(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024007508
(43)【公開日】2024-01-18
(54)【発明の名称】光モジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/02 20060101AFI20240110BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L23/02 Z
H01S5/024
H01L23/02 F
H01L23/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023108381
(22)【出願日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2022107892
(32)【優先日】2022-07-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】水野 泰孝
(72)【発明者】
【氏名】黒川 宗高
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MA01
5F173MB02
5F173MC13
5F173ME03
5F173ME12
5F173ME25
(57)【要約】
【課題】金属製のリッドがシーム溶接されるパッケージの反りを抑制することができる光モジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る光モジュールの製造方法は、パッケージの開口部に金属製のリッドが接合される光モジュールの製造方法である。光モジュールの製造方法は、開口部にリッドを載せる工程と、リッドの上に金属ブロックを載せる工程と、金属ブロックが載せられたリッドを開口部のシールリングにシーム溶接する工程と、金属ブロックをリッドの上から除去する工程と、を備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージの開口部に金属製のリッドが接合される光モジュールの製造方法であって、
前記開口部に前記リッドを載せる工程と、
前記リッドの上に金属ブロックを載せる工程と、
前記金属ブロックが載せられた前記リッドを前記開口部のシールリングにシーム溶接する工程と、
前記金属ブロックを前記リッドの上から除去する工程と、
を備える、
光モジュールの製造方法。
【請求項2】
前記シーム溶接する工程では、
前記シーム溶接によって前記リッドと前記シールリングとの接合部を生成し、
前記金属ブロックを載せる工程では、
前記リッドの厚さ方向から見た場合における前記金属ブロックから前記接合部までの距離が0.8mm以上且つ3mm以下となるように前記金属ブロックが載せられる、
請求項1に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項3】
前記金属ブロックは銅によって構成されている、
請求項1又は請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項4】
前記金属ブロックは2mm以上の厚さを有し、
前記金属ブロックを載せる工程では、
前記金属ブロックの厚さ方向が前記リッドの厚さ方向に一致するように前記金属ブロックが載せられる、
請求項1又は請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項5】
前記金属ブロックを載せる工程では、可撓性を有する放熱部材を介して前記金属ブロックが載せられる、
請求項1又は請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【請求項6】
前記リッドの厚さ方向からみたときに前記リッドは矩形状を呈し、
前記シーム溶接する工程では、前記厚さ方向から見た場合における前記リッドの辺の中央から端部に向かって前記シーム溶接が行われる、
請求項1又は請求項2に記載の光モジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光モジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、セラミックパッケージ、金属製のリッド、及びスリーブを備えた光モジュールが記載されている。セラミックパッケージには光素子が搭載されている。リッドはセラミックパッケージの開口を覆う。スリーブは、ジョイントスリーブを介してリッドに連結されている。リッドは、セラミックパッケージに接合される平坦部と、ジョイントスリーブが嵌合される円筒部とを有する。平坦部と円筒部との間に応力緩和部が形成されている。
【0003】
リッドのセラミックパッケージへの接合は、シーム溶接によって行われる。シーム溶接では、溶接用のローラ電極が金属製のリッドの平坦部の周縁に押し当てられる。ローラ電極の押し当てにより、平坦部の周縁部分と金属製のシールリングとの間には電圧が印加されて電流が流れ、その接触界面の接触抵抗によってジュール熱が発生し加熱される。このシーム溶接によって、リッドの平坦部とシールリングとの接合部分は1000℃程度の高温となり、その後常温の25℃まで冷却される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パッケージの開口部にリッドを接合するために、リッドを当該開口部のシールリングにシーム溶接する場合には、リッドの全体が高温になることがある。リッドが加熱されて高温になると、リッドの熱収縮によってパッケージに接合されたリッドに残留応力が発生し、この残留応力によってパッケージに反りが生じる可能性がある。パッケージに反りが生じると、光モジュールにおける光の結合効率が低下することが懸念される。
