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  • 特開-電力需要調整システムおよび方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075060
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】電力需要調整システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20240101AFI20240527BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240527BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 170
H02J3/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186207
(22)【出願日】2022-11-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】諏訪 航司
(72)【発明者】
【氏名】森 有紀乃
(72)【発明者】
【氏名】片桐 汐駿
(72)【発明者】
【氏名】畑野 隆文
(72)【発明者】
【氏名】小倉 徹
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G066AA02
5G066AE03
5G066AE09
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】ハイブリッド勤務によって増エネルギーになる可能性を低減する。
【解決手段】電力需要調整システムは、電力需要調整の対象企業に勤務する人をグルーピングした結果の複数のグループについて節電の優先順位を決定する優先順位決定部5と、電力需要調整の対象期間における対象企業の電力削減目標量と節電の優先順位とグループ毎の過去の消費電力量の実績とに基づいて、対象期間における節電対象のグループを決定する節電対象決定部6と、対象企業に勤務する人のうち節電対象のグループに属する人を対象期間について在宅勤務とする通知を発送する通知部7とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力需要調整の対象企業に勤務する人をグルーピングした結果の複数のグループについて節電の優先順位を決定するように構成された優先順位決定部と、
電力需要調整の対象期間における前記対象企業の電力削減目標量と前記節電の優先順位とグループ毎の過去の消費電力量の実績とに基づいて、前記対象期間における節電対象のグループを決定するように構成された節電対象決定部と、
前記対象企業に勤務する人のうち前記節電対象のグループに属する人を前記対象期間について在宅勤務とする通知を発送するように構成された通知部とを備えることを特徴とする電力需要調整システム。
【請求項2】
請求項1記載の電力需要調整システムにおいて、
前記対象企業の建物の空間をグルーピングの単位として、前記対象企業に勤務する人をグルーピングするように構成されたグルーピング設定部をさらに備えることを特徴とする電力需要調整システム。
【請求項3】
請求項2記載の電力需要調整システムにおいて、
前記グルーピング設定部は、前記対象企業に勤務する人の勤務予定に応じてグルーピングの単位を変更することを特徴とする電力需要調整システム。
【請求項4】
請求項1記載の電力需要調整システムにおいて、
前記対象企業に電力を供給する電力会社の電力供給予備率に応じて前記電力削減目標量を設定するように構成された電力削減目標量設定部をさらに備えることを特徴とする電力需要調整システム。
【請求項5】
請求項1記載の電力需要調整システムにおいて、
前記優先順位決定部は、前記対象企業に勤務する人の勤務スケジュール情報に基づいて前記対象期間の在宅勤務者をグループ毎に特定し、グループ全員に対する在宅勤務者の割合である在宅勤務率をグループ毎に算出して、在宅勤務率が高いほど順位が高くなるように前記節電の優先順位を決定することを特徴とする電力需要調整システム。
【請求項6】
請求項1記載の電力需要調整システムにおいて、
前記節電対象決定部は、前記対象期間と同じ長さの過去の期間における消費電力量の実績が前記電力削減目標量以上で、かつ前記電力削減目標量に最も近くなるように、前記節電の優先順位が高い順に前記節電対象のグループを1乃至複数選定することを特徴とする電力需要調整システム。
【請求項7】
請求項1記載の電力需要調整システムにおいて、
前記対象企業の設備を監視・制御するビル管理システムに対して、前記対象期間に前記節電対象のグループが使用する筈の設備について節電運転を行うように設備の運転スケジュールを設定するように構成された節電運転指令部をさらに備えることを特徴とする電力需要調整システム。
【請求項8】
電力需要調整の対象企業に勤務する人をグルーピングした結果の複数のグループについて節電の優先順位を決定する第1のステップと、
電力需要調整の対象期間における前記対象企業の電力削減目標量と前記節電の優先順位とグループ毎の過去の消費電力量の実績とに基づいて、前記対象期間における節電対象のグループを決定する第2のステップと、
