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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075001
(43)【公開日】2024-05-31
(54)【発明の名称】エッチング組成物
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/308 20060101AFI20240524BHJP
【FI】
H01L21/308 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024065539
(22)【出願日】2024-04-15
(62)【分割の表示】P 2021531795の分割
【原出願日】2019-07-22
(31)【優先権主張番号】62/774,382
(32)【優先日】2018-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/811,600
(32)【優先日】2019-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514251329
【氏名又は名称】フジフイルム エレクトロニック マテリアルズ ユー.エス.エー., インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビェロパヴリチ、ミック
(72)【発明者】
【氏名】バイェステロス、カール
(57)【要約】
【課題】エッチング組成物及びエッチング組成物を用いるプロセスを提供する。
【解決手段】本開示は、例えば、マルチステップ半導体生産プロセスにおける中間工程として半導体基板からシリコンゲルマニウム(SiGe)を選択的に除去する際に有用な、エッチング組成物に関わるものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のフッ素含有酸、ここで、前記少なくとも1種のフッ素含有酸はフッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含む;
少なくとも1種の酸化剤;
少なくとも1種の有機酸又はその無水物、ここで、前記少なくとも1種の有機酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含む;
少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸;
少なくとも1種のアミン、ここで、前記少なくとも1種のアミンは式(I):N-Rのアミンを含み、Rは任意に(optionally)OH又はNHで置換されているC~Cのアルキルであり、RはH又は任意に(optionally)OHで置換されているC~Cのアルキルであり、かつ、Rは任意に(optionally)OHで置換されているC~Cのアルキルである;及び
水、
を含み、
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、前記組成物の30重量%から90重量%の量で存在する、
エッチング組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、酢酸及び無水酢酸を含み、前記酢酸及び無水酢酸の合計量が、前記組成物の30重量%から90重量%である、請求項1に記載のエッチング組成物。
【請求項3】
前記酢酸及び無水酢酸の合計量が、前記組成物の60重量%から80重量%である、請求項2に記載のエッチング組成物。
【請求項4】
無機酸をさらに含む、請求項1に記載のエッチング組成物。
【請求項5】
少なくとも1種のフッ素含有酸、ここで、前記少なくとも1種のフッ素含有酸はフッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含み、前記組成物の2重量%以下の量で存在する;
組成物の5重量%~20重量%の量の少なくとも1種の酸化剤;
少なくとも1種の有機酸又はその無水物、ここで、前記少なくとも1種の有機酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含み、組成物の30重量%~90重量%の量で存在する;
組成物の0.005重量%~0.15重量%の量の少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸;
少なくとも1種のアミン、ここで、前記少なくとも1種のアミンは式(I):N-Rのアミンを含み、組成物の0.001重量%~0.15重量%の量で存在し、Rは任意に(optionally)OH又はNHで置換されているC~Cのアルキルであり、RはH又は任意に(optionally)OHで置換されているC~Cのアルキルであり、かつ、Rは任意に(optionally)OHで置換されているC~Cのアルキルである;及び
水、
を含む、請求項1に記載のエッチング組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種のフッ素含有酸は、組成物の0.5重量%以下の量で存在する、請求項5に記載のエッチング組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の6重量%~10重量%の量で存在する、請求項5に記載のエッチング組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、酢酸及び無水酢酸を含み、前記酢酸及び無水酢酸の合計量が、前記組成物の30重量%~90重量%である、請求項5に記載のエッチング組成物。
【請求項9】
前記酢酸及び無水酢酸の合計量が、前記組成物の60重量%~80重量%である、請求項8に記載のエッチング組成物。
【請求項10】
前記少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸が、前記組成物の0.005重量%から0.05重量%の量で存在する、請求項5に記載のエッチング組成物。
【請求項11】
前記少なくとも1種のアミンが、前記組成物の0.005重量%から0.05重量%で存在する、請求項5に記載のエッチング組成物。
【請求項12】
無機酸をさらに含む、請求項5に記載のエッチング組成物。





【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エッチング組成物及びエッチング組成物を用いるプロセスに関わる。特に、本開示は、金属導電体(例えば銅)、バリア材料、絶縁体(例えばlow-k誘電体材料)のように、他の露出している又は下に位置する材料の存在下で、シリコンゲルマニウムを選択的にエッチングすることが可能な、エッチング組成物に関わる。
【背景技術】
【0002】
