(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075056
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】自動車運搬用の多重連結型トレーラ、自動車運搬用の多重連結型トレーラによる自動車搬送システム、及び、多重連結型トレーラによる自動車搬送方法
(51)【国際特許分類】
B60P 1/00 20060101AFI20240527BHJP
B62D 53/04 20060101ALI20240527BHJP
B60P 1/43 20060101ALI20240527BHJP
B60P 3/07 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
B60P1/00 H
B62D53/04 A
B60P1/43 A
B60P3/07 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186201
(22)【出願日】2022-11-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000236551
【氏名又は名称】株式会社浜名ワークス
(74)【代理人】
【識別番号】110002963
【氏名又は名称】弁理士法人MTS国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森上 祐介
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕二
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数のトレーラを前後方向に連結したトレーラ列に、低い位置で容易且つ安定して、短時間で自動車を積降し、また、トレーラに自動車を前向きに載せて、降すことができる自動車運搬用の多重連結型トレーラ、多重連結型トレーラによる自動車搬送システム及び自動車搬送方法を提供する。
【解決手段】トラクタ10により牽引されるトレーラ列21と積載デッキ26を備えたトレーラボディ22と、トレーラ走行時に積載デッキ26の下側に収納され、後方に引出される後部道板60及び前方に引出される前部道板50を有してなり、前部道板50及び後部道板60は、水平に引出された先端が先方の後部道板掛け52B又は前部道板掛けに掛止された状態で、隣接して連結されたトレーラ20に載置された自動車14のための、前側のトレーラ20Aにおける積載デッキ26への自動車水平移動路となる渡り板を構成可能とされている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に連結して、トラクタにより牽引されるトレーラ列を構成可能な自動車運搬用の多重連結型トレーラであって、
前輪及び後輪からなる4輪を備え、且つ、上面の一部が、2台の自動車を前後方向の隙間をもって縦列で水平に載置可能の車輪載置面とされた積載デッキを備えたトレーラボディと、
前記トレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端のトラクタ後部連結器又は他の多重連結型トレーラの後端のトレーラ後部連結器に連結可能のトレーラ前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラのトレーラ前部連結器と連結可能なトレーラ後部連結器と、
トレーラ走行時には前記積載デッキの下側で、前記トレーラボディ内に収納され、自動車の積降し時に、後方に引出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する前部道板と、
前記トレーラボディ内に設けられ、後側に連結される多重連結型トレーラにおける前記前部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る後部道板掛け、及び、前側に連結される多重連結型トレーラにおける前記後部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る前部道板掛けと、
を有してなり、
前記前部道板及び前記後部道板は、水平に引出された先端が先方の前記後部道板掛け又は前記前部道板掛けに掛止された状態で隣接して連結された多重連結型トレーラに載置された自動車のための、前側のトレーラにおける前記積載デッキへの自動車水平移動路となる渡り板を構成可能とされたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項2】
請求項1において、
前記積載デッキにおける車輪載置面は、前記前輪の前部ホイールハウス及び前記後輪の後部ホイールハウスの上端よりも0~50mm高くされた水平面とされ、前記車輪載置面上に縦列に載置した自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項3】
請求項1において、
前記前輪と前記後輪の間のトレーラホイールベースは、前記車輪載置面上に縦列に載置された前記2台の自動車の各々の前後方向の重心が、前記前輪の上方位置及び前記後輪の上方位置になるように設定された自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項4】
請求項2において、
