(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075036
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】機能性仕切部材、機能性窓、及び、機能性仕切部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
H10N 10/17 20230101AFI20240527BHJP
【FI】
H01L35/32 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186153
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】520415225
【氏名又は名称】株式会社フロスト
(74)【代理人】
【識別番号】100137394
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 敏弘
(72)【発明者】
【氏名】霜 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】鶴見 重行
(57)【要約】
【課題】 ガラスは建築物では屋外と屋内、交通機関では車外と車内を隔てている。外と内とでは当然温度差がある。こうした温度差によるエネルギーは膨大な量であり、原理的にはエネルギーとして利用できる。しかしながらこのエネルギーの利用は技術的に難しくほとんどが捨てられていた。透明でガラスを通して物が見える本来の機能を維持して熱電特性を付与し、ガラスを通して無駄に廃棄されていた熱を電気エネルギーとして再生する。この電気エネルギーを家庭、オフィス、工場、農場等あらゆるところに供給する。また、ガラス表面に結露した場合の除去の方法も課題があった。
【解決手段】 従来のガラスを2枚使用して間にp型及びn型からなる熱電材料をπ型モジュールにして、多数個を挿入し直列及び並列に接続してガラス全体を熱電モジュールとして発電する。またガラスが結露した場合に結露側が発熱するように電流を流すと結露防止が出来る。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性があり、板状に形成された第1の基板と、
透光性があり、板状に形成された第2の基板と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の板面の間に位置し、柱体の形状に形成された熱電素子と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の板面が対向し、前記熱電素子が収容された空間である収容室と
を有し、
前記収容室の内部の圧力は、当該収容室の外部の圧力より低く、
前記熱電素子は、前記第1の基板及び前記第2の基板により押圧される
機能性仕切部材。
【請求項2】
前記第1の基板及び前記第2の基板は、板状のガラスであり、
前記第1の基板又は前記第2の基板の板面における面積のうち、30%以上50%以下の範囲を占めるよう配置される
請求項1に記載の機能性仕切部材。
【請求項3】
前記第1の基板又は前記第2の基板に設けられ、前記収容室の内部と外部とを接続する貫通孔
をさらに有する
請求項2に記載の機能性仕切部材。
【請求項4】
透光性がある機能性仕切部材と、
前記機能性仕切部材を所定の開口に配置するためのサッシと
を有し、
前記機能性仕切部材は、
透光性があり、板状に形成された第1の基板と、
透光性があり、板状に形成された第2の基板と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の板面の間に位置し、柱体の形状に形成された熱電素子と、
前記第1の基板及び前記第2の基板の板面が対向し、前記熱電素子が収容された空間である収容室と
を有し、
前記収容室の内部の圧力は、当該収容室の外部の圧力より低く、
前記熱電素子は、前記第1の基板及び前記第2の基板により押圧される
機能性窓。
【請求項5】
透光性があり、板状に形成された第1の基板及び第2の基板の板面の間に、柱体の形状に形成された熱電素子を配置し、熱電素子が収容された空間を形成する工程と、
前記熱電素子が収容された空間の内部の圧力を、外部の圧力より低くする工程と
