(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075043
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】移相量調整装置、及び、移相量調整方法
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240527BHJP
【FI】
H04B7/06 982
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186179
(22)【出願日】2022-11-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、総務省、「100GHz以上の高周波数帯通信デバイスに関する研究開発」研究開発委託契約に基づく開発項目「高出力送信を可能とする化合物系半導体技術」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】筒井 正文
(57)【要約】
【課題】高精度に移相量を調整可能な移相量調整装置、及び、移相量調整方法を提供する。
【解決手段】移相量調整装置は、第1移相器で移相量が調整された第1信号を送信する第1アンテナと、第2移相器で移相量が調整された第2信号を送信する第2アンテナとを有する送信装置から第1信号及び第2信号を受信する受信装置における受信電力を取得する電力取得部と、第1移相器の移相量の変化に対する第1信号の振幅の特性と、第2移相器の移相量の変化に対する第2信号の振幅の特性とを表すテーブルデータを格納する格納部と、テーブルデータから得られる第1移相器の第1移相量における第1信号の第1振幅と、テーブルデータから得られる第2移相器の第2移相量における第2信号の第2振幅との和の二乗値を算出する算出部と、受信電力を二乗値で除算して得る評価値が最大になるように第1移相量及び第2移相量を調整する移相量調整部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1移相器で移相量が調整された第1信号を送信する第1アンテナと、第2移相器で移相量が調整された第2信号を送信する第2アンテナとを有する送信装置から前記第1信号及び前記第2信号を受信する受信装置における受信電力を取得する電力取得部と、
前記第1移相器の移相量の変化に対する前記第1信号の振幅の特性と、前記第2移相器の移相量の変化に対する前記第2信号の振幅の特性とを表すテーブルデータを格納する格納部と、
前記テーブルデータから得られる前記第1移相器の第1移相量における前記第1信号の第1振幅と、前記テーブルデータから得られる前記第2移相器の第2移相量における前記第2信号の第2振幅との和の二乗値を算出する算出部と、
前記受信電力を前記二乗値で除算して得る評価値が最大になるように前記第1移相量及び前記第2移相量を調整する移相量調整部と
を含む、移相量調整装置。
【請求項2】
前記テーブルデータは、前記第1移相器及び前記第2移相器についての共通のテーブルデータであり、前記第1移相器及び前記第2移相器における前記移相量に対する前記第1信号及び前記第2信号の前記振幅の特性を表すテーブルデータである、請求項1に記載の移相量調整装置。
【請求項3】
前記テーブルデータは、前記第1移相器についての第1テーブルデータと、前記第2移相器についての第2テーブルデータとを有し、
前記第1テーブルデータは、前記第1移相器における前記移相量に対する前記第1信号の前記振幅の第1特性を表し、
前記第2テーブルデータは、前記第2移相器における前記移相量に対する前記第2信号の前記振幅の第2特性を表す、請求項1に記載の移相量調整装置。
【請求項4】
前記移相量調整部は、前記第1移相量及び前記第2移相量を調整し、調整後の前記第1移相量及び前記第2移相量によって得られる前記評価値が、調整前の前記第1移相量及び前記第2移相量によって得られる前記評価値を上回ると、前記第1移相量及び前記第2移相量を調整後の値に更新する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の移相量調整装置。
【請求項5】
第1移相器で移相量が調整された第1信号を送信する第1アンテナと、第2信号を送信する第2アンテナとを有する送信装置から前記第1信号及び前記第2信号を受信する受信装置における受信電力を取得する電力取得部と、
前記第1移相器の移相量の変化に対する前記第1信号の振幅の特性を表すテーブルデータを格納する格納部と、
前記テーブルデータから得られる前記第1移相器の第1移相量における前記第1信号の第1振幅と、前記第2信号の第2振幅との和の二乗値を算出する算出部と、
前記受信電力を前記二乗値で除算して得る評価値が最大になるように前記第1移相量を調整する移相量調整部と
を含む、移相量調整装置。
【請求項6】
コンピュータが、
第1移相器で移相量が調整された第1信号を送信する第1アンテナと、第2移相器で移相量が調整された第2信号を送信する第2アンテナとを有する送信装置から前記第1信号及び前記第2信号を受信する受信装置における受信電力を取得し、