半導体産業は、急速にその次元を小さくし、また、微小電子デバイス、シリコンチップ、液晶ディスプレイ、MEMS(微小電子機械システム)、印刷配線板等における、電子回路構成及び電子部品の密度を急速に増大させている。それらの内部における集積回路は、各電子回路構成層の間の絶縁層の厚さが絶えず減少し、フィーチャサイズはどんどん小さくなっていく状況で、積層又は積み重ねられている。フィーチャサイズが縮小してきたことにつれて、パターンはより小さくなり、デバイスの性能パラメータはより厳しく断固としたものとなってきた。結果として、フィーチャサイズがより小さくなることに起因して、従来は許容できていた様々な問題点が、もはや許容できなくなる、又はより大きな問題点となっている。
【0003】
先進的な集積回路の生産において、高密度化に伴う問題点を最小化し、なおかつ性能を最適化するために、high-k(高誘電率)及びlow-k(低誘電率)の両方の絶縁体、及びそれに合わせたバリア層材料が用いられている。
【0004】
シリコンゲルマニウム(SiGe)は、半導体デバイス、液晶ディスプレイ、MEMS(微小電子機械システム)、印刷配線板等の生産において、ナノワイヤ及び/又はナノシートとして活用できる。例えば、マルチゲート型電界効果トランジスタ(FET)(例えばgate-all-around FET)などの、マルチゲート型デバイスにおけるゲート材料として、使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
半導体デバイスの作製においては、シリコンゲルマニウム(SiGe)をエッチングする必要がしばしばある。SiGeの様々な使用のタイプ及びデバイス環境において、この材料がエッチングされている際に、他の層は(SiGeに)接しているかあるいは露出している。これら他の材料(例えば金属導電体、誘電体、及びハードマスク)の存在下におけるSiGeの高い選択性のエッチングは、デバイスの収率及び長寿命のために通常必要とされる。SiGeに対するエッチングプロセスは、プラズマエッチングプロセスでもよい。しかしながら、SiGe層に対してプラズマエッチングプロセスを用いると、ゲート絶縁膜及び半導体基板のいずれか又は両方へのダメージをもたらすおそれがある。さらに、そのエッチングプロセスは、ゲート電極の近くに露出されるゲート絶縁層をエッチングすることによって、半導体基板の一部を除去してしまうおそれがある。トランジスタの電気的特性が悪影響を受ける可能性がある。そのようなエッチングダメージを避けるために、保護のための付加的なデバイス生産工程が採用されることもあるが、かなりの費用がかかる。
【0006】
本開示は、半導体デバイス中に存在するハードマスク層、ゲート材料(例えばSiN、ポリシリコン、又はSiOx)及びlow-k誘電体層(例えばSiN、ポリシリコン、SiOx、カーボンドープドオキサイド(carbon doped oxide)、又はSiCO)と比してSiGeを選択的にエッチングするための組成物及びプロセスに関わる。特に、本開示は、low-k誘電体層と比してSiGeを選択的にエッチングするための組成物及びプロセスに関わる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様において、本開示は、a)少なくとも1種のフッ素含有酸、ここで、前記フッ素含有酸はフッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含む、b)少なくとも1種の酸化剤、c)少なくとも1種の有機酸又はその無水物、ここで前記有機酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含む、d)少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸、e)少なくとも1種のアミン、ここで、前記アミンは式(I):N-Rで示されるアミンを含み、Rは任意にOH又はNHで置換されたC~Cのアルキルであり、RはH又は任意にOHで置換されたC~Cのアルキルであり、Rは任意にOHで置換されたC~Cのアルキルである、及びf)水、を含むエッチング組成物について示す。
【0008】
別の態様において、本開示は、SiGe膜を含む半導体基板を本開示に記載のエッチング組成物と接触させて、それによりSiGe膜を除去することを含む方法について示す。
【0009】
さらに別の態様において、本開示は、上記方法で形成される物品(article)について示し、ここで前記物品は半導体デバイス(例えば集積回路)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
特に断らない限り、本開示において、全てのパーセント表現は、組成物の全重量に対する重量パーセントであると理解されるべきである。特に断らない限り、環境温度は、摂氏(℃)約16度~約27度であると定義される。
【0011】
一般的に、本開示は、a)少なくとも1種のフッ素含有酸、ここで前記フッ素含有酸はフッ化水素酸(HF)又はヘキサフルオロケイ酸(HSiF)である、b)少なくとも1種の酸化剤、ここで前記酸化剤は過酸化水素である、c)少なくとも1種の有機酸、ここで前記有機酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸である、d)少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸、e)少なくとも1種のアミン、ここで前記アミンは式(I):N-Rで示されるアミンを含み、Rは任意にOH又はNHで置換されたC~Cのアルキルであり、RはH又は任意にOHで置換されたC~Cのアルキルであり、Rは任意にOHで置換されたC~Cのアルキルである、及びf)水、を含むエッチング組成物(例えば、SiGeを選択的に除去するためのエッチング組成物)について示す。
【0012】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種の(例えば2種、3種、又は4種の)フッ素含有酸を含むことができる。本開示に記載のフッ素含有酸は、HF又はHSiFなどの無機酸でもよい。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種のフッ素含有酸は、本開示のエッチング組成物に対して、約0.1重量%以上(例えば、約0.2重量%以上、約0.4重量%以上、約0.5重量%以上、約0.6重量%以上、約0.8重量%以上、約1重量%以上、約1.2重量%以上、約1.4重量%以上、又は約1.5重量%以上)~約2重量%以下(例えば、約1.9重量%以下、約1.8重量%以下、約1.7重量%以下、約1.6重量%以下、約1.5重量%以下、約1.2重量%以下、約1重量%以下、又は約0.5重量%以下)の量で存在する。理論に拘束されることを望むものではないが、フッ素含有酸は、エッチングプロセスの間、半導体基板上のSiGeの除去を容易にしまた促進するものと考えられる。
【0013】
