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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075028
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】吊天井構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/30 20060101AFI20240527BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20240527BHJP
   E04B 9/22 20060101ALI20240527BHJP
   E04B 9/06 20060101ALI20240527BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
E04B9/30 A
E04B9/00 D
E04B9/22 B
E04B9/06 B
E04B1/94 F
E04B1/94 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186137
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】中島 隆
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001FA06
2E001FA14
2E001GA12
2E001HA03
(57)【要約】
【課題】軸組工法の建物において、天井を吊り下げた状態で支持する吊梁を躯体に対して強固に固定できるようにし、上下階間での振動や音の伝達を抑制しつつ、天井裏の耐火性を向上させる。
【解決手段】建物1における躯体のうち屋内側面には耐火面材6が貼り付けられており、吊天井10が、天井本体11と、下端部に天井本体11が取り付けられて天井本体11を上方から吊り支える複数の吊木12と、複数の吊木12における上端部が取り付けられた木質の吊梁13と、吊梁13の端部を受けて当該吊梁13と連結された受け金物14と、を備えており、耐火面材6は、天井本体11よりも下方の位置から受け金物14の高さ位置よりも上方に延出し、受け金物14は、耐火面材6を介して、耐火面材6が貼り付けられた躯体の一部に対して固定材で固定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸組工法で建てられる建物において上部構造の下方に間隔を空けて配置された吊天井の構造であって、
前記建物における躯体のうち屋内側面には耐火面材が貼り付けられており、
前記吊天井は、
天井本体と、
下端部に前記天井本体が取り付けられて前記天井本体を上方から吊り支える複数の吊木と、
前記複数の吊木における上端部が取り付けられた木質の吊梁と、
前記吊梁の端部を受けて当該吊梁と連結された受け金物と、を備えており、
前記耐火面材は、前記天井本体よりも下方の位置から前記受け金物の高さ位置よりも上方に延出し、前記受け金物は、前記耐火面材を介して、前記耐火面材が貼り付けられた前記躯体の一部に対して固定材で固定されていることを特徴とする吊天井構造。
【請求項2】
請求項1に記載の吊天井構造において、
前記躯体は、
前記耐火面材が貼り付けられた横材と、
前記耐火面材が貼り付けられ、前記横材の下面に吊り下げられた状態に設けられた吊束と、を備えており、
前記受け金物は、前記吊束に対して前記固定材で固定されていることを特徴とする吊天井構造。
【請求項3】
請求項1に記載の吊天井構造において、
前記躯体は、
前記耐火面材が貼り付けられた横材と、
前記耐火面材が貼り付けられ、前記横材と直交して前記横材を下方から支持する柱と、を備えており、
前記受け金物は、前記柱に対して前記固定材で固定されていることを特徴とする吊天井構造。
【請求項4】
請求項1に記載の吊天井構造において、
前記躯体は、前記耐火面材が貼り付けられた横材を備えており、
前記受け金物は、前記横材に対して前記固定材で固定されていることを特徴とする吊天井構造。
【請求項5】
請求項1に記載の吊天井構造において、
前記受け金物は、
前記耐火面材を介して前記躯体の一部に対して前記固定材で固定される固定板部と、
前記固定板部の両側縁部から突出する一方及び他方の側板部と、を備え、
前記吊梁の端部は、前記一方及び他方の側板部間に配置され、これら側板部に固定されていることを特徴とする吊天井構造。
【請求項6】
請求項1に記載の吊天井構造において、
前記上部構造は、複数の梁、複数の根太、床面材を少なくとも備えた上階の床であり、
前記複数の梁には、複数の大梁が含まれており、
前記吊梁は、前記複数の大梁と平行して水平に配置されていることを特徴とする吊天井構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の吊天井構造において、
前記天井本体の上面には遮音材が敷設され、