前記前輪と前記後輪の間のトレーラホイールベースは、前記車輪載置面上に縦列に載置された前記2台の自動車の各々の前後方向の重心が、前記前輪の上方位置及び前記後輪の上方位置になるように設定された自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記積載デッキのトレーラ前後方向の長さは、前記2台の自動車を、前後方向の隙間をもって縦列に載置したとき、前側の自動車における前輪中心と自動車前端との中間位置から後側の自動車における後輪中心と自動車後端との中間位置までとされていることを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記後部道板は、先端が接地した状態で、平面視で前記トラクタ後部連結器又は前記トレーラ後部連結器を間にして左右に離間した平行な一対の左道板及び右道板からなり、
側面視で、前記左道板及び右道板の間からの、前記トラクタ後部連結器又は前記トレーラ後部連結器の上端の上方への突出量が、前記自動車の地上最低高よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項7】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記前部道板は、先端が接地した状態で、平面視で前記トレーラ前部連結器を間にして左右に離間した平行な一対の左道板及び右道板からなり、
側面視で、前記左道板及び右道板の間からの、前記トレーラ前部連結器の上端の上方への突出量が、前記自動車の地上最低高よりも小さくなるように構成されたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラ。
【請求項8】
自動車運搬用の複数台の多重連結型トレーラと、先頭から最後尾まで直線的に複数台連結された前記多重連結型トレーラからなるトレーラ列の先頭の前記多重連結型トレーラに連結されて、前記トレーラ列を牽引するトラクタと、を有してなる自動車搬送システムであって、
前記多重連結型トレーラは、
前輪及び後輪からなる4輪を備え、且つ、上面が、2台の自動車を前後方向の隙間をもって縦列に載置可能の車輪載置面を含む積載デッキとされたトレーラボディと、
前記トレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端のトラクタ後部連結器又は他の多重連結型トレーラの後端のトレーラ後部連結器と連結可能のトレーラ前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラのトレーラ前部連結器と連結可能なトレーラ後部連結器と、トレーラ列の走行時には前記積載デッキの下側で、前記トレーラボディ内に収納され、自動車の積降し時に、後方に引出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する前部道板と、前記トレーラボディ内に設けられ、後側に連結される多重連結型トレーラにおける前記前部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る前部道板掛け、及び、
前記トレーラボディ内に設けられ、前側に連結される多重連結型トレーラにおける前記後部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る後部道板掛けと、を有してなり、
前記後部道板掛けに掛止された前記前部道板又は前記前部道板掛けに掛止された前記後部道板は、前記後側に連結されたトレーラに載置された自動車のための、前側の多重連結型トレーラにおける前記積載デッキへの自動車水平移動路となる渡り板を構成し、
前記トレーラ列は、
運搬用の自動車の積込みのとき、前記トレーラ列における最後尾の前記多重連結型トレーラの前記トレーラボディから引出された前記後部道板が、自動車積込み用の坂路を形成し、トレーラ列における前記先頭の次の第2の多重連結型トレーラから前記最後尾の多重連結型トレーラの各々における前記前部道板を前方に引出して、その先端を各々の前側の前記多重連結型トレーラの後部道板掛けに掛止するか、又は、前記先頭から最後尾の前の多重連結型トレーラの各々における前記後部道板を後方に引出して、その先端を各々の後側の前記多重連結型トレーラの前部道板掛けに掛止して、各多重連結型トレーラ間に自動車水平移動路となる渡り板を形成可能とされ、前記最後尾の多重連結型トレーラの後部道板、及び積載デッキ、前記渡り板から中間の前記多重連結型トレーラの積載デッキ及び前記渡り板を経由して、先頭の前記多重連結型トレーラの積載デッキ上まで、先頭側から最後尾の前記多重連結型トレーラまで順次自動車を積込み可能とされ、
自動車搬送のとき、先頭から2台目以降の前記各多重連結型トレーラの前部道板及び前記後部道板を、各々トレーラボディ内に戻し、前記先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器を前記トラクタ後部連結器に連結して、自動車の搬送可能とされ、
自動車を降すとき、前記トラクタを、前記先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器から脱して引離し、前記先頭の多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出して地上との間に坂路を形成し、且つ、2台目以降の前記多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出し、又は、前記先頭から最後尾の前までの前記多重連結型トレーラにおける後部道板を後方に引出して、渡り板とし、前記先頭の多重連結型トレーラの前記前部道板から路上にまで自動車を走行させて降車可とされたこと、
を特徴とする多重連結型トレーラによる自動車搬送システム。
【請求項9】
複数台の自動車運搬用の多重連結型トレーラと、先頭から最後尾まで直線的に複数台連結された前記多重連結型トレーラからなるトレーラ列を牽引するトラクタと、により自動車を搬送する方法であって、
前記多重連結型トレーラは、
前輪及び後輪からなる4輪を備え、且つ、上面が、2台の自動車を前後方向の隙間をもって縦列に載置可能の車輪載置面を含む積載デッキとされたトレーラボディと、