【0006】
本開示は、金属製のリッドがシーム溶接されるパッケージの反りを抑制することができる光モジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る光モジュールの製造方法は、パッケージの開口部に金属製のリッドが接合される光モジュールの製造方法である。光モジュールの製造方法は、開口部にリッドを載せる工程と、リッドの上に金属ブロックを載せる工程と、金属ブロックが載せられたリッドを開口部のシールリングにシーム溶接する工程と、金属ブロックをリッドの上から除去する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、金属製のリッドがシーム溶接されるパッケージの反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の光モジュールの内部構造を模式的に示す平面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る光モジュールの製造方法に用いられるローラ電極、及び金属ブロックを示す斜視図である。
【
図4】
図4は、パッケージの底面の変形と光信号の結合損失との関係の例を示すグラフである。
【
図5】
図5は、ローラ電極、金属ブロック及び光モジュールを示す斜視図である。
【
図6】
図6は、金属ブロックから接合部までの距離と、シーム溶接時の接合部の温度との関係の例を示すグラフである。
【
図7】
図7は、金属ブロックから接合部までの距離と、シーム溶接前後のパッケージの変形量との関係の例を示すグラフである。
【
図8】
図8は、金属ブロックの厚さとシーム溶接時の接合部の温度との関係の例を示すグラフである。
【
図9】
図9は、金属ブロックの厚さとシーム溶接前後のパッケージの変形量との関係の例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、実施形態に係る光モジュールの製造方法の工程を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態に係る光モジュールの製造方法のシーム溶接の工程の例を示す図である。
【
図12】
図12は、実施形態に係る光モジュールのリッド、パッケージ及びベースの金属ブロックの使用有無におけるシーム溶接時の温度上昇の実測値を示すグラフである。
【
図13】
図13は、実施形態に係る光モジュールのリッド、パッケージ及びベースの金属ブロックの使用有無におけるシーム溶接時の温度上昇の解析値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示に係る光モジュールの製造方法の実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る光モジュールの製造方法は、(1)パッケージの開口部に金属製のリッドが接合される光モジュールの製造方法である。光モジュールの製造方法は、開口部にリッドを載せる工程と、リッドの上に金属ブロックを載せる工程と、金属ブロックが載せられたリッドを開口部のシールリングにシーム溶接する工程と、金属ブロックをリッドの上から除去する工程と、を備える。
【0011】
この製造方法では、パッケージの開口部にリッドが載せられ、リッドの上に金属ブロックが載せられる。金属ブロックが載せられたリッドがパッケージの開口部にシーム溶接される。よって、シーム溶接のときに生じる熱をリッドから金属ブロックに逃がすことができる。従って、リッドの全体が高温になりすぎることを抑制できるので、リッドの残留応力によってパッケージに反りが生じることを抑制することができる。パッケージに反りを生じにくくすることができるので、光モジュールにおける光信号の結合効率の低下を抑制することができる。
【0012】
(2)上記(1)において、シーム溶接する工程では、シーム溶接によってリッドとシールリングとの接合部を生成してもよく、金属ブロックを載せる工程では、リッドの厚さ方向から見た場合における金属ブロックから接合部までの距離が0.8mm以上且つ3mm以下となるように金属ブロックが載せられてもよい。金属ブロックから接合部までの距離が0.8mm以上である場合、接合部から金属ブロックにジュール熱が逃げすぎて接合部の温度が十分に上がらないという事象をより確実に回避できる。金属ブロックから接合部までの距離が3mm以下である場合、接合部から金属ブロックに十分にジュール熱を逃がすことができるので、接合に必要な加熱を行いながらパッケージの反りをより確実に抑制できる。
【0013】
(3)上記(1)又は(2)において、金属ブロックは銅によって構成されていてもよい。この場合、金属ブロックがより熱伝導性が高い銅によって構成されているので、リッドから余剰なジュール熱が金属ブロックを加熱するのに消費され、接合部以外のリッドの温度上昇をより確実に低減することができる。
【0014】
(4)上記(1)から(3)のいずれかにおいて、金属ブロックは2mm以上の厚さを有してもよく、金属ブロックを載せる工程では、金属ブロックの厚さ方向がリッドの厚さ方向に一致するように金属ブロックが載せられてもよい。この場合、金属ブロックの厚さが2mm以上であることによって金属ブロックの熱容量を大きくできるので、リッドからの余剰なジュール熱による金属ブロックの温度上昇をより小さくできる。その結果、パッケージの反りをより確実に抑制できる。
