(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024075072
(43)【公開日】2024-06-03
(54)【発明の名称】潅水装置
(51)【国際特許分類】
A01G 25/06 20060101AFI20240527BHJP
E01C 13/08 20060101ALI20240527BHJP
A01G 27/00 20060101ALI20240527BHJP
A01G 20/30 20180101ALI20240527BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20240527BHJP
A01G 9/02 20180101ALI20240527BHJP
【FI】
A01G25/06 D
E01C13/08
A01G27/00 502G
A01G27/00 502V
A01G20/30
A01G7/00 602C
A01G7/00 602B
A01G9/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022186236
(22)【出願日】2022-11-22
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000147752
【氏名又は名称】株式会社石勝エクステリア
(71)【出願人】
【識別番号】000002462
【氏名又は名称】積水樹脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128509
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 晴久
(74)【代理人】
【識別番号】100119356
【弁理士】
【氏名又は名称】柱山 啓之
(72)【発明者】
【氏名】涌井 史郎
(72)【発明者】
【氏名】飯島 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】沼尻 直人
(72)【発明者】
【氏名】川崎 鉄平
(72)【発明者】
【氏名】濱本 剛
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
2D051
【Fターム(参考)】
2B022AB02
2B022AB03
2B022AB04
2B022AB08
2B327UA03
2B327UA08
2B327UA20
2B327UA22
2D051AB04
2D051HA09
2D051HA10
(57)【要約】
【課題】人工芝と天然芝を含む芝生構造に対して上水を使用せずに潅水を行う。
【解決手段】潅水装置100は、容器1と、容器内に形成された吸水層と、吸水層の上に形成され、人工芝と天然芝を含む芝生層3と、容器から排出された水を貯留するタンク4と、芝生層に給水するための給水管5と、タンク内の水を給水管に送るポンプ6とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、
前記容器内に形成された吸水層と、
前記吸水層の上に形成され、人工芝と天然芝を含む芝生層と、
前記容器から排出された水を貯留するタンクと、
前記芝生層に給水するための給水管と、
前記タンク内の水を前記給水管に送るポンプと、
を備えることを特徴とする潅水装置。
【請求項2】
前記給水管は、平面視における前記容器内の一端縁部に給水するように配置される
請求項1に記載の潅水装置。
【請求項3】
平面視における前記容器内の他端縁部から排水するように配置された排水管を備える
請求項1に記載の潅水装置。
【請求項4】
平面視における前記容器の他端縁部に沿って形成された排水路を備え、
前記排水管は前記排水路に連通される
請求項3に記載の潅水装置。
【請求項5】
前記容器の底面部の一端縁部から他端縁部にかけて下り勾配が設けられる
請求項1に記載の潅水装置。
【請求項6】
前記容器から排出された水を浄化する浄化装置を備える
請求項1に記載の潅水装置。
【請求項7】
前記吸水層は、粗目の火山砂利からなる下側の第1層と、細目の火山砂利からなる上側の第2層とを含む
請求項1に記載の潅水装置。
【請求項8】
前記給水管は、前記吸水層に埋設されている
