(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075033
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】無停電電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 9/06 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
H02J9/06 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186146
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】株式会社TMEIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】寺田 満喜
【テーマコード(参考)】
5G015
【Fターム(参考)】
5G015GA10
5G015HA16
5G015JA04
(57)【要約】
【課題】定格電流が互いに異なる複数の無停電電源装置を並列接続してなる無停電電源システムにおける自動給電切り替え機能を改善する。
【解決手段】負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置のうちの少なくとも2台の無停電電源装置の定格電流は互いに異なる。インバータ給電時、各無停電電源装置の制御回路は、電流検出器の検出値が、対応する無停電電源装置の定格電流より大きい場合に、インバータの運転を停止するとともにスイッチを導通させ、バイパス給電へ切り替えるように構成される。バイパス給電時、各無停電電源装置の制御回路は、複数の無停電電源装置の全てにおいて、インバータ給電への切り替え後の出力電流が、対応する無停電電源装置の定格電流以下になることが判断された場合に、スイッチをオフするとともにインバータを再起動させて、インバータ給電へ切り替える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備えた無停電電源システムであって、
各無停電電源装置は、
交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、
前記コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して前記負荷に供給するインバータと、
第1端子に前記交流電源からの交流電力を受け、第2端子が前記負荷に接続されるスイッチと、
前記無停電電源装置の出力電流を検出する電流検出器と、
前記インバータおよび前記スイッチを制御する制御回路とを含み、
前記複数の無停電電源装置のうちの少なくとも2台の無停電電源装置の定格電流は互いに異なり、
前記インバータによって生成された交流電力を前記負荷に供給するインバータ給電時において、前記制御回路は、前記電流検出器の検出値が、対応する前記無停電電源装置の定格電流より大きい場合に、前記インバータの運転を停止するとともに前記スイッチを導通させ、前記交流電源からの交流電力を前記負荷に供給するバイパス給電へ切り替えるように構成され、
前記バイパス給電時において、前記制御回路は、前記複数の無停電電源装置の全てにおいて、前記インバータ給電への切り替え後の前記出力電流が、対応する前記無停電電源装置の定格電流以下になることが判断された場合に、前記スイッチをオフするとともに前記インバータを再起動させて、前記インバータ給電へ切り替える、無停電電源システム。
【請求項2】
各無停電電源装置の前記制御回路は、互いに通信可能に接続されており、
前記バイパス給電時において、前記制御回路は、
各無停電電源装置の前記電流検出器の検出値に基づいて負荷電流を求め、
前記負荷電流が前記複数の無停電電源装置の定格電流の総和以下である場合に、前記インバータ給電へ切り替える、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記バイパス給電時において、前記制御回路は、前記電流検出器の検出値が、前記複数の無停電電源装置の定格電流の最小値以下である場合に、前記インバータ給電へ切り替える、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
各無停電電源装置の前記制御回路は、互いに通信可能に接続されており、
前記バイパス給電時において、定格電流が最小である無停電電源装置の前記制御回路は、前記電流検出器の検出値が、当該定格電流以下である場合に、前記インバータ給電へ切り替えるとともに、他の無停電電源装置の前記制御回路に対して前記インバータ給電への切替指令を送信し、
前記他の無停電電源装置の前記制御回路は、定格電流が最小である無停電電源装置から前記インバータ給電への切替指令を受信した場合に、前記インバータ給電へ切り替える、請求項3に記載の無停電電源システム。
【請求項5】
前記バイパス給電時において、前記制御回路は、前記電流検出器の検出値が、前記複数の無停電電源装置の定格電流の総和を前記複数の無停電電源装置の台数で除算した値以下である場合に、前記インバータ給電へ切り替える、請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項6】
前記インバータ給電時において、前記制御回路は、
各無停電電源装置の前記電流検出器の検出値に基づいて負荷電流を求め、
対応する前記無停電電源装置の定格電流と前記複数の無停電電源装置の定格電流の総和との比を前記負荷電流に乗算して、対応する前記無停電電源装置の分担電流を求め、
