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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075046
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】脱液方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 29/17 20060101AFI20240527BHJP
   B01D 29/90 20060101ALI20240527BHJP
   B01D 29/62 20060101ALI20240527BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20240527BHJP
   C02F 11/125 20190101ALI20240527BHJP
【FI】
B01D29/30 501
B01D29/30 520B
B01D29/42 501C
B01D29/38 570C
B01D39/20 A
C02F11/125
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186182
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】394019738
【氏名又は名称】株式会社杉原工業
(74)【代理人】
【識別番号】100122622
【弁理士】
【氏名又は名称】森 徳久
(72)【発明者】
【氏名】杉原 満
(72)【発明者】
【氏名】林 二一
(72)【発明者】
【氏名】河嶋 武彦
【テーマコード(参考)】
4D019
4D059
4D116
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA02
4D019BB09
4D019CA03
4D059AA00
4D059BE12
4D059BE15
4D059BJ02
4D059CB09
4D116AA05
4D116AA06
4D116AA26
4D116BB01
4D116BC27
4D116BC45
4D116BC48
4D116BC77
4D116DD06
4D116FF17B
4D116GG02
4D116GG29
4D116KK04
4D116QA35C
4D116QA35F
4D116QA36C
4D116QA36F
4D116QA55C
4D116QA55F
4D116QB50
4D116QC32A
4D116RR01
4D116RR28
4D116VV12
(57)【要約】
【課題】固液混合原料の脱液を効果的に行い得る技術を提供する。
【解決手段】
本明細書で開示する脱液方法は、脱液機を用いて固液混合原料から液体を分離する脱液方法であって、脱液機のスクリュー体の回転羽根部間に固液混合原料を投入する投入ステップであって、スクリュー体のうちの固液混合原料が投入される部分において、固液混合原料の上側液面の高さが回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するように固液混合原料を投入する投入ステップと、駆動機構を駆動させることにより、回転羽根部間に投入された固液混合原料が前記出口側端部に向けて搬送されるように、脱液機のバレルとスクリュー体とを相対回転させる回転ステップと、回転羽根部間に投入された固液混合原料を出口側端部に向けて搬送するとともに、スクリュー体とバレルとの間で固液混合原料を圧搾圧密することによって固液混合原料から液体を分離させる脱液ステップとを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱液機を用いて固液混合原料から液体を分離する脱液方法であって、
前記脱液機は、
多数個の脱液用加工部が形成された金属製の円筒体であるバレルと、前記バレルの内側に前記バレルと同心状に配置されるスクリュー体と、駆動機構と、を備えており、
前記スクリュー体の回転羽根部間のピッチは、入口側端部から出口側端部に向けて狭くなるように形成されており、
前記駆動機構は、前記スクリュー体の前記回転羽根部間に投入された前記固液混合原料が前記出口側端部に向けて搬送されるように、前記バレルと前記スクリュー体とを相対回転させるものであり、
前記スクリュー体の前記回転羽根部間に前記固液混合原料を投入する投入ステップであって、前記スクリュー体のうちの前記固液混合原料が投入される部分において、前記固液混合原料の上側液面の高さが前記回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するように前記固液混合原料を投入する、前記投入ステップと、
前記駆動機構を駆動させることにより、前記回転羽根部間に投入された前記固液混合原料が前記出口側端部に向けて搬送されるように、前記バレルと前記スクリュー体とを相対回転させる、回転ステップと、
前記回転羽根部間に投入された前記固液混合原料を前記出口側端部に向けて搬送するとともに、前記スクリュー体と前記バレルとの間で前記固液混合原料を圧搾圧密することによって、前記固液混合原料から液体を分離させる脱液ステップと、を有する、
脱液方法。
【請求項2】
前記投入ステップでは、前記固液混合原料は、投入される前記固液混合原料の上側液面の高さが前記回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するような単位時間当たりの投入量で投入される、請求項1に記載の脱液方法。
【請求項3】
前記バレルに振動を加える加振ステップをさらに有する、請求項1に記載の脱液方法。
【請求項4】
前記スクリュー体は、金属材をコイル状に巻いて成形されたスクリュー型螺旋体であって、そのピッチが前記入口側端部から前記出口側端部に向けて狭くなるように形成されており、
前記脱液機は、前記スクリュー型螺旋体の内側に前記スクリュー型螺旋体と同心状に配置される軸体をさらに備えており、
前記駆動機構は、前記スクリュー型螺旋体の線間に投入された前記固液混合原料が、前記出口側端部に向けて搬送されるように、前記バレル及び前記軸体の組合せと、前記スクリュー型螺旋体と、を相対回転させる、請求項1に記載の脱液方法。
【請求項5】
前記バレルは、金属製の円筒体であるバレル用濾材と、前記バレル用濾材を保持するケーシングとを備えており、
前記バレル用濾材は、前記固液混合原料が接触する側の表面と、前記表面の反対側の裏面とを有する円筒状の濾材本体を備え、
前記濾材本体には前記多数個の脱液用加工部が形成されており、
前記多数個の脱液用加工部のそれぞれは、2本の剪断部に挟まれており、
前記2本の剪断部は、前記表面と前記裏面の間で前記濾材本体が剪断されている部分である、請求項1に記載の脱液方法。
【請求項6】