前記遮音材は、前記天井本体の上面と前記吊梁の下面との間を通過するように配置されていることを特徴とする吊天井構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊天井構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上下階間で振動や音が伝わりにくくするための天井構造として、特許文献1に記載のような吊天井構造が知られている。このような吊天井構造は、梁の側面に固定された受け金物によって吊木受けの端部を受け、吊木受けに吊木が固定され、吊木の下端部に野縁受け及び野縁からなる枠体が取り付けられ、そして、野縁の下面に天井材が取り付けられた構成となっている。吊木受けは、上階の床を受ける根太との間に隙間を空けて配置されるため、上下階間で振動や音が伝わりにくくなっている。
【0003】
また、特許文献2には、木質パネル工法からなる建物において、内壁面材として壁体の表面に設けられる石膏ボードを、天井を支持するための鋼製吊梁の高さ位置よりも上方に延出させた状態にした天井構造が開示されている。石膏ボードは耐火面材として機能するものであるため、鋼製吊梁の高さ位置よりも上方に延出した状態とすることで、天井裏における耐火性を向上させることができる。なお、鋼製吊梁を受ける受け金物は、石膏ボード表面に設けられた補強合板を固定下地の一部として、木質パネルからなる壁体に固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平08-082035号公報
【特許文献2】特開2000-054545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、軸組工法で建てられる建物においても吊天井構造を採用し、上下階間での振動や音の伝達を抑制しつつ、石膏ボード等からなる耐火面材を天井裏まで延出させて天井裏の耐火性を向上させたいという要望がある。
ところが、軸組工法で建てられる建物は、木質パネル工法の建物とは異なり、柱等の縦材同士の間や梁等の横材同士の間には大きな隙間があるし、躯体表面に合板が貼り付けられているわけでもない。そのため、軸組工法で建てられる建物においては、吊梁を受ける受け金物を固定材で固定するのに十分な固定強度を発揮する固定下地を必ずしも確保できない場合がある。仮に、石膏ボード表面に補強合板を設けて、それを固定下地とするにしても、石膏ボードの裏側に空間しかない場合(固定下地となる材が無い場合)は、受け金物を固定材で固定するのに十分な固定強度を発揮することは難しい。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その課題は、軸組工法の建物において、天井を吊り下げた状態で支持する吊梁を躯体に対して強固に固定できるようにし、上下階間での振動や音の伝達を抑制しつつ、天井裏の耐火性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、例えば図1図6に示すように、軸組工法で建てられる建物1において上部構造の下方に間隔を空けて配置された吊天井10の構造であって、
前記建物1における躯体のうち屋内側面には耐火面材6が貼り付けられており、
前記吊天井10は、
天井本体11と、
下端部に前記天井本体11が取り付けられて前記天井本体11を上方から吊り支える複数の吊木12と、
前記複数の吊木12における上端部が取り付けられた木質の吊梁13と、
前記吊梁13の端部を受けて当該吊梁13と連結された受け金物14と、を備えており、
前記耐火面材6は、前記天井本体11よりも下方の位置から前記受け金物14の高さ位置よりも上方に延出し、前記受け金物14は、前記耐火面材6を介して、前記耐火面材6が貼り付けられた前記躯体の一部(胴差4、梁5、吊束7)に対して固定材で固定されていることを特徴とする。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、耐火面材6は、天井本体11よりも下方の位置から受け金物14の高さ位置よりも上方に延出し、受け金物14は、耐火面材6を介して、耐火面材6が貼り付けられた躯体の一部(胴差4、梁5、吊束7)に対して固定材で固定されているので、耐火面材6によって、躯体と吊梁13との間を離隔できるとともに、天井裏における吊梁13よりも上方の位置まで耐火被覆を行うことができる。さらに、躯体の一部に対して固定材で固定された受け金物14によって吊梁13の端部を受け、吊梁13を連結することができる。そのため、軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定でき、これにより、上下階間での振動や音の伝達を抑制しつつ、天井裏の耐火性を向上させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、例えば図1図2等に示すように、請求項1に記載の吊天井構造において、
前記躯体は、
前記耐火面材6が貼り付けられた横材4と、
前記耐火面材6が貼り付けられ、前記横材4の下面に吊り下げられた状態に設けられた吊束7と、を備えており、
