(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075042
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】ポリウレタン接着剤用ポリオール組成物、ポリウレタン接着剤用プレポリマー及びポリウレタン接着剤、並びにそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08G 18/82 20060101AFI20240527BHJP
C08G 65/30 20060101ALI20240527BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20240527BHJP
C08G 18/28 20060101ALI20240527BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20240527BHJP
C08J 11/24 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
C08G18/82
C08G65/30
C08G18/48 004
C08G18/28 010
C09J175/04
C08J11/24 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186178
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】吉田 佳弘
(72)【発明者】
【氏名】上浦 健司
【テーマコード(参考)】
4F401
4J005
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401AD09
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4J040EF051
4J040EF281
4J040JB03
4J040KA23
4J040LA06
(57)【要約】
【課題】ポリウレタン樹脂の分解物を原料に用い、市販品と同等のポットライフ及び接着性を有するポリウレタン接着剤を与えるポリオール組成物並びにその製造方法を提供する。本発明はSDGs(Sustainable Development Goals)のGoal12等の達成に貢献し得る。
【解決手段】ポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させて得られるポリウレタン樹脂分解物(A)並びにポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)を配合してなる、ポリウレタン接着剤用ポリオール組成物。ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の合計100質量%に対し、前記分解物(A)を20質量%以上、希釈剤(B)を0~80質量%配合してなり;前記分解物(A)はポリエーテルポリオール由来の構造を含み;前記組成物の水酸基価が1~120mg-KOH/g、全アミン価が1~50mg-KOH/gである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン樹脂分解物(A)、並びにポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)を配合してなる、ポリウレタン接着剤用ポリオール組成物であって、
前記ポリウレタン樹脂分解物(A)はポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させて得られるものであり、
前記ポリウレタン樹脂分解物(A)及び前記希釈剤(B)の合計100質量%に対して、前記ポリウレタン樹脂分解物(A)を20質量%以上、前記希釈剤(B)を0~80質量%配合してなり、
前記ポリウレタン樹脂分解物(A)は、ポリエーテルポリオール由来の構造を含み、
前記ポリオール組成物において、水酸基価が1~120mg-KOH/gであり、全アミン価が1~50mg-KOH/gである、ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリウレタン樹脂が、ウレタンフォーム由来の廃材である、請求項1に記載のポリオール組成物。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂分解物(A)は、芳香族ポリイソシアネート由来の構造をさらに含む、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項4】
前記希釈剤(B)が、数平均分子量1,000~20,000のポリエーテルポリオールである、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項5】
前記分解剤が1価のアルコールである、請求項1又は2に記載のポリオール組成物。
【請求項6】
請求項1又は2に記載のポリオール組成物、及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られる、ポリウレタン接着剤用のプレポリマー。
【請求項7】
請求項6に記載のプレポリマーを含む、ポリウレタン接着剤。
【請求項8】
湿気硬化型である、請求項7に記載のポリウレタン接着剤。
【請求項9】
請求項1又は2に記載のポリオール組成物の製造方法であって、以下の工程:
工程1:ポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させ、ポリウレタン樹脂を分解する工程、並びに
工程2:工程1で得られた分解物を精製して、ポリウレタン樹脂分解物を得る工程
を含む、製造方法。
【請求項10】
前記工程1において、ポリウレタン樹脂に少なくとも分解剤を作用させ、
工程3:工程2で得られたポリウレタン樹脂分解物と前記希釈剤(B)を混合する工程、及び
工程4:工程3で得られた混合物から分解剤を留去する工程
をさらに含む、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記分解剤が1価のアルコールである、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
工程1における分解温度及び/又は分解剤の沸点が100~270℃である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項13】
請求項9に記載の製造方法で得られたポリオール組成物、及びポリイソシアネート化合物を反応させる工程を含む、ポリウレタン接着剤用のプレポリマーの製造方法。
【請求項14】
ポリイソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートである、請求項13に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン樹脂のリサイクル技術に関し、詳しくはポリウレタン樹脂を化学的に分解して得られた分解物を配合してなるポリウレタン接着剤用ポリオール組成物、ポリウレタン接着剤用プレポリマー及びポリウレタン接着剤、並びにそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境の保全及び有限な資源の有効利用の立場から、リサイクルは、最も重要な社会的要請の一つである。プラスチックは産業資材及び一般消費資材として広く使われており、そのリサイクルへの取り組みも進んでいる。しかしながら、ポリウレタン樹脂を始めとする熱硬化性プラスチックは、熱を加えても溶融しないために再成形が難しく、加工後の用途が限定されてしまうという問題があった。現状では、ポリウレタン樹脂、特に発泡ポリウレタンの廃材を破砕し、接着剤と混ぜ合わせて成形するマテリアルリサイクルが主流となっている。
【0003】
ポリウレタン樹脂をグリコール分解、アミン分解等によりケミカルリサイクルする方法についても研究されている。例えば、特許文献1では、ウレタン樹脂を主として含む混合樹脂に、ジエタノールアミン等のウレタン樹脂の分解剤を反応させて液状物質にする分解工程と、所定の温度に加熱した状態で前記液状物質から分解物をろ過する工程とを有する、ウレタン樹脂の分解方法が開示されている。特許文献2では、ポリウレタンをメタノール又はエタノール中に入れ、触媒としてメタノラートを使用し、所定の温度及び圧力下でポリウレタンを分解する方法が開示されている。非特許文献1では、ポリウレタンのリサイクルについて概説されており、加水分解、アミノ分解、加リン酸分解、グリコール分解等の手段によりポリウレタンを分解できること;グリコール分解剤として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の2価のアルコールが使用できることが開示されている。
【0004】
このようにして得られたポリウレタン樹脂の分解物を成形体、接着剤等に使用することも提案されている。例えば、特許文献3では、第1のウレタン樹脂と、第2のウレタン樹脂を化学的に分解して得られたウレタン分解物と、エポキシ基等を2つ以上有する化合物とを混合し反応させてなる成型体が開示されている。特許文献4及び非特許文献2では、ポリウレタンの廃材からアミン分解物を得て、これを最終的にイミド化合物としたうえでホットメルト接着剤とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-105238号公報
【特許文献2】欧州特許第3590999号明細書
【特許文献3】特開2006-274042号公報
【特許文献4】特開2018-141163号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】D. Simon, A.M. Borreguero, A. de Lucas, J.F. Rodriguez. “Recycling of polyurethanes from laboratory to industry, a journey towards the sustainability.”, Waste Management, 76 (2018), 147-171.