前記バレルに振動を加える加振ステップをさらに有しており、
前記2本の剪断部は前記入口側端部から前記出口側端部に向かう搬送方向に沿って形成されており、
前記ケーシングは、前記バレル用濾材のうち、前記搬送方向に沿って隣り合う2個の前記脱液用加工部の間の連結部を露出させる開口部を有しており、
前記加振ステップでは、前記開口部から露出している前記バレル用濾材の前記連結部に振動が加えられる、請求項5に記載の脱液方法。
【請求項7】
前記バレル用濾材は、半円筒状の第1濾材と半円筒状の第2濾材とを有しており、前記第1濾材と前記第2濾材とを組み合わせることにより円筒状の前記バレル用濾材が形成される、請求項6に記載の脱液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、例えば汚泥等のように、液体と固形物が混合された状態の固液混合原料から液体と固体を分離する脱液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スクリュー式脱液機が開示されている。スクリュー式脱液機は、多孔板製の円筒状のバレルと、バレル内に同心状に配置されるスクリュー体と、スクリュー体を回転させてバレル内に投入された濾過対象の固液混合原料(例えば汚泥等)をバレルの出口側端部に向かって送る回転機構とを有する。スクリュー体は、バレルと同心状に配置されたスクリュー軸と、スクリュー軸の外面に固定されたスクリュー羽根とを有する。スクリュー羽根の間隔(ピッチ)はバレルの出口側端部に向けて小さくなるように形成されている。バレルの入口側端部上には固液混合原料を投入するための投入口が設けられている。投入口の下にはスクリュー体が存在する。
【0003】
投入口に投入された固液混合原料は、投入口内を落下してバレルの入口側端部内に入る。投入口の下に存在するスクリュー体が回転することにより、バレル内に投入された固液混合原料が出口側端部に向かって送られる。この際、バレルの内周面とスクリュー体との間の空間(即ち固液混合原料の通路)は、出口側端部に向かって徐々に狭くなる。そのため、固液混合原料は、出口側端部に向かうに従って、バレルの内周面とスクリュー体の間に挟まれて圧搾圧密される。この結果、固液混合原料から液体が分離される。分離された液体は、バレルに設けられた多数の孔から外部に排出される。液体が除去された後の原料(即ち脱液後の固形物。ケークとも呼ばれる)は、バレルの出口側端部から外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-212697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術では、バレル内に固液混合原料を投入する場合、バレルの内周面とスクリュー体との間の空間(即ち固液混合原料の通路)が入口側端部から出口側端部の全範囲にわたって隙間なく固液混合原料で満たされるように密に固液混合原料を投入している。この際、投入口からバレルに至る流路も密に固液混合原料で満たされるように固液混合原料を投入している。このように固液混合原料を密に投入することで、固液混合原料が入口側端部から出口側端部に搬送される全過程において固液混合原料を圧搾圧密することを図っている。
【0006】
しかしながら、本件発明者らによる鋭意研究の結果、以下の事実が判明した。即ち、投入口からバレルに至る流路と、バレルの内周面とスクリュー体との間の空間(固液混合原料の通路)の全範囲とが隙間なく固液混合原料で満たされていると、投入口からスクリュー体に向かって押し込まれる固液混合原料の下向きの圧力により、スクリュー体とともに回転しようとする固液混合原料に対する抵抗が大きくなる場合がある。さらに、バレルの内周面やスクリュー体の表面に固液混合原料が張り付いてケーク層を形成し、通路内で固液混合原料が空回りする場合もある。その結果、固液混合原料の出口側端部への搬送がスムーズに進まず、却って液体の分離が十分に行われないおそれがある。特に、固液混合原料が非常に微細な固体を含む場合などにはこの不具合が顕著に表れる。
【0007】
本明細書では、脱液機を用いて固液混合原料の脱液を効果的に行い得る脱液方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で開示する脱液方法は、脱液機を用いて固液混合原料から液体を分離する脱液方法であって、前記脱液機は、多数個の脱液用加工部が形成された金属製の円筒体であるバレルと、前記バレルの内側に前記バレルと同心状に配置されるスクリュー体と、駆動機構と、を備えており、前記スクリュー体の回転羽根部間のピッチは、入口側端部から出口側端部に向けて狭くなるように形成されており、前記駆動機構は、前記スクリュー体の前記回転羽根部間に投入された前記固液混合原料が前記出口側端部に向けて搬送されるように、前記バレルと前記スクリュー体とを相対回転させるものであり、前記スクリュー体の前記回転羽根部間に前記固液混合原料を投入する投入ステップであって、前記スクリュー体のうちの前記固液混合原料が投入される部分において、前記固液混合原料の上側液面の高さが前記回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するように前記固液混合原料を投入する、前記投入ステップと、前記駆動機構を駆動させることにより、前記回転羽根部間に投入された前記固液混合原料が前記出口側端部に向けて搬送されるように、前記バレルと前記スクリュー体とを相対回転させる、回転ステップと、前記回転羽根部間に投入された前記固液混合原料を前記出口側端部に向けて搬送するとともに、前記スクリュー体と前記バレルとの間で前記固液混合原料を圧搾圧密することによって、前記固液混合原料から液体を分離させる脱液ステップと、を有する。
【0009】
上記の脱液方法では、投入ステップにおいて、スクリュー体のうちの固液混合原料が投入される部分において、固液混合原料の上側液面の高さが回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するように固液混合原料が投入される。このため、少なくともバレルの入口側端部近傍(搬送方向上流側)では、バレルの内周面とスクリュー体との間の空間(固液混合原料の通路)が固液混合原料で隙間なく満たされることがない。固液混合原料とバレルの内周面及びスクリュー体との間に余裕ができる。原料投入位置において固液混合原料とバレルの内周面及びスクリュー体との間に余裕があると、スクリュー体とともに回転しようとする固液混合原料に対して、外部からスクリュー体に押し込まれる固液混合原料の圧力による抵抗が加わらないため、固液混合原料の回転(搬送)が阻害され難い。さらに、バレルの内周面やスクリュー体の表面に固液混合原料が張り付く事態が抑制され、出口側端部への固液混合原料の搬送が促進される。バレルの内周面とスクリュー体との間の空間(固液混合原料の通路)内に、固液混合原料の搬送に効果的な渦流が生じやすい。固液混合原料が非常に微細な固体を含む場合などにはこれらの利点が顕著に表れる。そのため、上記の方法によると、固液混合原料の搬送がスムーズに進む。出口側に向けて搬送される間も固液混合原料からは液体が分離される。そして、出口側端部に近づくに従って、バレルの内周面とスクリュー体との間の空間(即ち固液混合原料の通路)は徐々に狭くなる。出口側端部に近づくに従って、固液混合原料はバレルの内周面とスクリュー体の間に挟まれて圧搾圧密される。この結果、固液混合原料から液体がさらに分離される。即ち上記の脱液方法によると、投入された固液混合原料の搬送と圧搾圧密が効果的に行われる。従来の脱液方法と比べ、固液混合原料の脱液を効果的に行い得る。