【0015】
(5)上記(1)から(4)のいずれかにおいて、金属ブロックを載せる工程では、可撓性を有する放熱部材を介して金属ブロックが載せられてもよい。この場合、リッドに直接金属ブロックが載せられる場合と比較して、リッドから金属ブロックへの放熱のばらつきを抑えることができる。従って、リッドから金属ブロックへの熱をより伝わりやすくできるので、更なる放熱性の向上に寄与する。
【0016】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、リッドの厚さ方向から見たときにリッドは矩形状を呈し、シーム溶接する工程では、厚さ方向から見た場合におけるリッドの辺の中央から端部に向かってシーム溶接が行われてもよい。この場合、リッドの辺の中央から端部に向かってシーム溶接が行われることにより、シーム溶接による接合部の歪みの差をリッドの辺の端部において吸収できる。従って、パッケージとリッドとの間に隙間が生じる可能性をより確実に低減できる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
実施形態に係る光モジュールの製造方法の具体例を以下で図面を参照しながら説明する。なお、本発明は、以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲内に含まれる全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。図面は、理解の容易化のため、一部を簡略化又は誇張して描いている場合があり、寸法比率等は図面に記載のものに限定されない。
【0018】
図1は、本実施形態に係る製造方法が適用される具体例としての光モジュール1を示す斜視図である。
図2は、光モジュール1の内部構造を模式的に示す平面図である。
図1及び
図2に示されるように、光モジュール1は、直方体状のパッケージ2、第1光レセプタクル3、第2光レセプタクル4、及びリッド5を備える。
図2は、光モジュール1からリッド5が外された状態を模式的に示す平面図である。
【0019】
パッケージ2は、例えば、気密性を有するセラミック、ガラス、及び金属等の材料のうち少なくとも一つが用いられる。本実施形態では、パッケージ2はセラミック製である。パッケージ2は、パッケージ2の長手方向である方向D1、パッケージ2の幅方向である方向D2、及びパッケージ2の高さ方向である方向D3に延在している。例えば、方向D1、方向D2及び方向D3は互いに直交している。例えば、パッケージ2の方向D3への長さ(高さ)は、パッケージ2の方向D1への長さの1/3以下である。パッケージ2の方向D2への長さ(幅)は、パッケージ2の方向D1への長さより短い。方向D3からのパッケージ2の平面視において、長辺に沿った方向が長手方向に相当し、短辺に沿った方向が横方向に相当する。
【0020】
パッケージ2は、方向D1の端部に位置する一対の第1側壁2bと、方向D2の端部に位置する一対の第2側壁2cと、方向D3の端部に位置しており光モジュール1の複数の部品10が搭載される底壁2dとを有する。一対の第1側壁2b、一対の第2側壁2c及び底壁2dに囲まれた空間にはパッケージ2の内部空間2Aが画成される。内部空間2Aには光モジュール1の複数の部品10が収容される。
【0021】
第1光レセプタクル3及び第2光レセプタクル4は、例えば、方向D2に沿って並んでいる。第1光レセプタクル3及び第2光レセプタクル4は、一対の第1側壁2bのうちの一方を方向D1に貫通している。複数の部品10は、例えば、波長可変レーザ11、内部光学系12、光受信部13、光送信部14、TIA(Trans Impedance Amplifier)15、及びドライバ16を含む。内部光学系12は、複数の光学部品を含む。例えば、内部光学系12は、レンズ、ミラー、ビームスプリッタ、及び光学フィルタの少なくともいずれかを含む。
【0022】
例えば、第1光レセプタクル3には、光モジュール1の外部から光信号L1が入力される。光信号L1は、第1光レセプタクル3を介して光モジュール1の内部空間2Aに入力される。波長可変レーザ11はCW光(Continuous Wave Laser)L3を内部光学系12に出力する。内部光学系12では、波長可変レーザ11、光受信部13及び光送信部14の位置に合わせて内部光学系12の複数の部品間の光路について所定の結合効率を得られるように、各光学部品の位置及び角度が調整される。例えば、内部光学系12は、光信号L1を光受信部13に出力し、CW光L3を2つに分けて光受信部13及び光送信部14のそれぞれに出力する。光受信部13は、例えば、光90度ハイブリッド及びPD(Photo Diode)を含む。光信号L1、及び2つに分割されたCW光L3のうちの一方は、光90度ハイブリッドに入力される。光90度ハイブリッドは、光信号L1及びCW光L3から生成した光信号をPDに出力する。PDは、光90度ハイブリッドから出力された光信号に応じて受信信号を生成する。PDによって生成された受信信号(例えば、光電流)はTIA15に伝送される。ドライバ16は、例えば、光送信部14に電気信号(駆動信号)を供給する。光送信部14は、ドライバ16から受けた電気信号を光信号L2に変換し、光信号L2を内部光学系12に出力する。光送信部14は、例えば、光変調器を備える。光変調器は、2つに分割されたCW光L3のうちの他方を電気信号に応じて変調して光信号L2を生成する。内部光学系12は、光送信部14からの光信号L2を第2光レセプタクル4を介して光モジュール1の外部に出力する。
