(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075012
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】織機における経糸ビームの中受け機構
(51)【国際特許分類】
D03D 49/00 20060101AFI20240527BHJP
D03D 49/02 20060101ALI20240527BHJP
D03D 49/06 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
D03D49/00
D03D49/02
D03D49/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186093
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000215109
【氏名又は名称】津田駒工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山岸 大吾
【テーマコード(参考)】
4L050
【Fターム(参考)】
4L050AA11
4L050CA01
4L050CA02
4L050CA10
4L050CC01
(57)【要約】
【課題】
本発明は、ツインビーム仕様の織機における2つの経糸ビームの内側の軸端部を支持する中受け機構に関し、両軸端部を隙間無くそれぞれ確実に支持することが可能な構成を提供することを目的とする。
【解決手段】
中受け機構が、両軸端部を支承可能なベース部材と、ベース部材との協働で両軸端部を挟み込むレバー部材と、各経糸ビームに対応して織幅方向に隣り合うように並設された2組のビーム支持列とを含む。各ビーム支持列は、ベース部材側の2以上の支承ローラと、レバー部材側の1以上の当接ローラを含む当接部とから成る。レバー部材は、揺動軸を中心として揺動可能に設けられると共に両当接部を支持する揺動部材を含む。揺動部材における両当接部の支持位置は、一方の当接部の支持位置と揺動軸の軸心とを結ぶ線分が他方の当接部の支持位置と軸心とを結ぶ線分に対し角度を成すような位置とされている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
織幅方向に関し並設された一対の経糸ビームにおける隣り合うフランジの間で両前記経糸ビームの軸端部を回転可能に支持する織機における経糸ビームの中受け機構であって、
両前記軸端部を支承可能なベース部材と、
前記ベース部材に対して回動可能に設けられるレバー部材であって前記ベース部材上で支承された状態の両前記軸端部を前記ベース部材との協働で挟み込むレバー部材と、
各前記経糸ビームに対応して前記織幅方向に隣り合うように並設された2組のビーム支持列とを含み、
各前記ビーム支持列は、前記ベース部材に備えられて前記軸端部を支承する2以上の支承ローラと、前記レバー部材に備えられて前記軸端部に当接する1以上の当接ローラを含む当接部とから成り、
前記レバー部材は、前記織幅方向と平行に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に設けられる揺動部材であって両前記当接部を支持する揺動部材を含み、
前記揺動部材における両前記当接部の支持位置は、一方の前記当接部の支持位置と前記揺動軸の軸心とを結ぶ線分が他方の前記当接部の支持位置と前記軸心とを結ぶ線分に対し角度を成すような位置とされている
ことを特徴とする織機における経糸ビームの中受け機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織幅方向に関し並設された一対の経糸ビームにおける隣り合うフランジの間で両経糸ビームの軸端部を回転可能に支持する織機における経糸ビームの中受け機構に関する。
【背景技術】
【0002】
織機における経糸ビームを回転可能に支持する支持構造として、例えば、特許文献1に開示されたものがある。その特許文献1に開示された支持構造は、織機の各サイドフレームに取り付けられた一対のビーム支持機構から成っている。また、各ビーム支持機構は、経糸ビームの軸端部を受け入れる円弧状の支承面が形成されたビームサポートと、ビームサポートに受け入れられた経糸ビーム(軸端部)を保持するためのクランプレバーとを有している。
【0003】