前記第1移相器の移相量の変化に対する前記第1信号の振幅の特性と、前記第2移相器の移相量の変化に対する前記第2信号の振幅の特性とを表すテーブルデータから得られる前記第1移相器の第1移相量における前記第1信号の第1振幅と、前記テーブルデータから得られる前記第2移相器の第2移相量における前記第2信号の第2振幅との和の二乗値を算出し、
前記受信電力を前記二乗値で除算して得る評価値が最大になるように前記第1移相量及び前記第2移相量を調整する、移相量調整方法。
【請求項7】
コンピュータが、
第1移相器で移相量が調整された第1信号を送信する第1アンテナと、第2信号を送信する第2アンテナとを有する送信装置から前記第1信号及び前記第2信号を受信する受信装置における受信電力を取得し、
前記第1移相器の移相量の変化に対する前記第1信号の振幅の特性を表すテーブルデータから得られる前記第1移相器の第1移相量における前記第1信号の第1振幅と、前記第2信号の第2振幅との和の二乗値を算出し、
前記受信電力を前記二乗値で除算して得る評価値が最大になるように前記第1移相量を調整する、移相量調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移相量調整装置、及び、移相量調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数の単位素子を、所定の配列で含むアンテナ装置がある。前記複数の単位素子それぞれは、送信の対象となる送信信号の送信、および、受信の対象となる受信信号の受信、またはこれらのいずれかを行う信号送受信手段と、送信される前記送信信号または受信された前記受信信号の振幅および位相を、これらに対する制御量に従って調整する振幅・位相調整手段とを有する。アンテナ装置は、振幅および位相が調整されて送信された前記送信信号、および、受信されて振幅および位相が調整された前記受信信号、またはこれらのいずれかを測定する信号測定手段と、前記測定された送信信号および受信信号またはこれらのいずれかに基づいて、前記送信される送信信号および前記調整された受信信号またはこれらのいずれかに対して所望の制御量を与えるために、前記制御量に対して行うべき補正の値を示す補正値を算出する補正値算出手段とを有する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来のアンテナ装置は、移相器の移相量の変化に対する実際の出力信号の特性に基づいて得られる電力を考慮していないため、移相量を調整する際に十分な精度が得られない。
【0005】
そこで、高精度に移相量を調整可能な移相量調整装置、及び、移相量調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の実施形態の移相量調整装置は、第1移相器で移相量が調整された第1信号を送信する第1アンテナと、第2移相器で移相量が調整された第2信号を送信する第2アンテナとを有する送信装置から前記第1信号及び前記第2信号を受信する受信装置における受信電力を取得する電力取得部と、前記第1移相器の移相量の変化に対する前記第1信号の振幅の特性と、前記第2移相器の移相量の変化に対する前記第2信号の振幅の特性とを表すテーブルデータを格納する格納部と、前記テーブルデータから得られる前記第1移相器の第1移相量における前記第1信号の第1振幅と、前記テーブルデータから得られる前記第2移相器の第2移相量における前記第2信号の第2振幅との和の二乗値を算出する算出部と、前記受信電力を前記二乗値で除算して得る評価値が最大になるように前記第1移相量及び前記第2移相量を調整する移相量調整部とを含む。
【発明の効果】
【0007】
高精度に移相量を調整可能な移相量調整装置、及び、移相量調整方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の移相量調整装置100と通信装置10及び20との構成の一例を示す図である。
【
図2A】移相器13の移相量の変化に対する通信装置20の受信電力の関係の一例を示す図である。
【
図2B】移相器13の移相量φ
2に対する出力信号の振幅の特性の一例を示す図である。
【
図3】移相量調整装置100が実行する移相量調整方法の処理の一例を表すフローチャートである。
【
図4】移相量調整装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の移相量調整装置、及び、移相量調整方法を適用した実施形態について説明する。
【0010】
<実施形態>
図1は、実施形態の移相量調整装置100と通信装置10及び20との構成の一例を示す図である。通信装置10は、送信装置の一例であり、通信装置20は受信装置の一例である。通信装置10は、例えば基地局であり、固定された位置に配置されている。通信装置20は、例えば基地局又は移動局であり、固定された位置に配置されている。通信装置10及び20は、一例として、第5世代移動通信システム(5G)又は第6世代移動通信システム(6G)等の規格に対応する電波を送受可能である。以下では、一例として、通信装置10及び20が5Gの規格に対応する電波で通信する形態について説明する。
【0011】
<通信装置10>
通信装置10は、送信信号発生部11、分配回路12、N(Nは2以上の整数)個の移相器13、及びN個のアンテナ14を含む。ここでは通信装置10が基地局である形態について説明するが、通信装置10は、少なくとも信号を送信可能であればよい。