前記受け金物14は、前記吊束7に対して前記固定材で固定されていることを特徴とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、軸組工法によって建てられた建物1の躯体が、横材4と、その横材4の下面に吊り下げられた状態に設けられた吊束7と、を備えており、受け金物14は、この吊束7に対して固定材で固定されているので、吊梁13の設置位置に当たる箇所の耐火面材6の裏側に、固定下地となるものが無い場合であっても、吊束7によって固定材用の固定下地を確保することができる。そのため、軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、例えば図1図3等に示すように、請求項1に記載の吊天井構造において、
前記躯体は、
前記耐火面材6が貼り付けられた横材4と、
前記耐火面材6が貼り付けられ、前記横材4と直交して前記横材4を下方から支持する柱2eと、を備えており、
前記受け金物14は、前記柱2eに対して前記固定材で固定されていることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、軸組工法によって建てられた建物1の躯体が、横材4と、横材4と直交して横材4を下方から支持する柱2eと、を備えており、受け金物14は、この柱2eに対して固定材で固定されているので、吊梁13の設置位置に当たる箇所の耐火面材6の裏側に柱2eが設けられていれば、その柱2eを固定材用の固定下地として確保することができる。そのため、軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定できる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、例えば図1図4等に示すように、請求項1に記載の吊天井構造において、
前記躯体は、前記耐火面材6が貼り付けられた横材5を備えており、
前記受け金物14は、前記横材5に対して前記固定材で固定されていることを特徴とする。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、軸組工法によって建てられた建物1の躯体が、横材5を備えており、受け金物14は、この横材5に対して固定材で固定されているので、吊梁13の設置位置に当たる箇所の耐火面材6の裏側に横材5が設けられていれば、その横材5を固定材用の固定下地として確保することができる。そのため、軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定できる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、例えば図2図5に示すように、請求項1に記載の吊天井構造において、
前記受け金物14は、
前記耐火面材6を介して前記躯体の一部に対して前記固定材で固定される固定板部15と、
前記固定板部15の両側縁部から突出する一方及び他方の側板部16と、を備え、
前記吊梁13の端部は、前記一方及び他方の側板部16間に配置され、これら側板部16に固定されていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、固定板部15を、耐火面材6を介して躯体の一部に対して固定材で固定しておき、吊梁13の端部を、固定板部15の両側縁部から突出する一方及び他方の側板部16間に配置することで、吊梁13の横方向の位置決めを行うことができる。これにより、吊梁13を正確な位置に設置しやすくなる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、例えば図1図6に示すように、請求項1に記載の吊天井構造において、
前記上部構造は、複数の梁3a,3b、複数の根太3c、床面材3dを少なくとも備えた上階3の床であり、
前記複数の梁3a,3bには、複数の大梁3aが含まれており、
前記吊梁13は、前記複数の大梁3aと平行して水平に配置されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、吊梁13は、上階3の床を構成する複数の大梁3aと平行して水平に配置されているので、吊梁13と大梁3aとが直交して配置されることによって互いに干渉し合うことを防ぐことができる。これにより、吊梁13の上面を、大梁3aの下面よりも低く配置する必要がなくなるので、吊梁13によって支持される天井本体11の高さ位置が低くなることを抑制できる。そのため、例えば吊梁13が、複数の大梁3aの下面よりも下方に配置される場合に比して、天井本体11の下方に位置する下階2の部屋の天井高を高くすることができる。
【0019】
請求項7に記載の発明は、例えば図1図6に示すように、請求項1から6のいずれか一項に記載の吊天井構造において、
前記天井本体11の上面には遮音材17が敷設され、
前記遮音材17は、前記天井本体11の上面と前記吊梁13の下面との間を通過するように配置されていることを特徴とする。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、遮音材17は、天井本体11の上面と吊梁13の下面との間を通過するように配置されているので、例えば遮音材17が吊梁13の上部を跨いだり、途中で途切れたりする場合に比して、高い遮音効果を発揮することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、軸組工法の建物において、天井を吊り下げた状態で支持する吊梁を躯体に対して強固に固定でき、これにより、上下階間での振動や音の伝達を抑制しつつ、天井裏の耐火性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】吊天井構造が採用された建物を示しており、(a)は、A-A線断面図であり、(b)はB-B線断面図である。