そして、クランプレバーは、経糸ビームを保持するクランプ位置と経糸ビームを開放する開放位置との間で回動し得るように、ビームサポートに対し回動可能に取り付けられている。さらに、クランプレバーは、経糸ビームの軸端部に当接する円弧面(支承面)を有している。そして、ビーム支持機構は、ビームサポートにおける支承面とクランプレバーの支承面とで経糸ビームの軸端部を挟み込むかたちで経糸ビームを支持するようになっている。
【0004】
なお、織機としては、2つ(一対)の経糸ビームを織幅方向に並設し、その両経糸ビームから引き出される経糸により製織を行う所謂ツインビーム仕様の織機がある。そして、そのようなツインビーム仕様の織機においては、経糸ビームは、前記のような一対のビーム支持機構で外側の軸端部を支持されるだけで無く、隣り合うフランジの間に設けられる中受け機構でその内側の軸端部を支持される。また、その中受け機構は、前記したビーム支持機構と同様に、経糸ビームの軸端部をビームサポートとクランプレバーとで挟み込むように構成されたものとされる。
【0005】
但し、ツインビーム仕様の織機においては、2つの経糸ビームを織幅方向に関し出来るだけ接近させた状態(フランジの間の隙間が出来るだけ小さい状態)で配置する必要がある。そのため、2つの経糸ビームにおける内側の各軸端部は、織幅方向の寸法が外側の軸端部と比較して非常に小さくされている。その上で、従来の織機は、その内側の軸端部を支持する中受け機構が2つの経糸ビームに共通の(単一の)構造体として構成され、2つの経糸ビームの軸端部を一緒に支持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、全ての経糸ビームは、基本的にはその軸端部の外径が同じとなるように製造される。しかし、実際には、その外径は、全ての経糸ビームにおいて完全に同じ径とはなっていない。そのため、前記のような共通の中受け機構では、ビームサポートの支承面とクランプレバーの支承面とで2つの経糸ビームの軸端部を同時に挟み込んで支持することになるが、そのように両軸端部の外径が異なることに起因し、外径の小さい方の軸端部が若干の隙間が生じた状態で支持された状態となる。
【0008】
そのため、織機の運転中に発生する振動に起因して、一方の経糸ビーム(外径の小さい方の軸端部)が中受け機構内において振動してしまう。そして、その振動によって軸端部が中受け機構におけるビームサポート及びクランプレバーの支承面に対して擦れる結果として、その軸端部や両支承面が摩耗する虞がある。さらに、そのような摩耗が生じると前記隙間が更に大きくなって経糸ビームの振動が更に大きくなり、延いては中受け機構の破損を招く虞がある。
【0009】
そこで、本発明は、ツインビーム仕様の織機における2つの経糸ビームの内側の軸端部を支持する中受け機構に関し、両軸端部を隙間無くそれぞれ確実に支持することが可能な構成を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のような経糸糊付装置を前提とし、中受け機構が、両軸端部を支承可能なベース部材と、ベース部材に対して回動可能に設けられるレバー部材であってベース部材上で支承された状態の両軸端部をベース部材との協働で挟み込むレバー部材と、各経糸ビームに対応して織幅方向に隣り合うように並設された2組のビーム支持列とを含むことを特徴とする。さらに、本発明は、各ビーム支持列が、ベース部材に備えられて軸端部を支承する2以上の支承ローラと、レバー部材に備えられて軸端部に当接する1以上の当接ローラを含む当接部とから成り、レバー部材は、織幅方向と平行に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に設けられる揺動部材であって両当接部を支持する揺動部材を含み、揺動部材における両当接部の支持位置は、一方の当接部の支持位置と揺動軸の軸心とを結ぶ線分が他方の当接部の支持位置と前記軸心とを結ぶ線分に対し角度を成すような位置とされていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の中受け機構は、各経糸ビームに対応して織幅方向に隣り合うように並設された2組のビーム支持列であって、ベース部材側の2以上の支承ローラとレバー部材側の1以上の当接ローラを含む当接部とから成るビーム支持列を含むように構成されている。さらに、レバー部材側の各当接部は、レバー部材において揺動軸を中心に揺動可能に設けられた揺動部材により、一方のビーム支持列における当接部の支持位置と揺動軸の軸心とを結ぶ線分が他方のビーム支持列における当接部の支持位置と前記軸心とを結ぶ線分に対し角度を成すように支持されている。それにより、ベース部材側の2以上の支承ローラで支承された経糸ビームの軸端部に対し、レバー部材を回動させることで、対応する当接部における当接ローラを確実に当接させた状態とすることができ、その軸端部を隙間無く確実に支持した状態とすることができる。