【非特許文献2】真壁浩二、刈込道徳、木村隆夫、「発泡ポリウレタン廃材からのホットメルト接着剤の調製と評価」、廃棄物資源循環学会論文誌、Vol.23、No.3、pp.138-143(2012)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリウレタン樹脂の廃材を有効利用する方法として、これをケミカルリサイクルし、得られたポリウレタン樹脂分解物をポリウレタン接着剤の原料として使用することを検討した。しかしながら、特許文献1及び2並びに非特許文献1のポリウレタン樹脂分解物をそのまま使用し、ポリイソシアネート化合物と反応させて、ポリウレタン接着剤用のプレポリマーとする場合、前記プレポリマーは固化してしまい、ポリウレタン接着剤とできないという問題があった。
特許文献3及び4並びに非特許文献2は、ポリウレタン樹脂分解物からポリウレタン接着剤を得ることを目的としておらず、これらの文献において開示されるポリウレタン樹脂分解物をポリウレタン接着剤の原料として使用した場合には、同様に、プレポリマーの固化等の問題があった。
【0008】
よって、本発明は、従来難しかったポリウレタン樹脂の分解物を原料に用い、市販品と同等のポットライフ及び接着性を有するポリウレタン接着剤を与えるポリオール組成物、プレポリマー並びにその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討した結果、ポリウレタン樹脂分解物を所定の割合で含み、水酸基価及び全アミン価を所定の範囲としたポリオール組成物を使用することによって、ポリウレタン接着剤とした場合に、ポットライフ及び接着性が大きく改善することを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、以下に関する。
[1]ポリウレタン樹脂分解物(A)、並びにポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)を配合してなる、ポリウレタン接着剤用ポリオール組成物であって;前記ポリウレタン樹脂分解物(A)はポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させて得られるものであり;前記ポリウレタン樹脂分解物(A)及び前記希釈剤(B)の合計100質量%に対して、前記ポリウレタン樹脂分解物(A)を20質量%以上、前記希釈剤(B)を0~80質量%配合してなり;前記ポリウレタン樹脂分解物(A)は、ポリエーテルポリオール由来の構造を含み;前記ポリオール組成物において、水酸基価が1~120mg-KOH/gであり、全アミン価が1~50mg-KOH/gである、ポリオール組成物。
[2]前記ポリウレタン樹脂が、ウレタンフォーム由来の廃材である、[1]に記載のポリオール組成物。
[3]前記ポリウレタン樹脂分解物(A)は、芳香族ポリイソシアネート由来の構造をさらに含む、[1]又は[2]に記載のポリオール組成物。
[4]前記希釈剤(B)が、数平均分子量1,000~20,000のポリエーテルポリオールである、[1]~[3]のいずれか1つに記載のポリオール組成物。
[5]前記分解剤が1価のアルコールである、[1]~[4]のいずれか1つに記載のポリオール組成物。
[6][1]~[5]のいずれか1つに記載のポリオール組成物、及びポリイソシアネート化合物を反応させて得られる、ポリウレタン接着剤用のプレポリマー。
[7][6]に記載のプレポリマーを含む、ポリウレタン接着剤。
[8]湿気硬化型である、[7]に記載のポリウレタン接着剤。
[9][1]~[5]のいずれか1つに記載のポリオール組成物の製造方法であって、以下の工程:工程1:ポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させ、ポリウレタン樹脂を分解する工程、並びに工程2:工程1で得られた分解物を精製して、ポリウレタン樹脂分解物を得る工程を含む、製造方法。
[10]前記工程1において、ポリウレタン樹脂に少なくとも分解剤を作用させ、工程3:工程2で得られたポリウレタン樹脂分解物と前記希釈剤(B)を混合する工程、及び工程4:工程3で得られた混合物から分解剤を留去する工程をさらに含む、[9]に記載の製造方法。
[11]前記分解剤が1価のアルコールである、[9]又は[10]に記載の製造方法。
[12]工程1における分解温度及び/又は分解剤の沸点が100~270℃である、[9]~[11]のいずれか1つに記載の製造方法。
[13][9]~[12]のいずれか1つに記載の製造方法で得られたポリオール組成物、及びポリイソシアネート化合物を反応させる工程を含む、ポリウレタン接着剤用のプレポリマーの製造方法。
[14]ポリイソシアネート化合物が、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートである、[13]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリウレタン樹脂の分解物を原料に用い、市販品と同等のポットライフ及び接着性を有するポリウレタン接着剤を与えるポリオール組成物、プレポリマー並びにその製造方法が提供される。
本発明により、これまで廃棄してきたウレタン樹脂を再利用することが可能となるため、SDGs(Sustainable Development Goals)のGoal12等の達成に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例における圧縮せん断接着強さの試験体形状を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリウレタン接着剤用ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させて得られるポリウレタン樹脂分解物(A)、並びにポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)を配合してなり;前記ポリウレタン樹脂分解物(A)及び前記希釈剤(B)の合計100質量%に対して、前記ポリウレタン樹脂分解物(A)を20質量%以上、前記希釈剤(B)を0~80質量%配合してなり;前記ポリウレタン樹脂分解物(A)は、ポリエーテルポリオール由来の構造を含み;前記ポリオール組成物において、水酸基価が1~120mg-KOH/gであり、全アミン価が1~50mg-KOH/gである。前記ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂の廃材を有効活用しつつ、ポリウレタン樹脂の分解物を所定量使用し、組成物の水酸基価及び全アミン価を所定の範囲とすることにより、ポリウレタン接着剤の原料として使用可能なものであり、産業上有用なものである。
【0014】
<ポリウレタン樹脂>
ポリウレタン樹脂は、分子内にウレタン結合を有する高分子であり、その材料、形態、用途等において、特に限定されるものではない。具体的には、ポリウレタン樹脂は、発泡硬質ウレタン(硬質フォーム)、発泡半硬質ウレタン(半硬質フォーム)、発泡軟質ウレタン(軟質フォーム)、ウレタンエラストマー、RIM成形体等の種類があり、その用途としては、断熱材、構造材、寝具、自動車シート、バンパー等が挙げられる。ポリウレタン樹脂には、ヌレート結合を持つイソシアヌレート材も含まれる。
なかでも、SDGsの観点から、ポリウレタン樹脂は、ウレタンフォーム由来の廃材であることが好ましく、発泡硬質ウレタン(硬質フォーム)、発泡半硬質ウレタン(半硬質フォーム)又は発泡軟質ウレタン(軟質フォーム)由来の廃材であることがより好ましい。ウレタンフォーム由来の廃材は、ウレタンフォーム、それを使用した加工品等の廃材を含む。水酸基価が小さく、純度の高いポリオール組成物を得る観点から、半硬質又は軟質のウレタンフォーム由来の廃材が好ましい。また、SDGsの観点から、リサイクルが難しく再利用率の低い硬質ウレタンフォーム由来の廃材が好ましい。
これらのポリウレタン樹脂を、あらかじめ5mm以下に粉砕して使用することができる。あるいは、ポリウレタン樹脂を例えば直径1cm程度の円柱状のペレットに圧縮したもの、又はこれを更に粉砕したものを使用してもよい。フロンを含有するものは、あらかじめ除去しておくこと、又は、ポリウレタン樹脂の分解反応中に回収することが好ましい。ポリウレタン樹脂は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0015】
<ポリウレタン樹脂分解物(A)>
ポリウレタン樹脂分解物(A)は、ポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させて得られる。ポリウレタン樹脂分解物(A)は、ポリウレタン樹脂を化学的に分解、すなわち低分子化させたものである。ポリウレタン樹脂を化学的に分解すると、分解物として、原料に由来したポリオール化合物、アミン化合物等が生成する。アミン化合物のアミノ基は、ポリウレタン樹脂の原料であるイソシアネート成分のNCO基がNH2基に変換されたものである。
ポリウレタン樹脂分解物(A)は、ポリエーテルポリオール由来の構造を含み、芳香族ポリイソシアネート由来の構造をさらに含むことが好ましい。ウレタンフォームは、一般的に、ポリエーテルポリオールを含むポリオール及び芳香族ポリイソシアネートを反応させることにより得られるため、その分解物は、ポリエーテルポリオール由来の構造及び芳香族ポリイソシアネート由来の構造を含むことになる。ポリウレタン樹脂分解物(A)は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
なお、ポリウレタン樹脂分解物(A)は、未反応の分解剤を含むものとする。十分な接着強度を有するポリウレタン接着剤を得るために、ポリオール組成物の水酸基価を所望の範囲に制御する観点から、未反応の分解剤は、蒸留等により、ポリウレタン樹脂分解物(A)から留去することが好ましい。
【0016】
ポリウレタン樹脂分解物(A)中には、以下のような成分が含有される。ポリウレタン樹脂分解物(A)中のポリオール化合物としては、ポリウレタン樹脂の原料として一般的に使用されているポリオールが挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリエーテルエステルポリオールに大別される。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、テトラメチロールシクロヘキサン;メチルグルコシド、ソルビトール、マンニトール、ズルシトール、スクロース等の糖類;これらの糖類にプロピレンオキサイド、エチレンオキサイド等を付加反応させたもの等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂分解物(A)中に含まれるポリエーテルポリオール由来の構造としては、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等を例示することができる。
【0017】
