(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075026
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】内装部品
(51)【国際特許分類】
B60R 7/06 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
B60R7/06 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186135
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】591028751
【氏名又は名称】株式会社豊和化成
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大池 秀和
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022CA08
3D022CC02
3D022CD17
3D022CD29
3D022CD30
(57)【要約】
【課題】面を断面くの字状に立体的に弯曲させた形状を持つ基材の表面に、表皮材を予め立体的に縫製することなく、かつしわを発生させることなく取り付けた内装部品を提供する。
【解決手段】本発明の内装部品は、樹脂製の基材の外表面を表皮材で覆った内装部品であり、樹脂製の基材は、面を断面くの字状に立体的に弯曲させ、少なくとも弯曲辺には所定高さの立上壁が形成された形状である。表皮材の対向する2辺の端部には弾性を持つ樹脂芯材が縫い付けられており、樹脂芯材を基材の弯曲辺に形成された立上壁の裏側に弯曲辺の形状を利用して弾性的に折り返すことにより、表皮材の対向する2辺を基材の裏側に密着させた。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の基材の外表面を表皮材で覆った内装部品であって、
樹脂製の基材は、面を断面くの字状に立体的に弯曲させ、少なくとも弯曲辺には所定高さの立上壁が形成された形状であり、
表皮材の対向する2辺の端部には弾性を持つ樹脂芯材が縫い付けられており、
樹脂芯材を基材の弯曲辺に形成された立上壁の裏側に弯曲辺の形状を利用して弾性的に折り返すことにより、表皮材の対向する2辺を基材の裏側に密着させたことを特徴とする内装部品。
【請求項2】
基材の弯曲辺の立上壁の内側には、折り返した樹脂芯材と表皮材を収納して固定する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の内装部品。
【請求項3】
基材の弯曲辺以外の2辺は直線状であり、表皮材の他の2辺は基材の裏面に折り返されてタッカーで固定されていることを特徴とする請求項1または2に記載の内装部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のグローブボックスの蓋等として用いられる弯曲形状の内装部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両の内装材のうちグローブボックスの蓋は、特許文献1に示される通り、面を断面くの字状に立体的に弯曲させた形状を備えている。特許文献1の
図4に示されているように、グローブボックスの蓋は樹脂の一体成形品であり、表皮材で覆われていないものが一般的である。
【0003】
しかし車両の内装品質を高めるために、グローブボックスの蓋の外面にも表皮材を取付けたいとの要求がある。樹脂製の内装材に表皮材を取り付けるには、表皮材を基材の外面に密着させ、表皮材の周縁部を基材の裏面に折返し、タッカー等により基材に固定するのが普通である。しかし基材が面を断面くの字状に立体的に弯曲させた形状である場合、表皮材を折り返す際に弯曲部にしわが発生し易くなる。このため表面にしわが出ないように表皮材を強く引っ張りながらタッカーを打つ必要があるが、この作業にはかなりの熟練を要することとなる。
【0004】
熟練者でない作業員が行っても、屈曲部におけるしわの発生を抑制することができるようにするためには、表皮材を弯曲した基材の形状に対応させて予め縫製しておき、これを基材に被せるように取付ける方法が考えられる。しかしこのためには表皮材をいくつかのパーツに裁断したうえで、弯曲した基材の形状に対応させて立体的に縫製する必要がある。このため裁断や立体縫製に多くの工数を必要とし、コストアップの要因となるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、面を断面くの字状に立体的に弯曲させた形状を持つ基材の表面に、表皮材を予め立体的に縫製することなく、かつしわを発生させることなく取り付けた内装部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の内装部品は、樹脂製の基材の外表面を表皮材で覆った内装部品であって、樹脂製の基材は、面を断面くの字状に立体的に弯曲させ、少なくとも弯曲辺には所定高さの立上壁が形成された形状であり、表皮材の対向する2辺の端部には弾性を持つ樹脂芯材が縫い付けられており、樹脂芯材を基材の弯曲辺に形成された立上壁の裏側に弯曲辺の形状を利用して弾性的に折り返すことにより、表皮材の対向する2辺を基材の裏側に密着させたことを特徴とするものである。
【0008】
なお、基材の弯曲辺の立上壁の内側には、折り返した樹脂芯材と表皮材を収納して固定する凹部が形成されていることが好ましい。また、基材の弯曲辺以外の2辺は直線状であり、表皮材の他の2辺は基材の裏面に折り返されてタッカーで固定されている構造とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内装部品は、表皮材の対向する2辺の端部に縫い付けられたは弾性を持つ樹脂芯材を、基材の弯曲辺に形成された立上壁の裏側に弯曲辺の形状を利用して弾性的に折り返すことにより、表皮材の対向する2辺を基材の裏面に密着させた構造である。このため、表皮材を予め縫製することなく、かつ弯曲部にしわを発生させることなく、表皮材を基材の表面に取付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】基材の裏面を上向きとして示す斜視図である。
【