図2】固定下地として吊束を利用した場合の吊天井構造を示しており、(a)は側断面図であり、(b)は受け金物の周囲の正面図である。
図3】固定下地として柱を利用した場合の吊天井構造を示す図である。
図4】固定下地として梁を利用した場合の吊天井構造を示す図である。
図5】受け金物の構成を示す図である。
図6】遮音材の敷設例を示しており、(a)はOK例であり、(b)及び(c)はNG例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0024】
図1において符号1は、建物を示す。この建物1は、木造軸組工法によって建てられた建物であり、本実施形態においては複数階建ての住宅とされている。
建物1の躯体は、複数の軸組材によって構成されており、これら複数の軸組材には、柱等の縦材や梁等の横材(横架材)が含まれている。
なお、本実施形態においては、建物1は木造であるとしたが、これに限られるものではなく、鉄骨造(重量鉄骨、軽量鉄骨)であってもよい。
【0025】
より具体的に説明すると、建物1は、図1図4に示すように、下階2と上階3とを備えている。そして、下階2の床上には下階2の壁が立設され、下階2の壁上には上階3の床が設けられ、上階3の床上には上階3の壁が立設されている。さらに、下階2と上階3との間には、下階2の天井10(すなわち、吊天井10)が設けられ、当該天井10の上部構造として、上階3の床が設けられている。
なお、本実施形態においては、下階2と上階3は、同一住戸の上下階とされていてもよいし、別々の住戸とされていてもよい。
【0026】
下階2は、本実施形態においては一階とされている。そのため、下階2の床は、基礎上に設けられた土台2aや、土台2a間に架け渡された大引2b、図示しない根太、下階床面材2d等を備えて構成されている。
【0027】
土台2aや大引2bの上には下階柱2eが立設されており、下階床面材2dは、下階柱2eを避けて配置されている。下階2の外周に立設された複数の下階柱2eの上端部間には胴差4(又は後述する梁5)が架け渡されて設けられている。
【0028】
下階柱2eの屋内側面には、下階床面材2dから胴差4に達する高さまで耐火面材6が貼り付けられて、下階2の内壁面が構成されている。耐火面材6は、後述する受け金物14の高さ位置よりも上方に延出している。なお、このような耐火面材6としては、耐火性能や断熱性能、遮音性能等を有する石膏ボード(強化石膏ボードでもよい。)が採用されている。
下階柱2eの屋外側面には、透湿防水シートや胴縁9、外装材が設けられて上階3の外壁面が構成されている。
【0029】
上階3は、本実施形態においては二階とされている。上階3の床は、胴差4間に架け渡されて設けられた複数の大梁3aや、必要箇所において大梁3a間に架け渡されて設けられた小梁3b、複数の根太3c、上階床面材3d等を備えて構成されている。
なお、大梁3aは、小梁3bや根太3cよりも構造的な強度が必要とされるため、これら小梁3bや根太3cに比して梁成が大きく設定されている。大梁3aの上面、小梁3bの上面、根太3cの上面には上階床面材3dが設けられるため高さ位置が等しく設定されている。したがって、大梁3aの下端部は、小梁3bや根太3cの下端部よりも下方に突出した状態となっている。
【0030】
大梁3aや小梁3bの上には上階柱3eが立設されており、上階床面材3dは、上階柱3eを避けて配置されている。また、必要箇所に立設された複数の上階柱3e間には筋交い3fが設けられて補強されている。筋交い3fが設けられた位置には、床下に小梁3bが設けられている。そのため、当該位置は、他の位置よりも強化されて、耐力壁として機能することとなる。
【0031】
上階柱3eの屋内側面には、下階2の場合と同様に耐火面材が適宜貼り付けられて、上階3の内壁面が構成されている。
屋外側面にも、下階2の場合と同様に、透湿防水シートや胴縁9、外装材が設けられて上階3の外壁面が構成されている。
【0032】
なお、下階2の場合も上階3の場合も、壁や床の中空部には断熱材が適宜充填されているものとする。特に、上階3の床に充填される断熱材として、耐火性能を有する断熱材が充填されていると、吊天井10の天井裏における耐火性を向上させる上で好ましい。躯体の屋内側面に貼り付けられた耐火面材6の上端部が、上階3の床の中空部に充填された耐火性能を有する断熱材と接していると耐火構造が連続するので、吊天井10の天井裏における耐火性を向上させる上で好ましい。
【0033】
また、下階2の場合も上階3の場合も、耐火面材6の表面には、壁クロス等の壁仕上げ材が設けられ、床面にも床仕上げ材が設けられているものとする。このような各仕上げ材にも耐火性能が備わっていると好ましい。
【0034】