【0010】
前記投入ステップでは、前記固液混合原料は、投入される前記固液混合原料の上側液面の高さが前記回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するような単位時間当たりの投入量で投入されてもよい。
【0011】
この方法によると、原料投入位置において固液混合原料とバレルの内周面及びスクリュー体との間に余裕ができるように、固液混合原料を一定のペースで投入することができる。単位時間当たり一定量の固液混合原料の脱液を継続して効果的に行い得る。
【0012】
上記の脱液方法は、前記バレルに振動を加える加振ステップをさらに有していてもよい。
【0013】
この方法によると、バレルに振動を加えながら固液混合原料の脱液を行うことができる。バレル内の固液混合原料にも振動が加わることで、固液混合原料の目詰まりが抑制され、さらに脱液を効率的に行うことができる。
【0014】
前記スクリュー体は、金属材をコイル状に巻いて成形されたスクリュー型螺旋体であって、そのピッチが前記入口側端部から前記出口側端部に向けて狭くなるように形成されていてもよい。前記脱液機は、前記スクリュー型螺旋体の内側に前記スクリュー型螺旋体と同心状に配置される軸体をさらに備えていてもよい。前記駆動機構は、前記スクリュー型螺旋体の線間に投入された前記固液混合原料が、前記出口側端部に向けて搬送されるように、前記バレル及び前記軸体の組合せと、前記スクリュー型螺旋体と、を相対回転させてもよい。
【0015】
この方法によると、脱液機はコイル状のスクリュー型螺旋体と軸体とを備える。コイル状のスクリュー型螺旋体は、バレル内面及び固液混合原料への密着性に優れるとともに、軸方向に沿って弾性変形することで、固液混合原料が異物を含む場合であっても異物の噛みこみが起こりにくく、原料搬送性にも優れる。そのため、スクリュー軸の外面にスクリュー羽根が固定された従来のスクリュー体を用いる場合に比べて、脱液性及び原料搬送性に優れる。従来のスクリュー体を備える脱液機を用いる場合に比べてより効率的に脱液を行い得る。
【0016】
前記バレルは、金属製の円筒体であるバレル用濾材と、前記バレル用濾材を保持するケーシングとを備えていてもよい。前記バレル用濾材は、前記固液混合原料が接触する側の表面と、前記表面の反対側の裏面とを有する円筒状の濾材本体を備えていてもよい。前記濾材本体には前記多数個の脱液用加工部が形成されていてもよい。前記多数個の脱液用加工部のそれぞれは、2本の剪断部に挟まれていてもよい。前記2本の剪断部は、前記表面と前記裏面の間で前記濾材本体が剪断されている部分であってもよい。
【0017】
上記のバレルを用いて固液混合原料の濾過を行う場合、バレル用濾材の濾材本体の表面側に接するように固液混合原料を配置する。固液混合原料が濾材本体の表面に接触することに伴って、固液混合原料の液体が、脱液用加工部を挟む2本の剪断部を介して裏面側に排出される。剪断部は、表面と裏面の間で濾材本体が剪断されている部分である。そのため、この濾材では、多数の細孔又はスリットが形成された従来の濾材とは異なり、濾材本体の長手方向及び幅方向に隙間がほぼ存在しない。そのため、上記の濾材の表面側に投入された固液混合原料に含まれる液体は、剪断部が形成する極めて微小な間隙を介して裏面側に排出される。すなわち、剪断部は、固液混合原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、そのような固体を通過させずに捕捉し得る。上記の濾材によると、固液混合原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、安定して固液分離を行い得る。
【0018】
上記の脱液方法は、前記バレルに振動を加える加振ステップをさらに有していてもよい。前記2本の剪断部は前記入口側端部から前記出口側端部に向かう搬送方向に沿って形成されていてもよい。前記ケーシングは、前記バレル用濾材のうち、前記搬送方向に沿って隣り合う2個の前記脱液用加工部の間の連結部を露出させる開口部を有していてもよい。前記加振ステップでは、前記開口部から露出している前記バレル用濾材の前記連結部に振動が加えられてもよい。
【0019】
この方法によると、バレル用濾材の連結部に振動が加えられる。そのため、2本の剪断部で挟まれる脱液用加工部に効果的に振動が伝えられる。2本の剪断部で挟まれる脱液用加工部が適度に振動する。そのため、剪断部が形成する微小な間隙が適度に開閉し、固液混合原料の目詰まりが抑制される。さらに脱液を効率的に行うことができる。
【0020】
前記バレル用濾材は、半円筒状の第1濾材と半円筒状の第2濾材とを有していてもよい。前記第1濾材と前記第2濾材とを組み合わせることにより円筒状の前記バレル用濾材が形成されてもよい。
【0021】
上記のバレル用濾材によると、バレル用濾材は第1濾材と第2濾材の2部材で構成される。そのため、第1濾材の脱液用加工部と第2濾材の脱液用加工部を別々の周期で振動させ得る。すべての脱液用加工部を同周期で振動させる場合と比べて、固液混合原料の目詰まりがより抑制される。さらに脱液を効率的に行うことができる。また、バレル用濾材を第1濾材と第2濾材に分解することができるため、バレルの脱着や内周面の清掃や部品の交換等も簡易に行い得る。脱液効率の低下を抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】脱液システムの全体構成を模式的に示す説明図。
図2】スラリーポンプの説明図。
図3】脱液機の断面説明図。
図4】バレルとスクリュー型螺旋体と軸体を示す分解説明図。
図5】バレルを拡大して示す拡大説明図。
図6】バレル用濾材と伝達部材を模式的に示す断面説明図。
図7】固液混合原料の投入ステップを模式的に示す拡大説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(第1実施例)
(脱液システム2の構成)
