカの各々と一体化されており、前記複数のライナアンカに作用する引抜荷重に応じて、前記複数の異形鉄筋の径及び配置ピッチが定められていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、鉄筋コンクリート製の原子炉格納容器であって、鉄筋コンクリート製躯体と、少なくとも一部が表面に露出するように前記鉄筋コンクリート製躯体に埋め込まれた埋込金物パッドと、を備え、前記鉄筋コンクリート製躯体は、複数のせん断補強筋を有し、前記複数のせん断補強筋のうち、少なくとも一部のせん断補強筋の一端は、前記埋込金物パッドと一体化されており、前記埋込金物パッドに作用する引抜荷重に応じて、前記複数のせん断補強筋の径が定められていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、鋼板コンクリート製の原子炉格納容器であって、コンクリート製躯体と、前記コンクリート製躯体の内面に設置された内側鋼板と、前記コンクリート製躯体の外面に設置された外側鋼板と、を備え、前記コンクリート製躯体は、前記原子炉格納容器の中央から外側に向かう方向に放射状に配筋された複数の異形鉄筋を有し、前記複数の異形鉄筋の各々の一端は、前記内側鋼板と一体化されており、前記複数の異形鉄筋の各々の他端は、前記外側鋼板と一体化されており、前記内側鋼板及び前記外側鋼板に作用する荷重に応じて、前記複数の異形鉄筋の径及び配置ピッチが定められていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器において、鋼製ライナの剥離やライナアンカの引き抜け防止が可能であり、なおかつ、コンクリート打設枠を支持するセパレータ(型枠支持金物)を設ける必要がない信頼性及び施工性に優れた原子炉格納容器を実現することができる。
【0019】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1A】本発明の実施例1に係る原子炉格納容器の一部を示す図である。
【
図3】本発明の実施例2に係る原子炉格納容器の一部を示す図である。
【
図5A】本発明の実施例3に係る原子炉格納容器の一部を示す図である。
【
図5C】従来の原子炉格納容器の一部を示す図である。
【
図6A】代表的な原子炉格納容器の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図面において同一の構成については同一の符号を付し、重複する部分についてはその詳細な説明は省略する。
【実施例0022】
先ず、
図6A及び
図6Bを参照して、本発明の対象となるコンクリート製原子炉格納容器について説明する。
図6Aは、代表的なコンクリート製原子炉格納容器の例として、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)の概略構成を示している。また、
図6Bは、
図6Aの壁構造(RCCV円筒部)の一部を示している。
【0023】
図6Aに示すように、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)1は、原子炉圧力容器2の基礎となる原子炉本体基礎7と、原子炉圧力容器2の周囲に設置された原子炉遮蔽壁8と、原子炉圧力容器2を内部に格納し、原子炉一次系の配管破断が生じた場合の原子炉からの冷却材の放出空間である上部ドライウェル3及び下部ドライウェル4と、原子炉冷却材喪失事故(LOCA)時等に放出される炉蒸気を凝縮するプール水を保持する圧力抑制室5と、原子炉冷却材喪失事故等の事故が発生した際に上部ドライウェル3及び下部ドライウェル4内に放出される蒸気と水の混合物を圧力抑制室5に導く水平ベント管6などを有して構成されている。鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)1は、RCCV円筒部9や、上部ドライウェル3の天井に相当するトップスラブ10などを介して、原子炉建屋と一体化している。
【0024】
鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)1の壁構造は、
図6Bに示すように、主に鉄筋コンクリート製躯体14と、鉄筋コンクリート製躯体14に複数のライナアンカ12を介して内張りされたライナプレート11と、複数のライナアンカ12同士を連結するフラットバー13で構成されている。ライナアンカ12には、CT鋼が用いられている。また、鉄筋コンクリート製躯体14内には、複数の異形鉄筋15が周方向及び鉛直方向に、複数層に重ねて配置されている。
【0025】
この鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)1は、LOCA等の事故時に原子炉系から放射性物質を含む高温の蒸気・水等が放出された際、圧力障壁の役目を果たし、かつ放射性物質の環境への放散に対する防壁(閉じ込め)機能を有する。