以上のように構成された建物1に設けられた吊天井10は、天井本体11と、下端部に天井本体11が取り付けられて天井本体11を上方から吊り支える複数の吊木12と、複数の吊木12における上端部が取り付けられた木質の吊梁13と、吊梁13の端部を受けて当該吊梁13と連結された受け金物14と、を備える。
また、天井本体11の上面には、上下階間での音の伝達を抑制する遮音材17が敷設されている。
【0035】
天井本体11は、下階2に面する天井面材11aと、複数の野縁材が格子状に組まれて形成され、下面に天井面材11aが取り付けられた野縁11bと、野縁11bの上面に取り付けられ、複数の吊木12における下端部が取り付けられた複数の野縁受け11cと、を備える。
ここで、吊天井10の天井裏(天井懐とも言う。)とは、この天井本体11における天井面材11aよりも上方であって、かつ、上階3の床(本実施形態においては上階床面材3dを指すものとするが、小梁3bや根太3cを指してもよい。)よりも下方に形成される空間を指している。
また、天井面材11aの下面には、天井クロス等の天井仕上げ材が設けられているものとする。このような天井仕上げ材に耐火性能が備わっていると好ましい。
【0036】
野縁材は角材であり、複数の野縁材からなる格子状の野縁11bは、下階2の部屋における四周の壁(耐火面材6)に亘って設けられている。さらに、野縁11bの下面に取り付けられる天井面材11aも、野縁11bと同様に、下階2の部屋における四周の壁に亘って設けられている。すなわち、天井本体11、ひいては吊天井10自体が、下階2の部屋における四周の壁に亘って設けられている。
また、野縁受け11cも角材であり、野縁材の上面に沿って取り付けられるか、複数の野縁材に架け渡されて取り付けられている。
【0037】
複数の吊木12は角材であり、下端部が、複数の野縁受け11cの側面に取り付けられている。野縁受け11cがない箇所においては、野縁11bに取り付けられてもよい。また、吊木12の上端部は、吊梁13の側面に取り付けられている。
なお、吊木12は、釘やビス等の固定具によって野縁受け11c(野縁11b)及び吊梁13に取り付けられ、その際に接着剤を併用してもよい。
【0038】
吊梁13は、二つの木材(木質の板材)を接着して一本の梁材としたものであり、吊天井10の天井裏内に複数配置されている。また、複数の吊梁13は、長手方向側端部のみが躯体との接点となっている。
このような吊梁13は、吊天井10の天井裏において、複数の大梁3aと平行して水平に配置されている。すなわち、吊梁13と大梁3aは互いに交差しないように配置されている。これにより、吊梁13が、小梁3bや根太3cよりも下方に突出する大梁3aと干渉し合うことを防ぐことができるため、下階2の部屋の天井高を高くすることができる。
【0039】
受け金物14は、図5に示すように、固定板部15と、一方及び他方の側板部16と、を備えて断面略コ字型に形成されている。
固定板部15は、耐火面材6を介して躯体の一部に対して固定材で固定される板状の部位である。本実施形態においては、固定材としてビスが用いられている。そして、この固定板部15には、複数のビス孔15a(固定材が通される通孔)が形成されている。複数のビス孔15aには、固定板部15の四隅と、これら四隅のビス孔15aよりも中央側に寄った位置に形成された複数のビス孔15aと、が含まれている。中央側に形成された複数のビス孔15aは、後述する接合金物8とビスとが接触しないようにしつつ、当該接合金物8になるべく近接した位置にビスを通すことができるような配置となっている。
また、この固定板部15における左右方向中央部の上下端部には、芯墨の位置を確認するのに用いられる孔15bが形成されている。
一方及び他方の側板部16は、固定板部15の両側縁部から同一方向(吊梁13側)に突出する板状の部位であり、複数のビス孔16aが形成されている。
なお、鉄骨の軸組工法によって建物1が建てられる場合は、固定材として、ボルトやドリフトピン等の固定具が適宜用いられるものとする。ボルトを固定材として用いる場合は、必要に応じてナットが用いられる。
【0040】
受け金物14は、固定板部15が複数のビスによって躯体の一部にビス固定される。そして、吊梁13の端部が、一方及び他方の側板部16間に配置され、これら側板部16に固定されている。つまり、一方及び他方の側板部16における複数のビス孔16aから吊梁13にビスが打ち込まれることで、吊梁13と受け金物14とが連結されている。
【0041】
なお、吊梁13の梁成がどのような寸法であっても、吊梁13は、当該吊梁13の上面と受け金物14における一方及び他方の側板部16の上端面とが面一となるように配置されている。すなわち、吊梁13の梁成が大きく、下端部が受け金物14の下端部よりも下方に突出する場合も、梁成が小さく、下端部が受け金物14の下端部よりも下方に突出しない場合も、吊梁13の上面と受け金物14の上端面は揃った状態となっている。
また、吊梁13と受け金物14との連結は、ビス固定によるものだけでなく、一方及び他方の側板部16と吊梁13とを貫通するドリフトピンやボルトによる固定を採用してもよい。
【0042】