【0012】
N個の移相器13のうちの任意の1つは第1移相器の一例であり、他の任意の1つは第2移相器の一例である。N個のアンテナ14のうち、第1移相器の一例としての移相器13に接続されるアンテナ14は、第1アンテナの一例である。N個のアンテナ14のうち、第2移相器の一例としての移相器13に接続されるアンテナ14は、第2アンテナの一例である。
【0013】
送信信号発生部11は、送信信号を発生する装置であり、搬送波をベースバンド信号で変調して送信信号として分配回路12に出力する。分配回路12は、送信信号発生部11と、N個の移相器13との間に設けられており、送信信号発生部11から入力される送信信号をN個の移相器13に分配して出力する。
【0014】
N個の移相器13は、分配回路12と、N個のアンテナ14との間に設けられており、分配回路12から入力されるN個の送信信号の位相を移相量φ1~φNだけシフトさせて、N個のアンテナ14にそれぞれ出力する。移相器13の移相量とは、移相器13の入力信号の位相をシフトする量であり、移相器13の出力信号は、入力信号に対して移相量だけ位相がシフトされている。各移相器13の移相量は、移相量調整装置100によって設定される。
【0015】
なお、移相量調整装置100は、各移相器13の移相量を調整するために、各移相器13とケーブル等を介してデータ通信可能に接続されていてもよく、各移相器13と無線通信可能な構成であってもよい。無線通信は、5Gの規格に準じた通信であってもよく、また例えば、無線LAN(Local Area Network)、BLE(登録商標)、又は第4世代移動通信システム(4G)等による通信であってもよい。
【0016】
N個のアンテナ14は、それぞれ、N個の移相器13の出力側に接続されており、N個の移相器13によって位相がシフトされた送信信号をそれぞれ送信する。N個のアンテナ14から送信される送信信号は、ビームフォーミングによって1又は複数のビームを形成する。ここでは、一例として1つのビームを形成する場合について説明する。ビームフォーミングによって得られるビームは、通信装置20のアンテナ21に向けられる。
【0017】
<通信装置20>
通信装置20は、アンテナ21、受信信号復調部22、及び受信電力測定部23を含む。ここでは通信装置20が固定された位置に配置されている基地局又は移動局である形態について説明するが、通信装置20は、少なくとも通信装置10から送信される信号を受信可能であればよい。
【0018】
アンテナ21は、受信信号復調部22及び受信電力測定部23に接続されており、通信装置10から送信される送信信号を受信する。受信信号復調部22は、アンテナ21で受信された送信信号を復調してデータを取り出す復調器である。受信信号復調部22は、送信信号から取り出したデータを図示しない情報処理装置等に出力する。受信電力測定部23は、アンテナ21で受信される送信信号の電力(受信電力)を測定する。受信電力測定部23は、受信電力を測定可能な機器であればよく、例えばRF(Radio Frequency)測定器等を用いることができる。
【0019】
<移相量調整装置100>
移相量調整装置100は、電力取得部101、算出部102、移相量調整部103、及びメモリ104を有する。メモリ104は、格納部の一例である。移相量調整装置100がN個の移相器13の移相量φ1~φNを調整する方法は、実施形態の移相量調整方法である。
【0020】
移相量調整装置100は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、入出力インターフェース、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。このような移相量調整装置100のハードウェア構成については、
図4を用いて後述する。
【0021】
電力取得部101、算出部102、及び移相量調整部103は、移相量調整装置100が実行するプログラムの機能を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ104は、移相量調整装置100のメモリを機能的に表したものである。
【0022】
移相量調整装置100は、通信装置20の受信電力測定部23によって測定される受信電力に基づいて、アンテナ21における受信電力が最大になるように、通信装置10のN個の移相器13の移相量φ1~φNを調整する。移相量調整装置100は、通信装置10側に設けられていてもよく、通信装置20側に設けられていてもよく、通信装置10及び20とは別の第三の位置に設けられていてもよい。
【0023】
移相量調整装置100は、受信電力測定部23とケーブル等を介してデータ通信可能に接続されていてもよく、受信電力測定部23と無線通信可能な構成であってもよい。無線通信は、5Gの規格に準じた通信であってもよく、また例えば、無線LAN、BLE(登録商標)、又は第4世代移動通信システム(4G)等による通信であってもよい。
【0024】
<電力取得部101>
電力取得部101は、N個の移相器13で移相量φ1~φNがそれぞれ調整された送信信号を送信するN個のアンテナ14を有する通信装置10からN個の送信信号を受信する通信装置20における受信電力を取得する。
【0025】