前記対象企業に勤務する人のうち前記節電対象のグループに属する人を前記対象期間について在宅勤務とする通知を発送する第3のステップとを含むことを特徴とする電力需要調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出社と在宅の選択ができるハイブリッド勤務を導入する企業の電力需要を調整する電力需要調整システムおよび方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力需給がひっ迫する事態に備えて、節電の必要性を呼びかけるために、電力需給ひっ迫警報が2012年に制定され、さらに電力需給ひっ迫注意報が2022年に制定された。そして、制定以降初めて2022年3月に電力需給ひっ迫警報が発令され、続いて2022年5月に電力需給ひっ迫注意報が発令され、電力需給がかつてないほど厳しい状況となっている。政府から節電を要請されると、停電のリスクが高くなるので、各企業や個人が節電を行い、停電を防がなければならない。
【0003】
しかしながら、個人の節電は動機付けが難しいため、企業主導で節電を行うシステムが必要である。また、要請された数値に対して明確な節電効果を示すことが難しいため、企業が行うべき節電量を見積もるシステムが必要である。
【0004】
例えば特許文献1には、需要家に電力供給を行う発電機の運転状態が予め設定された電力逼迫状態となった場合に電力逼迫の警報信号を出力し、需要家の使用電力量が予め設定された上限値を超過した場合に使用電力超過の警報信号を出力する電力監視システムが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、事前に需要家をグルーピングし、デマンドレスポンス情報に基づいて各グループへのデマンドレスポンスの要求量を決定する監視制御装置が提案されている。さらに、特許文献3には、事前に需要家をグルーピングし、グループ毎の総需要値を算出して、総需要を調整するべきと判断したグループについて使用電力の調整量を決定する電力系統需給制御システムが提案されている。
【0006】
一方、新型コロナウイルスの蔓延によって働き方改革の取り組みが進み、出社と在宅の選択ができるハイブリッド勤務を導入する企業が増えている。しかしながら、特許文献1~3に開示された技術では、ハイブリッド勤務について考慮されていないため、社員が自身や上司の裁量でハイブリッド勤務をすると、職場と家庭の両方で電力が消費されるので、増エネルギーにつながってしまうという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2019-162004号公報
【特許文献2】特開2014-033594号公報
【特許文献3】特開2013-247691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、ハイブリッド勤務によって増エネルギーになる可能性を低減することができる電力需要調整システムおよび方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電力需要調整システムは、電力需要調整の対象企業に勤務する人をグルーピングした結果の複数のグループについて節電の優先順位を決定するように構成された優先順位決定部と、電力需要調整の対象期間における前記対象企業の電力削減目標量と前記節電の優先順位とグループ毎の過去の消費電力量の実績とに基づいて、前記対象期間における節電対象のグループを決定するように構成された節電対象決定部と、前記対象企業に勤務する人のうち前記節電対象のグループに属する人を前記対象期間について在宅勤務とする通知を発送するように構成された通知部とを備えることを特徴とするものである。
【0010】
また、本発明の電力需要調整システムの1構成例は、前記対象企業の建物の空間をグルーピングの単位として、前記対象企業に勤務する人をグルーピングするように構成されたグルーピング設定部をさらに備えることを特徴とするものである。
また、本発明の電力需要調整システムの1構成例において、前記グルーピング設定部は、前記対象企業に勤務する人の勤務予定に応じてグルーピングの単位を変更することを特徴とするものである。
また、本発明の電力需要調整システムの1構成例は、前記対象企業に電力を供給する電力会社の電力供給予備率に応じて前記電力削減目標量を設定するように構成された電力削減目標量設定部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の電力需要調整システムの1構成例において、前記優先順位決定部は、前記対象企業に勤務する人の勤務スケジュール情報に基づいて前記対象期間の在宅勤務者をグループ毎に特定し、グループ全員に対する在宅勤務者の割合である在宅勤務率をグループ毎に算出して、在宅勤務率が高いほど順位が高くなるように前記節電の優先順位を決定することを特徴とするものである。
また、本発明の電力需要調整システムの1構成例において、前記節電対象決定部は、前記対象期間と同じ長さの過去の期間における消費電力量の実績が前記電力削減目標量以上で、かつ前記電力削減目標量に最も近くなるように、前記節電の優先順位が高い順に前記節電対象のグループを1乃至複数選定することを特徴とするものである。