前記分担電流を前記負荷に供給するように前記インバータを制御する、請求項1から5のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項7】
各無停電電源装置の前記制御回路は、互いに通信可能に接続されており、
前記インバータ給電時において、前記制御回路は、
前記電流検出器の検出値が、対応する前記無停電電源装置の定格電流より大きい場合に、他の無停電電源装置の前記制御回路に対して前記バイパス給電への切替指令を送信し、
前記バイパス給電への切替指令を送信した場合、または、他の無停電電源装置の前記制御回路から前記バイパス給電への切替指令を受信した場合に前記バイパス給電へ切り替える、請求項6に記載の無停電電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無停電電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2016-174465号公報(特許文献1)には、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備えた無停電電源システムが開示されている。特許文献1では、複数の無停電電源装置の定格電流が異なる場合には、各無停電電源装置の制御回路は、自装置の定格電流と全装置の定格電流の総和との比を負荷電流に乗算して自装置の分担電流を求める。制御回路は、自装置の分担電流を負荷に供給するように自装置のインバータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
無停電電源装置には、自動給電切り替え機能を有するものがある。自動給電切り替え機能とは、インバータによって生成された交流電力を負荷に供給するインバータ給電中に負荷に過電流が生じたときに、インバータ給電を、商用電源からバイパス回路を介して交流電力を負荷に供給するバイパス給電へ切り替え、過電流がなくなった後、再び自動的にインバータ給電へ戻す機能をいう。
【0005】
負荷に対して複数の無停電電源装置が並列接続されている無停電電源システムにおいては、複数の無停電電源装置の間で給電を切り替えるタイミングを一致させる必要がある。これは、一部の無停電電源装置がバイパス給電を行い、他の無停電電源装置がインバータ給電を行うと、当該他の無停電電源装置のインバータが商用電源と並列運転することになり、両者の間に横流が流れるおそれがあるためである。
【0006】
その一方で、複数の無停電電源装置の定格電流が互いに異なる場合には、無停電電源装置ごとに過電流を判定する基準が異なるため、バイパス給電からインバータ給電へ戻す際に、バイパス給電とインバータ給電との切り替えが短時間で繰り返される現象が生じてしまうことが懸念される。
【0007】
本開示は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、定格電流が互いに異なる複数の無停電電源装置を並列接続してなる無停電電源システムにおける自動給電切り替え機能を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のある局面に従えば、負荷に対して並列接続される複数の無停電電源装置を備えた無停電電源システムが提供される。複数の無停電電源装置のうちの少なくとも2台の無停電電源装置の定格電流は互いに異なる。各無停電電源装置は、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータと、コンバータまたは電力貯蔵装置から供給される直流電力を交流電力に変換して負荷に供給するインバータと、第1端子に交流電源からの交流電力を受け、第2端子が負荷に接続されるスイッチと、無停電電源装置の出力電流を検出する電流検出器と、インバータおよびスイッチを制御する制御回路とを含む。インバータによって生成された交流電力を負荷に供給するインバータ給電時において、制御回路は、電流検出器の検出値が、対応する無停電電源装置の定格電流より大きい場合に、インバータの運転を停止するとともにスイッチを導通させ、交流電源からの交流電力を負荷に供給するバイパス給電へ切り替えるように構成される。バイパス給電時において、制御回路は、複数の無停電電源装置の全てにおいて、インバータ給電への切り替え後の出力電流が、対応する無停電電源装置の定格電流以下になることが判断された場合に、スイッチをオフするとともにインバータを再起動させて、インバータ給電へ切り替える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、定格電流が互いに異なる複数の無停電電源装置を並列接続してなる無停電電源システムにおける自動給電切り替え機能を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の実施の形態に従う無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
【
図2】無停電電源装置の構成を示す回路ブロック図である。
【
図3】インバータ給電時における無停電電源装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図4】無停電電源装置が有する自動給電切り替え機能を説明するための図である。
【
図5】比較例に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法を説明するためのフローチャートである。
【