なお、天井本体11の上面に敷設された遮音材17は、図6(a)に示すように、天井本体11の上面と吊梁13の下面との間を通過するように配置されている。このような遮音材17は、下階2の部屋における四周の壁(耐火面材6)に亘って設けられている。
また、遮音材17は、良好な遮音効果を発揮するために、図6(b)に示すように吊梁13を跨いだり、図6(c)に示すように吊梁13の位置で途切れたりしないように敷設する。換言すれば、図6(a)に示すような状態で遮音材17が配置されれば、遮音材17の使用量の増加や、吊梁13の位置での遮音効果の低減を防ぐことができる。
【0043】
次に、受け金物14を用いた躯体の一部に対する吊梁13の取付態様について詳細に説明する。
【0044】
(吊束に対する吊梁の取付態様)
図2に示す例において、建物1の躯体は、横材4と、吊束7と、を備えている。
ここで、横材4は、上記の胴差4である。胴差4は、少なくとも大梁3aよりも梁成が小さく設定されており、場合によっては、小梁3bよりも梁成が小さく設定されている。そのため、吊梁13は、その上面の高さ位置が、胴差4における下面の高さ位置に達しないか、達していても僅かに高い程度に設定される場合がある。そのため、胴差4は、受け金物14を、ビスによる十分な固定強度を確保できるような固定下地としては機能しない場合がある。つまり、梁成(下方への突出量)が足りない胴差4によって、受け金物14を介して吊梁13を支持することは困難となっている。
【0045】
そこで、図2に示す例においては、受け金物14の固定下地として機能する吊束7が、横材である胴差4の下面に吊り下げられた状態に設けられている。
吊束7は、例えば柱に比して上下寸法の短い角材であり、その上下寸法は、胴差4の下面から天井本体11よりも下方に突出しない程度の長さに設定されている。換言すれば、吊束7の上下寸法は、天井本体11における天井面材11aの下面よりも上方の位置から胴差4の下面までの長さに設定されている。
【0046】
また、吊束7は、胴差4に対して接合金物8を介して接合固定されている。
接合金物8は、本実施形態においては、ドリフトピンやボルト等の軸材が差し込まれる貫通孔が上下端部に形成された円筒状の接合部材が採用されている。
より詳細に説明すると、胴差4の下面のうち吊束7が接合される位置には、接合金物8の上端部が差し込まれる差込穴が形成され、吊束7の上端部には、接合金物8の下端部が差し込まれる差込穴が形成されている。さらに、胴差4には、厚さ方向に貫通してドリフトピンが差し込まれる差込孔が形成され、吊束7にも、ドリフトピンが差し込まれる差込孔が形成されている。胴差4におけるドリフトピン用の差込孔と吊束7におけるドリフトピン用の差込孔は、平面視において直交する方向に形成されている。
【0047】
接合金物8は、上端部が胴差4の差込穴に差し込まれ、ドリフトピンが、胴差4に形成されたドリフトピン用の差込孔と接合金物8の上端部に形成された貫通孔を貫通するように差し込まれることで胴差4に固定される。
また、接合金物8は、下端部が吊束7の差込穴に差し込まれ、ドリフトピンが、吊束7に形成されたドリフトピン用の差込孔と接合金物8の上端部に形成された貫通孔を貫通するように差し込まれることで吊束7に固定される。
これにより、胴差4と吊束7とを接合金物8によって接合することができる。
【0048】
胴差4の屋内側面と吊束7の屋内側面には、耐火面材6が貼り付けられている。耐火面材6は、上記のように、下階床面材2dから胴差4に達する高さまでの範囲で設けられている。耐火面材6の上端部は、胴差4の下面よりも上方に延出している。
【0049】
図2に示す例において、受け金物14は、耐火面材6を介して、胴差4の下端部と吊束7に向かってビスが打ち込まれて固定されている。つまり、受け金物14における固定板部15の複数のビス孔15aからビスが打ち込まれている。
なお、図2に示す例においては、受け金物14が、胴差4の下端部と吊束7に跨って配置されてビス固定されているが、これに限られるものではない。すなわち、吊梁13における上面の高さ位置(受け金物14における上端部の高さ位置)が、胴差4における下面の高さ位置に達していない場合、受け金物14は、胴差4には跨らずに吊梁13にのみビス固定される。
【0050】
吊梁13は、以上のようにして躯体の一部に固定された受け金物14によって長さ方向側端部が受けられ、受け金物14における一方及び他方の側板部16からビスが打ち込まれている。これにより、吊梁13と受け金物14とが連結されている。
受け金物14は、図2に示す一方の胴差4と平行する他方の胴差4(他方の胴差4に代えて大梁3aでもよい。)側の吊束7にも固定されているものとする。これにより、吊梁13の長さ方向両端部を、平行する胴差4間と、これら平行する胴差4の下面に設けられた吊束7間に架け渡して設けることができる。
吊天井10は、以上のように設けられた吊梁13に複数の吊木12が設けられ、複数の吊木12に天井本体11が設けられて構成されている。
【0051】
(柱に対する吊梁の取付態様)
図3に示す例において、建物1の躯体は、横材4と、柱2eと、を備えている。
ここで、横材4は、上記の胴差4であり、柱2eは、上記の下階柱2eである。下階柱2eは、胴差4と直交して当該胴差4を下方から支持している。