また、本発明の電力需要調整システムの1構成例は、前記対象企業の設備を監視・制御するビル管理システム(Building Automation System、以下BAシステム)に対して、前記対象期間に前記節電対象のグループが使用する筈の設備について節電運転を行うように設備の運転スケジュールを設定するように構成された節電運転指令部をさらに備えることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の電力需要調整方法は、電力需要調整の対象企業に勤務する人をグルーピングした結果の複数のグループについて節電の優先順位を決定する第1のステップと、電力需要調整の対象期間における前記対象企業の電力削減目標量と前記節電の優先順位とグループ毎の過去の消費電力量の実績とに基づいて、前記対象期間における節電対象のグループを決定する第2のステップと、前記対象企業に勤務する人のうち前記節電対象のグループに属する人を前記対象期間について在宅勤務とする通知を発送する第3のステップとを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、節電対象のグループに属する人を在宅勤務にすることで、グループが使用する照明設備、空調設備、OA機器等の設備の消費電力量を削減できるので、電力削減目標量以上の消費電力量、あるいは電力削減目標量に近い水準の消費電力量を削減することができる。本発明では、対象企業がハイブリッド勤務を導入していることを前提として対象企業の電力需要を調整することにより、ハイブリッド勤務によって増エネルギーになる可能性を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の実施例に係る電力需要調整システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る電力需要調整システムの動作を説明するフローチャートである。
図3図3は、本発明の実施例に係る電力需要調整システムを実現するコンピュータの構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1の実施例]
以下、本発明の実施例について図面を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施例に係る電力需要調整システムの構成を示すブロック図である。電力需要調整システムは、電力削減目標量設定部1と、グルーピング設定部2と、電力量記録部3と、スケジュール設定部4と、優先順位決定部5と、節電対象決定部6と、通知部7と、節電運転指令部8と、記憶部9とを備えている。
【0016】
図2は電力需要調整システムの動作を説明するフローチャートである。なお、図2は1例であって、電力需要調整システムの処理の順番は図2のとおりでなくてもよい。
【0017】
電力需要調整システムの電力削減目標量設定部1は、電力需要調整の対象企業に電力を供給する電力会社の電力供給予備率を外部の供給予備率開示システム100から例えば16時に取得する(図2ステップS100)。
【0018】
電力削減目標量設定部1は、取得した電力供給予備率に基づいて対象企業の電力削減目標量を設定する(図2ステップS101)。電力削減目標量設定部1が設定した電力削減目標量は記憶部9に記録される。電力供給予備率と電力削減目標量との関係は予め定められている。電力供給予備率と電力削減目標量との関係の1例を表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】
表1の例では、電力需給が逼迫した際に節電する最大の電力量を250kWとし、電力供給予備率に応じた電力削減目標量が予め決定されている。なお、電力供給予備率に基づく決定方法は1例であって、企業が独自に決定した値を用いてもよいし、政府が推奨する目標量等に基づいて決定した値を用いてもよい。
【0021】
電力需要調整システムのグルーピング設定部2は、対象企業に勤務する人(従業員と役員)をグルーピングする(図2ステップS102)。グルーピング設定部2は、事業所、建物、フロア、区画、部署、プロジェクトチーム等の予め設定されたグルーピング定義に従って、対象企業に勤務する人をグルーピングする。各グループの名称と各グループに所属する人と各グループに所属する人の在席位置とを定義したグルーピング情報は、記憶部9に記録される。
【0022】
ステップS100~S102の処理は、電力需要調整システムの導入時に最低1度実施されるが、さらに導入後に適宜実施することで、電力削減目標量とグルーピングを適宜更新するようにしてもよい。例えば電力削減目標量については、当日の16時の電力供給予備率に基づいて翌日の電力削減目標量を設定するようにしてもよい。また、グルーピングについては、電力需要調整の対象期間毎(日毎、週毎または月毎)に行い、対象期間のグループを決定してもよい。
【0023】
電力需要調整システムの電力量記録部3は、対象企業の建物に設置された電力量計101から消費電力量を取得し、取得した消費電力量と前記グルーピング情報と予め記憶部9に記憶されている設備情報とに基づいて、対象期間と同じ長さの期間の消費電力量をグループ毎に算出する。そして、電力量記録部3は、対象期間と同じ長さの当月の期間におけるグループの消費電力量のうち最大消費電力量を前記グルーピング情報と対応付けて記憶部9に記録する(図2ステップS103)。