図4】折り曲げ時の樹脂芯材の動きを示す模式図である。
【
図5】折り曲げ時の樹脂芯材の動きを示す説明図である。
【
図6】表皮材の端縁をリブの凹部に差し込んだ状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に本発明の実施形態を説明する。この実施形態の内装部品は、グローブボックスの蓋として用いられるものである。
図1は基材10をその裏面を上向きとした状態の斜視図である。図示のようにその全体形状は、面を断面くの字状に立体的に弯曲させた形状である。11はほぼ平坦な第一面、12は第1面11から斜めに立ち上った第二面、13は第一面11と第二面12とを接続する屈曲部である。
【0012】
基材10の全体は立体的に弯曲した四辺形であり、第一面11の端縁14と第二面12の端縁15は直線状であるが、他の2辺は立体的に弯曲した弯曲辺16、17となっている。弯曲辺16、17には所定高さの立上壁18が形成されている。立上壁18の高さは必ずしもに全長にわたり一定とする必要はない。この実施形態では端縁15にも立上壁18よりも低い立上壁19が形成されている。
【0013】
基材10の裏面には補強用のリブ20や、グローブボックスの蓋を車体側に取付けるためのリブ21等が一体に形成されている。これらのリブ20、21は本発明の構成要素ではなく、車体の設計に合わせて適宜設けられるものである。
【0014】
図2に、上記の基材10の表面を覆うために基材10の表面に取付けられる表皮材30を示す。表皮材30は四辺形であり、基材10の弯曲辺16、17に対応する2辺の端部には弾性を持つ樹脂芯材31が縫い付けられている。樹脂芯材31としては、幅が5~15mm程度の一定幅で、厚さが0.5~2mm程度の樹脂バンドを用いることができる。樹脂芯材31は表皮材30に縫い付けることができ、ある程度の剛性と可撓性を持つものであればよい。
【0015】
表皮材30の他の2辺のうち、基材10の端縁14に対応する辺には折返し部32が一体に形成され、基材10の端縁15に対応する辺には折返し部33が形成されている。
図2から分かるように、表皮材30は平面状であり、立体形状に縫製する必要はないので、材料の打ち抜きと樹脂芯材31の縫い付けにより容易に製造可能である。なお、樹脂芯材31の長さは弯曲辺16、17の長さと一致させておくことが好ましいが、やや短くても差し支えない。
【0016】
この表皮材30は基材10の表面(
図1では基材10の下面)に密着配置され、樹脂芯材31を縫い付けた辺を、弯曲辺16、17の立上壁18の裏側に折り返す。この折返しの際の樹脂芯材31の機能を、
図3、
図4の模式図を用いて説明する。
【0017】
先ず
図3(A)の状態では樹脂芯材31は弯曲辺16、17の弯曲に応じて、紙面の奥行方向に弯曲しているだけである。しかし
図3(B)のように表皮材30の端縁を折り曲げようとすると、樹脂芯材31に応力が発生する。その理由を
図4の模式図を用いて説明する。なお
図4は応力発生の原理を説明するために、樹脂芯材31をその下辺3から折り曲げた図としてある。
【0018】
もし
図4(A)に示すように樹脂芯材31が直線上にあるときには、樹脂芯材31の上辺32の長さ(PQ間の距離)と下辺33の長さ(RS間の距離)は同一であり、矢印のように折り曲げてもこの関係は変わらないため、樹脂芯材31に応力は発生しない。
【0019】
しかし本発明では樹脂芯材31は弯曲辺16、17に沿って弯曲している。このため、
図4(B)に示すように折り曲げ前の初期状態においては樹脂芯材31の上辺32の長さ(PQ間の距離)と下辺33の長さ(RS間の距離)は同一であるが、矢印のように折り曲げようとすると、樹脂芯材31は左右の部分の折り曲げ方向が異なり内側に向かって折り曲げられるため、左右の部分が互いに接近する。その結果、樹脂芯材31に圧縮応力が発生する。樹脂芯材31の上辺32は下辺33よりも折り曲げ時の移動距離が大きいため圧縮応力もより大きくなり、
図4(B)のように弾性変形する。
【0020】
樹脂芯材31に発生する圧縮応力はある折り曲げ角度(中立角度)で最大となるが、その角度を超えると反転して減少に転じる。このため樹脂芯材31は中立角度を超えると、それ自体の弾性により反対側に折れ曲がり、
図4(C)のように反転して弯曲辺16、17の立上壁18の裏側に弾性的に密着する。このようにして表皮材30の2辺を基材10の弯曲辺16、17に取付けることができる。
【0021】
この
図4では樹脂芯材31の折り曲げ線を樹脂芯材31の下辺33としたが、実際には
図5に示すように樹脂芯材31の折り曲げ線は樹脂芯材31よりもやや離れた下方位置にある。このため樹脂芯材31に
図4(B)に示すような極端な変形は生じないが、樹脂芯材31の左右の部分が内側に折り曲げられ、応力が発生すること、中立角度を超えると反転することは
図4と変わらない。
【0022】
このようにして、表皮材30の2辺は弯曲辺16、17の立上壁18の裏側に弾性的に密着する。また表皮材30の他の2辺は直線状であるから、基材10の端縁14と端縁15の裏側に折返し、
図7のようにタッカー40により固定される。なお、表皮材30のコーナー部34も折り返して
図7のようにタッカー40により固定される。
【0023】
上記のように、弯曲辺16、17では樹脂芯材31の弾性を利用して表皮材30を基材10に密着させることができるが、
図6に示すように弯曲辺16、17の立上壁18の内側に凹部22を備えたリブ23を形成しておき、樹脂芯材31と表皮材30の端部をこの凹部22に差し込むようにすれば、より確実に表皮材30を基材10に固定することができる。
【0024】
図6はこのようにして基材10の表面に表皮材30が取り付けられた内装部品を示す。本発明の内装部品は基材10の弯曲辺16、17の弯曲形状と樹脂芯材31の弾性変形を利用して製造されたものであり、表皮材30を予め立体縫製することなく、かつ弯曲部にしわを発生させることなく、表皮材30を基材10の表面に取付けたものである。
【符号の説明】
【0025】
10 基材
11 第一面
12 第二面
13 屈曲部
14 第一面の端縁
15 第二面の端縁
16 弯曲辺
17 弯曲辺
18 立上壁
19 立上壁
20 補強用のリブ
21 リブ
22 凹部
23 リブ
30 表皮材
31 樹脂芯材
32 折返し部
33 折返し部
34 コーナー部
40 タッカー