ポリウレタン樹脂分解物(A)中のアミン化合物としては、ポリウレタン樹脂の原料の4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添MDI(H12MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、リジンエステルトリイソシアネート等のイソシアネート基がアミノ基に変換されたアミン類;これらのイソシアネート化合物をポリオールと反応させた生成物の末端がアミノ基に変換したもの等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂分解物(A)中に含まれる芳香族ポリイソシアネート由来の構造としては、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、それに由来するジアミノジフェニルメタン(MDA)及びそれらのポリマー;トリレンジイソシアネート(TDI)、それに由来するトリレンジアミン(TDA)及びそれらのポリマー;1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、これらのイソシアネート基がアミノ基に変換されたアミン類及びそれらのポリマー等が挙げられる。
【0018】
ポリウレタン樹脂分解物(A)は、例えば、下記一般式1~3の化合物を含むことができる。ポリウレタン樹脂の廃材の原料が4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)及びポリオールである場合、ポリウレタン樹脂分解物(A)として、一般式1及び3の化合物が得られる。ポリウレタン樹脂の廃材の原料がトリレンジイソシアネート(TDI)及びポリオールである場合、ポリウレタン樹脂分解物(A)として、一般式2及び3の化合物が得られる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0019】
一般式1~3において、b及びmは、それぞれ0以上の整数である。R1は、ポリウレタン樹脂の廃材の原料であるポリオールに由来する2価の基であり、ジエチレングリコール鎖、ジプロピレングリコール鎖、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖等のポリエーテルポリオール由来の2価の基を例示することができる。
R2は、分解剤に由来する基である。分解剤が1価のアルコールである場合、R2は、1価のアルコールに由来するアルキル基である。分解剤が2価のアルコールである場合、R2は、2価のアルコールに由来するヒドロキシアルキル基である。なお、R2の一部は、ポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)に由来するアルキル基等に置換されている場合がある。
また、一般式1及び2において、両末端の-C(=O)OR2の一方又は両方が、水素に置換され、アミノ基となっている場合がある。
【0020】
分解剤が2価のアルコールである場合、ポリウレタン樹脂分解物(A)は、未反応の分解剤として、さらに一般式4の化合物を含む。一般式4は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の2価のアルコールを表す。また、分解剤が1価のアルコールである場合、ポリウレタン樹脂分解物(A)は、未反応の分解剤として、一般式5の化合物を含む。この場合、R
2は、1価のアルコールに由来するアルキル基である。
【化4】
【化5】
【0021】
[熱のみによる分解]
ポリウレタン樹脂に熱のみを作用させて分解を行う場合、例えば100℃~500℃の温度で、常圧又は加圧状態下におくことにより行うことができる。この場合、窒素置換条件下又は無酸素雰囲気下で行うことが好ましい。ポリウレタン樹脂に熱を作用させる手段としては、押出機等のスクリューフィーダ、炉等を挙げることができる。
【0022】
[分解剤]
ポリウレタン樹脂に分解剤を作用させて分解を行う場合、ポリウレタン樹脂の分解剤としては、アミン分解剤;アルコール分解剤;水(超臨界水)、リン酸、カルボン酸等の加水分解触媒等が挙げられる。なかでも、ポリウレタン接着剤へ誘導化するのに適した分解物を得る観点から、アミン分解剤又はアルコール分解剤が好ましく、アルコール分解剤が好ましい。分解剤は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。また、分解反応後に、分解剤を回収し再利用してもよい。
【0023】
アミン分解剤は、水酸基を含まない。アミン分解剤としては、エチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、プロパンジアミン、2-エチルヘキシルアミン、n-プロピルアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-アミルアミン、イソブチルアミン、メチルジエチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペラジン、ピペリジン、アニリン、トルイジン、ベンジルアミン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、クロロアニリン、ピリジン、ピコリン、N-メチルモルフォリン、エチルモルフォリン、ピラゾール等を挙げることができる。アミン分解剤は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0024】
アルコール分解剤は、アミノ基を含んでいてもよい。アルコール分解剤としては、1価又は2価以上のアルコールを挙げることができ、脂肪族多価アルコール(アルキレンポリオール)、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリオレフィンポリオールを含む。なかでも、ポリウレタン接着剤へ誘導化するのに適した水酸基価を有するポリオール組成物を得る観点及びプレポリマーの固化抑制の観点から、1価のアルコールが好ましい。アルコール分解剤は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0025】
1価のアルコールとしては、炭素数1~12個のアルコールを挙げることができる。具体的にはメタノール、エタノール、n-プロパノール、2-プロパノール、n-ブタノール、sec-ブタノール、イソブタノール、n-ペンタノール、2-メチルブタノール、3-メチルブタノール、シクロペンタノール、n-ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、ドデカノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、及びこれらの異性体等が挙げられる。
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール等のジオール類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族エーテル系ジオール等が挙げられる。3価以上のアルコールとしては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。
アミノ基を含むアルコール分解剤としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、イソプロパノールアミン、2-(2-アミノエチルアミノ)エタノール、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、エチルアミノエタノール、アミノブタノール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、マレイン酸、フマル酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸等のジカルボン酸単独もしくは混合物と上記ジオール類単独もしくは混合物を重縮合して得られる重合体;ε-カプロラクトン、バレロラクトン等の開環重合物;ヒマシ油等の活性水素を2個以上有する活性水素化合物等が挙げられる。
ポリオレフィンポリオールとしては、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール及びその水添物等が挙げられる。
【0026】
分解反応促進の観点から、分解剤の沸点は100~270℃であることが好ましく、100~220℃であることがより好ましく、130~200℃であることがさらに好ましい。分解剤の沸点が100℃より低い場合は、圧力容器を用いることにより、分解温度を100~270℃とすることが好ましい。分解剤の沸点が270℃より高い場合は、分解温度を100~270℃とすることが好ましい。
なかでも、分解反応を促進し、ポリウレタン接着剤へ誘導化するのに適した水酸基価を有するポリオール組成物を得る観点から、沸点が上記範囲にあるアルコール分解剤がより好ましく、沸点が上記範囲にある1価アルコール又は2価アルコールがさらに好ましく、沸点が上記範囲にある1価アルコールがさらに好ましい。沸点が100~270℃の範囲にある1価のアルコールとしては、n-ブタノール(118℃)、sec-ブタノール(100℃)、イソブタノール(108℃)、n-ペンタノール(138℃)、シクロペンタノール(140℃)、n-ヘキサノール(157℃)、シクロヘキサノール(162℃)、1-へプタノール(175℃)、1-オクタノール(195℃)、1-ノナノール(214℃)、1-デカノール(230℃)、1-ウンデカノール(243℃)、1-ドデカノール(262℃)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(196℃)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(193℃)、エチレングリコールモノエチルエーテル(135℃)、エチレングリコールモノメチルエーテル(124℃);及びこれらの異性体等が挙げられる。なかでも、入手が容易であり、分解反応を促進し、ポリウレタン接着剤へ誘導化するのに適した水酸基価を有するポリオール組成物を得る観点から、1-オクタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノメチルエーテルが好ましい。
【0027】
また、必要に応じてアルコール分解剤に添加剤を加えてもよい。添加剤の例としては、水、飽和炭化水素系の有機溶剤等の希釈剤;アルカリ金属、アルカリ金属の水酸化物、金属錯体、アミン化合物等の反応補助剤;無機粒子、有機粒子等の充填材等が挙げられ、アルコール分解剤の反応を極端に阻害しないものであれば添加することができる。
【0028】
分解剤の添加量の下限は、ポリウレタン樹脂100質量部に対し5質量部以上であることが好ましく、より好ましくは10質量部以上であり、さらに好ましくは30質量部以上である。分解剤の添加量の上限は、ポリウレタン樹脂100質量部に対し300質量部以下であることが好ましく、より好ましくは200質量部以下であり、さらに好ましくは100質量部以下である。
【0029】