図6】本実施の形態に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法の第1実施例を説明するためのフローチャートである。
【
図7】本実施の形態に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法の第2実施例を説明するためのフローチャートである。
【
図8】本実施の形態に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法の第3実施例を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、以下では図中の同一または相当部分には同一符号を付して、その説明は原則的に繰り返さないものとする。
【0012】
<無停電電源システムの構成例>
図1は、本開示の実施の形態に従う無停電電源システムの構成を示す回路ブロック図である。
図1に示すように、無停電電源システムは、N台の無停電電源装置U1~UNと、N組の遮断器B1~B3と、通信ケーブル1とを備える。Nは2以上の自然数であり、
図1ではN=2の場合が示されている。
【0013】
各無停電電源装置Uは、入力端子T1、直流端子T2、出力端子T3、および通信端子T4を含む。本明細書では、無停電電源装置U1,U2を総称して代表的に「無停電電源装置U」と呼ぶ場合がある。2組の遮断器B1~B3は、それぞれ2台の無停電電源装置U1,U2に対応して設けられている。
【0014】
各無停電電源装置Uの入力端子T1は、対応する組の遮断器B1を介して商用交流電源71に接続される。商用交流電源71は、商用周波数の交流電力を無停電電源システムに供給する。
【0015】
各無停電電源装置Uの直流端子T2は、対応する組の遮断器B2を介してバッテリ72に接続される。バッテリ72は、直流電力を蓄える。バッテリ72の代わりにコンデンサが接続されていても構わない。各無停電電源装置Uの出力端子T3は、対応する組の遮断器B3を介して負荷73に接続される。負荷73は、無停電電源システムから供給される交流電力によって駆動される。
【0016】
遮断器B1~B3は、対応する無停電電源装置Uを使用する場合にオンされ、対応する無停電電源装置Uを他の無停電電源装置Uから電気的に切り離す場合にオフされる。例えば、無停電電源装置U2が故障した場合には、それに対応する遮断器B1~B3をオフさせて他の無停電電源装置U1から電気的に切り離す。これにより、他の無停電電源装置U1を運転しながら、故障した無停電電源装置U2を修理したり、新しい無停電電源装置と交換することが可能となっている。なお、遮断器B1~B3の各々の代わりに差し込みプラグおよびコンセントを使用しても構わない。
【0017】
各無停電電源装置Uの通信端子T4は、通信ケーブル1を介して他の各無停電電源装置Uの通信端子T4に接続される。各無停電電源装置Uは、通信ケーブル1を介して他の各無停電電源装置Uと種々の情報を授受する。
【0018】
本実施の形態に従う無停電電源システムにおいて、無停電電源装置U1,U2は定格電流IRが互いに異なる。無停電電源装置U1の定格電流IR1と無停電電源装置U2の定格電流IR2の大小関係は、IR1>IR2となっている。
【0019】
なお、無停電電源装置U1,U2の定格電圧VORは同じ電圧である。定格電圧VORと定格電流IRとの積は定格容量PRとなる。したがって、無停電電源装置U1の定格容量PR1と無停電電源装置U2の定格容量PR2との大小関係は、PR1>PR2となっている。
【0020】
<無停電電源装置の構成例>
図2は、無停電電源装置U1の構成を示す回路ブロック図である。
図2において、無停電電源装置U1は、スイッチS1~S4、コンデンサ2,7,11、リアクトル3,10、コンバータ5、直流ライン6、双方向チョッパ8、インバータ9、電流検出器13、操作部14、および制御回路15を備える。
【0021】
スイッチS1およびリアクトル3は、入力端子T1とコンバータ5の交流ノードとの間に直列接続される。コンデンサ2は、スイッチS1とリアクトル3の間のノードN1に接続される。スイッチS1は、制御回路15によって制御され、無停電電源装置U1の使用時にオンされ、無停電電源装置U1のメンテナンス時にオフされる。入力端子T1に現れる交流入力電圧VIの瞬時値は、制御回路15によって検出される。交流入力電圧VIの瞬時値に基づいて、停電の発生の有無などが判別される。
【0022】
コンデンサ2およびリアクトル3は、交流フィルタ4を構成する。交流フィルタ4は、低域通過フィルタであり、商用交流電源71からコンバータ5に商用周波数の交流電力を通過させ、コンバータ5で発生するスイッチング周波数の信号が商用交流電源71に通過することを防止する。換言すると、交流フィルタ4は、コンバータ5の交流ノードから出力される電圧パルス列を正弦波状の交流電圧に変換してノードN1に出力する。
【0023】
コンバータ5は、制御回路15によって制御される。商用交流電源71の健全時には、コンバータ5は、商用交流電源71から供給される交流電力を直流電力に変換して直流ライン6に出力する。商用交流電源71の停電時には、コンバータ5の運転は停止される。
【0024】
コンデンサ7は、直流ライン6に接続され、直流ライン6の電圧VDを平滑化させる。直流ライン6に現れる直流電圧VDの瞬時値は、制御回路15によって検出される。直流ライン6は双方向チョッパ8の高電圧側ノードに接続され、双方向チョッパ8の低電圧側ノードはスイッチS2を介して直流端子T2に接続される。
【0025】