を有する機能性仕切部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能性仕切部材、機能性窓、及び、機能性仕切部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、第1の合わせガラス部材と、第2の合わせガラス部材と、前記第1の合わせガラス部材と前記第2の合わせガラス部材との間に配置された合わせガラス用中間膜である熱可塑性樹脂フィルムと、電極とを備え、熱可塑性樹脂フィルムは、電極に接続されて用いられる熱可塑性樹脂フィルムであって、熱可塑性樹脂と、前記熱可塑性樹脂フィルムが前記電極に接続された状態で熱電変換機能を発現する熱電変換材料とを含み、可視光線透過率が40%以上であり、前記熱可塑性樹脂フィルムが前記電極に接続されている、熱電変換合わせガラスが開示されている。
【0003】
また例えば、非特許文献1には、ガラスの透明性を損なうことなく透明な亜鉛酸化物(以下、ZnOと記す)の被膜中にZnOのナノワイヤを垂直に埋め込みZnOの3倍の出力因子を得た報告がなされている。これらの材料をn型、p型の素子に発展させpn接合を作製して熱電発電モジュールにすること、配線すること等の提案には至っていない。これらの成果はまだ材料研究のフェーズである。これらの材料を窓ガラスの表面に形成してガラス表面の温度と外気との温度差により発電することを狙っている。
また、非特許文献2には、熱電変換の基礎的な理論とこれまで使用されてきた熱電材料、熱電モジュールが紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】再表WO2019/049942号公報
【非特許文献1】中村芳明他 著 「大阪大学大学院基礎工学研究科:透明ワイヤ材料による発電電力増大技術」 リソウ(大阪大学研究専用ポータルサイト) 2018年
【非特許文献2】坂田亮 著 「熱電変換工学-基礎と応用-」 リアライズ社出版 2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、採光を確保しつつ、効率的に発電することができる機能性ガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る機能性仕切部材は、透光性があり、板状に形成された第1の基板と、透光性があり、板状に形成された第2の基板と、前記第1の基板及び前記第2の基板の板面の間に位置し、柱体の形状に形成された熱電素子と、前記第1の基板及び前記第2の基板の板面が対向し、前記熱電素子が収容された空間である収容室とを有し、前記収容室の内部の圧力は、当該収容室の外部の圧力より低く、前記熱電素子は、前記第1の基板及び前記第2の基板により押圧される。
【0007】
好適には、前記第1の基板及び前記第2の基板は、板状のガラスであり、前記第1の基板又は前記第2の基板の板面における面積のうち、30%以上50%以下の範囲を占めるよう配置される。
【0008】
好適には、前記第1の基板又は前記第2の基板に設けられ、前記収容室の内部と外部とを接続する貫通孔をさらに有する。
【0009】
また、本発明に係る機能性窓は、透光性がある機能性仕切部材と、前記機能性仕切部材を所定の開口に配置するためのサッシとを有し、前記機能性仕切部材は、透光性があり、板状に形成された第1の基板と、透光性があり、板状に形成された第2の基板と、前記第1の基板及び前記第2の基板の板面の間に位置し、柱体の形状に形成された熱電素子と、前記第1の基板及び前記第2の基板の板面が対向し、前記熱電素子が収容された空間である収容室とを有し、前記収容室の内部の圧力は、当該収容室の外部の圧力より低く、前記熱電素子は、前記第1の基板及び前記第2の基板により押圧される。
【0010】
また、本発明に係る機能性仕切部材の製造方法は、透光性があり、板状に形成された第1の基板及び第2の基板の板面の間に、柱体の形状に形成された熱電素子を配置し、熱電素子が収容された空間を形成する工程と、前記熱電素子が収容された空間の内部の圧力を、外部の圧力より低くする工程とを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、採光を確保しつつ、効率的に発電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態における機能性窓1を例示する斜視図である。
【
図4】pn接合された熱電素子420を例示する図である。
【
図5】本実施形態における機能性ガラス4の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
【
図6】下部ガラス板402上に配置された下部電極板4202に、熱電素子420を配置した図である。
【
図7】下部ガラス板402上に配置した熱電素子420に、上部電極板4221を配置した上部ガラス板401を配置した図である。
【
図8】本実施形態の機能性窓1における変形例1を例示する図である。
【
図9】本実施形態の機能性窓1における変形例2を例示する図である。
【