分解剤及びポリウレタン樹脂を分解装置に投入して、ポリウレタン樹脂分解物(A)を得ることができる。分解装置には、バッチ式、連続式等の公知の分解装置を用いることができる。分解効率の観点から、ポリウレタン樹脂は、熱及び分解剤の両方を作用させて分解することが好ましい。その場合、加熱、混合及び圧縮を同時にできる押出機を用いると、ポリウレタン樹脂を連続で分解できるため好ましい。
分解反応促進の観点から、分解温度は100℃~270℃であることが好ましく、100~220℃であることがより好ましく、130~200℃であることがさらに好ましい、分解時間はバッチ式で数十分~数時間、押出機を用いる連続式では1~10分程度で行うことが好ましい。
【0030】
<ポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)(以下、希釈剤(B)ともいう)>
ポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)は、ポリウレタン樹脂分解物(A)を希釈するとともに、得られるポリオール組成物の水酸基価及び全アミン価を所望の範囲に調整する働きをする成分である。ポリウレタン樹脂分解物(A)との相溶性及びイソシアネート基との反応性の観点から、希釈剤(B)は、ポリエーテルポリオール及びジカルボン酸ジエステルからなる群より選択されることが好ましく、ポリエーテルポリオールであることがより好ましい。希釈剤(B)は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0031】
ポリエーテルポリオールとしては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族エーテル系ジオール等が挙げられる。なかでも、ポリウレタン樹脂分解物(A)との相溶性、並びに得られるポリオール組成物の水酸基価及び粘度を所望の範囲に調整する観点から、数平均分子量1,000~20,000のポリエーテルポリオールであることが好ましく、数平均分子量1,000~20,000のポリプロピレングリコールであることがより好ましい。ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、1,000~10,000であることがより好ましく、2,000~5,000であることがさらに好ましい。ポリエーテルポリオールは、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0032】
カルボン酸エステルとしては、カルボン酸モノエステル、ジカルボン酸モノエステル、ジカルボン酸ジエステル等が挙げられる。カルボン酸モノエステルとしては、ギ酸、酢酸、プオピオン酸、酪酸、クロトン酸等のエステルが挙げられる。ジカルボン酸エステルとしては、シュウ酸、こはく酸、グルタル酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、グルタコン酸、シス-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸、エンドビシクロ-[2.2.1]-5-ヘプテン-2,3-ジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸等のモノエステル及びジエステルが挙げられる。エステルを構成する炭化水素基としては、炭素数1~12のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル等が挙げられる。ポリウレタン樹脂分解物(A)との相溶性、得られるポリオール組成物の粘度低下効果、化合物の沸点等の観点から、ジカルボン酸ジエステルであることが好ましく、フタル酸ジエステル又はアジピン酸ジエステルあることがより好ましい。フタル酸ジエステルとしては、フタル酸ジエチル、フタル酸ジ-n-ブチル、フタル酸イソブチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジ-2-エチルへキシル、フタル酸ジイソノニル等を例示することができる。アジピン酸ジエステルとしては、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジ-2-エチルヘキシル等を例示することができる。カルボン酸エステルは、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0033】
<ポリオール組成物>
ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の合計100質量%に対して、ポリウレタン樹脂分解物(A)を20質量%以上、希釈剤(B)を0~80質量%配合してなる組成物である。ポリオール組成物は、ポリウレタン接着剤の原料である。具体的には、ポリオール組成物をポリイソシアネート化合物と反応させて、ポリウレタン接着剤用のプレポリマーを得ることができる。
ポリウレタン廃材の使用率を高める観点、得られるポリウレタン接着剤のポットライフ及び接着性を向上させる観点から、ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の合計100質量%に対するポリウレタン樹脂分解物(A)の配合量は、20~100質量%であることが好ましく、30~90質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。また、ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の合計100質量%に対する希釈剤(B)の配合量は、0~80質量%であることが好ましく、10~70質量%であることがより好ましく、30~70質量%であることがさらに好ましい。
【0034】
ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の合計100質量%に対するポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の配合割合(質量%)は、それぞれ、以下の式により算出することができる。
ポリウレタン樹脂分解物(A)の配合割合(質量%)=(X-Y)/X×100
・・・式(1)
希釈剤(B)の配合割合(質量%)=Y/X × 100 ・・・式(2)
式中、X及びYは、以下のとおりである。
ポリオール組成物(最終組成物)の質量:X g
希釈剤(B)の配合量:Y g
ポリウレタン樹脂分解物(A)の配合量:X-Y g
なお、ポリウレタン樹脂分解物(A)は、未反応の分解剤を含む。十分な接着強度を有するポリウレタン接着剤を得るために、ポリオール組成物の水酸基価を所望の範囲に制御する観点から、未反応の分解剤は、ポリウレタン樹脂分解物(A)から留去することが好ましい。ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の合計100質量%に対する残留分解剤の割合は、2.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。ここで、残留分解剤の質量は、GC分析により測定することができる。
【0035】
ポリウレタン接着剤のポットライフ及び接着性向上の観点から、ポリオール組成物の水酸基価は、1~120mg-KOH/gであり、5~110mg-KOH/gであることが好ましく、10~90mg-KOH/gであることがより好ましい。水酸基価が1mg-KOH/g未満であると、ポリウレタン接着剤の接着強度が低下し、120mg-KOH/gを超えると、ポリウレタン接着剤のポットライフが悪化する。
【0036】
水酸基価は、ポリオール組成物について、JIS K 1557-1のA法に準拠して測定した値である。水酸基価は、前記JIS規格に記載の酸又はアルカリの補正を行っていないため、1級及び2級アミンに基づく数値を含む場合がある。そのため、本明細書において、水酸基価は、イソシアネート基に対して反応し得る水酸基以外の官能基を含んだ値を意味する。
【0037】
ポリウレタン接着剤のポットライフ及び接着性向上の観点から、ポリオール組成物の全アミン価は、1~50mg-KOH/gであり、3~40mg-KOH/gであることが好ましく、5~38mg-KOH/gであることがより好ましい。全アミン価が1mg-KOH/g未満であると、プレポリマー製造時にポリイソシアネート化合物と反応し、架橋構造を形成するアミン部位が少ないため接着強度が低下し、50mg-KOH/gを超えると、プレポリマーを生成した場合にゲル化又は高粘度化し、ポリウレタン接着剤の取扱い性が悪化する。
【0038】
全アミン価は、JIS K 1557-7に準拠して、ポリオール組成物を酢酸に溶解させ、0.1M過塩素酸を含む酢酸溶液により滴定したアミン価の値である。本明細書において、全アミン価は、1~3級アミン及びその他のアルカリ成分の合計に基づく数値であり、前記水酸基価を補完する物性である。
【0039】
ポリウレタン接着剤の接着性向上の観点から、ポリオール組成物は、芳香族基を有することが好ましい。芳香族基の含有量は、ポリオール組成物について、1H-NMR測定を行い、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)から算出することができる。ポリオール組成物にカルボン酸エステルを加える場合は、カルボン酸エステル由来のピークを除いて積分値を算出する必要がある。ポリウレタン接着剤の接着性向上の観点から、積分値の比(A/B)が、0.05以上であることが好ましく、0.1以上であることがより好ましい。
【0040】
(その他の成分)
ポリオール組成物は、本発明の目的を妨げない範囲で、その他の成分を含んでもよい。その他の成分としては、例えば、重質炭酸カルシウム、表面処理炭酸カルシウム、カオリン、クレー、タルク、珪砂、シリカ等の充填剤;酸化チタン、カーボンブラック、その他の染料又は顔料等の着色剤;ケトン類、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素等の希釈剤;粘接着付与剤、増粘剤、シランカップリング剤、顔料分散剤、消泡剤、チタンカップリング剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。なお、充填剤には、イソシアネート化合物と反応する水分を含有することがあるため、含水率が0.2%以下、好ましくは0.1%以下となるように、脱水処理を行ってから添加含有させるのが好ましい。
【0041】
<ポリオール組成物の製造方法>
ポリオール組成物は、工程1:ポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させ、ポリウレタン樹脂を分解する工程、並びに工程2:工程1で得られた分解物を精製して、ポリウレタン樹脂分解物を得る工程を含む方法により製造することができる。この製造方法によれば、ポリオール組成物の水酸基価を1~120mg-KOH/g、全アミン価を1~50mgKOH/gとすることが容易であり、該ポリオール組成物を用いて得られたポリウレタン接着剤のポットライフ及び接着性を良好なものとすることができる。
【0042】