図1図7を参照して、本実施例の脱液システム2と、脱液システム2を用いた脱液方法について説明する。図1に示す脱液システム2は、固液混合原料(例えば汚泥)から液体を分離するためのシステムである。脱液システム2は、特に、粒径0.01mm以上3mm以下の小径の固体が液体に混合された固液混合原料(例えば、微細粉体が溶け込んだ水や油など)から液体を分離するためのシステムである。以下では固液混合原料のことを単に「原料」と呼ぶ。
【0024】
図1に示すように、脱液システム2は、供給装置4と脱液機8とを備える。供給装置4は、原料を脱液機8に供給するための装置である。脱液機8は、投入された原料から液体を分離するための螺旋体式の脱液機である。
【0025】
供給装置4は、撹拌装置5とスラリーポンプ6とを備える。撹拌装置5は、脱液機8に投入される前の原料を貯えるとともに、原料を撹拌することで固体の沈殿を防ぎ、原料を均質化するための装置である。撹拌装置5は、ホッパ20と、タンク22と、スクリュー体24と、モータ30と、送出路32とを備える。
【0026】
ホッパ20は、原料を投入するための投入口である。タンク22は、ホッパ20から投入された原料が貯められる容器である。スクリュー体24は、タンク22内の原料を撹拌するための部材である。スクリュー体24は、軸26と、軸26の外周に取り付けられた螺旋状の羽根部28とを備える。モータ30は、スクリュー体24を回転させるための駆動源である。モータ30には軸26が接続されている。モータ30は、軸26を回転させることでスクリュー体24を回転させる。スクリュー体24が回転すると、タンク22内の原料は上方に向けて搬送されながら撹拌される。原料が撹拌されることで、原料中の固体が沈殿することが抑制される。タンク22内の原料が均質化される。送出路32はタンク22の底部に設けられる。送出路32はタンク22内の原料をスラリーポンプ6に送り出すための流路である。
【0027】
スラリーポンプ6は、撹拌装置5から供給された原料を、単位時間当たり一定量で脱液機8に供給するための器具である。図2はスラリーポンプ6の内部構造を模式的に示す。図1及び図2に示すように、スラリーポンプ6は、ケース40と、モータ48と、インペラ50と、吐出管59を備える。ケース40は、インペラ50を収容するとともに搬送対象の原料を一時的に投入する容器である。ケース40は、平板状の上壁部42と、上壁部42と対向する下壁部44と、上壁部42と下壁部44の間に設けられる周壁部46とを有している。周壁部46は円筒形状に形成されている。円筒形状の周壁部46の上側の端部が上壁部42で閉塞され、下側の端部が下壁部44で閉塞されている。上壁部42はケース40の上面を構成し、下壁部44はケース40の底面を構成し、周壁部46はケース40の側面を構成する。
【0028】
上壁部42には吸込口56が形成されている。図1に示すように、吸込口56は送出路32と連結されている。送出路32から送り出される原料は、吸込口56を介してケース40内に投入される。
【0029】
下壁部44には吐出口58が形成されている。吐出口58には吐出管59が接続されている。ケース40内に投入された原料は、インペラ50の回転に伴ってケース40内を搬送され、吐出口58から吐出管59に送り出される。
【0030】
インペラ50は、ケース40内に回転可能に収納されている。図1に示すように、インペラ50は、上壁部42と下壁部44の間に隙間なく挟まれて配置されている。インペラ50の上面と下面はそれぞれ上壁部42と下壁部44に接している。そして、図2に示すように、インペラ50は、軸部51と、複数枚(図2の例では6枚)の羽根52とを備える。軸部51は、ケース40内に挿入される回転軸54に固定されており、回転軸54と同期回転する。軸部51の中心C(即ち回転軸54の中心)は、円筒形状の周壁部46の中心と同じ位置に配置される。
【0031】
各羽根52は軸部51の外周に固定されている。羽根52は、例えばゴム、樹脂等の弾性材料で形成されている。他の例では、羽根52は剛性材料(金属、剛性樹脂等)で形成されていてもよい。各羽根52の先端部は周壁部46の内壁面と接触している。そのため、隣り合う2枚の羽根52と周壁部46と上壁部42と下壁部44の間には、ケース40内の原料を搬送するための搬送空間が形成される。
【0032】
回転軸54は、ケース40を貫通するとともにインペラ50の軸部51に挿入されている。回転軸54は軸部51に固定される。回転軸54とインペラ50は同期回転する。図1に示すように、回転軸54の端部にはモータ48が固定されている。モータ48が回転軸54を回転させると、ケース40内でインペラ50が回転する。インペラ50は、図2の矢印A方向に回転する。モータ48がインペラ50を回転させる速度は例えば1rpm程度である。他の例では、回転速度は1rpmより遅くてもよいし(例えば0.5rpm)、1rpmより速くてもよい(例えば5rpm)。
【0033】
スラリーポンプ6の動作について説明する。モータ48が駆動すると、ケース40内でインペラ50が回転軸54を中心に回転する。インペラ50は図2の矢印A方向に回転する。撹拌装置5のタンク22から送り出される原料は、送出路32及び吸込口56を介して、ケース40内に送り込まれる。ケース40内に送り込まれた原料は、インペラ50の回転に伴って、隣り合う2枚の羽根52、上壁部42、下壁部44、及び周壁部46の間に形成される搬送空間内に収容される。搬送空間内の原料は、インペラ50の回転に伴って羽根52に押されて吐出口58から吐出管59に吐き出される。
【0034】
インペラ50を回転させ続けることにより、原料は送出路32及び吸込口56を介してケース40内に継続して送り込まれる。ケース40内の原料は、吐出口58を介して吐出管59に継続して吐き出される。吐出管59から吐出される原料は脱液機8に投入される。即ち、本実施例では、スラリーポンプ6を用いることにより、単位時間当たりに一定量の原料を継続して脱液機8に投入することができる。スラリーポンプ6が脱液機8に投入する原料の単位時間当たりの投入量(特定の投入量)については後で詳述する。
【0035】
図1及び図3図6を参照して脱液機8の構成を説明する。図1及び図3に示すように、脱液機8は、バレル70と、スクリュー型螺旋体100と、軸体120と、原料投入部130と、ダイ部材150と、プーリ170と、モータ180と、加振装置190(190a、190b)とを備えている。この脱液機8では、原料投入部130から投入された原料を、バレル70内でダイ部材150に向かって搬送しながら脱液し、脱液後の固形物(「ケーク」とも呼ばれる)をバレル70とダイ部材150の隙間160から排出する。以下では原料の搬送方向のうち、原料投入部130側のことを「入口側」と呼び、ダイ部材150側のことを「出口側」と呼ぶ場合がある。
【0036】