胴差4の屋内側面と下階柱2eの屋内側面には、耐火面材6が貼り付けられている。耐火面材6は、上記のように、下階床面材2dから胴差4に達する高さまでの範囲で設けられている。耐火面材6の上端部は、胴差4の下面よりも上方に延出している。
【0052】
図3に示す例において、受け金物14は、耐火面材6を介して、胴差4の下端部と下階柱2eに向かってビスが打ち込まれて固定されている。つまり、受け金物14における固定板部15の複数のビス孔15aからビスが打ち込まれている。
なお、図3に示す例においては、受け金物14が、胴差4の下端部と下階柱2eに跨って配置されてビス固定されているが、これに限られるものではない。すなわち、吊梁13における上面の高さ位置(受け金物14における上端部の高さ位置)が、胴差4における下面の高さ位置に達していない場合、受け金物14は、胴差4には跨らずに下階柱2eにのみビス固定される。
【0053】
吊梁13は、以上のようにして躯体の一部に固定された受け金物14によって長さ方向側端部が受けられ、受け金物14における一方及び他方の側板部16からビスが打ち込まれている。これにより、吊梁13と受け金物14とが連結されている。
受け金物14は、図3に示す一方の胴差4と平行する他方の胴差4(他方の胴差4に代えて大梁3aでもよい。)側の下階柱2eにも固定されているものとする。これにより、吊梁13の長さ方向両端部を、平行する胴差4間と、これら平行する胴差4の下面に設けられた下階柱2e間に架け渡して設けることができる。
吊天井10は、以上のように設けられた吊梁13に複数の吊木12が設けられ、複数の吊木12に天井本体11が設けられて構成されている。
【0054】
(梁に対する吊梁の取付態様)
図4に示す例において、建物1の躯体は、横材5を備えている。
ここで、横材4は、下階柱2eによって下方から支持される梁5である。梁5は、梁成の小さい胴差4に代えて設けられた、梁成の大きい横架材(梁5)であり、その下端面の高さ位置は、受け金物14の下端部よりも下方に位置している。
梁5の屋内側面と下階柱2eの屋内側面には、耐火面材6が貼り付けられている。耐火面材6は、下階床面材2dから梁5の上下方向中央部に達する高さまでの範囲で設けられている。耐火面材6の上端部は、受け金物14の上端部よりも上方に延出している。
【0055】
図4に示す例において、受け金物14は、耐火面材6を介して、梁5に向かってビスが打ち込まれて固定されている。つまり、受け金物14における固定板部15の複数のビス孔15aからビスが打ち込まれている。
また、受け金物14における下端部の高さ位置は、梁5における下端面の高さ位置と略等しいか、梁5における下端面の高さ位置よりも上方に位置しているものとする。換言すれば、梁5の下端部は、受け金物14の下端部よりも下方に突出している。
【0056】
吊梁13は、以上のようにして躯体の一部に固定された受け金物14によって長さ方向側端部が受けられ、受け金物14における一方及び他方の側板部16からビスが打ち込まれている。これにより、吊梁13と受け金物14とが連結されている。
受け金物14は、図4に示す一方の梁5と平行する他方の梁5(他方の梁5に代えて大梁3aでもよい。)にも固定されているものとする。これにより、吊梁13の長さ方向両端部を、平行する梁5間に架け渡して設けることができる。
吊天井10は、以上のように設けられた吊梁13に複数の吊木12が設けられ、複数の吊木12に天井本体11が設けられて構成されている。
【0057】
受け金物14を用いた躯体の一部に対する吊梁13の取付態様については、以上のように、建物1の躯体が、図4に示すような梁成の大きい梁5を備えている場合は、当該梁5を固定下地として受け金物14をビス固定することができる。
このような梁成の大きい梁5を備えておらず、梁成の小さい胴差4の下側に下階柱2eがある場合は、下階柱2eを固定下地として受け金物14をビス固定することができる。
一方、梁成の大きい梁5を備えておらず、梁成の小さい胴差4の下側に下階柱2eがあるものの、吊梁13の設置位置に下階柱2eが配置されない場合には、胴差4の下側に吊束7を設けて、当該吊束7を固定下地として受け金物14をビス固定することができる。
図2図3図4に示す吊梁13の取付態様は、一つの建物1において併用されてもよいし、併用されなくてもよい。
【0058】
(吊天井の施工手順)
なお、吊天井10の施工は、建物1の躯体が建てられて躯体の屋内側面に耐火面材6が貼り付けられた後に行われる。すなわち、躯体の屋内側面に耐火面材6が貼り付けられた後に、受け金物14が、耐火面材6を介して、躯体の一部にビス固定される手順となっている。そして、受け金物14がビス固定された後に、吊梁13が設置され、吊木12、天井本体11の施工が行われる。
ただし、吊天井10における天井本体11の上面には遮音材17が敷設されるため、建物1の躯体のうち、上階3の床における上階床面材3dの施工は、遮音材17の敷設が済んだ後に完了させるようにする(途中までは進めてもよい)。
【0059】
(本実施形態の効果)
本実施形態によれば、以下のような優れた効果を奏する。