請求項1~7のいずれか一項に記載の潅水装置。
【請求項9】
前記給水管は、前記吸水層の底部に埋設されている
請求項1~7のいずれか一項に記載の潅水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は潅水装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人工芝に天然芝を組み合わせた芝生構造が公知である。この芝生構造は、例えばフットサル等の競技を行う競技場に適用可能で、通常の人工芝よりも競技者の負担を減らす等の点でメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでこうした芝生構造は、天然芝を含むため、潅水を行わなければならない。一方、芝生構造が広面積に及んだ場合、上水を使った潅水だと上水の使用量が多量になる欠点がある。
【0005】
そこで本開示は、かかる事情に鑑みて創案され、その目的は、人工芝と天然芝を含む芝生構造に対して上水を使用せずに潅水を行うことができる潅水装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一の態様によれば、
容器と、
前記容器内に形成された吸水層と、
前記吸水層の上に形成され、人工芝と天然芝を含む芝生層と、
前記容器から排出された水を貯留するタンクと、
前記芝生層に給水するための給水管と、
前記タンク内の水を前記給水管に送るポンプと、
を備えることを特徴とする潅水装置が提供される。
【0007】
好ましくは、前記給水管は、平面視における前記容器内の一端縁部に給水するように配置される。
【0008】
好ましくは、前記潅水装置は、平面視における前記容器内の他端縁部から排水するように配置された排水管を備える。
【0009】
好ましくは、前記潅水装置は、平面視における前記容器の他端縁部に沿って形成された排水路を備え、
前記排水管は前記排水路に連通される。
【0010】
好ましくは、前記容器の底面部の一端縁部から他端縁部にかけて下り勾配が設けられる。
【0011】
好ましくは、前記潅水装置は、前記容器から排出された水を浄化する浄化装置を備える。
【0012】
好ましくは、前記吸水層は、粗目の火山砂利からなる下側の第1層と、細目の火山砂利からなる上側の第2層とを含む。
【0013】
好ましくは、前記給水管は、前記吸水層に埋設されている。
【0014】
好ましくは、前記給水管は、前記吸水層の底部に埋設されている。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、人工芝と天然芝を含む芝生構造に対して上水を使用せずに潅水を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本開示の実施形態に係る潅水装置を示す平面図である。
【
図5】給水管を概略的に示す
図1のV矢視図である。
【
図6】芝生層を裏側から見たときの概略底面図である。
【
図7】
図6のVII-VII線断面を示す模式図である。
【
図8】
図6のVIII-VIII線断面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本開示の実施形態を説明する。なお本開示は以下の実施形態に限定されない点に留意されたい。
【0018】
図1は、本実施形態に係る潅水装置を示す平面図である。
図2は
図1のII-II線断面図であり、
図3は
図1のIII-III線断面図である。
図2の構造と
図3の構造は類似しているので、以下基本的に
図2の構造を参照して説明を行う。便宜上、前後左右上下の各方向を図示の通り定める。上下方向は鉛直方向の上下方向と一致する。
【0019】
潅水装置100は、容器1と、容器1内に形成された吸水層2と、吸水層2の上に形成され、人工芝と天然芝を含む芝生層3とを備える。また潅水装置100は、容器1から排出された水を貯留するタンク4と、芝生層3に給水するための給水管5と、タンク4内の水を給水管5に送るポンプ6とを備える。
【0020】
すなわち、潅水装置100は、芝生層3への潅水後に容器1から排出された水をタンク4に貯留し、この貯留した水を再利用して芝生層3に潅水する再循環式潅水システムを構成する。潅水装置100における水の流れを矢印Fで示す。