図10】本実施形態の機能性窓1における変形例3を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
例えば建築物において、窓とは、採光、通風、眺望といった目的を達成するために、壁または屋根に設けられる開口部に設置された、可動式又は嵌め込み式の建具である。また、車や電車等の乗り物において、窓とは、視界確保、車内換気といった目的を達成するために、車室前方、車室後方、車室側面に設けられた開口部に設置された、可動式又は嵌め込み式の窓である。建築物の窓や乗り物の窓は、ガラスと、このガラスを支持するフレームとを含む。ガラスは、建築物において屋外と屋内とを隔て、乗り物においては車外と車内とを隔ており、外と内とで当然温度差がある。こうした温度差によるエネルギーは膨大な量であり、原理的にはエネルギーとして利用できる。しかしながら、このエネルギーの利用は技術的に難しくほとんどが捨てられている状況である。そこで、窓のガラスに対して、熱エネルギーを電気エネルギーに変換できる熱電材料を配置することでエネルギーの利用が可能である。
【0014】
従来技術として、室温から100℃の低温領域の熱エネルギーはほとんど利用されずに捨てられるため、利用するためのガラスの開発が進められている。例えば、熱電特性を有し透明性を有するZnOを薄膜状にしてガラス表面に貼付した熱発電用ガラスが提案されてきた。ZnOの薄膜は、透明にすることができ、ドーパントを加えればn型にもp型にもなる熱電特性を有しているためである。ただし、ZnOの薄膜の熱電特性は、それほど良好ではなく、発電素子としてはそれほど使われていない。また、透明電極として知られているITO膜も熱電特性を有しているが、ZnO薄膜と同様に、熱電特性が低く積極的に熱電素子として使用されていない。
【0015】
一方で、例えば、ビスマス-テルル(以下Bi-Teと記す)系熱電材料、鉛-テルル(以下Pb-Teと記す)系熱電材料、スズ-セレン(以下Sn-Seと記す)系熱電材料、又は、シリコン-ゲルマニウム(以下Si-Geと記す)系熱電材料等の熱電素子は、熱電特性が優れているが、概ね不透明な熱電材料であるため、窓ガラスに適用して実用化したものは、ほとんど見られない。不透明な熱電材料を窓ガラスに配置すると、遮光し、かつ、視界を遮ってしまう。そこで、上記事情を一着眼点にして本発明の実施形態を創作するに至った。本発明の実施形態によれば、採光や視界を確保しつつ、高い熱電特性を有することができる。以下、このような本発明の実施形態による機能性ガラス1を、図面を参照して説明する。ただし、本発明の範囲は、図示例に限定されるものではない。
【0016】
まず、
図1~
図3を参照し、実施形態における機能性ガラス1の構成を説明する。
図1は、本実施形態における機能性窓1を例示する斜視図である。
図1に例示するように、機能性窓1は、例えば、壁または屋根に設けられた開口部に設置された、可動式又は嵌め込み式の建具である。本例の機能性窓1は、壁に設置された、可動式の窓である。また、機能性窓1は、開閉形式として、横引き型、引違い型、開き型(片開き及び両開き)、滑り出し型、ドレーキップ型、又は上げ下げ型の窓であり、本例の機能性窓1は、引違い型である。また、機能性窓1は、電線を介して蓄電器9を電気的に接続している。
蓄電器9は、機能性窓1により発電された電気を蓄電し、又は、蓄電している電気を機能性窓1に供給する。以下、説明の便宜上、機能性窓1を配置した室内を低温側とし、室外を高温側として説明する。
【0017】
図2は、機能性窓1を例示する断面斜視図である。
図3は、機能性ガラス4を詳細に説明する斜視図である。
図2及び
図3に例示するように、機能性窓1は、機能性ガラス4と、サッシ6とを有する。機能性窓1は、サッシ6に機能性ガラス4を組み合わせてなる。
機能性ガラス4は、単板ガラス、複層ガラス、又は、合わせガラスであり、本例では、複層ガラスである。機能性ガラス4は、ガラス板40、熱電ユニット42、スペーサー44、収容室46、封止材48、及び、貫通孔60を含む。なお、機能性ガラス4は、本発明に係る機能性仕切部材の一例である。
【0018】
ガラス板40は、窓ガラスに使用する板状のガラスであり、例えば、型板ガラス、フロートガラス(透明ガラス)、網入りガラス、磨りガラス、フロストガラス、ミラーガラス、又は、強化ガラスである。ガラス板40は、透光性があるならば、透明又は半透明であってもよい。また、ガラス板40は、上部ガラス401及び下部ガラス402を含む。
上部ガラス401は、透光性があり、扁平な板状に形成されたガラス板であり、本例では室外側に位置するガラス板である。なお、本例の上部ガラス401は、ガラス板である場合を説明するが、これに限定するものではなく、透光性があり板状に形成された合成樹脂の基板として、例えばアクリル板に代替することができる。上部ガラス401は、本発明に係る第1の基板の一例である。