前記トレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端のトラクタ後部連結器又は他の多重連結型トレーラの後端のトレーラ後部連結器と連結可能のトレーラ前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラのトレーラ前部連結器と連結可能なトレーラ後部連結器と、トレーラ列の走行時には前記積載デッキの下側で、前記トレーラボディ内に収納され、自動車の積降し時に、後方に引出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する前部道板と、前記トレーラボディ内に設けられ、後側に連結される多重連結型トレーラにおける前記前部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る前部道板掛け、及び、前記トレーラボディ内に設けられ、前側に連結される多重連結型トレーラにおける前記後部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る後部道板掛けと、を有してなり、
前記トレーラ列における最後尾の前記多重連結型トレーラの前記後部道板を引出して、自動車積込み用の坂路を形成する過程と、
前記トレーラ列における前記先頭の次の第2の多重連結型トレーラから前記最後尾の多重連結型トレーラの各々における前記前部道板を前方に引出して、その先端を各々の前側の前記多重連結型トレーラの後部道板掛けに掛止して、各多重連結型トレーラ間に自動車水平移動路となる渡り板とする過程、又は、前記トレーラ列における前記先頭の多重連結型トレーラから前記最後尾の前の多重連結型トレーラの各々における前記後部道板を後方に引出して、その先端を各々の後側の前記多重連結型トレーラの道板掛けに掛止して、各多重連結型トレーラ間に自動車水平移動路となる渡り板とする過程と、
前記最後尾の多重連結型トレーラの後部道板、及び積載デッキ、前記渡り板から中間の前記多重連結型トレーラの積載デッキ及び前記渡り板を経由して、先頭の前記多重連結型トレーラの積載デッキ上まで、先頭側から最後尾の前記多重連結型トレーラまで順次自動車を走行させて積込む過程と、
自動車搬送のとき、先頭から2台目以降の前記各多重連結型トレーラの前部道板及び前記最後尾の前記後部道板を、各々トレーラボディ内に戻す過程と、
前記先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器を前記トラクタ後部連結器に連結する過程と、
前記トラクタにより前記トレーラ列を目的地まで牽引する過程と、
目的地において、前記トラクタを、前記トレーラ列の先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器から脱して引離す過程と、
前記先頭の多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出して地上との間に坂路を形成し、且つ、2台目以降の前記多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出し、又は、先頭から最後尾の前の前の多重連結型トレーラにおける後部道板を後方に引出して、渡り板とする過程と、
前記先頭の多重連結型トレーラ上から自動車を、前記渡り板及び積載デッキを通って、前記前部道板から路上に降ろす過程と、
自動車を降ろした後、前記引出した前部道板及び前記後部道板を前記トレーラボディ内に戻す過程と、
を含む多重連結型トレーラによる自動車搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車運搬用の多重連結型トレーラ、自動車運搬用の多重連結型トレーラによる自動車搬送システム、及び、多重連結型トレーラによる自動車搬送方法に係り、特に、予め、多重連結型トレーラを直線的に連結してトレーラ列を形成し、ここに、運搬する自動車を積載した状態で、トラクタにより牽引して搬送することが出来るようにした自動車運搬用の多重連結型トレーラ、自動車運搬用の多重連結型トレーラによる自動車搬送システム、及び、多重連結型トレーラによる自動車搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車運搬用車両のドライバーは、単に車両を運転するのみならず、積載デッキ上に運搬する自動車を運転して載せたり、又、降ろしたりする作業をしているが、更に多くの自動車運搬用車両においては、積載した自動車を固縛装置によって固定する作業及び車両を降ろす際に、この固縛装置を緩める作業が必要となっている。
【0003】
自動車運搬用車両は、1台の車両によってなるべく多くの自動車を運搬するために、積載デッキを3層デッキにしたものが多い。
【0004】
この場合、自動車を載せたり、降ろしたりする作業、自動車を固縛装置によって固定したり、緩める作業をし、且つ、最上段のデッキにドライバーが昇り下りする必要があるが、高さが3m近くあり、転落の危険があり、ドライバーは体力のある男性が適している。
【0005】
他方、高齢化が進み、人手不足のため、車両のドライバーとして女性や外国人を採用するようになってきているが、上記のような3m以上の高さの作業は拒否されるか、できないことが多い。
【0006】
更に、3層デッキの自動車運搬用車両は、1、2台の自動車を運搬するには、大きすぎるし、無駄が多くなる。
【0007】
また、多くの空港で見られるような、エアコンテナを積載した搬送台車を多数連結してトラクタで牽引する、いわゆるドーリがあるが、このドーリ上に路面からドライバーが自動車を運転して積降しすることは困難である。
【0008】