すなわち、電力取得部101は、移相器13(第1移相器)で移相量が調整された送信信号(第1信号)を送信するアンテナ14(第1アンテナ)と、移相器13(第2移相器)で移相量が調整された送信信号(第2信号)を送信するアンテナ14(第2アンテナ)とを有する通信装置10から送信信号(第1信号)及び送信信号(第2信号)を受信する通信装置20における受信電力を取得する。
【0026】
<算出部102>
算出部102は、メモリ104に格納されるテーブルデータから得られるN個の移相器13のN個の移相量におけるN個の送信信号の振幅の和の二乗値を算出する。N個の送信信号の振幅は、N個の移相器13の出力信号の振幅である。なお、二乗値の算出方法については後述する。
【0027】
すなわち、算出部102は、メモリ104に格納されるテーブルデータから得られる移相器13(第1移相器)の移相量(第1移相量)における送信信号(第1信号)の第1振幅と、テーブルデータから得られる移相器13(第2移相器)の移相量(第2移相量)における送信信号(第2信号)の第2振幅との和の二乗値を算出する。
【0028】
<移相量調整部103>
移相量調整部103は、電力取得部101によって取得される受信電力を、算出部102によって算出される二乗値で除算して得る評価値が最大になるように、N個の移相器13のN個の移相量φ1~φNを調整する。なお、評価値の算出方法については後述する。
【0029】
すなわち、移相量調整部103は、電力取得部101によって取得される受信電力を、算出部102によって算出される二乗値で除算して得る評価値が最大になるように移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整する。
【0030】
<メモリ104>
メモリ104は、N個の移相器13の各々における移相量の変化に対する送信信号(移相器13の出力信号)の振幅の特性を表すテーブルデータを格納する。メモリ104は、N個の移相器13についてのN個の振幅の特性を表すテーブルデータを格納する。
【0031】
すなわち、メモリ104は、移相器13(第1移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第1信号)の振幅の特性と、移相器13(第2移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第2信号)の振幅の特性とを表すテーブルデータを格納する。メモリ104に格納されるテーブルデータは、移相器13(第1移相器)についての第1テーブルデータと、移相器13(第2移相器)についての第2テーブルデータとを有する。第1テーブルデータは、移相器13(第1移相器)における移相量に対する送信信号(第1信号)の振幅の第1特性を表す。第2テーブルデータは、移相器13(第2移相器)における移相量に対する送信信号(第2信号)の振幅の第2特性を表す。
【0032】
なお、メモリ104が格納するテーブルデータは、N個の移相器13について共通の1つの特性を表すテーブルデータであってもよい。この場合には、メモリ104に格納されるテーブルデータが表す1つの特性において、N個の移相器13の移相量に対応する振幅が抽出される。
【0033】
すなわち、共通のテーブルデータは、移相器13(第1移相器)及び移相器13(第2移相器)における移相量に対する送信信号(第1信号)及び送信信号(第2信号)の振幅の特性を表すテーブルデータである
【0034】
<移相器13の移相量φの変化に対する出力信号の振幅の特性>
図2Aは、移相器13の移相量の変化に対する通信装置20の受信電力の関係の一例を示す図である。例えば、
図1において移相器13が2個(N=2)で、1番目(#1)の移相器13の移相量φ
1を固定して、2番目(#2)の移相器13の移相量φ
2を変化させると、通信装置20の受信電力は
図2Aのように変化する。
図2Aにおいて、横軸は2番目(#2)の移相器13の移相量φ
2を表し、縦軸は通信装置20の受信電力を表す。
図2Aでは、横軸の移相量(0°~360°)を6ビット(0~63の64階調)で示す。0番目の移相量は0°であり、32番目の移相量は180°であり、63番目の移相量は354.375°である。
【0035】
ところで、移相器13には個体差があり、移相器13の移相量に対する出力信号の振幅には、誤差又はばらつきがある。例えば、1番目(#1)の移相器13の移相量φ
1を固定して、2番目(#2)の移相器13の移相量φ
2を変化させた場合に、
図2Aに実線で示すように通信装置20の受信電力が変化したとする。なお、56番目の移相量φ
2において受信電力がゼロになっているのは、56番目の移相量φ
2のときに、移相量φ
1と移相量φ
2とが逆位相になっているからである。
【0036】
図2Aには、移相量φ
2の変化に対する通信装置20の理想的な受信電力の特性を破線で示す。理想的な受信電力の特性は、理論値から得られる特性である。実線で示す実際の通信装置20の受信電力の特性は、破線で示す理想的な特性からずれており、受信電力が最大になるのは24番目の移相量φ
2であるが、例えば、15番目の移相量φ
2と24番目の移相量φ
2との間において理想的な特性の受信電力よりも低くなっているために、15番目の移相量φ