また、下部ガラス402は、透光性があり、扁平な板状に形成されたガラス板であり、室内側に位置するガラス板である。なお、本例の下部ガラス402は、ガラス板である場合を説明するが、これに限定するものではなく、透光性があり板状に形成された合成樹脂の基板として、例えばアクリル板に代替することができる。下部ガラス402は、本発明に係る第2の基板の一例である。
本例の機能性ガラス4は、複層ガラスであるため、上部ガラス401及び下部ガラス402は、同じ板状ガラスを組み合わせてもよいし、異なる板状ガラスを組み合わせてもよい。なお、本例の上部ガラス401及び下部ガラス402は、フロートガラスである。
【0019】
スペーサー24は、上部ガラス401及び下部ガラス402の離間間隔を一定に保持するための部材である。スペーサー24は、後述する熱電ユニット42が配置できる程度に、上部ガラス401及び下部ガラス402を離間させる。
【0020】
熱電ユニット42は、熱エネルギー及び電気エネルギーを相互に変換するユニットである。熱電ユニット42は、熱電素子420と、電極板422とを含む。熱電ユニット42は、ガラス板40の板面における面積のうち50%以下、具体的には、ガラス板40の板面における面積のうち30%以上50%以下を占めるよう配置する。これにより、目隠しとして機能させると共に、室外の景色を見ることが出来きるため、窓の機能を失わない。
熱電素子420は、上部ガラス401及び下部ガラス402の板面の間に位置し、柱体の形状に形成された素子である。熱電素子420は、熱エネルギー及び電気エネルギーを相互に変換する材料を多角柱の形状に成形した素子であり、例えばBi-Te系熱電材料、Pb-Te系熱電材料、Sn-Se系熱電材料、又は、Si-Ge系熱電材料等の熱電素子である。本例の熱電ユニット42は、一般住宅の窓に配置する場合であるため、熱電素子420は、常温から100℃程度の温度領域に対応していればよく、例えば、Bi-Te系熱電材料を使用できる。
また、熱電素子420は、p型熱電素子4201及びn型熱電素子4202を含む。p型熱電素子4201及びn型熱電素子4202は、底面の形状において頂点の数が4つ以上の多角柱の形状であればよいが、効率的に配列するには四角柱の形状(例えば直方体)が好ましい。
【0021】
電極板422は、導電性のある材料で形成された、金属または透明電極材料の薄板または薄膜である。電極板422は、例えば、金属系ではアルミニウム、銅及びその合金、銀及びその合金、透明電極材料系では酸化インジウムスズ、酸化亜鉛、酸化スズ等の材料により形成することが出来る。なお、本例の電極板422は、銅の薄板である。
電極板422は、上部電極板4221及び下部電極板4222を含む。
上部電極板4221は、上部ガラス401の板面に接触し、隣り合う2つの熱電素子420を互いに電気的に接続する。
下部電極板4222は、下部ガラス402の板面に接触し、隣り合う2つの熱電素子420を互いに電気的に接続する。また、下部電極板4222には、後述する収容室46の内部から外部に突出する外部電極板が含まれる。
また、熱電ユニット42の詳細な構成は後述する。
【0022】
収容室46は、上部ガラス401及び下部ガラス402の板面が対向し、熱電素子420が収容された空間である。具体的には、収容室46は、ガラス板40(上部ガラス401及び下部ガラス402)、及び、スペーサー44により囲まれた空間であり、後述する封止材48により封止される。封止された収容室46には、熱電ユニット42(熱電素子420及び電極板422)が収容されている。また、収容室46の内側は、大気圧より減圧された状態、不活性ガス若しくは充填材が充填された状態、又は、その両方の状態となっており、本例の収容室46の内側は、大気圧より減圧された真空状態となっている。すなわち、収容室46の内部の圧力は、収容室46の外部の圧力より低くなっている。収容室46は、大気圧より減圧し真空状態となることにより、収容室46を構成する一対のガラス板40が大気圧で内側に撓み、熱電ユニット42の熱電素子420をガラス板40の板面で押圧し固定する。なお、収容室46は、本発明に係る収容室の一例である。
【0023】
封止材48は、ガラス板40とスペーサー44とにより形成された収容室46を気密性の高い状態で封止する封止部材である。封止材48は、収容室46に熱電ユニット42を配置した状態でガラス板40とスペーサー44との繋ぎ目を含む周縁を封止する。封止材48は、収容室46内を脱気して真空状態にするため、真空排気に耐える材料、真空を保持できる材料とすることが好ましく、例えばグリース状のシリコーン系オイルである。本例の封止材48は、信越化学工業社製のオイルコンパウンド、高真空シール用接着剤である。