本開示のエッチング組成物は、マイクロエレクトロニクス用途での使用に適した少なくとも1種の(例えば2種、3種、又は4種の)酸化剤を含むことができる。適切な酸化剤の例は以下のものを含むが、それらに限定されるものではない:酸化性酸及びその塩(例えば、硝酸、過マンガン酸、又は過マンガン酸カリウム)、過酸化物(例えば、過酸化水素、ジアルキルパーオキサイド類、過酸化尿素)、過スルホン酸(例えば、ヘキサフルオロプロパン過スルホン酸、メタン過スルホン酸、トリフルオロメタン過スルホン酸、又はp-トルエン過スルホン酸)及びその塩、オゾン、ペルオキシカルボン酸(例えば、過酢酸)及びその塩、過リン酸及びその塩、過硫酸及びその塩(例えば、過硫酸アンモニウム、又は過硫酸テトラメチルアンモニウム)、過塩素酸及びその塩(例えば、過塩素酸アンモニウム、過塩素酸ナトリウム、又は過塩素酸テトラメチルアンモニウム))、過ヨウ素酸及びその塩(例えば、過ヨウ素酸、過ヨウ素酸アンモニウム、又は過ヨウ素酸テトラメチルアンモニウム)。これらの酸化剤は、一種単独で用いても組み合わせて用いてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の酸化剤は、本開示のエッチング組成物に対して、約5重量%以上(例えば、約6重量%以上、約7重量%以上、約8重量%以上、約9重量%以上、約10重量%以上、約11重量%以上、約13重量%以上、又は約15重量%以上)~約20重量%以下(例えば、約18重量%以下、約16重量%以下、約15重量%以下、約14重量%以下、約12重量%以下、又は約10重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、酸化剤は、半導体基板上のSiGeの除去を容易にしまた促進するものと考えられる。
【0015】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種の(例えば2種、3種、又は4種の)有機酸又はその無水物を含むことができる。いくつかの実施形態において、前記有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸であってもよい。いくつかの実施形態において、前記有機酸無水物は、ギ酸無水物、無水酢酸、無水プロピオン酸、又は無水酪酸であってもよい。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物は、本開示のエッチング組成物に対して、約30重量%以上(例えば、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、又は約60重量%以上)~約90重量%以下(例えば、約85重量%以下、約80重量%以下、約75重量%以下、約70重量%以下、約65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、又は約40重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、有機酸又はその無水物は、半導体基板上のSiGeの除去を容易にしまた促進するものと考えられる。
【0016】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、例えば界面活性剤又は選択的阻害剤として、少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸(又は、ポリ(ナフタレンスルホン酸))を含むことができる。いくつかの実施形態において、前記重合したナフタレンスルホン酸は、以下の化学構造を有するスルホン酸であってもよい:
【0017】
【化1】

ここで、nは3,4,5、又は6である。
【0018】
このような重合したナフタレンスルホン酸の市販品の例には、竹本油脂株式会社製のタケサーフA-47シリーズの製品が含まれる。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸は、本開示のエッチング組成物に対して、約0.005重量%以上(例えば、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.03重量%以上、約0.04重量%以上、約0.05重量%以上、又は約0.1重量%以上)~約0.15重量%以下(例えば、約0.14重量%以下、約0.12重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、又は約0.05重量%以下)である。いかなる理論に拘束されることを望むものではないが、重合したナフタレンスルホン酸は、本開示のエッチング組成物を用いて半導体基板からSiGeを除去する際に、SiN、ポリシリコン、及びSiCOの除去を選択的に阻害するものと考えられる。
【0019】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種の(例えば2種、3種、又は4種の)アミンを含むことができる。いくつかの実施形態において、前記アミンは、式(I):N-Rで示されるアミンであってもよく、ここで、Rは任意にOH又はNHで置換されたC~Cのアルキルであり、RはH又は任意にOHで置換されたC~Cのアルキルであり、Rは任意にOHで置換されたC~Cのアルキルである。式(I)のアミンの適切な例は、ジイソプロピルアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミン、N-オクチルグルカミン、N-エチルグルカミン、N-メチルグルカミン、及び1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノール、を含む。
【0020】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種のアミンは、本開示のエッチング組成物に対して、約0.001重量%以上(例えば、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.008重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、又は約0.1重量%以上)~約0.15質量%以下(例えば、約0.14重量%以下、約0.12重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、又は約0.05重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、アミンは、本開示のエッチング組成物を用いて半導体基板からSiGeを除去する際に、SiN、ポリシリコン、及びSiCOの除去を選択的に阻害するものと考えられる。