2における受信電力が極大値になっていることする。
【0037】
このような場合に、移相量φ2を0番目から順番に変化させて受信電力が最大になる移相量φ2を探索すると、受信電力が最大になるのは24番目の移相量φ2に辿り着く前に、15番目の移相量φ2における受信電力の極大値を最大値として判定するおそれがある。すなわち、15番目の移相量φ2という局所解を誤って求めてしまう可能性がある。
【0038】
このように、実際の通信装置20の受信電力の特性(実線)が理想的な特性(破線)からずれるのは、移相器13の個体差、又は、分配回路12とアンテナ14との間の回路の特性のばらつき等によって、移相器13の移相量に対する出力信号の振幅に誤差又はばらつきが生じるからである。
【0039】
図2Bは、移相器13の移相量φ
2に対する出力信号の振幅の特性の一例を示す図である。
図2Bには、移相量φ
2の変化に対する実際の移相器13の出力信号の振幅の特性の一例を実線で示す。また、移相量φ
2の変化に対する移相器13の出力信号の振幅の理想的な特性を破線で示す。理想的な出力信号の振幅の特性は、理論値から得られる特性である。
【0040】
図2Bに示すように、移相量φ
2の変化に対する移相器13の出力信号の振幅の理想的な特性(破線)は、移相量φ
2の変化に対して一定である。しかしながら、実際には、誤差又はばらつき等があるため、実線で示すように、実際の移相器13の出力信号の振幅は移相量φ
2の変化に対して変動し、理想的な特性における値よりも低くなる。このように、実際の振幅が理想的な振幅に対して低くなるのは、実際の移相器13の出力には損失が生じるためである。
【0041】
一例として、
図2Bに実線で示すように、15番目の移相量φ
2と24番目の移相量φ
2との間における出力信号の振幅に極小値が存在すると、
図2Aに実線で示すように、受信電力にも15番目の移相量φ
2と24番目の移相量φ
2との間に極小値が生じ、局所解を誤って求めるような事象が発生し得る。
【0042】
実施形態の移相量調整装置100は、このように誤って局所解を求めることを抑制することで、N個の移相器13の移相量φ1~φNを通信装置20の受信電力が最大になる移相量に高精度に調整可能である。以下、N個の移相量φ1~φNの具体的な調整方法について説明する。移相量φ1~φNの調整方法は、受信装置としての通信装置20の受信電力の取得、メモリ104に格納されるテーブルデータの利用、二乗値の算出、及び、評価値の算出を含む。以下では、メモリ104に格納されるテーブルデータ、二乗値の算出、及び、評価値の算出について説明する。
【0043】
<メモリ104に格納されるテーブルデータ>
メモリ104に格納されるテーブルデータは、
図2Bに実線で示す移相量φ
2の変化に対する実際の移相器13の出力信号の振幅の特性のように、N個の移相量φ
1~φ
Nの変化に対する実際のN個の移相器13の出力信号の振幅の特性を含む。各移相器13における移相量の変化に対する実際の出力信号の振幅の特性は、例えば、実験等で予め測定してテーブルデータにしておけばよい。
【0044】
なお、例えば、N個の移相器13の移相量φ1~φNの変化に対する出力信号の振幅の特性の誤差又はばらつきが比較的少ないような場合には、メモリ104が格納するテーブルデータは、N個の移相器13について共通の1つの特性を表すテーブルデータであってもよい。また、N個の移相器13を特性の誤差又はばらつき等に応じて幾つかのグループに分け、グループ毎のテーブルデータをメモリ104に格納してもよい。
【0045】
<二乗値の算出>
二乗値の算出は、算出部102が行う。ここで、メモリ104に格納されるテーブルデータから得られるN個の移相器13のN個の移相量φ1~φNにおけるN個の送信信号の振幅をA(φ1)~A(φN)とする。N個の送信信号の振幅は、N個の移相器13の出力信号の振幅である。
【0046】
算出部102は、テーブルデータから得られるN個の移相器13のN個の移相量φ1~φNにおけるN個の送信信号の振幅A(φ1)~A(φN)の和の二乗値Sを次式(1)に従って算出する。
【0047】
S=|A(φ1)+A(φ2)+…+A(φN)|2 (1)
【0048】
式(1)において、A(φ1)+A(φ2)+…+A(φN)は、メモリ104に格納されるテーブルデータから得られるため、受信装置としての通信装置20のアンテナ21で実際に受信される送信信号の振幅の合計値を表している。振幅は電圧値に相当するため、式(1)で得られる二乗値Sは、受信装置としての通信装置20のアンテナ21で実際に得られる受信電力として期待される期待値を表している。
【0049】
<評価値の算出>
移相量調整部103は、電力取得部101によって取得される受信電力Pを、二乗値Sで除算して得る評価値Eを求める。評価値Eは、次式(2)で求まる。
【0050】
E=P/S (2)
【0051】
評価値Eは、通信装置20の受信電力Pを、通信装置20の実際の受信電力の期待値としての二乗値Sで除算しているので、受信電力Pを二乗値Sで正規化した値である。二乗値Sは電力に相当する値であるため、受信電力Pを二乗値Sで除算して得られる評価値Eは、単位を持たない値である。しかしながら、評価値Eは、受信電力Pを二乗値Sで正規化して得られる値であるため、N個の移相量に対する評価値Eの特性は、