【0012】
より詳しくは、ベース部材側の2以上の支承ローラで支承された経糸ビームの軸端部に向けてレバー部材を回動させると、先ずは、レバー部材における2組のビーム支持列の一方における当接部(当接ローラ)が、その当接部に対応する経糸ビームの軸端部の周面に当接した状態となる。そして、その状態からさらにレバー部材を回動させると、一方の当接部が経糸ビーム(軸端部)に当接していることで、両当接部を支持する揺動部材が揺動し、他方のビーム支持列における当接部(当接ローラ)が、対応する経糸ビームの軸端部の周面に当接した状態となる。その結果として、両ビーム支持列は、それぞれの支承ローラ及び当接部の当接ローラにより、対応する経糸ビームの軸端部の周面に対し完全に当接した状態となる。その上で、レバー部材をベース部材に対して固定することで、両経糸ビームの軸端部が、対応するビーム支持列を介し、ベース部材とレバー部材とで隙間無く挟み込まれて支持された状態となる。
【0013】
このように、本発明の中受け機構によれば、両経糸ビームの軸端部を、対応するビーム支持列の支承ローラ及び当接ローラによって隙間無く確実に支持することができる。それにより、従来装置のように中受け機構との間に隙間が存在することに起因して外径の小さい方の軸端部が中受け機構内で振動することがほとんど無く、その振動によって軸端部や両支承面が摩耗することやその摩耗に起因する問題の発生を可及的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る一実施形態における織機の平面図である。
【
図3】本発明に係る一実施形態における中受け機構の側面図である。
【
図4】本発明に係る一実施形態におけるビーム支持列の斜視図である。
【
図5】本発明に係る別の実施形態における中受け機構の簡易側面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下では、
図1~
図4に基づき、本発明が適用された織機の一実施形態(実施例)について説明する。なお、本発明が適用される織機は、前述のように、2つ(一対)の経糸ビームを織機の織幅方向に並設したツインビーム仕様の織機である。
【0016】
織機1は、一対のサイドフレーム3、3を複数(4つ)の梁材4で連結して形成されたフレーム2を主体として構成されている。その上で、一対の経糸ビーム5、5は、互いの軸心を略一致させると共に前記織幅方向に並設される状態で、フレーム2に対し支持されるかたちで織機上に設けられている。なお、各経糸ビーム5は、経糸が巻回される軸形状の巻回部6と、巻回部6の両側に位置する円板形状の一対のフランジ7、7と、各フランジ7の外側に位置する軸端部8、9とで構成されている。以下の説明では、各経糸ビーム5の両軸端部について、両経糸ビーム5、5が織機上に配置された状態において、内側に位置する軸端部8を内側軸端部と言い、外側に位置する軸端部9を外側軸端部と言う。
【0017】
その織機における両経糸ビーム5、5の支持について、各サイドフレーム3には、経糸ビーム5の外側軸端部9を支持するための外側支持機構10が、その内側壁に取り付けられるかたちで設けられている。なお、その外側支持機構10について、それ自体は織機の技術分野において周知の構成であることから詳細な説明は省略するが、サイドフレーム3に固定されるビームサポート及びビームサポートに設けられたクランプレバーを含み、ビームサポートに形成された円弧溝に外側軸端部9を受け入れると共に、軸受を介してビームサポートとクランプレバーとで外側軸端部9を挟み込むことで、その外側軸端部9を回転可能に支持するようになっている。
【0018】
その上で、経糸ビーム5の内側軸端部8については、前記織幅方向における織機の中央部に設けられた中受け機構20により、回転可能に支持される。その中受け機構について、本発明では、その中受け機構が、両経糸ビーム5、5の内側軸端部8、8を支承可能なベース部材と、ベース部材に対して回動可能に設けられるレバー部材であってベース部材上で支承された状態の両内側軸端部8、8をベース部材との協働で挟み込むレバー部材と、各経糸ビーム5に対応して前記織幅方向に隣り合うように並設された2組のビーム支持列とを含むように構成されている。
【0019】