【0021】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、溶剤として水を含むことができる。いくつかの実施形態において、前記の水は、有機混入物を含まず、最小抵抗率が約4~約17オームであるか又は約17オーム以上である、脱イオン化された超純水であってもよい。いくつかの実施形態において、前記の水は、エッチング組成物に対して、約20重量%以上(例えば、約25重量%以上、約30重量%以上、約35重量%以上、約40重量%以上、約45重量%以上、約50重量%以上、約55重量%以上、又は約60重量%以上)~約75質量%以下(例えば、約70重量%以下、約65重量%以下、約60重量%以下、約55重量%以下、約50重量%以下、約45重量%以下、又は約40重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、水の量が組成物の75重量%より多い場合には、そのことがSiGeのエッチングレートに対して悪影響を及ぼし、エッチングプロセスにおいてSiGeが除去されにくくなると考えられる。一方で、理論に拘束されることを望むものではないが、本開示のエッチング組成物は、他の全ての成分が可溶化した状態を保つために、またエッチング性能の低下を避けるために、あるレベルの量(例えば20重量%以上)の水を含むべきであると考えられる。
【0022】
いくつかの実施形態において、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種の(例えば2種、3種、又は4種の)有機溶剤をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の有機溶剤は、アルコール又はアルキレングリコールエーテルを含んでいてもよい。適切な有機溶剤の例は、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、エチレングリコールブチルエーテル、及び3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、を含む。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の有機溶剤は、エッチング組成物に対して、約10重量%以上(例えば、約15重量%以上、約20重量%以上、約25重量%以上、約30重量%以上、又は約35重量%以上)~約40質量%以下(例えば、約35重量%以下、約30重量%以下、約25重量%以下、約20重量%以下、又は約15重量%以下)であってもよい。
【0023】
いくつかの実施形態において、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種の(例えば2種、3種、又は4種の)糖アルコール(例えば、マンニトール又はソルビトール)をさらに含むことができる。いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種の糖アルコールは、エッチング組成物に対して、約0.001重量%以上(例えば、約0.002重量%以上、約0.005重量%以上、約0.01重量%以上、約0.02重量%以上、又は約0.05重量%以上)~約0.1質量%以下(例えば、約0.08重量%以下、約0.06重量%以下、約0.05重量%以下、約0.04重量%以下、約0.02重量%以下、又は約0.01重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、本開示のエッチング組成物が糖アルコールを含むことにより、ポリシリコンのエッチングレートを阻害することができると考えられる。
【0024】
いくつかの実施形態において、本開示のエッチング組成物は、少なくとも1種の(例えば2種、3種、又は4種の)ボロン酸をさらに含むことができる。例えば、前記ボロン酸は、以下の式:R-B(OH)のものであってもよく、ここでRはC~C10のアルキル、アリール、又はヘテロアリールであり、前記アリール又はヘテロアリールは、任意に1つから6つ(例えば、1、2、3、4、5、又は6)のC~C10のアルキルで置換されていてもよい。適切なボロン酸の例には、フェニルボロン酸及びナフタレン-1-ボロン酸が含まれる。
【0025】
いくつかの実施形態において、前記少なくとも1種のボロン酸は、エッチング組成物に対して、約0.01重量%以上(例えば、約0.02重量%以上、約0.05重量%以上、約0.1重量%以上、約0.2重量%以上、又は約0.3重量%以上)~約0.5質量%以下(例えば、約0.4重量%以下、約0.3重量%以下、約0.2重量%以下、約0.1重量%以下、約0.08重量%以下、又は約0.05重量%以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、本開示のエッチング組成物がボロン酸を含むことにより、SiOxのエッチングレートを阻害することができると考えられる。
【0026】
いくつかの実施形態において、本開示のエッチング組成物のpHの値は、約1以上(例えば、約1.2以上、約1.4以上、約1.5以上、約1.6以上、約1.8以上、約2以上、約2.2以上、約2.4以上、又は約2.5以上)、及び/又は約3以下(例えば、約2.8以下、約2.6以下、約2.5以下、約2.4以下、約2.2以下、約2以下、又は約1.5以下)であってもよい。理論に拘束されることを望むものではないが、pHが3より高いエッチング組成物は、low-k誘電体材料のエッチングレートがかなり大きいので、low-k誘電体材料(例えばSiOx)に比してのSiGeの選択性が十分ではない、と考えられる。さらに、pHが1より低いエッチング組成物は、酸性の強さに起因して何らかの成分を分解するおそれがあると考えられる。
【0027】
加えて、いくつかの実施形態において、本開示のエッチング組成物は、pH調整剤、防腐剤、界面活性剤、追加の有機溶剤、殺生物剤、及び消泡剤、といった添加剤を任意成分として含んでいてもよい。適切な添加剤の例は、アルコール(例えば、ポリビニルアルコール)、有機酸(例えば、イミノ二酢酸、マロン酸、シュウ酸、コハク酸、及びリンゴ酸)、及び無機酸(例えば、ホウ酸)を含む。適切な消泡剤の例は、ポリシロキサン消泡剤(例えば、ポリジメチルシロキサン)、ポリエチレングリコールメチルエーテル重合体、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド共重合体、及びグリシジルエーテルキャップドアセチレンジオールエトキシレート(例えば、参照により本開示に取り込まれる米国特許6,717,019に示されているもの)を含む。適切な界面活性剤の例は、カチオン性、アニオン性、非イオン性、又は両性のものであってもよい。
【0028】
一般的に、本開示のエッチング組成物は、比較的高いSiGe/誘電体材料(例えばSiN、ポリシリコン、又はSiCO)エッチング選択性(つまり、誘電体材料のエッチングレートに対するSiGeのエッチングレートの比が高い)を有しうる。いくつかの実施形態において、前記エッチング組成物は、SiGe/誘電体材料のエッチング選択性が約2以上(例えば、約3以上、約4以上、約5以上、約6以上、約7以上、約8以上、約9以上、約10以上、約15以上、約20以上、約30以上、約40以上、又は約50以上)、及び/又は約500以下(例えば、約100以下)であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態において、本開示のエッチング組成物は、追加の成分のうち1つ又は複数を含まないようにしてもよく、複数の場合はどのような組み合わせでもよい。そのような成分は、ポリマー、脱酸素剤、4級アンモニウム塩(TMAHなどの4級アンモニウム水酸化物も含む)、アミン、アルカリ塩基(NaOH、KOH、及びLiOHなど)、消泡剤以外の界面活性剤、消泡剤、フッ化物含有化合物、研磨剤、ケイ酸塩、3個以上の水酸基を含むヒドロキシカルボン酸、アミノ基が無いカルボン酸又はポリカルボン酸、シラン(例えば、アルコキシシラン)、環状化合物(例えば、アゾール(例えばジアゾール、トリアゾール、又はテトラアゾール)、トリアジン、並びに、2個以上の環を含む環状化合物、例えば、置換若しくは無置換のナフタレン又は置換若しくは無置換のビフェニルエーテル)、緩衝剤、非アゾール系防腐剤、及び金属塩(例えば、金属ハライド)からなる群から選ばれる。