【0021】
容器1は、プールまたは鉢とも称され、上方が開放された遮水性の容器である。容器1の平面視形状は、前後方向の長さが左右方向の幅よりも長い長方形である。
【0022】
容器1は、地面をなす地盤7を掘って形成された皿状の凹部7A内に形成されている。容器1は、その底面部を形成し凹部7Aの底面部上に形成された基礎Kと、容器1の前端縁部、後端縁部および左端縁部を形成し図示しない支柱により起立状態で支持された平面視コ字状の枠板8と、容器1の右端縁部を形成し基礎K上にモルタル9を介して取り付けられたU形側溝10と、枠板8および側溝10によって囲まれた領域内で基礎K、枠板8および側溝10の表面上に敷設された遮水シート11とを備える。つまり容器1は、その前後左右の内側面部と底面部とに遮水シート11が敷設されることによって遮水性ないし防水性を与えられている。
【0023】
なお容器1の構成はこれに限られない。例えば、プラスチックまたはコンクリート等で一体に形成した容器であってもよい。また本実施形態の容器1は全体が水を通さない遮水性であるが、例えば一般的な植木鉢のように、一部のみ通水もしくは透水可能な容器であってもよい。
【0024】
基礎Kは、凹部7Aの底面部上に再生クラッシャランを所定厚さ敷き詰めることにより形成されている。なお基礎Kの材質は再生クラッシャランに限定されず、任意である。
【0025】
枠板8は木製であり、地盤7に打ち込まれた複数の支柱(図示せず)に固定されている。枠板8は、容器1の前端縁を画成する前板8Aと、容器1の後端縁を画成する後板8Bと、容器1の左端縁を画成する左板8Cとにより、平面視でコ字状に形成されている。また枠板8は、容器1を前後方向に等しく2分割するための仕切板8Dも備える。これら板の下端部は基礎Kに埋め込まれている。
【0026】
U形側溝10は、一般に市販されているコンクリート製のもので、容器1の右端縁を画成する。なお左端縁および右端縁は、それぞれ特許請求の範囲にいう一端縁および他端縁に相当する。
【0027】
側溝10は、容器1の右端縁部に沿って配置され、容器1よりも前方および後方に若干長く延びる。側溝10は、潅水後に容器1から排出された水をタンク4に向かって流す排水路12を形成する。側溝10内の排水路12は上方が開放された明渠である。しかしながら排水路12は、地中に形成された暗渠であってもよい。
【0028】
遮水シート11は、水を透過しない柔軟な樹脂製シートである。施工時に遮水シート11は、基礎Kと、枠板8および側溝10との表面に概ね重ね合わされる。その後、凹状の遮水シート11内に、吸水層2をなす後述の砂利が敷き詰められることにより、遮水シート11が基礎Kと、枠板8および側溝10との表面に密着される。これにより、平面視で長方形かつ一定深さの容器1が形成される。
【0029】
容器1は仕切板8Dによって前側容器1Aと後側容器1Bとに分割されている。各容器に対し遮水シート11が個別に設置されることで遮水性の容器が2つ出来上がる。前側容器1Aの遮水シート11は仕切板8Dの前面部に重ね合わされ、後側容器1Bの遮水シート11は仕切板8Dの後面部に重ね合わされる。
【0030】
容器1の底面部13には、その左端縁部から右端縁部にかけて、僅かな大きさ(例えば1%)の下り勾配が設けられている。本実施形態の場合、基礎Kに下り勾配を設けることにより、底面部13の下り勾配が形成される。
【0031】
吸水層2は、多孔質材料により形成され、本実施形態では多孔質の粒材、具体的には火山砂利により形成されている。本実施形態の吸水層2は、容器1内に火山砂利を敷き詰めることにより形成されている。本実施形態の吸水層2は、前側容器1Aと後側容器1Bに対し個別に設けられる。
【0032】
本実施形態において、吸水層2は2層構造とされ、粗目の火山砂利からなる下側の第1層2Aと、細目の火山砂利からなる上側の第2層2Bとを含む。
図2の例において、第2層2Bの厚さH2Bは第1層2Aの厚さH2Aより大きくされ、H2B=2×H2Aとされている。
【0033】
なお、吸水層2の構造はこれに限定されない。例えば吸水層2は、火山砂利以外の多孔質材料もしくは粒材により形成されてもよい。この場合、後述するような浄水機能を有する材料であるのが好ましい。また吸水層2は、単層構造、または2層より多い多層構造とされてもよく、各層の厚さも任意に変更可能である。