そして、その各ビーム支持列は、ベース部材に備えられて軸端部を支承する2以上の支承ローラと、レバー部材に備えられて軸端部に当接する1以上の当接ローラを含む当接部とから成っている。さらに、そのレバー部材は、前記織幅方向と平行に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に設けられる揺動部材であって両当接部を支持する揺動部材を含んでいる。その上で、レバー部材は、揺動部材上における両当接部の支持位置が、一方の当接部の支持位置と揺動軸の軸心とを結ぶ線分が他方の当接部の支持位置と前記軸心とを結ぶ線分に対し角度を成すような位置となるように構成されている。
【0020】
以下に、本実施例におけるその中受け機構20について、詳細に説明する。但し、本実施例の中受け機構20は、各ビーム支持列が、ベース部材側に設けられる2つの支承ローラとレバー部材側に設けられる単一の当接ローラとから成り、対応する経糸ビーム5の内側軸端部8をその3つのローラによって3点で支持するように構成された例である。
【0021】
中受け機構20は、両経糸ビーム5、5の内側軸端部8を受け入れるためのベース部材30と、そのベース部材30に受け入れられた内側軸端部8の位置を保持するためのレバー部材60とを有している。
【0022】
ベース部材30は、板状の部材であって、その板厚方向の寸法が、経糸ビーム5における内側軸端部8のフランジ7からの突出長さに対し、その2倍よりも若干大きい程度の大きさであるように形成された部材となっている。また、そのベース部材30は、その板厚方向に見て、略L字形を成すように形成されている。
【0023】
より詳しくは、ベース部材30は、内側軸端部8を受け入れるための支承部40と、支承部40へ向けて経糸ビーム5を案内するために支承部40から延びる案内部50とから成り、その支承部40と案内部50とが一体的に組み合わされて構成されている。それらのうち、支承部40は、前記板厚方向に見て、概観的には矩形状を成している。また、案内部50は、前記板厚方向に見て、略台形状を成し、支承部40の短辺方向における両側面のうちの一方の側面から突出するように形成されている。但し、前記のようにベース部材30はL字形を成すものであり、案内部50の支承部40に対する大きさ及び組み合わせは、そのL字形が形成されるものとなっている。
【0024】
また、支承部40において、前記一方の側面は、案内部50が突出する部分を除く部分が、その大部分において円弧面であるように形成されている。また、その円弧面は、案内部50の側面であって経糸ビーム5を案内する面(案内面)が連続するように形成されている。なお、この円弧面は、経糸ビーム5における内側軸端部8を受け入れるための部分である。
【0025】
また、ベース部材30において、支承部40には、前記板厚方向に並設されるかたちで一対の支承ローラ41、42が設けられている。より詳しくは、各支承ローラ41、42は、内輪及び外輪から成り、内輪に対して外輪が回転可能であるように構成されている。また、支承部40には、前記円弧面に開口する収容溝43が形成されている。なお、その収容溝43は、前記板厚方向に見て円弧状を成す溝であって、支承ローラ41、42を収容可能な大きさに形成されている。また、その収容溝43は、両支承ローラ41、42を収容した状態で、支承ローラ41、42の外輪の一部が前記円弧面から若干突出した状態となるように形成されている。
【0026】
その上で、一対の支承ローラ41、42は、その軸心を互いに一致させて並べられた状態で、その収容溝43に対し収容されている。なお、その収容溝43に収容された状態での支承ローラ41、42の支承部40に対する取り付け(位置固定)は、一対のブラケット44、44を介して行われている。
【0027】
具体的には、支承部40には、前記板厚方向に関し、収容溝43の両側において収容溝43を覆うようなかたちで、一対の板状のブラケット44、44が取り付けられている。但し、そのブラケット44、44の大きさは、収容溝43に収容された状態の支承ローラ41、42に対し、前記板厚方向に見て、前記円弧面から突出する外輪の一部と重複しないような大きさとなっている。また、各支承ローラ41、42の内輪には、その軸心から偏心した位置に、前記板厚方向に貫通する2つの貫通孔が形成されている。さらに、両ブラケット44、44にも、その支承ローラ41、42の貫通孔に対応する位置に、前記板厚方向に貫通する貫通孔が形成されている。そして、両ブラケット44、44及び支承ローラ41、42の貫通孔に挿通されたネジ部材により、支承ローラ41、42の内輪がブラケット44、44に固定され、支承ローラ41、42がそのブラケット44、44を介して支承部40に支持された状態とされる。
【0028】