【0024】
貫通孔60は、本発明に係る貫通孔の一例であり、ガラス板40に設けられ、収容室46の内部と外部とを接続する貫通孔である。貫通孔60は、収容室46内の気体を吸引後に、閉止蓋61にて閉止される。
【0025】
サッシ6は、機能性ガラス4の周縁に配置されたガラスフレームと、ガラスフレームをスライド可動自在に配置するための枠とを含む。サッシ6は、アルミ素材のアルミサッシ、合成樹脂素材の樹脂サッシ、室外側はアルミ素材かつ室内側は樹脂素材の複合サッシ、又は、木製のサッシである。
【0026】
図4は、pn接合された熱電素子420を例示する図である。
図4に例示するように、p型熱電素子4201及びn型熱電素子4202は、電極板4221により接合され、電気的に接続される。p型熱電素子4201及びn型熱電素子4202は、いわゆるπ型構造となっている。例えば室外が高温側となり、室内が低温側となる場合において、p型熱電素子4201及びn型熱電素子4202は、その温度差により発電を行う。p型熱電素子4201では高温によりホールが形成されそれが下部に拡散する。また、n型熱電素子4202では電子が形成されそれが下部に拡散する。その結果、p型熱電素子4201に接続する下部電極板4222と、n型熱電素子4202に接続する下部電極板4222との間に電位差を生じる。図示した複数の熱電素子420を直列接続又は並列接続することでπ型構造をした熱電ユニット42としている。
【0027】
次に、本実施形態における機能性ガラス4の製造方法を説明する。以下、一例として、
図6及び
図7を参照し、
図5に例示するステップS100~S108における作業工程を説明する。
図5は、本実施形態における機能性ガラス4の製造方法(S10)を説明するフローチャートである。
図6は、下部ガラス板402上に配置された下部電極板4222に、熱電素子420を配置した図である。
図7は、下部ガラス板402上に配置した熱電素子420に、上部電極板4221を配置した上部ガラス板401を配置した図である。
【0028】
図5に例示するように、ステップ100(S100)において、作業者は、下部ガラス402の一方の板面に下部電極板4222を接着して配置する。作業者は、ガラス板40の板面の面積のうち30%以上50%以下を占めるよう配置する。
【0029】
ステップ102(S102)において、作業者は、
図6に例示するように、下部ガラス402上に接着した下部電極板4222上に、熱電素子420(p型熱電素子4201及びn型熱電素子420)を配置し、接合部材により熱電素子420と下部電極板4222とを接合する。接合部材とは、例えば、はんだ、導電性ペースト(例えば銀ペースト又は銅ペースト)又は導電性接着材であり、本例でははんだである。作業者は、はんだにより熱電素子420及び下部電極板4222を接合する。作業者は、熱電ユニット42の使用環境により接合部材を決定する。接着された下部電極板4222及び熱電素子420は、電気的に接続している。作業者は、1つの下部電極板4222に対して、p型熱電素子4201とn型熱電素子4202とが互いに離間した状態でこれらを接合する。
【0030】
ステップ104(S104)において、作業者は、上部ガラス401の一方の板面に上部電極板4221を接着して配置する。作業者は、下部ガラス402に上部ガラス401を重ね合せた場合に、下部ガラス402側に接着したp型熱電素子4201及び型熱電素子4202が対応するような位置に上部電極板4221を接着する。
【0031】
ステップ106(S106)において、作業者は、
図7に例示するように、下部ガラス402の熱電素子420及び下部電極板4222を接着した板面と、上部ガラス401の上部電極板4221を接着した板面とが向かい合った状態で、下部ガラス402にスペーサー44及び上部ガラス401を組み合わせ、熱電素子420及び上部電極板4221を接合する(熱電ユニット42の形成)。そして、作業者は、封止材48により、上部ガラス402、上部ガラス401及びスペーサー44を封止することにより、上部ガラス402、上部ガラス401及びスペーサー44により囲まれた空間を形成する。形成された空間内には、熱電ユニット42が収容される。
【0032】
ステップ108(S108)において、作業者は、封止材48により封止するタイミングで、封止材48を介して、熱電ユニット42を収容した空間の内部から外部に下部電極板4222のうち外部電極板を突出させる。また、作業者は、熱電ユニット42を収容した空間の内部の圧力を、外部の圧力より低くする。具体的には、作業者は、貫通孔60から熱電ユニット42を収容した空間の内部にある空気を脱気し、脱気後に閉止蓋61で閉止することにより、この空間内を真空状態にする(収容室46の形成)。