【0034】
芝生層3は、人工芝に天然芝を組み合わせた芝生構造、すなわちハイブリッド芝生により形成されている。
図6には、芝生層3を裏側から見たときの概略底面図を示す(但し天然芝の根は省略)。
図7は、
図6のVII-VII線断面を模式的に示し、
図8は、
図6のVIII-VIII線断面を模式的に示す。
【0035】
図6および
図7に示すように、人工芝41は、基材42と、パイル43と、バッキング材44とを備える。基材42は水を通過もしくは透過可能な柔軟な樹脂製シートであり、本実施形態では樹脂製のメッシュシートにより形成されている。
【0036】
パイル43は、天然芝の葉を模した緑色のひも状の部材であり、樹脂材料により形成されている。パイル43は、U字状に折り返された状態で基材42の離れた2箇所を裏側(下側)から表側(上側)に向かって貫通している。なお図では便宜上、1本のパイル43が折り返されて基材42を貫通しているが、実際には複数本のパイル43が束ねられた状態で折り返され、基材42を貫通している。パイル43の折り返し部45は基材42の裏側に密着され、基材42の表側には所定長さのパイル43が突出されている。
【0037】
このように基材4に取り付けられるパイル43は、基材42の縦糸方向aに沿って、等間隔で複数整列されている。
【0038】
バッキング材44は、樹脂材料により形成され、基材42の裏側に塗布により接着される。そしてバッキング材44は、縦糸方向aに延びる帯状に形成され、一列のパイル43の折り返し部45に接着されてこれを連続的に覆う。こうしてバッキング材44は、パイル43を基材42に固定すると共に、パイル43を下方から支持する裏打ちとして機能する。
【0039】
一列のパイル43と帯状のバッキング材44との組み合わせ(パイル固定部46という)は、縦糸方向aに垂直な横糸方向bにおいて、等しい間隔を隔てて複数形成されている。パイル固定部46同士の間では基材42が露出しており、ここに天然芝が植えられて、根が基材42を貫通している。
【0040】
図8に示すように、天然芝47は、葉48と根49を有する。葉48は基材42の表側で上方に向かって延び、根49は基材42の網目を通過して吸水層2、特に上側の第2層2B内を下方に向かって延びる。基材42の表側には砂50が堆積され、この砂50の上に人工芝41のパイル4と天然芝47の葉48とが突出している。葉48が日光等の光に当たり、根49が吸水層2内の水を吸収することで、天然芝47は生育可能である。
【0041】
なお、ここで述べた芝生層3の構造は一例であり、他にも様々な構造の芝生層3を採用することができる。
【0042】
図2に示すように、芝生層3の上端の高さは容器1の上端の高さと等しくされている。また芝生層3の厚さH3は、第1層2Aの厚さH2Aおよび第2層2Bの厚さH2Bより小さくされている。
【0043】
本実施形態の芝生層3も、前側容器1Aと後側容器1Bに対し個別に設けられる。容器1、吸水層2および芝生層3の組み合わせを芝生アセンブリと称した場合、本実施形態の芝生アセンブリは実質的に前側のものと後側のものとの2つが設けられる。
【0044】
図1および
図4に示すように、タンク4は、地盤7に埋設されたマンホールにより形成されている。タンク4は、その天板部4Aに形成され人が出入りする出入口14と、出入口14を開放可能に塞ぐ蓋15と、タンク4内での人の昇降に用いられる手すり16と、天板部4Aに設けられタンク4内の水位を確認するための貫通孔からなる点検口17とを備える。
【0045】
ポンプ6は、タンク4内の底部4Cに設置された水中ポンプである。このポンプ6から給水管5が延びている。
【0046】
またタンク4には、オーバーフロー管18が取り付けられる。オーバーフロー管18は、タンク4内の水位が所定の上限レベルを超えたときにタンク4内の水を逃がすためのものであり、地盤7に埋設されている。オーバーフロー管18の出口は、地盤7に埋設された図示しない透水管に接続されている。オーバーフロー管18を通じて透水管に流れ込んだオーバーフロー水はそのまま地中に浸透される。なおオーバーフロー管18の出口は、雨水排出管または雨水排出枡に接続されてもよい。
【0047】