特許文献1には、各トレーラ間にドーリを配置し、且つ、一部のドーリは動力装置を備えてトレーラ列を構成し、その先頭トレーラをトラクタにより牽引する構成の多重連結車両の発明が開示されている。
【0009】
又、特許文献2には、実質的にはトラックであるトラクタユニットを複数、機械的接続装置により接続した多重車両配列の発明が開示されている。
【0010】
特許文献1に記載の発明の場合、トラクタをトレーラ列から脱した状態で荷物の積載ができない、又、ドーリ自体には荷物を載せないので、自動車積載効率が低いという問題点がある。又、トレーラの荷物積載面の高さが、ドーリの上面よりもかなり高く、トラクタのキャビンの天井程度の高さとなっているので、ドライバーが熟練者でないような場合は、トレーラに自動車を積載できたとしても、その乗り降りに困難が多い。
【0011】
特許文献2に記載された発明は、トラクタ(トラック)のキャビン(運転室)の部分には荷物を積載できないので、効率が良くない。
【0012】
更に、特許文献1、2の発明では、各トラクタを分離した状態で個別に自動車を積載しなければならず手数がかかってしまい、また、自動車を前向きで載せて後向きに降すことになるが、女性ドライバーは後向きに自動車を運転することが苦手であるという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平6-229465号公報
【特許文献2】特表2014-522467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
この発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、トラクタと分離した状態で、複数のトレーラを直線的に前後方向に連結して形成されたトレーラ列に、低い位置で、容易且つ安定して、短時間で自動車を積降し、また、トレーラに自動車を前向きに載せて、降すことができる自動車運搬用の多重連結型トレーラ、多重連結型トレーラによる自動車搬送システム及び自動車搬送方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、前後方向に連結して、トラクタにより牽引されるトレーラ列を構成可能な自動車運搬用の多重連結型トレーラであって、前輪及び後輪からなる4輪を備え、且つ、上面の一部が、2台の自動車を前後方向の隙間をもって縦列で水平に載置可能の車輪載置面とされた積載デッキを備えたトレーラボディと、前記トレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端のトラクタ後部連結器又は他の多重連結型トレーラの後端のトレーラ後部連結器に連結可能のトレーラ前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラのトレーラ前部連結器と連結可能なトレーラ後部連結器と、トレーラ走行時には前記積載デッキの下側で、前記トレーラボディ内に収納され、自動車の積降し時に、後方に引出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する前部道板と、前記トレーラボディ内に設けられ、後側に連結される多重連結型トレーラにおける前記前部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る後部道板掛け、及び、前側に連結される多重連結型トレーラにおける前記後部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る前部道板掛けと、を有してなり、前記前部道板及び前記後部道板は、水平に引出された先端が先方の前記後部道板掛け又は前記前部道板掛けに掛止された状態で隣接して連結された多重連結型トレーラに載置された自動車のための、前側のトレーラにおける前記積載デッキへの自動車水平移動路となる渡り板を構成可能とされたことを特徴とする自動車運搬用の多重連結型トレーラにより、上記課題を解決するものである。
【0016】
又、自動車運搬用の複数台の多重連結型トレーラと、先頭から最後尾まで直線的に複数台連結された前記多重連結型トレーラからなるトレーラ列の先頭の前記多重連結型トレーラに連結されて、前記トレーラ列を牽引するトラクタと、を有してなる自動車搬送システムであって、前記多重連結型トレーラは、前輪及び後輪からなる4輪を備え、且つ、上面が、2台の自動車を前後方向の隙間をもって縦列に載置可能の車輪載置面を含む積載デッキとされたトレーラボディと、前記トレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端のトラクタ後部連結器又は他の多重連結型トレーラの後端のトレーラ後部連結器と連結可能のトレーラ前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラのトレーラ前部連結器と連結可能なトレーラ後部連結器と、トレーラ列の走行時には前記積載デッキの下側で、前記トレーラボディ内に収納され、自動車の積降し時に、後方に引出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する前部道板と、前記トレーラボディ内に設けられ、後側に連結される多重連結型トレーラにおける前記前部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る前部道板掛け、及び、前記トレーラボディ内に設けられ、前側に連結される多重連結型トレーラにおける前記後部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る後部道板掛けと、を有してなり、前記後部道板掛けに掛止された前記前部道板又は前記前部道板掛けに掛止された前記後部道板は、前記後側に連結されたトレーラに載置された自動車のための、前側の多重連結型