また、案内部50にも、前記した支承部40における一対の支承ローラ41、42と同様に、一対の支承ローラ51、52が設けられている。具体的には、一対の支承ローラ51、52は、案内部50に形成された収容溝53に収容され、一対のブラケット54、54を介して案内部50に支持された状態とされている。但し、その収容溝53は、案内部50における支承部40に近接した位置で前記案内面に開口するように形成されている。そして、一対の支承ローラ51、52は、そのように設けられた状態で、前記板厚方向に見て、その外輪の一部が前記案内面から突出した状態となっている。
【0029】
その上で、ベース部材30は、前記板厚方向を前記織幅方向に一致させると共に、織機1における送出し側を後側とする前後方向に関し、案内部50における前記円弧面が後方を向く向きで、フレーム2に対し取り付けられている。なお、フレーム2に対するベース部材30の取り付けについて、フレーム2には、そのサイドフレーム3、3を連結する4つの梁材のうちの後方側の上下の梁材4、4に対し、ブラケット31が取り付けられている。その上で、ベース部材30は、その支承部40においてネジ部材等によってそのブラケット31に固定されることで、そのブラケット31を介してフレーム2(梁材4、4)に取り付けられて支持された状態となっている。また、ベース部材30は、そのようにフレーム2に取り付けられた状態で、案内部50の先端側(支承部40側とは反対側)においても、床面と案内部50の下面との間に介装された支持スタンド32により支持されている。
【0030】
レバー部材60は、主体となる部分(主体部)61がレバー状を成す部材である。但し、その主体部61は、その板厚方向に見て、略中央部において鈍角を成して屈曲された形状となっている。また、レバー部材60の板厚方向の寸法は、ベース部材30の板厚方向の寸法と略同じとなっている。そして、レバー部材60は、その板厚方向をベース部材30の板厚方向と一致させた状態で、その一端側においてベース部材30における支承部40に対し連結されている。なお、その連結状態では、そのようにレバー部材60の板厚方向とベース部材30の板厚方向とは一致しており、また、前述のようにベース部材30の板厚方向は前記織幅方向と一致している。そこで、以下では、その方向を(前記)織幅方向と称して説明する。
【0031】
また、ベース部材30(支承部40)に対するレバー部材60の連結について、支承部40の上端部においては、軸線が前記織幅方向と平行を成すようなかたちで連結ピンが取り付けられている。そして、レバー部材60は、その連結ピンを介して支承部40と連結されている。それにより、レバー部材60は、その連結ピンを中心として支承部40に対し回動可能となっている。
【0032】
その上で、そのレバー部材60における主体部61には、揺動部材としての二股レバ64が取り付けられると共に、その二股レバ64に対し当接部としての当接ローラ65、66が取り付けられている。より詳しくは、主体部61には、その略中央部に、ベース部材30側に開口すると共に前記織幅方向に開放された略逆三角形状の凹部62が形成されている。また、主体部61には、前記織幅方向における凹部62の両側において、その凹部62の大部分を覆うようなかたちで、板状のブラケット67、67が取り付けられている。そして、凹部62内には、そのブラケット67、67に架設されるかたちで、揺動軸63が設けられている。
【0033】
二股レバ64は、板状の2つのアーム64a、64aがその一端において板厚方向に重ねられてV字状を成すと共に、その2つのアーム64a、64aが一体的に形成された部材である。したがって、二股レバ64は、その板厚方向に見て両アーム64a、64aが重複した部分を有すると共に、両アーム64a、64aがその板厚方向に位置を異ならせた構成となっている。また、両アーム64a、64aの板厚方向の寸法は、主体部61に取り付けられたブラケット67、67の間隔の1/2よりも若干小さく、したがって、その重複部分の板厚方向における寸法は、ブラケット67、67の間隔よりも若干小さい大きさとなっている。
【0034】
その上で、その二股レバ64は、前記重複部分に形成された貫通孔に対しブラケット67、67間に架設された揺動軸63が挿通されるかたちで、その揺動軸63に対し揺動可能に支持されている。それにより、二股レバ64は、揺動軸63を中心として、主体部61に対し揺動可能に設けられた状態となっている。また、そのように設けられた状態では、二股レバ64の前記織幅方向における位置は、両側のブラケット67、67によって規制されている。
【0035】