図2Aに実線で示す特性(二乗値Sに相当)を破線で示す理想的な受信電力に補正した特性に相当する(移相量に対する変化の形状が理想的な特性に等しい)と考えることができる。
【0052】
このため、評価値Eが最大になるようにN個の移相量φ1~φNを調整すれば、通信装置20が最大の受信電力を得られるように、高精度にN個の移相量φ1~φNを調整することができる。
【0053】
<フローチャート>
図3は、移相量調整装置100が実行する移相量調整方法の処理の一例を表すフローチャートである。
図3に示す処理は、移相量調整装置100の電力取得部101、算出部102、及び移相量調整部103が実行する。
【0054】
移相量調整部103は、処理が開始されると、N個の移相器13の移相量φ1~φNを設定する(ステップS1)。なお、移相量調整装置100は、所定の制御周期でステップS1~S6の処理を繰り返し実行するが、1回目の制御周期でステップS1の処理を実行する際には、移相量φ1~φNを初期値に設定すればよい。初期値は、移相量φ1~φNについて予め設定しておけばよい。
【0055】
電力取得部101は、通信装置20の受信電力を取得する(ステップS2)。より具体的には、電力取得部101は、N個の移相器13で移相量φ1~φNがそれぞれ調整された状態で、通信装置10のN個のアンテナ14から送信信号を送信し、通信装置20における受信電力を受信電力測定部23から取得する。
【0056】
算出部102は、メモリ104に格納されたテーブルデータを参照し、各移相器13に対応するテーブルデータから、ステップS1において設定された移相量φ1~φNに対応する振幅A(φ1)~A(φN)を読み出す(ステップS3)。
【0057】
算出部102は、ステップS3で読み出したN個の振幅A(φ1)~A(φN)の和の二乗値Sを式(1)に従って算出する(ステップS4)。
【0058】
移相量調整部103は、式(2)に従って、ステップS2において取得された受信電力Pを、ステップS4において算出された二乗値Sで除算して評価値Eを求める(ステップS5)。移相量調整部103は、求めた評価値Eをメモリ104に格納する。
【0059】
移相量調整部103は、ステップS5において求めた評価値Eが、それまでに求めた評価値Eの中で最大であるかどうかを判定する(ステップS6)。移相量調整部103は、メモリ104に格納した評価値E(前回の制御周期までに求めた評価値E)と、今回の制御周期で求めた評価値Eとを比較し、今回の制御周期で求めた評価値Eが最大であるかどうかを判定する。
【0060】
移相量調整部103は、評価値Eが最大ではない(S6:NO)と判定すると、フローをステップS1にリターンする。この結果、移相量調整装置100は、ステップS1~S6の処理を繰り返し実行する。
【0061】
また、移相量調整部103は、ステップS6において評価値Eが最大である(S6:YES)と判定すると、一連の処理を終了する。移相量調整部103は、最大の評価値Eを与える移相量φ1~φNをN個の移相器13にそれぞれ設定する。
【0062】
なお、ステップS6では、例えば、ステップS1~S6を繰り返して移相量φ1~φNを増大させながら、評価値Eが増大してから減少する移相量まで追い込んだら、移相量φ1~φNを減少させながら、評価値Eが再び増大してから減少する移相量φ1~φNまで追い込むように挟み撃ちする処理を行えばよい。このように、移相量φ1~φNを逐次更新しながら、最大の評価値Eを与える移相量φ1~φNを求めればよい。このときに、移相量φ1~φNの増大及び減少の幅を最初は大きく設定し、徐々に小さくすることで、評価値Eの最大値を与える移相量φ1~φNを効率的に発見することができる。
【0063】
<移相量調整装置100のハードウェア構成>
図4は、移相量調整装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4には、移相量調整装置100を実現するコンピュータ30を示す。移相量調整装置100は、CPU31と、メモリ32と、ネットワークI/F33と、記録媒体I/F34と、記録媒体35とを有するコンピュータ30によって実現される。また、各構成は、バス36によってそれぞれ接続される。
【0064】
ここで、CPU31は、移相量調整装置100の全体の制御を司る。メモリ32は、例えば、ROM、RAMおよびフラッシュROMなどを有する。具体的には、例えば、フラッシュROMやROMが各種プログラムを記憶し、RAMがCPU31のワークエリアとして使用される。メモリ32に記憶されるプログラムは、CPU31にロードされることにより、コーディングされている処理をCPU31に実行させる。
【0065】
ネットワークI/F33は、通信回線を通じてネットワークに接続され、ネットワークを介して他のコンピュータに接続される。他のコンピュータは、通信装置10又は20に含まれるコンピュータであってもよい。そして、ネットワークI/F33は、ネットワークと内部のインターフェースを司り、他のコンピュータからのデータの入出力を制御する。ネットワークI/F33は、例えば、モデムやLANアダプタなどである。
【0066】