【0023】
パッケージ2は、方向D3における底壁2dとは反対側を向く開口部2Cを有する。内部空間2Aは開口部2Cの内側に形成されており、開口部2Cの中に前述した複数の部品10が収容される。例えば、複数の部品10は、開口部2Cを介して内部空間2Aの中に配置される。例えば,内部光学系12は、内部空間2Aにおいて底壁2dの上に実装される。リッド5は、例えば、金属製である。一例として、リッド5は、コバールによって構成されている。また、リッド5は、ニッケルと金の合金によって構成されていてもよい。リッド5は、矩形状を呈する。リッド5は、例えば、平板状の形状を有する。一例として、リッド5の厚さ(方向D3への長さ)は0.1mmである。リッド5は、例えば、方向D1及び方向D2の双方に延在する上面5bと、上面5bに交差する側面5cとを有する。例えば、側面5cは、方向D1に延在する第1側面5dと、方向D2に延在する第2側面5fとを含む。
【0024】
リッド5は開口部2Cを塞ぐようにパッケージ2に接合されて内部空間2Aを気密封止する。パッケージ2では、第1側壁2bおよび第2側壁2cの上部に開口部2Cを取り囲んで金属製のシールリング2eが接合されており、当該シールリング2eを介してリッド5がパッケージ2に接合される。リッド5のパッケージ2への接合はシーム溶接によって行われる。
図3は、リッド5及びパッケージ2にシーム溶接を行う状態を示す斜視図である。シーム溶接では、溶接用のローラ電極21がリッド5を方向D3に沿ってシールリング2eに押し当てた状態でローラ電極21が方向D1又は方向D2に沿って移動して行われる。具体的には、一対のローラ電極21のうちの一方がリッド5の方向D2の一端に接触し、一対のローラ電極21のうちの他方がリッド5の方向D2の他端に接触した状態でローラ電極21に電圧が印加されてそれぞれ回転しながら方向D1に沿って移動する。このとき、ローラ電極21に押さえられたリッド5とシールリング2eとの間に電圧が印加されて電流が流れ、リッド5及びシールリング2eの接触界面の接触抵抗によりジュール熱が発生する。このジュール熱は、リッド5及びシールリング2eに施されたニッケル(Ni)メッキ又はニッケル(Ni)/金(Au)メッキを加熱して溶融させ、Auロウ材が形成されてパッケージ2にリッド5が接合される。接合部は、一対のローラ電極21の移動とともにリッド5の方向D1の一端から他端まで延びていき、それによりリッド5の方向D2に沿った2つの辺が接合される。同様に、リッド5の方向D1に沿った2つの辺も一対のローラ電極21を電流を流しながら移動させることにより接合される。
【0025】
上記のシーム溶接において、リッド5とシールリング2eとの接合部は、加熱により1000℃程度の高温となる。具体的には、ニッケルと金の合金によって構成されるリッド5の場合、接合部は融点である960℃以上に加熱され、シーム溶接後、常温(例えば25℃)まで冷却される。このとき、例えばジュール熱が周囲に伝わってリッド5の全体の温度上昇が生じ、リッド5が熱膨張した状態でシールリング2eに接合される。その後、常温に冷却されるとリッド5の熱収縮によってリッド5に残留応力が発生することがある。残留応力は、パッケージ2を変形してパッケージ2に反りを生じさせることがある。例えば、内部空間2Aにおいて内部光学系12を構成する部品が底壁2dに固定されている場合に、底壁2dが反ることによって各部品間の相対的な位置やそれぞれの部品の向きが変化しうる。従って、パッケージ2の変形(歪み)の影響によって、前述した内部光学系12において光信号の結合効率の低下が生じうる。また、本実施形態では、パッケージ2が気密封止された後には内部空間2A内に構成された内部光学系12の結合効率の調整ができないという問題が生じうる。上記の光信号の結合効率の低下が生じると、例えば、光信号L2の出力パワーが低下する可能性がある。
【0026】
図4は、パッケージ2の底面(底壁2d)の変形量と光信号の結合効率の損失との関係を示すグラフである。変形量は、底面が方向D3に反った場合の方向D3における最高部と最低部との間の距離(高低差)に相当する。結合効率は、変形量がゼロの場合の光信号L2の出力パワーの値を基準値0dBとしている。
図4に示されるように、パッケージ2の底壁2dの変形量が4μmを超えると、光信号の結合効率の損失が生じうる。従って、光信号の結合損失を生じさせないためには、パッケージ2の底壁2dの変形量が4μm以下であることが望ましい。なお、シーム溶接におけるリッド5の接合部の温度を低くすれば、リッド5の熱膨張が低減されてパッケージ2の変形量を抑えることは可能である。しかしながら、リッド5の接合部の温度を低くする方法では、リッド5とシールリング2eとの溶接が不十分となってリークが発生し、前述した気密封止が不完全となる可能性がある。本実施形態では、リークの発生を抑制すると共に後述するようにパッケージ2の変形量を抑えることが可能である。
【0027】