【0030】
本開示のエッチング組成物は、各成分を単純に混合することで調製でき、又、キット中の2つの組成物をブレンドすることによって調製してもよい。キットにおける第1の組成物は、酸化剤(例えば、H)の水溶液であってもよい。キットにおける第2の組成物は、本開示のエッチング組成物における残りの成分をあらかじめ定めた割合で濃縮された形態で含んで、2つの組成物をブレンドすることで所望の本開示のエッチング組成物が出来るようになっていてもよい。
【0031】
いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも1つのSiGe膜を含む半導体基板をエッチングする方法について示す。前記方法は、少なくとも1つのSiGe膜を含む半導体基板を本開示のエッチング組成物に接触させて、SiGe膜を除去することを含んでいてもよい。前記方法は、前記の接触工程の後、リンス溶剤で前記半導体基板をリンスすること、及び/又は、リンス工程の後、前記半導体基板を乾燥させること、をさらに含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記方法は、前記半導体基板における金属伝導体(例えば銅)又は誘電体材料(例えばSiN、ポリシリコン、又はSiCO)を実質的に除去しない。例えば、前記方法は、前記半導体基板における金属伝導体又は誘電体材料を、約5重量%超(例えば、約3重量%超、又は約1重量%%超)除去することはない。
【0032】
いくつかの実施形態において、半導体基板におけるSiGe膜は、約10重量%以上(例えば、約12重量%以上、約14重量%以上、約15重量%以上、約16重量%以上、約18重量%以上、又は約20重量%以上)、及び/又は約35重量%以下(例えば、約34重量%以下、約32重量%以下、約30重量%以下、約28重量%以下、約26重量%以下、約25重量%以下、約24重量%以下、約22重量%以下、約20重量%以下、約18重量%以下、約16重量%以下、又は約15重量%以下)のGeをSiGe膜に含むことができる。理論に拘束されることを望むものではないが、約10重量%~約35重量%のGeを含むSiGe膜は、Ge含有量が35重量%超又は10重量%未満である膜と比べて、エッチング組成物により半導体基板からより容易に除去することができると考えられる。
【0033】
いくつかの実施形態において、前記エッチング方法は、以下の工程を含む:
(A)SiGe膜を含む半導体基板を用意する;
(B)前記半導体基板を本開示に記載のエッチング組成物に接触させる;
(C)前記半導体基板を1種又は複数種の適切なリンス溶剤でリンスする;
(D)任意に(optionally)、前記半導体基板を乾燥させる(例えば、リンス溶剤を除去しながらも、半導体基板の一体性を犠牲にすることのない適切な手段によって)。
【0034】
本方法でエッチングされるSiGeを含む半導体基板は、有機物残渣及び有機金属残渣、並びにある範囲の金属酸化物を含んでいてもよく、前記エッチングプロセスにおいて、それらのうちの一部又は全部が除去されてもよい。
【0035】
本開示に記載の半導体基板(例えばウエハ)の典型的なものは、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsなどのIII-V族化合物、又はそれらの任意の組み合わせから構成される。前記半導体基板は、さらに相互接続フィーチャ(例えば、金属線及び誘電体材料)などの露出した集積回路構造を含んでいてもよい。相互接続フィーチャに用いられる金属及び合金は、アルミニウム、銅と合金化したアルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、及びタングステンを含むが、これらに限定されるものではない。前記半導体基板は、層間誘電体、ポリシリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、シリコンカーバイド、酸化チタン、及び炭素ドープされた酸化シリコンの中間膜も含んでいてもよい。
【0036】
半導体基板は、任意の適切な方法で前記エッチング組成物と接触させることができ、前記方法は、例えば、前記エッチング組成物をタンクに配置して前記半導体基板を浸す及び/又は沈める、前記半導体基板上に前記エッチング組成物をスプレーする、前記半導体基板上に前記エッチング組成物を流す、あるいはそれらの任意の組み合わせである。
【0037】
本開示のエッチング組成物は、約85℃以下(例えば、約20℃から約80℃、約55℃から65℃、又は約60℃から65℃)の温度で有効に使用することができる。この範囲では温度が上がるとSiGeのエッチングレートが増加し、このため、より高い温度でのプロセスはより短時間で行うことができる。逆に、エッチング温度が低い場合には、通常、より長いエッチング時間が必要となる。
【0038】
エッチング時間は、用いられる具体的なエッチング方法、厚さ、及び温度により広い範囲で変動しうる。浸漬バッチ型プロセスの場合、適切な時間の範囲は、例えば10分以下(例えば、約1分から約7分、約1分から約5分、又は約2分から約4分)である。単一ウエハプロセスでのエッチング時間は、約30秒から約5分(例えば、約30秒から約4分、約1分から約3分、又は約1分から約2分)の範囲である。
【0039】
本開示のエッチング組成物のエッチング能力をさらに促進させるために、機械的攪拌手段を用いることができる。適切な攪拌法の例は、前記基板上にエッチング組成物を循環させること、前記基板上にエッチング組成物を流す又はスプレーすること、及びエッチングプロセス中に超音波又は極超音波(megasonic)攪拌すること、を含む。地表面に対する前記半導体基板の向きは、どの角度でもよい。水平又は垂直の向きが好ましい。
【0040】