トレーラにおける前記積載デッキへの自動車水平移動路となる渡り板を構成し、前記トレーラ列は、運搬用の自動車の積込みのとき、前記トレーラ列における最後尾の前記多重連結型トレーラの前記トレーラボディから引出された前記後部道板が、自動車積込み用の坂路を形成し、トレーラ列における前記先頭の次の第2の多重連結型トレーラから前記最後尾の多重連結型トレーラの各々における前記前部道板を前方に引出して、その先端を各々の前側の前記多重連結型トレーラの後部道板掛けに掛止するか、又は、前記先頭から最後尾の前の多重連結型トレーラの各々における前記後部道板を後方に引出して、その先端を各々の後側の前記多重連結型トレーラの前部道板掛けに掛止して、各多重連結型トレーラ間に自動車水平移動路となる渡り板を形成可能とされ、前記最後尾の多重連結型トレーラの後部道板、及び積載デッキ、前記渡り板から中間の前記多重連結型トレーラの積載デッキ及び前記渡り板を経由して、先頭の前記多重連結型トレーラの積載デッキ上まで、先頭側から最後尾の前記多重連結型トレーラまで順次自動車を積込み可能とされ、自動車搬送のとき、先頭から2台目以降の前記各多重連結型トレーラの前部道板及び前記後部道板を、各々トレーラボディ内に戻し、前記先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器を前記トラクタ後部連結器に連結して、自動車の搬送可能とされ、自動車を降すとき、前記トラクタを、前記先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器から脱して引離し、前記先頭の多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出して地上との間に坂路を形成し、且つ、2台目以降の前記多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出し、又は、前記先頭から最後尾の前までの前記多重連結型トレーラにおける後部道板を後方に引出して、渡り板とし、前記先頭の多重連結型トレーラの前記前部道板から路上にまで自動車を走行させて降車可とされたこと、を特徴とする多重連結型トレーラによる自動車搬送システムにより、上記課題を解決するものである。
【0017】
更に又、複数台の自動車運搬用の多重連結型トレーラと、先頭から最後尾まで直線的に複数台連結された前記多重連結型トレーラからなるトレーラ列を牽引するトラクタと、により自動車を搬送する方法であって、前記多重連結型トレーラは、前輪及び後輪からなる4輪を備え、且つ、上面が、2台の自動車を前後方向の隙間をもって縦列に載置可能の車輪載置面を含む積載デッキとされたトレーラボディと、前記トレーラボディの前端に設けられ、前記トラクタの後端のトラクタ後部連結器又は他の多重連結型トレーラの後端のトレーラ後部連結器と連結可能のトレーラ前部連結器、及び、前記トレーラボディの後端に設けられ、他の多重連結型トレーラのトレーラ前部連結器と連結可能なトレーラ後部連結器と、トレーラ列の走行時には前記積載デッキの下側で、前記トレーラボディ内に収納され、自動車の積降し時に、後方に引出されて、前記積載デッキの後端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する後部道板、及び、前方に引出されて、前記積載デッキの前端と地上との間に自動車積降し用の坂路を形成する前部道板と、前記トレーラボディ内に設けられ、後側に連結される多重連結型トレーラにおける前記前部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る後部道板掛け、及び、前記トレーラボディ内に設けられ、前側に連結される多重連結型トレーラにおける前記後部道板の、水平に引出された先端が掛止され得る前部道板掛けと、を有してなり、前記トレーラ列における最後尾の前記多重連結型トレーラの前記後部道板を引出して、自動車積込み用の坂路を形成する過程と、前記トレーラ列における前記先頭の次の第2の多重連結型トレーラから前記最後尾の多重連結型トレーラの各々における前記前部道板を前方に引出して、その先端を各々の前側の前記多重連結型トレーラの後部道板掛けに掛止して、各多重連結型トレーラ間に自動車水平移動路となる渡り板とする過程、又は、前記トレーラ列における前記先頭の多重連結型トレーラから前記最後尾の前の多重連結型トレーラの各々における前記後部道板を後方に引出して、その先端を各々の後側の前記多重連結型トレーラの前部道板掛けに掛止して、各多重連結型トレーラ間に自動車水平移動路となる渡り板とする過程と、前記最後尾の多重連結型トレーラの後部道板、及び積載デッキ、前記渡り板から中間の前記多重連結型トレーラの積載デッキ及び前記渡り板を経由して、先頭の前記多重連結型トレーラの積載デッキ上まで、先頭側から最後尾の前記多重連結型トレーラまで順次自動車を走行させて積込む過程と、自動車搬送のとき、先頭から2台目以降の前記各多重連結型トレーラの前部道板及び前記最後尾の前記後部道板を、各々トレーラボディ内に戻す過程と、前記先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器を前記トラクタ後部連結器に連結する過程と、前記トラクタにより前記トレーラ列を目的地まで牽引する過程と、目的地において、前記トラクタを、前記トレーラ列の先頭の多重連結型トレーラの前記トレーラ前部連結器から脱して引離す過程と、前記先頭の多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出して地上との間に坂路を形成し、且つ、2台目以降の前記多重連結型トレーラの前記前部道板を前方に引出し、又は、先頭から最後尾の前の多重連結型トレーラにおける後部道板を後方に引出して、渡り板とする過程と、前記先頭の多重連結型トレーラ上から自動車を、前記渡り板及び積載デッキを通って、前記前部道板から路上に降ろす過程と、自動車を降ろした後、前記引出した前部道板及び前記後部道板を前記トレーラボディ内に戻す過程と、を含む多重連結型トレーラによる自動車搬送方法により、上記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0018】