【0024】
例えば対象期間が日毎であった場合、あるグループについて新たに算出された1日当たりの消費電力量が記憶部9に記憶されている当該グループの1日当たりの最大消費電力量を超えている場合には、記憶部9に記憶されている最大消費電力量が、新たに算出された1日当たりの消費電力量に更新されることになる。
【0025】
設備情報は、対象企業の設備(照明設備、空調設備、OA機器等)の名称と、設備が設置されている位置を示す情報と、対象期間と同じ長さの期間における設備の標準的な消費電力量の情報とを少なくとも含む。
【0026】
電力量記録部3は、設備に最も近い位置に在席位置がある人をグルーピング情報と設備情報とに基づいて設備毎に探索し、この人が所属するグループを特定し、特定したグループを、当該設備を使用するグループとして、グループの消費電力量を算出する。設備に最も近い位置に在席位置がある人が複数存在する場合には、これらの人が所属する人数が最も多いグループを、当該設備を使用するグループとする。
【0027】
あるいは、設備を使用する人を定めた情報を記憶部9に予め登録しておき、設備を使用する人が所属するグループを当該設備を使用するグループとして、グループの消費電力量を算出してもよい。設備を使用する人が複数存在する場合には、これらの人が所属する人数が最も多いグループを、当該設備を使用するグループとすればよい。
【0028】
電力量記録部3は、設備毎に電力量計101が設置されている場合には、電力量計101によって計測された各設備の消費電力量をグループ毎に合算することで、対象期間と同じ長さの期間における各グループの消費電力量を算出することができる。
【0029】
また、例えば事業所、建物、フロア、区画といった空間の単位で電力量計101が設置されている場合、電力量記録部3は、空間に設置されている1台の注目設備の標準的な消費電力量を同空間に設置されている全設備の標準的な消費電力量の合計値で割ることにより、空間において注目設備が占める消費電力量の標準的な割合を算出する。そして、電力量記録部3は、算出した割合と電力量計101によって計測された消費電力量とを乗算することで、対象期間と同じ長さの期間における注目設備の推定消費電力量を算出する。最後に、電力量記録部3は、空間に設置されている各設備の推定消費電力量をグループ毎に合算することで、対象期間と同じ長さの期間における各グループの消費電力量を算出することができる。
【0030】
電力需要調整システムのスケジュール設定部4は、対象企業に勤務する人が入力した勤務スケジュール情報を記憶部9に記録する(図2ステップS104)。勤務スケジュール情報は、在宅勤務と出社勤務の予定日の情報を含む。ステップS104の処理は、翌月の勤務スケジュール情報を設定する処理でもよいし、翌週の勤務スケジュール情報を設定する処理でもよく、企業の都合によって決められた間隔で実施すればよい。
【0031】
次に、電力需要調整システムの優先順位決定部5は、対象企業に電力を供給する電力会社の管内について政府から電力需給ひっ迫警報または電力需給ひっ迫注意報が発令されたときに(図2ステップS105においてYES)、予め設定された複数のグループについて節電の優先順位を決定する(図2ステップS106)。
【0032】
優先順位決定部5は、記憶部9に記憶された勤務スケジュール情報とグルーピング情報とに基づいて対象期間の在宅勤務者をグループ毎に特定し、グループ全員に対する在宅勤務者の割合である在宅勤務率をグループ毎に算出して、在宅勤務率が高いほど順位が高くなるように節電の優先順位を決定する。例えば木曜日に電力需給ひっ迫警報または電力需給ひっ迫注意報が発令されたとき、対象期間(ここでは翌日の金曜日)の在宅勤務率は、グループに属する在宅勤務者の数をn、グループの全人数をNとすれば、n/Nである。この在宅勤務率が高いグループの優先順位を高くすればよい。なお、在宅勤務率が同一のグループが複数存在する場合、例えばグループ名称の昇順で優先順位を決定すればよい。優先順位の決定例を表2に示す。
【0033】
【表2】
【0034】
表2では、対象企業の建物のフロアをグルーピングの単位とした例を示している。上記のとおりグループ毎に当月の1日当たりの最大消費電力量が記憶部9に記録されている。
次に、電力需要調整システムの節電対象決定部6は、電力削減目標量設定部1が設定した電力削減目標量と、優先順位決定部5が決定した節電の優先順位と、記憶部9に記憶されているグループ毎の過去の最大消費電力量とに基づいて、対象期間における節電対象のグループを決定する(図2ステップS107)。
【0035】
節電対象決定部6は、対象期間と同じ長さの過去の期間における最大消費電力量が電力削減目標量以上で、かつ電力削減目標量に最も近くなるように、節電の優先順位が高い順に節電対象のグループを選定する。1つのグループで最大消費電力量が電力削減目標量以上にならない場合、節電対象決定部6は、対象期間と同じ長さの過去の期間における最大消費電力量の合計値が電力削減目標量以上で、かつ電力削減目標量に最も近くなるように、節電の優先順位が高い順に節電対象のグループを複数選定する。