スイッチS2は、制御回路15によって制御され、無停電電源装置U1の使用時にオンされ、無停電電源装置U1のメンテナンス時にはオフされる。直流端子T2に現れるバッテリ72の端子間電圧VBの瞬時値は、制御回路15によって検出される。
【0026】
双方向チョッパ8は、制御回路15によって制御される。商用交流電源71の健全時には、双方向チョッパ8は、コンバータ5から直流ライン6を介して供給される直流電力をバッテリ72に蓄える。商用交流電源71の停電時には、双方向チョッパ8は、バッテリ72の直流電力を直流ライン6を介してインバータ9に供給する。
【0027】
インバータ9は、制御回路15によって制御される。商用交流電源71の健全時には、インバータ9は、コンバータ5から直流ライン6を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。商用交流電源71の停電時には、インバータ9は、バッテリ72から双方向チョッパ8を介して供給される直流電力を交流電力に変換する。
【0028】
インバータ9の交流ノードはリアクトル10の一方端子に接続され、リアクトル10の他方端子(ノードN2)はスイッチS3を介して出力端子T3に接続される。コンデンサ11は、ノードN2に接続される。リアクトル10およびコンデンサ11は、交流フィルタ12を構成する。
【0029】
交流フィルタ12は、低域通過フィルタであり、インバータ9で生成された商用周波数の交流電力を出力端子T3に通過させ、インバータ9で発生するスイッチング周波数の信号が出力端子T3に通過することを防止する。換言すると、交流フィルタ12は、インバータ9の交流ノードから出力される電圧パルス列を正弦波状の交流電圧VO1に変換してノードN2に出力する。
【0030】
スイッチS3は、制御回路15によって制御され、インバータ9によって生成された交流電力を負荷73に供給するインバータ給電時にはオンされ、商用交流電源71からの交流電力を、スイッチS4を介して負荷73に供給するバイパス給電時にはオフされる。
【0031】
スイッチS4は、入力端子T1および出力端子T3間に接続される。スイッチS4は、制御回路15によって制御され、インバータ給電時にはオフされ、バイパス給電時にはオンされる。商用交流電源71とは異なるバイパス交流電源(図示せず)から商用周波数の交流電力を受ける入力端子を設け、当該入力端子と出力端子T3との間にスイッチS4を接続してもよい。
【0032】
ノードN2に現れる交流出力電圧VO1の瞬時値は、制御回路15によって検出される。電流検出器13は、無停電電源装置U1の出力電流IO1の瞬時値を検出し、その検出値を示す信号IO1を制御回路15に与える。
【0033】
操作部14は、無停電電源システムの使用者によって操作される複数のボタン、種々の情報を表示する画像表示部などを含む。システムの使用者は、操作部14を操作することにより、無停電電源装置U1を手動で運転したり、自動的に運転させることができる。また、システムの使用者は、操作部14を操作することにより、無停電電源装置U1の装置番号(この場合は1番)などを設定することができる。操作部14は、設定された装置番号を含む信号を制御回路15に出力する。
【0034】
制御回路15は、他の各無停電電源装置Uの制御回路15と通信ケーブル1によって互いに接続され、通信ケーブル1を介して他の無停電電源装置U2と種々の情報を授受する。具体的には、制御回路15は、無停電電源装置U2の制御回路15から、無停電電源装置U2の出力電流IO2の検出値、無停電電源装置U2の定格電流IR2、およびバイパス給電指令BP2などを受信する。
【0035】
制御回路15は、操作部14からの信号、交流入力電圧VI、直流電圧VD、バッテリ電圧VB、交流出力電圧VO1、および出力電流IO1、ならびに無停電電源装置U2の制御回路15から送信された出力電流IO2の検出値、定格電流IR2、およびバイパス給電指令BP2などに基づいて、無停電電源装置U1全体を制御する。制御回路15は、通信ケーブル1を介して無停電電源装置U2の制御回路15に、出力電流IO1の検出値、無停電電源装置U1の定格電流IR1、およびバイパス給電指令BP1などを送信する。
【0036】
他の無停電電源装置U2も無停電電源装置U1と同様の構成である。
【0037】
<無停電電源システムの動作>
次に、本実施の形態に従う無停電電源システムの動作について説明する。
【0038】
商用交流電源71から交流電力が正常に供給されている場合(商用交流電源71の健全時)には、無停電電源装置U1,U2は、商用交流電源71からの交流電力を一旦、直流電力に変換し、その直流電力を交流電力に変換して負荷73に供給するとともにバッテリ72に蓄える。
【0039】
商用交流電源71から正常に交流電力が供給されていない場合(商用交流電源71の停電時)には、バッテリ72の直流電力を交流電力に変換して負荷73に供給する。したがって、バッテリ72に直流電力が蓄えられている期間は、停電時においても負荷73の運転を継続することができる。
【0040】
インバータ給電時、無停電電源装置U1,U2の分担電流IS1,IS2は、負荷電流ILと無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2とに基づいて決定される。
図3は、インバータ給電時における無停電電源装置U1の動作を説明するためのフローチャートである。
【0041】
図3に示すように、インバータ給電時には、無停電電源装置U1の制御回路15は、ステップS21にて、電流検出器13によって検出された出力電流IO1の検出値、および無停電電源装置U1の定格電流IR1を、通信ケーブル1を介して無停電電源装置U2の制御回路15に送信する。