そして、その二股レバ64における各アーム64aの他端には、当接ローラ65、66がそれぞれ取り付けられている。より詳しくは、各当接ローラ65、66は、内輪及び外輪から成り、内輪に対して外輪が回転可能であるように構成されている。また、各当接ローラ65、66の内輪には、その軸心から偏心した位置に、板厚方向に貫通する2つの貫通孔が形成されている。さらに、二股レバ64における各アーム64aの他端にも、その当接ローラ65、66の貫通孔と同じ間隔で板厚方向に貫通する貫通孔が形成されている。そして、当接ローラ65、66が、二股レバ64の各アーム64a及び各当接ローラ65、66の貫通孔に挿通されたネジ部材により、二股レバ64における各アーム64aの他端に取り付けられている。
【0036】
但し、その当接ローラ65、66の取り付けは、対応する一方のアーム64aにおける板厚方向の両側面のうち、他方のアーム64a側となる側面に対して行われている。したがって、両当接ローラ65、66は、そのように取り付けられた状態において、前記織幅方向に関し互いの位置が重複せず、更には、前記前後方向に見て隣り合うように設けられた状態となっている。
【0037】
そして、そのように当接ローラ65、66が二股レバ64を介して主体部61に設けられる結果として、その前記織幅方向に隣り合う2つの当接ローラ65、66と、ベース部材30側で前記織幅方向に並設された支承部40側の一対の支承ローラ41、42及び案内部50側の一対の支承ローラ51、52とは、前記織幅方向に関し、その位置が略一致した状態となる。
【0038】
すなわち、経糸ビーム5の内側軸端部8を支持するために収容するベース部材30とレバー部材60とで画定される空間の周りにおいて、前記織幅方向に関し、一方の当接ローラ65と一方の支承ローラ41、51とが略同じ位置で列を成した状態となり、他方の当接ローラ66と他方の支承ローラ42、52とが略同じ位置で列を成した状態となる。そして、それらの当接ローラ65と支承ローラ41、51との組、及び当接ローラ66と支承ローラ42、52との組のそれぞれが、対応する経糸ビーム5の内側軸端部8を支持するためのビーム支持列となる。なお、以下では、その当接ローラ65、支承ローラ41、51から成るビーム支持列を第1ビーム支持列B1とし、当接ローラ66、支承ローラ42、52から成るビーム支持列を第2ビーム支持列B2とする。
【0039】
また、二股レバ64が前記のように略V字を成すように構成されると共に各アーム64aの他端に当接ローラ65、66が支持されていることから、その二股レバ64における当接ローラ65、66の支持位置は、一方の当接ローラ65の軸心(支持位置)と揺動軸63の軸心を結ぶ線分が、他方の当接ローラ66の軸心(支持位置)と揺動軸63の軸心を結ぶ線分に対し、前記織幅方向に見て角度を成すような位置となっている。
【0040】
そして、中受け機構20は、経糸ビーム5の内側軸端部8を挟み込む位置まで回動された状態のレバー部材60をその位置において保持するための保持機構70を有している。なお、本実施例では、その保持機構70は、ベース部材30における案内部50の先端に形成された貫通孔に挿通したネジ部材を、レバー部材60における主体部61の先端に形成された雌ネジ孔に螺挿することでそのレバー部材60の位置を保持するように構成されたものとなっている。また、その保持機構70は、そのネジ部材の螺挿量を変化させることで、そのレバー部材60とベース部材30とによる経糸ビーム5(内側軸端部8)を挟み込む力(クランプ力)が調整できるようになっている。
【0041】
以上のように構成された本実施例の中受け機構20によれば、両経糸ビーム5、5の内側軸端部8の支持は、以下のように行われる。
【0042】
先ず初めに、前記織幅方向に並べられる2つの経糸ビーム5、5のうちの一方の経糸ビーム5における内側軸端部8を、第1ビーム支持列B1におけるベース部材30側の支承ローラ41、51上に載置した状態とすると共に、他方の経糸ビーム5における内側軸端部8を、第2ビーム支持列B2における支承ローラ42、52上に載置した状態とする。その上で、レバー部材60をベース部材30側へ向けて回動させる。それにより、先ずはレバー部材60における二股レバ64に支持された2つの当接ローラ65、66のいずれか、例えば第1ビーム支持列B1における当接ローラ65が、対応する一方の経糸ビーム5における内側軸端部8の周面に当接した状態となる。そして、その状態から更にレバー部材60を回動させると、第1ビーム支持列B1の当接ローラ65が一方の経糸ビーム5における内側軸端部8に当接していることで、二股レバ64が揺動し、第2ビーム支持列B2の当接ローラ66が他方の経糸ビーム5における内側軸端部8の周面に当接した状態となる。