図1図3図5に示すように、バレル70は、多数個の脱液用加工部72が形成された金属製の円筒体である。バレル70は、バレル用濾材80と、バレル用濾材80を保持する枠体であるケーシング90とを備える。図4に示すように、バレル用濾材80は、半円筒状の第1濾材80aと半円筒状の第2濾材80bとを組み合わせて形成されている。同様に、ケーシング90も、第1濾材80aの外周面を保持する第1ケーシング90aと、第2濾材80bの外周面を保持する第2ケーシング90bとを組み合わせて形成されている。第1濾材80aと第1ケーシング90aとによって半円筒状の第1バレル70aが形成され、第2濾材80bと第2ケーシング90bとによって半円筒状の第2バレル70bが形成されている。第1バレル70aと第2バレル70bを組み合わせることでバレル70が形成される。
【0037】
第1ケーシング90aと第2ケーシング90bの端部同士を重ね合わせ、ボルト等の固定具で固定することで、ケーシング90が形成される。図5に示すように、ケーシング90は枠体であり、開口部96からはバレル用濾材80の外周面が露出する。
【0038】
図5図6に示すように、バレル用濾材80は、金属製の板状部材で形成された本体81を備える。本体81は、濾過対象物である原料が接触する側の面(濾過面)である表面82と、表面82の反対側の面である裏面83とを有する。バレル用濾材80が円筒状に形成される場合、表面82は内周面を構成し、裏面83は外周面を構成する。本体81の材料は、例えばステンレス、鉄、アルミニウム等である。
【0039】
本体81には、多数個の脱液用加工部72が形成されている。多数個の脱液用加工部72は、バレル用濾材80の長手方向(図5図6中の左右方向)に沿って相互に平行に形成されている。バレル用濾材80の長手方向は原料の搬送方向と同方向である。
【0040】
各脱液用加工部72の幅方向(図5中の上下方向)の両端は、2本の剪断部84によって挟まれている。本実施例では、2本の剪断部84は原料の搬送方向に沿って形成されている。本実施例では、2本の剪断部84は相互に平行な直線状に形成されている。各剪断部84は、表面82と裏面83の間で本体81が剪断されている部分である。剪断部84は、本体81の幅方向及び長手方向(図5中の左右方向及び上下方向)に隙間がほぼ存在しない。本体81には、剪断部84によって本体81が剪断されて形成されるきわめて微小な間隙のみが存在する。剪断部84の間隙の幅は例えば0.01mm~0.1mm程度である。従来の濾材が備えるスリット(レーザーカット又はワイヤーカットで形成されるスリット)の幅は、最も細いものでも0.3mm程度であるため、本実施例の剪断部84の間隙の幅は従来よりも大幅に狭いと言える。
【0041】
剪断部84及び脱液用加工部72は、例えばプレス加工で本体81の多数箇所(すなわち脱液用加工部72相当部分)を打ち抜くことによって形成される。すなわち、脱液用加工部72は、プレス加工の際に押圧される押圧箇所である。脱液用加工部72の長手方向両端は剪断されていない。脱液用加工部72の長手方向の両端は本体81と接合されている。剪断部84及び脱液用加工部72は、プレス加工以外の手法で形成されてもよい。例えば、剪断部84及び脱液用加工部72は、バルジ加工、絞り加工等によって形成されてもよい。
【0042】
剪断部84は約30mm~150mmの長さに亘って形成される。本体81の長手方向に沿って隣り合う2個の脱液用加工部72の間は、剪断部84が形成されていない連結部88である。
【0043】
図6に示すように、本実施例では、多数個の脱液用加工部72はいずれも本体81の表面82側に突出している。即ち、多数個の脱液用加工部72はバレル用濾材80の内周面に突出するように形成されている。多数個の脱液用加工部72は、本体81の多数箇所を裏面83から表面82に向けて打ち抜くことで形成される。脱液用加工部72が本体81の表面82側に突出することで、脱液用加工部72の両脇には、本体81の厚み方向に沿って開口する縦向きの縦孔86が形成される。縦孔86の開口幅は例えば0.01mm~0.5mmの範囲内の任意の値である。縦孔86の開口幅はこれ以外の値であってもよい。一方、上記の通り、本体81の幅方向及び長手方向(図5中の左右方向及び上下方向)に隙間がほぼ存在しない。本実施例の脱液用加工部72は、両側開口のルーバー状に形成されていると言ってもよい。
【0044】
図3図4に示すように、スクリュー型螺旋体100は、金属線をコイル状に巻いて成形した部材である。スクリュー型螺旋体100を形成する金属線は断面四角形の金属線である。他の例では、スクリュー型螺旋体100は、平板状部材を螺旋状に成形した部材、断面円形の金属線を螺旋状に成形した部材、等であってもよい。スクリュー型螺旋体100のピッチは入口側端部から出口側端部に向けて狭くなるように形成されている。
【0045】
図3に示すように、スクリュー型螺旋体100の外周部は、バレル70の内周面(即ちバレル用濾材80の表面82)と摺動可能に当接している。スクリュー型螺旋体100の内部空間には軸体120が挿し通されている。ただし、スクリュー型螺旋体100と軸体120とは固定されておらず、スクリュー型螺旋体100の内周は軸体120の外周面と摺動可能に当接している。スクリュー型螺旋体100は軸体120に対して相対回転可能である。
【0046】
このため、バレル70の内周面(バレル用濾材の表面82)とスクリュー型螺旋体100と軸体120の外周面との間には、圧搾圧密空間200(「ピッチ空間」又は「螺旋体溝断面積」と呼び変えてもよい)が形成される。圧搾圧密空間200は、原料の搬送路であるとともに、原料に圧力を加えて原料から液体を絞り出すための空間である。上記の通り、スクリュー型螺旋体100のピッチは入口側端部から出口側端部に向けて狭くなる。そのため、圧搾圧密空間200の容積も入口側から出口側に向けて徐々に狭くなる。スクリュー型螺旋体100が回転することで、圧搾圧密空間200内の原料は出口側に向けて搬送される。そして、圧搾圧密空間200の容積が狭くなる過程で、原料に圧搾圧密圧力が加えられ、液体が絞り出される(分離される)。
【0047】
スクリュー型螺旋体100の出口側端部の内部空間には円柱状の固定具140がはめ込まれている。固定具140はスクリュー型螺旋体100の内周に固定されている。固定具140の外周にはダイ部材150が固定されている。固定具140は回転軸145を備える。回転軸145がプーリ170に連結されている。プーリ170が回転すると、固定具140が回転軸145を中心に回動する。固定具140が回動することに伴い、スクリュー型螺旋体100も回動する(図3の矢印方向)。これにより、バレル70及び軸体120の組合せと、スクリュー型螺旋体100とが相対回転する。
【0048】
軸体120は、剛性を有する金属製の筒体によって形成される軸である。図3図4に示すように軸体120はスクリュー型螺旋体100の内部空間に挿し通されている。軸体120の外周面はスクリュー型螺旋体100の内周面と摺動可能である。本実施例は、軸体120は回動しない。軸体120の入口側端部122は、固定部材128によって固定されている。軸体120の出口側端部124は、耐摩耗性樹脂部材142を介して固定具140内に挿入され、保持されている。これにより、固定具140及びスクリュー型螺旋体100が回動しても、軸体120は回動することなく保持される。