【0042】
制御回路15はさらに、ステップS22により、無停電電源装置U2から通信ケーブル1を介して送信される無停電電源装置U2の出力電流IO2の検出値、および無停電電源装置U2の定格電流IR2を受信する。
【0043】
制御回路15は、ステップS23により、出力電流IO1の検出値と出力電流IO2の検出値とを加算して負荷電流IL=IO1+IO2を求める。
【0044】
制御回路15は、ステップS24により、定格電流IR1と定格電流IR2とを加算して全ての無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2の総和IRA=IR1+IR2を求める。
【0045】
制御回路15は、ステップS25にて、定格電流IR1と定格電流IR1,IR2の総和IRAとの比を負荷電流ILに乗算して、無停電電源装置U1の分担電流IS1=IL×IR1/IRAを求める。
【0046】
制御回路15は、ステップS26により、無停電電源装置U1の出力電流IO1が分担電流IS1になり、かつ無停電電源装置U1の出力電圧VO1が所定の目標電圧VOTになるようにインバータ9を制御する。
【0047】
無停電電源装置U2も無停電電源装置U1と同様の動作を実行する。なお、無停電電源装置U2の分担電流IS2は、IL×IR2/IRAとなる。無停電電源装置U2の制御回路15は、出力電流IO2が分担電流IS2になり、かつ、出力電圧VO2が所定の目標電圧VOTになるようにインバータ9を制御する。
【0048】
(自動給電切り替え機能)
無停電電源装置U1,U2の各々は、自動給電切り替え機能を有している。本明細書において、自動給電切り替え機能とは、インバータ給電中に負荷に過電流が生じたときに、インバータ給電をバイパス給電へ切り替え、過電流が解消された後、再び自動的にインバータ給電へ戻す機能をいう。
【0049】
図4は、無停電電源装置U1が有する自動給電切り替え機能を説明するための図である。
図4では、無停電電源装置U1のみが負荷73に接続されている状態において、無停電電源装置U1が一時的に過負荷となった場合を想定している。
【0050】
図4には、無停電電源装置U1の交流入力電圧VI、交流出力電圧VO1、スイッチS4に流れるバイパス電流IBP1、無停電電源装置U1の出力電流IO1、負荷電流ILの波形が示されている。
【0051】
時刻t0にて、無停電電源装置U1は、インバータ給電を行っている。インバータ給電時には、スイッチS3がオンされ、スイッチS4がオフされるため、バイパス電流IBP1は流れない。出力電流IO1と負荷電流ILとは一致している。
【0052】
インバータ給電中、制御回路15は、出力電流IO1と定格電流IR1との大小を比較する。IO1<IR1である場合には、制御回路15は、インバータ給電を継続させる。上述したように、制御回路15は、出力電流IO1が分担電流IS1となり、かつ出力電圧VO1が所定の目標電圧VOTになるようにインバータ9を制御する。
【0053】
時刻t1にて出力電流IO1が定格電流IR1を超えたことが検出された場合には、制御回路15は、インバータ9の運転を停止させるとともに、スイッチS4をオンさせ、スイッチS3をオフさせることにより、無停電電源装置U1をインバータ給電からバイパス給電へ切り替える(時刻t2)。バイパス給電中、商用交流電源71からの交流電力がスイッチS4を介して負荷73に供給されるため、バイパス電流IBP1と負荷電流ILとは一致している。
【0054】
時刻t2から一定時間後の時刻t3にて、制御回路15はインバータ9を起動させて、インバータ9を無負荷運転待機の状態にする。そして、過負荷が解消されたことによって出力電流IO1が定格電流IR1以下になったことが検出されると、制御回路15は、スイッチS3をオンさせ、スイッチS4をオフさせることにより(時刻t4)、無停電電源装置U1をバイパス給電からインバータ給電へ復帰させる。
【0055】
無停電電源装置U2も無停電電源装置U1と同様の自動給電切り替え機能を有している。ただし、
図1のように複数の無停電電源装置U1,U2を負荷73に対して並列接続した場合には、無停電電源装置U1,U2間でインバータ給電からバイパス給電へ切り替えるタイミング、およびバイパス給電からインバータ給電へ切り替えるタイミングを一致させる必要がある。これは、一方の無停電電源装置Uがバイパス給電を行い、他方の無停電電源装置Uがインバータ給電を行うと、当該無停電電源装置Uのインバータ9が商用交流電源71と並列運転することになり、商用交流電源71と当該無停電電源装置Uとの間に横流が流れる可能性があるためである。
【0056】
そのため、特許文献1では、各無停電電源装置は、自装置の出力電流が定格電流を超えた場合には、バイパス給電信号を他装置に与えることとし、全ての無停電電源装置からバイパス給電指令が出力された場合において、インバータ給電からバイパス給電へ切り替えるように構成されている。
【0057】
バイパス給電中は、各無停電電源装置Uは商用交流電源71からスイッチS4を介して負荷73に電力を供給するため、複数の無停電電源装置Uの出力電流IOは均等となる。しかしながら、複数の無停電電源装置Uの定格電流IRが互いに異なる場合には、各無停電電源装置Uが上述した自動給電切り替え機能において過電流が解消されたと判定するタイミングに違いが生じることになる。そのため、複数の無停電電源装置Uを一旦インバータ給電へ戻した直後に再びバイパス給電へ切り替えるという現象が繰り返されるといった問題が生じてしまうおそれがある。
【0058】