工程1は、ポリウレタン樹脂に熱及び/又は分解剤を作用させ、ポリウレタン樹脂を分解する工程である。ポリウレタン樹脂としては、前記ポリウレタン樹脂の項に記載したものを使用することができ、好ましい態様も同様である。分解剤の種類、添加量及び反応条件は、ポリウレタン樹脂分解物(A)の項に記載したとおりであり、好ましい態様も同様である。
【0043】
工程2は、工程1で得られた分解物を精製して、ポリウレタン樹脂分解物を得る工程である。工程2で得られるポリウレタン樹脂分解物は、未反応の分解剤との混合物の形態である。ポリウレタン樹脂は、通常、繊維、紙、金属等の不純物を含んでおり、これらの不純物は、ポリウレタン接着剤とした場合に、ポットライフ及び接着性に悪影響を与え得る。工程2を行うことにより、ポリウレタン接着剤とした場合のポットライフ及び接着性の向上を図ることができる。
【0044】
精製の方法は、特に限定されず、例えば、ろ過によることができる。この場合、遠心分離等の方法を併用してもよい。ろ過による場合、精製効率の観点から、工程1で得られた分解物の温度は、20~150℃であることが好ましく、20~100℃であることがより好ましい。
【0045】
ポリオール組成物の水酸基価及び全アミン価を所望の範囲とすることを容易にする観点から、ポリオール組成物の製造方法は、前記工程1において、ポリウレタン樹脂に少なくとも分解剤を作用させ、工程3:工程2で得られたポリウレタン樹脂分解物と希釈剤(B) を混合する工程、及び工程4:工程3で得られた混合物から分解剤を留去する工程をさらに含むことが好ましい。
【0046】
工程3は、工程2で得られたポリウレタン樹脂分解物と希釈剤(B)を混合する工程である。希釈剤(B)は前記したとおりである。工程2で得られたポリウレタン樹脂分解物は、水酸基価が120mg-KOH/gを上回る、又は、全アミン価が50mg-KOH/gを上回る場合がある。希釈剤(B)は、ポリウレタン樹脂分解物(A)を希釈するとともに、得られるポリオール組成物の水酸基価及び全アミン価を所望の範囲に調整する働きをするが、ポリウレタン樹脂分解物(A)との相溶性及びイソシアネート基との反応性の観点から適宜選択される。
【0047】
ポリウレタン樹脂分解物(A)との相溶性、イソシアネート基との反応性、並びに得られるポリオール組成物の水酸基価及び粘度を所望の範囲とする観点から、希釈剤(B)は、ポリエーテルポリオール及びジカルボン酸ジエステルからなる群より選択されることが好ましく、ポリエーテルポリオールであることがより好ましく、ポリプロピレングリコールであることがさらに好ましい。ポリウレタン樹脂分解物(A)との相溶性、並びに得られるポリオール組成物の水酸基価及び粘度を所望の範囲に調整する観点から、ポリエーテルポリオールの数平均分子量は、1,000~20,000であることが好ましく、1,000~10,000であることがより好ましく、2,000~5,000であることがさらに好ましい。ポリエーテルポリオールは、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0048】
工程4は、工程3で得られた混合物から分解剤を留去する工程である。工程4で分解剤の留去を行うことにより、ポリオール組成物の水酸基価を所望の範囲に調整することができる。これにより、プレポリマー化時のポリイソシアネート化合物の使用量を低減し、プレポリマーの固化及び高粘度化を抑制することができる。分解剤の留去は、減圧条件下で行ってもよい。分解剤の留去温度は、使用する分解剤の沸点に応じて適宜調整されるが、ポリウレタン樹脂分解物(A)の遂次反応による高分子量化を抑制する観点から、120℃以下で行うことが好ましく、この範囲で留去できるように減圧することが望ましい。分解剤の留去は、100℃以下で行うことがより好ましく、90℃以下で行うことがさらに好ましい。
【0049】
工程1で使用する分解剤は、1価のアルコールであることが好ましい。1価のアルコールは、ポリウレタン樹脂の分解性に優れ、得られるポリオール組成物の水酸基価を120mg-KOH/g以下に制御しやすいという利点がある。また、1価のアルコールは粘性が低いため、工程2の精製負荷を低減することができる。さらに、工程3及び4を実施して得られるポリオール組成物の粘度も低く、接着剤原料としての物性も優れるという利点がある。工程4では、ポリオール組成物から1価のアルコールが留去されるため、プレポリマー化に必要なポリイソシアネートの使用量を低減し、プレポリマーの固化を抑制することができる。1価のアルコールとしては、アルコール分解剤で例示した化合物を使用することができる。
【0050】
分解効率と分解剤の除去の容易さの観点から、工程1における分解温度及び/又は分解剤の沸点は、100~270℃であることが好ましく、100~220℃であることがより好ましく、130~200℃であることがさらに好ましい。なかでも、分解剤としては、沸点が100~270℃の1価のアルコールが好ましく、1-オクタノール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル又はジエチレングリコールモノメチルエーテルがより好ましく、1-オクタノールが特に好ましい。
【0051】
ポリオール組成物の水酸基価及び全アミン価をさらに低減させる観点から、工程2又は工程4で得られたポリオール組成物に、さらに酸無水物及び/又はオキシラン化合物を作用させることもできる。ポリウレタン接着剤としたときの接着性の観点から、酸無水物及び/又はオキシラン化合物による処理後、これらの化合物は、減圧等により系外に留去することが好ましい。酸無水物及び/又はオキシラン化合物は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
【0052】
酸無水物としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水シュウ酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水安息香酸等が挙げられる。なかでも、ポリオール組成物の水酸基価の低減効果が高いことから、無水酢酸が特に好ましい。
【0053】
酸無水物による処理は、ポリオール組成物に酸無水物を加え、加圧又は常圧条件にて、20~120℃で加熱することが好ましい。ポリオール組成物の水酸基の反応性が低い場合は、触媒等を添加してもよい。触媒としては一般に活性水素に対する酸無水物でのエステル化及びアミド化に使用可能な触媒であれば特に限定されない。触媒は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。酸無水物の使用量は、ポリオール組成物の水酸基価及び全アミン価に合わせて調整することが好ましい。
【0054】
オキシラン化合物としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド;スチレンオキシド、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等が挙げられる。なかでも、反応性、反応後の留去のしやすさ等の観点から、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドが特に好ましい。
【0055】
オキシラン化合物による処理は、ポリオール組成物にオキシラン化合物を加え、加圧又は常圧条件にて、加熱することが好ましい。必要に応じてオキシラン化合物の付加用触媒を加えてもよい。触媒は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。オキシラン化合物使用量は、ポリオール組成物の水酸基価及び全アミン価に合わせて適宜調整することが好ましい。
【0056】
<ポリオール組成物の用途>
ポリオール組成物は、ポリウレタン廃材を化学的に分解して得られたポリウレタン樹脂分解物(A)を所定量含み、その水酸基価及び全アミン価を所定の範囲としたものである。ポリオール組成物は、ポリウレタン廃材を有効活用しつつ、ポリウレタン接着剤、特に湿気硬化型のポリウレタン接着剤の原料として好適に使用することができる。
【0057】
<プレポリマー及びその製造方法>
ポリウレタン接着剤用のプレポリマーは、ポリオール組成物及びポリイソシアネート化合物を反応させて得ることができる。また、前記プレポリマーの製造方法は、前記ポリオール組成物の製造方法で得られたポリオール組成物、及びポリイソシアネート化合物を反応させる工程を含む。
【0058】
ポリイソシアネート化合物としては、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、1,5-ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオホスフェート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)等の芳香族ポリイソシアネート化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添MDI(H12MDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、リジンエステルトリイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート化合物等を挙げることができる。ポリイソシアネート化合物は、1種単独でも2種以上の組み合わせであってもよい。
なかでも、接着強度向上の観点から、MDI又はポリメリックMDIが好ましく、接着剤の粘度低減の観点から、HDIが好ましい。これらの効果を補完するために、ポリイソシアネート化合物は、芳香族ポリイソシアネート化合物と脂肪族ポリイソシアネート化合物を組合せて使用してもよい。
【0059】
ポリイソシアネートの当量比(NCO/OH)は、1.0~10.0が好ましく、より好ましくは1.2~8.0であり、さらに好ましくは1.5~5.0であり、特に好ましくは2.0~5.0である。当量比が前記範囲内であると、プレポリマーの固化及び高粘度化を抑制することができ、プレポリマーを接着剤として用いた場合の接着強度が向上する。
【0060】
プレポリマーの製造時に、反応速度を向上させるために公知の重合触媒を用いることができ、重合触媒としては、第三級アミン、ジラウリン酸ジブチル錫等のスズ、チタン、ジルコニウム、ビスマス等の有機金属錯体を例示することができる。
なお、重合触媒については、吉田敬治著「ポリウレタン樹脂」(日本工業新聞社刊、1969年)の第23~32頁を参照することができる。
【0061】
プレポリマーは、本発明の目的を妨げない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、ポリオール組成物の項で例示したものに加え、脱水剤(安定剤)としてp-トルエンスルホニルイソシアネート、オルト酢酸メチル等のオルトエステル、モレキュラーシーブ等を使用することができる。
【0062】
プレポリマーの製造方法は公知の方法でよい。反応釜にポリオール組成物を加え、脱水が不十分な場合は減圧脱水を行う。その後、ポリイソシアネート化合物を加え、窒素置換条件下又は窒素気流下で50~100℃にて1~8時間反応させることで、イソシアネート基を末端基に持つプレポリマーを得ることができる。