図3に示されるように、本実施形態に係る光モジュール1の製造方法では、シーム溶接を行う前にリッド5の上に金属ブロック30を載せる。接合部の加熱時にリッド5の上面5bに接触して金属ブロック30が載せられていることにより、リッド5の上面5bから金属ブロック30にジュール熱を逃がすことができ、リッド5の接合部以外の部分が加熱されることを抑制できる。すなわち、リッド5の接合部を融点以上に加熱して溶接を行うと共に、リッド5の接合部以外の温度上昇を抑制できるので、前述したリッド5の残留応力を低減できる。よって、リッド5の熱収縮に伴ってパッケージ2が変形することを回避でき、パッケージ2に反りを生じにくくすることができるので、シーム溶接による光信号の結合効率の低下を低減できる。なお、
図3では、第1光レセプタクル3及び第2光レセプタクル4が図示されているが、リッド5をパッケージ2にシーム溶接する際には、第1光レセプタクル3及び第2光レセプタクル4はパッケージ2に接続されていなくてもよく、
図3で示される位置に配置されていなくてもよい。例えば、リッド5がパッケージ2に接合されて気密封止された後に第1光レセプタクル3及び第2光レセプタクル4は調芯しながらパッケージ2に取り付けられてもよい。
【0028】
本実施形態において、金属ブロック30は、例えば、銅によって構成された銅ブロックである。一例として、金属ブロック30は無酸素銅によって構成されている。金属ブロック30は、リッド5の熱伝導率よりも大きい熱伝導率を有する金属材料によって構成されていることが好ましい。リッド5よりも銅によって構成された金属ブロック30に熱が伝わりやすいことにより、リッド5の接合部以外の温度上昇を効果的に抑制することができる。金属ブロック30は、例えば、直方体状を呈する。金属ブロック30は、リッド5側に向けられる第1面31と、第1面31とは反対側を向く第2面32と、一対のローラ電極21のそれぞれに対向する一対の第3面33と、方向D1を向く一対の第4面34とを有する。第1面31は金属ブロック30の下面に相当し、第2面32は金属ブロック30の上面に相当する。第3面33は金属ブロック30の方向D2を向く側面に相当し、第4面34は金属ブロック30の方向D1を向く側面に相当する。例えば、金属ブロック30は、放熱部材40を介してリッド5の上面5bに載せられる。このとき、第1面31が放熱部材40に接触する。放熱部材40は、例えば、方向D1及び方向D2の双方に延びるシート状を呈する放熱シートである。放熱シートは、リッド5から金属ブロック30への熱を伝えるために、可撓性を有して金属ブロック30の第1面31およびリッド5の上面5bに密着し、厚さが薄いものであることが好ましい。なお、放熱部材40は放熱ゲルであってもよい。金属ブロック30は、例えば、方向D3に沿ってリッド5の上面5bに載せられる。後述するように、金属ブロック30は、シーム溶接の前にリッド5の上面5bに載せられ、シーム溶接の後にリッド5の上面5bから方向D3に沿って除去される。第2面32には、突起(取っ手)が設けられていてもよい。取っ手があることによって、作業者が取っ手を持って金属ブロック30を扱うことで容易に作業を行うことができる。また、治具によってパッケージ2が固定され、固定されたパッケージ2に対して金属ブロック30がシーム溶接中に方向D1あるいは方向D2に動かないように治具によって固定されてもよい。
【0029】
前述したように、シーム溶接では、溶接用のローラ電極21がリッド5の両端をシールリング2eに押し当てた状態で行われる。
図5は、シーム溶接の状態を示す斜視図である。
図3及び
図5に示されるように、シーム溶接ではリッド5とシールリング2eとの接合部5gが生成される。リッド5の厚さ方向である方向D3から見た場合(方向D3からの平面視)における金属ブロック30から接合部5gまでの距離Kは、例えば、0.8mm以上且つ3mm以下である。
図3に示されるように、距離Kは、例えば、溶接時における金属ブロック30の第3面33とローラ電極21との距離に相当すると考えてもよい。シールリング2eが溶融してリッド5との接合部5gが形成されるので、方向D3からの平面視において、シーム溶接によって形成された接合部5gの形状はシールリング2eの形状と同じと考えてもよい。
【0030】
図6は、金属ブロック30から接合部5gまでの距離Kと接合部5gの接合時の温度との関係を示すグラフである。
図7は、距離Kとパッケージ2の変形量との関係を示すグラフである。
図7及び
図9において、「長手方向」とは、パッケージ2の長手方向(方向D1)における方向D3への変形(反り)を示しており、「横方向」とは、パッケージ2の横方向(方向D2)における変形を示している。
図6に示されるように、距離Kが0.6mmを下回ると、ローラ電極21がリッド5に接触している部分から金属ブロック30にジュール熱が逃げすぎて接合部5gの温度が融点(例えば960℃)まで上がらずに溶接が不完全となる可能性、及びローラ電極21が金属ブロック30に接触する可能性がある。距離Kが0.8mm以上である場合には、金属ブロック30へのローラ電極21の接触を抑制できると共に、接合部5gの温度が融点以上となるので溶接を確実に行うことができる。また、距離Kが3mmを超える場合、金属ブロック30へのジュール熱の熱伝導が相対的に少なくなり、リッド5の全体の温度が上昇しパッケージ2の残留応力が大きくなってパッケージ2が変形する可能性が生じる。これに対し、距離Kが3mm以下である場合、金属ブロック30へのジュール熱の熱伝導を速く相対的に多くすることができ、パッケージ2の変形量を4μm以下に抑えることができる。
【0031】