前記エッチングの後、前記半導体基板は、攪拌手段有り又は無しで、約5秒から約5分の間、適切なリンス溶剤でリンスしてもよい。異なったリンス溶剤を用いる複数のリンス工程を行うこともできる。適切なリンス溶剤の例は、脱イオン(DI)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリドン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むが、これらに限定されるものではない。これに替えて、又はこれに加えて、pHが8より大きい水性のリンス(例えば、希水酸化アンモニウム水溶液)を用いることもできる。リンス溶剤の例は、希水酸化アンモニウム水溶液、DI水、メタノール、エタノール、及びイソプロピルアルコールを含むが、これらに限定されるものではない。前記リンス溶剤は、本開示のエッチング組成物を適用する場合に用いられる手段と同様の手段で適用されてもよい。エッチング組成物は、リンス工程の開始に先立って前記半導体基板から除去されていてもよく、又はリンス工程の開始の時点で前記半導体基板にまだ接触していてもよい。いくつかの実施形態において、リンス工程で用いられる温度は、16℃~27℃である。
【0041】
前記半導体基板は、リンス工程後、任意に(optionally)乾燥させられる。既知の、任意の適切な乾燥法を使用することができる。適切な乾燥手段の例は、スピン乾燥、前記半導体を横切って(across)乾燥ガスを流すこと、又は前記半導体をホットプレート又は赤外線ランプなどの加熱手段によって加熱すること、マランゴニ乾燥、ロタゴニ乾燥、IPA乾燥、又はこれらの任意の組み合わせを含む。乾燥時間は、用いられた具体的な方法に依存するが、典型的な値として30秒から数分といったオーダーである。
【0042】
いくつかの実施形態において、本開示に記載のエッチング方法は、上記方法で得られた半導体基板から半導体デバイス(例えば、半導体チップなどの集積回路デバイス)を形成することをさらに含む。
【0043】
本開示は、以下の実施例を参照としてより詳細に説明されるが、これらは例示を目的とするものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例0044】
特に断らない限り、表示されているパーセンテージはいずれも重量%(wt%)である。試験中の制御された攪拌は、特に断らない限り、毎分300回転(rpm)の1インチ攪拌子を用いて行われた。
【0045】
<概括的手順1:配合処方の混合>
エッチング組成物のサンプルを、計算された量の溶剤を攪拌しながら、それに対して配合処方の残りの成分を加えることによって調製した。均一な溶液が得られた後に、任意使用(optional)の添加剤を使う場合には添加した。
【0046】
<概括的手順2:材料と方法>
市販のパターンの無い直径300mmのウエハを、0.5インチ×1.0インチの評価用テストクーポンに角切りしたものを使って、ブランケット膜エッチングレート測定を膜に対して行った。試験に用いた主たるブランケット膜材料は、1)シリコン基板上に厚さ約500Å堆積されたSiGe膜、2)シリコン基板上に厚さ約600Å堆積されたSiNx膜、3)シリコン基板上に厚さ約1000Å堆積されたポリシリコン膜、4)シリコン基板上に厚さ約200Å堆積されたSiCO膜、及び5)シリコン基板上に厚さ約1200Å堆積されたSiOx膜を含む。
【0047】
処理前の厚さ及び処理後の厚さについてブランケット膜のテストクーポンを測定し、ブランケット膜のエッチングレートを決定した。SiGe、SiNx、SiOx、及びポリシリコンのブランケット膜について、処理前及び処理後にWoollam VASE(登録商標)を用いたエリプソメトリーによって膜厚を測定した。
【0048】
材料の適合性及び/又はエッチング応答性について、パターンを有するSi(3nm)/Siのテストクーポンを評価した。処理後のテストクーポンを、その後走査型電子顕微鏡(SEM)によって評価した。処理後のクーポンのSEM像を、あらかじめ撮っておいた処理前SEM像セットと比較して、パターンを有する試験デバイスフィーチャを有する各試験配合処方の材料適合性及びエッチング応答性を評価した。
【0049】
<概括的手順3:ビーカーテストによるエッチング評価>
ブランケット膜のエッチングテストは、全て室温(21~23℃)で、200gのサンプル溶液を収容した600mLのガラスビーカーにおいて行い、ここで前記ガラスビーカーでは、連続的に毎分250回転(rpm)で攪拌を行い、蒸発による目減りを最小限にするために常にParafilm(登録商標)カバーを所定位置に付けた。一方面においてサンプル溶液へと露出したブランケット誘電体膜を有する全てのブランケットテストクーポンは、ビーカーサイズでのテスト用に0.5インチ×1.0インチ平方のテストクーポンサイズへとダイアモンドスクライブで角切りした。個々のテストクーポンは、それぞれ、単一の長さ4インチのプラスチック製ロックピンセットクリップを用いて、所定位置に保持した。一側面をロックピンセットクリップで保持されたテストクーポンを、600mLのHDPEビーカー中へと吊るし、室温で連続的に250rpmで攪拌されている200gのテスト溶液中に浸漬した。各試料クーポンを攪拌された溶液中に配置した直後に、600mLのHDPEビーカーの最上部を、Parafilm(登録商標)で覆い、再シールした。テストクーポンは、処理時間(概括的手順3A及び3Bに記載)が経過するまで、攪拌された溶液中に静的に保持した。テスト溶液中において処理時間が経過した後、試料クーポンをすぐに600mLのHDPEビーカーから出し、概括的手順3Aに沿ってリンスした。最終のIPAリンス工程の後、全てのテストクーポンを手持ちのガスブロアを用いた濾過済み窒素ガス吹き飛ばし(blow off)工程に供したが、前記ガスブロアはIPAの全ての痕跡を強制的に除去してテスト測定用の最終的な乾燥試料を製造した。
【0050】
<概括的手順3A:ブランケットテストクーポン>
概括的手順3に沿った2~10分の処理時間の直後、クーポンは、軽く攪拌された体積300mLの超純粋な脱イオン化(DI)水中に15秒間浸され、その後、軽く攪拌された300mLのイソプロピルアルコール(IPA)中に15秒間浸され、そして、軽く攪拌された300mLのイソプロピルアルコール(IPA)中で15秒間の最終リンスを行った。処理は、概括的手順3に沿って完了させた。
【0051】
[実施例1]
処方例1~9(FE-1からFE-8)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方及びテストの結果を表1にまとめる。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示されるように、FE-1からFE-3、及びFE-5からFE-8(タケサーフA-47Q、及び本開示に示されている様々なアミンを含む)は、全てが、SiGe25/SiNx、SiGe25/ポリシリコン、及びSiGe25/SiCOのエッチング選択性が比較的高いものであった。換言すれば、これらの処方は、エッチングプロセス中に露出している半導体基板上のSiNx、ポリシリコン、及びSiCOの除去を最小限に抑えつつ、SiGe膜を効果的に除去することができた。これらの処方のうちのいくつかは、比較的高いSiOxのエッチングレートを示すものの、低いSiOxのエッチングレート又は高いSiGe25/SiOxのエッチング選択性というのは、(好ましいものではあるが、)本開示のエッチング処方の目的の一部でしかない。本開示のエッチング処方は、たとえ比較的高いSiOxエッチングレートを示したとしても、なお意図した目的について満足いくものでありうる。