【0063】
<ポリウレタン接着剤>
ポリウレタン接着剤は、プレポリマーを含む。ポリウレタン接着剤は、基材又は空気中の水分との反応性に優れることから、湿気硬化型接着剤として好適に使用できる。
【0064】
ポリウレタン接着剤は、本発明の目的を妨げない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、ポリオール組成物の項で例示したものに加え、脱水剤(安定剤)としてp-トルエンスルホニルイソシアネート、オルト酢酸メチル等のオルトエステル、モレキュラーシーブ等を使用することができる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0066】
実施例及び比較例における分析及び物性の測定方法は、以下のとおりである。
【0067】
[水酸基価]
実施例及び比較例のポリオール組成物及びその前駆体について、JIS K1557-1のA法に準拠して水酸基価を測定した。水酸基価は、前記JIS規格に記載の酸又はアルカリの補正を行っていないため、1級及び2級アミンに基づく数値を含む場合がある。
【0068】
[全アミン価]
実施例及び比較例のポリオール組成物及びその前駆体について、JIS K 1557-7に準拠して、全アミン価を測定した。ポリオール組成物を酢酸に溶解させ、0.1M過塩素酸を含む酢酸溶液により滴定して、全アミン価とした。
【0069】
[芳香族基の含有量]
実施例及び比較例のポリオール組成物について、1H-NMR測定により、芳香族基の含有量を見積った。ポリオール組成物を化学シフトの基準物質であるテトラメチルシランを含む重アセトン又は重ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)を算出することで、ポリオール組成物に含まれる芳香族の含有量を見積った。別途添加したフタル酸エステル等のピークが検出される場合は、このピークを除いてA/Bの値を算出した。
【0070】
[重量平均分子量及び数平均分子量]
実施例及び比較例のポリオール組成物及びその前駆体中に含まれるポリウレタン樹脂分解物について、GPC分析により、重量平均分子量及び数平均分子量を測定した。分解剤及び希釈剤、具体的には1-オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール400、ポリプロピレングリコール400、ポリプロピレングリコール1,000及びポリプロピレングリコール3,000等に由来するピークは除き、ポリスチレン標準物質を用いて作成した検量線から各分子量を算出した。
【0071】
[ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の配合割合]
実施例1~11及び比較例4~5について、以下の式(1)及び(2)に基づき、ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の合計100質量%に対する、ポリウレタン樹脂分解物(A)及び希釈剤(B)の配合割合をそれぞれ算出した。
ポリウレタン樹脂分解物(A)の配合割合(質量%)=(X-Y)/X×100
・・・式(1)
希釈剤(B)の配合割合(質量%)=Y/X × 100 ・・・式(2)
式中、X及びYは、以下のとおりである。
ポリオール組成物(最終組成物)の質量:X g
希釈剤(B)の配合量:Y g
ポリウレタン樹脂分解物(A)の配合量:X-Y g
【0072】
[残留分解剤の質量]
分解剤として、1-オクタノール、エチレングリコール又はジエチレングリコールを使用した実施例及び比較例について、ポリオール組成物及びその前駆体中に含まれる残留分解剤の質量をGC分析により測定した。
【0073】
[ポットライフ]
実施例及び比較例のポリオール組成物を用いて、湿気硬化型ポリウレタン接着剤の調製を行った。調製できたものについては、室温密閉条件下で最長200日間保管した。該接着剤のポットライフを以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:ポリウレタン接着剤を調製可能である。60日保管後、該接着剤は調製直後と同様の液性を保っている。
×:調製時に、固化し、ポリウレタン接着剤を製造できない。
【0074】
[圧縮せん断接着強さ]
JIS K 6852を参考に、以下の方法で試験を行った。
図1に示すとおり、実施例及び比較例で得られた湿気硬化型ポリウレタン接着剤を25mm×30mm、厚さ10mmの木材テストピース(カバ単板)に塗布し、接着面積625mm
2となるように同じ大きさの木材テストピース(カバ単板)を接着し試験体とした。得られた試験体について、23℃50%RHの環境下で7日間以上養生後、同環境下で、圧縮速度3~10mm/分にて、圧縮せん断試験を行った。各接着剤について、3~7個の試験体を作製し、各試験体が剥離するのに必要な力の平均値を圧縮せん断接着強さとした。圧縮せん断接着強さが1.0N/mm
2以上あれば、実用上問題なく、3.0N/mm
2以上あれば、接着性に優れると判断した。結果を表3に示す。
【0075】
実施例及び比較例で使用した材料は、以下のとおりである。
【0076】
<ポリウレタン樹脂の廃材>
廃材A:ポリメリックMDI及びポリプロピレングリコールを主成分とする硬質ウレタンフォーム(断熱材用途)
廃材B:ポリメリックMDI並びにポリプロピレングリコール及びジエチレングリコールを主成分とする硬質ウレタンフォーム(ボード用途、端材)
廃材C:ポリメリックMDI、トルエンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート並びにポリプロピレングリコールを主成分とする硬質ウレタンフォーム(断熱材用途)
ここで、廃材の構成成分は、熱分解GC-MSから予想されるポリウレタン樹脂のモノマー成分を記載した。
【0077】
分解剤、ポリエーテルポリオール、カルボン酸ジエステル及び酸無水物は、すべて富士フィルム和光純薬株式会社製の試薬を使用した。ポリイソシアネート化合物は、東京化成工業株式会社製の試薬を使用した。
【0078】
<分解剤>
1-オクタノール(沸点:195℃)
エチレングリコール(沸点:197℃)
ジエチレングリコール(沸点:245℃)
ポリプロピレングリコール400(2官能、数平均分子量400)
ポリエチレングリコール400(数平均分子量400)
【0079】
<ポリエーテルポリオール>
ポリプロピレングリコールA(2官能、数平均分子量3,000)
ポリプロピレングリコールB(3官能、数平均分子量3,000)
ポリプロピレングリコールC(2官能、数平均分子量1,000)
【0080】
<カルボン酸ジエステル>
フタル酸ジ-2-エチルへキシル
フタル酸ジイソノニル
【0081】
<ポリイソシアネート化合物>
4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)
ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)
【0082】
<酸無水物>
無水酢酸
【0083】
実施例1
窒素気流下、200mLのフラスコに1-オクタノール50gを仕込み、200℃に加熱した。ここに、ウレタン廃材A50gを11時間かけて添加し、200℃でさらに8時間撹拌し解重合を行った。室温に放冷後、反応混合物をアセトンで希釈し、不溶物をろ過にて取り除いた。その後、アセトンを減圧留去し、ポリオール組成物前駆体(1-オクタノール含量39質量%)81gを得た。この前駆体の水酸基価は253mg-KOH/g、全アミン価は35mg-KOH/g、重量平均分子量は17,000、数平均分子量は1,300であった。分子量はポリプロピレングリコール及び1-オクタノール由来のピークは除き、GPC分析より算出した。
【0084】
ポリオール組成物前駆体15gにポリプロピレングリコールA7.5gを加え、90℃に加熱、減圧して1-オクタノールを濃縮留去し、ポリオール組成物16gを得た。ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール=54:46(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.76質量%であった。
また、ポリオール組成物の水酸基価は91mg-KOH/g、全アミン価は31mg-KOH/g、重量平均分子量は17,000、数平均分子量は920であった。重アセトン溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ、1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.16であった。
【0085】
上記で得られたポリオール組成物4.3gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)3.5g(NCO/OH=4.0)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃で1時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると4.8N/mm2以上(せん断試験機での最大値にて試験体は剥離しなかった)であった。ポリウレタン接着剤は、200日経過後も固化しておらず、ポットライフは良好であった。
【0086】
実施例2
窒素気流下、500mLのフラスコに1-オクタノール150gを仕込み、200℃に加熱した。ここに、ウレタン廃材Bをペレット化したもの150gを8時間かけて添加し、200℃でさらに8時間撹拌し解重合を行った。室温に放冷後、不溶物をろ過にて取り除き、1-オクタノールで洗浄を行った。過剰の1-オクタノールを減圧留去し、ポリオール組成物前駆体(1-オクタノール含量41質量%)を256g得た。
【0087】
ポリオール組成物前駆体20gにポリプロピレングリコールA10gを仕込み、90℃に加熱、減圧して1-オクタノールを濃縮留去し、ポリオール組成物22gを得た。ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール=54:46(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.75質量%であった。
また、ポリオール組成物の水酸基価は79mg-KOH/g、全アミン価は37mg-KOH/g、重量平均分子量は4,500、数平均分子量は1,200であった。重アセトン溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ、1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.15であった。
【0088】