金属ブロック30の熱容量はリッド5の熱容量より大きい。溶接時におけるリッド5全体の過剰な温度上昇を抑制するためには、金属ブロック30の熱容量が一定値以上であることが望ましい。例えば、シーム溶接の際に発生するジュール熱が金属ブロック30に伝導して金属ブロック30の温度上昇のために消費されるのでリッド5単独の場合(金属ブロック30を載せない場合)と比較してリッド5の温度上昇が抑えられる。なお、金属ブロック30の熱伝導率はリッド5の熱伝導率より大きいことが好ましい。金属ブロック30の熱伝導率が大きいほどリッド5から金属ブロック30に熱が伝わりやすくなる。また、金属ブロック30の熱容量は大きい方が好ましい。金属ブロック30の熱容量が大きいと、金属ブロック30に伝わった熱が金属ブロック30の加熱に消費されることでリッド5の金属ブロック30に接触した部分の温度が上昇し難くなる。金属ブロック30の熱容量は金属ブロック30の体積に比例する。金属ブロック30の第1面31の面積は、前述した距離Kの制約がある。よって、金属ブロック30の熱容量を一定値以上とするためには、金属ブロック30の厚さT(方向D3への長さ、
図5参照)を所定の値以上とすることが望ましい。例えば、金属ブロック30の厚さTは2mm以上且つ10mm以下である。一例として、金属ブロック30の方向D1への長さ(金属ブロック30の長辺の長さ)は20mmであり、金属ブロック30の方向D2への長さ(金属ブロック30の短辺の長さ)は10mmである。この場合、金属ブロック30の体積は0.4cm
3~2cm
3である。一例として、金属ブロック30の密度は約9g/cm
3であり、金属ブロック30の重量は約18gである。また、金属ブロック30の比熱は385J/kg℃であり、金属ブロック30の熱容量は約7J/℃である。
【0032】
図8は、金属ブロック30の厚さTと接合部5gの温度との関係を示すグラフである。
図9は、厚さTとパッケージ2の変形量との関係を示すグラフである。
図8及び
図9に示されるように、厚さTが小さい場合(例えば0.5mm)、接合部5g以外の温度が高くなりすぎてパッケージ2の変形量が4μmを超える。これに対し、厚さTが2mm以上である場合、金属ブロック30によってリッド5の接合部より内側の部分の温度上昇を十分に抑えることができるので、室温に冷却後の残留応力の低減によりパッケージ2の変形量を4μm以下に抑えることができる。
【0033】
但し、金属ブロック30によるリッド5の温度上昇の抑制に効果がある厚さTの値は、リッド5の大きさ(容積)、及び溶接条件(例えば、ローラ電極21の移動速度又は加熱時間等)に依存する。リッド5の厚さ(方向D3への長さ)は、例えば、0.1mm以上(一例として0.3mm)である。また、リッド5の方向D1への長さ(リッド5の長辺の長さ)は10mm以上(一例として24.1mm)であり、リッド5の方向D2への長さ(リッド5の短辺の長さ)は20mm以上(一例として14.1mm)である。例えば、リッド5の体積は約0.1cm3である。一例として、リッド5の密度は8g/cm3であり、リッド5の重量は約0.8gである。また、リッド5の比熱は460J/kg℃であり、リッド5の熱容量は約0.4J/℃である。
【0034】
金属ブロック30の熱容量は、例えば、リッド5の熱容量の10倍以上(一例として18倍)である。例えば、金属ブロック30の厚さTは、リッド5の周囲長の2%以上である。リッド5の周囲長とは、リッド5の方向D1への長さの2倍と、リッド5の方向D2への長さの2倍との和である。上記の例では、リッド5の周囲長は76.4mmであり、リッド5の周囲長の2%は約1.5mmであるため、厚さTは1.5mm以上であってもよい。
【0035】
次に、本実施形態に係る光モジュール1の製造方法の工程の例について
図10を参照しながら説明する。
図10は、光モジュール1の製造方法の工程を示すフローチャートである。まず、パッケージ2を所定の治具にセットする。この治具は、パッケージ2の位置決めを行う治具であって、例えば、アルミニウムによって構成されている。前述した溶接は、この治具に載せられたリッド5及びパッケージ2に対して行われるので、この治具を介してリッド5及びパッケージ2から外部に熱を逃がすことができる。その結果、リッド5及びパッケージ2の過度な温度上昇を抑制できる。
【0036】
次に、パッケージ2の開口部2Cにリッド5を載せる(リッドを載せる工程、ステップS1)。このとき、上面5bが上を向けられた状態でパッケージ2の開口部2Cを塞ぐようにリッド5がパッケージ2に載せられる。そして、リッド5の上に金属ブロック30を載せる(金属ブロックを載せる工程、ステップS2)。金属ブロック30は、金属ブロック30の厚さ方向がリッド5の厚さ方向に一致するようにリッド5の上面5bに載せられる。このとき、方向D3から見た場合における金属ブロック30から接合部5gまでの距離Kが0.8mm以上且つ3mm以下となるように金属ブロック30が載せられる。また、可撓性の放熱部材40を介してリッド5に金属ブロック30が載せられてもよい。この場合、例えば、金属ブロック30の第1面31に放熱部材40が貼り付けられており、第1面31に貼り付けられた放熱部材40をリッド5の上面5bに接触させることによって金属ブロック30がリッド5に載せられる。
【0037】
続いて、金属ブロック30が載せられたリッド5を開口部2Cの周囲のシールリング2eにシーム溶接する(シーム溶接する工程、ステップS3)。具体的には、金属ブロック30が載せられたリッド5及びパッケージ2を溶接装置のステージにセットしてシーム溶接を開始する。このとき、一対のローラ電極21によってリッド5の一対の側面5cのそれぞれをシールリング2eに押し付けながら一対のローラ電極21に電流を流すことによってリッド5及びシールリング2eを加熱して溶融させ、リッド5とシールリング2eとの接合部5gを生成する。