記録媒体I/F34は、CPU31の制御に従って記録媒体35に対するデータのリード/ライトを制御する。記録媒体I/F34は、例えば、ディスクドライブ、SSD、USBポートなどである。記録媒体35は、記録媒体I/F34の制御で書き込まれたデータを記憶する不揮発メモリである。記録媒体35は、例えば、ディスク、半導体メモリ、USBメモリなどである。記録媒体35は、移相量調整装置100から着脱可能であってもよい。
【0067】
なお、移相量調整装置100が有する各構成は、メモリ32や記録媒体35などの記憶領域に記憶されたプログラムをCPU31に実行させることにより、または、ネットワークI/F33により、その機能を実現されてもよい。
【0068】
<効果>
移相量調整装置100は、移相器13(第1移相器)で移相量が調整された送信信号(第1信号)を送信するアンテナ14(第1アンテナ)と、移相器13(第2移相器)で移相量が調整された送信信号(第2信号)を送信するアンテナ14(第2アンテナ)とを有する通信装置10から送信信号(第1信号)及び送信信号(第2信号)を受信する通信装置20における受信電力Pを取得する電力取得部101と、移相器13(第1移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第1信号)の振幅の特性と、移相器13(第2移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第2信号)の振幅の特性とを表すテーブルデータを格納するメモリ104と、テーブルデータから得られる移相器13(第1移相器)の移相量(第1移相量)における送信信号(第1信号)の第1振幅と、テーブルデータから得られる移相器13(第2移相器)の移相量(第2移相量)における送信信号(第2信号)の第2振幅との和の二乗値Sを算出する算出部102と、受信電力Pを二乗値Sで除算して得る評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整する移相量調整部103とを含む。二乗値Sは、受信装置としての通信装置20のアンテナ21で実際に得られる受信電力として期待される期待値を表しており、評価値Eは、受信電力Pを二乗値Sで正規化した値である。このため、評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整すれば、通信装置20が最大の受信電力Pを得られるように、高精度に移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整することができる。
【0069】
したがって、高精度に移相量を調整可能な移相量調整装置100を提供することができる。
【0070】
また、テーブルデータは、移相器13(第1移相器)についての第1テーブルデータと、移相器13(第2移相器)についての第2テーブルデータとを有し、第1テーブルデータは、移相器13(第1移相器)における移相量に対する送信信号(第1信号)の振幅の第1特性を表し、第2テーブルデータは、移相器13(第2移相器)における移相量に対する送信信号(第2信号)の振幅の第2特性を表す。このため、複数の移相器13(第1移相器)及び移相器13(第2移相器)の各々の送信信号の振幅の誤差又はばらつき等に合わせて、高精度に移相量を調整可能な移相量調整装置100を提供することができる。
【0071】
また、移相量調整部103は、移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整し、調整後の移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)によって得られる評価値Eが、調整前の移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)によって得られる評価値Eを上回ると、移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整後の値に更新する。このため、複数の移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を逐次更新しながら、最大の評価値Eを与える複数の移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を求めることができる。
【0072】
移相量調整方法は、コンピュータ30が、移相器13(第1移相器)で移相量が調整された送信信号(第1信号)を送信するアンテナ14(第1アンテナ)と、移相器13(第2移相器)で移相量が調整された送信信号(第2信号)を送信するアンテナ14(第2アンテナ)とを有する通信装置10から送信信号(第1信号)及び送信信号(第2信号)を受信する通信装置20における受信電力Pを取得し、移相器13(第1移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第1信号)の振幅の特性と、移相器13(第2移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第2信号)の振幅の特性とを表すテーブルデータから得られる移相器13(第1移相器)の移相量(第1移相量)における送信信号(第1信号)の第1振幅と、テーブルデータから得られる移相器13(第2移相器)の移相量(第2移相量)における送信信号(第2信号)の第2振幅との和の二乗値Sを算出し、受信電力Pを二乗値Sで除算して得る評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整する。このため、評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整すれば、通信装置20が最大の受信電力Pを得られるように、高精度に移相量(第1移相量)及び移相量(第2移相量)を調整することができる。