【0036】
例えば当日の16時に電力需給ひっ迫警報が発令され、電力供給予備率を取得したところ、3.5%であったとする。電力削減目標量設定部1は、表1に示した関係により、対象企業の対象期間における電力削減目標量を50kWhと設定したとする。節電対象決定部6は、電力削減目標量である50kWhを満たすため、表2に示すグループ1とグループ2を節電対象のグループとして決定する。
【0037】
電力需要調整システムの通知部7は、節電対象決定部6によって決定された節電対象のグループに属する全ての人を対象期間(例えば翌日)について在宅勤務とする通知を発送する(図2ステップS108)。上記の例では、表2に示すグループ1とグループ2に属する人を在宅勤務とする。通知方法としては、例えば節電対象のグループに属する人が使用する勤務用の端末102にメールを発送する等の方法がある。
【0038】
電力需要調整システムの節電運転指令部8は、対象企業の設備を監視・制御するBA(Building Automation)システム103に対して、対象期間に節電対象のグループが使用する筈の設備について節電運転を行うよう、設備の運転スケジュールを設定する(図2ステップS109)。これにより、対象期間における設備の自動運転が可能になる。設備と、設備を使用するグループとの関係は上記の手法によって特定できる。節電運転としては、設備の運転停止、間欠運転、省エネルギー側への設定値変更などがある。
【0039】
以上のように、本実施例では、節電対象のグループに属する人を在宅勤務にすることで、グループが使用する照明設備、空調設備、OA機器等の設備の消費電力量を削減できるので、電力削減目標量以上の消費電力量、あるいは電力削減目標量に近い水準の消費電力量を削減することができる。例えば上記の例では、グループ1とグループ2に属する人を翌日在宅勤務とすることで、対象企業において最大で50kWhの節電を達成することができる。本実施例では、対象企業がハイブリッド勤務を導入していることを前提として対象企業の電力需要を調整することにより、ハイブリッド勤務によって増エネルギーになる可能性を低減することができる。
【0040】
なお、本実施例では、電力需給ひっ迫警報または電力需給ひっ迫注意報が発令されたときにステップS106~S109の処理を行っているが、節電対象のグループを1度決定した後は発令された電力需給ひっ迫警報または電力需給ひっ迫注意報が解除されるまで、同じグループを節電対象のグループとしてもよいし、ステップS106~S109の処理を対象期間毎に実施して、節電対象のグループを対象期間毎に決定してもよい。
【0041】
また、本実施例では、電力需給ひっ迫警報または電力需給ひっ迫注意報の発令をステップS106~S109の処理の前提条件としているが、これに限るものではなく、電力需給ひっ迫警報または電力需給ひっ迫注意報の発令無しにステップS106~S109の処理を対象期間毎に実施し、節電対象のグループを決定して節電対象のグループに属する人を対象期間について在宅勤務としてもよい。
【0042】
また、本実施例では、事業所、建物、フロア、区画、部署、またはプロジェクトチームをグルーピングの単位としているが、これに限るものではなく、グルーピングの設定を、予め決められた単位ではなく、対象企業に勤務する人の勤務予定、電力使用状況等から柔軟に変更してもよい。
【0043】
例えば今月は対象企業の建物のフロアをグルーピングの単位としていたとする。一方、翌月は出社予定割合が所定の閾値以上で高いことが判明したとする。グルーピング設定部2は、翌月のグループの出社予定割合が所定の閾値以上で高い場合、フロアを分割した区画をグルーピングの単位として、翌月用のグルーピングを行う。これにより、翌月の電力需要調整を今月よりもきめ細かく行うことができるので、電力削減量を増やすことができる。
【0044】
本実施例で説明した電力需要調整システムは、CPU(Central Processing Unit)、記憶装置及びインターフェースを備えたコンピュータと、これらのハードウェア資源を制御するプログラムによって実現することができる。このコンピュータの構成例を図3に示す。
【0045】
コンピュータは、CPU200と、記憶装置201と、インターフェース装置(I/F)202とを備えている。I/F202には、供給予備率開示システム100と電力量計101とBAシステム103と通知部7のハードウェア等が接続される。このようなコンピュータにおいて、本発明の電力需要調整方法を実現させるためのプログラムは記憶装置201に格納される。CPU200は、記憶装置201に格納されたプログラムに従って本実施例で説明した処理を実行する。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、企業のエネルギー消費を管理・制御する技術に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…電力削減目標量設定部、2…グルーピング設定部、3…電力量記録部、4…スケジュール設定部、5…優先順位決定部、6…節電対象決定部、7…通知部、8…節電運転指令部、9…記憶部、100…供給予備率開示システム、101…電力量計、102…端末、103…BAシステム。
図1
図2
図3