【0049】
図1図3に示すように、原料投入部130は、本体131と、ホッパ132とを備える。本体131は剛性を有する金属製の筒状部材であり、スクリュー型螺旋体100の入口側端部と及びその近傍の軸体120を収容している。本体131の一方の端部はバレル70の入口側端部と連通している。本体131の他方の端部は軸体120が貫通する部分を除いて閉塞されている。本体131の上側には開口133が開口されている。開口133にはホッパ132が接続されている。ホッパ132は原料を原料投入部130に投入するための投入口である。吐出管59から吐出された原料は、ホッパ132に投入され、開口133を通って原料投入部130に入る。原料投入部130内に投入された原料は、スクリュー型螺旋体100のピッチ間に入る。ピッチ間に入った原料は、スクリュー型螺旋体100の回転に伴って出口側に向けて搬送され、バレル70内に入っていく。その後原料は圧搾圧密空間200(即ちバレル70の内周面とスクリュー型螺旋体100と軸体120の外周面の間に形成される空間)内を出口側端部に向けて搬送される。
【0050】
ダイ部材150は、バレル70の出口側端部を閉塞する部材である。ダイ部材150は固定具140の外周に固定されている。固定具140が回転するとダイ部材150も一緒に回転する。ダイ部材150とバレル70の出口側端部の間には隙間160が設けられている。原料脱液後の固形物(ケーク)は、隙間160から外部に排出される。ダイ部材150は、固定具140との固定位置を調整することができる。ダイ部材150の固定位置を調整することで隙間160の広さを変えることができる。
【0051】
プーリ170は、モータ180の動力を固定具140及びスクリュー型螺旋体100に伝達するための部材である。上記の通り、プーリ170には固定具140の回転軸145が固定されている。モータ180は固定具140及びスクリュー型螺旋体100を回転させる動力源である。モータ180は、スクリュー型螺旋体100を1rpm~10rpm程度の回転速度で回転させることができる。
【0052】
加振装置190(190a、190b)は、バレル70に振動を加えるためのバイブレータである。本実施例では、2個の加振装置190a、190bが備えられている。加振装置190aは第1バレル70aに振動を加える。加振装置190bは第2バレル70bに振動を加える。以下、加振装置190a、190bを区別せず呼ぶ場合、単に「加振装置190」と呼ぶ。
【0053】
図5に示すように、加振装置190は、加振装置190が発生させる振動をバレル70に伝達するための伝達機構191に接続されている。伝達機構191は、レール部材192と、複数個の接触部材194とを有する。レール部材192は加振装置190の振動が直接伝わる位置に設けられる。レール部材192は直状の金属板である。レール部材192はバレル70の側方にバレル70の長手方向に沿って設けられる。複数個の接触部材194は、それぞれレール部材192に固定される。接触部材194は例えばボルトであってもよい。図6に示すように、各接触部材194はレール部材192からバレル70に向かって突出するように備えられる。各接触部材194の先端はバレル70に当接されている。より詳しく言うと、各接触部材194の先端は、バレル用濾材80の長手方向に沿って隣り合う2個の脱液用加工部72の間の連結部88に当接されている。加振装置190の振動はバレル用濾材80の連結部88に伝達される。そのため、2本の剪断部84で挟まれる脱液用加工部72に効果的に振動が伝えられる。2本の剪断部84で挟まれる脱液用加工部72が適度に振動する。剪断部が形成する微小な縦孔86を適度に開閉させ、原料の目詰まりを抑制することができる。また、2個の加振装置190a、190bによって、第1バレル70aの脱液用加工部72と第2バレル70bの脱液用加工部72を別々の周期で振動させることができる。なお本実施例の伝達機構191の構成はあくまで一例である。変形例では伝達機構191は他の構成を備えていてもよい。
【0054】
以上、本実施例の脱液システム2の構成を説明した。続いて、脱液システム2を用いて原料の脱液を行う手法について説明する。本実施例の脱液システム2を用いて原料の脱液処理を行う場合、まず作業者はモータ30、48、180と加振装置190a、190bを作動させる。これにより、供給装置4のスクリュー体24が回転を開始する。スラリーポンプ6のインペラ50が回転を開始する。脱液機8のスクリュー型螺旋体100が回転を開始する。また、加振装置190の振動がバレル用濾材80の連結部88に伝達される。脱液用加工部72が振動を開始する。
【0055】
続いて、作業者は、供給装置4のホッパ20に固液混合状態の原料を投入する。原料はホッパ20からタンク22内に入る。タンク22内では、回転するスクリュー体24によって原料が撹拌される。原料が撹拌されることで、原料中の固体が沈殿することが抑制される。タンク22内の原料が均質化される。タンク22内の原料は、底部に設けられた送出路32からスラリーポンプ6に送り出される。
【0056】
送出路32から送り出される原料は、吸込口56を介してケース40(図2)内に投入される。ケース40内の原料は、インペラ50の回転に伴って、周壁部46に接した羽根52、上壁部42、下壁部44、及び周壁部46の間に形成される搬送空間内に収容される。インペラ50は例えば1rpm程度の回転速度で回転する。各搬送空間内に収容された原料は、インペラ50の回転に伴って羽根52に押されて搬送され、吐出口58を介して吐出管59に吐き出される。インペラ50を回転させ続けることにより、原料は送出路32及び吸込口56を介してケース40内に継続して送り込まれる。ケース40内の原料は、吐出口58を介して吐出管59に継続して吐き出される。吐出管59から吐出される原料は、脱液機8に投入される。即ち、本実施例では、スラリーポンプ6を用いることにより、単位時間当たりに一定量の原料を継続して脱液機8に投入することができる。
【0057】
吐出管59から吐出された原料は、ホッパ132に投入され、開口133を通って原料投入部130に入る。原料投入部130内に投入された原料は、スクリュー型螺旋体100のピッチ間に入る。図7に示されるように、原料が投入される部分において、スクリュー型螺旋体100のピッチ間に投入される原料300の上側液面302の高さは、スクリュー型螺旋体100の各ピッチの先端102の高さより低い位置に存在する。即ち、スラリーポンプ6から吐出され、脱液機8に供給される原料の単位時間当たりの投入量は、スクリュー型螺旋体100のピッチ間に投入される原料300の上側液面302の高さがスクリュー型螺旋体100の各ピッチの先端102の高さより低い位置に存在する程度の量に調整されている。脱液機8に供給される原料の単位時間当たりの投入量は、バレル70のサイズによっても異なるが、例えば毎分1L~50L程度である。