【0038】
図11は、シーム溶接の工程を説明するためのリッド5の平面図である。
図11に示されるように、例えば、方向D3から見た場合におけるリッド5の辺5hの中央P1から端部に向かってシーム溶接が行われる。辺5hは、例えば、リッド5の長辺である。シーム溶接の具体例としては、まず、辺5hの中央P1を仮溶接(位置決め)する。そして、方向D2に並ぶ一対のローラ電極21を中央P1から方向D1の一方側に辺5hの長さの1/4だけ移動させて中央P1から箇所P2まで溶接する。
【0039】
その後、一対のローラ電極21を箇所P2から一定時間(一例として5秒)方向D3に離隔(上昇)させて保持し、リッド5を冷却させる。この冷却の後、一対のローラ電極21を方向D3に沿って下降させて箇所P2に接触させ、箇所P2から更にローラ電極21を方向D1の一方側に移動させ箇所P2から辺5hの一端P3まで溶接を行う。そして、上記同様一対のローラ電極21を一定時間一端P3から方向D3に離隔させる。
【0040】
次に、一対のローラ電極21の位置を箇所P1まで戻してリッド5に接触させ、辺5hの中央P1から方向D1の他方側に辺5hの長さの1/4だけ移動させて中央P1から箇所P4まで溶接する。上記同様、一対のローラ電極21を一定時間箇所P4から方向D3に離隔(上昇)させた後、一対のローラ電極21を方向D3に沿って下降させて箇所P4に接触させ、箇所P4から更にローラ電極21を方向D1の他方側に移動させ箇所P4から辺5hの他端P5まで溶接を行う。そして、上記同様、一対のローラ電極21を一定時間他端P5から離隔させる。
【0041】
続いて、例えば、一対のローラ電極21に対して上面5bに平行な面内で装置ステージを90度回転させてリッド5の短辺5jの溶接を行う。このとき、方向D1に沿って並ぶリッド5の隅部のそれぞれにローラ電極21を当ててリッド5の短辺5jに沿ってローラ電極21を移動することによってリッド5の短辺5jの溶接を行う。具体的には、例えば、短辺5jの一端から短辺の中央P6まで溶接を行い、一対のローラ電極21を中央P6から一定時間方向D3に離隔(上昇)させた後、中央P6から短辺の他端まで溶接を行う。以上のようにシーム溶接を行った後に、金属ブロック30をリッド5の上から除去する(除去する工程、ステップS4)。そして、リッド5及びパッケージ2を常温まで冷却させた後に治具からリッド5及びパッケージ2を外すことによって一連の工程が完了する。なお、パッケージ2をセットした治具は、方向D3に可動する可動部材を備えており、その可動部材の先端に金属ブロック30が取り付けられていてもよい。可動部材を上下させることによって金属ブロック30のリッド5の上面5bへの載せ外しを上述の距離Kを確保しつつ効率よく行うことができる。
【0042】
次に、本実施形態に係る光モジュール1の製造方法から得られる作用効果について説明する。この製造方法では、パッケージ2に開口部2Cを塞ぐようにリッド5が載せられ、リッド5の上に金属ブロック30が載せられる。金属ブロック30が載せられたリッド5がパッケージ2の開口部2Cの周囲のシールリング2eにシーム溶接される。よって、シーム溶接のときに生じるジュール熱をリッド5から金属ブロック30に逃がすことができる。従って、ジュール熱が金属ブロック30を加熱するのに消費され、リッド5全体の温度上昇を抑制できるので、リッド5の方向D1および方向D2への熱膨張を抑えてリッド5の残留応力によってパッケージ2に反りが生じることを抑制することができる。パッケージ2に反りを生じにくくすることができるので、光モジュール1における光信号の結合効率の低下を抑制することができる。
【0043】
前述したように、シーム溶接する工程では、シーム溶接によってリッド5とシールリング2eとの接合部5gを生成してもよく、金属ブロック30を載せる工程では、方向D3から見た場合における金属ブロック30から接合部5gまでの距離Kが0.8mm以上且つ3mm以下となるように金属ブロック30が載せられてもよい。金属ブロック30から接合部5gまでの距離Kが0.8mm以上である場合、接合部5gから金属ブロック30にジュール熱が逃げすぎて接合部5gの温度が融点まで十分に上がらないという事象をより確実に回避できる。金属ブロック30から接合部5gまでの距離Kが3mm以下である場合、リッド5の熱容量よりも大きい熱容量を有する金属ブロック30にジュール熱を逃がすことができるので、接合部5gの温度を融点以上に加熱して確実に溶接を行うとともにパッケージ2の反りを低減できる。
【0044】
前述したように、金属ブロック30は銅によって構成されていてもよい。この場合、金属ブロック30がリッド5より熱伝導性が高い銅によって構成されているので、ジュール熱がリッド5よりも金属ブロック30へ伝導しやすくなり、リッド5の温度上昇を低減することができる。
【0045】
前述したように、金属ブロック30は2mm以上の厚さTを有してもよく、金属ブロック30を載せる工程では、金属ブロック30の厚さ方向がリッド5の厚さ方向に一致するように金属ブロック30が載せられてもよい。この場合、金属ブロック30の厚さTが2mm以上であることによって金属ブロック30の熱容量を大きくできるので、リッド5から金属ブロック30に伝導したジュール熱が金属ブロック30の加熱に消費され、リッド5の温度上昇を低減することができる。その結果、パッケージ2の反りをより確実に抑制できる。