本実施の形態では、負荷73に対して並列接続される複数の無停電電源装置Uの定格電流IRが互いに異なる場合において、バイパス給電からインバータ給電への切り替えを円滑に行うことができる仕組みを提供する。
【0059】
[比較例]
最初に、本実施の形態の比較例に従う無停電電源システムの動作について説明する。比較例に係る無停電電源システムの構成は、本実施の形態に係る無停電電源システムの構成と同じであるため説明を繰り返さない。
【0060】
図5は、比較例に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法を説明するためのフローチャートである。
図5のフローチャートは、無停電電源装置U1の制御回路15によって繰り返し実行される。
【0061】
図5に示すように、制御回路15は、ステップS01にて、無停電電源装置U1がインバータ給電中であるか否かを判定する。無停電電源装置U1がインバータ給電中でない場合、すなわち、無停電電源装置U1がバイパス給電中である場合(S01のNO判定時)には、制御回路15は、ステップS02~S06の処理をスキップしてステップS07に進む。
【0062】
一方、無停電電源装置U1がインバータ給電中である場合(S01のYES判定時)には、制御回路15は、ステップS02により、無停電電源装置U2からバイパス給電指令BP2を受信したか否かを判定する。無停電電源装置U2からバイパス給電指令BP2を受信した場合(S02のYES判定時)には、制御回路15は、ステップS05に進み、インバータ9の運転を停止させるとともに、ステップS06にて、スイッチS4をオンさせ、スイッチS3をオフさせることにより、無停電電源装置U1をインバータ給電からバイパス給電へ切り替える。
【0063】
ステップS02にて無停電電源装置U2からバイパス給電指令BP2を受信していない場合(S02のNO判定時)には、制御回路15は、ステップS03に進み、無停電電源相とU1の出力電流IO1と定格電流IR1との大小を比較する。IO1≦IR1である場合(S03のNO判定時)には、制御回路15は以降のステップS04~S11をスキップして処理を終了する。IO1>IR1である場合(S03のYES判定時)には、制御回路15は、無停電電源装置U2にバイパス給電指令BP1を送信する。続いて、制御回路15は、ステップS05,S06の処理を実行することにより、無停電電源装置U1をインバータ給電からバイパス給電へ切り替える。
【0064】
バイパス給電中、制御回路15は、ステップS07にて、無停電電源装置U2からインバータ給電指令IV2を受信したか否かを判定する。無停電電源装置U2からインバータ給電指令IV2を受信した場合(S07のYES判定時)には、制御回路15は、ステップS10に進み、インバータ9を再起動させるとともに、ステップS11にて、スイッチS3をオンさせ、スイッチS4をオフさせることにより、無停電電源装置U1をバイパス給電からインバータ給電へ切り替える。
【0065】
ステップS07にて無停電電源装置U2からインバータ給電指令IV2を受信していない場合(S07のNO判定時)には、制御回路15は、ステップS08に進み、無停電電源装置U1の出力電流IO1と定格電流IR1との大小を比較する。IO1>IR1である場合(S08のNO判定時)には、制御回路15は、以降のステップS09~S11をスキップして処理を終了する。
【0066】
IO1≦IR1である場合(S08のYES判定時)には、制御回路15は、無停電電源装置U2にインバータ給電指令IV1を送信する。続いて、制御回路15は、ステップS10,S11の処理を実行することにより、無停電電源装置U1をバイパス給電からインバータ給電へ切り替える。
【0067】
以上のように、比較例では、無停電電源装置U1は、インバータ給電中に他の無停電電源装置U2からバイパス給電指令BP2を受信した場合、あるいは、他の無停電電源装置U2にバイパス給電指令BP1を送信した場合に、インバータ給電からバイパス給電に切り替える。またバイパス給電中、無停電電源装置U1は、他の無停電電源装置U2からインバータ給電指令IV2を受信した場合、あるいは、他の無停電電源装置U2にインバータ給電指令IV1を送信した場合に、バイパス給電からインバータ給電に戻す。無停電電源装置U2も無停電電源装置U1と同様である。
【0068】
比較例によると、バイパス給電中において、無停電電源装置U1,U2の出力電流IO1,IO2がIO1=IO2となる一方で、定格電流IR1,IR2はIR1>IR2であるため、IR1>IO1,IO2>IR2という関係が成り立つ場合がある。この場合、無停電電源装置U1,U2は、無停電電源装置U1から送信されるインバータ給電指令IV1に従って、バイパス給電からインバータ給電へ切り替えられる。ただし、インバータ給電への切り替え直後に、無停電電源装置U2から送信されるバイパス給電指令BP2に従って、再びバイパス給電へ切り替えられる。過負荷状態が徐々に解消される状況においては、IR1>IO1,IO2>IR2という関係が継続されるために、無停電電源装置U1,U2においてインバータ給電とバイパス給電との切り替えが頻繁に繰り返されることが懸念される。
【0069】
このような懸念点に対応するために、本実施の形態では、以下に説明するように、バイパス給電中、無停電電源装置U1,U2の全てにおいて、インバータ給電への切り替え後の出力電流IO1,IO2がそれぞれ定格電流IR1,IR2以下になることが判断された場合に、インバータ給電へ切り替えることとする。
【0070】
[第1実施例]