【0054】
比較用処方例1~8(CFE-1からCFE-8)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表2にまとめる。
【0055】
【表2】

【0056】
表2に示されるように、CFE-1はタケサーフA-47Q又はアミンを含んでいなかった。その結果、SiNxのエッチングレートが比較的高かった。CFE-2はタケサーフA-47Qを含んでいたが、アミンは含んでいなかった。この処方は、SiNxのエッチングレートがかなり低下したものとなり、ポリシリコンのエッチングレートは比較的高かった、という結果になった。CFE-3は、タケサーフA-47Qが他のスルホン酸に置き替えられたこと以外は、CFE-2と同じものであった。この処方もまた、ポリシリコンのエッチングレートが比較的高かった、という結果になっている。CFE-4はタケサーフA-47Qを含み、アミンは含まず、添加物(すなわちPVP)を含んでいた。この処方は、ポリシリコンのエッチングレートが比較的低かったものの、SiGeのエッチングレートは低下したという結果になった。CFE-5は、タケサーフA-47Qが他のスルホン酸に置き替えられたこと以外は、CFE-4と同じものであった。この処方もまた、SiGeのエッチングレートが比較的低かったという結果になっている。CFE-6及びCFE-7は、これら2つの処方には本開示に記載の式(I)で示されるアミンが加えられていること以外は、CFE-1と同じであった。これらの2つの処方は、CFE-1と同様に、SiNxのエッチングレートが比較的高かったという結果になっている。CFE-8はHFを含まず、タケサーフA-47Qを含まず、アミンを含んでいなかった。この処方は、本開示に記載のエッチング組成物により除去されるべき目的の材料であるSiGeを全くエッチングしなかったという結果となった。
【0057】
[実施例2]
処方例9及び10(FE-9及びFE-10)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表3にまとめる。
【0058】
【表3】
【0059】
表3に示されるように、FE-9及びFE-10は、その処方に添加剤(すなわち糖アルコール)を含んでいた。結果は、両方の処方が、SiGe25/SiNx、SiGe25/ポリシリコン、及びSiGe25/SiCOの優れたエッチング選択性を示したことを示している。
【0060】
[実施例3]
処方例11~15(FE-11からFE-15)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表4にまとめる。
【0061】
【表4】
【0062】
表4に示されるように、FE-11からFE-15は、含まれる水のパーセンテージが徐々に増え、含まれるHF、H、及び酢酸のパーセンテージが徐々に減少するものだった。これらの結果は、水のパーセンテージが増加するにつれて、SiGe25のエッチングレートが減少し、一方でSiOxのエッチングレートもまた減少したことを示している。換言すると、これらのデータは、エッチングプロセスにおいて水がSiGe及びSiOxのエッチングレートを抑制することができる、ということを示している。
【0063】
[実施例4]
処方例16~21(FE-16からFE-21)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表5にまとめる。
【0064】
【表5】

【0065】
表5に示されるように、FE-16は有機溶剤を含まず、FE-17からFE-21は異なる水溶性有機溶剤を含んでいた。結果は、処方FE-16からFE-19、及びFE-21は、SiGe25/SiNx、SiGe25/ポリシリコン、及びSiGe25/SiCOの比較的高いエッチング選択性を示したことを示した。FE-20についての関連データは測定されなかった。さらに、理論に拘束されることを望むものではないが、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、及び1,3-プロパンジオールは、SiOxのエッチングレートを抑制することができる、と考えられる。
【0066】
[実施例5]
処方例22~31(FE-22からFE-31)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表6にまとめる。
【0067】
【表6】

【0068】
表6に示されるように、処方FE-22からFE-31は、異なる添加剤を含んでいた。結果は、処方FE-22からFE-27、及びFE-29からFE-31は、SiGe25のエッチングレートが比較的高く、SiOxのエッチングレートが比較的低かったことを示した。特に、処方FE-28からFE-31の結果は、ホウ酸の量が0.01%から0.25%に増えるにつれて、SiGe25のエッチングレート及びSiOxのエッチングレートの両方が減少したことを示している。処方FE-28は、SiGe25のエッチングレートもSiOxのエッチングレートも低く、これは存在するホウ酸の量が多い(すなわち0.25%)ことに起因すると考えられる。
【0069】
[実施例6]
処方例32~37(FE-32からFE-37)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表7にまとめる。
【0070】
【表7】

【0071】
表7に示されるように、処方FE-32からFE-37は、添加剤として、フェニルボロン酸又はナフタレン-1-ボロン酸のいずれかを含んでいた。結果は、全ての処方が、SiGe25/SiNx、SiGe25/ポリシリコン、及びSiGe25/SiCOの比較的高いエッチング選択性を示したことを示した。また、SiOxのエッチングレートは比較的低かった。
【0072】
[実施例7]
比較処方例9~12(CFE-9からCFE-12)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表8にまとめる。
【0073】
【表8】
【0074】
表8に示されるように、処方CFE-9からCFE-12は、水酸化水素及び酢酸を含んでいなかった。結果は、処方CFE-9、CFE-11,及びCFE-12は、SiOxのエッチングレートが比較的高かったことを示した。処方CFE-10のSiOxのエッチングレートは比較的低かったが、本開示のエッチング組成物により除去されるべき目的の材料であるSiGeを除去するためのエッチングレートも比較的低かった。
【0075】
[実施例8]
処方例38~44(FE-38からFE-44)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表9にまとめる。
【0076】
【表9】
【0077】
処方FE-38、FE-40、及びFE-41は、黄褐色の沈殿を含んでいたが、それは、各処方における水及び有機溶剤の含有量が比較的少ないことに起因して溶液から沈殿したタケサーフA-47Qであると考えられる。一方で、他の4つの処方は沈殿を含んでいなかったが、このことはそれらの処方では全ての溶質が溶解していたことを示している。