【0046】
図12は、光モジュール1のリッド5、パッケージ2、及び内部光学系12を搭載するベース(底壁)2dにおける溶接時の温度上昇の実測値を示すグラフである。
図13は、リッド5、パッケージ2及びベースにおける溶接時の温度上昇の解析値を示すグラフである。
図12及び
図13に示されるように、厚さTが5mmである金属ブロック30を用いた場合、及び厚さTが10mmである金属ブロック30を用いた場合、のいずれであっても、金属ブロック30が無い場合よりも大幅にリッド5の温度上昇を抑えられることが分かった。また、パッケージ2及びベースについても、金属ブロック30を用いた場合には、溶接時の温度上昇を抑えられることが分かった。これは、シーム溶接時のジュール熱が、パッケージ2及びベースに伝導するが、金属ブロック30にジュール熱が伝導することによってパッケージ2及びベースに伝導するジュール熱が相対的に減ったためと考えられる。すなわち、金属ブロック30を加熱するのに余剰なジュール熱が消費されることにより、リッド5だけでなくパッケージ2およびベースの温度上昇も低減されたと考えられる。
【0047】
前述したように、金属ブロック30を載せる工程では、可撓性の放熱部材40を介して金属ブロック30が載せられてもよい。この場合、リッド5に直接金属ブロック30が載せられる場合と比較して、リッド5から金属ブロック30への放熱のばらつきを抑えることができる。放熱部材40は、金属ブロック30の第1面31、及びリッド5の上面5bに密着性の良い材料であることが好ましい。例えば、放熱部材40は、可撓性を有することによって金属面への密着性が向上する。また、放熱部材40の表面は、凹凸が少なく、滑らかであることが好ましい。例えば、放熱部材40は、放熱シートや放熱ゲルである。それにより、金属面同士を接触された場合と比較して、リッド5から金属ブロック30への熱をより伝わりやすくできるので、リッド5の温度上昇の更なる低減に寄与する。金属ブロック30に熱を伝えるために、放熱部材40の熱伝導率は大きいことが好ましく、放熱部材40の方向D3の厚さは小さいことが好ましい。また、放熱部材40が金属ブロック30に接触する面積は、
図5に示すように、リッド5に対向する金属ブロック30の下面(第1面)の面積と等しいことが好ましい。放熱部材40は、金属ブロック30の下面の形状と同じ形状を有していてもよい。それにより、放熱部材40が例えば放熱シートである場合、放熱部材40を金属ブロック30の下面(第1面)に貼り付けて使用することができる。金属ブロック30の下に放熱部材が貼り付けられていることにより、リッド5の上面5bへの放熱部材40と金属ブロック30の付け外しを一度に行うことができ、作業性が向上する。
【0048】
前述したように、リッド5の厚さ方向(方向D3)から見たときに(すなわち、方向D3からの平面視において)リッド5は矩形状を呈し、シーム溶接する工程では、方向D3から見た場合におけるリッド5の辺5hの中央P1から端部(一端P3又は他端P5)に向かってシーム溶接が行われてもよい。この場合、リッド5の辺5hの中央P1から端部に向かってシーム溶接が行われることにより、シーム溶接による接合部5gの歪みの差をリッド5の辺5hの端部において吸収できる。従って、パッケージ2のシールリング2eとリッド5との溶接にリークが生じる可能性をさらに低減できる。
【0049】
以上、本開示に係る光モジュールの製造方法の実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは当業者によって容易に認識される。
【0050】
例えば、前述の実施形態では、辺5hの中央P1から方向D1の一方側に1/4ずつローラ電極21を移動させて溶接及び冷却を行い、その後、辺5hの中央P1から方向D1の他方側に1/4ずつローラ電極21を移動させて溶接及び冷却を行う例について説明した。しかしながら、リッド5及びシールリング2eにおける溶接の順序は上記の例に限定されない。例えば、辺5hの一端から他端までローラ電極21を移動させて溶接を行ってもよい。また、前述の実施形態では、リッド5の長辺の溶接の後にリッド5の短辺の溶接を行う例について説明した。この場合、リッド5のずれに厳しいリッド5の長辺を先に溶接することができる。しかしながら、リッド5の短辺の溶接の後にリッド5の長辺の溶接を行ってもよく、溶接の順序は特に限定されない。
【0051】
例えば、前述の実施形態では、銅ブロックである金属ブロック30について説明した。しかしながら、金属ブロックの材料は、銅以外のものであってもよい。例えば、金属ブロックは、アルミニウム、又はアルミニウム合金によって構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0052】
1…光モジュール
2…パッケージ
2A…内部空間
2b…第1側壁
2c…第2側壁
2C…開口部
2d…底壁
2e…シールリング
3…第1光レセプタクル
4…第2光レセプタクル
5…リッド
5b…上面
5c…側面
5d…第1側面
5f…第2側面
5g…接合部
5h…辺
10…部品
11…波長可変レーザ
12…内部光学系
13…光受信部
14…光送信部
15…TIA
16…ドライバ
21…ローラ電極
30…金属ブロック
31…第1面
32…第2面
33…第3面
34…第4面
40…放熱部材
D1,D2,D3…方向
K…距離
L1,L2…光信号
L3…CW光
P1…中央
P2,P4…箇所
P3…一端
P5…他端