【0043】
その結果として、その中受け機構20においては、第1ビーム支持列B1を構成する支承ローラ41、51及び当接ローラ65、並びに第2ビーム支持列B2を構成する支承ローラ42、52及び当接ローラ66が、それぞれ対応する経糸ビーム5の内側軸端部8の周面に対し3点で完全に当接した状態となる。その上で、保持機構70でレバー部材60をベース部材30に対して固定する(両内側軸端部8、8に対しクランプ力を作用させた状態とする)ことで、両経糸ビーム5、5の内側軸端部8が、対応するビーム支持列B1、B2を介し、ベース部材30とレバー部材60とで隙間無く挟み込まれて支持された状態となる。
【0044】
このように、その中受け機構20によれば、両経糸ビーム5、5の内側軸端部8を、支承ローラ41、42、51、52及び当接ローラ65、66で構成される2つのビーム支持列B1、B2によって隙間無く確実に支持した状態とすることができる。それにより、従来装置のように中受け機構との間に隙間が存在することに起因して一方(外径の小さい方)の軸端部が中受け機構内で振動することがほとんど無く、その振動によって軸端部や中受け機構の支承面が摩耗することやその摩耗に起因する問題の発生を可及的に防止することができる。
【0045】
以上では、本発明が適用された織機の一実施形態(以下、「前記実施例」と言う。)について説明した。しかし、本発明は、前記実施例において説明した構成に限定されるものではなく、以下のような別の実施形態(変形例)での実施も可能である。
【0046】
(1)ビーム支持列における当接部について、前記実施例では、揺動部材としての二股レバ64における各アーム64aの他端に対し当接部としての当接ローラ65、66が取り付けられている。すなわち、前記実施例では、各ビーム支持列B1、B2における当接部が、1つの当接ローラから成っている。しかし、本発明の中受け機構において、当接部は、2以上の当接ローラを含むように構成されても良い。
【0047】
例えば、当接部は、
図5に示すように、2つの当接ローラを含むように構成されても良い。より詳しくは、当接部80、81は、V字状を成すように形成された支持レバ80a、81aと、支持レバ80a、81aの各先端に取り付けられる当接ローラ80b、80c、81b、81cとで構成されている。そして、その各当接部80、81は、支持レバ80a、80bにおいて、レバー部材60に支持された二股レバ64における対応するアーム64a、64aに対し揺動可能に取り付けられている。なお、支持レバ80a(81a)に対する2つの当接ローラ80b、80c(81b、81c)の取り付けは、前記織幅方向に関し、2つの当接ローラ80b、80c(81b、81c)が略同じ位置となるように行われている。その上で、二股レバ64に対する当接部80、81(支持レバ80a、81a)の取り付けは、一方の支持レバ80aに取り付けられた2つの当接ローラ80b、80cと、他方の支持レバ81aに取り付けられた2つの当接ローラ81b、81cとが、前記前後方向に見て隣り合って設けられた状態となるように行われている。
【0048】
そして、そのように当接部が構成された中受け機構において、前記実施例と同様に両経糸ビーム5、5の内側軸端部8がベース部材側の支承ローラによって支承された状態でレバー部材60を回動させると、例えば、一方の当接部80における1つの当接ローラ80b、及び他方の当接部81における1つの当接ローラ81bが、それぞれ対応する経糸ビーム5における内側軸端部8の周面に対し当接した状態となる。その上で、その状態から更にレバー部材60を回動させると、支持レバ80a、81aが揺動し、各当接部80、81における残りの当接ローラ80c、81cが、それぞれ対応する経糸ビーム5における内側軸端部8の周面に対し当接した状態となる。そして、保持機構70で両内側軸端部8、8に対しクランプ力を作用させた状態とすることで、両経糸ビーム5、5の内側軸端部8のそれぞれが、各ビーム支持列における2つの当接ローラと2つの支持ローラとに対し、4点で完全に当接して支持された状態となる。
【0049】