図6は、本実施の形態に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法の第1実施例を説明するためのフローチャートである。
図6のフローチャートは、無停電電源装置U1の制御回路15によって繰り返し実行される。
【0071】
図6に示す第1実施例は、
図5に示した比較例とは、ステップS07~S09がステップS12~S14に置き換えられている点が異なる。その他の処理については
図5と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0072】
図6に示すように、バイパス給電中、制御回路15は、ステップS12にて、無停電電源装置U2から送信される無停電電源装置U2の出力電流IO2の検出値を受信する。
【0073】
制御回路15は、ステップS13にて、電流検出器13から与えられた無停電電源装置U1の出力電流IO1の検出値と、無停電電源装置U2の出力電流IO2の検出値とを加算して負荷電流IL=IO1+IO2を求める。
【0074】
制御回路15は、ステップS14により、負荷電流ILと、全ての無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2の総和IRA=IR1+IR2との大小を比較する。IL>IRAである場合(S14のNO判定時)、制御回路15は、以降のステップS10,S11をスキップして処理を終了する。
【0075】
IL≦IRAである場合(S14のYES判定時)には、制御回路15は、ステップS10に進み、インバータ9を再起動させるとともに、ステップS11にて、スイッチS3をオンさせ、スイッチS4をオフさせることにより、無停電電源装置U1をバイパス給電からインバータ給電へ切り替える。
【0076】
以上のように、第1実施例では、無停電電源装置U1は、インバータ給電中に他の無停電電源装置U2からバイパス給電指令BP2を受信した場合、あるいは、他の無停電電源装置U2にバイパス給電指令BP1を送信した場合に、インバータ給電からバイパス給電に切り替える。バイパス給電中、無停電電源装置U1は、負荷電流ILが、全ての無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2の総和IRA以下となった場合に、バイパス給電からインバータ給電に戻す。無停電電源装置U2も無停電電源装置U1と同様である。
【0077】
第1実施例では、バイパス給電からインバータ給電へ戻すか否かの判定(S14)に用いる条件が全ての無停電電源装置U1,U2の間で共通である。そのため、バイパス給電時に、無停電電源装置U1,U2の出力電流IO1,IO2と定格電流IR1,IR2との間にIR1>IO1,IO2>IR2という関係が生じている場合であっても、インバータ給電への切り替え直後にバイパス給電へ切り替えられることを防ぐことができる。
【0078】
また第1実施例では、バイパス給電からインバータ給電へ戻す条件を、負荷電流ILが全ての無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2の総和IRA以下であることとしたことにより、インバータ給電に戻した後の無停電電源装置U1,U2の分担電流IS1,IS2が定格電流IR1,IR2よりも大きくなることを防ぐことができる。したがって、無停電電源装置U1,U2をバイパス給電からインバータ給電へ戻した後、再びバイパス給電へ切り替えられることを防ぐことができる。
【0079】
[第2実施例]
図7は、本実施の形態に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法の第2実施例を説明するためのフローチャートである。
図7において、無停電電源装置U1が行う処理が左側に示され、無停電電源装置U2が行う処理が右側に示される。
図7のフローチャートは、無停電電源装置U1,U2の制御回路15によって繰り返し実行される。
【0080】
第2実施例において、無停電電源装置U1が行う処理は、
図4に示した比較例とは、ステップS08,S09が除かれている点が異なる。無停電電源装置U2が行う処理は、
図4に示した比較例とは、ステップS07が除かれている点が異なる。その他の処理については
図4と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0081】
図7に示すように、バイパス給電中、無停電電源装置U1の制御回路15は、ステップS07にて、無停電電源装置U2からインバータ給電指令IV2を受信したか否かを判定する。無停電電源装置U2からインバータ給電指令IV2を受信した場合(S07のYES判定時)には、制御回路15は、ステップS10に進み、インバータ9を再起動させるとともに、ステップS11にて、スイッチS3をオンさせ、スイッチS4をオフさせることにより、無停電電源装置U1をバイパス給電からインバータ給電へ切り替える。
【0082】
バイパス給電中、無停電電源装置U2の制御回路15は、ステップS08により、無停電電源装置U2の出力電流IO2と定格電流IR2との大小を比較する。IO2>IR2である場合(S08のNO判定時)には、制御回路15は、以降のステップS09~S11をスキップして処理を終了する。
【0083】
IO2≦IR2である場合(S08のYES判定時)には、制御回路15は、ステップS09により、無停電電源装置U1にインバータ給電指令IV2を送信する。続いて、制御回路15は、ステップS10,S11の処理を実行することにより、無停電電源装置U2をバイパス給電からインバータ給電へ切り替える。
【0084】