このように、作業者は、一対のガラス板40の間に熱電ユニット42を配置した機能性ガラス4を得ることができる。また、収容室46内を真空状態にするため、断熱性が優れ、上下ガラス板間の温度差を保つように働き、熱電発電が安定して行うことができる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態における機能性窓1によれば、ガラス板40に規則的に分散して配置することにより、適度な目隠しを行うと共に、採光を調整して取り入れることができる。
また、機能性窓1は、収容室46を真空にすることにより、夏は屋外の温度が高く、冬は室内の温度が高いため、室内外の温度差により発電することが出来る。特に寒冷地において室外がマイナス温度、室内が20℃付近で内外温度差が20℃を超え場合は良く発電する。太陽電池と異なり温度差さえあれば一日中発電できる。また、夏場において室外が35℃以上となり、室内に冷房で冷却している場合も当然発電し蓄電池に電気を蓄えることが出来る。特に直射日光が照射した場合は内外のガラス板に温度差が20℃以上になり太陽電池に劣らない発電が可能となる。
【0034】
また、機能性窓1の電流の向きは、ダイオードによる回路で一定にできるので温度差があれば蓄電器9に電気を貯められることが出来る。このようにして発電した電気を蓄電器9に蓄積して使用することにより、再生可能エネルギーとして環境問題の解決方法の一つとなる。
また、機能性窓1は、機能性ガラス4により室内側の下部ガラス402を温めることにより、結露を防止することが出来る。
【0035】
また、上記実施形態では、窓ガラスに機能性ガラス4を採用したがこれに限定するものではなく、例えば冷凍庫の窓として採用することもできる。これにより、50℃を超える温度差が常時確保できるため、効率的に熱電発電を行うことができる。
以上、本発明に係る実施形態について説明したが、これらに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更、追加等が可能である。
【0036】
次に、上記実施例における変形例を説明する。
なお、変形例では、上記実施例と実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
[変形例1]
図8は、本実施形態の機能性窓1における変形例1を例示する図である。
上記実施形態では、機能性窓1が引違い型である場合を説明したが、これに限定するものでなく、
図8に例示するように、開き型(片開き)であってもよい。
【0037】
[変形例2]
図9は、本実施形態の機能性窓1における変形例2を例示する図である。
上記実施形態では、機能性ガラス4を壁面の開口に採用した機能性窓1を説明したが、これに限定するものではなく、農業用の温室の屋根に機能性ガラス4を採用してもよい。
図9に例示するように、機能性窓1は、農業用の屋外温室の屋根の一部として設置してもよい。これにより、機能性窓1は、温室の内外の温度差を利用して効率的に発電でき、かつ、ガラス窓として日光も取り入れることができる。また、機能性窓1の発電ユニット42により熱電発電して得た電気を蓄電器9に蓄積し、夜間の照明用電源あるいは冷暖房の一部として利用することができる。
【0038】
[変形例3]
図10は、本実施形態の機能性窓1における変形例3を例示する図である。
上記実施形態では、機能性ガラス4を壁面の開口に採用した機能性窓1を説明したが、これに限定するものではなく、自動車のリアウィンドウに機能性ガラス4を採用してもよい。
図10に例示するように、機能性窓1は、自動車のリアウィンドウとして設置してもよい。機能性窓1は、自動車の車内外の温度差を利用して発電し蓄電することができる。
機能性ガラス4のガラス板40は、扁平な板状、又は、車内側に凹曲面となる板状のガラスであり、上部ガラス401及び下部ガラス402の板面の形状(曲率)は、同様である。
熱電ユニット42は、窓の板面の面積に対して、熱電素子420及び電極板422が占める大きさ合計面積の比を50%以下にして配置する。これにより、機能性窓1は、リアウィンドウとしての視認性を保持する。また、機能性窓1は、車内外で結露した場合に、結露する車内側が発熱するように電流を流すことで結露防止が出来る。
【符号の説明】
【0039】
1 機能性窓
4 機能性ガラス
40 ガラス板40
401 上部ガラス
402 下部ガラス
42 熱電ユニット
420 熱電素子
4201 p型熱電素子
4202 n型熱電素子
422 電極板
4221 上部電極板
4222 下部電極板
44 スペーサー
46 収容室
48 封止材
60 貫通孔