この発明においては、直線的に複数の自動車運搬用の多重連結型トレーラを連結して形成されたトレーラ列における、各多重連結型トレーラ間に前部道板又は後部道板を引出し、トレーラ間の渡り板としてトレーラ列を縦断する水平な自動車移動面を構成し、この状態で、最後尾のトレーラから自動車を順次前方から積載していき、搬送時には、トラクタを、先頭のトレーラの前端に連結して、トレーラ列を牽引し、目的地に搬送し、自動車を降ろす場合は、先頭のトレーラの前部道板を引出して、且つ、2台目以降のトレーラの間に前部道板又は後部道板を水平に引出して、水平の自動車移動面を構成し、先頭のトレーラから順次路面に降ろして、搬送を効率的に、且つ、短時間で、熟練しないドライバーでも容易に積降し、搬送できるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例に係る多重連結型トレーラを連結して構成されたトレーラ列、トラクタ、及び、トレーラに積載される自動車を、トレーラ列に最後の自動車を積込む時点の状態を模式的に示す側面図
【
図2】同トラクタ及びトレーラ列を走行時の状態で示す平面図
【
図3】同トラクタ及びトレーラ列によって自動車を搬送中の状態を模式的に示す側面図
【
図4】同トレーラ列から自動車を、先頭から順に降ろす過程を模式的に示す側面図
【
図5】トレーラ前部連結器とトレーラのボギー台車との関係を模式的に示す平面図
【
図7】トレーラ前部連結器の要部を拡大して示す側面図
【
図8】トラクタ後部連結器及びトレーラ後部連結器を拡大して示す斜視図
【
図9】同実施例における多重連結型トレーラの後部道板をその後側のトレーラの道板掛けに引っ掛けて、水平な自動車移動面を構成した状態を示す平面図
【
図10】同実施例における後部道板を道板掛けに掛けて自動車移動面を構成した状態を拡大して示す側面図
【
図11】同後部道板掛けに後ろ側のトレーラから、前部道板を引出して引っ掛けて、自動車走行面を構成した状態で
図10のA部を拡大して示す断面図
【
図12】同実施例に係るトレーラ列に自動車を積込み、トラクタで牽引して目的地まで走行し、トラクタをトレーラ列から分離するまでの過程を示すフローチャート
【
図13】自動車を荷下ろしし、空荷のトレーラ列をトラクタにより牽引して次の積込みに向かうまでの過程を示すフローチャート
【
図14】4台のトレーラにより構成したトレーラ列を、模式的に示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
[実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して詳細に説明する。
【0021】
この実施例に係る自動車運搬用の多重連結型トレーラ(以下トレーラ)20A、20Bは、
図1-
図4に示されるように、前後方向に連結されて、トレーラ列21を構成し、且つ、このトレーラ列21の前端は、トラクタ10の後端に連結され、該トラクタ10によって牽引されるようになっている。
【0022】
なお、
図1は自動車積込み時、
図2、
図3はトレーラ走行時、
図4は自動車を降ろす時の状態をそれぞれ示す。
【0023】
トレーラ20A、20Bは、それぞれ、前後方向に2台の自動車14A、14B及び14C、14D(14A~14D・・・を総称する場合は14とする)を積載できるように構成されている。また、複数の多重連結型トレーラ20A、20B・・・を総称する場合は、多重連結型トレーラ20とする。
【0024】
トレーラ20は、前輪23及び後輪24と、上面の一部が2台の自動車14を前後方向の隙間をもって縦列で水平に載置可能の車輪載置面28とされた積載デッキ26を備えたトレーラボディ22と、を有している。
【0025】
トレーラボディ22は、その前端にトレーラ前部連結器30を、その後端にトレーラ後部連結器40を、それぞれ備えている。トレーラ前部連結器30は、トラクタ10の後端のトラクタ後部連結器12、又は他のトレーラの後端のトレーラ後部連結器40に連結可能とされている。この連結は、ヒッチボール40A(
図8参照)におけるトラクタ後部連結器12又はトレーラ後部連結器40の後端から後方に延在し、直角に屈曲した支持部材42の上端のボール41に、上方からトレーラ前部連結器30の下向きのボール受け穴30B(説明後述)を嵌合することによりなされる。
【0026】
図5に示されるように、トレーラ前部連結器30は、トレーラ20の前輪23を支持するボギー台車25の台車枠25Bと一体の梶棒25Aの先端に取付けられている。
【0027】
ボギー台車25は、トレーラボディ22によりターンテーブル25Cを介して水平面内で回転自在に支持された前記台車枠25B及びこの台車枠25Bに水平面内で横方向に延在して配置された車軸25Dとを有している。前輪23はトーションバー25Eを介して、車軸25Dの近傍位置で台車枠25Bの車体幅方向両側面に支持されている。
【0028】
トレーラ前部連結器30、トラクタ後部連結器12、及びトレーラ後部連結器40は、例えば、
図7、
図8に拡大して示されるボールカプラ30A、ヒッチボール40Aからなるドイツ国KNOTT社製のボールカップリングにより構成される。
【0029】
ボールカプラ30Aは、その下向きのボール受け穴30B内に、ヒッチボール40Aのボール41を下から挿入した状態でハンドル30Cを