給水管5は、例えば塩ビ管により形成されている。給水管5は、タンク4内でポンプ6から上向きに延びる上昇部5Aと、上昇部5Aから直角に折れ曲がって水平方向に延び、タンク4を貫通して地盤7内を容器1付近まで延びる水平部5Bとを有する。また給水管5は、
図5にも概略的に示すように、容器1の左端縁部において吸水層2に埋設された出口管部5Cと、出口管部5Cと水平部5Bの下流端とを連結する連結部5Dとを有する。
【0048】
前側容器1Aと後側容器1Bの内部に出口管部5Cが個別に配置されている。出口管部5Cは、前側容器1Aと後側容器1Bの左端縁部の近傍に、かつ左端縁部に沿って、前後方向に延びている。
【0049】
特に、出口管部5Cは、吸水層2に埋設されており、芝生層3より下方の位置に配置されている。また出口管部5Cは、芝生層3からの距離ができるだけ遠くなるよう、吸水層2の底部に埋設されている。
【0050】
出口管部5Cには、右側に向かって開口する複数の出口19が出口管部5Cの長手方向に等間隔で設けられている。これら出口19から吸水層2内に給水が行われる。出口19は出口管部5Cに設けられた孔からなる。
【0051】
前後の出口管部5Cは、仕切板8Dを跨いでコ字状もしくは略U字状に延びる出口連結管5Eにより連結されている。
【0052】
連結部5Dは、水平部5Bの下流端から上昇して地上に脱出する上昇部5Fと、上昇部5Fの上端から出口管部5Cの真上で空中を出口管部5Cと平行に延びる水平部5Gと、前後の出口管部5Cの中間位置と水平部5Gとを連結する前後の連結垂直管5Hとを有する。
【0053】
こうした出口管部5Cと連結部5Dの略はしご状の配管構造により、水平部5Bを通じて送られてきた水を均等な品質および量で複数の出口19から吸水層2に供給することができる。
【0054】
なお、連結部5Dは、枠板8に固定された図示しない支柱により支持されている。前側の出口管部5Cの前端と後側の出口管部5Cの後端とは閉止されている。
【0055】
潅水装置100は、容器1内の右端縁部から排水するように配置された排水管20を備える。排水管20は排水路12に連通される。
【0056】
排水管20は、例えば塩ビ管により形成され、前側容器1Aと後側容器1Bにそれぞれ2本ずつ設けられる。排水管20は、側溝10の左側壁部10Aと、これを覆う遮水シート11とを貫通して左側壁部10Aにモルタル等により固定されている。排水管20の入口部は左側、すなわち給水管5の出口管部5Cに向けられている。排水管20の出口部は、排水路12内で後方下流側すなわちタンク4側に向かって折曲されている。この出口部には手動のバルブ21が取り付けられている。バルブ21の開弁量を調節することで、排水量を調節し、吸水層2内に含まれる水の量を調節できる。
【0057】
側溝10の後端ないし下流端には、側溝10より深い泥溜め枡22が接続されている。この泥溜め枡22も側溝10と同様の断面U字状かつコンクリート製であり、上方に開放されている。泥溜め枡22も排水路12の一部を構成する。泥溜め枡22の後端は後端閉止板24により閉止される。なお側溝10の前端は前端閉止板25により閉止される。
【0058】
泥溜め枡22の底部には、吸水層2から排出された水すなわち排水を浄化する浄化装置23が設けられる。浄化装置23は活性炭を含み、排水を通過させて浄化するようになっている。浄化後の水は、戻り管26を通じてタンク4に送られる。このように浄化装置23は排水路12に設けられ、排水をタンク4に戻す前に浄化するようになっている。
【0059】
戻り管26は、例えば塩ビ管により形成され、地盤7に埋設されている。戻り管26の入口部は後端閉止板24を貫通して浄化装置23に接続され、戻り管26の出口部はタンク4の側壁4Bを貫通してタンク4内に開放される。
【0060】
図1に示すように、タンク4の側壁4Bには、必要に応じてタンク4内に上水(水道水)を給水するための上水管27が接続されている。このように上水を供給可能とすることで、例えば真夏等の渇水期間や初期生育期間にタンク4内の水が不足気味になる場合においても十分に潅水を行うことができる。
【0061】
図3に示すように、前側容器1Aおよびその内部構造は、
図2に示した後側容器1Bおよびその内部構造と大略同様である。以下相違点について説明すると、前側容器1Aは後側容器1Bより深さが浅く、前側容器1A内の第2層2Bの厚さH2Baは後側容器1B内の第2層2Bの厚さH2Bより小さくされる。本実施形態の場合、H2Ba=(1/2)×H2Bとされている。