【0058】
ピッチ間に入った原料は、スクリュー型螺旋体100の回転に伴って出口側に搬送され、バレル70内に入っていく。図7に示されるように、バレル70内に入る原料300の上側液面302の高さも、スクリュー型螺旋体100の各ピッチの先端102の高さより低い位置に存在する。その後原料は圧搾圧密空間200(即ちバレル70の内周面とスクリュー型螺旋体100と軸体120の外周面の間に形成される空間)内を出口側端部に向けて搬送される。このように、少なくとも搬送方向における入口側付近では、圧搾圧密空間200が原料で隙間なく満たされることがない。原料とバレル70の内周面、スクリュー型螺旋体100、軸体120の外周面との間に余裕ができる。
【0059】
原料の投入位置において、原料と、バレル70の内周面、スクリュー型螺旋体100、及び、軸体120の外周面、との間に余裕があると、スクリュー型螺旋体100とともに回転しようとする原料に対して抵抗(即ち、ホッパ132からスクリュー型螺旋体100に押し込まれる原料の圧力による抵抗)が加わらないため、原料の回転(搬送)が阻害され難い。さらに、バレル70の内周面やスクリュー型螺旋体100の表面や軸体120の外周面に原料が張り付く事態が抑制され、出口側端部への原料の搬送が促進される。バレル70の内周面とスクリュー型螺旋体100と軸体120の外周面との間の空間(原料の通路)内に、原料の搬送に効果的な渦流が生じやすい。原料が非常に微細な固体を含む場合などにはこれらの利点が特に顕著に表れる。そのため、原料の出口側への搬送がスムーズに進む。出口側に向けて搬送される間も原料からは液体が分離される。特に、搬送序盤から中盤にかけては原料に含まれる液体の割合がまだ多いため、原料から比較的ハイペースで液体が分離され易い。原料から分離された液体は、バレル用濾材80の剪断部84が形成する微小な間隙から外部に排出される。
【0060】
原料が出口側端部に近づくに従って、圧搾圧密空間200は徐々に狭くなる。搬送終盤に近付くと、原料に含まれる液体の割合も徐々に少なくなる。そして、出口側端部の近傍では、原料は、バレル70の内周面とスクリュー型螺旋体100と軸体120の外周面とに挟まれて圧搾圧密される。この結果、原料から液体がさらに分離される。出口側端部における圧搾圧密により、原料からは液体がほぼ完全に分離除去され得る。
【0061】
さらに、本実施例では、加振装置190によってバレル70に振動が加えられる。より詳しく言うと、バレル用濾材80の連結部88に振動が加えられる。これにより、各脱液用加工部72に効果的に振動が伝えられ、各脱液用加工部72が適度に振動する。そのため、縦孔86(図6参照)が適度に開閉し、原料の目詰まりが抑制される。液体の分離が促進される。
【0062】
特に、本実施例では、2個の加振装置190a、190bによって、第1バレル70aの脱液用加工部72と第2バレル70bの脱液用加工部72を別々の周期で振動させることができる。すべての脱液用加工部72を同周期で振動させる場合と比べて、原料の目詰まりがより効果的に抑制される。液体の分離がさらに促進される。
【0063】
原料がバレル70の出口側端部まで搬送されると、原料脱液後の固形物(ケーク)は、ダイ部材150とバレル70の出口側端部の間の隙間160から外部に排出される。原料の脱液処理が終了する。
【0064】
以上、本実施例の脱液システム2を用いる脱液方法について説明した。本実施例の脱液方法の作用効果をより明確に説明するための比較例として、従来の脱液方法について説明する。比較例の脱液方法でも実施例の脱液機8と略同様の脱液機が用いられる。ただし、比較例の脱液方法では、バレル70内に原料を投入する際に、投入口からバレル70に至る流路と、入口側から出口側に至る圧搾圧密空間200の全範囲が隙間なく原料で満たされるように密に原料を投入している。このように密に原料が投入されることで、原料が入口側から出口側に搬送される全過程において原料を圧搾圧密することを図っている。
【0065】
しかしながら、比較例の脱液方法のように、投入口からバレル70に至る流路と圧搾圧密空間200の全範囲が隙間なく原料で満たされていると、投入口からスクリュー型螺旋体100に向かって押し込まれる原料の下向きの圧力により、スクリュー型螺旋体100とともに回転しようとする原料の回転に対する抵抗が大きくなる場合がある。さらに、バレル70の内周面やスクリュー型螺旋体100の表面や軸体120の外周面に原料が張り付いてケーク層を形成し、通路内で原料が空回りする場合がある。その結果、原料の出口側への搬送がスムーズに進まず、却って液体の分離が十分に行われないおそれがある。特に原料が非常に微細な固体を含む場合などにはこれらの不具合が顕著に表れる。
【0066】
これに対し、本実施例の脱液方法では、スクリュー型螺旋体100のうちの原料が投入される部分において、ピッチ間に投入される原料300の上側液面302の高さは、スクリュー型螺旋体100の各ピッチの先端102の高さより低い位置に存在する(図7参照)。このため、少なくともバレル70の入口側端部近傍(搬送方向上流側)では、原料とバレル70の内周面、スクリュー型螺旋体100、軸体120の外周面との間に余裕ができる。比較例とは異なり、敢えて余裕を持たせて原料が投入される。このため、スクリュー型螺旋体100とともに回転しようとする原料に対して、外部からスクリュー型螺旋体100に押し込まれる原料の圧力による抵抗が加わらないため、原料の回転(搬送)が阻害され難い。さらに、バレル70の内周面やスクリュー型螺旋体100の表面や軸体120の外周面に原料が張り付く事態が抑制され、出口側への原料の搬送も促進される。圧搾圧密空間200内に、原料の搬送に効果的な渦流が生じやすい。原料が非常に微細な固体を含む場合などにはこれらの利点が特に顕著に表れる。そのため、原料の搬送がスムーズに進む。出口側に向けて搬送される間も原料からは液体が分離される。そして、原料が出口側端部に近づくと、圧搾圧密空間200は徐々に狭くなり、原料が圧搾圧密される。原料から液体がさらに分離される。即ち、本実施例の脱液方法によると、投入された原料の搬送と圧搾圧密が効果的に行われる。比較例の従来の脱液方法と比べて、原料の脱液を効果的に行うことができる。
【0067】
また、本実施例では、スラリーポンプ6により、脱液機8に供給される原料の単位時間当たりの投入量は、スクリュー型螺旋体100のピッチ間に投入される原料300の上側液面302の高さがスクリュー型螺旋体100の各ピッチの先端102の高さより低くなる程度の量に調整される。原料とバレル70の内周面、スクリュー型螺旋体100、軸体120の外周面との間に余裕ができるように、原料を一定のペースで継続して投入することができる。単位時間当たり一定量の原料の脱液を継続して効果的に行うことができる。