すなわち、耐火面材6は、天井本体11よりも下方の位置から受け金物14の高さ位置よりも上方に延出し、受け金物14は、耐火面材6を介して、耐火面材6が貼り付けられた躯体の一部に向かってビス固定されているので、耐火面材6によって、躯体と吊梁13との間を離隔できるとともに、天井裏における吊梁13よりも上方の位置まで耐火被覆を行うことができる。さらに、躯体の一部にビス固定された受け金物14によって吊梁13の端部を受け、吊梁13を連結することができる。そのため、木造軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定でき、これにより、上下階間での振動や音の伝達を抑制しつつ、天井裏の耐火性を向上させることができる。
【0060】
また、木造軸組工法によって建てられた建物1の躯体が、胴差4と、その胴差4の下面に吊り下げられた状態に設けられた吊束7と、を備えており、受け金物14は、この吊束7に向かってビス固定されているので、吊梁13の設置位置に当たる箇所の耐火面材6の裏側に、固定下地となるものが無い場合であっても、吊束7によってビス固定用の固定下地を確保することができる。そのため、木造軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定できる。
【0061】
また、木造軸組工法によって建てられた建物1の躯体が、胴差4と、胴差4と直交して胴差4を下方から支持する柱2eと、を備えており、受け金物14は、この柱2eに向かってビス固定されているので、吊梁13の設置位置に当たる箇所の耐火面材6の裏側に柱2eが設けられていれば、その柱2eをビス固定用の固定下地として確保することができる。そのため、木造軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定できる。
【0062】
また、木造軸組工法によって建てられた建物1の躯体が、胴差4よりも梁成の大きい梁5を備えており、受け金物14は、この梁5に向かってビス固定されているので、吊梁13の設置位置に当たる箇所の耐火面材6の裏側に梁5が設けられていれば、その梁5をビス固定用の固定下地として確保することができる。そのため、木造軸組工法の建物1において、天井本体11を吊り下げた状態で支持する吊梁13を躯体に対して強固に固定できる。
【0063】
また、固定板部15を、耐火面材6を介して躯体の一部にビス固定しておき、吊梁13の端部を、固定板部15の両側縁部から突出する一方及び他方の側板部16間に配置することで、吊梁13の横方向の位置決めを行うことができる。これにより、吊梁13を正確な位置に設置しやすくなる。
【0064】
また、吊梁13は、上階3の床を構成する複数の大梁3aと平行して水平に配置されているので、吊梁13と大梁3aとが直交して配置されることによって互いに干渉し合うことを防ぐことができる。これにより、吊梁13の上面を、大梁3aの下面よりも低く配置する必要がなくなるので、吊梁13によって支持される天井本体11の高さ位置が低くなることを抑制できる。そのため、例えば吊梁13が、複数の大梁3aの下面よりも下方に配置される場合に比して、天井本体11の下方に位置する下階2の部屋の天井高を高くすることができる。
【0065】
また、遮音材17は、天井本体11の上面と吊梁13の下面との間を通過するように配置されているので、例えば遮音材17が吊梁13の上部を跨いだり、途中で途切れたりする場合に比して、高い遮音効果を発揮することができる。
【0066】
また、近年、二酸化炭素の排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標達成が求められており、建築業界においても、建物を二酸化炭素排出量の少ない木造とする取り組みが進められている。本実施形態の吊天井構造及び当該吊天井構造が適用された建物1は、木造軸組工法によって建築されているので、カーボンニュートラルの推進による脱炭素社会の実現や、SDGsの目標達成に貢献できる。
【0067】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0068】
上記の実施形態においては、吊天井10の上部構造として、上階3の床が設けられているものとしたが、上部構造は、屋根であってもよい。屋根は、勾配屋根でもよいし、陸屋根でもよい。また、陸屋根の場合は、ルーフバルコニーも含まれるものとする。
上部構造として屋根が採用される場合、吊天井10における吊梁13は、例えば桁材や小屋梁等の横材に受け金物14がビス固定されたり、横材と直交する屋根の直下階の柱や吊束7に対して受け金物14がビス固定されたりすることで、屋根の小屋組に極力干渉しないように設けられる。また、耐火面材6も、屋根裏まで延出し、桁材や小屋梁等の横材や柱、吊束7に貼り付けられるものとする。
なお、上記の実施形態において説明した天井裏と同様、小屋裏にも断熱材や遮音材17が適宜設けられていて耐火性の向上に貢献している。
【符号の説明】
【0069】
1 建物
2 下階
2e 下階柱
3 上階
3a 大梁
3d 上階床面材
4 胴差
5 梁
6 耐火面材
7 吊束
8 接合金物
10 吊天井
11 天井本体
11a 天井面材
11b 野縁
11c 野縁受け
12 吊木
13 吊梁
14 受け金物
図1
図2
図3
図4
図5
図6