【0062】
前側容器1A内の第1層2Aおよび芝生層3の厚さH2AaおよびH3aは、後側容器1B内の第1層2Aおよび芝生層3の厚さH2AおよびH3と等しくされる。それ故、前側容器1A内では、第1層2Aの厚さH2Aaと第2層2Bの厚さH2Baとが等しくされる。
【0063】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
【0064】
まず、本実施形態の芝生層3は、様々な用途に適用されることを意図されている。例えば、フットサル等の各種競技の競技場を初めとして、屋外、屋上もしくは屋内の公園もしくは各種施設の芝生、景観設備としての芝生等である。本実施形態の芝生層3はグリーンインフラへの適用に非常に有効である。
【0065】
タンク4内に貯留された水(貯留水)は、ポンプ6によって給水管5に送られる。そして水は、給水管5を流れた後、その出口19から排出される。
【0066】
この際、水は、上昇部5A、水平部5B、連結部5Dおよび出口管部5Cを順番に流れた後、出口管部5Cの複数の出口19から同時かつ一斉に排出される。連結部5Dにおいて、水は、水平部5Gから連結垂直管5Hを経て出口管部5Cに入り、出口管部5Cの長手方向に分配される。前後の出口管部5Cが出口連結管5Eにより連結されているので、水のやり取りは前後の出口管部5Cの間で行うことも可能である。
【0067】
このように特定箇所での水の滞留を抑制できるので、均一な量と質の水を複数の出口19から同時に排出することができる。
【0068】
水は、容器1内の左端縁部に位置された出口管部5Cの出口19から、容器1内の右端縁部に向かって排出される。排出された水は、容器1内の吸水層2に吸収されながら、ゆっくりと右端縁部に向かって流れる。このとき、左端縁部から右端縁部に向かう下り勾配が水の流れを助長する。吸水層2内に吸収された状態で流れる水は、吸水層2(火山砂利)が持つ浄化機能により、浄化される。
【0069】
吸水層2に吸収された水は、芝生層3の天然芝47にその根49から吸収される。これにより天然芝47への潅水、特に地中潅水もしくは鉢底潅水が行われる。この他、野天設置の場合には、降雨時に雨水による上方からの潅水を行うことが可能である。吸水層2内で根49に吸収されなかった余剰の雨水は、吸水層2内を下降する過程で吸水層2により浄化される。
【0070】
容器1内で右端縁部に到達した水は、排水管20を通じて容器1から排出される。このとき排出量をバルブ21で手動調節できる点は既に述べた通りである。
【0071】
排水管20から排出された水は、側溝10内の排水路12に一旦溜まり、排水路12内を後方下流側に向かって流れる。そして泥溜め枡22内で水から泥が分離される。その後、水は、浄化装置23により浄化され、戻り管26を通じてタンク4に戻される。水が浄化装置23により浄化された後にタンク4に貯留されるため、タンク4内での水の変質や藻の発生を大幅に抑制することができる。
【0072】
野天設置の場合で、激しい降雨により芝生層3の上に比較的多量の水が溜まることがある。この場合、ワイパー等の道具を使って芝生層3上の水を側溝10内に強制的に掻き出すことにより、溜まった水を早期に取り除き、芝生層3の利用を早期に復活させることができる。勿論、芝生層3上の水を自然の流れにより受動的に側溝10内に排出することも可能である。
【0073】
タンク4から供給した余剰の水の他に、余剰の雨水もタンク4に回収することができる。よって、雨水を利用してタンク4内の貯水量を増やすことができ、上水の使用量削減に有利である。
【0074】
芝生層3への給水は、ポンプ6をオンすることにより行われる。ポンプ6は、タイマースイッチ等を使って定時に自動でオンしてもよいし、手動でオンしてもよい。
【0075】
このように本実施形態によれば、人工芝41と天然芝47を含む芝生構造すなわち芝生層3に対して、上水を使用せずに潅水を行うことができる。これにより上水の使用を不要もしくは限定的とし、上水生成に要するエネルギーや上水使用料金を低減することができる。特に、芝生層3が競技場や公園に使用された場合等、芝生層3が広面積に及んだ場合には上記のメリットが大である。