図7において矢符Cの方向に押下げるとボール41がロックされて連結状態となり、また矢符Uの方向に押し上げるとボール41が開放されて連結状態が解除されるようになっている。ヒッチボール40Aはトラクタ後端及びトレーラ後端に取付けられている。
【0030】
積載デッキ26の下側で、トレーラボディ22内には、前部道板50、後部道板60が収納されている。
【0031】
図4に示されるように、前部道板50は、自動車の積下し時に、前方に引出されて、積載デッキ26の前端と地上との間に自動車積下し用の坂路を形成するようにされ、また、後部道板60は、
図1に示されるように、後方に引出されて、積載デッキ26と地上との間に自動車積下し用の坂路を形成するように構成されている。前部道板50及び後部道板60は引出されて坂路を形成するとき、各々の基端はトレーラボディ22の前端又は後端に設けられた道板揺動支点51に、一定範囲で鉛直面内揺動自在に掛けられて支持される。
【0032】
図1に示されるように、トレーラボディ22内には、更に、その後ろ側に連結されるトレーラ20Bの前部道板50の、水平、且つ、前方に引出された先端が掛止される後部道板掛け52B(
図11参照)が、又、
図9、
図11に示されるように、前側に連結されたトレーラ20Aの後部道板60の、水平、且つ、後方に引出された先端が掛止めされる前部道板掛け52Aがそれぞれ設けられている。
図11は
図10のA部を拡大して示し、前部道板掛け52Aは、後部道板掛け52Bに対して
図11において左右対称形状である。
【0033】
前部道板50及び後部道板60は、
図10、
図11(拡大図)に示されるように、水平に引出された先端が前方の後部道板掛け52B又は後方の前部道板掛け52Aに掛け止めされた状態で、隣接して連結されたトレーラ20に載置された自動車14のための、前側のトレーラ20における積載デッキ26に連続する渡り板を構成可能とされている。
【0034】
積載デッキ26における車輪載置面28は、
図1に示されるように、前輪23の前部ホイールハウス70及び後輪24の後部ホイールハウス72の上端よりも0~50mm高くされた水平面とされ、車輪載置面28上に、自動車14を縦列に載置するようにされている。
【0035】
このようにすると、ホイールハウス70、72を強固にトレーラボディ22に結合できるとともに、積載デッキ26の高さを最小にして、トレーラ20上の自動車14への乗り降り及び固縛作業及びその解除作業を地上から容易にすることができる。
【0036】
0~50mmにおける0mmは、ホイールハウス70、72の上面を車輪載置面28とする場合、50mmは、ホイールハウス70、72の上に板材を貼り付ける場合の最大値である。
【0037】
トレーラ20における、前輪23と後輪24との間のトレーラホイールベースWhb(
図1参照)は、車輪載置面28上に縦列に載置された2台の自動車14の各々の前後方向の重心が、前輪23の上方位置及び後輪24の上方位置になるように設定されている。
【0038】
又、積載デッキ26のトレーラ前後方向の長さは、2台の自動車14を、前後方向の隙間をもって縦列に載置したとき、前側の自動車における前輪中心と自動車前端との中間位置から後側の自動車における後輪中心と自動車後端との中間位置までとされている。
【0039】
上記重心位置、ホイールベース、車長については、例えば、自動車製造ラインから積出し港まで運ぶ際などの、すでに自動車の形式が定まっている場合にのみ適用され、予め定められた長さ、重心位置等が異なる場合は適用されない。
【0040】
トレーラ20における、後部道板60は、後端が接地した状態で、平面視で、トレーラ後部連結器40を間にして左右に離間した平行な一対の左道板60A及び右道板60Bから構成されていて、側面視では、左道板60A及び右道板60Bの間からの、トレーラ後部連結器40の上端の上方への突出量が、自動車14の地上最低高よりも小さくなるように構成されている。
【0041】
また、トレーラ20における、前部道板50は、前端が接地した状態で、平面視で、トレーラ前部連結器30を間にして左右に離間した平行な一対の左道板50A及び右道板50Bから構成されていて、側面視で、左道板50A及び右道板50Bの間からの、トレーラ前部連結器30の上端の上方への突出量が、自動車14の地上最低高よりも小さくなるように構成されている。
【0042】
以下、本発明の実施例におけるトレーラ列21に自動車14を積載し、これをトラクタ10によって牽引して目的地まで搬送し、その後、自動車14をトレーラ列21から降す過程(多重連結型トレーラによる自動車搬送方法)について、
図12及び
図13を参照して説明する。
【0043】
本発明に係る多重連結型トレーラシステムは、トラクタ10及びトレーラ列21からなり、トレーラ列21は複数のトレーラ20からなるものである。
図1~
図4に示されるトレーラ列21は、2台のトレーラ20A、20Bのみを用いているが、
図12(ステップS101~S112)、
図13(ステップS113~S118、S201~S203)のフローチャートはトレーラ20を3台以上連結したトレーラ列にも適用されるものである。
【0044】
ステップS101において、トレーラ列21が形成されているか否かを判定し、Noであれば、ステップS102に進み、複数のトレーラ20を直線的に連結してトレーラ列21を構成し、ステップS103に進む。また、Yesの場合もステップS103に進む。
【0045】
ステップS103においては、前部道板50を渡り板にするかを判定する。Yesであれば、次のステップS104Aに進む。Noであれば、後部道板60を渡り板にすることになり、ステップS104Bに進む。
【0046】
ステップS104Aにおいては、トレーラ列の2台目以降のトレーラ20(
図1においてはトレーラ20B)から各々、前部道板50を前方に引出して前側のトレーラ20における後部道板掛け52Bに掛止めて渡り板を構成する。