【0068】
さらに、本実施例のバレル用濾材80には、2本の剪断部84で挟まれる多数個の脱液用加工部72が形成されている。このため、原料が本体81の表面82に接触することに伴って、液体が脱液用加工部72を挟む2本の剪断部84を介して裏面83側に排出される。このバレル用濾材80では、多数の細孔又はスリットが形成された従来の濾材を用いる場合とは異なり、濾材の長手方向及び幅方向に隙間がほぼ存在しない。原料に含まれる液体は、剪断部84が形成する極めて微小な間隙を介して裏面側に排出される。すなわち、剪断部84は、原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、そのような固体を通過させずに捕捉することができる。本実施例によると、固液混合原料が微細な粒子状の固体を含む場合であっても、安定して固液分離を行うことができる。
【0069】
さらに、本実施例では、加振装置190によってバレル70に振動が加えられる。より詳しく言うと、バレル用濾材80の連結部88に振動が加えられる。これにより、各脱液用加工部72に効果的に振動が伝えられる。各脱液用加工部が適度に振動する。そのため、縦孔86(図6参照)が適度に開閉し、原料の目詰まりが抑制される。脱液を効率的に行うことができる。
【0070】
さらに、第1バレル70aの脱液用加工部72と第2バレル70bの脱液用加工部72を別々の周期で振動させることができる。すべての脱液用加工部を同周期で振動させる場合と比べて、原料の目詰まりがより効果的に抑制される。さらに脱液を効率的に行うことができる。
【0071】
また、バレル70を第1バレル70aと第2バレル70bとに分解することができるため、バレル70の脱着や、清掃、部品交換等も簡易に行うことができる。脱液効率の低下を抑制することができる。
【0072】
実施例と請求項の対応関係を説明しておく。スクリュー型螺旋体100が「スクリュー体」の一例である。スクリュー型螺旋体100を構成する螺旋状の線材が「回転羽根部」の一例である。モータ180が「駆動機構」の一例である。
【0073】
以上、本明細書で開示する技術の実施例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。例えば、以下の変形例を含んでもよい。
【0074】
(変形例1)上記の実施例では、脱液機8は、軸体120と相対回転するスクリュー型螺旋体100を備えている。これに代えて、脱液機は、従来のように軸体の外周面に螺旋状の回転羽根部が固定されたスクリュー体を備えていてもよい。この場合、スクリュー体の軸体と回転羽根部は同期回転してもよい。この場合も、脱液機への原料投入の際、投入される原料の上側液面の高さが回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するように原料が投入されればよい。
【0075】
(変形例2)上記の実施例では、バレル用濾材80の多数個の脱液用加工部72はいずれも本体81の表面82側に突出している(図6)。これに代えて、バレル用濾材80の多数個の脱液用加工部72はいずれも本体81の裏面83側に突出していてもよい。さらに他の例では、多数個の脱液用加工部72の一部は本体81の表面82側に突出し、他の一部は裏面83側に突出していてもよい。
【0076】
(変形例2a)さらに他の例では、バレル用濾材80が縦孔86(図6)を有していなくてもよい。即ち、バレル用濾材80の形成過程において、本体81をプレス剪断することで、多数個の脱液用加工部72と剪断部84と縦孔86を形成した後で、押し戻し工程で脱液用加工部72を反対側からプレスして、縦孔86の開口幅がほぼゼロになるように調整してもよい。
【0077】
(変形例3)バレル用濾材80は、剪断部84で挟まれた脱液用加工部72を有するものに限られない。バレル用濾材80は、濾材本体に他の形状の脱液用加工部(例えば、スリットや通孔など)が設けられたものであってもよい。
【0078】
(変形例4)上記の実施例では、バレル70は第1バレル70aと第2バレル70bとに分解可能である。これに限られず、バレル70は一体の円筒状部材として形成されていてもよい。その場合、一組の加振装置190のみが設けられていてもよい。
【0079】
(変形例5)加振装置190が省略されてもよい。
【0080】
(変形例6)脱液機8に単位時間当たり一定量の原料を投入する手段は、スラリーポンプ6に限らず、他の任意の供給手段によってもよい。スクリュー体のうちの固液混合原料が投入される部分において、原料の上側液面の高さが回転羽根部の先端の高さより低い位置に存在するように原料が投入されればよい。
【0081】
(変形例7)上記の実施例では、モータ180が駆動することにより、脱液機8のスクリュー型螺旋体100が回転する。バレル70と軸体120の組合せは回転しない。これにより、スクリュー型螺旋体100と、バレル70と軸体120の組合せとが相対回転する。変形例では、駆動機構によってバレル70と軸体120の組合せを回転させ、スクリュー型螺旋体100を回転させないようにしてもよい。一般的に言うと、駆動機構は、スクリュー体の回転羽根部間に投入された固液混合原料が出口側端部に向けて搬送されるように、バレルとスクリュー体とを相対回転させればよい。
【0082】
また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0083】
2:脱液システム
4:供給装置
5:撹拌装置
6:スラリーポンプ
8:脱液機
20:ホッパ
22:タンク
30:モータ
32:送出路
40:ケース
42:上壁部
44:下壁部
46:周壁部
48:モータ
50:インペラ
51:軸部
52:羽根
54:回転軸
56:吸込口
58:吐出口
59:吐出管
70:バレル
70a:第1バレル
70b:第2バレル
72:脱液用加工部
80:バレル用濾材
80a:第1濾材
80b:第2濾材
81:本体
82:表面
83:裏面
84:剪断部
86:縦孔
88:連結部
90:ケーシング
90a:第1ケーシング
90b:第2ケーシング
96:開口部
100:スクリュー型螺旋体
102:先端
120:軸体
122:入口側端部
124:出口側端部
128:固定部材
130:原料投入部
132:ホッパ
140:固定具
142:耐摩耗性樹脂部材
145:回転軸
150:ダイ部材
160:隙間
170:プーリ
180:モータ
190(190a,190b):加振装置
191:伝達機構
192:レール部材
194:接触部材
200:圧搾圧密空間
300:原料
302:上側液面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7