【0073】
したがって、高精度に移相量を調整可能な移相量調整方法を提供することができる。
【0074】
<変形例>
なお、以上では、テーブルデータが、移相器13(第1移相器)についての第1テーブルデータと、移相器13(第2移相器)についての第2テーブルデータとを有する形態について説明した。しかしながら、テーブルデータは、移相器13(第1移相器)及び移相器13(第2移相器)についての共通のテーブルデータであってもよい。この場合には、テーブルデータは、移相器13(第1移相器)及び移相器13(第2移相器)における移相量に対する送信信号(第1信号)及び送信信号(第2信号)の振幅の特性を表すテーブルデータである。移相器13(第1移相器)及び移相器13(第2移相器)で共通のテーブルデータを用いることにより、メモリ104の容量が小さくて済み、より簡易な構成で高精度に移相量を調整可能な移相量調整装置100を提供することができる。
【0075】
また、以上では、通信装置10の各アンテナ14に移相器13が接続されている形態について説明したが、通信装置10は、例えば移相器13が接続されていないアンテナ14を有していてもよい。すなわち、通信装置10は、移相器13(第1移相器)で移相量が調整された送信信号(第1信号)を送信するアンテナ14(第1アンテナ)と、移相器13が接続されずに送信信号(第2信号)を送信するアンテナ14(第2アンテナ)とを有する構成であってもよい。この場合に、移相量調整装置100は、移相器13(第1移相器)で移相量が調整された送信信号(第1信号)を送信するアンテナ14(第1アンテナ)と、送信信号(第2信号)を送信するアンテナ14(第2アンテナ)とを有する通信装置10から送信信号(第1信号)及び送信信号(第2信号)を受信する通信装置20における受信電力Pを取得する電力取得部101と、移相器13(第1移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第1信号)の振幅の特性を表すテーブルデータを格納するメモリ104と、テーブルデータから得られる移相器13(第1移相器)の移相量(第1移相量)における送信信号(第1信号)の第1振幅と、送信信号(第2信号)の第2振幅との和の二乗値Sを算出する算出部102と、受信電力Pを二乗値Sで除算して得る評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)を調整する移相量調整部103とを含む構成になる。
【0076】
このような構成の移相量調整装置100において、評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)を調整すれば、通信装置20が最大の受信電力Pを得られるように、高精度に移相量(第1移相量)を調整することができる。
【0077】
したがって、より簡易な構成で、高精度に移相量を調整可能な移相量調整装置100を提供することができる。
【0078】
同様に、このような移相量調整装置100における移相量調整方法は、次のような構成になる。移相量調整方法は、コンピュータ30が、移相器13(第1移相器)で移相量が調整された送信信号(第1信号)を送信するアンテナ14(第1アンテナ)と、送信信号(第2信号)を送信するアンテナ14(第2アンテナ)とを有する通信装置10から送信信号(第1信号)及び送信信号(第2信号)を受信する通信装置20における受信電力Pを取得し、移相器13(第1移相器)の移相量の変化に対する送信信号(第1信号)の振幅の特性を表すテーブルデータから得られる移相器13(第1移相器)の移相量(第1移相量)における送信信号(第1信号)の第1振幅と、送信信号(第2信号)の第2振幅との和の二乗値Sを算出し、受信電力Pを二乗値Sで除算して得る評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)を調整する。
【0079】
このような構成の移相量調整方法において、評価値Eが最大になるように移相量(第1移相量)を調整すれば、通信装置20が最大の受信電力Pを得られるように、高精度に移相量(第1移相量)を調整することができる。
【0080】
したがって、より簡易な構成で、高精度に移相量を調整可能な移相量調整方法を提供することができる。
【0081】
以上、本開示の例示的な実施形態の移相量調整装置、及び、移相量調整方法について説明したが、本開示は、具体的に開示された実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
10 通信装置
11 送信信号発生部
12 分配回路
13 移相器
14 アンテナ
20 通信装置
21 アンテナ
22 受信信号復調部
23 受信電力測定部
100 移相量調整装置
101 電力取得部
102 算出部
103 移相量調整部
104 メモリ