【0026】
なお、原子炉の規模や型式によっても異なるが、鉄筋コンクリート製躯体14の壁厚は約2m程度であり、ライナプレート11の板厚は約6mm程度で設計される。
【0027】
鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)1は、以上のように構成されており、鉄筋コンクリートを介して原子炉格納容器が原子炉建屋と一体化しているため、コンパクトな原子炉建屋となる。そのため、原子炉建屋の重心が低くなり耐震性を向上することができる、建屋とRCCVの同時施工により建設工期の短縮が図れる等のメリットがある。
【0028】
しかしながら、
図6Bに示すように、ライナプレート11は、CT鋼製のライナアンカ12によって鉄筋コンクリート製躯体14に内張された構造となっているため、熱荷重によるライナひずみや、事故時にライナプレート11に作用する外圧により、鉄筋コンクリート製躯体14からライナアンカ12の引き抜けが生じる可能性がある。
【0029】
次に、
図1Aから
図2を参照して、本発明の実施例1に係る原子炉格納容器について説明する。
図1Aは、本実施例の原子炉格納容器の壁構造を示す図であり、
図6Bに示したRCCV円筒部9に相当する。
図1Bは、
図1Aを上方から見た図である。また、
図2は、
図1Bの変形例を示す図である。
【0030】
なお、
図1Aから
図2では、構造を分かり易くするために、打設されたコンクリートを省略して示している。また、コンクリート打設枠16が設置された状態を示しているが、コンクリート打設枠16は、コンクリート打設後に異形鉄筋15から切り離され撤去される。
【0031】
本実施例の原子炉格納容器は、
図1Aに示すように、鉄筋コンクリート製躯体と、複数のライナアンカ12を介して鉄筋コンクリート製躯体に内張りされたライナプレート11を備えている。鉄筋コンクリート製躯体内には、原子炉格納容器の中央から外側に向かう方向に複数の異形鉄筋15が放射状に配筋されており、複数の異形鉄筋15の各々の一端は、複数のライナアンカ12の各々と一体化されている。
【0032】
そして、複数の異形鉄筋15は、複数のライナアンカ12に作用する引抜荷重に応じて、その径、及び鉄筋コンクリート製躯体内における配置ピッチが定められている。
【0033】
ライナアンカ12に作用する引抜力に対して、放射状に配筋された異形鉄筋15の引張強度、並びにコンクリートへの付着力及び定着力により抵抗することが期待され、ライナアンカ12の引き抜け防止の信頼性を向上することができる。
【0034】
また、鉄筋コンクリート製躯体及びライナプレート11、ライナアンカ12を、以上のように構成することで、放射状に配筋された異形鉄筋15が、従来のセパレータ(型枠支持金物)の役割を兼ねることができるため、鉄筋コンクリート製躯体の施工性が向上する。
【0035】
なお、ライナアンカ12には、例えばCT型鋼を用いる。この場合、異形鉄筋15の一端をCT型鋼のフランジ部と一体化する。
【0036】
また、
図1Bに示すように、異形鉄筋15は、カプラ17を介してライナアンカ12と一体化してもよい。カプラ17を用いることで、異形鉄筋15とライナアンカ12の一体化を建設現場で容易に行うことができる。
【0037】
また、
図2に示すように、鉄筋同士の間隔が正確に保てるように、異形鉄筋15の両端に幅止め機能を有する鉄筋ねじ込み式定着板18を設けてもよい。さらに、異形鉄筋15の外側の端部(他端)に、カプラ19を介してコンクリート打設枠16を固定する型枠固定ボルト20を設けてもよい。この場合、型枠固定ボルト20は、コンクリート固化後にコンクリート打設枠16と共に撤去する。原子炉格納容器1外の配管取替工事などの際には、型枠固定ボルト20を異形鉄筋15の外側の端部(他端)に再び取り付けて、配管サポートなどの固定用治具として利用することもできる。
【0038】
本実施例によれば、鉄筋コンクリート製原子炉格納容器(RCCV)において、鋼製ライナの剥離やライナアンカの引き抜け防止が可能であり、なおかつ、コンクリート打設枠を支持するセパレータ(型枠支持金物)を設ける必要がない信頼性及び施工性に優れた原子炉格納容器を実現することができる。
従来の埋込金物パッドは、裏面にスタッドを設け、スタッドを鉄筋コンクリート製躯体内に埋め込むことで、鉄筋コンクリート製躯体の表面に固定しているが、埋込金物パッドに引抜荷重が作用した場合、鉄筋コンクリート製躯体から埋込金物パッド22,26の引き抜けが生じる可能性がある。
鉄筋コンクリート製躯体内のせん断補強筋24及び埋込金物パッド22を、以上のように構成することで、埋込金物パッド22にスタッドを設けることなく、埋込金物パッド22に作用する引抜力に対して、せん断補強筋24の引張強度、並びにコンクリートへの付着力及び定着力により抵抗することが期待され、埋込金物パッド22の引き抜け防止の信頼性を向上することができる。