【0076】
また、本実施形態には次の特徴もある。
【0077】
本実施形態において、給水管5の出口管部5Cは吸水層2に埋設されており、特に、吸水層2の底部に埋設されている。よって、出口管部5Cの位置は芝生層3よりも下方となり、特に、芝生層3から最大限離間した下方となる。
【0078】
タンク4内には容器1から排出された余剰水が貯留されるため、タンク4内の水にはレジオネラ菌が含まれることがある。本実施形態では、タンク4内の水を上方潅水により芝生層3に直接供給するのではなく、芝生層3より下方の吸水層2に供給し、地中潅水もしくは鉢底潅水としている。吸水層2に供給された水は、大部分が吸水層2内で天然芝47に吸収されてしまうし、吸水層2の浄化機能によってレジオネラ菌が減殺される。また芝生層3の基材42によって、これを通過する水の上昇が大幅に規制される。これにより、タンク4内の水が芝生層3の表面に付着するのを抑制でき、芝生層3の利用者にレジオネラ菌が付着するのを抑制できる。
【0079】
出口管部5Cを吸水層2の底部に埋設した場合には、供給された水が芝生層3の表面まで上昇して到達するのを最大限遅らせ、あるいは回避することができる。よって芝生層3の利用者にレジオネラ菌が付着するのを最大限抑制できる。
【0080】
出口管部5Cは容器1内の左端縁部に給水するように配置される。これによれば、例えば出口管部5Cが容器1内の平面視における中央部に給水する場合よりも、供給された水(特に吸水層2によって浄化されていない供給直後の水)が芝生層3の利用者に触れるのを抑制できる。容器1の左端縁部では中央部より利用者が少ないと考えられるからである。
【0081】
一方、本実施形態の潅水装置100は、最近頻繁に起こるゲリラ豪雨等の集中豪雨への対策としても効果的である。すなわち、集中豪雨が起こると通常の天然芝ではその上に雨水が溜まってしまうが、本実施形態の潅水装置100だと雨水を容器1内に浸水させて最終的にタンク4に回収することができる。よって芝生層3上での雨水の滞留を抑制でき、また周囲の過剰の雨水をも回収して水害を抑制することができる。特に、緑地が少ない都市部での水害対策に有効である。
【0082】
また、通常の天然芝だとぬかるんだ状態で人等が入ったときに陥没し易く、痛みやすいが、本実施形態だと、芝生層3が人工芝41を含み、かつ吸水層2および基礎Kにより強固に支持されているため、陥没し難く、痛み難い。よって耐久性に優れた芝生層3を提供することができる。
【0083】
もっとも、芝生層3上に溜まった水はすぐに吸水層2に浸透してしまうので、水はけの良い芝生層3を提供することができる。
【0084】
また、本実施形態の潅水装置100は、設置場所が比較的自由なので、緑地創出による微気象改善やヒートアイランド現象緩和等に有効である。また1年を通じて緑のコミュニティ空間を創出できる。
【0085】
以上、本開示の実施形態を詳細に述べたが、本開示の実施形態および変形例は他にも様々考えられる。
【0086】
(1)例えば、天然芝には、生育促進のため、リンを含む肥料が与えられることがある。このリンを含む排水がそのままタンク4に回収されてしまうと、タンク4内の水に藻が過剰に発生する虞がある。そこで浄化装置23は、リン吸収材を含むのが好ましい。これにより、排水に混入したリンを浄化装置23により吸収し除去することができる。そしてリンを除去した排水をタンク4に回収することができ、タンク4内の水に藻が発生するのを大幅に抑制することができる。
【0087】
(2)平面視における容器1、吸水層2および芝生層3の面積は、図示例の大きさに限らず、用途に合わせて自由に設定できる。またそれらは分割されていなくてもよく、複数でなくてもよい。
【0088】
本開示の実施形態は前述の実施形態のみに限らず、特許請求の範囲によって規定される本開示の思想に包含されるあらゆる変形例や応用例、均等物が本開示に含まれる。従って本開示は、限定的に解釈されるべきではなく、本開示の思想の範囲内に帰属する他の任意の技術にも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
1 容器
2 吸水層
2A 第1層
2B 第2層
3 芝生層
4 タンク
5 給水管
6 ポンプ
12 排水路
20 排水管
23 浄化装置
100 潅水装置