上記で得られたポリオール組成物4.4gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)3.1g(NCO/OH=4.0)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃で1時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると4.8N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は、200日以経過後も固化しておらず、ポットライフは良好であった。約4カ月間保管したポリウレタン接着剤を用いて再度試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると4.2N/mm2であった。
【0089】
実施例3
実施例1と同様の方法でウレタン廃材Aの解重合を行った。反応後のろ過及びアセトン濃縮を実施した後のポリオール組成物前駆体について、不溶物をさらに遠心分離により除去した。こうして得たポリオール組成物前駆体12gに対し、ポリプロピレングリコールA6.1gを加え、90℃に加熱、減圧して1-オクタノールを濃縮留去し、ポリオール組成物13gを得た。ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール=52:48(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.72質量%であった。
また、ポリオール組成物の水酸基価は101mg-KOH/g、全アミン価は35mg-KOH/g、重量平均分子量は4,500であり、数平均分子量は880であった。重アセトン溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ、1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.12であった。
【0090】
上記で得られたポリオール組成物4.1gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)3.7g(NCO/OH=4.0)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃で1時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると2.5N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は、約90日後には固化していた。
【0091】
実施例4
実施例2と同様の方法でウレタン廃材Bの解重合を行った。得られたポリオール組成物前駆体(1-オクタノール含量41質量%)40gにポリプロピレングリコールA20gを加え、90℃に加熱、減圧して1-オクタノールを濃縮留去し、ポリオール組成物43gを得た。ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール=54:46(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.98質量%であった。
また、ポリオール組成物の水酸基価は80mg-KOH/g、全アミン価は36mg-KOH/g、重量平均分子量は4,600であり、数平均分子量は1,200であった。重アセトン溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.14であった。
【0092】
上記で得られたポリオール組成物4.0gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)2.9g(NCO/OH=4.0)を加え、50℃で1時間、その後80℃で3時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると3.6N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は100日以上固化していない。
【0093】
実施例5
実施例4で得られたポリオール組成物4.6gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)2.0g(NCO/OH=2.5)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃で3時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると3.1N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は90日以上固化していない。
【0094】
実施例6
実施例4で得られたポリオール組成物6.4gを50mLのフラスコに仕込み、フタル酸ジ-2-エチルヘキシル0.65gを加えた。新たに得られたポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール:フタル酸ジ-2-エチルヘキシル=49:42:9(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.89質量%(実施例4に基づく計算値)であった。
実施例4の結果に基づき算出した、新たに得られたポリオール組成物の水酸基価及び全アミン価の計算値は、それぞれ、73mg-KOH/g及び33mg-KOH/gであった。
【0095】
上記で得られたポリオール組成物4.8gに、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)2.0g(NCO/OH=2.5)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃で3時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると3.2N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は90日以上固化していない。
【0096】
実施例7
実施例2と同様の方法にてウレタン廃材Bの解重合を行った。ポリオール組成物前駆体(1-オクタノール含量41質量%)29gに対し、ポリプロピレングリコールAの代わりにフタル酸ジイソノニル17gを加え、90℃に加熱、減圧して1-オクタノールを濃縮留去し、ポリオール組成物34gを得た。得られたポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:フタル酸ジイソノニル=51:49(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.96質量%であった。
ポリオール組成物の水酸基価は、55mg-KOH/gであった。実施例2の結果に基づき算出した、ポリオール組成物の全アミン価の計算値は、34mg-KOH/gであった。重アセトン溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~7.6ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.2ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.51であった。このときA/Bの値は、フタル酸ジイソノニルに相当するピークを除いて算出した。
【0097】
上記で得られたポリオール組成物5.0gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)1.5g(NCO/OH=2.5)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃で3時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると3.1N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は70日以上固化していない。
【0098】
実施例8
実施例7で得られたポリオール組成物4.0gを50mLのフラスコに仕込み、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)0.67g(NCO/OH=2.0)及びジラウリン酸ジブチル錫0.005gを加え、50℃で0.5時間、その後80℃で5時間窒素気流下にて反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると、接着強度は1.3N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は60日以上固化していない。
【0099】
実施例9
窒素気流下、500mLのフラスコに1-オクタノール150gを仕込み、200℃に加熱した。ここに、ウレタン廃材C150gを3.5時間かけて添加し、200℃でさらに5時間撹拌し解重合を行った。室温に放冷後、不溶物をろ過にて取り除き、1-オクタノールで洗浄を行うことで、ポリオール組成物前駆体(1-オクタノール含量65質量%)264gを得た。
このポリオール組成物前駆体60gにポリプロピレングリコールA21gを加え、90℃に加熱、減圧して1-オクタノールを濃縮留去し、ポリオール組成物41gを得た。ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール=50:50(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、1.1質量%であった。
また、ポリオール組成物の水酸基価は106mg-KOH/g、全アミン価は35mg-KOH/g、重量平均分子量は1,800、数平均分子量は790であった。重アセトン溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ、1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.12であった。
【0100】
実施例10
実施例9で得られたポリオール組成物15gに対し、無水酢酸0.97gを加え、室温で1時間、その後50℃で1時間、さらに90℃で1時間加熱撹拌を行った。この溶液をさらに90℃に加熱、減圧して未反応の無水酢酸及び副生する酢酸を留去し、新たにポリオール組成物を得た。このポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール=50:50(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.57質量%であった。
このポリオール組成物の水酸基価は68mg-KOH/g、全アミン価は11mg-KOH/g、重量平均分子量は2,400、数平均分子量は1,100であった。重アセトン溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ、1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~4.5ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.14であった。