以上のように、第2実施例では、バイパス給電中、無停電電源装置U1は、無停電電源装置U2からインバータ給電指令IV2を受信した場合にインバータ給電に戻る。すなわち、無停電電源装置U2の出力電流IO2が定格電流IR2以下となった場合に、全ての無停電電源装置U1,U2はインバータ給電に戻る。第2実施例においても、バイパス給電からインバータ給電へ戻すか否かの判定に用いる条件が全ての無停電電源装置U1,U2の間で共通であるため、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0085】
また第2実施例では、バイパス給電からインバータ給電へ戻す条件を、バイパス給電中、定格電流が最も小さい無停電電源装置U2の出力電流IO2が無停電電源装置U2の定格電流IR2以下であることとしたことにより、インバータ給電に戻した後の無停電電源装置U1,U2の出力電流IO1,IO2が定格電流IR1,IR2よりも大きくなることを防ぐことができる。したがって、無停電電源装置U1,U2をバイパス給電からインバータ給電へ戻した後、再びバイパス給電へ切り替えられることを防ぐことができる。
【0086】
なお第2実施例では、バイパス給電中の無停電電源装置U1,U2の出力電流IO1,IO2が無停電電源装置U2の定格電流IR2以下となるまでバイパス給電の実行が継続されることになるため、第1実施例に比べて、バイパス給電からインバータ給電へ戻すタイミングが遅れる場合がある。
【0087】
[第3実施例]
図8は、本実施の形態に従う無停電電源システムにおける給電切り替え方法の第3実施例を説明するためのフローチャートである。
図8のフローチャートは、無停電電源装置U1の制御回路15によって繰り返し実行される。
【0088】
図8に示す第3実施例は、
図4に示した比較例とは、ステップS07~S09がステップS15に置き換えられている点が異なる。その他の処理については
図4と同様であるため、その詳細な説明は繰り返さない。
【0089】
図8に示すように、バイパス給電中、制御回路15は、ステップS15にて、電流検出器13から与えられた無停電電源装置U1の出力電流IO1の検出値と、全ての無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2の総和IRAを無停電電源装置Uの台数N=2で除算した値IRA/2との大小を比較する。IO1>IRA/2である場合(S15のNO判定時)、制御回路15は、以降のステップS10,S11をスキップして処理を終了する。
【0090】
IO1≦IRA/2である場合(S15のYES判定時)には、制御回路15は、ステップS10に進み、インバータ9を再起動させるとともに、ステップS11にて、スイッチS3をオンさせ、スイッチS4をオフさせることにより、無停電電源装置U1をバイパス給電からインバータ給電へ切り替える。
【0091】
以上のように、第3実施例では、バイパス給電中、無停電電源装置U1は、出力電流IO1が、全ての無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2の総和IRAを無停電電源装置の台数Nで除算した値以下となった場合に、バイパス給電からインバータ給電に戻る。無停電電源装置U2も無停電電源装置U1と同様である。
【0092】
第3実施例においても、バイパス給電からインバータ給電へ戻すか否かの判定(S15)に用いる条件が全ての無停電電源装置U1,U2の間で共通であるため、第1実施例と同様の効果を得ることができる。
【0093】
また第3実施例におけるバイパス給電からインバータ給電へ戻す条件、すなわち、バイパス給電中の無停電電源装置U1,U2の出力電流IO1,IO2が全ての無停電電源装置U1,U2の定格電流IR1,IR2の総和IRAを無停電電源装置の台数Nで除算した値IRA/N以下であることは、第1実施例におけるバイパス給電からインバータ給電へ戻す条件と実質的に同じである。したがって、第1実施例と同様に、インバータ給電に戻した後の無停電電源装置U1,U2の分担電流IS1,IS2が定格電流IR1,IR2よりも大きくなることを防ぐことができる。したがって、無停電電源装置U1,U2をバイパス給電からインバータ給電へ戻した後、再びバイパス給電へ切り替えられることを防ぐことができる。
【0094】
[その他の構成例]
上述した実施の形態では、無停電電源装置Uの台数N=2である無停電電源システムに本開示を適用した場合について説明したが、これに限るものではなく、本開示はN≧3である無停電電源システムにも適用可能である。この場合、N台の無停電電源装置の定格電流が互いに異なっていてもよく、N台の無停電電源装置のうちの少なくとも2台の無停電電源装置の定格電流が互いに異なっていてもよい。
【0095】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本開示は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0096】
2,7,11 コンデンサ、3,10 リアクトル、4,12 交流フィルタ、5 コンバータ、6 直流ライン、8 双方向チョッパ、9 インバータ、13 電流検出器、14 操作部、15 制御回路、71 商用交流電源、72 バッテリ、73 負荷、U1~UN,U2,U 無停電電源装置、B1~B3 遮断器、T1 入力端子、T2 直流端子、T3 出力端子、T4 通信端子、S1~S4 スイッチ、IS1,IS2 分担電流、IR1,IR2 定格電流、IV1,IV2 インバータ給電指令、BP1,BP2 バイパス給電指令。