【0047】
又、ステップS104Bに進んだ場合、最後部を除く各トレーラ20の後部道板60を後方に引出して、その先端を後側のトレーラ20の前部道板掛け52Aに掛止して、各トレーラの間の渡り板を形成し自動車移動面を連続させる。
【0048】
ステップS104A及びステップS104Bからは、ステップS105に進む。
【0049】
ステップS105においては、最後尾のトレーラ20における後部道板60を後方に引出して、路面との間の坂路として、最後尾のトレーラ20から先頭のトレーラ20の自動車載置面を連続させる。
【0050】
次のステップS106においては、最後尾の後部道板60からドライバーが1台ずつ自動車14を運転して先頭から最後尾のトレーラ20まで順次自動車14を積載する。次のステップS107においては、自動車14を各トレーラ20に固縛し、引出された前部道板50及び後部道板60をトレーラボディ22内に引込む。
【0051】
ここで、自動車14の移動は、水平な自動車移動面上でなされるので熟練ドライバーでなくとも容易にできる。また、車輪載置面28は前部ホイールハウス70、後部ホイールハウス72よりもわずかに高いだけであるので、自動車14の固縛は、地上に立って作業でき、高所作業は不要である。
【0052】
次のステップS108においては、トラクタ10を、そのトラクタ後部連結器12を先頭のトレーラ20におけるトレーラ前部連結器30の近くに移動させる。
【0053】
ステップS109に進み、トラクタ後部連結器12と先頭のトレーラ20のトレーラ前部連結器30とを連結し、次のステップS110に進む。
【0054】
ここまでで、トラクタ10は、トレーラ列21が形成され、且つ、これに自動車14の積載するまでの間は不要であり、空荷のトレーラ列21を牽引してきたトラクタ10を待ち時間なく利用できる。
【0055】
ステップS110では、トラクタ10により自動車14を載置したトレーラ列21を目的地まで牽引する。次のステップS111では、トラクタ10に牽引されたトレーラ列21が目的地に到着し、ステップS112において、トレーラ列21からトラクタ10を外し、引離す。
【0056】
次は、
図13に示されるステップS113及びサブルーチンにおけるステップS201に進む。
【0057】
ステップS201では、トラクタ10に空荷の他のトレーラ列21を牽引させるか否かを判定する。Yesであれば、次のステップS202においてトラクタ10は他のトレーラ列21に向かって走行し、終了する。
【0058】
ステップS201の判定結果がNoであれば、ステップS203に進み、トラクタ10を、トレーラ列21からの自動車14を降す作業終了を待つ待機状態とする。
【0059】
メインルーチンのステップS113において、先頭のトレーラの前部道板50を前方に引出して路面との間に坂路を形成し、ステップS114に進む。
【0060】
ステップS114においては、各トレーラ20における前部道板50を渡り板にするか否かを判定し、Yesであれば次のステップS115Aへ進む。又、Noであれば、ステップS115Bに進む。
【0061】
ステップS115Aでは、トレーラ列21の2台目以降のトレーラ20から各々、前部道板50を前方に引出してその先端を前側のトレーラ20における後部道板掛け52Bに掛止して渡り板を構成する。
【0062】
又、ステップS115Bにおいては、最後尾を除く各トレーラの後部道板60を後方に引出して、その先端を後側のトレーラの前部道板掛け52Aに掛止して、渡り板を構成する。
【0063】
ステップS115A、又は、ステップS115Bからは、ステップS116に進む。
【0064】
ステップS116では、積載された自動車14の固縛を解除し、自動車14を先頭から最後尾までのトレーラ20から順に先頭の前部道板50を通って路上に降す。
【0065】
この過程は、トレーラ20上の自動車14を前方に移動させるだけであり、且つ、上述のように、車輪載置面28が低いので、非熟練者でも容易に、且つ、短時間で、到着したトレーラ列21から自動車14を降すことができる。
【0066】
ステップS117に進み、各トレーラ20の引出された前部道板50及び後部道板60をトレーラボディ22内に戻し、走行可能なトレーラ列21(空荷)を構成する。
【0067】
次のステップS118においては、トレーラ列21をステップS203で待機するトラクタ10又は予め手配されているトラクタ10により空荷のトレーラ列21を牽引して出発地に戻る。
【0068】
上記実施例において、トレーラ列21は2台の多重連結型トレーラ20A、20Bを連結した構成であるが、本発明は3台以上のトレーラ20からなるトレーラ列を牽引する場合にも適用される。
【0069】
日本国では、公道走行の場合、実施例のように2台のトレーラ20A、20Bのトレーラ列21が長さ規制の限界となるが、工場内等の私有地内では旋回上の限界から、
図14に示されるように、トレーラ20は4台連結が限界となる。
【符号の説明】
【0070】
10…トラクタ
12…トラクタ後部連結器
14、14A、14B、14C、14D…自動車
20、20A、20B…多重連結型トレーラ
21…トレーラ列
22…トレーラボディ
23…前輪
24…後輪
25…ボギー台車
25A…梶棒
25B…台車枠
25C…ターンテーブル
25D…車軸
25E…トーションバー
26…積載デッキ
28…車輪載置面
30…トレーラ前部連結器
30A…ボールカプラ
30B…ボール受け穴
30C…ハンドル
40…トレーラ後部連結器
40A…ヒッチボール
41…ボール
42…支持部材
50…前部道板
50A、60A…左道板
50B、60B…右道板
51…道板揺動支点
52…道板掛け
52A…前部道板掛け
52B…後部道板掛け
60…後部道板
70…前部ホイールハウス
72…後部ホイールハウス