(2)ビーム支持列における支承ローラについて、前記実施例では、各ビーム支持列B1、B2に備えられる支承ローラは、それぞれ2つ(支承ローラ41、51、及び支承ローラ42、52)となっている。しかし、本発明の中受け機構においては、各ビーム支持列が3以上の支承ローラを備えるように構成されていても良い。例えば、各ビーム支持列が3つの支承ローラを備えるように構成される場合には、ベース部材において、前記実施例の支承部40に設けられる支承ローラ41、42と案内部50に設けられる支承ローラ51、52との間(中間)に、前記織幅方向に並べられた2つの支承ローラが設けられるように中受け機構を構成すれば良い。但し、その中間に設けられる支承ローラは、当然ながら、対応する経糸ビーム5の内側軸端部8が両側の支承ローラに当接した状態で、その内側軸端部8の周面に対し当接することが可能な位置に設けられる。
【0050】
また、前記実施例では、2つのビーム支持列B1、B2に備えられる支承ローラ41、42、51、52について、一方のビーム支持列の支承ローラは、そのビーム支持列に専用のローラであって、他方のビーム支持列の支承ローラとは別部材として形成されたローラとなっている。しかし、本発明においては、中受け機構は、単一の(共通の)ローラが両ビーム支持列の支承ローラとして機能するように設けられた構成であっても良い。具体的には、例えば前記実施例の構成において、収容溝43(53)に設けられるローラを、2つの支承ローラ41、42(支承ローラ51、52)に代えて、両経糸ビーム5、5の内側軸端部8に対し当接することが可能であるように構成された単一のローラとすれば良い。
【0051】
(3)揺動部材について、前記実施例では、板状の2つのアーム64a、64aがV字状を成すように重ねられて一体的に形成された二股レバ64が揺動部材として機能するようになっている。しかし、本発明において、揺動部材は、別体で形成された板状の2つのアームを、V字状を成すように重ね合わせた上でネジ部材等で一体的に組み合わせたかたちに構成されたものであっても良い。
【0052】
さらに、揺動部材は、各ビーム支持列の当接部を支持する部材であって、その両当接部の支持位置が、一方の当接部の支持位置と揺動軸の軸心とを結ぶ線分が他方の当接部の支持位置と揺動軸の軸心とを結ぶ線分に対し角度を成すような位置となるように構成されていれば良い。したがって、揺動部材は、前記実施例の二股レバ64のようにV字状を成すように形成されたものにも限られず、例えば、三角形状の板材で構成されても良い。但し、その場合には、揺動部材は、その板厚方向に見て、三角形における3つの頂点のうちの1つの頂点付近の位置で揺動軸を介してレバー部材に支持されると共に、残りの2つの頂点付近の各位置で対応する当接部を支持するように構成されたものとされる。
【0053】
また、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 織機
2 フレーム
3 サイドフレーム
4 梁材
5 経糸ビーム
6 巻回部
7 フランジ
8 軸端部(内側軸端部)
9 軸端部(外側軸端部)
10 外側支持機構
20 中受け機構
30 ベース部材
31 ブラケット
32 支持スタンド
40 支承部
41 支承ローラ
42 支承ローラ
43 収容溝
44 ブラケット
50 案内部
51 支承ローラ
52 支承ローラ
53 収容溝
54 ブラケット
60 レバー部材
61 主体部
62 凹部
63 揺動軸
64 二股レバ
64a アーム
65 当接ローラ
66 当接ローラ
67 ブラケット
70 保持機構
80 当接部
80a 支持レバ
80b 当接ローラ
80c 当接ローラ
81 当接部
81a 支持レバ
81b 当接ローラ
81c 当接ローラ
B1 第1ビーム支持列
B2 第2ビーム支持列
【手続補正書】
【提出日】2023-08-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明は、前述のようなツインビーム仕様の織機における経糸ビームの中受け機構を前提とし、中受け機構が、両軸端部を支承可能なベース部材と、ベース部材に対して回動可能に設けられるレバー部材であってベース部材上で支承された状態の両軸端部をベース部材との協働で挟み込むレバー部材と、各経糸ビームに対応して織幅方向に隣り合うように並設された2組のビーム支持列とを含むことを特徴とする。さらに、本発明は、各ビーム支持列が、ベース部材に備えられて軸端部を支承する2以上の支承ローラと、レバー部材に備えられて軸端部に当接する1以上の当接ローラを含む当接部とから成り、レバー部材は、織幅方向と平行に設けられた揺動軸を中心として揺動可能に設けられる揺動部材であって両当接部を支持する揺動部材を含み、揺動部材における両当接部の支持位置は、一方の当接部の支持位置と揺動軸の軸心とを結ぶ線分が他方の当接部の支持位置と前記軸心とを結ぶ線分に対し角度を成すような位置とされていることを特徴とする。
以上