以上のように、ポリオール組成物を酸無水物で処理することで、水酸基価及び全アミン価を低減し、プレポリマー製造により適した組成物を得ることができた。
【0101】
実施例11
実施例9と同様の方法にてウレタン廃材Cの解重合を行った。得られたポリオール組成物前駆体(1-オクタノール含量65質量%)60gに対し、フタル酸ジイソノニル21gを加え、90℃に加熱、減圧して1-オクタノールを濃縮留去し、ポリオール組成物(1)42gを得た。得られたポリオール組成物(1)は、ポリウレタン樹脂分解物:フタル酸ジイソノニル=50:50(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、1.3質量%であった。また、ポリオール組成物(1)の水酸基価は85mg-KOH/g、全アミン価は34mg-KOH/gであった。
【0102】
上記で得られたポリオール組成物(1)11gに対し、無水酢酸4.8gを加え、室温で1時間、その後90℃で5時間加熱撹拌を行った。この溶液をさらに90℃に加熱、減圧して未反応の無水酢酸及び副生する酢酸を留去した後、ポリプロピレングリコールA5.5gを加え、90℃に加熱、減圧操作を行い、ポリオール組成物(2)17gを得た。ポリオール組成物(2)は、ポリウレタン樹脂分解物:ポリプロピレングリコール:フタル酸ジイソノニル=35:33:32(質量比)であり、残留する1-オクタノールは、0.54質量%であった。また、ポリオール組成物(2)の水酸基価17mg-KOH/g、全アミン価は4.7mg-KOH/gであった。
【0103】
上記で得られたポリオール組成物(2)3.7gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)1.1g(NCO/OH=8.0)を加え、50℃で5時間窒素気流下にて反応させ、ウレタンプレポリマーを得た。
【0104】
参考例1
ポリプロピレングリコールA3.0gと、ポリプロピレングリコールB3.0gとを50mLのフラスコに仕込み混合した。混合して調製したポリオール組成物の水酸基価は48mg-KOH/gであり、組成物中にアミノ基及び芳香族基は存在しない。
【0105】
上記で得られたポリオール組成物に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)2.6g(NCO/OH=4.0)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃にて1時間窒素気流下で反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると4.4N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は180日以上固化していない。
【0106】
比較例1
窒素気流下、200mLのフラスコにジエチレングリコール50gを仕込み、200℃に加熱した。ここに、ウレタン廃材A50gを4時間かけて添加し、200℃でさらに3時間撹拌し解重合を行った。室温に放冷後、反応混合物をアセトンで希釈し、不溶物をろ過にて取り除いた。その後、アセトンを減圧留去し、ポリオール組成物(ジエチレングリコール含量55質量%)を79g得た。
ポリオール組成物の水酸基価は650mg-KOH/g、全アミン価は46mg-KOH/g、重量平均分子量は13,000、数平均分子量は1,200であった。分子量はポリプロピレングリコール及びジエチレングリコール由来のピークは除き、GPC分析より算出した。重DMSO溶媒に、ポリオール組成物を溶解させ、1H-NMRスペクトルを測定したとき、芳香族基に相当する6.5~8.5ppmの積分値(A)と、ポリエーテルポリオール由来の基に相当する3.0~5.0ppmの積分値(B)との比(A/B)は0.084であった。
【0107】
上記で得られたポリオール組成物2.0gを50mLのフラスコに仕込み、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)12g(NCO/OH=4.0)を室温で添加すると、固化したため、目的のウレタンプレポリマーは得られなかった。
【0108】
比較例2
窒素気流下、200mLのフラスコにポリプロピレングリコール400 50gを仕込み、200℃に加熱した。ここに、ウレタン廃材A50gを8時間かけて添加し、200℃でさらに8時間撹拌し解重合を行った。室温に放冷後、反応混合物をアセトンで希釈し、不溶物をろ過にて取り除いた。その後、アセトンを減圧留去し、ポリオール組成物を82g得た。
ポリオール組成物の水酸基価は174mg-KOH/g、全アミン価31mg-KOH/g、重量平均分子量は44,000、数平均分子量は5,800であった。分子量はポリプロピレングリコール由来のピークは除き、GPC分析より算出した。得られたポリオール組成物は粘度が高く、プレポリマー合成に使用することはできなかった。
【0109】
比較例3
ポリプロピレングリコールA6.1gを50mLのフラスコに仕込んだ。このポリオール組成物の水酸基価は39mg-KOH/gであり、組成物中にアミノ基及び芳香族基は存在しない。
【0110】
このポリオール組成物に、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)2.1g(NCO/OH=4.0)を加え、50℃で0.5時間、その後80℃にて1時間窒素気流下で反応させた。室温に放冷後、得られたウレタンプレポリマーをそのままポリウレタン接着剤とした。ポリウレタン接着剤を用いて、試験体を調製し、圧縮せん断接着強さを測定すると0.11N/mm2であった。ポリウレタン接着剤は180日以上固化していない。
【0111】
比較例4
比較例1で得られたポリオール組成物(ジエチレングリコール含量55質量%)4.1gとポリプロピレングリコールC2.3gを50mLのフラスコに仕込み、120~135℃に加熱、減圧してジエチレングリコールを濃縮留去し、新たにポリオール組成物4.7gを得た。
得られたポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂分解物(ジエチレングリコールを含む):ポリプロピレングリコール=51:49(質量比)であり、残留するジエチレングリコールの計算値は12質量%であった。
ポリオール組成物の重量平均分子量は36,000、数平均分子量は1,300であった。分子量はポリプロピレングリコール及びジエチレングリコール由来のピークは除き、GPC分析より算出した。なお、比較例4のポリオール組成物は、ジエチレングリコール濃縮前(比較例1)と比較して、分子量が増大し、粘度が高く、不均一のため、水酸基価及び全アミン価の測定はできなかった。また、比較例4のポリオール組成物は、相分離及び沈殿物の生成も見られたため、プレポリマー合成に使用することはできなかった。さらに、ジエチレングリコールも完全には除去できなかった。
【0112】
比較例5
窒素気流下、200mLのフラスコにエチレングリコール50gを仕込み、200℃に加熱した。ここに、ウレタン廃材A50gを6時間かけて添加し、200℃でさらに6時間撹拌し解重合を行った。室温に放冷後、反応混合物をアセトンで希釈し、不溶物をろ過にて取り除いた。その後、アセトンを減圧留去し、ポリオール組成物(1)(エチレングリコール含量55質量%)73gを得た。
ポリオール組成物(1)の水酸基価は、1.185mg-KOH/g、全アミン価は99mg-KOH/g、重量平均分子量は2,900、数平均分子量は830であった。分子量はポリプロピレングリコール及びエチレングリコール由来のピークは除き、GPC分析より算出した。
【0113】
上記で得られたポリオール組成物(1)25gを100mLのナスフラスコに仕込み、ポリプロピレングリコールC14gを加え、90℃に加熱、減圧してエチレングリコールを留去し、濃縮液を25g得た。前記濃縮液は、ポリウレタン樹脂分解物(エチレングリコールを含む):ポリプロピレングリコール=46:54(質量比)であり、残留するエチレングリコールは1.7質量%であった。前記濃縮液を室温に冷却すると沈殿物が生成したため、デカンテーションにより除去し、さらに濃縮することで、ポリオール組成物(2)19gを得た。残留するエチレングリコールは1.3質量%であった。
ポリオール組成物(2)の水酸基価は253mg-KOH/g、全アミン価は86mg-KOH/g、重量平均分子量は1,500、数平均分子量は730であった。エチレングリコールで解重合を行うことで、ポリウレタン樹脂分解物の分子量の増大はなく、エチレングリコールの除去が可能であったが、依然として水酸基価及び全アミン価が高く、プレポリマー合成には適当でないものであった。
【0114】
比較例6
窒素気流下、200mLのフラスコにポリエチレングリコール400 50gを仕込み、200℃に加熱した。ここに、ウレタン廃材A50gを6時間かけて添加し、200℃でさらに8時間撹拌し解重合を行った。室温に放冷後、反応混合物をアセトンで希釈し、不溶物をろ過にて取り除いた。その後、アセトンを減圧留去し、ポリオール組成物を83g得た。
ポリオール組成物の水酸基価は185mg-KOH/g、全アミン価は37mg-KOH/g、重量平均分子量は26,000、数平均分子量は2,600であった。分子量はポリエチレングリコール由来のピークは除き、GPC分析より算出した。得られたポリオール組成物は、水酸基価及び分子量(粘度)がともに高く、プレポリマー合成に使用することはできなかった。
【0115】
実施例1~11のポリオール組成物の配合を表1に、参考例1及び比較例1~6のポリオール組成物の配合を表2に、それぞれ示す。実施例1~8、参考例1並びに比較例1及び3のポリウレタン接着剤の配合及び評価結果を表3に示す。
【0116】
【0117】
表1中、*1は、実施例4の結果に基づく計算値であり、*2は、実施例2の結果に基づく計算値であることを示す。
【0118】
【0119】
【0120】
実施例に示すとおり、ポリウレタン樹脂分解物(A)並びにポリエーテルポリオール及びカルボン酸エステルからなる群より選択される希釈剤(B)を所定の割合で配合してなり、水酸基価が1~120mg-KOH/gであり、全アミン価が1~50mg-KOH/gであるポリオール組成物から得られるポリウレタン接着剤は、2官能及び3官能のポリプロピレングリコールの混合物である参考例1のポリオール組成物から得られるポリウレタン接着剤と同等のポットライフ及び接着性を有することがわかる。
【0121】
一方、ポリウレタン樹脂分解物を配合し、水酸基価が120mg-KOH/gを超えている比較例1、2及び4~6のポリオール組成物は、水酸基価、全アミン価及び粘度が高く、プレポリマー合成をするのに不適であった。ポリウレタン樹脂分解物の代わりに、2官能のポリプロピレングリコールを使用した比較例3のポリオール組成物は、全アミン価が0であり、圧縮せん断接着強さに劣っていた。
ポリオール組成物は、ポリウレタン樹脂を化学的に分解して得られたポリウレタン樹脂分解物を所定量含む。ポリオール組成物は、ウレタンフォームの由来の廃材等のポリウレタン樹脂の廃材を有効活用しつつ、ポリウレタン接着剤、特に湿気硬化型のポリウレタン接着剤の原料として好適に使用することができる。