【0078】
表9に示されるように、これらの処方の全て(データを測定しなかったFE-42を除く)で、SiOxのエッチングレートが比較的低かった。さらに、処方FE-38からFE-40は、SiGe/SiNx、SiGe/ポリシリコン、及びSiGe/SiCOの比較的高いエッチング選択性を示した。
【0079】
[実施例9]
処方例45~52(FE-45からFE-52)を概括的手順1に沿って調製し、概括的手順2及び3Aに沿って評価した。処方とテストの結果を表10にまとめる。
【0080】
【表10】

【0081】
表10に示されるように、処方FE-45からFE-52は、酢酸に替わって無水酢酸を含んでおり、添加剤としてフェニルボロン酸(PBA)を含んでいた。結果は、全ての処方で、SiGeのエッチングレートが比較的高く、SiOxのエッチングレートが比較的低かったことを示した。さらに、処方FE-50及びFE-52は、SiGe/SiNx、SiGe/ポリシリコン、及びSiGe/SiCOの比較的高いエッチング選択性を示した。
【0082】
本発明を、その特定の実施形態を引用して詳細に説明したが、改変及び変形もまた、記載されクレームされている事項の精神及び範囲の中に入るものであると理解される。
【0083】
[関連出願への相互参照]
本願は2019年2月28日に出願された米国仮特許出願第62/811,600号、及び2018年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/774,382号からの優先権を主張し、これらの出願の内容は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
【0084】
本開示に係る態様には以下の態様も含まれる。
<1> 少なくとも1種のフッ素含有酸、ここで、前記少なくとも1種のフッ素含有酸はフッ化水素酸又はヘキサフルオロケイ酸を含む;少なくとも1種の酸化剤;少なくとも1種の有機酸又はその無水物、ここで、前記少なくとも1種の有機酸はギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸を含む;少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸;少なくとも1種のアミン、ここで、前記少なくとも1種のアミンは式(I):N-Rのアミンを含み、Rは任意に(optionally)OH又はNHで置換されているC~Cのアルキルであり、RはH又は任意に(optionally)OHで置換されているC~Cのアルキルであり、かつ、Rは任意に(optionally)OHで置換されているC~Cのアルキルである;及び水、を含むエッチング組成物。
<2> 前記少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸が、以下の構造を有するスルホン酸を含む、<1>に記載の組成物。
【化2】

ここで、nは3~6である。
<3> 前記少なくとも1種の重合したナフタレンスルホン酸が、前記組成物の約0.005重量%から約0.15重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<4> 前記式(I)のアミンが、ジイソプロピルアミン、N-ブチルジエタノールアミン、N-(3-アミノプロピル)-ジエタノールアミン、N-オクチルグルカミン、N-エチルグルカミン、N-メチルグルカミン、又は1-[ビス(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-プロパノールである、<1>に記載の組成物。
<5> 前記少なくとも1種のアミンが、前記組成物の約0.001重量%から約0.15重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<6> 前記少なくとも1種のフッ素含有酸が、前記組成物の約0.1重量%から約2重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<7> 前記少なくとも1種の酸化剤が、過酸化水素又は過酢酸を含む、<1>に記載の組成物。
<8> 前記少なくとも1種の酸化剤が、前記組成物の約5重量%から約20重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<9> 前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、酢酸又は無水酢酸を含む、<1>に記載の組成物。
<10> 前記少なくとも1種の有機酸又はその無水物が、前記組成物の約30重量%から約90重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<11> 前記の水が、前記組成物の約20重量%から約75重量%の量で存在する、<1>に記載の組成物。
<12> 少なくとも1種の有機溶剤をさらに含む、<1>に記載の組成物。
<13> 前記少なくとも1種の有機溶剤が、アルコール又はアルキレングリコールエーテルを含む、<12>に記載の組成物。
<14> 前記少なくとも1種の有機溶剤が、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-プロパンジオール、又はエチレングリコールブチルエーテルを含む、<12>に記載の組成物。
<15> 前記少なくとも1種の有機溶剤が、前記組成物の約10重量%から約40重量%の量で存在する、<12>に記載の組成物。
<16> 少なくとも1種の糖アルコールをさらに含む、<1>に記載の組成物。
<17> 前記少なくとも1種の糖アルコールが、マンニトール又はソルビトールを含む、<16>に記載の組成物。
<18> 少なくとも1種のボロン酸をさらに含む、<1>に記載の組成物。
<19> 前記少なくとも1種のボロン酸が、フェニルボロン酸又はナフタレン-1-ボロン酸を含む、<18>に記載の組成物。
<20> 前記少なくとも1種のボロン酸が、前記組成物の約0.01重量%から約0.5重量%の量で存在する、<18>に記載の組成物。
<21> 前記組成物のpHが1~3である、<1>に記載の組成物。
<22> SiGe膜を含む半導体基板を<1>~<21>のいずれかに記載の組成物に接触させて、実質的に前記SiGe膜を除去することを含む方法。
<23> 前記SiGe膜が約10重量%から約25重量%のGeを含む、<22>に記載の方法。
<24> 前記接触工程の後に、リンス溶剤で前記半導体基板をリンスすることをさらに含む、<22>に記載の方法。
<25> 前記リンス工程の後に、前記半導体基板を乾燥させることをさらに含む、<24>に記載の方法。
<26> 前記方法がSiN、ポリシリコン、又はSiCOを実質的に除去しない、<22>に記載の方法。
<27> 半導体デバイスである、<22>に記載の方法で形成される物体。
<28> 前記半導体デバイスが集積回路である、<27>に記載の物体。